Virgin GalacticとNASAが共同で2点間移動用の超音速機を開発へ

Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)は、米国時間5月5日にNASAとの新しい提携契約を公表した。地球上の2点間移動のための高速航空機の開発が目的だ。NASAはこれまでも、超音速航空機の開発を独自に行ってきた。Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)が製造した低衝撃波の超音速試験機X-59はその1つだが、今回のVirgin Galacticとその子会社The Spaceship Company(ザ・スペースシップ・カンパニー)との新たな提携契約では、特に持続可能な高速移動技術を民間および商用航空に適用する道を探る。

Virgin Galacticは、このプロジェクトで幸先のいいスタートが切れると確信している。その理由の筆頭に挙げられるのが、現在が保有している航空機の開発、エンジニアリング、試験飛行を行ってきた実績だ。同社にはWhiteKnightTwo(ホワイトナイトトゥー)母機や、その母機から発射されて大気圏と宇宙の境目まで到達できる有翼宇宙船SpaceShipTwo(スペースシップトゥー)がある。Virgin Galacticのシステムは、通常の滑走路から離陸しまたそこへ着陸できるように構成されている。ロケット推進式のSpaceShipTwoは、地球の大気圏と宇宙との境目をかすめて飛行でき、商用宇宙観光として客を乗せ、感動的な眺めや短時間の無重力体験を提供することになっている。

実際、Virgin Galacticの技術は2点間高速移動に最適なように思える。おそらくSpaceX(スペースエックス)とその建造中のStarship(スターシップ)を使った野心的な計画の数々によって一般に認知されるようになった2点間移動は、超高速で地球上の2点をつなぐという考え方だが、大気圏の非常に高い(現在の民間航空路線の高度よりもずっと高い)ところか、もしかしたら宇宙空間を通ることになる。高高度を飛行するのは、空気が薄く空気抵抗も低いために超高速で飛行できるからだ。例えば国際宇宙ステーションは、地球の周回軌道を90分で1周している。

SpaceXによると、Starshipならニューヨークから上海までの移動はわずか40分だという。今の飛行機なら16時間かかる。Virgin GalacticもNASAも、まだまだ所要時間を語れるような段階には至っていないが、単純に比較するならばSpaceShipTwoの最高速度はおよそ時速4000kmなのに対して、ボーイング747はおよそ988kmだ。

Virgin GalacticとNASAのこの新しい提携は、米国Space Act Agreement(宇宙法協定)に基づくものだ。これはそのさまざまな目標、ミッション、計画指令の達成に役立つとNASAが判断した団体の協力を得るためにNASAが利用するという形の協定だ。具体的にどんなものになるかを想像するのは時期尚早だが、Virgin Galacticはその広報資料の中で「乗客の満足度と環境への責任にを重視した、次世代の安全で効率的な高速航空移動のための航空機の開発を目指す」と述べている。そしてそれは「業界のパートナーたち」との共同で行われるとのことだ。

画像クレジット:Mark Greenberg / Virgin Galactic / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

民間弾道飛行での宇宙飛行士の訓練にNASAは期待を寄せる

宇宙を第二の故郷と呼ぶ宇宙飛行士でさえ、初飛行を経験している。NASAは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)に委託して宇宙飛行士たちを弾道飛行を体験させ、数々の挑戦的な宇宙計画に備えてもらおうと考えている。これは現在、芽生え始めている民間宇宙飛行業界に新たな巨大市場が開かれることを示唆している。

2020年3月に開かれたNext Generation Suborbital Researchers conference(次世代準軌道研究者会議)で、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官が演壇に立ち、NASAが現在民間ロケットの利用を検討しているのは、単にこれまでその可能性が存在していなかったからだと話した。

「それは、つい最近まで私たちが国として所有していなかった能力です」と彼は、Space.comの記事の中で語っている。

だが、現在その能力が確かにあると断言もできない。Virgin GalacticもBlue Originも、宇宙との境目をほんのかすった程度の弾道(準軌道)飛行を実証できただけで、試験飛行や商用飛行となると、まったく別の話だ。

関連記事:Virgin GalacticのSpaceShip2がマッハ2.9で宇宙の淵に到達(未訳)

Virginは既にチケットを発売しているが、客を乗せた初飛行の日程は決まっていない。2020年中に行われる公算は大きいが、信頼できるスケジュールを立て、ミッションの成功を記録しない限り、現時点ではただ熱望しているだけとしか見えない。それが宇宙旅行というものだ。その道の99パーセントは、まだ霧の中だ。

だがVirginにせよBlue Originにせよ、ロケットの打ち上げを請け負うその他の企業にせよ、今後数年以内に、ペイロードや人を乗せる能力を持つ宇宙船の弾道飛行を成功させることは間違いない。NASAが彼らの採用に熱心なのは、そのためだ。

それと同じぐらい避けられない現実として、奇妙に思えるのは宇宙飛行士の訓練をすべて地上で行わなければならないことだ。彼らはさまざまなシミュレーターで訓練を行う。いわゆる「嘔吐彗星」や、彼らが大好きなプールでのトレーニングなどだ。それでも宇宙を体験するには、宇宙に行くしかない。

Commercial Crewのデモミッションで最初にISSへ飛行する予定の宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)。Crew Dragon宇宙船のシミュレーターを操作している。

つい最近まで、それは何億ドルもするロケットの先端に乗ってISSまで飛ぶことを意味していた。またはその昔は、オービターや着陸船で月へ行くことを意味していた。

その準備として可能なことはほんのわずかしかないが、ごく限られた中の1つとして、安価で一時的な宇宙飛行がある。それを実現するのが弾道飛行だ。

ロケットで大気圏外に出て、その結果として数分間の無重力を体験できる環境は、訓練や実験や、その他のこれ以外には軌道上でしか行えない活動にはうってつけだ。NASAはその実現を期待しているのだが、まだ実際の契約には至っていない。

VirginやBlue Originなどの企業は、最初の数回の弾道飛行によりチケットの完売をほぼ確実にしたが、宇宙ツーリズムには産業としての実績はなく、また現在のパンデミックやその後に予想される経済の落ち込みにより、そうした高額商品(または宇宙ツーリズムを提供する能力)は深刻なダメージを受ける恐れがある。そのためこうした政府との定期契約は、弾道飛行の提供や支援を行う企業にとっては、ほぼ間違いなく大きな安心となる。

「これはNASAにとって大きな移行ですが、重要な移行です」とブライデンスタイン長官は言う。この移行は、近年の政府事業がそうしているような、単に民間企業への委託を増やすという程度の話でなく、民間飛行を公式なトレーニングに利用するということだ。飛行は徹底的に安全でなければならないが、ISSへの飛行時と同じ厳格な基準に従う必要もないと長官は述べている。

実際にはNASAが運用しない飛行でのトレーニングやテストが増えることで、新しいミッションの準備が促進される。準備が加速されると同時に、その能力を唯一持っていたNASAによる飛行ミッションに依存するこれまでのようなプログラムの煩雑さが低減される。私は、この件に関する詳しい内容をNASAに問い合わせている。新しい情報が入り次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)

VirginグループがBoomと大型プション契約―超音速旅客機プロジェクトに強力な支援者

2016-03-24-boom

読者の多くはすでにBoomについていろいろ聞いていると思う。

Boomは比較的新しいスタートアップで、かなりクレージーな目標を立てている。このチームが作ろうとしているのはアプリでもソーシャルネットワークでもなく、Kickstarterで投資を募れるようなガジェットでもない。

Boomが作ろうとしているのは非常に高速の旅客機だ。

正確に言えば、マッハ2.2以上で飛ぶ超音速旅客機の設計と製造を目的としている。計画どおりに進めば、乗客はニューヨーク・ロンドン間を3.5時間、サンフランシスコ・東京間を4.5時間で移動できる。

クレージーなアイディアには違いない。 しかしプロジェクトはまだきわめて初期の段階にある。新しい旅客機を作るというのはとてつもなく複雑であり、高度なエンジニアと巨額の資金を必要とする。チームはプロトタイプの製造に取り組んでおり、来年後半に飛行できるようになると期待としている。

Boomのチームはこの分野で大きな実績を挙げた強力な人材で構成されていることは指摘しておく必要があるだろう。現在の11人の社員は、トータルすると30機以上の設計、製造に携わっている。これには787のオートパイロットシステム、ジェット戦闘機のエンジン、Spaceship Twoの航空力学などが含まれる。社員の一部は元NASA、元ロッキード、元ボーイングなどのエンジニアだ。

今日(米国時間3/23)、Boomプロジェクトは強力な後援者を得たことが判明した。Virginだ。

Boomの発表によれば、リチャード・ブランソン会長率いるVirginグループと10機のオプション契約を結んだ。実機の引き渡しができれば20億ドルに相当する金額となる。またBoomはヨーロッパの航空会社からさらに15機のオプションを得ていると発表した。ただしどの会社かは明らかにされていない。現在までのオプションの総額は50億ドルだという。

ただしVirginグループはまだこの機体を買ったわけではない。まだその段階ではない。Virginは購入の意思があることを示す趣意書( letter of intent)に署名した。これは事業が計画どおりに進み、詳細な仕様が明らかになり、会社がさらに意思決定をしたうえで、10機を購入するという意図を表明したものだ。

同時に、この契約はVirginが事業の実現を助ける意思があることを意味する。Boomのファウンダー、ブレイク・ショルは私の取材に対し、Virginグループの宇宙部門Virgin Galactic傘下の宇宙往還機製造会社、The Spaceship CompanyがBoomのデザインとテストに協力することを約束したと述べた。これには、その時期が来たら超音速テストを実行することも含まれるという。

アップデート: Virginグループ側からも正式発表があった。広報担当者はGuardianに対して次のように述べた。

Boomのエンジニアリング、デザイン、製造、試験飛行、さらに運行業務に関してThe Spaceship Companyが助力することを約束したことを確認する。われわれは10機分の機体についてオプションを得た。現在プロジェクトは初期段階にあり、VirginとBoomの共同の野心、努力の詳細は今後明らかにされることになるだろう。

このプロジェクトは要注目だ。物理的実体のあるブロダクトを製造するのはなんによらず難しい。しかし史上最速の―悲運のコンコルドよりさらに速い―旅客機を設計、製造するとなると、その困難さはまったく違うレベルになる。

Boomに対する投資家にはY Combinator、Sam Altman、Seraph Group、Eight Partnersと匿名のエンジェル投資家が含まれる。Virginグループが資金提供の面でも協力するのかどうかについてBoomはコメントを避けた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

VirginとTesla、宇宙のみならず地上でも「領土」を巡って戦線拡大を予定

「サー」の称号をもつリチャード・ブランソンは、ロケットから携帯電話まで、さまざまなプロダクトを扱う企業を所有している。ヴァージングループのファウンダーでもあるブランソンは、宇宙関連事業のみならず、車関連プロダクトでもElon Muskのライバルとして成長していくつもりであることを表明してている。

地上におけるプロダクトでもElon Muskをライバル視していくことを明らかにしたのはBloombergでのインタビューにおいてのことだ。傘下の企業が電気自動車レースに参入予定である件に触れ、宇宙ビジネスに引き続いて、自動車ビジネスにおいてTeslaと競っていくつもりであることを語っている。傍目では今後の対決が愉しみではある。

自動車業界での活躍を予定するVirgin Racing Engineeringは、Formula Eで闘うべく、EVマシンの製造を行なっている。Forumula Eとは、その名の通り、化石燃料を使用しない電気自動車で争われるレースだ。来年に参戦する10チームのうちのひとつを担う予定でいる様子。

Virginは大衆車からレースカーまで、さまざまな分野に参入する心づもりであるらしい。Virginにパーツを提供しようとするOEMメーカーも世界中に存在する。ヴァージングループだけでみても、さまざまな分野で400社以上を抱える規模となっている。そうした総合力を背景に、Virginは躊躇なく新しい分野に参入してくるのだろう。新規参入する分野でVirginが思いもよらぬ成功をおさめるといった可能性はゼロではなく、Virginによる電気自動車関連プロダクトの可能性にも、業界の内外から注目があつまっている。

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(翻訳:Maeda, H