ローンチ5年で10億ユーザー、Facebookメッセンジャーの過去と未来

How Facebook Messenger clawed its way to 1 billion users   TechCrunch

Facebookがメッセンジャーのダウンロードを強制させるという賭けに成功した。その反動にかかわらず、20ヶ月の間にメッセンジャーはユーザー数を倍にし、開始から5年でユーザー数は10億人に到達した。メッセンジャーはFacebookや、Facebookが買収したWhatsApp、GoogleのYoutubeなどで構成される10億ユーザークラブに参加した。

メッセンジャーアプリは他にも印象的な記録を残してきた。毎月170億枚の写真が送信され、ユーザーと企業の間で10億メッセージのやりとりがなされている。また、毎日3億8000万のスタンプと2200万のGIFが送信されている。そしてVoIP電話全体の内10%はメッセンジャー経由とのことだ。メッセンジャーが新しく開設したチャットボットのプラットフォームには現在1万8000チャットボットが存在し、2万3000のデベロッパーがFacebookのWit.ai ボットエンジンに登録してきた。

ユーザー数10億人という節目となる記録はFacebookが企業、デベロッパーのメッセンジャーのプラットフォームへの関心を引くことを容易にする。メッセンジャーの普及が進むことは次のようなことを意味する。新たにメッセンジャーを利用し始めた他のユーザーの存在が、未だにSMSやメッセンジャーの競合サービスを使っている人にメッセンジャーをより便利なアプリだと思わせるのだ。

Facebookのようなネットワーク効果を持っている企業は他に類を見ない。

Facebook Messenger Team

David Marcus氏とマーク・ザッカーバーグ氏がロゴをかたどったメッセンジャチームの万歳をリードしている

メッセンジャーは元Googleの社員が起ち上げたチャットアプリBelugaを元に名前だけ変えて始めたものだ。FacebookはBelugaを2011年の3月に買収している。「10億人ものユーザーを獲得するなんて想像もできませんでした。しかし、それを実現したいとは思っていました。それが私たちのビジョンでした。世界中の人々をそのようにつなげたかったのです」Beluga共同創業者のLucy Zhang氏はそう語る。

「みんなが飛び上がってこのことを祝うと思っていますよね」Facebookの現在のメッセンジャーの責任者David Marcus氏はそう語る。「しかし、サービスをユーザーに提供すること、正しいものを作ること、問題なく運用すること、人々の日々の生活を支援することなど一層の責任が発生します」。

すべての人がメッセンジャーのユーザー数10億人突破のお祝いに参加できるようにしている。風船の絵文字をFacebook上で送ると画面上でユーザー数10億人突破を祝うライトアップを見ることができる。

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ユーザー数10億人への道のり

Zhang氏とMarcus氏は、派手な機能、利用のしやすさ、地味だがパフォーマンスの向上につながることまでの全てに継続的なイテレーション(分析、設計、開発、テストのサイクルを回すこと)を行ったことがメッセンジャーの発展につながったと語る。以下に時系列でメッセンジャーのこれまでの変遷を紹介する。

Beluga

Belugaは「グループ」ではなく「ポッド」を持っていた

Belugaは「グループ」ではなく「ポッド」を持っていた

2010年、グループチャットが人気を獲得し始めていたが、SMSはひどい有様だった。同年に開催されたTechCrunch Disruptのハッカソンで生まれたGroupMeは勢い良く成長した。しかし、GroupMeはネイティブアプリではなくコストの高いSMSに依拠していた。

2010年の7月、Belugaはデータ通信のチャットに焦点を当てて設立され12月までに大きく成長した。「友達のそばにいたいという私たち自身の希望、要望から生まれました」とZhang氏は語る。その時、Facebookチャットはどちらかというと非同期のメッセージサービスで、Facebookアプリの中に埋もれていたために快適さに欠けていた。Facebookはメッセージに特化したアプリをリリースする機会を得るためにBelugaを2011年の3月に買収した。

 メッセンジャーのファースト・バージョン

「メッセンジャーのファースト・バージョンをリリースするのに3、4ヶ月を費やしました」とZhang氏は回想する。その当時、メッセンジャーのチームメンバーはZhang氏、共同創業者のJonathan Perlow氏(現Facebook社員)、Ben Davenport氏、そしてエンジニア1名、プロダクトマネージャー1名、デザイナー1名だった。

メッセンジャーは2011年の8月にサービスの提供を開始した。デスクトップ、モバイルなどの異なるプラットフォームでメッセージを送受信することができるものだった。写真と位置情報の共有以外の今でもメッセンジャーにあるいくつかの機能を備えていた。その1年後には既読機能を実装し、まるで顔を合わせて話しをしているかのようなチャットへと変化した。

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左がメッセンジャーファースト・バージョン、右が現在のメッセンジャーのデザイン

Facebook本体のアプリから分離した初めてのアプリとして、メッセンジャーアプリは1つの重要な機能に特化したシンプルなモバイルプロダクトの価値を証明した。

使いやすくなったメッセンジャー

Facebookはメッセンジャー普及のために戦略を練ってきた。ユーザーがやりたいコミュニケーションができるようにフレキシブルさを追加してきた。2012年から2013年までの間に、メッセンジャーを利用するのにFacebookアカウントを必要とする条件を撤廃し始めた。Facebook友達でない場合、電話番号を利用してSMS経由で連絡を取ることができるようにした。VoIP電話をコミュニケーションツールとして当たり前のものとするための賭けに打って出た。メッセンジャーのデザインは本元のFacebookとは異なり、操作スピード、シンプルさを追求するためより洗練されたものとなった。

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メッセンジャーはデザインの一新でアイデンティティーを得た

アプリダウンロードの強制

How Facebook Messenger clawed its way to 1 billion users 2TechCrunchメッセンジャーのサービス提供開始から3年間の成長は停滞していた。しかし2014年4月、Facebookがユーザー数2億人到達を発表する少し前、同社の高圧的な告知によりコミュニティーがざわついた。その告知とはFacebookアプリからチャット機能をなくし、代わりに強制的にメッセンジャーをダウンロードさせるというものだった。この強制の言い分としてはメッセンジャーアプリによって、ユーザー間でのやり取りがより早くなり、メッセージを見逃すことも少なくなるということだった。

ユーザーは腹を立てている。Facebookがスマホのホームスクリーンを占有しようとしているとしてFacebookを責めた。ユーザーは1つのアプリでも十分快適だったのに、なぜFacebookのアプリを2つも利用しなければならないのだろうか?メッセンジャーの平均的なレビューは星1つとなったがAppストアでダウンロード数がトップにもなった。

Facebookは膨らみすぎたアプリからメッセンジャーを解放することで、新たにメッセンジャーにたくさんの機能を追加することができるようになった。そして結果的に、ユーザーもついてきたのだ。ユーザーはメッセンジャーを頻繁に使うようになった。もしメッセンジャーがFacebookアプリに埋め込まれたままだったとしたら、メッセンジャーを開く手間にストレスを感じるほどにだ。2014年の11月までにユーザー数は5億人に到達した。

スピードの必要性

さほど関心を集めなかったが、2014年の末にFacebookはメッセンジャーの大幅な技術的改良を実施した。数十億のメッセージがやりとりされる規模においては、ミリ秒の短縮はメッセージの送受信に大きな差を生み出す。私がここで説明する言葉より表現豊かに、メッセンジャーチームはユーザー間の送受信における遅延を減らすためのパフォーマンス、安定性に対して多くの時間を費やしたとMarcus氏は語った。Marcus氏はPayPalの会長を務めた人物で、Paypalを退任後に初めて取り組んだのがメッセンジャーのプロジェクトだった。

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ユーザーが送信したメッセージがどのような状況にあるのか分かりやすくするため、メッセンジャーはメッセージの横に小さなサークル(円のマーク)を設置した。サークルが空白の表示は送信中であること、空白にチェックマークが表示されれば送信完了、サークルに色とチェックマークが付けば相手に届いたこと、サークルにプロフィール写真が表示されると相手がメッセージを読んだことを示す。繰り返すが、これは小さなことかもしれないが、これによりSMSで発生していたようなコミュニケーションにおける曖昧さを排除することができた。それは2014年初めにFacebookがWhatsAppを買収した後からMessengerにとって問題となっていたことだった。

アプリとビデオ

2015年はメッセンジャーが単なるチャット以上の存在になった年だ。SMSを時代遅れなものとし、現代風のメッセンジャーを通してユーザーの生活を支えるように改良がなされた。ビデオがいたるところで盛り上がりを見せ始めていたが、ビデオチャットはFaceTime、GoogleHangoutsのような限られたプラットフォームのみだったところで、メッセンジャーはビデオチャットを開始した。Marcus氏はビデオチャットを実装したことがメッセンジャーが電話に代わる多機能なコミュニケーションツールになるきっかけになったとしている。

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メッセンジャーのプロダクト責任者Stan Chaudonovsky氏がビデオチャットを実演

FacebookはVenmo風の個人間で送金ができる機能をメッセンジャーに追加した。そしてF8デベロッパー・カンファレンスにおいてメッセンジャー・プラットフォームについて明らかにした。そのプラットフォームでは、Giphyのようなコンテンツを共有することを始め、最終的にUberの車を呼んだり航空会社のカスタマーサービスを受けることができるようになった。2016年内には、チャットボットのデベロッパーやニュースメディアもメッセンジャーに参加するだろう。また、Facebookはたらい回しにされ苛々させられる電話のカスタマーサービスの代わりにメッセンジャーを使うことを法人に提案している。

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メッセンジャー・プラットフォーム

 

有用であることが先、おもちゃではない

ユーザーがチャットボットに慣れ始めているところだが、世界中のユーザーがメッセンジャーを利用できるようにすることに再び焦点を当てている。「全ての人が電話を持っているように思いがちですが、世界のすべての国には当てはまらないのです」とMarcus氏は語る。

Marcus氏は、最近のメッセンジャーの成長の理由についてアカウントの切り替え機能を実装し始めたことを挙げる。一家で1台の電話を共有しているような発展途上国の家族全員が自分のアカウントでメッセンジャーを使うことができる。

メッセンジャーは電話番号の代わりとなるため、メッセージリクエストを実装した。これはユーザーが誰にでもメッセージを送ることを可能にし、知らない人からのメッセージはフィルタリングして別の受信箱へと選り分ける門番のようなものだ。新しくなったメッセンジャーではユーザ名、短縮URL、QRコードでよりシンプルにユーザー同士がお互いに見つけることができるようになった。
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メッセンジャーのこれらの特徴は、誰かと連絡するために任意の連絡先情報を必要とすることから、幅広く使われている名前だけでコミュニケーションができる世界への抜本的な転換を示す。良くも悪くも電話番号を聞くというような気まずい質問をする必要がなくなる一方、受信者は話したくない人をブロックすることも容易になる。

失速するSMSをついに葬り去ることに期待して、先日FacebookはAndroidユーザーがメッセンジャー上でSMSの送受信をできるようにした。今月7月にはFacebookはさらに高度なセキュリティが必要な送受信のためにエンドツーエンドの暗号化機能「秘密の会話」を実装した。

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メッセンジャーの未来

これらの着実な発展で、Facebookメッセンジャーは競合である他のモバイルメッセージアプリよりも一歩抜きん出ている。KakaoTalkは5000万人ユーザー、Kikは1億7500万人ユーザー、LINEは2億1800万人ユーザーだ。今のところ、メッセンジャーの最大の競合は、メッセンジャーが営業できない中国拠点の7億6000万人ユーザーを持つWeChatだ。そしてメッセージを送るためというよりは話題を共有したり、写真を送ることで人気のあるアプリ1日1億5000万人の利用ユーザーを持つSnapchatだ。

WhatsAppがいる中国を除く地域では、Facebookのメッセンジャーはチャット市場の覇権争いで優位に立つだろう(打たれ強いSMSを除く)。Marcus氏は以下の様に結論付ける。もともとのテキストメッセージのスタンダードを打ち壊すには、メッセンジャーを徹底的に普及させなければならない。ユーザーの友達が1人でもメッセンジャーを利用していないだけで、ユーザーをiMessageやAndroidのメールに引き戻してしまうからだ。

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Sheryl Sandberg氏とDavid Marcus氏

「1つのプラットフォームに話したい人がほとんどいる場合、電話番号は必要なくなります。名前で彼らを見つけることができるし、さらに多くのものを送ることができて、ビデオ電話も可能です」。Marcus氏は自信を持って、「メッセンジャーはこの世界にとって重要なコミュニケーションツールになりつつあると信じています」と言う。

 

現在、メッセンジャーが必要としていることに関して、Marcus氏は「一番必要なのは時間です。メッセンジャーに対して多くの人が持つイメージを変えなければならないのです。多くの人は、電話番号を持っていないFacebookの友達にメッセージを送る手段と考えています。10億人を超えるユーザーの考え方を変えるために多くのことをしなければならないのです。しかし徐々にですが、その方向に進みつつあります」と語った。

これまでの人類の歴史で、無料でここまで活発に多くの人がつながったことはない。10億人が名前とインターネットアクセスのほか何も必要なく、簡単にコミュニケーションを取ることができるのだ。歴史的に「恐怖」というのは分離や未知から発生する副産物であった。しかしメッセンジャーによって私たちはより簡単にお互いを知ることができるようになるのだ。

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原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

 

解析サービスのユーザーローカル、クリムゾンG、YJ、EVから数億円を調達してAI事業を強化

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ウェブサイトのアクセス解析やビッグデータ解析サービスを提供するユーザーローカルは7月20日、クリムゾングループ、YJキャピタル、East Venturesからの資金調達を実施したことを発表した。詳細な金額は非公開だが、数億円に上るとしている。ユーザーローカルは2015年5月にもYJキャピタル、East Venturesから合計2億6000万円の資金調達を実施している。

ユーザーローカルは2007年に設立して以来、ユーザーのマウスの動きやタップなどをヒートマップで可視化する「User Insight」、ソーシャルメディアのマーケティング分析・管理ツール「Social Insight」、メディア運用者向けに記事コンテンツの分析ツール「Media Insight」などを提供してきた。これらの分析プラットフォームは20万以上のサイトで活用されており、ビジネス面でも「非常に好調に回っている状況」(ユーザーローカル代表取締役社長の伊藤将雄氏)

また同社は5月から人工知能ボットAPIを開発。これはプログラミングを行わなくともSNSの設定だけでLINE、Facebook、Twitter、Slackといった主要サービスにチャットボットを実装できるサービスだ。正式ローンチの時期は明記されていないが、サイトでは事前申し込みを受け付けており、すでに4000人の開発者に提供して、クローズドなテストが進められているという。

今回の資金調達は、この人工知能分野の拡充に向け、ディープラーニングや機械学習インフラの人材の採用を進める予定だ。2015年5月の資金調達以降、同社がさらにこの領域に踏み込むことに決めたと言っても過言ではない。伊藤氏は提供予定のプロダクトは「チャットボットだけではない」としているが、数カ月のうちにもプロダクトの正式ローンチを示唆した。

TechCrunchでは直近にもZEALSがメディア向けに提供するボット開発運用ツール「BOT TREE for MEDIA」などを紹介しているが、ボット用のAIエンジン、チャットのUIを利用したサービス(実は裏側はAIだけでなく、人力だったりすることもあるのだけど)などは国内でもその数を増やしつつあるようだ。

なお今回出資したクリムゾングループは代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏の個人資産管理会社。実は伊藤氏はユーザーローカルの設立以前に事業を楽天に売却した経験がある。そこからの繋がりもあって今回の出資に至っているようだ。

「Eメールとチャットの良いとこ取り」RedKixが1700万ドルを調達

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これまで、多くのスタートアップがEメールに変革をもたらそうとしてきた。なかにはSlackのように、私たちの仕事のあり方を変えるようなサービスが生まれることもあった。だが結局のところ、今でもEメールは盛んに使われているし、コミュニケーション・ツールを会社全体で有効活用するためには、皆が同じプラット・フォームを選択しなければならないという問題がある。

本日、RedKixはプライベート・ベータ版の公開と、シードラウンドにおける1700万ドルの資金調達の完了を発表した。Slackなどのコミュニケーション・ツールの利点と、シンプルで皆が使っているというEメールの利点を組み合わせた同社のサービスが著名な投資家たちの興味を引いた結果だ。同社の出資者には、Salesforce Ventures、Wicklow Capital、SG VC、Oren Zeev、Ori Sasson(VMwareの出資者でもある)などが名を連ねる。

シードラウンドのスタートアップが1700万ドルもの資金を調達することはめずらしい。しかし、RedKixの共同創業者兼CEOのOudi Antebiは、複雑なテクノロジーを必要とする同社のサービスを実現させるためには、この規模の支援が不可欠だったと語っている。

 

これまでにも、「Eメールの再発明」というビジョンを掲げてきた企業は多く存在する。では、彼らとRedKixとの違いはなんだろうか?RedKixは既存のEメール・アカウントをベースに動作する(現状では、Microsoft Exchange、Office 365、Google Appsのアカウントに対応している)。そのため、連絡する相手がRedKixを利用していようとなかろうと、相手のEメールアドレスさえわかればRedKixを通じたコミュニケーションが可能になるのだ。

仮に相手側もRedKixを利用していた場合には、既読の通知、タイピング中の通知、ユーザー間のリアルタイム・メッセージングなどの機能を利用することができる。その一方で、RedKixを利用してない相手には通常のEメールが送られるのだ。つまり、RedKixを利用することによって、通常のEメールが即席のチャットルームでの会話へと様変わりするというわけだ。

RedKixを使って、Eメールのような件名ありきのコミュニケーションができるのはもちろん、Slackのチャンネルでの会話のようなサブジェクト・レスなコミュニケーションをすることも可能だ。この機能もまたEメールをベースに構築されており、Eメールでいうところのメーリングリストにあたる、グループ・メッセージングを利用することもできる。

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現行のバージョンのRedKixは、同社が実際に欲しいと思っていたサービスを体現したものだとAntebiは話す。「Eメールでのコミュニケーションにリアルタイム性を取り入れることは、大きなチャレンジでした。用途別のインボックスなどがその例です」。

RedKixは企業での利用を想定されている。そのため、企業にすでに存在するEメールのセキュリティやその保持に関する企業方針にサービスが適応できるように配慮されている。「私たちのサービスは、とてもITフレンドリーなサービスです。RedKixは既存のEメールサービスと完全に調和するのです」とAntebiは話す。加えて、同サービスのエンタープライズ版では、企業がサービスの機能を制御できるツールも提供する予定だと話した。

コアとなるプラットフォームが完成した今(初期のベータ版ならではのバグは時々発生するが)、RedKixが視野に入れているのは、Slackも力を入れるサードパーティ・サービスとの統合だ。

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Antebiはその例として、JIRAのサービスと連携した機能の初期デモを見せてくれた。これに加えて、RedKixはChromeプラグインの開発にも着手している。このプラグインを利用することにより、あるウェブサイトにメッセージを貼り付けることが可能になる。そうすることで、そのウェブサイトを開いた状態で同僚とコミュニケーションを取ることができるという。

現在はベータ版であるRedKixのデザインはすでにスタイリッシュであり、Eメール・サービスに似たデザインをもつため(むしろ、RedKixも基本的にはEメール・サービスなのだが)、RedKixに初めて触れるユーザーでもストレスを感じることはないだろう。

RedKixはブラウザで動作するアプリだが、OS X/MacOSとWindowsのユーザーはデスクトップ・アプリを利用することもできる。今後数週間のうちにモバイル版のアプリもリリースされる予定だ。

RedKixの従業員は現在27名であり、そのほとんどはイスラエルを拠点としている。

パブリック・ベータ版の公開は秋の終わりごろを予定されている。その頃になれば、RedKixの料金体系も決まっていそうなものであるが、Antebiは、基本的なサービスは無料で提供し、追加的な機能は有料で提供するという形をとる可能性が高いだろうと話している。

私は常に、「Eメールの再発明」と謳うコミュニケーション・サービスには懐疑的だ。しかし、RedKixを利用するためにユーザーが自身の環境を変える必要はなく、同僚がRedKixを利用していなかったとしてもサービスのメリットを十分に受けられる事を考えれば、他の同種のサービスと比べた成功の確率は格段に高いだろう。RedKixは、近いうちにEメールがこの世から消え去ることはないと賭けたのだ。そして、過去を振り返ればそれは正しかった。私がこのアプローチに反対する理由もないだろう。

RedKixのクローズドβテストへの参加はここからできる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

SlackのAPIがアップデート、メッセージボタンでのタスク実行が可能に

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経費の承認、締切日の設定、フライトの確認など、Slackから他のエンタープライスツールに対し、この新しいMessage Buttons(メッセージボタン)からタスクの実行ができるようになる。Slackは、12月にローンチAPIにこれまでで最大のアップデートを施した。職場でいつも開いて使うポータルの立ち位置を確立したい考えだ。

例えば、「/kayak flights from NYC to BOC on 6/23」と入力するとフライトの選択肢がいくつか表示され、価格が変わった時にアラートするよう設定できる。

この新メッセージボタンは、12のアプリとデビューを飾る。コラボレーション・プラットフォームTrello、トラベルサイトKayak、人材管理サービスGreenhouse、ビジネス・インテリジェンスサイトQualtrics、コンタクトセンター用ソリューションTalkdesk、障害管理サイトPagerduty、AIショッピングアシスタントKip、プロダクティビティ・ツールKyber、GIFシェアアプリRiffsy、経費アプリAbacus、会計パッケージCurrent、ヘルプデスクアプリのTalkusだ。Slackはアプリディレクトリで入手できるアプリは500個になったとし、そこから随時対応アプリを追加していく計画だ。

この新機能からSlackと開発に関してのトレンドが見て取れる。

Slackは現在300万デイリーアクティブユーザーを抱え、93万人以上のユーザーは有料プランを利用しているという。平日5日間で平均10時間の利用があるという。Slackは継続的にサービス開発を進め、ユーザーがより長い時間使用するプラットフォームを目指す。

これは、Slackのビジネスモデルにとって重要なことだ。フリーミアムモデルを採用しているので、基本機能のアクセスには料金が発生しない。ストレージや他の機能を使いたい場合は、料金を支払う必要がある。 Slackにアプリのタスクを実行する機能をつけることで、ユーザーはSlackを使い続け、Slackを去る理由が少なくなるだろう(ユーザーがSlackをより多く使うことでストレージ、セキュリティー、アーカイブ機能のある有料プランに移行する理由も出てくる)。

また、「ボット」の急成長をSlackは自社の力にしたい考えが見て取れる。基本的なボットは自動でタスクを実行するミニアプリで、ユーザーをアプリ内の一連のアクションで導くものだ。ボットはFacebook Messengerといったメッセージアプリ、スタンドアローンのサービスSaphoなどに導入されていてる。Saphoは、ボットを組み込むことを想定していなかったソフトウェアのためにボットを開発している。今回の機能追加でSlackはこのボットのトレンドに対する姿勢を明らかにした。

Slackで各アプリがどう機能するかの詳細は以下の通り:

  • Trello:
    ビジュアル・コラボレーションツールで、どんな規模のチームでもプロジェクトの進捗を共有するサービス。Slackからカード作成、チームメンバーの招待、締切日の設定、カードに詳細情報の追加などが可能に。
  • Kayak:
    世界屈指のトラベル検索エンジン。Slackからフライト、ホテル、レンタカーの検索ができる。他にもFlight Trackerツールからフライトの更新情報を瞬時に取得したり、Price Alertで予約したいホテルやフライトの価格変更を通知で受け取ったりすることができる。
  • Greenhouse:
    適切な人材の応募、インタビュー、採用、オンボーディングのためのサービス。Slackユーザーは、別のユーザーや特定のSlackチャンネルに採用に関する通知を設定することができる。例えば、承認、新規候補者、新規の紹介、代理店からの提案、スコアカードの締切日などだ。
  • Qualtrics:
    Qualtricsは、インサイトの取得とそれに基づいた行動を喚起するサービス。QualtricsアプリはSlack上でミニアンケートの作成と送付ができ、フィードバックがすぐに得られるようにする。1-j4hgf6wm_GrW-xgn3QnZWw
  • Talkdesk:
    SlackとTalkdeskの強力なコンタクトセンター・ソリューションの統合で会社の内部と外部のコミュニケーションをシームレスにつなぐ。
  • PagerDuty:
    アジャイル障害管理ソリューションでITOpsやDevOpsのモニタリングスタックと連動する。イベントを集約し、それらを関連付けることで行動に移せるアラートを出す。運用の信用性と俊敏性の改善につなげる。
  • Kip:
    チームでの購入のためのAIアシスタント。オフィスのアシスタントやマネージャーが、オフィス関連用品の注文を集める時間とストレスを軽減する。
  • Kyber:
    Slackで初の会話型プロダクティビティツール。プロジェクト管理、カレンダー、リマインダー、todoリストを提供。チームのプロジェクトの立案と進捗の確認、ミーティングへの招待、タスクのアサイン、todoの管理、リマインダーやイベント情報の通知を設定できる。
  • Riffsy:
    Riffsyは最もダウンロードされているGif共有アプリ。Slackとの統合でぴったりのGIFを33言語から閲覧、検索することができる。遊び心を持って考えや気持ちを伝えることが可能になる。
  • Abacus:
    唯一の知的な経費報告ソリューション。データと行動分析により、経費の作成と承認に関してレコメンドや自動化を行う。チームの招待から承認した経費の払い戻しまでできる。
  • Current:
    Currentは、人生における財政管理のデジタルハブを構築する。Slackを通じて、すぐにCurrentチームと直接やりとりすることもできる。
  • Talkus:
    TalkusはSlack経由のヘルプデスク。Slack経由で会社のチームは、カスタマーとウェブサイトのライブチャット、メール、携帯やSMSで一対一のやりとりをすることが可能。

AbacusのSlackメッセージボタンで経費を承認

「この開発でSlackが全ての従業員が毎日、一日中使うツールになること、そしてSlackが全ての知識労働者が同僚、アプリケーション、ワークフローに関わるサービスになるポテンシャルがあることを示しています」とSlackは説明する。

Slackがより多くのエンタープライス向けツールの参加を促し、Slackでログインできるエンタープライスツールが増えるほど、カスタマーは他のサービスに切り替えるのが難しくなる。中核となるチャットアプリがコピーしずらいものではないと考えると、これは非常に重要なことだ。開発者エコシステムに頼り、その熱量、リーチ、そして機能連携アプリに投資するSlack FundでSlackは深い堀を築いている。

他のエンタープライス向けコミュニケーションツールがSlackの領域に侵略させないための堀でもあり、Slackのチャットインターフェイスを使用しているユーザーがサブスクリプションを解約する気を起こさせないための堀を築いているのだ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website