2014年にうちが乗らなかった大物投資機会はBitcoinサーバと国産エネルギー

[筆者: Tom Carter]

編集者注記: Tom CarterはサンフランシスコのFountain Partnersのファウンダでマネージングパートナー。同社は、創業期、成長期、および拡張期の企業に、主に機器設備購入のための資金を投融資している。

昨年はベンチャーの分野で企業の信用リスクを評価したり引き受けたりを、めしのたねにしている者にとって、おもしろい年だった。AirbnbやUberやWhatsappなどが示した明確な商業的成功は、すでに肥沃で、人によってはバブルっぽいとも言われる合衆国のベンチャーキャピタルとシード段階のエクイティマーケットに、さらなる刺激を与えた。非公開企業への投融資を扱うマーケットでは、弊社Fountain Partnersもこのマーケットの一員だが、リスクという点でいちばんおもしろい分野が、bitcoinのマイニングとクラウドホスティング、モバイルメッセージサービス、合衆国産のエネルギー、そして大麻だった。

大麻/マリファナ
コロラド州とワシントン州では、マリファナのレクリエーション的使用が合法化され、ビジネスとしての大麻の生産と販売が急伸した。しかし投資の件数は非常に少ない。わが社Fountain Partnersでも、他社同様、連邦法が認めていない大麻ビジネスへの投融資は“ノー”と言わざるをえない。

エネルギー
国産エネルギーは、すでに多くの企業が相当な売上を達成しているから、安易な投資先だ。しかしまだ、石油も天然ガスも、今後の生産や需給に関する情報量が少なすぎて、思い切った投資はやりにくい。

職場も住居もサンフランシスコにある人間は、電気カーの普及の進展を毎日のように目にしている。その光景も、やはり、今後の石油関連の大きな投資をためらわせるに十分だ。むしろ、電気カーなら投資したくなるだろう。

モバイルメッセージング
2014年には、モバイルメッセージングシステムを評価するにあたり、次のように問うた: “ユーザ数9000万は、FacebookでもSnapchatでもInstagramでもない閉じたコミュニケーションシステムの臨界質量と考えてよいのか?” そして、“各ハンドセットメーカーのメッセージングシステムは広く使われるようになるのか?” 

クラウドホスティング
メッセージングに比べると、クラウドホスティングの方が、投機的リスクは少ない。企業が広く利用しているし、売上も安定しているからだ。しかしこの業態にも、今後の“供給過剰”というリスク懸念は残る。

マイニングとbitcoinの真実
しかし、あらゆる投資分野の中で、Fountain Partnersの立場から言っていちばん胸騒ぎがしたのは、bitcoinのマイニングを果たして投資家として支援すべきか?すべきでないか?、という問いだった。

2014年に弊社は、bitcoinのマイニングに向けて設計され最適化されているサーバの製造企業への数百万ドルの投資、という魅力的なお話をいただいたことがある。bitcoinをマイニングするために必要な専用のハードウェア、という新しい業態があること、それらの企業は、自分のためまたは、マイニングをしたがっているほかの企業のためにサービスとしてマイニングを行うこと、などをわれわれは知った。この、降って湧いた機会を評価するために、次のような疑問を掲げた:

  • bitcoinとブロックチェーンの技術はなぜ重要なのか、その効用は何か?
  • bitcoinの使用を取り巻く規制環境はどうなっているのか?
  • bitcoinの需給環境はどうなっていて、今後どう進化するのか?

それは、投資に関する正しい決定を、最小限の時間内に下さなければならない、という、ある種楽しめる案件でもあった。しかしbitcoinのマイニングに関しては、通常の投資案件以上に、調べること、理解すべきことが多かった。Satoshi Nakamotoのホワイトペーパーも読んだが、最終的には、実際に投資をするためには、以下の仮定項目が概ね真であると信じられなければならない、という結論に達した:

  • bitcoinのエコシステムは法による保護や規制がなくても効用があり、政府はその使用を今後とも妨害しない、
  • bitcoinの採用が十分な量にすでに達しているか、または今後達する見込みがある、
  • そのシステムは十分なハッキング耐性があり、また詐欺に対する保険の市場が今後発達する、そして
  • bitcoinを作るシステムは悪用できない。

以上が真であることに確信を持てたら、次の、需給関連の疑問に進んで、bitcoinのマイニングというサービスの経済性を評価できる。

そのきわめて低レベルの流動性と価格により、bitcoinのマイニングが儲からないことは自明だった。bitcoinの価格動向にはいろんなシナリオがありえるが、われわれの投資先のサーバやマイニング努力の価値が、そのほかの意欲的で資金状態の良い市場参加者によって継続的かつ急速に侵食されることは、容易に想像できる。

案件調査を開始した直後にある筋が、中国政府がbitcoinのマイニングに手を染め、しかも今後そのシェアを拡大するつもりだ、と言ってきた。国営マイニングではなく、民間への電気やサーバの費用の補助、という形でそれは行われる。しかし中国の補助政策があろうとなかろうと、ハードウェアや、何らかのハードウェア/ソフトウェアの組み合わせが今後進歩して、今のハードウェアが陳腐化することは想像に難くない。

Satoshiのホワイトペーパーには マイニングシステムの健全性は、“必ず誠実なノードがCPUパワーの大半をコントロールすること”、という条件に依存する、と書かれている。マイニングとトランザクションのパワーを一般大衆が手にするものになるのか、それは分からないが、可能ではある。

人間には、最新のものに飛びつきたいという心の偏りが自然にあり、bitcoinの成長を支援することに貢献したい、という強い気持ちもある。しかしもちろん、もっとセキュアな金銭的トランザクションであってほしい、と誰もが願う。法定通貨にも良からぬ操作や価値の低下があるときにはある。しかしそれでも、われわれはサーバへの投資を遠慮することにした。マイニングビジネスに固有のリスクがあるだけでなく、bitcoinのマイニングに使われるそのサーバがあまりにも専用機なので、それらを普遍的な価値(売買価値)のある資産として取り立てることができない。その点に、幻滅した。

われわれが投資を断わってから、bitcoinの価格の急落があり、bitcoin取引所Bitstampにおける不運なハッキングがあった。しかしそれでも、bitcoinのサーバへの投資を検討する機会は、今後のいろいろなブロックチェーンの実装やbitcoinの進化などをめぐって、われわれの心をワクワクさせた。2015年は、今の金融技術企業たちが、これまで築いた中核的な基盤の上でさらに成長し、2014年の不調な資金調達活動を恥じ入らせるような成果を上げるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


マーク・ザッカーバーグ、「今年の挑戦」はブッククラブ―最初の推薦書は即刻売切れ

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグは若い世代にとってのオプラ・ウィンフリーになりつつある。ザッカーバーグは、恒例の「今年の挑戦」のアイディアをFacebookで募集した〔過去の挑戦の中には「自分で殺した動物の肉以外は食べない」というものもあった〕。その結果、ザックは「ブッククラブを始める」というアイディアを採用した。さすがにザックの影響力はすさまじく、最初に選ばれた本、 The End of Power〔権力の終わり〕のペーパーバックはAmazonで即座に売り切れてしまった。

指導者と個人の間の権力の配分を考察したこの本はすでに以前から高い評価を受けている。フィナンシャルタイムズの2014年のベスト・ブックに選ばれているし、アリアナ・ハフィントンもAmazonで推薦している。しかしザッカーバーグが推薦するまで売り切れることはなかった。

それに版元のバーンズ&ノーブルからも入手できないようだ。古本ならBarnes and Noble Marketplaceで売りに出ているかもしれない。 ハードカーバー版はAmazonマーケットプレイスにかなり出ている。もちろんKindle版は売り切れていない。

ザックは自身のFacebookページで、さまざまな挑戦のアイディアを提供した5万人のFacebookユーザーに感謝し、「良い本を読む」というアイディアが一番多かったとして次のようにと 述べた。「2015年の挑戦は『2週間ごとに1冊新しい本を読む』ことに決めた。異なる文化、信念、歴史、テクノロジーを学ぶことに主眼を置きたい」。

ザックはA Year of BooksというFacebookグループを作った。すでに10万人以上が「いいね!」を押してフォローしている。

オプラ・ウィンフリーは数年前にOprah’s Book Club 2.0というデジタル・ブッククラブをオープンしており、クラブの公式Twitterアカウントには13万8000人のフォロワーがいる。ただしFacebook上には公式ページはない。しかしオプラには自分のFacebookページに1000万人以上のファンがおり、デジタル雑誌のO, The Oprah Magazineのページには66万人のファンがいる。またOWN, the Oprah Networkのページには300万人のファンがいる。しかし、オプラならこれぐらいは当然かもしれない。

しかしザッカーバーグ自身のFacebookページには2300万人のファンがおり、これはオプラのファンの2倍以上だ。しかしこれもザッカーバーグだから当たり前なのだろう。

オプラは出版社にとってある種のゴッドマザーだ。「オプラ効果」と呼ばれるオプラの推薦は無名の本を100万部単位の一大ベストセラーに変える。Nielsenの調査によれば、Uwem Akpanの Say You’re One of Themはオプラの推薦で売れ行きが一挙に8.5倍になったという。

しかしザックもベストセラー・メーカーとして十分にオプラに匹敵しそうだ。出版社はオプラ効果を十分に承知しているので、推薦を受けた本はすぐに大増刷する。そこで最新の推薦書、Sue Monk KiddのThe Invention of WingsはAmazonでもBarnes&Nobleでも品切れになっていない。今年、出版社はFacebookのファウンダーがの本を推薦するか注意している必要がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


地上施設の要らない空中浮揚型風力発電機のAltaeros Energies社にSoftBank が$7Mを投資

またまた、SoftBankからの投資のお話。今回、この日本の大手通信企業は、700万ドルをAltaeros Energiesに投じた。同社はMassachusetts Institute of Technology(MIT)の学内起業で、空中浮揚型の風力発電機を作っている。

Altaerosへの投資は、SoftBankの投資の中では小さい方だ。最近の例ではGrabTaxiSnapdealOlaなどに数百万ドルを投資しているが、今回は同社の投資ポートフォリオの中身がきわめて多様であることを示す点で興味深い。しかも今回の投資は、再生可能エネルギー源の可利用性が増えすぎてクリーンテック企業への投資がやや冷え込んでいた時期に行われている。

しかしSoftBankは、日本でもこれまで、クリーンエネルギービジネスの育成投資に熱心だった。とりわけ2011年の福島の惨事により、日本では、核エネルギーに代わる代替的エネルギー源への関心が盛り上がっているのだ。

たとえば今年の初めに同社は、同社のクリーンエネルギー部門が、ソーラーや風力などの再生可能エネルギー源の小売流通を開始する、と発表した

声明の中でSoftBankの会長でCEOのMasayoshi Sonは、Altaerosの技術は新たな垂直市場におけるSoftBankの投資家としての今後の立場を、より有利かつ強力にする、と述べている。

Sonは曰く、“Altaerosの空中浮揚型風力発電機は、離島や日本とアジア太平洋地区の各地域のための、新しい将来性のある再生可能エネルギーのソリューションだ。またこのBAT(Buoyant Airborne Turbine)と呼ばれる技術には、通信や観測の技術と組み合わせた新しいビジネスを作り出す可能性があると思われる”。

AltaerosのBuoyant Airborne Turbine(BAT, 浮揚型空送タービン)と名付けられた風力発電機は、タワー型風力発電機よりも高い、最大高度2000メートルの空中に浮揚する。地上工事が必要ないBATは、タワーを建設できないところでも利用できる。Altaerosの主張によると、BATは僻地等における電力のコストを大幅に下げ、しかも遠隔地への機器装置の搬入も容易であり、代替アンテナとして通信サービスを提供することもできる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


再生可能エネルギーを用いた三葉飛行機が、実現を目指してKickstarterに登場

三葉機(Triplane)は、第一次世界大戦をもって退役したものだと思っていた。しかし再生可能エネルギーを利用するハイブリット電気飛行機として復活させようとする動きがあるようだ。FaradAirが、実現に向けたKickstarterキャンペーンを展開中なのだ。

バイオ―電気ハイブリッドの飛行機(Bio-Electric-Hybrid-Aircraft:略してBEHAと呼ぶようだ)は、世界初のハイブリッドなエコ飛行機の実現を目指すプロジェクトだ。2020年の実現を目指すという、少々気の長いプロジェクトではある。航空宇宙工学で名を知られるイギリスのクランフィールド大学(Cranfield)など米英の技術パートナーやベンチャーなどを巻き込んだプロジェクトとして運営していく予定であるらしい。

マネージング・ディレクターのNeil Cloughleyは、夜間の騒音対策や公害対策に対するソリューションともなり得ると話している。

既存テクノロジーとの最も大きな違いは、そのサイズにあると言えるだろう。これまでに発表された電気飛行機は、長大なグライダー様の翼を備えていて、それがために利用範囲が制限されるということにもなっていた。しかし三葉化することで、BEHAは一般的な飛行機と同様なサイズに収めることを可能としている。

飛行機上面はほぼすべてソーラーパネルで覆われており、風力タービンも備えていて、それにより地上にいるときも、飛行中にもバッテリーを充電できるようになっている。

ちなみに飛行機1台あたりの価格は100万ドルを見込んでいるとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H


合衆国エネルギー省がソーラーのソフトコスト低減のための起業企画を募集

このところ、アメリカの商用太陽光発電は、企業への政府補助と中国のメーカーとの厳しい競争で、価格が急落している。エネルギー省の育成事業SunShot Initiativeで、そのインキュベーション部門Catalystを担当しているVictor Kaneによると、2010年に比べて今ではほぼ50%低下しているという。この育成事業の主な目的は、ソーラー発電のコストを2020年までにそのほかの発電方法と互角にすることだ。

一般住宅等への据え付け費用では、いわゆる“ソフトコスト”が増加している。たとえば顧客獲得経費は、売価24000ドルの据え付けで2000-4000ドルを占める。そこでSunShotは、ソーラービジネスにおけるこれらの非効率を取り除くことに、取り組み始めた。

今年、SunShotのCatalystインキュベータは、消費者調査を行って、ソーラーエネルギーにおけるソフトコスト関連の問題を130件同定した。そしてそれにより、ソーラーを購入しようとする消費者が情報を見つけづらい、大規模な据え付けでは検査費用が高い、などの問題が浮き彫りになった。

5月には、ソーラ業界の外部からアイデアを募集する事業が行われ、起業家や技術者等に、ソフトコスト対策のアイデアやプランを素描する5分間のビデオの制作と提供を求めた。提出の締め切りは東部時間で11月7日11:59PMだから、今からでも間に合う。

締切後にはCatalystのチームと外部エキスパートによる審査が行われ、20件がNational Renewable Energy Laboratoryからのガイダンスと最大25000ドルまでの初期的立ち上げ/売り込み費用が提供される。それらの応募の多くはTopCoderにおける競争作品として作成提出され、ホビイストプログラマとプロのデベロッパが横並びでアプリケーションの実装を競える。SunShotの担当者たちは、こういう競争形式のほうが多くの人たちの参加意欲をそそる、と考えている。

2015年の5月に、20のチームは投資家たちに訴求するデモデーのために再び集まる。そして上位5チームがそれぞれ、自分のスタートアップを立ち上げるための資金として10万ドルを受け取る。SunShot InitiativeのディレクターMinh Leによると、エネルギー省の目標は、これらの勝者たちが、次はシリコンバレーの名門アクセラレータに‘本格入学’することだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ノーベル賞おめでとう! 大株主、ビノッド・コースラが中村教授のLEDベンチャーSoraaを語る


編集部:Vinod Khoslaは起業家、ベンチャーキャピタリスト。Khosla Venturesのファウンダー。情報テクノロジーと維持可能なエネルギーに関する投資を行っている。Sun Microsystemsの共同ファウンダー、元CEO。

私はまず中村修二(写真)におめでとうを言いたい。中村教授は、Khosla Venturesが投資しているSoraaのファウンダーでもある。昨日(米国時間10/8)、中村教授と同僚研究者2人はノーベル物理学賞を受賞した。中村教授らは、アルバート・アインシュタイン、マリー・キュリー、ニールス・ボーアらと並んで人類の歴史を変えた偉大な科学者の仲間入りを果たした。

2001年に、中村の執筆した窒化ガリウムLEDについての論文を読んで以来、中村と私はこのテクノロジーのもつ巨大な可能性を現実化させる方策について議論してきた。その会話の結果、中村たちは2008年に新世代のLED照明メーカー、Soraaを創立した。

昨日、ノーベル賞委員会はついに青色LEDの発明が大事件であったことを次のように認めた。「LED照明は既存の電力網が利用できない世界の15億人の人々の生活の質を高めることを約束する。消費電力がきわめて低いので、安価な太陽光発電で照明が得られるようになるのだ。」

驚くべきことに、シリコンバレーは人類の多くに影響を与えるこの大発明に対してきわめて冷淡な反応しか示さなかった。多くの投資家は世界を明るく照らすというような遠大なビジョンを持つにはあまりに近視眼的で、ハイリスクで高度に科学的な研究の価値を理解しようとしない。もちろん、真に意味のあるイノベーションは簡単に起こせるものではない。ノーベル賞委員会も中村らを「他のすべての研究者が失敗したにもかかわらず、成功させた」と賞賛している。

本当に価値のあるものはみなそうだが、先端的な物理学理論をベースにしたテクノロジー・スタートアップの運営はきわめて難しい。今日、Soraaは窒化ガリウムを積層したGaN on GaNテクノロジーによるLEDの世界的リーダーに成長している。SoraaのLEDランプのエネルギー効率は他を引き離して世界一だ。窒化ガリウム・テクノロジーは量産に向かず高価で非実用的だという通念をシリコンバレーのよき伝統にのっとり、Soraaは無視した。当時ほとんどの専門家がこのアプローチに反対したにもかかわらず、今やGaN on GaNによるLEDはこれまでの手法によるLEDと比較して製造にかかる資本投資が80%少なく、製造に必要な資源も80%少ない。しかもSoraaのLEDは他のテクノロジーによるものと比べて光の品質が高く、寿命もはるかに長い。

Soraaは今や第三世代のLEDライトを製造しており、その将来は明るい。しかしこれまでに数多くの危機を経験してきた。なんどもこのテクノロジーは結局日の目を見ないのではないかと思われた。資金不足から倒産の危機に瀕したのも一度や二度ではない。そのつどつなぎ融資、一時的な給与減額、さらには創業者たちの相当額の個人借り入れなどによってこのテクノロジーを生きながらえさせきた。結果的には幸運にも、Khosla VenturesはSoraaの最大の株主の一つとなったが、これは他の投資家を見つけるのが難しかったからでもある。

Soraaが今日の姿になるまでに、われわれは何度もこのプロジェクトは野心的にすぎたのではないかと疑う経験をした。ある時点ではKosla VenturesのパートナーがSoraaの臨時CEOを務めねばならないことがあった。Soraaは現時点では完全に成功を収めたとはまだいえない。しかし少なくともGaN on GaNテクノロジーによるLEDが世界から消えることはないはずだ。実はわずか1年前にもその危機があったのだ。

売上の急速な拡大にもかかわらず、Soraaがいわゆる「クリーン・テクノロジー」に分類されているために資金調達は困難を極めた。この点ではElon Muskも資金調達で同様の苦難を経験している。Teslaも何度も倒産の危機に見舞われており、そのつどイーロン・マスクがその魅力で資金を集め、また私財を投じて辛うじて乗り切ってきた。

LEDは疑いなく照明の未来だ。「世界で消費される電力の4分の1は照明に使われている。エネルギー節約に対するLEDの 貢献は巨大だ。同時に、白熱電球の1000時間、蛍光灯の1万時間と比較して、LEDの寿命は25000時間以上もあるため、製造資源の節約効果も大きい」とノーベル賞委員会が認めている。今後はSoraaのテクノロジーを利用することによって、エネルギー消費量は5分の1になるはずだ。

将来、照明は現在よりはるかに安全で効率的になる。LEDは低電圧で作動するため、配線には電気工事の特別な資格も必要ない。照明の設置、運用の柔軟性が飛躍的に増すだろう。

テーブルやデスクにはそれぞれ専用の照明が付属するようになり、移動するときには照明ごと移動できるようになる。低発熱のLEDが普及すればエアコンの電力消費量も大幅に減少する。新世代のLED照明はインターネットで接続されたホーム・オートメーションと併用され、スマートフォンからコントロールされたり、ユーザーの行動パターンに合わせて最適化されたりするるなどクリエーティブな応用が広がっていくだろう。実際、Soraaでは平らな壁紙に見える照明、発光する布地、3Dプリントによる照明器具、それぞれにIPアドレスを持ちモノのインターネットに接続する照明などを開発中だ。高効率、低発熱のLEDは照明デザインを完全に自由にする点も見逃せない。

照明革命は始まったばかりだ。アルバート・アインシュタインが1921年に光電効果を発見してノーベル賞を受賞したとき、原子力エネルギーの利用、宇宙探査に加えて照明のイノベーションの端緒も作られた。エネルギーを潤沢に使える地域に住むわれわれ7億人ほどはスイッチを押せば明かりが点くことを当然と考えているが、現在でも世界の70億の人々の多くは夜を闇の中で過ごしている。世界の人々の生活の質を向上させるにはシリコンバレーの起業家精神が―それだけで十分とはいいえないが―絶対に必要だ。

地球温暖化によって破滅的な結果がもたらさせることを防ぐために、われわれはもっともっと中村修二のような人物を支援していかねばならない。こうした事業には当然ながら多くのリスクと困難が付随する。しかしわれわれは世界的に大きな意味のあるイノベーションをもたらすう事業で失敗することを恐れてはならない。古くから言われることだが、「リスクを取らないことこそ最大のリスク」なのだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


電力の供給も未来を開く鍵は「分散化」にある

[筆者: Hemant Taneja]

編集者注記: Hemant TanejaはGeneral Catalystのパートナーで、Advanced Energy Economy(AEE)の協同ファウンダ/会長だ。

電力産業の全史をとおしてひたすら、あらゆる問題への答が“規模拡大”だった。規模の経済というものがあるので、彼ら公益企業は、発電所をどんどん大きくし、効率と利益を上げることに邁進してきた。今現在も含め何十年にもわたって私たちは、そんなやり方で作られる電気を受け取ってきた。天然ガスや石炭、石油、核エネルギーをベースとする巨大な発電所から。

今、その産業は規模の限界に直面し始めている。エネルギーの利用効率が大きく上がってきたため公益事業の需要は減少しつつあり、また彼らは炭素排出量をめぐる厳しい規制に従わなければならない。地球規模の気候変動が私たちの発電システムに大きなストレスを与え、気候変動の深刻化とともに、より柔軟性と信頼性に富んだ新しい発電方法が求められている。もはや拡張よりも緊縮を求められる今の時代において私たちは、年老いたインフラストラクチャをアップグレードするための新しい方法を見つけるという、喫緊のニーズに迫られている。

私たちが安全でクリーンで安価なエネルギーを求めるのなら、これまでのやり方を続けることはできない。むしろ私たちは、まったく新しいやり方で成長していく必要がある。それは、個々の生産者やユーザを複数のプラットホーム上に分散集積して、少数の単体プラットホームの規模拡大をやめるという、シリコンバレーの最新のプレーブック(戦略手法)に似たやり方だ。

このような脱・大規模化によって大企業に挑戦しているスタートアップの例を、二つ挙げよう。これまで長年、自分の家を建てる人は必ず予備の寝室を作らせたが、でもそれらは年に数回しか使われない無駄なリソースになっている。そしてそれが今では、Airbnbの登場により、要らない寝室を宿泊用に貸して、副収入を得られるようになった。ホテル業界は電力業界に劣らず巨大だが、でも今やAirbnbは実質的に世界最大のホテルであり、しかもそれは大ホテルの新築による規模拡大ではなく、一度に一室ずつ地道に増え続けている。もうひとつの例は、オンデマンドのタクシーサービスUberだ。Uberでは自分の車を走らせている人が‘お客’を拾うことができる。これもまた、ほとんどいつも空いている3〜4席という無駄なリソースの有効利用による副収入の獲得だ。今日ではUberは世界最大のタクシー企業だが、それは保有台数を増やすという規模拡大によってではなく、個人ユーザ(空き車提供者)の数が増えた結果にすぎない。

シリコンバレーの、このような、アンチ規模拡大の例を見るたびに思うのは、規模の経済ではなく規模縮小の経済を追うことこそが、電力業界がその差し迫った諸問題に前向きに対応できる方法だ、ということだ。

しかし私たちの多くは、空席の多い車や要らない寝室は持っていても、予備の発電機は持っていない。発電機は、数十万ドルはしなくても、数万ドルはするから、誰もが簡単に買える機材ではない。

小規模な発電所を高密度に整備し、それらを高度なグリッド技術で結びつけることにより、私たちのエネルギーシステムは今よりも安上がりになり、環境にやさしくなり、全体として柔軟性に富むので事故などに対する回復力も強くなる。

しかし、今、住宅やビルの上などで多く見られるようになっている屋上ソーラーパネルなどの小規模発電施設が、今後、電力のAirbnbやUberを可能にするだろう。ソーラーパネルの低価格化が進み、補助制度も良くなり、取り付けも容易になったため、誰でも気軽に屋根の上に置けるようになったのは、ここ10年足らずの現象だ。今ではSolarCityやAdmirals Bankのような企業が、この分野で活躍している。

発電の小地域化が本格化すれば、私たちの年老いたグリッドインフラストラクチャは粗大ごみになる。今のグリッドは、その設計からして、あちこちの、稼働状態の多様な小規模発電機から来る電力をうまく扱うことができない。それに対してGeneral Catalystから巣立ったGridcoが発明した電力ルータのような、新しい、柔軟性に富んだグリッド技術は、どんなソースからの電力でも受け入れてそれらを標準化し、ユーザ元へ配布することができる。

これら最新のイノベーションは、電力産業においても、大規模集中化よりも分散化の方が経済性が高いことを実証しつつある。小規模な発電所を高密度に整備し、それらを高度なグリッド技術で結びつけることにより、私たちのエネルギーシステムは今よりも安上がりになり、環境にやさしくなり、全体として柔軟性に富むので事故などに対する回復力も強くなる。さらに重要なのは、この変貌によって電気料金が地域の収入源になり、自分ちの屋根が副収入源にもなることだ。

しかし今の公益企業のCEOたちや、担当の行政官たちとの議論が示唆しているのは、長年のあいだに深く根を張ってしまった制度上の障害だ。エネルギーシステムの完全な分散化は、この障害を取り除くことから始めなければならない。

彼らの古い業態モデルや規制の枠組み、投資の形式等が、電力供給へのテクノロジの本格的な利用と、エンドユーザに対するサービスの変容を阻んでいる。でも経営環境の変化とともに、ステータスクォ(現状絶対主義)はもはや通用しなくなりつつある。関係者たちの説得も重要だ。たとえば投資家たちには、発電は分散化した方が資本利益率が高いことを理解してもらいたい。行政官たちは、発電を地域がコントロールできるようになり、地域の仕事や雇用が増えることを理解しなければならない。

このように、大きな産業が自分で自分をディスラプトできる好機は、めったに訪れるものではない。しかし、今の競争環境を見るかぎり、生き残るためにはそれしかない。しかも彼らがこれから敢行する変化は、変化の過程そのものが利益を生むのだ。巨大な中央集権モデルから分散プラットホームモデルへ移行することにより、私たちは安全でクリーンで安価な、よりよいシステムを作ることができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))