Microsoftは、単語予測キーボードのiOSアプリを公開した。Appleのモバイルエコシステムの人気に乗じて、自社のモバイル生産性分野の影響力を高めようとしている。
Word Flowアプリは、Microsoftの社内実験プロジェクト部門であるGarageが開発したもので、米国のApp Storeで公開した ― 欧州ではまだ利用できない。
今月始め、同社はiOSユーザー向けにベータ版のサインアップを開始したが、今回は米国ユーザー向けとなった。アプリは当初自社スマートフォンプラットフォーム(Windows Phone)のために開発され、デスクトップ製品であるWindows 10にも提供された。
次の単語の予測に加え、Word Flowアプリはスワイプ入力 ― Swype等のキーボードアプリと同様 ― による高速テキスト入力も約束している。やや目新しいのが片手タイピングモードで、キーボードを円弧状に表示することで親指だけを使った入力を容易にする。ユーザーはWord Flowキーボードの外観をカスタマイズすることもできる。
キーボード技術は、MicrosoftがWindows Phoneプラットフォームの初期段階から、先行するライバルから市場シェアを奪う方法の一つとして探究してきた分野だ。キーボードに力を入れた理由の一つは、当初AppleはデベロッパーにiOSシステム全体で使えるキーホード開発を認めておらず、またiPhoneネイティブのキーボードに新機能を追加するのが遅く、他社につけ入る隙を与えていたことだ。
しかし、クパチーノは2014のiOS 8でシステムワイドのキーボードに対する方針を変更し、外部デベロッパーに開放すると共に、自社キーボードにも機能を追加した(独自の単語予測機能等)。一方、Microsoftのモバイル市場シェアに勢いをつけAndroid-iOS複占に風穴を開けるという希望は実現することなく、アプリ開発でモバイル市場に大きな足跡を残すことに注力せざるを得なくなった。
この戦略をさらに進めるべく、同社は2月にロンドン拠点のキーボードメーカーで次単語予測の先駆者、SwiftKeyを2.5億ドルで買収した。当時同社は、Swiftkeyの技術を既存のWord Flow技術に組み込むと共に、自社製品を横断する中核技術として採用すると言っていた。
MicrosoftはSwiftKeyアプリも継続して提供すると言っている。機能はWord Flowと明らかに重複するが、前者の方が多数の利用を期待できる。Microsoftに買収された時点で、SwiftKeyはAndroid、iOSおよびSDK(殆どがAndroidプラットフォーム)合わせて約3億台のデバイスにインストールされていた。
Word FlowはMicrosoft唯一のキーボード製品ではない。Garage部門はこれまでにもHubと呼ばれるキーボードアプリをiOS向けに提供している。ただしこのキーボードは、マルチタスキングやOffice 365ユーザーがOneDriveやSharePoint等他のMicrosoftサービスを検索できるようにすることで生産性を高めることに焦点を当てたものだった。そのため、バルセロナ拠点のキーボードスタートアップ、ThingThing等のオープンな生産性向上キーボードほどには興味を引かない。
メッセージングアプリが、プラットフォーム上のプラットフォームとして拡大する力を見せつける中(例えばWhatsAppは月間10億アクティブユーザーを記録)、キーボードのような生産性アプリがその規模に達することは殆ど期待できない。
実際、SwiftKeyのMicrosoftへの売却を見ても、生産性アプリの成長がずっと困難で限界があることがわかる(そうなると、Microsoftがはるか前の2011年に買収した有名メッセージングアプリのSkypeの開発や市場シェア拡大に注力してこなかったことへの疑問が持ち上がってくる)。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)