Microsoft曰く:「Googleが騙し続ける限り」Scroogledキャンペーンは継続する

scroogled_logo_2噂に反して、MicrosoftのScroogledキャンペーンはまだ終りそうにない。今日(米国時間3/4)、いくつかのメディアがBing検索担当ディレクターのStefan WeitzがKQEDの取材に答えて、このキャペーンは「まもなく終了する」と言ったことを取り上げた。しかし、Microsoftの広報担当者によると、これは真実ではなく「次章に期待」すべきだということだ。

Microsoftの声明全文は以下の通り:

「ScroogledはGoogleが人々をだまし[Scroogling]続ける限り継続する。われわれは、事実が明かされることをGoogleが嫌っていると知っている。この消費者教育の第2章は、プライバシーに気を配る人たちを紹介した。350万人以上がscroogled.comを訪れ、11万5000人近い人々がGoogleに対してGmailの中を調べるのを中止するよう要求する請願書に署名した。次章に注目されたい。

Scroogledキャンペーンとは、Googleがわれわれのメールを読んでいることや、Google Shopping検索で有償結果を優先して表示していることを告発するもので、昨年11月に開始された。これは、MicrosoftがGoogleのサービスを非難する最も好戦的な試みだ。これまでこのキャンペーンがどれ程の効力を発してきたかは不明だが、Weitzが先月私に話したところによると、機能のみに焦点を絞ったキャンペーンでは、人々に検索やメールのサービスを乗り換えさせるだけの説得力はないと彼は考えている。Googleは殆どの人にとって「習慣」であり、Microsoftはこのキャンペーンを通じて利用者に一度立ち止まって自分の選択肢を考えてもらいたい、とWeitzは主張した。

まだ終っていないとすれば、近い将来こんな傑作をもっと見られるに違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi)

Microsoftは育てたスタートアップを自分で買う: まずクラウドモニタリングのMetricsHub

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Microsoftが今日(米国時間3/4)、Azure上のクラウドアプリの管理を半自動化し、その効率化を助けるサービスMetricsHubの買収を発表した。MetricsHubは、MicrosoftがTechStarsと共催した3か月間の、お互いが競い合うアクセラレータプログラムMicrosoft Azure Accelerator参加した企業の一つだ。

このプログラムの参加企業にはTechStarsから2万ドル、Microsoftからは6万ドル相当のAzureクラウドコンピューティングサービス、シアトル市内のオフィス、そして、Microsoftが買収するかもしれない機会が与えられる。

Microsoftの今日の発表によると、Windows Azureのユーザは、MetricsHubのActive Cloud Monitoringサービスの“無料のプレリリースバージョン”をWindows Azureストアで入手して利用できる。また今日のMetricsHubからの告知によると、既存の有料ユーザは無料プランへ転換される。

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買収の条件は公表されていないが、まだユーザ数がわずか374名のサービスなので、それほど高額の買収価額ではなかっただろう。

MetricsHubのサービスを利用するとユーザは、ニーズに応じて自分のサービスを柔軟にスケールアップ/ダウンでき、またシステムの健康状態やパフォーマンスに異状があれば警告や通知をもらえる。New Relicなどのツールに比べるとまだ簡素だが、Azureを実際に使っている企業にとっては貴重な無料サービスだ。

Microsoftの企業向け事業開発担当VP Bob Kellyが今日の発表声明でこう述べている:“クラウドというソリューションには、スケーラビリティ、柔軟性、そしてその価値、などいくつかの側面で強い魅力がある。しかし、クラウド上に展開しているアプリケーションの重要なデータポイントをすべてモニタし、それらの相互関係を正しく理解して、アプリケーションをスケールアップすべきタイミングなどを適正に判断することは、決して容易ではない”。…だからMetricsHubのサービスをご利用ください、というわけだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

インターネットを忘れてはいませんか

今起きている「歴史は勝者によって記される」的状況について知りたい人は、Tim WuJohn Gruber の2人による、なぜAppleが90年代終り以来、他を叩きのめしてきたかに関するバトルを読むべきだ。

Wuは、システムのオープン対クローズドが真に意味するところを混同し(彼は様々な定義を用いている)、Appleはクローズドであるにも関わらず成功したと主張している。Gruberは、オープン対クローズドは無関係であり、Appleが成功したのは優れた製品を早く作った(先に市場に出した)からだと言う。Gruberの論旨をつきつめると、「天才が動かしている会社は、そうでない会社より一般に業績が良い」ということであり、私も同意する。

ただし。

インターネットを除いて。

ちなみにGruberの言う「90年代にWintelの複占がMacを圧倒したが、これはMacの質的優位性が底を打っていた時代と一致していた」は正しい。しかし、〈もっと正しく〉言うならば、「インターネット以前時代の終りと一致していた」と言うべきだ。

Apple対Microsoftに関してインターネットとブラウザーを抜きに語ることは、第二次世界大戦を原爆抜きに語るようなものだ。OSのオープン対クローズド、ハードウェアやソフトウェアの質、誰がCEOかなどを中心に会話を構成するのはバカげている。

なぜなら、インターネットなくしてAppleの成功はあり得なかったからだ。

インターネット以前、人々はほぼ全員Officeのことだけを気にしていた。そして、Officeは人々がMacではなくWindowsを選ぶ事実上唯一の理由だった。

私が学生だった90年代初めの、Apple対Windowsのエンドレスな議論を思い出す。Macの方が優れたマシンであり、Officeは何もかもが大きな苦痛だと誰もが言っていた。当時OSを横断してファイルを移動することは困難であり、ふつう、Officeが使いたければWindowsパソコンが必要だった。Macはグラフィックをいじる学生たちのものだった。Windowsマシンは大人のためにあった。

もちろんそれは90年代半ばにすべて変った。人々が主にインターネットを使うためにパソコンを買うようになる前、Appleはひどく痛めつけられていた。市場シェアはあまりに小さく、MicrosoftがMac版Officeを作り続けるかどうかさえ疑問視されていた。

そして、Appleにとって何もかもがほぼ同時にやってきた。1997年にスティーブ・ジョブズが戻ってきた。彼はMicrosoftにMac版Officeを再度約束させた。Wikipediaにこうある。

1997年のMacworld Expoで、スティーブ・ジョブズはAppleがMicrosoftと提携することを発表した。その中には、MicrosoftがOffice for Macintoshを発売する5年間にわたる約束と、Appleへの1.5億ドルの出資が含められていた。この契約の一環としてAppleとMicrosoftは、長年続いていたMicrosoftのWindows OSがAppleの特許を侵害しているとする法廷闘争で和解した[47]。また、Internet ExplorerをMacintoshの標準ブラウザーとして出荷することも発表された。Microsoftのビル・ゲーツ会長はExpo会場の大画面に登場して、MicrosoftがMacのために開発しているソフトウェアの計画について説明し、Appleが再び成功する力になれることを非常に楽しみにしていると語った。この後、スティーブ・ジョブズはExpoの聴衆に向かってこう言った。

「Appleが再び健康になり繁栄するために、手放さなくてはならない物がいくつかある。Appleが勝つためにはMicrosoftが負けなくてはならない、という考えは捨てる必要がある。Appleが勝つためには、Appleが真にすばらしい仕事をしなければならないという考えを受け入れる必要がある。そして、もし誰かが助けてくれるならそれはすばらしいことだ。なぜなら今われわれはあらゆる助けを必要としているからであり、もし失敗して良い仕事ができなければそれは誰のせいでもなく、われわれの責任だ。だから、これは非常に重要な見方だと私は考えている。もしわれわれがMicrosoft OfficeをMacに欲しければ、それを出してくれる会社に少々感謝の意を表すべきだろう:われわれは彼らのソフトウェアが好きだ。この状況をAppleとMicrosoft間の競争と考える時代は終ったと私は考えている。重要なのはAppleが元気になることであり、Appleが業界に優れた貢献をし、再び健康になり繁栄することである。

しかし上記の何よりも重要なのは、インターネットだ。当時Officeは私がパソコンに最初にインストールするソフトウェアであり、Officeのないパソコンは一人前のパソコンではなかった。最近買ったパソコン2台には、Officeをインストールすらしていない。

つまり、1997年にOfficeが重要であったように、本当の意味でAppleの戦いを変えたのはインターネットだった。われわれの生涯で最も重要なバーチャルマシン/オペレーティングシステムであるブラウザー。これを通じてアクセスすることによって、インターネットは戦いの場を完全に公平にした。

突如としてパソコンはOfficeだけのものではなくなり、Office〈と〉インターネットのためになった。Macには少しだけ違うバージョンのOfficeがあり、すばらしいインターネット体験がある。インターネットが成熟し、ブラウザーが良くなるにつれ、「問題」は大きく軽減された。今から5年前、Officeの重要度は下がり、Mac、Windows間の互換性は十分良くなり、もはや完全に問題ではなくなった。

インターネットの高まりとOfficeの落ち込みが、Appleの勝因だ。あるいは、Appleが公平な競争の場を与えられ、Appleに関するすばらしい物事のすべてが、ようやく実際に製品を買うほどの影響を人々に与える機会を得たと言ってもいいかもしれない。世界は、「本当はMacが欲しいけど、Officeが重要すぎる」から、「本当はMacが欲しいけど、こいつら高すぎる」へと変わった。

Office以降、インターネット以前、Appleはもがき苦しんだ。インターネット以降、Appleは勝利した(競争の場が公平になったから。その場合に限りGruberの言っていることはすべて正しい)。あまりに当たり前なのでみんな忘れている。

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(翻訳:Nob Takahashi)

Microsoft自製のSurface RTが日本で3月15日に発売

Microsoftがスマートフォン、タブレット市場に乗り遅れ昨年から挽回を試みている。そして本日、Microsoftはタブレット端末、Surface RTの国内販売日が3月15日と決まったことを発表した。価格は32GBモデルが49,800円、64GBが57,800円だ。

Surfaceはアメリカでは昨年10月に販売され、Microsoftのハードウェア事業参入ということもあり、話題になった。初期ロットは予約しかし、Surfaceの販売台数は非公開のもののアナリスト達はかなり大幅に販売台数を下方修正している。

現在Surfaceが販売されているのは、アメリカ、中国、イギリスなど比較的タブレットが浸透している地域なので、先進国の中ではタブレット保有率が低い日本で巻き返しを図りたいところだろう。

Surface RTのレビューはすでにたくさんあるが、ご存じない方のため簡単に紹介しておこう。

搭載されているOSはWindows RTで、タイル上のインターフェイス(メトロUI)が特徴的なWindows 8をモバイルに最適化したOSだ。スマートフォンのように常時インターネットに接続できる。常時接続ができるとバッテリーの駆動時間が心配だが、Surfaceは最大約8時間使用可能だ。

画面サイズは10.6インチなので、iPadの9.7インチよりやや大きい。

SurfaceとiPadとの最大の違いはPCのように使える点だ。搭載OSであるWIndows RTはタブレットととしてはもちろん、他のタブレットではPCのように使いにくい点もカバーしているという。また、標準でOffice 2013 RTもインストールされている。

PCとしても使いやすいようにSurface RTのタブレットカバーにはキーボードとしての機能もある。他にもUSBポートやmicroSDのスロットなんかも付いている。

さて、MicroSoftがハードウェア事業に参入すると、これまでパートナーとしてWindowsのハードウェアを製造していたメーカーとの関係はどうなるのか気になるだろう。MicroSoftが販売する方が互換性は良いだろうし、何よりインパクトがある。

この点に関しては、今までと変えるつもりも無いし、これからもパートナーとして協力していく、と日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏はいう。Windows 8搭載のデバイスはすでに約250種類も市場にあるため、その中の1つとして考えてもらいたいとのこと。

また、Windows製品の中で競争をするというよりはWindows陣営とその他(Android、iOS)との勝負だと思っているそうなので、Surfaceを含めトータルでWIndowsが盛上がることが重要なのだろう。

発売時期がアメリカよりも半年ほど遅れたの理由に関しては色々な理由が考えられるが、樋口氏によるとWindowsストアの充実という点も考慮したという。

Windowsストアのアプリ数は公開されていないものの、AndroidのGoogle Play、iOSのApp Storeに比べるとまだまだアプリの数が少ない。そのため、パートナーのメーカーがデバイスを販売し、Windowsストアを利用するユーザーの拡大と同時にデベロッパーの数をある程度増やしてからSurfaceを販売したかったようだ。

その他、商用利用が可能なOffice 2013 RTをプリインストールしておくことも重要なポイントだったようだ。

3月15日の発売に向け、Surface RTとWIndows 8のテレビCM、屋外などで過去最大級のマーケティングを行うという。

なお、Surface Proの発売はまだアナウンスされていない。

タッチが面倒で8にアップしないWin7ユーザ向けにIE10がリリース, CMもタッチを強調

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人を長く待たせたMicrosoftが今日(米国時間2/26)やっと、Internet Explorer 10を全世界のWindows 7ユーザに提供する、と発表した。これまではWindows 8だけだったが、昨年11月にはWindows 7用IE10のプレビューバージョンがローンチした。今日リリースされるのは、公式バージョンである。なお、全世界で7億人以上いるIE9のユーザと、前記プレビューバージョンのユーザに対しては、自動アップデートが始まる。

プレビューバージョンのユーザには自動アップデートがすぐに始まり、そのほかのWin7ユーザには今後数週間〜数か月の内に通知が来る。Microsoftは、アップグレードに伴う問題点の検出と修正をしながら、徐々にIE10の世界展開を図るようだ。

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MicrosoftでInternet ExplorerのゼネラルマネージャをやっているRyan Gavinが先週語ったところによると、Internet Explorerのユーザが10へのアップグレードをためらったり、嫌がったりする理由はまったく見あたらない。Windows 8に先行リリースしたので、テスト履歴もこれまでのIEで最高最良である、と。

Microsoftによると、IE10はIE9の20%以上速く、しかもそれはベンチマークではなく実用テストの結果である。Gavinによると、IE10は”Do Not Track”(トラッキング拒否)がデフォルトでonである。またプライバシーとセキュリティの機能もIE9より充実している。

IE10のWindows 7バージョンはWindows 8バージョンとほとんど同じであり、同じデザイン、同じJavaScript、同じレイアウトエンジンを使用し、ハードウェアアクセラレーションによるSVGやHTML4構文の実装も、Windows 8の場合と同じだ。

デベロッパ向けには、IE10ではIE9に比べ、“現代的なWebスタンダードのサポートが60%増えた”。たとえば、CSS3のTransitionとAnimations、レスポンシブなページレイアウトのサポートを改良(CSS3のGgrid、Positioned Floatなど)、HTML5のForm、WebSocket、HTML5のドラッグ&ドロップ、タッチ方式のWebアプリケーションのためのポインタイベント、など。

IE10のコマーシャルはタッチを強調

MicrosoftはIE10に関してとくに、タッチ対応を強調している。Windows 7が載ってる製品はタッチ画面のが少ないにもかかわらず、同社はテレビコマーシャルでもタッチを主役にしている。またMicrosoftが今日立ち上げたExploreTouch.ieは、広告と、キャンペーンに起用されたBlake Lewisの曲のあるHTML5によるサイトだ。このサイトを作ったのはFantasy Interactive、Clarity ConsultingとIEのチームが賛助した。例によってMicrosoftは、このサイトのメイキングやコードサンプルなど、楽屋裏情報も見せている。

以下が、そのテレビコマーシャルだ:


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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoft、Outlook.comの正式運用を開始。アナウンス後12時間で150万件のアカウントが誕生

6087.SUMMARY_Outlook_300x166_for outlook.com.jpg-550x0Microsoftが、これまでベータ版で提供してきたOutlook.com正式公開を行った。膨大な数にのぼるHotmail利用者も、Outlook.comに順次移行させる。Microsoftによる移行作業は夏までに完了する見込みだとのこと(システム側による移行ではなく、自分で移行することも可能)。全体の移行が完了した時点でHotmailのインタフェースを終了させることになる。Microsoftのプロダクトマネジメント部門シニアディレクターであるDharmesh Mehtaによると、Outlook.comが公開されて最初の12時間で、150万件のアカウントが作成されたとのこと。

「正式版を公開した最初の12時間で、150万のアカウントが作成されました。Hotmail利用者の方々に正式オープンした旨の通知を行う前に、多くの人びとがOutlook.comを使い始めてくれたのです。Outlook.comをご覧になって、気に入って頂いたのだと思います。多くの方にOutlook.comの利用を開始してもらい、大変嬉しく思っています」とのことだ。

上の発言でもわかるように、言及されている150万というのは新規利用者と、あるいはGmailなどの他サービスからの乗り換え組、そしてHotmailからのアップグレード組を含む数字だ。正式公開のニュースが流れて直ちに多数の利用者がアカウントを開設するという動きを見せたそうだ。すなわち、Hotmailの利用者が本当に新しいインタフェースを好んで移行するのかどうかは、まだ今後の動きをみなければなんとも言えないことになる。ただ、多くの人が新しいメールサービスの登場に注目していることは間違いないと言えそうだ。

HotmailからOutlook.comへの移行についてはこちらの記事(英文)もご参照頂きたい。

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(翻訳:Maeda, H)

WebKitの独占状態の是非

icon-goldOperaが自前のレンダリングエンジンの開発を停止し、オープンソースのWebKitエンジンを採用することにしたというニュースは各所から大いに注目を集めた。WebKitはGoogleのAndroid向けブラウザでも、またAppleのiOS向けブラウザにも採用されている。すなわちモバイル環境においては、既に事実上の標準の地位を獲得している。そしてさらにその触手をデスクトップ環境にも伸ばしつつあるところだ。既にChromeは、Tridentを採用しているMicrosoftのInternet Explorerや、MozillaのGeckoを採用しているFirefoxと比べてかなりのリードを獲得している。こうした状況の中で、頭に浮かぶ疑問がある。各社が独自のエンジンを開発して、競い合う環境の方が良いのか、それともWebKitを標準として各社に採用してもらう方向が望ましいものなのだろうか。

WebKitはオープンソースのプロジェクトであるので、誰でも開発に参加することができる。Google、Apple、Mozilla、Microsoft、Opera、あるいはブラウザ関連のさまざまな企業が参加しているので、標準的に採用される技術を即座に実装することができる。レンダリングエンジンが統一されることで、開発者の苦労は大いに低減されることとなる。レンダリングエンジンの違いによる細々とした表示スタイルの違いに頭を悩ませないで済むようになるわけだ。

Hacker Newsのスレッドにも多くのコメントが寄せられている。WebKitの開発に集中することで、多くのイノベーションが生み出されるのであれば、WebKit独占の状態は開発者にとっても利用者にとっても良いものとなる可能性があるという論調もみてとれる。

こうした独占に向けた流れに抵抗する筆頭はMozillaだ。これまで独自のGeckoエンジンおよび、その後継となるServoに多大なリソースを割いてきた。Mozilla CTOのBrendan Eich曰く、Mozillaの存在意義をかけて独占には抗っていくつもりだとのこと。また、MozillaエンジニアのSteve Finkは、モバイルかデスクトップかを問わず、WebKit独占を許してしまえばイノベーションが阻害され、少数企業によるプラットフォーム独占を惹起してしまうと述べている。そのような状況になれば、結局は各社利益を追求する迷惑な混乱に支配されてしまうことになるとも述べている。

しかしWebKitはオープンソースであるので、もし開発が滞ったりあるいは特定のステークホルダーが開発を政治的理由によって妨害するようなことがあれば、即時に開発の道筋を分岐させることができるので、独占による悪影響などはないと考える人もいる。

From Google's Chrome Launch Comic Book

但し、ウェブの世界ではこれまでにも「独占の弊害」を経験したことがある。IE5やIE6の時代(Netscapeが舞台を去り、そしてIEは6のリリースが2001年で、IE7が登場したのは2006年だった)には、完全に「停滞」状況になっていた。そうした状況の中、2004年あたりからはFirefoxがスタートし、そしてWebKitをベースとしたGoogleのChromeも2008年に登場してきたのだった。Chromeのミッションはレンダリングエンジンの標準化を試み、そしてJavaScriptの高速化を行うということだった。独占を崩す存在が登場してきたことにより、ウェブプラットフォームは現在のような応用環境に進化したのだとも言えるだろう。

「ウェブ」が今後戦っていく相手は?

Operaは、「独占状態は良くない」と主張しつつ、その言葉とは正反対にも見える道を歩むことになった。Operaもそれなりのシェアを獲得しているにも関わらず、「多くの開発者たちがWebKitのみをターゲットに開発をしているという現状があります」と述べ「先頭に立って独自の道を追求していくことにメリットは少ないと判断しました」とのこと。

Operaの選択した方向は興味深いものだ。結局のところ、ウェブ技術は各社のレンダリングエンジンの違いで競っていくのではないと判断したわけだ。今後の競合相手はネイティブアプリケーションであると判断したわけだ。Operaは「閉鎖的な“アプリケーション”に対抗して、オープンなウェブ技術を推し進めていくつもりだ」とのこと。その戦いを効率的・効果的に進めていくためにWebKitの採用を決めたということだ。

開発者と利用者の着眼点の違い

理想を言えば、さまざまなベンダーが「標準」に則った開発を行って、レンダリングエンジンの違いによる差異などを意識しないで済むというのが良いのだろう。同じコードは同じように表示されるべきだろう。しかし、「標準」を意識しつつも実装により細かな違いがあり、同じような表示を実現するなどということはできなかった。

但し、たいていの利用者はレンダリング方式の違いによるウェブページやウェブアプリケーションの見え方にはほとんど意識を払わなかった。利用者は利用可能な機能(ブックマーク、プラグイン、タブなど)によってブラウザを選択していただけなのだ。そうした機能の多寡や使い勝手によって、利用者はブラウザを切り替えてきたのだ(もちろんあまりに速度が遅いものなどは排除されることになる)。

Mozillaは、魅力的な機能を提供していくためには、ブラウザ全体を自ら手がけていく必要があると述べている。今やWebKitに対する唯一の対抗勢力と言っても良い存在になったMozilla陣営は、自らの言葉を証明するために、利用者にとって真に魅力的な機能を提供していく必要がある。

個人的には、「標準」に基づいた競合がある方がイノベーションサイクルも早まると考えている。ウェブ技術というのは、まだひとつのエンジンに集約してしまうような枯れた技術ではないと思うのだ。レンダリングエンジンが複数存在すれば、余計な作業も増えるだろうし、迷惑に感じられることすらあるかもしれない。しかし将来的にきっと実を結ぶ、「若い時の苦労」になると思うのだ。

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(翻訳:Maeda, H)

MicrosoftがXboxの販促に大規模注力, 社員数150名のビデオ制作スタジオを新設

【抄訳】

今日(米国時間2/11)のD: Dive Into MediaカンファレンスでMicrosoftの担当者たちが、同社の新しいビデオプロダクションスタジオの詳細を語った。それは視聴者に(というかXboxのユーザに)、これまでにない高いレベルの対話性を提供することを目的としている。そのL.A. StudiosのCorporate VP Nancy Tellemによると、そこにはすでに150名の社員がおり、同社のゲームコンソールXboxのためのまったく新しいタイプのコンテンツの制作に、総力を挙げて取り組んでいる。

Tellem自身もMicrosoftに入社したのは昨年で、同社の新しいコンテンツ努力を推進する部門の長として招かれた。そのTellemによると、通常の放送局タイプのビデオコンテンツに加えて同社は、対話的なコンテンツに重点投資をしていく。それはXbox Kinectなどの製品の今後のユースケース、ひいては顧客層を大きく拡大するために、対話性の濃い、新しいタイプのビデオコンテンツやゲームなどを提供していくためだ。“われわれは、これから、非常に高いレベルの対話性のあるコンテンツを作っていくという、過去に例のない立場にある”、とTellemは語った。

また、MicrosoftのInteractive Entertainment担当SVP Yusuf Mehdiによると、これまでに世界中で売れたコンソール(Xbox本機)の台数は7500万、XboxLiveの会員数は4600万である。ユーザが各月にXboxで過ごす時間は平均87時間、そしてその大半が、ゲームではないコンテンツだ。ユーザは男性が多いが、それでも38%は女性、そして全ユーザの51%が子持ちだ。今後ともコンテンツの提供はXbox Liveサービスから行っていくが、一般販売のための広告も打つ予定という。

【後略(ケーブルテレビはビデオコンテンツのチャネルとしない;Xbox 720に関してはノーコメント)】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoft CFO曰く、Bingは戦略的に重要な資産、「当社の全サービスを良くする」

今日(米国時間2/13)午前、Morgan Stanley Media & TelecomカンファレンスでMicrosoftのCEO、Peter Kleinは、同社にとってのBingの重要性について質問された。Kleinによると、Microsoftが独自の検索エンジンを立ち上げたのは「膨大なビジネスチャンス」があると考えたからであり、それは単独の検索エンジンとしてだけでなく同社の他部門の改善にも役立つからだ。

Bingは、「われわれの全サービスをより良くする機械学習エンジン」だと彼は言う。検索エンジンとしてBingは、当然同時に膨大なデータを収集しそれをMicrosoftは別のところで活用する。しかしKleinは、具体的な利用形態については詳しく語らなかった。

Kleinは、Bingを運用することによってMicrosoftはクラウドの規模拡大や、商用クラウドサービスの構築が可能になったことも指摘した。AzureやMicrosoftの他のクラウドベースツールについての具体的な話はなかったが、Bingを運用することによって、同社が近代的なクラウドベース運用について多くを学んだと考えるのは妥当だろう。

彼はまた、Bingが扱う大量のデータによって、同社がビッグデータサービスを市場に提供する際、有利な立場を得たと信じている。

Kleinから見て、今もBingは「実に有望なビジネスチャンス」でもある。MicrosoftはBingの運用におけるコスト管理を著しく向上させ、財務実績は前年より改善されたと、彼はMorgan Stanleyのカンファレンスに参加した聴衆の投資家たちに言った。

時間と共にBingは「[Microsoftの] あらゆるデバイスやプラットフォームにとって不可欠な要素になる」とKleinは考えている。MicrosoftはBingを売却したい、あるいはスピンオフさせたがっているという噂が時折出てくるが(実際Microsoftは過去にそれを考えたことがある)、Kleinの今日のコメントを踏まえると、近い将来にそれが起きることはなさそうだ。

Kleinが、Microsoftエコシステム全般にわたるさらに密接な統合を考えているのは、同社が2011年に買収したSkypeだ。彼はSkypeの統合には特別な関心がある様子だった。

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(翻訳:Nob Takahashi)

「大きな問題に取り組むのが好きだから馬サイズのアヒルと戦う」―ビル・ゲイツ、Redditの「なんでも聞いてね」セッションでたくさんの質問に答える

reddit

Microsoftの共同ファウンダーで現在はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の共同会長を務めるビル・ゲイツRedditで初のAMAセッションを行った〔AMA=Ask Me Anything=「なんでも聞いてね」 は有名人が登場してリアルタイムで質問に答えるRedditの企画〕。

ゲイツは30以上の質問を驚くほど巧みにさばいた。また答えているのが本人であることをいくつかの洒落た方法でアピールした(左の写真、下のビデオ参照)。

ちなみにゲイツのお気に入りのコンピュータはMicrosoft Surface Proで彼はやっと1週間前にこれを手に入れたという。ゲイツはまたWindows 8はWindows 7より良いと信じている。後のものは当然良いのだろう。

ディスプレイは何を使っているのかと聞かれてゲイツは「Windows 8用のホワイトボード・サイズのPerceptive Pixelディスプレイを使っている。そのうち価格も下がって普及するはず」と答えた。〔Perceptiveは昨年Microsoftが買収した高性能マルチタッチスクリーンのメーカー。その後でゲイツは巨大な80インチのタッチスクリーンの前に立つ自分の写真を送ってきた

驚いたことにに、ゲイツはBingが検索エンジンとしてもっとも優れたプロダクトだと信じているという。本気かね?

将来のビジョンについては「ロボット、モバイルその他、いたるところに存在するディスプレイ、音声による対話がコンピューティングを根本的に変えるだろう」と述べた。「コンピュータに視聴覚が備わり、人間の言うことを理解し、手書き文字でも読めるようになったらコンピュータとの関係は全く変わってくる」とゲイツは書いている。

予想どおり、Redditユーザーの一人がスティーブ・ジョブズとの関係について質問した。

われわれは互いに尊敬しあっていた。われわれの最大の共同事業はMacだった。Macアプリの開発にMicrosoftはAppleよりも多くの人員を充てた。その後もスティーブとは定期的に会っていた。残念にもスティーブが亡くなる数ヶ月前のある午後に会ったのが最後だった。

ソフトウェアの天才は「今は望むほどの時間プログラミングができない」と残念がっている。「私はC、C#、それにBasicでも少しプログラミングしている。新しい言語を使ってみると、プログラミングを簡単にする方向に進歩がないのは驚くほどだ。高校生の大半にプログラミングの経験をさせるようにしたらすばらしいことだろう」

ゲイツがこれまででいちばん興奮を感じたプロダクトは、意外にも、結局陽の目を見なかったWinFSだという。一言でいえば、WinFSは高機能なクラウド・ストレージ・システム上のリレーショナルDBだった。当初はVistaと同時に出荷される予定だったが、ゲイツによれば「時代に先駆けて過ぎて」いたのだという。

インターネットのオープン性についてはこう答えている。

Q: オープンで自由なインターネットに反する動き(たとえばSOPA法案)などが過去、現在、そしておそらく将来も絶えない。これについての考えは?

この問題には2つの側面がある。一つはソフトウェアの有料対無料という問題だ。インターネットには多数の無料ソフトがあり、また多数の商用有料ソフトがある。面白い傾向は、有料と無料のハイブリッド・モデルが生まれたことだ。商用ソフトでも無料のトライアル版を作ることが多くなっている。逆にオープン・ソフトの多くも有料のサービスを提供している。

もう一つの問題は実名対匿名の関係の緊張だ。これも両方が生き残るだろう。ある場合には匿名が必要だろうし、別の場合には実名の方が効果的だ。本人認証の分野でも残念ながら進歩はごく少ない。しかしこれもやがて改善されるだろう。

大富豪のゲイツだが、彼を楽しくさせるのはほとんど金のかからないものだという。ゲイツのお気に入りはチーズバーガー、子供たちを助けること、オープン・コースウェアを受講することなどだそうだ。

〔日本版〕下はRedditのAMAセッションを予告するビデオ。

Q1:財布にいくら入ってる?
A:100ドル。
Q2:100万ドルちょうだい!
A:あなたが貧しい国で子供にワクチンの接種をさせようとしている両親なら私の財団からの資金を受け取れます。
Q3:アヒルのサイズの馬100頭と馬のサイズのアヒル1羽なら、戦う相手に選ぶのはどっち? 
A:私は大きな問題に取り組むのが好きだから馬のサイズのアヒルかな? 

全文はこちら。.

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+

Microsoft SkyDrive上の文書はOffice Web Appsのアカウントのない人でも見たり編集できる

SkyDrive

Microsoft Office Web AppsのSkyDriveの新たな機能により、これからは文書の共有や編集を、Microsoftのアカウントのない者でもできるようになる。

ユーザが自分のアカウントからエディットリンクを共有すると、それをもらった人も文書を編集できるようになる。

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もちろんユーザは、その文書を見たり編集したりできる人を、アカウントがあってログインしている人に限定することはできる。でも、誰もが気軽に見たり編集できる機能は、Officeのサービスの敷居を大きく下げる。

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Google Docsにも、この機能を望みたい*。今のように正規のアカウントとログインを必要とする方式は、文書のもっと広い共有のための障害になりかねない。〔*: publicを指定した文書では、できるはず。〕

最後に雑談を。Microsoftは、SkyDrive上で10億の文書(〜ドキュメント)が共有されている、と誇示している。でも、文書が共有されるとコピーが一つ作られるのだから、本当の部数にはならない。今Microsoftに、実際の部数を問い合わせているところだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GoogleはGmailユーザのメールを読んでいる–Microsoftのマーケティングが警告

Scroogled

Microsoftさん、2004年さんからお電話よ。同社は今、プライバシー侵害をめぐる昔の言い争いを蒸し返そうとしている。このところなぜか元気の良すぎるMicrosoftは、Googleの検索ショッピングやメールを激しく攻撃している。とくにメールに関しては、同社の悪名高いScroogledサイト*で派手に取りあげている。そこで主張されているGoogleの罪状は、彼らはあなたのGmailを読んで広告のターゲティングに利用している、というものだ。〔*: scroogle, Googleをscrew(やっつける)するという意味の新造語…screw google。〕

この件のあほらしさを理解するためには、ちょっと2004年にタイムスリップする必要がある。その年の初めに、Googleが近く立ち上げるWebメールサービスをめぐる大論争がメディア上で燃え上がった。それは“厄介なプライバシー問題”を抱えるとされ(出典: PCMag)、ジャーナリストやブロガーだけでなく、World Privacy ForumやElectronic Privacy Information Centerなどのプライバシー擁護団体も議論に加わった。それらの中には、“Google Mailは悪である!”という、宣告もあった。

そのときは、Googleがユーザのメールを読んでそのユーザへのターゲット広告に利用している、という嫌疑があった。Google.comが何らかの方法でユーザの個人的な私信を覗いている、というのだ。そうだとしても、それをするのはボットであり、指にチートスの食べかすが付いてる、むさくるしいIT人間ではない、という事実はどこかへ置き忘れられ†、誰もがプライバシーの侵害を怒った。そのデータはどこに保存されるのだ? いつまで? 誰がそれを共有するのか? [†原注: Microsoft Exchangeのメールは、本物の人間が読んでいた。私の昔の職場がそれだったから、そう、この私もチートスを食べながらユーザのメールを読んだわ。]

それは、当時としては意味のある議論だった。そのとき私たちは、プライバシーを代償にしてサービスを得る時代の入り口に立っていた。Facebookが、学生のためのサイトからプライベートなネットワークサービスへと離陸しようとしていた。まだ当時は、ニューズフィードのトラブルもなく、モバイルもない。“共有する!”ボタンなど、どこにもない。ビジネスの、新しいやり方が始まろうとしていたし、それは全面的な検証に値した。

数年たつと、誰も自分のプライバシーを心配していないことが、明らかになった(お怒りのコメントをどうぞ)。もちろん、心配する人もいた。ものすごく、深刻に。でも、数百万、数十億というユーザ数のレベルでは、大多数の人びとがGmailのプライバシー問題に無関心だった。Facebookに関してもそうだ。今では10億人もの人たちがFacebookに、自分のデータを広告主に売ることを許している。

Googleの場合は、Gmailがこれまでのメールソフトやメールサービスよりも優れていたから、ユーザはプライバシーのことなど忘れてしまった。メールがすごく便利になるなら、プライバシーを売ったっていいわ、という次第。

Gmailのプライバシー論争は下火になり、そしてむしろ、Gmailの犠牲者になったのはMicrosoftやYahooのメールだった。Gmailの今のユーザ数は4億2500万あまりで、Hotmail(約3億6000万)やYahoo Mailより多い。Outlook.comの2500万あまりのユーザのうち、昨年の立ち上げ時にGmailから移ってきた人はその1/3にすぎず、そのうち今何人が残っているかは分からない。Outlook.comでMicrosoftは、Gmailと互角に戦える足場を持ったわけだが、巧妙なマーケティング戦略により、プライバシー問題の再燃は起きなかった。

むしろそれは、土俵際の悪あがきに近い。

あるいは、溺れる者は藁をもつかむ、とも言う。

Microsoftは、ユーザがターゲット広告に関してプライバシーを気にしないのは、それを知らないからだ、と主張するかもしれない。“無知こそ幸せなり”だ。でも、ユーザはそのことを知るべきだ、と信ずるMicrosoftは、Gmailユーザを教育しようとする。

Scroogledはこう述べる:

あなたのメールは、あなたにしか用のないもの。しかしGoogleはそれを、自分たちのビジネスにしている。あなたがGmailのユーザでない場合でも、Gmailへ送られたあなたの個人的なメールを調べて、その内容を広告を売るために利用する。

企業による個人情報の扱いを人びとが気にしない本当の理由は、GoogleでもFacebookでも、ほかのどこかでも、実害が起きないからだ。Facebookへの投稿から、クビになったり逮捕されたりする人がたまにいるが、それはFacebookがあろうとなかろうと、いずれクビや逮捕につながる理由からだ。Facebookが守秘をしなかったから、ではない。

でも、MicrosoftがScroogledで嬉々として指摘しているように、個人情報の無断利用の最悪のケースは、それによって精度が向上するターゲット広告だ。

それはまさに、恐怖だ。

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Appleの128GB iPad、販売開始―来週リリース予定のMicrosoftのSurface Proに先制パンチ

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Appleは128GB iPadの販売を開始した〔2/6現在日本サイトではWiFiモデルのみ2-3営業日で出荷。WiFi+無線モデルは掲載されているもののまだ予約を受け付ていない〕。

これはRetinaディスプレイを装備する第4世代のiPadシリーズへの新たな機種の投入となる。9.7インチのフルサイズiPadとしてはこのストレージ容量の拡大で7.9インチの大人気の弟分との違いを際立たせる必要があったのだろう。しかしもっと重要なのは、近く発売となるMicrosoftのSurface Proとの能力差を少しでも埋めたいという狙いに違いない。

Surface ProがiPadのライバルだって? とんでもない! と考える読者も多いだろう。Surface Proはあくまでコンピュータだ。Windows 8そのものを搭載し、OfficeやPhotoshop、その他なんであれWindowsアプリが走る。CPUは十分強力なIntel Core i5だ。こちらもストレージは最大128GBが予定されている。フルサイズのUSBを含む各種入出力ポート、手書き用のスタイラスも用意される。

しかしiPadは発売の当初から現在まで既存のWindowsデバイスと直接のライバル関係だったことは一度もない。逆にSurface Proが得意だと主張している各種のエンタープライズ業務にもiPadは進出している。明らかにiPadのビジネス・ユーザーはWindowsアプリのサポートを必要としていない―必要としているのはApple流の新しい仕事のやり方だ。

しかしエンタープライズの膨大な既存システムは容易なことでは消えてなくならない。こうしたレガシー・システムに縛られているユーザーにとってはSurface Proには多くの魅力があることは間違いない。しかしイノベーションに熱心なグループはやはりiPadを選びたいと思うだろう。こうした層にはストレージ容量が倍増されたiPadは最適だ。価格も安くはないが、Surface Proクラスを上回るほどではない。しかもSurface Proに較べてバッテリー駆動時間は2倍だし、Surface Proは実際にユーザーが利用できるストレージ容量が少ないという問題を抱えている。

128GB iPadはSurface Proより約1週間早くリリースされた。このタイミングは多分に偶然だろうが、いずれにせAppleはMicrosoftの新製品をさほど恐れている様子はない。ただストレージ容量の点だけはエンタープライズ向け教育向けとしてSurface Proに対抗して拡大する必要を感じたかと思える(スペックとしては対等、現実の容量としてProを上回ることに成功している)。MicrosoftはSurface ProによってAppleのエンタープライズ市場への進出を防ぐ防波堤にしたいところだろうが、128GBモデルという先制パンチを受けて、果たして期待された役割を果たせるのか注目だ。.

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MicrosoftはWindows 8タブレットのアプリのエコシステムの確立を急げ

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私はWindowsユーザーだが、外出するときにはMacBook ProかiPadを使っている。Windows環境にもこれらに匹敵する優秀なモバイル・デバイスがぜひとも欲しいと考えている。しかし発表からかれこれ3ヶ月になるが、いまだWindows 8タブレットは買いたくなる理由に乏しい。

満足なキーボードもついていない11インチのデバイスでOfficeを動かしたいユーザーはどれくらいいるだろう?

Microsoftの代弁者はOfficeが作動することをWindows 8タブレットの最大のセールスポイントとして挙げる。それは事実だ。そしてたぶん唯一の〔Windows 8タブレットを買うべき〕理由だろう。 しかし問題は本当にOfficeが必要なのかどうかだ。

考えつくかぎりのありとあらゆる機能を満載したワープロや表計算ソフトを満足なキーボードもついていない11インチのデバイスで動かしたいユーザーはどれくらいいるだろう? なるほど、そういうユーザーもいるかもしれないが、それならSurfaceタブレットよりウルトラブックの方がずっと目的にかなっている。

何度も繰り返されてきた注意だが、Surface RTにはWindoes RTが搭載されている。Windows RTはARMプロセッサ向けに書きなおされたOSで、標準の〔Intelプロセッサ向け〕WindowsソフトはSurface RTでは動作しない。ChromeもSpotifyもその他あらゆる標準Windowsプログラムがインストールできないのだ。さらに悪いことに、Microsoftのストアに並んでいるアプリはiOS/Androidのストアに較べてガラクタばかりだ(TechCrunchアプリもあるが、これもひどい)。Surfaceの信者でさえRedditでアプリに不満を漏らしているほどだ。

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一言でいえば、MicrosoftはSurface RTにエコシステムを与えず、立ち腐れさせようとしている。

「ウェブにアクセスできるだけでは十分ではない。どんなサイトもアプリ化してホームページに追加できなくてはならない」とMicrosoftは主張した。

2011年にRIM(現BlackBerry)がPlaybookをアプリなしでリリースして失敗したことをみてもわかるとおり、それは事実だ。1年後にBlackBerryがAndroidアプリが簡単に移殖できるようにしたことでやっとPlaybookに勢いがついてきた。BlackBerry 10 OSのリリースに際してはアプリの充実を図るために最大の努力が払われた。先週のローンチ時点ですでに7万のアプリが用意されている。Windows RTはリリース以来3月もたっているのに、依然アプリの数で負けている

BlackBerryがBB10のアプリを揃えるために力を入れてきたことはよく知られている。BBは人気アプリをBB10のためにポーティングしてもらうためデベロッパーに金を払ったと聞いている(その点ではMicrosoftも似たようなことをしているが)。またBBは社内で大量のリソースを振り向けてアプリの移殖を行ったようだ。BB10のエコシステムを成立させるためにBlackBerryはなりふりかまわずあらゆる努力をしているが、現代のモバイル・システムの価値はそのアプリの質と量によって決まるのだから当然のことだ。

私はSurface RTを好きになろうと務めてきた。しかしSurface RTのオーナーは今後も相当期間、劣悪なエコシステムに苦しめられることになりそうだ。Microsoftには自分の脚を撃つような真似を止めて早くRTオーナーの苦痛を軽減してもらいたい。

Surface RTのオーナーは今後も相当期間、劣悪なエコシステムに苦しめられることになりそうだ。

Surface RTのユーザーは本来のアプリの不足からジェイルブレーク(脱獄)を余儀なくされている。現在オープンソースのアプリをWindows RTにポーティングするためのコミュニティーもできている。しかし言うまでもなくそうしたアプリは公式のWindows Storeには登載されない。それにポーティングされるアプリはWindows 7以前の伝統的なアプリでタッチ・アプリではない。大部分のユーザーはそんな手間をかけるのに飽きてしまうだろう。

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iPadはハードウェアの能力だけであのような偉大なデバイスになったのではない。iPadを通じて新しいコンテンツにアクセスする道が大きく開かれたことが大きい。他のプレイヤーも自らの保有するコンテンツのポータルとして独自のデバイスを開発することのメリットに気づいた。最初の例はB&NのNook Colorだろう。その後、Amazon、 Google、BlackBerryが続いた。しかしMicrosoftは頑なにそれに続こうとしない。

Surface RTは、いやそれを言うならSurface Proも、ハードウェアとしては画期的だ。フルサイズのUSBポート、microSDスロットを備え、Proの場合にはWacomのファンタスティックなアクティブ・デジタイザー・スクリーンを装備している。未来からのマシンだ。しかしハードウェアの先へ進むと一挙に事情が変わる。特にWindowsRTの場合ARM専用マシンという制限からあらゆる魅力が失せてしまう。

Microsoftは消費者向けエレクトロニクス市場が新しいルールで動いていることをいまだに理解できていない。ウェブにアクセスできるだけではない十分でないのと同時に、ハードウェアだけでも十分ではないのだ。優秀なアプリを待って始めて消費者を満足させる体験を完結できる。それがiPadを始めAppleのすべてのモバイルデバイスがあのような成功を収めた理由だ。Androidがモバイル戦争の多くの局面で勝利しつつあるのも同じ理由だ。Microsoftがアプリのエコシステムを確立できないかぎりARMベースのSurface RTの行く手は明るくない。

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古いIEでも無事動くか?–Webサイトの互換性テストサービスmodern.IEをMicrosoftが立ち上げ

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Microsoft自身がいくら変えたいと思っていても、いまだに古いバージョンのInternet Explorerを使っている人は多い。そのためデベロッパは、自分のWebアプリケーションが、たとえばIE7やIE8で無事に動くよう、テストや手直しに余計な時間をかけなければならない。IE9とIE10は、Microsoftが懸命にHTML5やCSS3などの標準規格の忠実な実装に努力した。そして、今や古いIEの問題を自覚した同社は、“デベロッパが自分のサイトをInternet Explorerとそのほかの現代的ブラウザで確実に動くようにするための努力を容易にするために”、modern.IEと呼ばれるツール的サイトを今日(米国時間1/31)ローンチした。

MicrosoftのInternet Explorer担当ゼネラルマネージャRyan Gavinが昨日ぼくに語ったところによると、modern.IEにはいくつかの無料のツールとリソースが含まれていて、たとえばスキャナーは、サイトを現代的なブラウザやレガシーのIEに対して非互換にしかねない、よくある問題をチェックする。そのスキャナーは、デベロッパが使ったライブラリやフレームワークにある、よくありがちな問題を、個々のページごとにチェックする。そして対策を推奨し、またそのフレームワークのどのバージョンなら互換性が高いかをアドバイスする。たとえばjQueryならどれ、とか。

Microsoftは、この、ライブラリやフレームワークの問題が意外と大きいことを知った。上位5000の繁盛サイトの40%以上が、古いバージョンのフレームワークやライブラリを使っていて、そのことがIEの最新バージョンやそのほかの現代的ブラウザとの非互換性を招いている。また、これら5000のサイトの20%はベンダ固有のプリフィクス(-moz、-ms、-webkit、などなど)を使っていて、それも非互換性の原因になっている。これらのサイトの大半がブラウザ検出を用いており、しばしば、IE9やIE10と非互換なサイトをサーブしている。彼らは、IEのこれら新バージョンがもはや、レガシーのブラウザとは呼べないものであることを、認識していない。

また、スキャナーにかけることによってばれて欲しくないサイト固有の問題を抱えるところでは、Microsoftとデベロッパが直接協力して対策に当たる。

modern.IEにはこのほか、jQuery Foundationの理事長Dave MethvinとMicrosoftのテクニカルエヴァンジェリストRey Bangoが書いた20のベストプラクティスチップや、MicrosoftがBrowserstackとの提携で来年全デベロッパに提供する3か月の無料サービスの告知などがあり、デベロッパたちはここで、自分のサイトが多種類のブラウザとオペレーティングシステムの上でどう見えるかを、容易に知ることができる。modern.IEのユーザ登録は、Facebookの認証情報でできる。また、BrowserstackのChrome用とFirefox用のプラグインもあり、それを使うとMacやWindows、Linuxなどの仮想マシンイメージに対してサイトを手早くテストできる。WindowsとIEの古いバージョンでのテストを、デベロッパがローカルに行うことも可能だ。なおBrowserstackはとても便利なツールであり、その上で、ブラウザの種類とオペレーティングシステムの種類、そのどんな組み合わせでもテストできる。

Gavinによれば、modern.IEの中心的な目的は、あくまでもレガシーブラウザに対するテストだ。IE9よりも前のいわゆるレガシーバージョンのInternet Explorerが、デベロッパを苦しめたことを、彼も認めている。Gavin は今日のブログ記事で、“modern.IEは、デベロッパがテストに費やす時間を少なくし、すばらしいサイトの構築に多くの時間を割けるようにするための、弊社のこれからの継続的取り組みの、一環にすぎない”、と述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoft Office 2013のWindows優先は裏目に–サードパーティの機会が増大

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Microsoftが、最新版のMicrosoft Office 2013をSurfaceタブレットのWindows RTにしか提供しないので、多くのCIOたちが困っている。この、クロスプラットホーム性を欠く姿勢によりMicrosoftは、より明確で完全なモバイルのワークフローを提供するサードパーティのベンダたちに、大きなチャンスを与えている。

ThinkJarのファウンダでアナリストのEsteban Kolskyの説では、OutlookはMicrosoftの最有力アプリケーションの一つだが、同社はSurfaceやそのほかのモバイル製品向けにそれをリリースする気配がない。それどころかMicrosoftは、Office365をクラウドに置いて事足れりとしている。しかしそれは、現状では、Microsoft Officeのデスクトップバージョンの20〜30%の機能しかない。Office365については、本誌のSarah Perezが、昨日(米国時間1/30)記事を書いている

またForrester ResearchのアナリストPhil Karcherによると、MicrosoftはWindows RTとWindows Phone向けにモバイルアプリの完全なスイートを提供しているが、iOSとAndroid製品向けにはLyncとOneNoteがあるだけだ。SharePoint 2013へのアクセスはiOSとAndroidでも良くなったが、かんじんの、メインのオフィス生産性アプリケーション(Word、Excel、PowerPoint)のモバイルバージョンがない。Microsoftがほかのプラットホームに城を明け渡すのは時間の問題、とKarcherは見ている。

しかしKarcherはまた同時に、Microsoftと競合するサードパーティたちにも問題がある、と見ている:

Google Driveのエディティング機能はAndroidデバイスでは多いがiOSでは少ない。iOSにエディティング機能が導入されたのは、やっと昨年の9月だが、それはdocsだけでスプレッドシートやプレゼンテーションにはない。IBMのDocsはiOSもAndroidもネイティブアプリがあり、機能も完全に揃っている。たとえば、これらのモバイルデバイスからコラボレーションによるドキュメントの編集ができる。しかしユーザの大きな不満は、ドキュメントの形式が独特でほかのアプリとの互換性がないことだ。オフィス生産性全般に関しては、GoogleとAndroidがモバイルの人気プラットホーム上にネイティブアプリを提供して、Microsoftの牙城を脅かしている。しかしモバイルのサポートでいちばん早かったというアドバンテージは、長くは保(も)たないと私は思う。

ZohoのエヴァンジェリストRaju Vegesnaは、Officeのそのような現状は、Windows Phoneの貧しいマーケットシェアも影響している、と言っている。とりわけ、デスクトップの重要性が薄れたことが大きい:

Windows Phoneのシェアは5%足らずを維持し、OfficeのiOSとAndroidバージョンはない。当然ユーザは、それに代わるものを求める。忘れてならないのは、モバイルにおけるシェアの方が、将来的にはデスクトップのマーケットシェアよりも重要であることだ。インドなどの国では、デスクトップユーザの10倍のモバイルユーザがいる。

Office365がもっと地位を固めれば、それが一つの節目になるだろう。今のOfficeが抱える最大の問題が、ポータビリティ(可搬性)だ。これからは、どんなドキュメントでも、デバイスやOSの種類を問わずふつうに開けて、モバイルを含めいつでもどこでも、シームレスなワークフローが得られないと、仕事にならない。

でも、そのシームレスなワークフローを一社だけでまかなっているところはない。今は、複数のベンダのいろんなツールを組み合わせて使わざるをえない。たとえばIBM DominosはIBM Travelerを統合してメールをモバイルにプッシュしている。IBM Docsは OpenSocialを利用してクリーンなWeb体験を提供している。しかし、少なくとも私が知っているIBMの顧客は、SAPのAfariaでモバイルデバイスを管理している。自分なり(〜自社なり)のワークフローを確保するために行うアプリの混成的な編成が、これからますます、このように多様化するのだろう。

〔参考記事。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoft、一般ユーザー向けクラウド版Office、 365 Home Premiumをリリース―5年遅れでやっとGoogleドライブに反撃開始?

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2006年にGoogleは後にGoogleドキュメントとなるサービスを初めて公開した。GoogleドキュメントはさらにGoogleドライブとなった。そして2013年に入ってやっとMicrosoftはGoogleの動きに反撃する決心をしたようだ〔*原注〕。

今日(米国時間1/29)、MicrosoftはOfficeの一般ユーザー向けオンライン版の最上位バージョン、Office 365 Home Premiumの再リリースを発表した。このサービスは(そうサービスだ)、 最大5台までのデバイスをサポートし、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteその他主要なOfficeアプリケーションがすべて利用できる。   また追加料金なしでSky Driveのオンライン・ストレージが20GB、 Skype通話が毎月60分まで利用できる。

このサービスはWindowsパソコン、タブレット、Macで利用でき、料金はアメリカでは年額99.99だ(月額8.34相当)。Office 365の大学版(学生、教職員向け)は4年間の契約で79.99ドルに割引される。

一回払いの箱入りソフトウェアも依然として購入可能だが、Microsoftはこのオプションをあまり宣伝する気はないようだ。Office Home/Student2013、 Office Home/ Business 2013、Office Professional 2013はそれぞれ伝統的箱入りソフトウェアとしても提供されるという。企業向けOffice365の最新版は2月27日にリリース予定。

Microsoftの公式ブログでCEOのスティーブ・バルマーは「今回一般消費者が初めてMicrosoft Officeを利用料金定期払い形式で利用できるようになった。これはわれわれのソフトウェア・ビジネスの根本的な変化に対応するものだ。Microsoftは今後、ソフトウェア事業者からデバイス・メーカー、サービス事業者へと変貌する」と宣言している。

変化だって? 変化が始まったことは5年(あるいはそれ以上)も前に誰の目にも明らかになっていたのではないだろうか?

バルマーは「現在Offeceを〔デスクトップで〕利用している10億人以上のユーザーの過半数はOffice 365サービスに移行するだろう」と主張するが、これは楽観的に過ぎる予測だ。もちろん企業向けソフトの世界ではMicrosoftは巨大な存在であり続けるだろう。しかし一般消費者、個人ユーザーは何年も前からクラウド上の軽量なアプリの利用へとシフトしている。Microsoftの次世代ユーザーとなる30歳以下の若い層はオンラインやモバイル・ネットワークで提供されるGoogleのアプリ(Googleドライブ)やAppleのiWorkで十分以上に満足している。Googleはたまたま(ではないかもしれないが)、昨日、iOS版のモバイルGoogleドライブのアップデートを発表した。これにはQuickOfficeが新たにサポートされている。Googleが昨年買収したQuckOfficeは従来のGoogleドライブ・アプリでは機能が不足する場合に有力なOffice代替機能を提供する。

一方でタブレットをメインのデバイスとして使うユーザー層は年齢を問わず、そもそもMicrosoft Officeを買おうと考えなくなっている。というのもタブレット版のMicrosoft Officeは存在しないからだ。OfficeのiPad/Androidネーティブなソフトウェアはまだリリースされていない(開発中だという情報はあるものの、一般公開はまだされていない。もちろんブラウザ版は存在する)。AndroidないしiOS版のデバイスのネーティブ・アプリが存在しない中で利用料金定期払い形式のサービスへの移行を急ぐのはリスクの高い戦略だと私は思う。Windows 8のセールスの出足が鈍い現状ではますますその感を深くする。

Microsoftはあらゆるプラットフォーム向けのネーティブなOfficeアプリの開発を急ぐべきだ。Google、Apple、に加えてCloudOnのようなスタートアップまで主要なすべてのモバイル・デバイスで動作するOffice代替アプリを提供し始めている中、 Microsoftがユーザーに有料のOffice-as-a-service(OaaS?)への転換を要求するのは容易ではあるまい。

〔原注〕* Officeの既存のウェブアプリはGoogleドライブのライバルとして勘定に入らないと思う。この記事を公開したところ賛否の反応が大きかったので、私の考えを補足しておきたい。まず私がOfficeとGoogleドライブやiWorkを比較した理由を簡単に説明しよう。Googleドライブは各種ブラウザとモバイル・プラットフォーム(iOS/Androidのネーティブ・アプリ)で単一のプロダクトとして作動する。iWorkはデスクトップ・ソフトウェアとiOSネーティブ・アプリとして作動する。しかしOffice 365は、その名前でも分かるとおり、デスクトップも含めて生産性ツールとしてのあらゆる機能をサポートすることを目的としている。しかしOffice Web Appsは365とは別系統の軽量プロダクトという扱いだった(Officeを非Windows環境で動作させるためにブラウザを経由させた)。Microsoftはこの軽量バージョンのOfficeをデスクトップとWindows 8タブレット以外のプラットフォームでもネーティブ・アプリとしてサポートすべきだった。365が一日も早く他のプラットフォームでもサポートされてこの状況が改善されることが望まれる。Office Web Appsは単なるGoogleドキュンントの後追いだった。今回のOffice 365のリリースで、初めてMicrosoftはSkypeやSkyDriveとの連携という独自性を打ち出すことに成功した。これでライバルに対するの競争力が大きく増したと思う。

〔Office 365 Home PremiumはMicrosoftの日本版サイトでは未発表。アメリカサイトのプレビューページ〕〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+

Windows 8フルバージョン搭載のMicrosoft Surface Proが2月に北米市場に登場へ―64GB版が899ドルから

SurfaceProRight

いくらなんでもそろそろ出てもいい頃だった。

MicrosoftはSurfaceシリーズを去年の6月18日に発表した。8ヶ月も待たせた後、Microsoftはフル機能のWindows 8を搭載したIntel版のSurfaceProをアメリカ、カナダ市場で2月9日から発売すると発表した。

Surface ProはSurfaceシリーズのトップ・オブ・ザ・ライン・モデルだ。499ドルでWindows RTを搭載した従来のモデルとは異なり、899ドルの Surface Proは標準のWindows 8が走る。ウルトラブックに搭載されていてもおかしくないハイパワーのCPUだ。簡単にいえば、Surface Proは「まとも」なマシンである。

MicrosoftはSurface ProをWindows 8タブレットの標準機として開発した。Microsoftとしては止むを得ない選択だったといえるだろう。HP、Dellなどの昔ながらのパートナーにすべてを委ねるのがイヤならデバイスを内製する他ない。ライバルのWin8タブレットの出来栄えを見ると、内製は正しい選択だったと分かる。

Microsftが昨年夏にロサンゼルスでSurfaceを発表したとき一番ショックを受けたのはWindowsマシンのOEMメーカーだっただろう。Microsoftが一夜にしてパートナーから深刻なライバルに変貌してしまったからだ。

もっともSurfaceがWindows 8タブレット市場を支配していると言ってはいいすぎだろう。HPとSamsungもまだ死んだわけではない。爆発的な売れ行きではないにせよ、SurfaceはWindows 8タブレットの存在に注意を集めるには役だった。Surface Proのローンチでいよいよパーティーが始まりそうだ。

しかし私自身はSurface RTのファンではない。3ヶ月前にレビューしたが、アプリの数が少なすぎ、タッチカバーのデザインが貧弱であることにすぐに気づかかざるを得なかった。数週間前からさらに長時間テストした結果は一層いらだたしいものだった。まずハードウェアのパフォーマンスが悪すぎる。Windows8の能力は驚異的だが、ARM CPUのSurface RTはこのOSを作動させるだけで手一杯だ。Surface Proなら今私が列挙した欠点のほとんどが解消されているだろう。私はWindowsユーザーなのでSurface Proには多いに期待している。私はLogitechがiPad用に作っている超薄型キーボード兼用カバーをSurface用に作ってくれればいいと思っている。

2月9日の北米発売が楽しみだ。Microsoftストア、microsoftstore.com、Staples、アメリカのBest Buy、カナダのFuture Shopで発売となる。64GB版が899、128GB版が999ドル。どちらもSurface Pen Touchカバーがついて くる。Typeカバーはそれぞれ119ドル、129ドル増し。

それからSurfaceには新しいアクセサリがついてくる。 3種類の限定版のTouchカバーと―なんとマウスだ。タブレットにはマウスがつきもの―なのだろうか? ともあれ、初めてSurfaceにわくわくさせるような製品が登場した。Windows 8ユーザーには朗報だ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+