CBSの動画配信サービスCBS All Access(オールアクセス)は、新シリーズ『スタートレック:ピカード』の初回配信、第62回グラミー賞授賞式、そして言わずもがなのフットボールの最盛期といった3つの大きなイベントで人気を博し、1月の新規加盟者数が過去最高となった。同社によれば2020年1月は、2019年2月の新規加入者数の記録を超えたという。さらに先週は、2019年のスーパーボウルの週の記録に迫る、過去2番目の数をたたき出した。
この記録には、期待されていたドラマ『スタートレック:ピカード』の配信開始が大きく寄与している。ファンの間で大人気のパトリック・スチュワート演じるジャン=リュック・ピカードは、惑星連邦宇宙艦隊の提督を引退し、家族のブドウ園で静かに暮らしていたが、その生活が脅かされる。物語は、『新スタートレック』シリーズの最後の劇場版映画『ネメシス/S.T.X.』の18年後の設定になっている。この作品はピカードを引っ張り出しただけではない。新スタートレックに登場したデータ(ブレント・スピンナー)、セブン・オブ・ナイン(ジェリ・ライアン)、トロイ(マリーナ・サーティス)、ライカー(ジョナサン・フレイクス)も呼び戻した。
本作品は、視聴者のノスタルジーだけを求めた他のリブート作品とは異なり、『ピカード』の作家陣は番組が伝えたい内容をよく考えている。その結果、映画評論サイト『Rotten Tomatoes』では95パーセントという高評価を得た。
CBSはまた、『ピカード』のエピソード1は総配信数の記録を更新し、CBS All Accessのオリジナル・シリーズでは、過去最高の加入者数を獲得したと話している。
『ピカード』の総配信数は、もうひとつのスタートレック・シリーズであり不人気のうちに終わった『スタートレック・ディスカバリー』が打ち立てたCBS All Accessの最初の記録と比較して、115パーセント以上も上回った。しかも、CBS All Accessのオリジナル・シリーズを視た加入者数として『ディスカバリー』以前の記録を180パーセント以上も上回っている。
一方、グラミー授賞式は、今まででもっとも多くの配信数を記録し、授賞式が行われた1月25日の日曜日には、新規加入者数の新記録を打ち立てたとCBSは伝えている。新規加入者数は、2019年の80パーセントを超える増加率で、これは同サービスのユニーク視聴者のうちの30パーセント以上を占めている。
ただし、CBS All Accessのみの加入者総数については、CBSは公表していない。また、どれだけの数が広告なしのプランにアップグレードしたかも不明のままだ。
代わりにCBSは、CBS All AccessとShowtimeのOTTサービスの加入者数を1000万人とだけ発表している。
いずれにせよこの数字は、NetflixやHuluといったライバルの動画配信サービスには遠く及ばない。Netflixはアメリカ国内の加入者数が6100万、Huluは2900万となっている。Disney+やApple TV+といった新顔も急成長している。Disney+は加入者数が2320万から2500万と推定されている。Apple TV+はさらに多いとの見積もりもあるが、調査会社の調査方法には疑問が残る(Apple TV+は、Appleのデバイスを新しく買った人は1年間無料で利用できるわけだが、だからといって視聴しているとは限らない。今後、有料プランで利用するかもわからない)。
要するに、これらの数字が示しているのは、CBSが成長するためには、フットボールや季節のイベント、新しいスタートレック・シリーズ以上のものが必要だということ。『スタートレック:ピカード』がヒットしたとしても、スタートレックだけが目当てのファンたちは、番組配信時にだけ加入して、シリーズが終われば解約してしまう。なかには、一気見配信が始まるまで待つ人もいるだろう。それなら、無料トライアルで見終えることもできる。
だが、新しくViacomCBSを合併したことで、新たなオプションが使えるようになった。合併の結果として、ニコロデオン、BET、MTV、Comedy Centralの番組がCBS All Accessで見られるようになることをViacomCBSの経営幹部たちは示唆している。これにより、2022年までにCBS All Accessの加入者は2500万人に達すると同社は見込んでいる。
「このサービスは、目覚ましい継続的な成長を遂げてきました。そして『スタートレック:ピカード』、グラミー授賞式、フットボールの最高のシーズンにより達成された新記録は、CBS All Accessにとって夢のような年のキックオフを飾るすばらしい出来事となりました」と、ViacomCBSの最高デジタル責任者であり、CBS Interactiveの社長兼CEOのMarc DeBevoise(マーク・デベボワース)氏はいう。「CBS All Accessは、オリジナル・シリーズからスポーツ、スペシャルイベントなどの多様ですばらしい番組で、今後も成長を続けます。私たちは、見逃せないドラマやイベントが絶え間なく続く番組表を提供できるように、2020年の戦略的な計画を立てています」と話した。
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(翻訳:金井哲夫)