4脚ロボットの開発を続けてきたBoston Dynamicsだが、同社のロボットを身の回りで見かけるようになる日はまだ遠いと思っていた。しかしBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は小型で高機能なロボット「Spot」の市販を開始した。実は一部のユーザーはすでにリースで利用中だという。価格は明らかでないが「高級車程度」という情報がある。
Boston Dynamicsはロボットをテーマにした昨年のTechCrunch SessionsでSpotをお披露目した(このときはSpotMiniという名称だった)。今年5月の同じカンファレンスではBoston Dynamicsとして初の商用を目指すプロダクトが登場した。障害物の多い環境でも踏破でき驚くほど多機能だった。このプロダクトがSpotというモデル名でついに販売が開始された。
Boston Dynamicsのビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるMichael Perry(マイケル・ペリー)氏はTechCrunchにインタビューに対してこう語った。
Spotは現在すでに実用に使われている。先月、から アーリーアダプタープログラムのパートナーにロボットを届け始めている。こうしたパートナーには「Spotが役に立つのはどういう場面ですか?」と尋ねている。もちろん我々自身の考えはあるわけだが、なんといっても重要なのは現実のユースケースだ。
現在アーリーアダプタープログラムはリースをメインとしているが、ストレートな買い切りでSpotを所有したいという希望が殺到しているという。オプションなどによって価格は大幅に変わってくるが、数万ドル(数百万円)のレベルらしい。もちろんこれはホビーロボットではない。
「アーリーアダプタープログラムについていえば、費用総額は自動車と同じくらいのレベルだ。ただし自動車といってもいろあるので(簡単に言えない)」とペリー氏は語る。
つまりあるユーザーはいちばんシンプルな骨格部分だけを必要とし、必要なセンサーなどを搭載したいというが、別のユーザーは既存のオートメーションの流れに組み込めるようなフル装備を必要とする、ということらしい。
どちらの場合でもカスタマー側にそれなりのエンジニアリング能力があることが前提だ。残念ながらSpotはスイッチを入れるだけで石油のパイプラインや精製施設を検査できるプロダクトではない。Spotは強力、多機能なロボットだが、Boston Dynamicsは特定の作業をただちに実行できるようなターンキー・サービスを提供する会社ではない。Perry氏はこう説明する。
ロボットと一緒に技術者を10人つけなくてもいい段階まで来た。ロボットを人間の近くで作業させたいケースも多い。安全性を確保するためには人間を検知、認識し、動作を変更する必要がある。我々のロボットではこれが完全にできるようになった。我々はGitHubのレポジトリに誰でもアクセスできるようにしている。しかし誰かかがプログラムを書いてロボットに組み込みたいというなら、現実として何ができて、何がまだできないかデベロッパーはよく理解している必要がある。
とはいえ、「何をさせたいか」を逐一列挙したホワイトペーパーを用意する必要はない。多くの企業はGitHubのレポジトリからプログラムをダウンロードしてしばらくテストしてみる程度でうまくいっている。条件があまり複雑でない特定のオペレーションを実行させたいのであればBoston Dynamicsに相談してみるといいだろう。
ペリー氏によれば「問い合わせのメールが殺到している。中にはペットにして冷蔵庫からビールを取ってこさせるのに使いたいというメールもある。それは楽しそうだが、我々のプロダクトはまだそこまで行っていない」という。
今のところ台の上にジャンプできる2脚ロボットであるAtlas(下の動画)の購入可能性についてはいまのところ情報がない。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)