SpaceXのStarship SN5がエンジンテストに成功、高度150mの短距離飛行テストに移行

SpaceX(スペースX)の創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、同社の宇宙船Starship(スターシップ)の6番目の試験用プロトタイプを使った極めて重要なRaptor(ラプター)エンジンの地上燃焼試験が見事に成功した。SN5と呼ばれるこのプロトタイプは今後高度150mの短距離飛行テストに移行する。SpaceXの開発計画を通じて製造された試験用宇宙船の中で、最も遠くまで飛行するものとなる。

SpaceXは、最初の実証試験用の小型版Starshipを製造したのに続き、去年からStarshipの試験用プロトタイプの製造とテストを繰り返してきた。プロトタイプはSNという名称で表され、その後に製造順に番号が付く。この小型版は実際にはStarshipの基礎部分だけで、短距離飛行と着陸の実証試験を行うためのRaptorエンジンが1基だけ搭載されていた。

以来SpaceXは、数々の飛行テストのための実物大の実証試験用プロトタイプを複数製造してきたが、当初はすぐにでも高高度飛行テストを行う予定だった。これまでのプロトタイプはMK1とMK2として知られている。MK1は、タンクの加圧テストの最中に爆発。MK2は、同社がMK3(SN2)にフォーカスを移したことで破棄された。なおMK2はSN1と改名され、ここから新しい命名規則が始まっている。開発されたプロトタイプは製造と試験が急がれたのだが、SN3とSN4はテスト中に壊滅的な失敗に見舞われた。

だがSpaceXは、ここまでにSN5のエンジン燃焼テストを成功させ、実物大試験機による低高度の「ホップ」飛試験に進めるようになった。

最終的にSpaceXは、Falcon 9(ファルコン9)やFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)を含む同社のすべてのロケットをStarshipに置き換える計画で、将来の火星の有人基地建設建設にはStarshipにSuper Heavy(スーパー・ヘビー)ブースターを装着して対応させることにしている。

その壮大なゴールに到達するまでには、まだまだ多くのテストを繰り返して改善を重ねる必要があるのは明らかだが、マスク氏とSpaceXは一般大衆の目に見えるかたちで大急ぎでテストと改良を繰り返すことに力を入れているようだ。

宇宙船開発は十分にテストを重ねるのが定番となっているが、それをオープンに行うということ、そして実際の飛行テストに使用する宇宙船の製造を急ぎ、その結果を新しい(そして改善が期待される)バージョンの製造に生かすという考え方は斬新だ。
画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:金井哲夫)

スペースXがDragonの未来的な宇宙服の開発過程を公開

SpaceX(スペースX)は有人宇宙飛行に進出する際、独自の宇宙服を社内で開発すると決めた。これはNASAを含む多くの宇宙服のプロジェクトとはまったく異なるアプローチだ。一般的には長年の経験を持つ外部の専門業者に仕事を依頼するが、スペースXは新たに公開した動画の中で、なぜそのようなプロジェクトに自ら取り組んだのか、その独自性と現代的なデザインがどのようにして生まれたのか、そしてユニークでモダンな外観の宇宙服が、美的にも機能的にもどのようにDragon宇宙船を完璧に補完するようにデザインされているのかを紹介している。

スペースXの宇宙服・クルー機器マネージャーのChris Trigg(クリス・トリッグ)氏と、リード宇宙服スペシャリストのMaria Sundeen(マリア・サンディーン)氏が、同社の宇宙服のコンセプト、デザイン、製造プロセスを説明している。なお宇宙飛行士は今週中に、復路にてこの宇宙服を装着する予定だ。

トリッグ氏によると、このスーツはドラゴン宇宙船のクルーシートを含むシステムの一部であり、プラグを差し込めば必要なものすべてが自動的に提供するように設計されている。彼はまた、ヘルメットのデザインの背景にあるアイデアと、宇宙船のコントロールサーフェスで作業するためのタッチスクリーンとの互換性と同時に、加圧と保護を提供する手袋を作る必要性についても説明している。

前述したように、天候などに問題がなければDragon宇宙船は8月1日に国際宇宙ステーション(ISS)から帰還し、8月2日には大西洋で宇宙飛行士を乗せて着水する予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが第2次Crew Dragonミッションの宇宙飛行士を発表、JAXAの星出彰彦さんも参加

NASAとSpaceXは、同社のCrew Dragon宇宙船の最後のデモミッションを今週末に完了させる予定で、すでに2021年春に予定されているCrew Dragonの2番目の運用フライトであるCrew-2に向けて準備を進めている。その打ち上げには2人のNASAの宇宙飛行士と宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの1人、欧州宇宙機関(ESA)からの1人の合計4人が搭乗することが明かされた(NASAリリース)。

NASAのMegan McCarthur(メーガン・マッカーサー)宇宙飛行士とShane Kimbrough(シェーン・キンブロー)宇宙飛行士は、JAXAの星出彰彦宇宙飛行士とESAのThomas Pesquet(トーマス・ペスケ)宇宙飛行士とともに、Demo-2が終了した後の9月下旬に予定されているCrew-1の次のミッションに参加する。これはISSに長期的に人員を配置するための通常の運用ミッションにあたり、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在(6カ月間)し、ロシアのソユーズ宇宙船を利用する3人の宇宙飛行士と軌道上の研究プラットフォームを共有することになる。

つまり、同時に7人の乗組員がISSを共有することになり、通常の6人よりも多くなる。NASAによると7人体制が新たな標準になる予定で、追加されたクルーは「宇宙で実施できる科学実験の量を効果的に倍増させる」ことを意味する。

ISSのクルーが日常的なメンテナンスや作業に多くの時間を費やしていることを考えて欲しい。7人目の乗組員が日常的な作業を手伝うことで、ISSの良好な動作を維持するための分割時間を削減につながり、実験や研究のために多くの時間を割けるようになる。

このクルーメンバーは全員、以前に宇宙に滞在したことがあるが、マッカーサー飛行士にとっては初めてのISSでのミッションとなる。彼女が最後に宇宙に行ったのは2009年にスペースシャトルに搭乗し、ハッブル宇宙望遠鏡の最後のサービスミッションに参加したときだ。マッカーサー飛行士は仲間の宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベーンケン)飛行士の妻でもあり、ベーンケン飛行士はCrew Dragonで打ち上げられた史上初の宇宙飛行士として、ISSに滞在している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXとNASAはCrew Dragonの初の業務運用を9月に設定

SpaceX(スペースX)とNASAは今週、SpaceXの有人宇宙船Crew Dragon(クルー・ドラゴン)の最初の公式運用ミッションを9月中に実施するとNASAのメディア向け最新情報で伝えた。この打ち上げは、当初は8月に設定されていたのだが、「9月後半」に予定が変更された。Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏と Doug Hurley(ダグ・ハーリー)氏が参加しているCrew DragonのDemo-2(デモツー)有人ミッションは、早ければ8月1日に両宇宙飛行士がSpaceXのこの宇宙船で地球に帰還・完了することになっているが、それを見届ける時間の猶予が必要なためだ。

Demo-2ミッションは、実際に国際宇宙ステーション(ISS)に人を送り込むことに成功したが、これはあくまで最終試験であり、Crew DragonとFalcon 9に人を乗せて評価を行う開発工程の最終段階に過ぎない。今後、この宇宙船とロケットは、宇宙飛行士の定期的な輸送サービスが可能かどうか、NASAの目によって審判される。これに対してCrew-1は最初の運用ミッションだ。つまり、定期的に宇宙飛行士を運ぶというSpaceXの契約に記されたひとつの基準を、初めて満たすものと考えられる。

Crew-1は、Michael Hopkins(マイケル・ホプキンス)氏、Victor Glover(ビクター・グローバー)氏、 Shannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏の3人のNASAの宇宙飛行士と、JAXAの野口聡一氏をISSまで運ぶ。フロリダ州のケネディー宇宙センターから打ち上げられ、宇宙飛行士たちはそこで通常の任務期間を過ごす。この国際チームは、NASAとパートナーに依頼された数々の実験や研究を、力を合わせてこなすことになっている。

もちろん、Crew-1が9月に打ち上げられるためには、いくつかの条件がある。そのひとつが、ハーリー氏とベンケン氏がISSから無事に帰還することだ。SpaceXの証明プロセスを完了するためには、この部分がスムーズに進行しなければならない。その後、NASAによる検証が行われるのだが、それには少々時間がかかる。

ベンケン氏とハーリー氏は、ISSにドッキング中、「居住性評価」と呼ばれるもうひとつの重要なテストを完了させたところだ。ドッキングハッチの開閉、廃棄物システムが予定どおり操作できるか、ISSから荷物をCrew Dragonにうまく運び込めるか、などが試された。NASAの認証を得るためには、NASAが要求する膨大な数の試験項目のすべてに合格マークが付かなければならないのだ。
画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

SpaceX(スペースエックス)は、Falcon 9(ファルコンナイン)の打ち上げに使用された2つに分裂したフェアリングを両方とも回収したと、CEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は発表した(Twitter投稿)。フェアリングは、ロケットが地球の大気圏を抜けて宇宙に到達するまでの間、積荷を保護するためのカバーで2つに割れるようになっている。これまでSpaceXは、落ちてくるフェアリングを特別なネットを備えた2隻の船で回収しようと何度も試みていたが、成功したのは今回が初めて。しかも片方だけでなく、両方とも回収できた。

SpaceXは、できるだけ部品を再利用することで打ち上げコストを削減しようと努力を重ねている。逆噴射で地上に軟着陸するロケットの第1段(ブースター)を開発したのも、整備を行い、次の打ち上げにまた使えるようにするためだ。今ではこの方法は洗練され、信頼性もずいぶん上がってきた。SpaceXは、今回の打ち上げを含め、これまでに役割を果たしたブースターの着陸を57回成功させている。

しかしフェアリングの回収は、これまで失敗続きだった。海に落ちた片方だけを回収し、それを再利用することもできた。だが、これまで船で回収できたのは半分だけで、最初は2019年の6月のSTP-2ミッションで、もう1回は2020年1月のミッションでのことだった。

SpaceXは、フェアリングを回収して再利用すれば、1回の打ち上げにつき最大で600万ドル(約6億4000万円)を節約できると見積もっている。そうなれば、再利用型ブースターの上にさらに大きな節約分が上乗せされる。落下速度を制御しながら軟着水させたフェアリングを海中から回収する方法に比べて、ネットで捕まえる方法は、落ちてくるフェアリングを船のネットが確実にキャッチできた場合、時間、労力、コストそして人的な危険を大幅に削減可能で、フェアリングの再利用がずっと効率化される。

フェアリングには、Falcon 9のブースターのように着陸を制御できる推進装置は備わっておらず、パラシュートで落下速度を弱める仕組みになっている。そのため、行き先をコントロールできないフェアリングの落下地点を正確に予測して、船をそこに配置することが非常に重要になる。しかしマスク氏とSpaceXには、ロケットのフェアリングをどうしても正しく回収したい別の理由がある。マスク氏は以前、このフェアリング回収船を、地球に帰還したCrew Dragon(クルー・ドラゴン)のカプセルの回収に転用する可能性に触れていた。今は海に落下したカプセルを回収する方式をとっているが、船でキャッチできれば、宇宙飛行士と回収要員のリスクを低減することができる。

関連記事:SpaceXが韓国の通信衛星を7月21日6時から打ち上げ、NASAの宇宙飛行士を運んだブースターを使用

関連記事:SpaceXが韓国の通信衛星ANASIS-IIの打ち上げに成功、ブースター再利用間隔の新記録を達成

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが韓国の通信衛星ANASIS-IIの打ち上げに成功、ブースター再利用間隔の新記録を達成

SpaceXがまた打ち上げに成功した。今回はロッキード・マーティンとその顧客である韓国のミッションだ。積荷は韓国初の専用軍事通信衛星のANASIS-IIで、同国が国家安全保障に用いる。

ANASIS-IIを載せたFalcon 9は米国東部夏時間7月20日午後5時30分(日本時間21日午前6時30分)にフロリダ州ケープカナベラルから離昇した。使用した第1段ブースターロケットはSpaceXが過去2カ月以内に使用したもので、その時のDemo-2ミッションではNASA宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏を国際宇宙ステーションに運んだ。これはブースターロケットを回収して再利用するまでの時間の新記録だ(これまでの記録は2020年2月のStarlink第4回打ち上げに使用したブースターの63日)。

本日のブースターは前回の飛行からわずか51日しか過ぎておらず、2週間近く記録を更新した。この第1段ブースターが初めて使われたのは、SpaceX史上最も重要ともいえる、初めて人を乗せて打ち上げた日であったことを思うと、この記録はさらに印象的だ。ほんの数年前まで、SpaceXは大型の積荷に向けてブースターを構成することが多かった。今後の有人飛行のために、ブースターをさらに修理調整することが考えられる。

この打ち上げミッションでは、ブースター再突入の試みが行われ、大気圏に戻った後に燃焼制御を行ってSpaceXの回収船への軟着陸を目指した。これも予定通り進行したため、2回のミッションで飛行したこのブースターが再び飛び立つ可能性がある。SpaceXにとってこれが57回目のブースター着陸の成功だった。

さらに本日のミッションでは、打ち上げの際に衛星を保護するために用いられ積荷が宇宙に到達したあと切り離されるフェアリングの回収も行われた。SpaceXはこの部分をライブ中継しなかったが、状況の詳細は後ほど提供される予定だ。

搭載されたANASIS-IIが目標軌道に無事到達したことも確認された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXが韓国の通信衛星をまもなく打ち上げ、NASAの宇宙飛行士を運んだブースターを使用

SpaceXは韓国初の軍事通信専用衛星を打ち上げる。発射予定日時は7月20日午後5時 EDT(日本時間21日午前6時)。打ち上げ時間枠は4時間近くにわたり、午後8時55分 EDT(日本時間21日午前9時55分)まで続くため、SpaceXが実際に打ち上げる可能性のある時刻の範囲はかなり広い。

このミッションに使用されるFalcon 9ロケットは、先ごろNASAのDemo-2ミッション(SpaceXのロケットが初めて宇宙飛行士を乗せた歴史的ミッション)に使われた第一段ブースターを搭載している。5月30日に実施されたその打ち上げでは、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)、Doug Hurley(ダグ・ハーリー)両宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に無事送り届けられ、8月1日に予定されているDemo-2の帰還飛行の準備を進めている。

このミッションでは、第一段ロケットをSpaceXの回収船 “Just Read the Instructions”を使って大西洋で回収する予定だ。

ライブストリーム中継は発射約15分前に始まる予定なので、時間枠の開始時に打ち上げられれば午後4時45分 EDT(日本時間21日午前5時45分)頃にライブになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXとNASAが宇宙飛行士を乗せたCrew DragonのISS出発を8月1日に予定

SpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルードラゴン)カプセルは、5月の歴史的な最初の有人打ち上げの後、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングされており、現在帰還準備中だ。NASAはISSでの作業の必要性に応じてISSに宇宙船と宇宙飛行士を滞在させる計画だったが、最初のCrew Dragonの有人宇宙飛行ミッションを帰還によって締めくくる時は近づいている。

NASAジョンソン宇宙センターの広報担当者であるKyle Herring(カイル・ヘリング)氏は8月2日を帰還予定日だとツイートしたが、確定するまでにすべきことはたくさんあると明らかにした。NASAはその後、8月1日出発、8月2日着水を予定していると公式に発表した。

宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏はISSに到着以来、数々の科学やメンテナンスの作業に参加した。ベンケン氏は4回の宇宙遊泳にも参加し、3回はすでに終了、残り1回は来週の予定だ。へリング氏は最後の1回を、具体的な帰還計画の前にやってくる重要な仕事だと語った。今回が最初となるCrew Dragonの有人飛行は実際にはまだデモミッションであり、ISSの正式なオペレーションによるクルーの打ち上げではないが、NASAはベンケン氏とハーレー氏が通常のステーションのオペレーションに関われるよう延長を要請した。

帰還はSpaceXとNASAのCommercial Crew(コマーシャルクルー)コラボレーションの全体的な成功にとって、5月の打ち上げと同じくらい重要だ。SpaceXの有人宇宙船が宇宙飛行士を確実に宇宙ステーションに運ぶだけでなく、再び安全に帰還できることの重要性は明らかだ。

帰還プロセスの中でCrew Dragonカプセルは、ベンケン氏とハーレー氏が搭乗した状態で、離脱と帰還時の飛行操縦を自動で行う。SpaceXが設計およびテストしたパラシュートシステムで地球の大気に突入し、降下を遅らせる。うまくいけば宇宙飛行士は大西洋にソフトランディングし、SpaceX専用の回収クルーが宇宙飛行士を回収する。

帰還のためには気象条件が整う必要がある。このDemo-2ミッションでは、風速の許容範囲がかなり厳しい。とはいえ、8月は着水予定地域の風が比較的穏やかになる傾向があるため、それが助けになるはずだ。

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:Mizoguchi

SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」のベータテストに関する詳細

SpaceX(スペースX)は、今週、Starlink(スターリンク)サービスのベータテストの参加希望者として登録した人たちにアドレス情報を要求したことから、同サービスの開始は近いと推察される。現在、Starlinkサブレディット(Reddit)からの最初のリーク(Business Insider記事)によって、ベータテストがどのように行われるか、そしてSpaceXが求める参加条件について少しだけわかってきた。

ハードウェアについて

Starlinkサービスでは、Starlink衛星群とのデータの送受信に使用する専用のハードウェアに加えて、「北の空がよく見渡せる」環境が必要となる。上の写真に示されたハードウェアは、SpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が以前「棒の先にUFO」と表現した小型の衛星アンテナだ。写真からは、普通の衛星アンテナと変わりないように見えるが、Starlinkサービスが提供した画像からは、大きさまでは判別できない。

Starlinkは、これらのハードウェアをベータテスターに無料で提供することになっているが、設置は各自の責任で行わなければならない。キットには、パラボラアンテナ用の電源、テスターの住居に個別に対応できるようデザインされた設置器具が付属する。ウェブサイトでは、このキットを設置する際に外部の業者に依頼してはいけないと強く忠告している。FAQには「空を十分に見渡せる場所でなければ良好な通信状態が得られない」とも書かれている。

既存の衛星インターネット・サービスプロバイダーは、接続を可能にするために使用場所にアンテナを設置するようにしているが、通常は設置業者がユーザーに代わって取り付けている。Starlinkのベータテストの後はその方向に進むだろうが、ローンチ前のテスト期間中は、なるべく人の目に触れさせたくないという意図が明らかに見てとれる。

サービスについて

Starlinkのサービス品質は、適正に接続できれば「良好」となるはずだが、同社のFAQには「安定しない」とも書かれている。なぜならSpaceXは、テスト期間中にリモートでソフトウェアの更新やその他のネットワークの最適化を実施するからだ。そのため同サイトの記述によれば「ゲームや仕事を目的とした」ソリューションには向かない。

またStarlinkは、テスト期間中はネットワーク上のあらゆる活動をモニターするが、海賊版データの不正ダウンロードや不正保存といった「違法活動」は明確に禁止し、そうした活動を理由にベータテストの参加を「保留または取り消し」できる権利を同社は保有していると明示している。

ユーザーは、いつでもテストの参加をキャンセルできる。また機器の取り付けに関しては、設置場所が適切で、安全に設置作業ができる環境であることを推奨している(アパートなどの共同住宅では参加要件を満たさないことがある)。

ベータテスターの責任

ベータテスターは、参加の際の詳細、例えばネットワーク速度や品質など、秘密を厳守しなければならないとStarlinkは言っている。また参加者には「定期的なStarlinkサービスのテストと評価の提出」に1日30分から1時間を確保することが求められる。評価の提出には、「アンケート、電話、電子メールそのたの方法」が用いられる。

さらにベータテスターは、ベータテストが終了したとき、または要請されたときに、Starlinkキットを必ず返却するように求めている(返送はStarlink着払い)。さらに同社は、テスターにクレジットカードまたは銀行口座の情報の提出を求め、わずかな手数料を徴収する。金額は確定していないようだが、設置時に1ドルから3ドル、その後は毎月となりそうだ。これは「SpaceXの注文および支払いシステム」をテストする目的で行われる。だが、テスト期間中のStarlinkサービスの利用、さらにハードウェアの貸し出しは無料だと明記されている。

Starlinkは、ベータテスター参加希望者に向けて、プライベートベータテストはこの夏に開始されると電子メールを送っている。ということは、機器やその他の必要なものはすでにテスターの元に送られていて設置準備が整っていると考えてもおかしくない。すべてが順調にいけば、同社は最初のサービス対象地域となるアメリカ北部とカナダでのオープンベータテストに拡大したいと考えている。来年、さらに多くの衛星が打ち上げられれば、サービス対象地域も広げられる。

画像クレジット:Starlink

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXの衛星通信サービスStarlinkがベータテスト参加希望者に住所の提出を依頼

SpaceX(スペースX)が準備を進めている広帯域低遅延のブロードバンドインターネットサービスのStarlink(スターリンク)がこのほどベータテストの参加希望登録者にメールを送った。このメールでは以前要求していた郵便番号に代わり、具体的な住所をテスト参加者に要求している。ネットワークの利用可能地域を正確に知るするためだ。

このメールは、SpaceXのStarlinkプライベートベータがこの夏に開始され、その後に「公開ベータが続く」ことを意味している。サービスに興味があり最新情報を受け取るためにサインアンプした人たちは、「ベータテストの準備ができ次第」通知される、とSpaceXのメールに書かれている。

SpaceXはサービスの公式スタートに向けて衛星群を拡大すべく、打ち上げを続けてきた。これまでStarlinkを利用したインターネット接続を実際に使った人はごくわずかで、SpaceXのファインダー・CEO Elon Musk(イーロン・マスク)氏(当然)と早期のSpaceX投資家だったSteve Juvertson(スティーブ・ジャーベットソン)氏が知られている。

これまでに、SpaceXは540基のStarlink衛星を打ち上げたが、うちいくつかは軌道を外れたり停止したり故障しており、全体では現在アクティブなのは500を超える程度だ。同社は8月までにあと3回の打ち上げ計画が確認されており、6月から延期された1回は今月中に実施される予定だ。

SpaceXは並行して、運行のための規制要件を満たすべく準備中で、カナダの郊外に接続を提供するために 同国の通信業者ライセンスを申請したのもそのひとつだ。同社は米国内でブロードバンド格差を縮めることのできる企業に向けた基金を受給する資格も持っているが、国から多額の資金を受け取るために必要な低遅延の実証を今週末に迫った期限までに実施できそうにない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXのStarlink衛星打ち上げは天候悪化で延期

【アップデート】ミッションは米国時間7月8日、天候を理由に中止された。次回の打ち上げ時期については検討中だ。


SpaceX(スペースX)は次回の打ち上げスケジュールを決定した。ミッションはフロリダ州ケネディ宇宙センターの第39A発射施設から、米国東部夏時間7月8日午前11時59分(日本時間7月9日0時59分)に打ち上げられる。またその15分ほど前から、ライブ中継が実施される。

このミッションにより同社のアクティブなStarlink衛星群は536機に拡大され、今年後半に一般向けのブロードバンドインターネットサービスを開始するという目標に近づくことになる。今回打ち上げられる57機の衛星には、同社が開発した新しい「サンバイザー」システムが搭載されており、衛星による太陽光の反射を阻止する。

同社は以前にもこのシステムを搭載した試験衛星を1機打ち上げているが、Starlinkのすべての衛星がこのシステムを搭載するのは今回が初めてだ。同社は自社の衛星に加えて、新しいライドシェアプログラムによりBlackSkyの人工衛星を打ち上げる予定で、これは同社の既存の地球観測ネットワークに加わることになる。

今回のミッションで使用されているFalcon 9のブースターは、国際宇宙ステーション(ISS)へのCrew Dragonの初のデモンストレーション飛行を含め、これまでに4回のミッションをこなしている。さらに、大西洋に浮かぶSpaceXの着陸船による着陸も試みられる予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがGPS III衛星打ち上げとブースター回収に成功

 

SpaceXはさきほど米国の新世代地球測位システムであるGPS III衛星の打ち上げに成功した。発注はGPSの管轄を米空軍から引き継いだ新設の宇宙軍だ。

打ち上げにはFalcon 9ロケットが使用された。1段目(ブースター)はSpaceXの工場で新規に製造されたもので初飛行だった。 今回はFalcon 9のブースターの回収も予定されている。2018年12月にSpaceXは最初のGPS IIIを打ち上げているが、このときはブースターは使い捨てだった。SpaceXでは「今回はブースター回収用燃料を残しながら本来のミッションを実行することができる」としている。

グッドニュースはSpaceXが今回のブースター回収に成功したことだ。正確に制御された減速噴射に成功し、大西洋を航行するドローン着陸船に無事着陸したことが確認されている。ブースターは整備され、将来のミッションで再利用されるはずだ。

宇宙軍によれば、今回打ち上げられたGPS衛星は世界の40億人のユーザーに影響を与えるような機能とセキュリティの改良が行われているという。この後、衛星は準静止軌道に入り、米国が運用している既存のGPS III衛星やそれ以前の世代のGPS衛星と連携して動作する。

SpaceXではフェアリング回収船のMs. TreeとMs. Chiefが(ネットによるキャッチではなく)海中からの引き上げを試みる。フェアリングも今後再利用される。

衛星の軌道投入には打上げから1時間半ほどかかるため、打ち上げそのものは成功しているが、打ち上げミッション全体の成否が確認されるまでにはもう少し時間が必要だ。新しい情報が入ればアップデートする。

【編集部追記】 SpaceXサイトのライブ中継によれば軌道投入は成功。今後運用試験と準天頂軌道への移動が行われる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXのStarlink衛星打ち上げは延期、画像撮影とデータ分析を行うBlackSky衛星のライドシェアを予定

アップデート:SpaceX(スペースX)は米国時間6月25日、実施予定だったのStarlinkミッションを中止した。次回の日程は不明だが、おそらく同社が次に計画している6月30日のGPS衛星の打ち上げの後なる確率が高い。

SpaceXは米国時間6月25日木曜日の米国東部夏時間午後4時18分(日本時間6月26日午前5時18分)、追加のStarlinkミッション(1カ月間で4回目)を打ち上げる。今回のミッションではStarlink衛星57機を搭載し、衛星ブロードバンドインターネットサービスのローンチに向けて、宇宙空間にある既存のコンステレーション(衛星群)に加わることになる。

打ち上げられるFalcon 9ロケットには2基のBlackSkyの衛星も搭載されており、これは地球の画像撮影およびデータ分析サービスに使用される。これはSpaceXが昨年導入したプログラムに基づいて導入された、小規模な事業者が共有ペイロードの一部としてミッションを予約し、約100万ドル(1億1000万円)から始まる打ち上げサービスへのアクセスを可能にする、同社のもう1つのライドシェアミッションだ。SpaceXは今月初めに、顧客のPlanetのための3機つの衛星に加えて、同社のStarlink衛星の58機を含むペイロードを搭載し、このライドシェアミッションの第1回目を打ち上げた。

ミッションで使用されるFalcon 9はこれまでに4回飛行しており、その中にはCrew Dragonの初の無人デモミッションも含まれる。SpaceXはStarlinkのコンステレーションを急速に成長させ続けており、ブースターの再利用と相乗りを組み合わせることで、打ち上げコストを大幅に削減できるだろう。

今回の打ち上げではすべてのStarlink衛星に、同社が開発した展開式のサンバイザーシステムが搭載される。

打ち上げでは第1段ブースターの着陸も実施される。これはSpaceXがわずか3週間で行った4回目の打ち上げであり、これには5月30日に実施された歴史的な乗務員によるCrew Dragonのデモミッションが含まれる。また、10回目のStarlinkの打ち上げでもある。さらに同社は、別の打ち上げミッションとしてケープカナベラル空軍基地からのGPS衛星ミッションを6月30日に予定している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXが洋上宇宙船基地を計画中、月や火星に加えて超音速地球旅行にも使用

SpaceX(スペースX)がテキサス州ブラウンズビルの洋上施設のために専門家を募集していることが求人広告でわかった。目的は、同社の大型打ち上げロケット “Super Heavy”(スーパー・ヘビー)の発射場所となる洋上宇宙基地の開発と建築だ。SpaceXはその大型ロケットを、今後大型の運搬ロケットを月や火星に送り込むため、さらにはこの地球上での2点間移動のために使用するつもりだと、SpaceXのCEO Elon Musk(イーロン・マスク)氏が語った。

Musk氏はTwitter(ツイッター)で、Dan Paasch氏が最初に見つけたその求人広告の目的はこれだったと語った。以前SpaceXは、同社の打ち上げロケット、スーパーヘビーのコンセプトを紹介し、同時に宇宙船Starship(スターシップ)を超音速地球旅行に使って、長時間のフライトを数時間に短縮する構想も話した。しかしこうしたコンセプトはこれまでCGのみで、どこからどうやって飛び立つのかは今日までわからなかった。

スターシップとスーパーヘビーの主な開発目的は、SpaceXとMusk氏が火星へ人間を運び、月を始めとするさまざまな星間天体を植民地化して「人間を星間生物にする」というゴールを実現することだ。こうしたゴールはほとんどの人にとって無縁に感じられるが、同じ完全再利用可能宇宙船を使って、この地球上で2点間超音速旅行のコストを大幅に削減するという同社の狙いは、はるかに現実的だ。

宇宙を使った2点間移動は新しい概念ではなく、SpaceX以外にも実現を目指している人たちがいる。地球の大気圏の端、あるいは外側を飛ぶことで、燃料費や飛行時間を大幅に減らせるという発想だ。たとえばニューヨークとパリを1時間以内で移動できる。実際SpaceXは、2017年の発表の中で、スターシップを使った2点間移動は地球上のどの都市とどの都市の間も1時間以内で結ぶことができると語っていた。

SpaceXはスターシップをテキサス州ブラウンズビルで開発中で、そこは洋上設備技術者を探す求人広告が出された場所だ。同社はこの地域のテスト・開発施設を拡大中であり、州内の運営に特化した人材の増員も計画している。

Musk氏は今後の計画について多くを語らなかったが、別のツイートに答えて、この計画で「石油プラットフォームを改造し、ハイパーループで陸地と輸送する」ことは「十分計画のうち」であり、出発地や目的地の宇宙基地と地上を結んで乗客をピストン輸送することも考えていると語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXの小型衛星ネットワークStarlinkが巨額な公的資金を得るためには7月中に低遅延の実証が必要

SpaceXは高帯域で低レイテンシーのグローバルなインターネットサービスのバックボーンとなる、低地球軌道(low-Earth orbit、LEO)の小型衛星ネットワークであるStarlinkを構築している。しかしその努力が、収益を上げるために必要な今後の資金源のひとつが時間切れになるかもしれない。連邦通信委員会(FCC)の要求によると、農村地区のブロードバンドに助成する160億ドル(約1兆7200億円)の国の資金に応札する者は誰であっても100ミリ秒未満のレイテンシーを実証しなければならない。しかもその締切は来月、2020年7月だ。

この巨額な公共資金オークションの締切は2020年10月29日だが、応募の締め切りは7月15日だとEngadgetは伝えている。FCCによれば、LEOで衛星を運用しているプロバイダーは、もっと高い高度の静止衛星よりも有利かもしれないが、指定された閾値を満たすためには中継局やハブ、目的局の端末などで発生するレイテンシーを考慮に入れる必要がある。

SpaceXはFCCは同社ネットワークの能力を疑う必要はないと考えている。同社が目標としているレイテンシーは20ミリ秒未満であり、それは地上でケーブルを使用する高帯域ネットワークより優れていることもあるという。

SpaceXは、Starlinkの特に2020年における展開を急いでおり、既に7回の打ち上げミッションで計418基の衛星を送り出している。これは現在操業している民間衛星企業の中では最も多い。このハイペースの背景には、2020年末までに米国とカナダの顧客にサービスを提供したいという目論見がある。その後、世界中の顧客にサービスを提供することを目的としている。

SpaceXの歩みはこれまでのところ順調なようだが、でも巨額な政府資金提供のための要件は、同社にとって時期が尚早かもしれない。それでも、この構想に関連した連邦政府の契約は他にもあり、後に同社がそれらの交付対象になることも十分ありえるだろう。

画像クレジット: Starlink

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXがブロードバンド・インターネット衛星Starlink58基を打ち上げて累計538基に、他社衛星3基との初の相乗りも

SpaceX(スペースX)は、通信衛星のStarlink(スターリンク)を58基打ち上げた。前回のStarlinkミッションからわずか10日しかたっていない。これで軌道上で稼働可能なStarlinkブロードバンド・インターネット衛星は計538基となった。また同社は今回の打ち上げで、Starlink用の積載スペースを初めて他社と共有し、2基のStarlink衛星の代わりに、衛星画像解析サービスなどを手掛けるPlanet(プランネット)のSkysat(スカイサット)衛星を3基運んだ。

SpaceX最新のStarlink打ち上げは同社が年内に予定している米国、カナダの一部消費者向けブロードバンド・インターネットサービスが実運用に近づいたことだけでなく、天文学者の要望に答えるべく衛星のデザインを改定したことでも注目に値する。

Stalinkは、比較的低い軌道を周回することから、太陽光反射による明るさが夜間観測の妨害になると科学者から批判を受けている。SpaceXは、前回打上げた衛星のうちの1基に太陽光反射を軽減する展開型サンバイザーを搭載したが、今回は58基全部に搭載した。


これでStarlinkが、地球上で天体観測する科学者と平和的関係を築けるといいのだが、最終的にはこのサンバイザーが多数のStarlink衛星に設置された結果どう変化するのかを見るまでわからない。

本ミッションは、SpaceXの公式SmallSat相乗りプログラムの下で実施された初の運行であり、同プログラムでは小規模な衛星運営者がSpaceXのウェブポータル経由でSpaceXの打上げに便乗の予約ができるという、比較的柔軟な「オンデマンド」方式を提供している。SpaceXがライドシェア事業に力を入れている理由は、Rocket Labなどのこの市場に特化したサービスを提供するの打ち上げ業者が、同社のライバルとなって損益に影響を与えかねないと認識しているからだ。

米国時間6月14日の打ち上げは米国東部夏時間午前5時21分(日本時間同日午後6時21分)に行われ、使用されたFalcon 9第1段ブースターの軟着陸回収も行われる。このブースターは以前、国際宇宙ステーションに補給物資を運んだSpace Dragon 2基の打ち上げに使用されたものだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏が「Starship完成がSpaceXの最優先目標」と宣言

SpaceXのファウンダーでありCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、社内向けメールで最初の有人宇宙飛行を成功させた後の目標について、次世代宇宙船Starshipの開発に全力を挙げると述べた。CNBCの報道によれば、マスク氏は現在軌道上でISSに接続されているCrew Dragonカプセルと乗員であるNASAの宇宙飛行士であるDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の両宇宙飛行士を無事に帰還させることを別にすれば、Starshipの完成がSpaceXにとって最重要の目標だと述べている。

ステンレス製でSF的な外観のStarshipは2019年からテキサス州ボカチカのSpaceXの製造、試験施設で開発が続けられている。テキサスと平行してフロリダの施設でも開発が行われていたが、SpaceXはその2019年末に、開発をテキサスの施設に集約した。両施設の成果を統合し、集中的にプロトタイプ制作を行い、それを迅速に繰り返すことですでに多数のプロトタイプが製造されている。

Spaceshipは完全に再利用可能な設計であり、地球の衛星軌道からさらに月と火星などの遠い天体に向かって乗員と物資を運ぶ能力を備えることになる。Spaceshipの打ち上げには、現在開発中の大型ブースターであるSuper Heavyロケットが用いられる。 SpaceXでは将来はFalcon 9、Falcon Heavyの両システムをStarshipに置き換えようと計画している。これにより生産ラインが一本化され、再利用性も実現できれば大きなコスト削減が期待できる。

これまでのところStarshipの開発は多くの難問に直面している。SpaceXはStarhopperと呼ばれる縮小版のプロトタイプに新しく開発したRaptorエンジンを組み込み、地上での燃焼テストに成功した後、フルスケールのプロトタイプの製造が開始された。しかしこれらのプロトタイプはいずれもテストで不具合に見舞われている。プロトタイプ3号機、SN3は燃料タンクの圧力テストに失敗、また最近ではSN4がRaptorエンジンの静止燃焼テスト直後に大爆発して失われている。SpaceXは現在、StarshipのSN5を組み立て中だが、さらなるテストのために、SN6とSN7の建造も平行して進められている。

CNBCが番組で公開したメールでイーロン・マスク氏はSpaceXの社員はボカチカ開発拠点で「Starship開発を助けるために相当の時間を費やすことを考えねばならない」と述べている。

SpaceXはBlue Origin、Dynecicsと並んでNASAの有人月面基地構築プロジェクトの主契約者3社のひとつに選定された。これはStarshipの開発を急がせるプレッシャーをさらに高めるものだ。NASAのプロジェクトでは月の衛星軌道に前進基地となる宇宙ステーション、Lunar Gateway(ルナー・ゲートウェイ)が設置され、そこから月面に宇宙飛行士が運ばれる。Starshipはこのラストワンマイルを担当するというきわめて重要な役割を担う。

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXがFalcon 9ロケットでStarlink衛星群をさらに60基打ち上げ、ロケット再利用の記録も更新

SpaceXは、米国東部夏時間6月3日午後9時25分(日本時間6月4日午前10時25分)に、前回からわずか4日で二度目のFalcon 9ロケットを打ち上げた。今回は同社のStarlink(スターリンク)衛星群60基を追加で宇宙空間に運ぶためだ。これで軌道上で稼働している衛星の総数は480基になる。打ち上げが行われたフロリダは、SpaceXが米国時間5月30日に初めて宇宙飛行士を打ち上げた場所。そして、同社の宇宙船であるCrew Dragon(クルードラゴン)が、NASAのCommercial Crewプログラムの有人宇宙飛行の承認プロセス(Human-Rating Process)を満たすための、最後のデモンストレーションミッションだった。

本日の打ち上げには人間の乗員は含まれず、前述のようにStarlinkブロードバンドインターネット衛星の次の大きなバッチを飛ばすだけだ。この衛星群は低宇宙軌道にあるそのほかのStarlink衛星に加わってネットワークの一部になり、最終的にはそのネットワークが高帯域で信頼性の高いインターネット接続を提供する。その主な対象は陸上ネットワークすら存在しない、そして高速接続が提供されていない低サービス地域だ。

この打ち上げには新しいシステムのテストが含まれていた。それは大量の衛星によって地球からの夜間の視界が劣化するという問題への対策で、60基のStarlink衛星の1つにバイザーシステムを搭載。バイザーは打ち上げ後に展開して通信用アンテナの表面の太陽の反射をブロックし、衛星から地球に届く日光の反射を大幅に減らせる。設計どおりに動作すれば、SpaceXはStarlink衛星の設計の標準的なパーツとして組み入れると考えられる。

また今回の打ち上げでは、Falcon 9の1段目ロケットの回収も含まれていた。このロケットは、すでに4回打ち上げられて4回とも回収されており、今回もSpaceXの洋上の回収船が無事に捕獲したので、再度利用される可能性がある。

SpaceXは今回、2つの半分に分かれているフェアリングの回収も試みる予定だ。これは、打ち上げ時にロケットの最上部に保護用のノーズコーンとして取り付けられ、Falcon 9が運ぶペイロードを保護する部材だ。SpaceXが詳細を公表したら、この記事をアップデートしたい。

米国時間6月4日は、Falcon 9ロケットの最初の飛行からちょうど10周年になる。再利用の記録達成と、今週頭の歴史的快挙である初の有人宇宙飛行ミッションがこの10年を引き立てている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXがStarlink衛星60基を追加打ち上げ、1基にb「サンバイザー」を搭載

先週末にSpaceXは、史上最も重要で記念すべき打ち上げを実施し、NASAの宇宙飛行士をISS(国際宇宙ステーション)へ運んだ。そして米国時間6月3日に予定されているFalcon 9ロケットの打ち上げは、比較すれば目立たないが、同社の未来にとってやはり重要な出来事だ。これはSpaceXのStarlink(スターリンク)の最新ミッションであり、小さな衛星を大量に打ち上げて世界中の利用者に低価格で高帯域幅のインターネットアクセスを提供しようとしている。

Starlinkミッションの打ち上げ予定時刻は米国東部夏時間の午後9時25分(日本時間6月4日午前10時25分)で、60基の通信衛星を宇宙に送り込む。同衛星ネットワークは、地球低軌道で420基をすでに運用している。最終目標は最大4万基の小型衛星を打上げ、広く利用できる接続サービスで地球を覆うことだ。ネットワークは全地球に広まる衛星間で接続を手渡しすることで頑強な接続環境を提供する。

この打ち上げは、NASAの宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏を国際宇宙ステーション(ISS)に送ったSpaceXのDemo-2(デモ2)有人ミッションの前の週に予定されていたが、スケジュール重複などを理由に有人飛行のあとに変更された。またこれは、2020年にSpaceXがStarlink衛星60基を飛ばす計画のうちで5回目の打ち上げになる。SpaceXは今年中に最大20回のStarlink打ち上げを実施することを予定しており、実現すれば、カナダと米国で今年中に新ネットワークサービスのベータテストを開始し、全世界では2021年か2022年に展開する計画だ。

打ち上げは米国フロリダ州ケープカナベラル空軍基地で行われ、過去4回のミッションをこなしたFalcon 9の第1段ロケットを使用する。SpaceXは再度のこの打ち上げロケットを誘導着陸によって回収し、さらに衛星貨物の保護に使われた筐体も、回収船の「Ms. Tree」および「Ms. Chief」を使って捕獲する予定だ。

この飛行で注目すべき大きな特徴は、Starlink衛星群が地上からの天体観測に与える影響を緩和するとSpaceXが期待する新技術をテストすることだ。科学者は、Starlinkの明るさが深宇宙の天体や現象のデータを集める高感度の光学機器を妨害すると苦情を呈してきた。それに対応すべく同社は、Starlink衛星が打ち上げ後に展開する「バイザー」システムを作り、衛星が太陽光を反射することを防ごうとしている。

SpaceXは今回打ち上げる60基のうち1つの衛星にこのバイザーシステムを搭載し、今後のStarlink衛星の標準装備とするかどうかをテストする。結果によっては、今後打ち上げられるStarlink衛星すべての恒久的設備になる可能性がある。

本日の打ち上げが延期された場合は、翌6月4日の米国東部夏時間午後9時03分(日本時間6月5日午前10時03分)が予備日となっている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXのCrew Dragon宇宙船がISSとのドッキングに成功

米国時間5月31日にEndeavor(エンデバー)と名付けられたSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船はISS(国際宇宙ステーション)に計画どおり無事ドッキングした。これにより商用有人宇宙飛行が可能であることが実証され、新しい時代の幕が開いた。SpaceXにとって初の有人宇宙飛行のテストパイロットに選ばれたのはNASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の二人の宇宙飛行士だ。民間企業が開発した機体で人間が宇宙に出たのはこれが史上初となる。

ドッキングは、Crew Dragon搭載のコンピュータによる自動制御で終始行われた。SpaceXのコンピュータシステムは、打ち上げ当初から地球帰還まですべてのプロセスをコントロールする。なおCrew Dragonは、ISSに新たに設置されたドッキングアダプタを利用できるよう設計されていた。旧システムはカナダ製のためにCanadarm-2と呼ばれるロボットアームをISS側で操作して宇宙船を捕獲して引き寄せる必要があったが、 新しいアダプターでは宇宙船が自動操縦でドッキングできる。

両宇宙飛行士を載せたCrew Dragonは、5月30日に米東部夏時間午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)に米国フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられた。当初の予定は27日だったが悪天候のために延期されていたものだ。「Demo-2」と呼ばれるミッションはNASAとSpaceXによる商用有人飛行の可能性を実証するためのCrew Dragpmの打ち上げとして2回目だったが、実際に宇宙飛行士が搭乗したのはこれが最初だった。

今回のISSとのドッキング成功で、ミッションの前半は成功したといえる。 SpaceXは有人宇宙船を予定どおり軌道に乗せ、宇宙ステーションにドッキングさせる能力があることを示すことができた。また宇宙船のマニュアル操縦のテストにも成功している。

ISSのドッキングアダプターのハッチは米東部夏時間5月31日午後0:37(日本時間6月1日午前1時22分)に開かれ、Crew Dragon側のハッチも直後の午後1:02(日本時間6月1日午前1時47分)に開かれた。ベンケンとハーリーの両飛行士はISSに移乗して米国人2人、ロシア人1人のISS側クルーの歓迎を受けた。今後数週間にわたって両飛行士は、実験・研究など通常のクルー業務に従事する。その後はCrew Dragonに戻ってISSから離脱、地球へ帰還してDemo-2ミッションを完了させることになっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook