クラウド経費精算サービスの「Staple」は、領収書ののり付け、交通費や交際費の計算から僕たちを解放してくれるアプリだ。その提供元であるクラウドキャストは6月27日、Stapleのミドルエンタープライズ版となる「Staple3」を発表した。8月1日より提供開始する。
交通費をタッチで読み取り
2014年9月にリリースしたStapleは、アプリへの手入力で簡単に経費を精算できるだけでなく、タッチによる交通系ICカードの読み取り(NFC対応のAndroid端末のみ)にも対応している。ICカードから読み取るデータには経費以外の交通費も含まれるが、アプリやWebサイトでその中から経費として申請するものを選択する仕組みだ。定期区間も自動控除される。
領収書を撮影した画像を経費レポートに添付すれば、財布の中にたまったのり付け前の領収書ともおさらばだ。
Stapleは弥生会計、MFクラウド会計、freee、A-SaaSなど合計10社の会計ソフトと連携しており、経理担当者は同アプリから主要な会計ソフトへのデータ出力が可能だ。
Staple上でFBデータ(参考)を作成し、振り込み処理の負担を軽減することもできる。先日、マネーフォワードが銀行の更新系APIを利用した振り込み自動化サービス(アプリから1クリックで振り込み依頼できる)をリリースしているが、Stapleの機能は更新系APIを利用したものではない。Stapleで可能なのはFBデータの作成のみで、そのFBデータをインターネットバンキングにアップロードするのは経理担当者が行なわなければならない。
新しいStapleのターゲットは200〜300人規模の企業
ここまでに説明した機能は、本日発表されたStaple3にも踏襲されている。従業員が20人以下のSMBをターゲットにしていた従来のStapleと、ミドルエンタープライズ版のStaple3との主な違いは、200〜300人規模の企業で便利な「社内ポリシー」と「多段階承認フロー」の設定機能が実装されているかどうか。
社内ポリシーの設定機能では、例えば”3万円以上の経費申請では領収書の写真添付が必須”などのルールを経理担当者が自由に設定することができる。部署やプロジェクト単位でポリシーを設定することも可能だ。
従業員が多くなるにつれて承認フローが多段階になりがちだが、Staple3ではそのような承認フローも自由に設定できるようになった。
また、Staple3はMicrosoftの「Azure Active Directory」および「Office 365」と連携しているため、社内の人事データをStapleにとり込むこともできる。こうすることで、(社内の)接待の相手を入力する際に名前がポップアップするなどの機能が追加された。このあたりは、今後例えばSansanやWantedly Peopleのような名刺管理サービスとのAPI連携が実現すれば、社外の人間のデータも取り込めて、より便利になりそうだ。
ところで、Stapleと同種の経費精算アプリは、会計ソフトを提供するマネーフォワードやfreeeもリリースしている。仮にユーザー企業がマネーフォワードの「MFクラウド会計」をデフォルトの会計ソフトとして導入している場合、経費精算アプリもマネーフォワードのものを使うという流れはごく自然なもののようにも思える。そのような状況下でStapleはどのように戦っていくのだろうか。
クラウドキャスト代表の星川高志氏は、「Stapleの強みは、どのような会計ソフトとも連携できる『中立性』だ。クラウド会計ソフトが普及し始めたとは言え、中小企業への普及率はまだまだ低い」と語る。Stapleを使っている企業が今後どのような会計ソフトの導入を決めたとしても、”Stapleは継続して使える”というのが訴求点になりうるということだろう。
従来のStapleは初期費用0円、従業員1人につき月額600円という料金設定だった。新しいStaple3の月額料金も同じ600円だが、10万円〜の初期費用が発生する。