マイクロソフトが量子計算機プラットフォームを限定プレビュー

米国時間5月19日、Microsoft(マイクロソフト)はパートナー主体の量子コンピューティングプラットフォームであるAzure Quantumの限定プレビューを、量子コンピューティングの利用を開始したいと考えているデベロッパーに対して開始したと発表した。

画像クレジット:Xinhua / Sylvia Lederer via Getty Images / Getty Images

Azure Quantumは、当初Microsoft Ignite 2019で発表された。このAzure QuantumはIonQ、Honeywell、QCI、マイクロソフトのハードウェアと、1QBitなどのサービスを従来からあるAzureクラウドのコンピューティング機能に統合するものだ。今回の限定プレビューへの移行にともなって、マイクロソフトは選定された少数のパートナーと顧客にサービスの提供を開始した。

現段階では、ほとんどのビジネスにとって、まだ量子コンピューティングは文字通り不可欠な機能とはいえない。しかし物事が速く移り変わること、そして数年以内にこの技術が成熟したときにそれがどれほど強力なものになるかを考えると、着手すべき時は今だと多くの専門家が指摘している。特に量子コンピューティングと従来のコンピューティングとの違いを考慮し、デベロッパーが実際に開発するのにかかる時間を考えればなおさらだ。

Microsoft Igniteでは、マイクロソフトはQuantum Development Kit、コンパイラー、シミュレーターもオープンソース化した。

このようなマイクロソフトのアプローチは、他のどんな競合企業とも異なっている。また現状においては、マイクロソフトは他の量子ハードウェア企業と提携する必要がある。その理由は単に同社の量子ハードウェアへの取り組みが、まだ実用可能なレベルに達していないからだ。マイクロソフトは、マシンのコアにある異なる種類の量子ビットの開発に関して、IBMやRigettiなどとはまったく異なるアプローチを取っている。この数カ月で、いくつかのブレークスルーはあったものの、まだ動作可能な量子ビットは実現できていない。もしかすると、公表していないだけで、既に実現しているのかもしれないが。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトが自律システム向け機械教示サービス「Project Bonsai」をプレビュー公開

米国時間5月19日、Microsoft(マイクロソフト)は同社主催のBuild 2020で、新しいMachine Teaching(機械教示)サービス、Project Bonsai(ボンサイ)を発表した。現在パブリックプレビュー版が公開されている。

この名前に聞き覚えがあると思う人は、おそらくマイクロソフトがBonsaiという会社を買収したからだろう。2018年、機械学習に特化していたBonsaiは、シミュレーションツールに複数の機械学習技術を組み合わせることで、産業用制御システムに焦点を当てた汎用ディープ強化学習プラットフォームを作った。

Project Bonsaiもまた企業の自律機械の学習と管理のために同様の狙いを持っていることは容易に想像できるだろう。「Project Bonsaiを使えば、AIの専門知識を持たない特定分野の専門家が、最先端の知識を機械システムに追加できる」とマイクロソフトはリリース文で語っている。

「パブリックプレビュー版のProject Bonsaiは、Bonsai社の技術と、2019年のBuildとIgniteでプライベートプレビューを発表した自律システムをベースに開発されている」。

マイクロソフトによると、Project Bonsaiは顧客の自律システム開発を支援するための同社の長期的展望の第1弾にすぎないという。同社はMachine Learning(機械学習)と比較してMachine Teaching(機械教示)の優位性を強調し、他の手法よりブラックボックス的要素が少なく、期待どおりに動かない時にデベロッパーやエンジニアがデバッグしやすい点を指摘した。

Bonsaiの他にもマイクロソフトは、エンジニアやデベロッパーがリアル世界の制御システム開発の基本を学ぶためのオープンソースのバランシングロボットであるProject Moabを発表した。3本の腕で支えられた台の上にボールをバランスさせるようロボットに教えるというものだ。

ロボットは3Dプリントして作るか、2020年中に売り出させる完成品を買うことができる。MathWorks(マスワークス)が開発したシミュレーションがあるので、デベロッパーは今すぐ試してみることもできる。

「卵を立てるといった従来の方法では容易でなかった分野に今すぐ参入できる」とマイクロソフトのゼネラルマネージャーであるMark Hammond(マーク・ハモンド)氏はいう。「Project Moabの鍵は、エンジニアがいろいろな問題に挑戦し、ツールやシミュレーションモデルの使い方を学べるプラットフォームを提供することだ。ひとたび概念を理解すれば、他のまったく新しい分野に応用できる」

関連記事:Microsoftが強化学習のスタートアップBonsaiを買収して自律型システムの研究開発を推進

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Build 2020の基調講演に感じたオンライン開催の変なところと良いところ

「私たちは異常な時代を生きています」とMicrosoft(マイクロソフト)のCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、Build 2020の基調講演を暗いムードで切り出した。そこには、司会を務めるSeth Juarez(セス・フアレス)氏とDona Sarkar(ドナ・サーカー)氏の開幕の挨拶からの、なんとも奇妙な落差が感じられた。

2人の司会者は、大きなデスクに米国疾病管理予防センターが認可した社会的距離を保って座り、ぎこちない冷やかしや親父ギャグを交えながら、この48時間のライブストリーミングイベントの開幕を宣言した。少なくとも最後の部分では、現在の異常事態の中でもなんとか正常が保たれていた。

気まずいツッコミやつまらない冗談は、良くも悪しくもハイテク業界のプレゼンには付きものだが、無観客の会場では別次元のものに聞こえてくる(特に観客の間に潜り込ませた大げさに騒ぐサクラがいない)。良い方に考えれば、YouTubeの司会者の意気込みが感じられるが、悪くいえば、笑い声の効果音を削除したコメディドラマのようでもある。

避けて通れない初めての試みとして、Microsoft Build 2020の基調講演は、恐らくマシな方だったのだろう。これは間違いなく、パンデミックが世の中を本格的にロックダウンし始めて以来の、巨大ハイテク企業による本格的な大規模イベントだ。結局のところ、Apple(アップル)のWWDCは来月まで開催されず、Google(グーグル)もI/Oを実質的に諦め、オンライン開催も取りやめてしまった。

「今、私たちがみんなでできるいちばん大切なことは、私たちが直面している新たな困難に立ち向かっている人々の支援に注力することです」と、グーグルは中止を決定した際に述べていた。「私たちはプラットフォームのアップデートを、開発者ブログやコミュニティーフォーラムなどを通じて、今後もみなさまと共有する方法を探っていく所存です」。

確かにどちらにせよ難しい決断だ。パンデミックの重大さに比べたら、これらのイベントなどは取るに足らないものかも知れないが、たとえ不自然な方法であったとしても、企業が正常な感覚を取り戻そうとして何かを主張することには意味がある。

フアレス氏とサーカー氏の掛け合いは、2日間のプログラムを1本につなぐ役目を担っていた。多少のアドリブも当然、必要になる。オープニングで2人は、5分間ほどSurface StudioでTwitterのハッシュタグ付きコメントをスクロールさせていた。この開発者カンファレンスに実際に生身で参加した気分になれるよう、コミュニティの感覚に近づけようという試みだ。

ナデラ氏の講演は、それとちょうどいいバランスを保っていた。シンプルでおそらく録画の、家族の小物や写真で飾られた棚の前に立っての出演だった。彼がカメラに向かって話す間に、画像や動画が挟み込まれる。寂しく感じられるとしたらそれは、どうしても2019年の盛大なイベントと比較しながら見てしまうせいだろう。

マイクロソフトは任天堂からヒントを得たのかも知れない。任天堂は基調講演をライブでは行わず、数年前のE3で行われたNintendo Treehouseのプレゼンテーションから録画に切り替えている。普段の形式での興奮は失われてしまうが、その代わりにいくつもの映像を組み合わせてプレゼンテーションを完璧に仕上げることができる。大切なのはそのバランスだ。任天堂の場合は、無数のゲームの予告編を使ったことが功を奏した。このパズルでは、映像資料が大きくものを言う。

残念ながら、ライブのデモで悪態をつく光景は見られなくなった。だが、マイクロソフトのプレゼンテーションを補足しようと大々的にSkypeに依存した会話では、人はホームスタジオに住んでるわけではない事実を嫌というほど突きつけられる。飛行機やら芝刈り機の騒音が聞こえると、当面は物事が正常ではなくなるということを思い出さざるを得なくなる。一概に悪いとはいえないが、なんか変な感じだ。

このような形式の変更が強要される中からも、良いものが生まれている。ひとつはBuildが無料登録で見られるようになったことだ。オフィシャルなチャット(詳しく突っ込むことはしないが、訳あって悲惨な結果になった)では、大勢の開発者や参加者が、これは歴史上初めてのBuildだと興奮気味に伝えていた。参加費、旅費、人で混み合うイベントの不自由さなどが、多くの人たちにとって高いハードルになっていた。

これから数カ月のうちに、これがこの手のイベントの新常態になるのか否かが決まるだろう。2021年への十分な注意を払わないままの主催者を責めるのは難しい。多くは、いつもの人が集まるイベントに戻ると思うが、バーチャルで参加しやすい今の形が新型コロナウイルス(COVID-19)以降も存続されることを私は望む。

“新型コロナウイルス

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(翻訳:金井哲夫)

マイクロソフトがVisual Studio Live Shareに音声とテキストのチャット機能を追加

Microsoft(マイクロソフト)のVisual Studio Live Share(ビジュアルスタジオ・ライブ・シェア)はVisual Studio IDEとVisual Studio Codeエディターでリアルタイムのコラボレーションコード作成をするための新しいツールだ。同社はこのツールのブラウザーバージョンを既に公開している。リアルタイムの共有コードエディターはすばらしいツールだが、ユーザーは実際の作業内容について議論するために、別のツールを立ち上げる必要があった。しかしそれが変わる。Build 2020カンファレンスで、Microsoftはこのサービスに音声およびテキストのチャット機能を追加すると発表した。

現在のさまざまな状況を踏まえると、オンラインの共同作業を便利にするものは何であれ、デベロッパーにとって歓迎だろう。スクリーン共有など他の共同作業ツールと異なるLive Shareの大きな特徴は、各デベロッパーが使い慣れた、時には一風変わった自分専用の設定を使えることだ。最近の共同ドキュメントエディターのほとんどがそうだが、Live Shareでも全員がそれぞれのカーソルを使える。

現時点ではテキストと音声チャットは、Teamsなど他のMicrosoftのコミュニケーションツールと連携していないようなので、当面Live Shareで起きていることはLive Share内に留まることになる。

上記の新機能は、現在公開プレビュー版として利用できる。

画像クレジット:AleksandarNakic / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook