Y Combinator社長からAI研究組織CEOに転身したサム・アルトマンの挑戦

今年の初め、起業家で投資家のサム・アルトマン(Sam Altman)氏は、Y Combinatorの社長という注目される役職を離れOpenAIのCEOとなった。OpenAIは2015年の末にハイテク業界の最も著名な人たちによって設立されたAI研究組織である。この組織が目指すのは、創業者の1人であるイーロン・マスク(Elon Musk)氏がニューヨークタイムズへ回答したように、人工知能が「安全な方法で開発され、人類にとって有益なものであること」を確実にすることだ。

この動きは多くの意味で興味深いものである、なにしろ汎用人工知能(あるいは機械が人間に並べるくらい賢くなる能力)はまだ存在しておらず、AIのトップ研究者たちでさえ、それがいつになるのかについてはっきりとはとても言えないのだから。アルトマン氏のリーダーシップのもとで、もともとは非営利組織だったOpenAIは、「これからの数年のうちに大規模クラウドコンピューティング、才能ある人材の確保、そしてAIスーパーコンピューターの開発に対して数十億ドル規模の投資をする必要がある」というコメントを発しつつ、利益を目指す企業として組織変更を行った。

OpenAIが、それほどまでに多額の資金を集めることができるかどうかはまだわからないが、私たちはもしそれが実現されるとしたら、アルトマン氏自身の力によるものだろうと予想している。5月16日夜にステージ上で行われた、YCの進化からOpenAIでのアルトマン氏の現在の仕事までを網羅した拡大インタビューは、観衆をあっという間に魅了する力があった。

例えばYCでは、リーンネスと「ラーメン代がまかなえる利益率」が、一般的なアクセラレータープログラムの卒業生たちが目指すゴールだった時代もあったことを語り合った。しかし最近のゴールはすぐにでも数百万ドル、あるいは数千万ドルをベンチャーファンドから調達することになっているように思える。

「もし私が市場をコントロールすることができるなら、明らかに自由市場は勝手に進んで行きますが、私はYC企業たちには調達しようとしている金額や評価額を上げさせないでしょう」とアルトマン氏はこの小さな業界向けイベントの中で聴衆に語りかけた。「一般的に、それはスタートアップにとって良くないことだと思っているのです」。

アルトマン氏はまた、個人的だったり時に陳腐だったりする質問を投げかけられても率直に答えていた。さらには、このイベントのためにたまたま街にいた母親との、長期にわたる親密な関係についての話まで提供してくれた。彼は、彼女が「絶対に」信頼しているほんのひと握りの人々の一人だと語っただけでなく、その小さな輪の外の人々からの率直なフィードバックを得ることが、時間とともに難しくなっていることを認めた。「キャリアのある時点になると、人びとがあなたの気分を害したくないと思ったり、あなたが聞きたくないような話をしたくないと思ったりするようになります。もちろんこの時点で私が手にしているものは、フィルターがかけられ事前に計画されたものであることを、私ははっきりと意識しています」。

確かに、アルトマン氏は、多くの人たちよりは動き回れる範囲が大きい。このことはアルトマンがY Combinatorを5年にわたって運営したやり方(基本的に何度も規模を拡大した)から明らかなだけではなく、OpenAIについての彼の議論の仕方からも、彼の現在の思考が一層大胆なものであることは明白である。確かに、木曜日の夜にアルトマン氏が語ったことは、もし他の誰かが語ったならば、単なるたわごととみなされるようなものが多かった。アルトマン氏が語ることで、聞く者が驚かされることになるのだ。

例えば、OpenAIがどのように収益を上げることを計画しているのか(私たちは、成果の一部にライセンスを設定するのかを知りたいと思っていた)という質問に、アルトマン氏は「正直な答は『まだ何もない』ということです。私たちはいかなる収益も上げたことがありませんし、現段階では収益を上げる計画もありません。一体どうすれば、いつの日か収益を上げられるようになるのかがわからないのです」と答えている。

アルトマン氏は続けて、次のように述べた「私たちは投資家の皆さんに『もし汎用人工知能を開発できたら、それに対して投資家の皆さんにリターンを行う方法を考えて欲しいと依頼するつもりです』という、厳しくない約束をしているのです」。聴衆が爆笑したときに(なにしろ彼が真剣なのだとは思えなかったのだ)、アルトマン氏はこれはまるでドラマの「シリコンバレー」のエピソードのように聞こえるかもしれないと言いつつも「もちろん笑っていいんですよ。全然構いません。でも、それは本当に私が信じていることなのです」と付け加えた。

またアルトマン氏のリーダーシップの下で、OpenAIは投資家に最大100倍の利益を還元してから余剰利益を他に分配する、「上限利益」(capped profit)企業となったが、それは何を意味するのかという質問も行われた。私たちはその100倍という数字がとても高い目標であることに注目している。なにしろ旧来の営利企業に投資する投資家たちが、100倍近いリターンを得ることなどは滅多にないからだ。例えば、WhatsAppに対する唯一の機関投資家であるSequoia Capitalは、Facebookに220億ドルで売却したときに、同社が投資していた6000万ドルの50倍のリターンを得たと報じられた。素晴らしいリターンだ。

しかしアルトマン氏は、「上限利益」が、ちょっとしたマーケティング上の工夫であるという意見に反論し、なぜこれが理にかなっているのかについて改めて強調した。より具体的に言えば、彼は汎用人工知能がもたらす機会はとてつもなく巨大であり、もしOpenAIがなんとかこの扉をこじ開けられたとするならば、おそらく「光円錐内の宇宙の、すべての未来の価値を取り込むことができてしまいます。そうなったときに、特定の投資家のグループだけがその価値を独占することは正しいことではありません」と語った(光円錐というのは相対論の中に出てくる用語だがここでは「未来の人類に手の届く全宇宙」といった程度の意味)。

彼はまた、将来の投資家たちは、投資に対するリターンがさらに低く抑えられることになると語った。これは基本的に、リスクをとってくれた初期の投資家たちに、OpenAIが報いたいと思っているからだ。

インタビューを終える前に、私たちはアルトマン氏に対して、AI研究者たちによるさまざまな批判を投げかけてみた。これらの批判は今回のインタビューに先立って行われたもので、特にOpenAIは定性的なものへ注力しており、既に証明された成果の中での根本的な飛躍を目指しているものではないというもの、そしてその「安全」な汎用人工知能を発見するという使命は、不必要に警戒心を煽り、研究者たちの仕事をより難しくしてしまうというものだ。

アルトマン氏はそれぞれの点に対して熱心に回答した。彼はそれらの意見をまったく否定することはしなかった。例えば、OpenAIに対する最も人騒がせな意見に関しても「その中には共感できる部分もあります」と述べた。

それでもアルトマン氏は、たとえ不毛と思う人がいたとしても、人工知能の潜在的な社会的影響について考え、そしてメディアと話し合うために、よりよい議論がなされるべきだと主張した。「OpenAIは恐怖を煽って商売につなげていると言って批判している同じ人が、一方では『Facebookはこれをやらかす前に考えておくべきだったんじゃないか?』と言っています。何かをやってしまう前に、私たちも考えたいと思っているのです」。

インタビュー全体は以下から見ることができる。会話の前半は、主に(現在も会長を務める)YCでのアルトマン氏の経歴に集中している。OpenAIに関する詳細な話は26分付近から始まっている。

画像クレジット: Sara Kerr / StrictlyVC

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(翻訳:sako)

Y CombinatorのSam Altman社長が会長へ、後継者の計画はなし

シリコンバレーの多産なアクセラレーターY Combinatorの、著名な社長Sam Altman氏(写真中央)が社長を退いたことを、同社が米国時間3月8日に公開したブログ記事が共有している。

Altman氏は会長職へ移行し、YCの他のパートナーたちが昇格して彼の日常業務を引き受けるとAxiosが報じている。情報筋によると、Altman氏の後継者を立てるは予定はない。YCの中核的な事業は目下、CEOのMichael Seibel氏が率いている。彼は2013年に非常勤のパートナーとしてYCに加わり、20016年にトップの座に着いた。

このニュースが流れた今同社は、一連の変革の真っ最中だ。しかももうすぐ、3月18日と19日にはサンフランシスコで、200あまりの企業から成る最新のバッチのデモが行われる。上述のブログ記事でYCは、本誌TechCrunchが今週初めに報じた本社のサンフランシスコ移転の件をはじめ、変化の一部について詳説している。

それによると、「YCをその都市〔サンフランシスコ〕へ移すことを検討しており、目下スペースを探している。最近の5年間で新しいスタートアップたちの重心が明らかに変わり、マウンテンビューのスペースに愛着はあるものの、そこに固執するロジスティクス上のトレードオフにそれだけの価値があるかを再考している。とりわけ、バレーは社員の通勤が難しい。また、ベイエリアの同窓生たちに近い場所にいたいのだが、その圧倒的多くがサンフランシスコで生活し仕事をしている」。

本社を北へ移すだけでなく、最近のYCは参加者が大幅に増えているので、次のデモデーではステージを2つ使う。そして、ポートフォリオ企業への初期投資の額も増やす

Altman氏は2011年にパートナーとしてYCに加わり、2014年に社長に指名された。今後の彼は、調査研究企業OpenAIの共同会長職など、他の努力に傾注する。AltmanはYCの共同ファウンダーPaul Graham氏を継ぐ、同社2代目の社長だった。Graham氏は今、YCのアドバイザーだ。

関連記事: The Silicon Valley exodus continues主要VCの脱シリコンバレー傾向(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Bill Gates, Reid Hoffman, Sam Altmanらがグローバルな署名運動サイトChange.orgに$30Mを投資

LinkedInの協同ファウンダーReid Hoffmanが今日(米国時間5/26)、社会的正義を実現するための署名運動サイトChange.orgに大きく賭けることを発表した。彼は3000万ドルの投資ラウンドをリードし、それにBill GatesやY Combinatorの社長Sam Altmanらのビッグネームが参加する。

HoffmanはLinkedInにこう書いている: “Change.orgは集団的アクションのためのグローバルなハブであり、市民参加が大きくなりつつある今の時代における重要な民主化勢力である。それは、重要な問題や政策に関して、ロビイストを雇わなくても本物のインパクトを及ぼすことのできる世界を実現する”。

この組織は2007年に今のCEO Ben Rattrayが創った。その後、世界中の2億人近い人びとがこのサイトを使って、人権、環境、教育、健康などの問題に関する気づき(awareness)を喚起してきた。

Rattrayは、そのグローバルなミッションについて書いている: “私たちは今、より参加性の高い新しい形の民主主義の、初期的な発展途上段階にいる。そして、市民の参加性を変革することのできるテクノロジーの力を実際に実現するためには、私たちの声がより広く到達し、より深い関わりを可能にするためのツールを作る必要がある”。

シリコンバレーで、もはやマンネリの常套句が、「“世界を変える(change the world)”ものを作る」、だ。

でもChange.orgは、NPOではなく利益を追うビジネスだ。同社は企業や非営利団体などに陳情や署名活動のスポンサーとして寄付を求め、それが同社の年間2000万ドルの収益になっている。しかしそれでも、社員の30%をレイオフすることを避けられなかった(2016年)。その後彼らはクラウドファンディングを導入し、今ではそれがChange.orgに“数百万ドルの収入”をもたらしている。

HoffmanがChange.orgのチームに賭けるのは、これが初めてではない。2014年には、Richard Branson, Ashton Kutcher, Twitterの協同ファウンダーEv Williamsらと並んで、名士らによる大きな投資に参加した。

また2012年には、Change.orgは4200万ドルあまりを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

YCombinatorが研究プロジェクト「都市のあるべき姿」を推進、SimCityのファンはぜひ参加を

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あなたは、新しい都市を設計したい、と思ったことはあるかな?

子どものころから長年、SimCityやLegosにはまっていた人たちに、幸運が訪れるかもしれない。YCombinatorが今、都市の住宅問題や公共施設の設計といった都市の問題の解決を目指す研究プロジェクトのために、都市問題/都市研究の一匹狼のような人たちを探している。

スマートシティというはやり言葉は、今では平凡で月並みな言葉になりつつあるが、でもYCは、起業というこれまでなかった視点からこの問題に取り組もうとしている。

YCが、公共サービスに実在する問題とスタートアップのアクセラレーションという二つのものを混ぜあわせようとするのは、これが初めてではない。同社は今、ベーシックインカムを市の施策として一般化した場合の影響を調べるために、オークランド市のプロジェクトに協力している。YCの計画では、一部の住民に年額計150万ドル近いベーシックインカムを提供し、彼らのその後の生活をコントロールグループ(対照群)と比較し調査する。

またYCの最新のプロジェクトのもっとも意欲的な目標は、都市にとって絶対必要不可欠な規制や規則を100ページ以内にまとめることだ。このプロジェクトには、ダイバーシティ(女性、非白人雇用)の増加や行政への市民参加の目標を、データ分析をもとに策定する、という仕事もある。

州のレベルでは、政策立案へのデータの利用を、主に州議会が先導してきた。2007年には、メリーランド州知事O’Malleyが、州データの一般公開で注目を浴びた。その事業は、透明性を確立し、また行政効果に関するデータの重要な分析結果を具体的に政策に反映していくことが、目的だった。

YCでは、Adora Cheungがこのプロジェクトをリードする。Cheungは、かつてY Combinatorが支援したHomejoyのCEOだった。Homejoyは現代的に合理化された清掃サービスを提供したが、労働者の待遇をめぐる法的問題で閉鎖した。

このプロジェクトについては、続報をお待ちいただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

未来の高度な人工知能技術の私蔵化を防ぐ非営利団体OpenAIがそうそうたる創立メンバーでスタート

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今日(米国時間12/11)、非営利の人工知能研究団体OpenAIの創立が発表された。そのトップは、Googleの研究員Ilya Sutskeverだ。前日には、Facebookが同社のAIハードウェアをオープンソース化した。

その存在理由は、こう説明されている:

目標はデジタルインテリジェンスの高度化をできるかぎり人類全体の利益に資する形で推進すること。それが、経済的(financial)な利益目的に制約されないことだ。

グローバルな支払い決済サービスStripeのCTOだったGreg Brockmanが、OpenAIのCTOになる。このほか多くの著名人が名を連ねており、中でもY CombinatorのSam Altmanと
Tesla/SpaceXのElon Muskが共同で理事長になる:

この団体の創立メンバーは、世界のトップクラスのリサーチエンジニアとサイエンティストである: Trevor Blackwell, Vicki Cheung, Andrej Karpathy, Durk Kingma, John Schulman, Pamela Vagata, そしてWojciech Zaremba。Pieter Abbeel, Yoshua Bengio, Alan Kay, Sergey Levine, およびVishal Sikkaはアドバイザーとなる。OpenAIの共同理事長は、Sam AltmanとElon Muskだ。

資金提供者は、Altman, Brockman, Musk, Jessica Livingston, Peter Theil, Amazon Web Services, Infosysおよび YC Researchで、寄付額の合計は10億ドルだ。Muskが公共的なAI研究に出資するのは、AIがSkynetになってしまうのを防ぐため、といわれる。OpenAIへの出資や理事長就任も、そのねらいの延長だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。