Kano(カノ)は、英国ロンドンに拠点を置き、子ども向けのコンピューティングおよびコーディング教育のためのハードウェアを製造するスタートアップ。米現地時間6月19日、大きな成長への一歩を踏み出した。同社はMicrosoft(マイクロソフト)と提携し、Kano PCを発売する。このマシンは、11.6インチのタッチパネル式ディスプレイ、Intel Atomプロセッサーを搭載し、同社製品として初めてWindows(厳密にはWindows10 S)が走る。今回の提携の一環として、マイクロソフトはKanoに非公開の投資も行う。
Kano PCは、現在、Kano.meおよびMicrosoft Storeで予約受付中。価格は299ドル99セントまたは299ポンド99ペンス。10月に出荷が始まる。2019年10月21日からは、英国、カナダ、英国の特定の小売業者からも販売される。Windows対応デバイスへの移行はKanoにとって非常に意味深い。
このスタートアップは、Raspberry Piを中核にしたデバイスを開発し、Kickstarterキャンペーンで人気を博したことで名を挙げた。これまでの数年間は、同社が標榜するDIY精神により形作られてきた。
Kanoの創設者でCEOのAlex Klein(アレックス・クライン)氏によれば、KanoはRaspberry Piベースのデバイスを今後もサポートしていくが、新たにRaspberry Piベースのハードウェアを開発するかどうか、まだそのロードマップは定まっていないという。
「Raspberry Piデバイスも、低価格帯のポートフォリオで存続しますが、このマシンは、より幅広い年齢層に向けてデザインされました。これは正式なWindows PCなのです」とクライン氏は言う。
Kanoのラインアップは、現在、6歳から13歳の子どもたちの間で広く使われ人気を集めている。クライン氏の説明によればKano PCはK-12(幼稚園年長から高校卒業まで)デバイスだが、現在の対象年齢層の前後に幅を広げるには「ブランディングに時間がかかるかも知れない」とも彼は認めている。
それを実現するために、マイクロソフトとの提携により提供される以下のソフトウェアがある。
Make Art
Coffeescriptで高品質な画像のコーディングを学ぶ。
Kano App
簡単な手順とプログラムを使って魔法の効果から冒険の世界まで、ほぼあらゆるものを作り出す。
Paint 3D
3Dモデルの製作、シェアができ、3Dプリンターに送ることもできる。
Minecraft: Education Edition
いくつもの賞に輝く創造的なゲームをベースにした学習プラットフォーム。
Microsoft Team
新しいプロジェクトやコンテンツの入手や、自分の作品をシェアができる(子ども向けのSlackみたいなものだ)。
Live Tiles
自分だけの創造的なプログラムを自分のダッシュボードに直接表示できる。
これまで中核的ユーザー層(コンピューターやコーディングに興味のある子どもたちと、コンピューターとコーディングへの興味を子どもたちに持たせたいと願う親たち)を惹きつけてきたKanoは、その人気に応えるべく、同社のシンプルなコンピューターと連動して使えるアクセサリーを数多く発売してきた。また、ユーザー層に応じたスマートなテクノロジーおもちゃも作っている。昨年、同社はハリー・ポッターの魔法の杖を販売した。自分で作って、プログラムして、遊べるというものだ。CEOのクライン氏はインタビューのなかで、この種の新製品が、Kanoから間もなく続々と発表されることをほのめかしていた。
マイクロソフトとの提携により、同社は当初の顧客層を超える幅広い人々の間にも、Kanoの高い評価を広めることになるだろう。またこれは、すでにマイクロソフトが大きく力を入れている教育環境に参入するための、新たな入口を開くことにもなりそうだ。
それは、今回の提携のもうひとつの興味深い側面でもある。マイクロソフトは教育環境にソフトウェアとハードウェアを販売してきた長い歴史を誇るが、これは、背後に控えた新たなブランド、つまり子どもに特化したブランドとしてその持ち札に多様性をもたらす。大人向けのブランドの機能を縮小して(でも値段はそのまま)子ども向けとしたようなものとはわけが違う。
「Kanoと提携してKano PCを販売できることで、私たちは大変に興奮しています。私たちはKanoと目標を共にして、教室での体験を、教師も生徒も同じく楽しめるものにして、未来を、想像するだけでなく、実際に作り上げる力を与えたいと思っています」とマイクロソフト教育担当副社長を務めるAnthony Salcito(アンソニー・サルチート)氏は声明の中で述べていた。
これまで、地味ながら大きな成功を遂げてきたKanoは、数多くの支援者から5000万ドル(約54億ドル)ほどの投資を集めてきた。そこには、Marc Benioff、Index Ventures、Breyer Capital、Troyをはじめとする投資家が名を連ねている。クライン氏は、近い将来、新しいエクイティ投資を検討する可能性があると話しているが、それ以上のコメントは聞けなかった。
[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)