AppleのiPhone、Spotifyのストリーミングサービス、Tesla Roadster ― いづれも質の高いデザインで競争力を高めた革新的テクノロジーの成果だ。
過去10年、IT企業におけるデザインの重要性は、テクノロジーに精通した消費者が、完璧な機能性と優れたユーザー体験だけでなく美しさ求めるようになるにつれ、飛躍的に高まった。
その結果多くのデジタル企業がデザイン能力の価値を認め、本格的な投資行動を始めた。この4年間にIT企業は、デザイナーが共同設立した会社を25社以上、クリエイティブ代理店13社を買収した。消費者指向のデザイン主導企業が株主価値を著しく高め、成長を加速していることは証拠が示している。彼らは適切な製品を作るだけでなく、彼らの消費者にとって適切な製品を作る。
最近3ヵ月間、IT巨人らはデザイナーの雇用をさらに進めて、ユーザー体験を高め、製品デザインを改善し、ユーザーに合わせた開発を行っている。Facebookは、Hot Studio、Bolt Peters、そして最近ではTeehan+Laxと、いずれもユーザー体験に特化したデザイン会社の協力を傘下に入れた。一方Googleは7月にPixateの買収して、新しいデザインとプロトタイピングツールの開発を強化した。そして5月には、経営コンサルタントのMcKinseyもトレンドに乗り、Apple、HPらをクライアントに持つデザイン会社、Lunarを買収した。これは上昇傾向にあり、多くの大手企業がデザイン会社やデザイン指向のIT企業を買収している。
このトレンドの起源は?
1990~2010年頃、「情報化時代」がやってきた。増殖するデータがIT企業に成功の機会をもたらした。つながったPCとサプライチェーンは、情報の流れを制御する会社が支配することを意味した。その後われわれは「消費者時代」に突入し、力を得た消費者は無限の選択肢を与えられたが時間と注意力は限られ、高いレベルのユーザー体験が要求されるようになった。今やデザインは、つながった消費者の時代で最も重要な要素となり、それはIT分野だけでなく、あらゆる主要産業 ― 自動車、小売、医療等 ― にわたり、企業は世界中で適切な適応が求められ、未曽有の競争に曝されている。
戦略的で消費者体験に基づくデザインはこれまでになく重要、不可欠である。主要な課題は、そのための人材供給が今は限られていることだ。
デザイン能力は、成功しているデジタル企業の成長を定義する。
2年前、Accentureはロンドン拠点のデザインコンサルタント会社、Fjordという歴史的買収を完了した。今年7月には契約を拡大し米国内外に新たなスタジオを開設しデザイン専門家のための新たな採用プログラムと共に、新規および既存の社員デザイナーのための教育プログラムを開始した。この買収によってAccentureのデジタルマーケティング機能は拡大し、クライアントが際立った顧客体験を開発し迅速に提供する手助けをすることで、Acentureの中核であるシステム統合ビジネスは膨大な追加収益を得た。
また、Ernst Y Young U.K. は国際デザインコンサルタントのSerenを買い、Wipro Digitalも国際デザイン会社のDesignitを買収した。WiproはDesignitを8500万ユーロで買収し、これは公表されている買収としては業界最大であり、相補的で強力なシナジーによって生まれた。この投資はWinproのデジタル事業推進活動が次の段階に進む前兆だ。
起業家はここから何を学びとれるか?
デザイン能力は、成功しているデジタル企業の成長を定義する。デザイン主導の企業は、自らの洞察に基づきすばやく行動できるため、早期の失敗やテスト、学習を活かしてプロトタイピングを反復することで製品やサービスを完成させる。これは企業の成長を助け、収益性と拡張性を高める。
このトレンドに関するわれわれの分析は、デザインとテクノロジーの関係がいっそう深まっていくばかりであることを予言している。それは、投資活動、買収、高額な給与へ徐々に変換されていく。
起業家は、デザインを自らの製品やサービスの中心に据える必要がある。しかし彼らは、自社のデザインが市場にうまく表現されていることも確かめなくてはならない。個々のあらゆる操作がユーザーにとって快適な体験になる必要がある。それは会社にとって、優れた価値を提供する決意を表明するチャンスだ。
この10年間が、取締役会にCTOが増えた時とするなら、次の5年間はデザイン責任者が席を持つようになるだろう。大企業はこのことを理解し始めている。今こそスタートアップはビジネスを拡大し消費者時代の要求を満たす時だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)