2019年末、Palantirの顧客平均売上は560万ドルだった。他の多くのSaaS企業と比べると途方も無い金額だが、その主な理由は、PalantirがSlack(スラック)やAmazon Web Service(アマゾン・ウェブ・サービス)のような、売上規模の大きくない中小企業でもサービスを利用できるようにする育成戦略をとっていないためだ。
8月20日付の S 1申請書の草稿のスクリーンショットによればPalantir2019会計年度の総収入はおよそ7億4200万ドル(約785億円)だった(Palantirの会計年度は暦年)。総収入は2018年の5億9500万ドル(約629億円)に比べておよそ25%のアップとなっている。これは確かに成長ではあるものの、急成長著しいSaaS分野としては、例えば最近上場したDatadogの例と比べてさして印象的なものではない。
3月中旬の Wall Street Journalの記事によれば、Palantirはウイルス感染の拡大をモデル化するためにCDCに協力したという。 Forbes(フォーブス)はCDCは現在新型コロナウイルスの流行状況を視覚化し、医療ニーズを予測するためにPalantirのアプリを使っている」と報じている。
英国における新型コロナウイルス対策ではNHS(National Health Service、国民健康保険サービス)に同社のFoundryプラットフォームを通じてデータ分析を提供している。イギリス政府はブログ記事 で、Palantirとの提携に触れ、同社のFoundry ソフトウェアを利用するとして、「(このFoundryは)主として英国で開発されたものであり、異種データを組み合わせ、クリーンアップし、総合することにより意思決定に役立つ単一かつ確実性の高い情報源を提供する」と述べている。
ICEの不法滞在者摘発強化に協力する謎めいたテクノロジーの巨人という一般のイメージがあることにPalantir自身も気づいており、プロダクトが多くの人々のプライバシーに影響することを認めている。Wall Street Journalへのコメントで、Palantirのプライバシー担当の責任者、Courtney Bowman(コートニー・ボーマン)氏は「新型コロナウイルス対策においてもプライバシーと市民的自由はわわれの指導的原理であり、付録のようなものであってはならない」と述べている。
そのファイルはPalantirのワシントンでの仕事ぶりも明かしており、2013年には合衆国の12の省庁と50件の事業を契約している。それらのお役所は、CIA, DHS, NSA, FBI, CDC, Marine Corps(海兵隊), Air Force(空軍), Special Operations Command(特殊作戦軍), West Point(陸軍士官学校), Joint IED-defeat organization and Allies(合同爆発物処理機構), Recovery Accountability and Transparency Board(景気回復説明責任透明性委員会), National Center for Missing and Exploited Children(全米行方不明被搾取児童センター)だ。
しかしアプリケーションのパフォーマンスやデータ分析のスピードを左右する要素は、非常に多面的だ。最近FirstMark Capitalの常勤パートナーになったMatt Turckは、先週ニューヨークの同社のオフィスで行ったインタビューで、物のインターネット(Internet of Things, IoT)がデータ転送の総量を爆発的に増大させる、と言った。彼はそのとき、その兆候としてMQTTの登場を挙げた。この、IoTのための通信プロトコルは、The New York Timesによると、“マシンツーマシン通信のための共通語であるだけでなく、データ交換のためのメッセンジャーでありキャリアだ”。
Engima は、先週行われたDisrupt NY 2013で優勝した。協同ファウンダのHicham Oudghiriによると、スピードのニーズの背後には必ず、データ量の絶えざる増大というニーズがある。しかし彼によると、EnigmaやPalantirなどが抱えるスケールの問題は、多くのスタートアップが日々直面している問題とまったく異なる。