Eco-Porkの養豚自働化プロジェクトが始動、豚肉の生産性や資源の効率性を改善

Eco-Porkは「いい肉の日」である11月29日、豚肉の生産性や資源の効率性を改善する「養豚自働化プロジェクト」を推進するために、田中衡機工業所とリバネスの2社と業務提携することを発表した。両社とも7月にEco-Porkの株主となって同社を支援してきたが、今回のその支援内容がより具体的なかたちとして明らかになった。

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養豚自働化プロジェクトは、各種IoT機器を利用して養豚場で収集した豚育成データを基に、育成の条件や環境などをAIが自動で最適な状態に管理・制御し、豚肉の生産性や資源の効率性を改善するというもの。すでに国際特許に出願しており、今後実証実験を進めていくという。Eco-Porkでは、このプロジェクトを推進することで、豚肉の生産量を日本平均比からの50%向上を目指す。

このプロジェクトでは、Eco-Porkが自社保有する80万頭ぶんの豚の生育データと田中衡機工業所が持つ日量約2万頭ぶんの豚の体重・肉量データを使い、リバネスの持つ知見を生かして養豚に最適化したAIを開発していく。また、Eco-Porkでは、同社開発の養豚経営支援サービス「Porker」を通じて、田中衡機工業所の畜産用の体重計を使っているユーザに体重や肉量の把握を容易にするソリューションを提供する。さらに、田中衡機工業所が開発を進めているAI画像認識技術を用いたデジタル体重計の開発にも協力する。

Eco-Porkは、世界人口の増加と新興国の経済成長、それによる中間所得層の拡大により、2025年~2030年に到来すとといわれているタンパク質危機を回避するため、養豚事業の効率化を目指して2017年11月29日(いい肉の日)に設立されたスタートアップ。一人あたりの肉や魚の消費量が増加し続ける一方で、飼料の高騰によって年を追うごとに養豚事業のコストも上昇しており、その上昇ぶんは段階的に価格にも転嫁されていく。

同社によると、養豚事業で作られた豚肉は年間15億頭ぶんが消費されており、現在では米や小麦を超えて農業分野では最も規模が大きい事業だそうだ。養豚事業では、2年後の2021年には需要と供給のバランスが崩れて一人当たり分配量が減少に転じ、末端価格は約40%も高まってしまうという予想もあるとのこと。

そこで同社は2018年9月に養豚事業の生産性を高めるため、モバイル養豚経営支援システムとしてPorkerをリリース。Porkerでは、養豚場で発生するさまざまなデータをスマートフォンなどのモバイル端末を使って現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にする。2019年3月現在で全国20農家、母豚規模では3万5000頭ぶんの農場で稼働している。

養豚は数十頭をまとめて飼育する群管理が基本だが、その中の1頭が飼育中に病気になったり、体調が悪くなったりすると群全体に悪影響を及ぼして、結果的に出荷基準を満たす体重に生育するまでに時間がかかったり、出荷頭数が減少するという問題が発生する。Porkerでは、豚の飼育状況を可視化・蓄積することでこれらの問題を早期発見して、個体の隔離や治療などを行えるのだ。

Eco-Porkは今回のプロジェクトを統括し、新たな養豚モデルを開発・提供していくことで、世界の養豚業の生産性・資源効率性の改善も目指していく。

【スタートアップバトルへの道】「みんなが豚肉を楽しめる未来のために」2018 Finalist / Eco-Pork #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、Eco-Pork代表取締役の神林隆氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、バトル出場後の社内外の変化や今後のサービス展開などについて話を聞く。
(出場を決めたいきさつ、準備の状況や登壇時の印象について聞いたインタビュー前半はこちら〓リンク〓から)

バトル出場でミッションが明確に示せた

バトル初日で無事にプレゼンを終え、翌日のファイナルラウンド進出を決めた神林氏。プレゼンの出来は「初日の方がよかった」と語っている。

「初日は持ち時間も3分と短く、プレゼンで伝えられることが少ないので、ツッコミどころは満載なので、いい質問をたくさんもらえた。ファイナルでは質問は優しかった印象で、逆にそれにキレイに答えられなかった。初日の様子は社内でも評判がよかったけれど、2日目については『まあ、伝わったんじゃない?』という感じで(笑)。何より副賞がもらえなかったのは残念だった」(神林氏)

とはいえ、TC Tokyoのスタートアップバトルに出場したことで「Eco-Porkの掲げるミッションが明確になった。対外的にそれを表明したことは社内的にも大きかった」と神林氏は語る。

第1弾サービスとして2018年9月に、モバイル養豚経営支援システム「Porker」をリリースし、養豚場のさまざまなデータ収集から状況把握、経営分析までを支援してきたEco-Pork。だが「僕たちはSaaSスタートアップで終わるのではなく、世界で一番食べられているタンパク質である豚肉から、食文化と人類の未来を守るカンパニーだ。そのため、テクノロジーで豚肉生産性を高めると共に、豚肉生産に使われている様々な資源、例えば全世界の米生産量の1.3倍・6億トンも使われている穀物の削減・代替にも取り組み、人類の未来も守っていく」と神林氏は話している。

「スタートアップは忙しいので、メンバーも目先のことに集中しがち。トップもなかなかミッションを伝える機会がない中で、『もっと上を目指すんだ』ということが伝わったのはよかった」(神林氏)

Eco-Pork代表取締役の神林隆氏

社外的にも「豚肉の生産性向上と資源効率の向上」という同社のテーマが伝わったことは大きかったようだ。「大きな問題なので、自分たちだけで解決するのではなく、共感してくれる企業とアライアンスして変えていかなくてはならない。スタートアップバトルへの出場により、投資家やパートナーの引き合いがたくさん来るようになった」と神林氏はいう。

Eco-Porkでは、20194月には伊藤忠飼料との協業を発表している。また8月にはリアルテックファンド、リバネス、田中衡機工業所を引受先とした資金調達を発表。ほかにも持続可能な農業に共感してパートナーとなる企業が5〜6社、TC Tokyo登壇後すぐに集まったという。

「僕らの夢、ビジョン、ミッションを語ったことで、共感してくれる提携企業が出てきた。それに投資家からも話が結構来ている。これまで飛び込みで投資家へアプローチしたことはなくて、TC Tokyoに出ていなかったら、調達にはもっと苦労していただろう」(神林氏)

採用面でも、メンバー数人が入社を決めてくれたとのこと。「何も知らなければ『豚をやっているベンチャー』なんて人は来ないだろう。バトルでミッションを伝えたことで、その価値を理解する人、ミッションに共感した人に来てもらえることは、非常に大きかったと感じる」(神林氏)

みんなが豚肉を楽しめる未来が早くも壊れかかっている

Eco-Porkの第1弾プロダクト、Porkerについては、細かなアップデートを進めていると神林氏。自社営業だけで市場シェアの4%までは確保したが、その後、先にも述べた伊藤忠飼料との提携が決まり、自社のみでは手が回らなかった全国への販売体制が整った。

また産業用ハカリメーカーである田中衡機工業所をはじめ、いろいろな協力会社と組むことで、SaaS製品であるPorkerだけでなくハードウェアなどとも協業しながら、新しい養豚の形を創造しようとしているEco-Pork。TC Tokyoでも神林氏が表明していたとおり、Porkerで蓄積したデータを活用して、AIで最適な養豚を目指すエコシステムづくりを目指している。養豚データを活用した自動化の部分から進めているということだ。

「養豚業というのは、180日で120Kgのボディビルダーをつくるという仕事。その中で、豚肉1Kgをつくるために3Kgの餌をあげているのだが、タンパク質の合成に最適になる餌を与えないと、アミノ酸は尿として排出されてしまうので、何を上げてもよいというわけでなく、最適化が必要」と説明する神林氏。豚肉畜産向け体重計でトップシェアの田中衡機工業所らと組み、生産性だけでなく資源効率性でも向上を図ろうとしている。

今後、今秋にもプロダクトのアップデートを予定しているというEco-Pork。Porkerの市場シェア拡大を進め、事業速度も当初の想定より上げていくと神林氏はいう。この背景には、養豚業を見舞った世界的な危機が関係している。

「豚コレラ感染が国内でも確認されたことで、需要と供給のバランスが既に崩れている中で、世界ではさらに『アフリカ豚コレラ』という別種の豚コレラ感染が広がり、中国では豚が約10%淘汰され、世界では5%の豚が死んでしまっているという状況。これで世界的に豚肉の価格が上昇しており、昨年TC Tokyoでプレゼンしたときには『2022年ごろに40%価格が上がる』としていたが、生産量が落ちてしまったために、今年中には40〜70%価格が上がると見込まれている」(神林氏)

日本は中国に次ぐ豚肉の輸入国。中国で需給バランスが崩れて輸入価格が高騰すれば、日本への影響も必至だ。「みんなが豚肉を楽しむ未来が、早くも今年壊れかかっている」と神林氏。「僕らとしては生産性を高めるエコシステムを急いで用意し、豚肉を食べていける状況にしたいと強く思っている」と語る。

「今後3年ぐらいで、新しい養豚の形をつくり、普及させたい。世界的な情勢もあるので、僕らはスタートアップとして、さらにスピードアップして事業を展開していきたいと思っている」(神林氏)

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「人生の一大ページのひとつになった」2018 Finalist / Eco-Pork #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、Eco-Pork代表取締役の神林隆氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場を決めたいきさつ、準備の状況や登壇時の印象について話を聞く。

人生で初めてのピッチに臨む

Eco-Porkは、世界のタンパク質不足という課題を“養豚×テクノロジー”の力で解決しようというスタートアップ。提供するのはクラウド型の養豚経営支援システム「Porker」だ。Eco-Porkを創業した神林氏は以前からTechCrunch Japanの読者で、TC Tokyo開催の紹介記事を読んでスタートアップバトルを知り、応募したそうだ。申し込み後、CFOから「TC Tokyoには出ておいた方がいい」と言われたので「もう申し込んだよ」と答えたという。

Eco-Pork代表取締役の神林隆氏

「2018年9月、SaaSプロダクトのPorkerを正式にリリースして世の中に受け入れられ始め、プロダクトも形になってきたところだった。Porkerの後、今後不足するタンパク質の中でも割合の多い、豚肉の生産性向上と資源効率化について訴え、ちゃんと説明したいと考えていたところで、いいタイミングだった」(神林氏)

とはいえ「TC Tokyoが人生で初めてのピッチだった」という神林氏。実は「生徒会長みたいなこともやったことがなかったので、演説もしたことがなかった」という。神林氏は「自分が伝えたいことは何か、考え抜くというそもそもの部分に丸一日使った」と語る。

「製品がどう、ということじゃなくて、平成29年11月29日、“いい肉の日”に創業したのは『タンパク質がある未来を人類に残そう』ということだった。そこからブレイクダウンして、豚肉の生産性向上と資源効率の向上のために何ができるか、ということで、そもそもの事業ドメインやミッションの部分をクリスタライズし、モヤモヤした思考を形にすることに時間をかけた。それが結果としてファイナルラウンド出場につながったんだと思う」(神林氏)

話のコアの部分を固めた神林氏は、その後2日ほどかけて構成づくりを行ったが、事前審査の面接で「資料に文字が多すぎる」と言われたそうだ。「コンサルティングファーム出身だからか、何でも文字で説明しておかないと不安で、すぐに文字に逃げてしまう。『もっとそぎ落として、魂の言葉を書いた方がいい』とアドバイスされた」(神林氏)

そこからさらに2〜3日かけてファイルを完成させ、本番前は3〜4時間ぐらいかけて練習を行ったと神林氏はいう。TC Tokyo初日のバトルファーストラウンドでは、3分の持ち時間でプレゼンテーションが行われる。対して、決勝ラウンドでは持ち時間は5分。決勝向けにロングバージョンを用意しておいて、初日用に縮めるプレゼンターも結構多いのだが、神林氏は「3分間、魂の言葉を用意して、ファイナル進出が決まったその日の夜に5分版をつくった」と話している。

「3分版では早口だったので、5分版では抑揚を付け、そもそもの思いも入れ込んだ。その部分はゆっくりと、なぜこの事業を始めるに至ったのかを、ストーリーにするようにした」(神林氏)

TC Tokyoは思いを伝えられる場

当日の出場者控え室では、ピッチコンテストへの出場経験がある人が多く、それぞれが顔見知りで挨拶などを交わしている中で神林氏は「みんな場慣れしている感じで、孤独だった」と印象を語る。「だけどそれが、逆によかったように思う。ピッチ慣れしていないので、自分に向き合ってプレゼンを組み立てられた」(神林氏)

同じ出場者として印象に残ったのは、バトルを制して最優秀賞を獲得したムスカだと神林氏は振り返る。「プレゼンにも感動したが、僕らは食糧危機を解消しようという点では志を同じくする会社同士。控え室で串間会長(ムスカ創業者で現会長の串間充崇氏)が、流郷さん(当時の暫定CEO、現在は代表取締役CEOの流郷綾乃氏。当日プレゼンを担当)を励ましているのを楽屋で聞いていて、実は僕も勇気づけられてピッチに臨めた」(神林氏)

神林氏は「TC Tokyoは思いを伝えられる場。僕がそこへ出たいと考えたのも、Eco-Porkの事業を自分だけが見ている夢でなく、みんなで見る夢として強くしたかったから。串間さんがつくった夢を流郷さんが自分の夢に置き換えて進んでいるのを見て、うらやましくもあったし、『こういう会社は強くなるだろうな』とも思った」と話している。

いざ、登壇してみての感想はどうだったのだろうか。神林氏は「はじめて1000人ぐらいの人を前に話すことになって、壇上へ上がった瞬間には『こんなにも聞いてくれる人がいるんだ』と感動した」と述べている。初日のプレゼンと質疑が終わった時には「人生で一番やり切った感じだった」という神林氏。ファイナルラウンド進出が発表されたときには「人生で初めてガッツポーズをしたんじゃないか」というぐらい、うれしかったそうだ。

「自分が見ていた夢を伝えて、みんなの夢にしたい、と思っていたことを、3分のプレゼンと質疑応答で説明し切れたことがうれしかったし、また明日も説明できるんだ、ということもうれしかった」(神林氏)

出場から審査発表までの一連の記憶について「確実に人生の一大ページのひとつになっている。今でも会場の絵が思い浮かぶ」という神林氏。これから出場を目指す起業家には「想像よりすごいよ、と伝えたい」と話している。

「舞台はキラキラしていて、スモークがたかれ、華やかなライトを浴びる。舞台袖から、光の差す方へ向かって段を上がり、会場に向いたとき『がんばらなきゃ』と思った。ちゃんと練習していなければプレゼンでコケる可能性もあるけれど、僕はあれを経験できてよかったと思う」(神林氏)

 

インタビューの後半では、バトル出場による社内外の変化や今後のサービス展開などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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ICC KYOTO 2019スタートアップ・カタパルトの優勝は保険適用の夜間診察クリニックのファストドクター

優勝はファストドクター(YouTubeのLIVE中継をキャプチャ)

9月2日~5日かけて京都で開催されているICCサミット KYOTO 2019。9月3日にはスタートアップ企業のピッチイベント「スタートアップ・カタパルト」が開催された。

ICC(Industry Co-Creation)サミットは、B Dash CampIVS(Infinity Ventures Summit)などと同様に、ベンチャーキャピタルや投資家、大企業に向けての重要な露出の機会となるスタートアップの祭典だ。ICCサミットは毎年2回開催されており、2019年は2月18日~21日の福岡に続き、京都は2回目となる。

ICCサミット KYOTO 2019のスタートアップ・カタパルトの本戦出場を決めたスタートアップ企業は以下の15社だ。最終審査で、6位はシルタス、5位はLinc’well、4位はRevComm、2位は2社あり、データグリッドとガラパゴス、1位はファストドクターという順位となった。

RevComm

2017年7月設立。AI搭載型クラウドIP電話「MiiTel」(ミーテル)のサービスを提供する。5月に開始されたB Dash Camp 2019 Spring in Sapporoのピッチコンテスト「Pitch Arena」で優勝を勝ち取ったスタートアップだ。

関連記事:B Dash Camp 2019 SpringのPitch Arena優勝はAI搭載型クラウドIP電話サービスのRevcomm

With The World

2018年4月設立。モニター通信授業による少人数のディスカッションや交換留学によって、社会問題について世界の学生たちと解決策を提案・実施する機会を創り、次世代のリーダーを育成するサービスを提供する。

ファミワン

2015年6月設立。LINEを利用した妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」を提供。チェックシートへ回答することで、必要なアドバイスを受けられるのが特徴。妊活の専門家に病院選びを相談することもできる(初回無料)。

関連記事:エムスリー出身のファミワン、無料診断と生活習慣のサポートで“妊活”を支援する「FLIPP」をローンチ

エナジード

2012年10月設立。中高生向けの学習教材「ENAGEED」を開発・提供。現在、同志社中学校や東京都立高島高等学校などの学校や学習塾で100校以上で実際に使われている。国内だけでなく、フィリピン・ガーナ・ボリビアでも展開。そのほか、企業向け人材育成ツール「ENAGEED for Biz」の開発も手がけている。

関連記事:決められた正解がなく思考プロセスを重視、中学・高校生向け補助教材のエナジードがWiLから4.4億円調達

オリジナルライフ

2015年4月設立。結婚準備の情報を集めたポータルサイト「WeddingNews」を運営。結婚式に向けたメイクやネイル、スタイリンのほか、ウェルカムボードや席札のデザイン、人気のウェディングケーキなど結婚式にまつわるさまざまな情報を集約。キャンペーンやクーポンなどのお得情報も掲載する。

関連記事:ウェディング情報アプリ運営のオリジナルライフが1.2億円調達、花嫁と共同で商品プロデュースも

Elaly

2018年5月設立。家具の月額レンタルサービス「AirRoom」を運営。約20ブランドが販売する500〜600品目の家具を月額定額で利用できるサービス。ユーザーはそれらの家具を月額500円から借りることができ、1カ月単位で自由に家具の入れ替えられる。高い料金のものでも月額5000円程度で家具を使うことができる。

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データグリッド

2017年7月設立。GANと呼ばれる技術を活用した「アイドル生成AI」「全身モデル自動生成AI」などを開発・運営。アイドル生成AIでは、実在のアイドルの顔画像を学習させることによって、架空のアイドルの顔画像を自動生成するサービスで注目された。全身モデル自動生成AIの場合は、実在しない人物の全身画像を自動生成可能なので、アパレルや広告などの業界で活用が期待される。

関連記事:自分やアイドルの顔と声から抽出した人工遺伝子で「自分だけのアイドル」を作るゲームがあるらしい

シルタス

2016年11月設立。スーパーのポイントカードを登録するだけで、購入した食材などの栄養素を解析してくれるサービス「SIRU+」(シルタス)を提供。をリリース。神戸市内のスーパーでの実証実験を経て、今年7月からはダイエーの都内2店舗でもサービスが試験導入されている。

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Linc’well

2018年4月設立。クリニック向けのSaaSを開発・運営。患者の体験向上、およびクリニックの経営管理効率化のためのサービスで、ウェブやLINEを使った診察予約、 事前のウェブ・iPad問診、決済などの機能を備える。電子カルテとの連携なども可能だ。患者・消費者向けオンラインプラットフォームや院内オペレーションを最適化するためのサービスも提供している。

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YACYBER

2015年6月設立。近くの農園や直売所を探せるメディア「YACYBER」を運営。位置情報を利用して、現在位置から10km以内の野菜の直売所を見つけ出せる。同社は、食育やレシピなどの情報を集めたメディア「やさコレ」も立ち上げている。

Eco-Pork

2017年11月設立。モバイル養豚経営支援システム「Porker」を開発・販売。スマートフォンなどのモバイル端末を用いて農場現場で発生するさまざまなデータを現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にするシステム。2018年9月から提供を開始しており、2019年3月現在で全国20農家、母豚規模で3万5000頭ぶんの農場で稼働中とのこと。同社はTechCrunch Japanが2018年11月に開催した「TechCrunch Tokyo 2018」のピッチイベント「スタートアップバトル」のファイナリストだ。

関連記事:クラウド養豚システムのEco-Porkがユーグレナやリバネス、田中衡機工業所と提携

ファストドクター

2016年7月設立。夜間・休日に特化した救急往診を手配できるサービス「ファストドクター」を運営。保険適用可能で提携医療機関の医師がユーザーの自宅まで出向いて診察してくれる。対応エリアは東京23区。料金は、成人3割負担の場合で診察料が4950円~、往診にかかる交通費は実費(1000円程度)となる。往診可能時間は、月~金曜は19時~翌6時、土曜は18時~翌6時、日曜は朝6時~翌朝6時。

ギバーテイクオール

2017年2月設立。住宅・不動産業界向けのサービスを開発・運営。2018年2月に、LINEを使って住宅アドバイザーに家づくりについて相談できるサービス「auka」(アウカ)事業を立ち上げ。aukaでは、工務店の選定や住宅ローンを含む資金計画などもサポートしてくれる。

ガラパゴス

2009年3月設立。デザイナー向けAI「AIR Design」を開発・運営。AIを活用することで高品質なクリエイティブが短期間で制作でき、A/Bテスト実施を前提として計画からレポーティングまでワンストップで提供できる。

Tsunagu.AI

2017年4月設立。ウェブサイト開発プロセスをAI化して開発効率を高める「FRONT-END.AI」のクローズドベータ版をリリース。FRONT-END.AIは、複数のディープラーニングのモデルを独自に結合し、フロントエンド開発に特化した学習を行ったAIサービス。ページ全体のデザインカンプとウェブ用素材をアップロードするだけで、HTMLの構造および、デザイン要素の分析・自動でコーディングが可能。

クラウド養豚システム「Poker」の販路拡大、Eco-Porkが伊藤忠飼料と協業へ

モバイル養豚経営支援システム「Porker」を開発・販売しているEco-Porkは4月12日、伊藤忠飼料との協業を発表した。この協業により、伊藤忠飼料はPorkerの優先取扱権(有期契約)を国内飼料メーカーとして初めて取得。5月1日から伊藤忠飼料の販売ルートでの提供を開始する。

「Porker」は、スマートフォンなどのモバイル端末を用いて農場現場で発生するさまざまなデータを現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にするシステム。2018年9月から提供を開始しており、2019年3月現在で全国20農家、母豚規模で3万5000頭ぶんの農場で稼働中とのこと。

Eco-Porkは、昨年11月にTechCrunch Japanが開催したTechCrunch Tokyo 2018のメインイベント「スタートアップバトル」で、書類選考100社超から選ばれた20社のファイナリストの1社。そして、ファイナリスト20社からさらに6社だけが進出した決勝ラウンドにも残った1社。TechCrunch Tokyo 2018での最優秀賞は、選抜されたイエバエによって生ゴミや糞尿を約1週間で肥料・飼料化する技術を擁するムスカが獲得したが、実は最後までムスカと競っていたのがEco-Porkだ。

Eco-PorkのPokerは、養豚におけるさまざまなデータを記録することで効率的な作業を実現するサービス。記録したデータはクラウドに保管され、スマホやタブレット端末などでいつでも参照できる。具体的には、種付けや妊娠官邸などを同一の母豚でグループ化しておくことで、一度の入力でグループ単位の管理が可能になる。

HACCP認証に必要な記録項目や、さまざまな業務帳票のテンプレートも用意されている。HACCP認証とは、食品の衛生管理の各種ルールを遵守している企業などに与えられるもので、スーパーなどの小売業や食品メーカーだけでなく、最近では養豚業界など第一次産業にも認証取得が求められているそうだ。

Pokerは、体重測定装置や温度センサー、飲水センサーのなどのIoT機器との連携を考えたデータベース設計になっており、将来的にはこれらのIoT機器から取得したデータも駆使して、AIや統計解析による養豚場の経営分析なども進めていくという。現在の利用料金は、母豚1頭あたり年額600円+初期導入費用20万円〜。

伊藤忠飼料は、従来のアナログな養豚経営を効率化するためにPokerの優先取扱権を取得。養豚業界では、豚舎で母豚カードと呼ばれるプレートやノートに産子数や離乳頭数などを手書きしたあと、事務所にあるパソコンに転記という作業が一般的だそうだ。また、養豚農家からの情報収集はFAXやパソコンに入力されたデータの参照など人の手を介して行うため、タイムラグや人的ミスが生じるという問題もある。Pokerの導入により、豚舎や母豚、同じ母豚から生まれたグループ化された子豚などの情報がクラウドに保存されるため、即時に情報を収集・分析できるほか、転記によるミスなども防げる。

TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル、グループD出場企業を発表

11月15日、16日に開催する「TechCrunch Tokyo 2018」内で行われるスタートアップバトル・グループDの出場企業を発表しよう。グループDに出場するのは、Eco-Pork、POL、すむたす、HERP、アートローグの5社だ。

Eco-Pork

人口増加と中間層拡大により「世界タンパク質危機」という言葉が叫ばれるようになった。それをイエバエのちからで解決しようとするムスカ(グループB出場)に対し、“養豚×最新テクノロジー”で問題解決を目指すのがEco-Porkだ。世界で最も消費されている食肉である豚肉んも生産性を高めることを目指す。具体的には、農家の経営改善を支援する養豚経営支援システム「Porker」などを提供している。

POL

POLは研究者版LinkedInとも言える「LabBase」山岳連携を加速する研究者DBの「LabBase R&D」などを提供するスタートアップ。東大工学部生の加茂倫明氏と元ガリバー専務取締役の吉田行宏氏により2016年9月に共同創業。2017年4月にはBEENEXTなどから5000万円を調達した。ICC KYOTO 2018内で行なわれたスタートアップコンテストでは準優勝を受賞している。

すむたす

すむたすはAIを用いた不動産査定サービス「すむたす買取」を提供するスタートアップ。オンライン査定で買取価格を即座に表示し、マンション売却後、最短2日間で入金可能なシステムを構築した。2018年10月には500 Startups Japanなどから5000万円を調達している。テクノロジーで「住まいに価値を足す」新しい形の不動産会社を目指す。

HERP

HERPは求人媒体と連動した採用管理システムの「HERP ATS」などを提供するスタートアップ。企業と候補者を中心に添えた新しい採用のかたち「採用2.0」を実現することがミッションだという。HERPの庄田一郎氏はリクルートとエウレカで実際に採用現場に携わった人物。2017年12月にはエウレカ創業者の赤坂優氏などから数千万円規模の資金調達も行った。

アートローグ

アートローグは、芸術領域のメディア「ARTLOGUE」やeコマース事業、シンクタンク事業などを展開するスタートアップ。「文化芸術を守るためにも、活かし、誰もが、いつでも、どこからでもアートを楽しめる世界へ」をビジョンにしている。2018年6月にはマネックスグループCEOの松本大氏やマリ美術館館長の南條史生氏らエンジェル投資家から資金調達を行っている。

TechCrunch Tokyo 2018の開催までいよいよあと6日となった。イベントページには当日のフルプログラムも公開されているので、ご確認いただきたい。チケットをまだ購入していない皆さんは以下のページから購入可能なので、検討いただきたい。

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