米国の5つの州でカナビス合法化法案が承認

カナビス(大麻)合法化の住民投票が、米国時間10月4日、米国の5つの州で締め切られた。すでにカナビスが合法化されているオレゴン州でも、ドラッグの街頭販売の解禁とマジックマッシュルームの治療目的の使用許可が承認された。

カナビス関連の住民投票が行われた5つの州のうち4つの州で、21歳以上の成人の嗜好用マリファナの使用が法的に認められた。ミシシッピ州では医療目的での使用が認められたが、サウスダコタ州は医療目的と嗜好目的の両方が一度に承認された。

新たな市場を探るカナビス関連スタートアップにとって、いまが肝心なときだ。消費者とビジネスを獲得しようとこの分野の多くの企業が、新たに解禁されたこれらの州でゴールドラッシュが起こると注目している。だが、いますぐとはいかない。カナビス企業が学習し準拠しなければならないルールと規制が、州ごとに異なるからだ。

10年前、カナビスは米国全土で禁止されていた。そこに変化が起きたのは、2012年にコロラド州とワシントン州の有権者が嗜好用マリファナを合法と認めたときからだ。国レベルでは違法のままだが、これらの新たに合法化された州では、3人に1人の米国人が合法的に大麻を買えるようになる。

ニュージャージー州

  • ニュージャージー州の有権者は嗜好用カナビスの合法化を承認し、2021年1月1日より解禁となる。
  • ニュージャージー州議会は、現在、消費者向け市場のためのルールと規制の制定に取り組んでいる。
  • ニュージャージー州は中部大西洋岸でこの法案を通過させた最初の州となった。

モンタナ州

  • モンタナ州の有権者はこの法案と大麻合法化のための州憲法修正を承認し、21歳以上の成人の使用を認めた。
  • モンタナ州の住民は、2021年1月1日午前12時1分より、マリファナの所有、使用、栽培が認められる。新年おめでとう!
  • 嗜好用の販売は2022年1月から開始できる。

サウスダコタ州

  • サウスダコタ州の有権者は、全国で初となる医療用と嗜好用のカナビスの合法化を同時に承認した。これは、州憲法修正と住民投票によって実現した。
  • カナビスは2021年7月1日までは違法。それ以降は、サウスダコタ州の住民はマリファナの所有、使用、そして3本までの栽培が許される。
  • 医療用の販売は2021年7月1日から解禁される。
  • 同州は、2022年4月1日までに、嗜好用カナビスの販売に関するルールと規制の制定を行う。

アリゾナ州

  • 2016年に合法化法案が否決されたアリゾナ州だが、有権者は嗜好用カナビスの合法化法案を承認した。カナビスの所有が合法化される時期は不明。
  • 販売は2021年4月5日までに許可される予定。

ミシシッピ州

  • ミシシッピ州の有権者は医療用マリファナの合法化を住民投票で承認した。
  • 同州は、2021年7月1日までにルールと規制を制定する。

オレゴン州

  • オレゴン州は全国で初めて、一般にはマジックマッシュルームとして知られているシロシビンの規制下での医療用使用の合法化を認めた。
  • 医療用使用は、2年間の開発期間の後に解禁される。
  • オレゴン州の有権者は、少量の街頭販売ドラッグを違法物から除外する法案も通過させた。違反しても交通違反程度のものとなる。

関連記事:コロナ禍に大麻吸入器メーカーの売上が急増、全米での合法化を見据え転換期を迎える大麻業界

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Cannabis / 大麻

画像クレジット:Kirill Vasikev/EyeEm / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

スポーツ用品のUNDER ARMOURが買収額を下回る4.75億円で一般向けダイエットアプリMyFitnessPalを売却へ

フィットネス大手UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)は米国時間10月30日朝、MyFitnessPal(マイフィットネスパル)を投資会社Francisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)に3億4500万ドル(約360億円)で売却する(PR Newswire記事)と発表した。UNDER ARMOURは5年半前にMyFitnessPalを4億7500万ドル(約500億円)で買収していた。UNDER ARMOURはまた、同時期に8500万ドル(約89億円)で買収したEndomondo(エンドモンド)を終了することも発表した。

プレスリリースの中で、UNDER ARMOURは今回の決断の理由は単に、「唯一無二の結合力あるUAエコシステム」の構築を追求するうえで「ターゲットとする消費者であるフォーカスドパフォーマー」に照準を絞ることにあると述べた。UNDER ARMOURが買収額よりも少ない額で(5年間のインフレーション、一定のMyFitnessPalユーザー成長すら含まれていない)MyFitnessPalを売却するという事実は、フォーカスを絞る以上の意味があることを物語っている。

MyFitnessPal(2015年の買収時に8000万人のユーザーがいるとし、10月30日のプレスリリースによるとユーザー数は2億人超だ)とEndomondoは初めてフィットネスに挑戦する、あるいは日々の健康を向上させるのに関心を持っているが持久力をともなうスポーツゲームのためにトレーニングするわけではない、というカジュアルで初心者レベルのフィットネスユーザーに的を絞っていたというのはまぎれもない事実だ。UNDER ARMOURの全体的なブランドイメージはどちらかというとプロのアスリートに関連するもので、スポーツ愛好家やセミプロの顧客も抱える。

つまり想像されるのは、UNDER ARMOURはこの初心者部門の価値が長期的には低くなるとみているということだ。この考えを裏付けるいくつかの理由がある。1つはApple(アップル)がApple Watchの拡充とApple Healthソフトウェアの提供を通じて、初心者レベルのフィットネスユーザーの取り込みに積極的であることだ。同社はまた2020年後半に立ち上げるApple Fitness+サービスでもユーザー獲得を狙っている。

パンデミック、そしてジムのような共用ワークアウト場所の利用制限が続く中、自分で行うフィットネスの部門が大きく成長するだろうと想像するかもしれないが、アップルの積極的な動きは、ユーザーがハードウェアを買うことで本質的に無料、あるいはかなり低価格のサブスクを利用するようになるというかなり包括的なデフォルトを提供する。専用の在宅トレーニングギアとサブスクプラットフォームを通じてサービスを提供しているPeloton(ペロトン)の成長もまた、初心者や軽いフィットネスを行う人の需要を取り込んでいる。

UNDER ARMOURはMapMyFitnessプラットフォームの所有と運営を続けると明言した。同プラットフォームにはMapMyRunとMapMyRideが含まれる。UNDER ARMOURはMapMyFitnessを2013年に買収し、UNDER ARMOURのコネクテッドシューズのラインナップにはワークアウト追跡のためのアプリが統合されている。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:UNDER ARMOUR売却

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

iPhoneが目が見えない人に他人の接近とその距離を知らせる機能を搭載する

Apple(アップル)がiOSの最新のベータに、興味深いアクセシビリティ機能を組み込んだ。それは、iPhoneのカメラの視野内に人がいると、その距離を検出するシステムだ。この機能により、現在、何より重要な目が不自由なユーザーが効果のあるソーシャルディスタンスを保つことができるようになる。

この機能はアップルよ拡張現実(AR)システムARKitにあるもので、画像処理の技術用語で「people occlusion」と呼ばれ、人間の形状を検出してバーチャルアイテムがその前や後ろを通るというものだ。この技術に、iPhone 12 ProとPro MaxのLiDAR装置を組み合わせると、目の不自由な人にとって便利なツールができる、とアクセシビリティのチームは気がついた。

一般的に、人が店や横断歩道を歩くときは他の人がどれだけ近く、あるいは遠くにいるかを、目が絶えず判断し注意している。しかしパンデミックの間にまず思いつくのは、他の人と約2mの距離を保つことだ。

この新しい機能は、拡大鏡(Magnifier)アプリ内のもので、iPhone 12 ProおよびPro MaxのLiDAR機能と広角カメラを使って、さまざまな方法でユーザーにフィードバックを行う。

赤外線ビデオに映るiPhone 12 ProのLiDAR。1つひとつの点が、それが反射するモノの正確な距離を教える

第1のフィードバックは、ユーザーに視界に人がいるかいないかを教える。誰かいたら最も近い人までの距離をフィートかメートルでアナウンスし、近づいたり遠ざかったりすると距離を頻繁に更新する。その人がいる方向からの音もステレオで拾う。

第2のフィードバックは、距離を知らせる音をユーザーにセットさせる。例えば6フィート(約183cm)にセットしたら、その人が6フィートよりも離れていたらある音が鳴り、6フィート以内であれば別の音が鳴るようセットさせる。ユーザーが知りたいのは、正確な距離が頻繁にわかることではなく、現在、人と十分な距離が保たれているかどうかということであるためだ。

そして第3のフィードバックは、ユーザーの皮膚に届く振動(周波数)で、人が近づいていることを教えるというものだ。これは目と耳の両方が不自由な人に便利だろう。この機能は検出した人を画面上の矢印で指して教える。視覚が不自由な人にもその程度はさまざまで、どうしても人の助けを必要とする場合も少なくない。これは介護者の役に立つものかもしれない。

このシステムには広角カメラの高画質な画像が必要であるため、暗闇では使用できない。また、ハイエンドのiPhoneに限定されていることも、利用を妨げるかもしれない。

視覚補助ツールは、以前から存在している。多くのスマートフォンや専用デバイスに人やモノを見つける機能が搭載されているが、いずれも標準として活用されているものではない。

この人検出機能は、米国時間10月30日に公開されたiOS 14.2のベータ版が動作するiPhone 12 ProとPro Maxで利用できる。もうすぐ詳細が、AppleのiPhoneアクセシビリティサイトに掲載されるだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOS 14iPhoneLiDAR

画像クレジット: Apple

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コーチングアプリRosita Longevityが高齢者に伝えたい健康長寿の秘訣とは

スタートアップ企業にとって、長寿とは、現代版の錬金術を探求するかのようにバイオテクノロジーやAIなどの技術を実験的に応用する、途方もなく壮大な野望の世界である。究極の目的は、何らかの方法で生態を「ハック」して人間の寿命を大幅に伸ばすこと、そしてできれば死さえも取り除くことだ

この点でもっと地に足のついた取り組みをしているのが、スペインのスタートアップ企業、Hearts Radiant(ハーツ・ラディアント)だ。「長寿テクノロジー」ビジネスを展開する同社は、老化に立ち向かうため、壮大な野望よりもはるかに強力な根拠に基づく、実用的なアプローチを取っているという。要するに同社は、人々が長生きするための秘訣を突き止めたと考えているのだ。

この記事では、同社が考える、「健康的に」長生きする方法を紹介する。

ハーツ・ラディアントの挑戦は、聖書時代のように150歳まで生きられるようにする、あるいはそれより少し短い120歳まで生きられるようにする、というものではない。同社が目指すのは、(できれば)自立性と活力を維持しながら、高齢者が95歳くらいで「天寿を全うする」まで元気に生きられるよう、テクノロジーを応用してサポートすることだ。このテクノロジーを活用すれば、生きがいを感じられる整った生活習慣を確立でき、高齢化に伴うフレイル(身体的機能や認知機能の低下が見られる状態)や社会的孤立などの問題に対処する助けとなる。

段階的にアプローチする

ハーツ・ラディアントは本日、これまでの沈黙を破り、プレシード資金調達の第1トランシェ(融資区分)を開示した。同社はまた、TechCrunchの取材に応じ、アクティブで充実かつ自立した生活を送れるよう高齢者をサポートするという夢について語ってくれた。

JME.vc(JMEベンチャーキャピタル)がリードし、Kfund(Kファンド)、Seedcamp(シードキャンプ)、NextVentures(ネクストベンチャーズ)が参加した45万ユーロ(約5600万円)のプレシードラウンドは、Rosita Longevity(ロジータ・ロンジェビティ)デジタルコーチングアプリ向けの研究と継続的な開発のために使用される見込みだ。このアプリは、1月から限定された形でベータテストが行われている。高齢者は家族のお下がりのスマートフォンを使っていることが多いため、現在はAndroid(アンドロイド)デバイスのみが対象だ(ただし、iOSも開発計画に入っている)。同アプリは60歳以上をターゲットに、有酸素運動ができるフラメンコや年齢に合ったヨガなどのレッスン動画を、ライブストリーミングとオンデマンドで提供している。

Rosita Longevityを開発するハーツ・ラディアントは、夫婦である最高経営責任者(CEO)のJuan Cartagena(フアン・カルタヘナ)氏と最高顧客責任者(CCO)のClaraFernández(クララ・フェルナンデス)氏が、最高技術責任者(CTO)のDavid Gil(デービッド・ギル)氏と共同で創業した企業だ。高齢者が本当に必要としているのは、できるだけ長く活動的であり続けるための手引きと動機付けであり、パーソナライズされた「健康的な習慣」を形成するという療法を多くの高齢者に利用してもらうにはデジタルプラットフォームが最適な方法である、というのが彼らの基本理念だ。

カルタヘナ氏は「当社が、習慣の形成を促す存在になるべきだと考えています」と述べ、彼らが目指す姿を示すもう1つのキーワードとして「健康寿命」を挙げた。

ハーツ・ラディアントの経営には、バレンシアを拠点とする家族経営の事業Balneario de Cofrentes(バルネアリオ・デ・コフレンテス)のCEOを長年務めるフェルナンデス氏の経験が直接生かされている。同氏はこの事業のことを「長寿の学校」または「高齢者向けのキャンプ」と表現しており、バルネアリオのウェブサイトでは、スパ・ホテル、理学療法・リハビリテーション施設、そして教育センターが統合されたものだと紹介されている。同氏はこの施設で、高齢者向けのアクティビティや教育プログラムの監督を担当し、指導者付きのエクササイズや、病気の予防、良好な栄養状態を保つ方法などについてアドバイスを提供してきた。

フェルナンデス氏はこう説明する。「私たちはこの10年の間に、高齢者の方々が健康寿命を延ばすための教育方法や習慣作りの方法について、非常に包括的な戦略を立ててきました。私たちには具体的な方法論があります。高齢者の方々に現在の健康状態を管理する方法を教えることから始め、生活習慣や主な病気の予防、さらには科学分野における最新の発見についての教育を段階的に進めていく予定です」。

続けて、プログラムをデジタルコーチングアプリへとパッケージ化したことについてはこう述べた。「この手法を拡大するには、オンラインにするのがいいと考えました。そうすればもっと多くの高齢者の方々に活用してもらえるからです」。
生活習慣はRosita Longevityアプリが提案する手法の重要な要素である。しかし同社は「長寿テクノロジー」という表現を好む。

カルタヘナ氏はこう語る。「さまざまな理由から、私たちはフィットネス分野で勝負しようとはしていません。フィットネスには限界があり、私たちはその限界を超えようとしています。フィットネスは身体を強化し、最終的に病気につながるような健康問題に対処するための出発点にすぎません」。

定期的かつ適度な運動が、フレイルにつながる筋肉量の減少や骨密度の低下(転倒や股関節の骨折につながり、突然、要介護の状態になる可能性がある問題)など、加齢に伴うさまざまな状態に対抗するための手段として有効であること、さらに、精神と脳の健康維持にも有効であることは(壮大な野望ではなく)科学によってすでに実証されており、それが、Rosita Longevityアプリ開発の基盤になっている。

とはいえ、AIやチャットボットのような、おなじみだがまだ時々ぎこちないテクノロジーによってパーソナライズされ、デジタル配信で提供される生活習慣コーチングのプログラムに高齢者がリモートで参加した場合に、(何よりもまず)フレイルを、人間の理学療法士の手を借りずに克服できるのだろうか。これは、Rosita Longevityアプリがこれから実証すべき点である。

Rosita Longevityアプリのスクリーンショット(画像クレジット:Hearts Radiant/Rosita Longevity)

そのため、調達資金の一部は、バルネアリオで実施されている「長寿の学校」プログラムをデジタルプラットフォームに変換する方法に関する研究に充てられる予定だ。具体的には、60歳以上の高齢者向けにパーソナライズされたデジタルコーチングによって、対面でのグループエクササイズと同じように、フレイルを克服できるか(またそれによってアクティブに過ごせるか)どうかを調査する(純粋なデジタル体験によって得る人との社会的つながりと、対面でのグループ療法とで、効果に違いがあるかどうかという点は、綿密な研究を行うべき点の1つだ)。

確かに、世界中のどんなスマートフォンも、普通のバスルームをバルネアリオにある高級スパのような設備に変えることはできない。しかし、バルネアリオのプログラムのそれ以外の部分は、デジタル化と体系化によって対面と同様の効果をもたらすことができる、というのがRosita Longevityアプリの考え方だ。

彼らがこのアプリのために開発しているデジタル活動プログラムは、高齢者が楽しく使えることだけでなく、フレイルのレベルに合わせて調節できるように設計されている。現在提供されているクラスの例としては、動きを抑えたダンス、バーピーをしない「クロスフィット」、変形性関節症でも安全にできる空手などがある。

ユーザーの身体状況に適した活動レベルのコンテンツを提供するために、アプリの使用開始時には、フレイルのレベルを判断するための評価が行われる。

長い道のり

カルタヘナ氏は、長寿研究の分野で有名なバレンシア大学教授のDr. José Viña(ホセ・ヴィーニャ博士)の協力を得ていると述べる。「ヴィーニャ博士は、いくつかの生活習慣に加えて、運動療法により特定の筋肉に特定の方法で働きかけることによって、フレイルを初期段階で克服できることをすでに証明しています。まだ証明されていないのは、それを自分1人で行うリモート環境に適用できるかどうか、という点であり、それこそが今、私たちが取り組んでいることです。今回のプレシードラウンドの目的は、証明されていないこの点について調査するために、数千人のユーザーにこのアプリを使ってもらい、12か月後に[ユーザーのフレイルレベルが]改善するかどうかを確認することです」と同氏は付け加えた。

バルネアリオの施設は、新型コロナウイルスによる健康被害のせいで現在閉鎖されているが、2021年3月には再開する予定だ。その後はRosita Longevityアプリの受講者を毎年受け入れて、健康をサポートする習慣へユーザーを導くことができているかどうかについての継続的なフィードバックを集める。

カルタヘナ氏は次のように説明する。「お客様についてしっかり理解するということが何よりも大切で、それが当社の強みです。年間1万5000人の高齢者がバルネアリオのクラスに参加されます。それにより、お客様の習慣や、お客様が普段していること、していないことをよく把握できます。毎年参加される方には、去年は何をしていたかをお聞きすることもできます」。

「これはつまり、大きなフォーカスグループを活用できるということです。例えば、アプリを10日間使用しているフォーカスグループをデータ上で観察できるとします。しかし、そのような解析データを見るだけでなく、アプリを使用している人を目の前で実際に観察することにより、アプリの修正をはるかに迅速に行えるようになります。 私たちのリゾートを利用されるお客様は1日100人、ときには500人に達します。これが、お客様に本当に必要とされ、愛用してもらえる製品を作り上げるための基本的なやり方になると思います」。

Rosita Longevityアプリの現行バージョンには、パーソナライズされたAI搭載のコーチングはまだ含まれていない。 しかし、ここにもプレシードの資金が投入される。「教育と、フレイル克服プランの最初のコーチングプログラムは(iOS用アプリと同時に)3週間で準備が整うはずです。これにより、ユーザーが抱えている差し迫った問題が解決されます」とカルタヘナ氏は言う。

「パーソナライズされたコーチング(病理学、フォローアップ、コンテキスト、エクササイズの細分化など)は数多くの論理に基づいており、これをきちんとテストするには長い時間がかかります。 コーチングプログラムは段階的に展開する予定で、クリスマスの頃には『自信を持っておすすめできる』アプリになっていると思います。 それが私たちの『Habits Engine(習慣エンジン)』となるでしょう。このテストとジェロサイエンス(老年科学)研究計画にも、今回調達した資金を活用する予定です」。

Rosita Longevityアプリのもう1つの重要な目的は慢性的な痛みの解消だが、対処できない痛みもあることを、カルタヘナ氏は認めている。 このアプリは従来の医療に取って代わるものではなく、補完することを目的としている、と創設者たちは付け加えた。アプリはユーザーがより前向きになれるように設計されており、加齢による問題の予防こそが、健康で長生きするための戦略だと彼らは語る。

フェルナンデス氏は次のように説明する。「遠隔医療の目的はどちらかというと病気を管理することです。しかし、私たちの目的は病気を予防することです。高齢者が、自分の体に何が起こっているのか、この先10年間で何が起こるのかを理解し、自然な老化プロセスの進行を最小限に抑えられるような習慣を、ゆっくりと身につけることができるようにする。私たちはそれを着実に実行できるようにするための指標やツールを見つけだすことに重点を置いています」。

カルタヘナ氏によれば、フレイルを予測する能力を強化するために、アプリと連動できるセンサーハードウェアの開発についても研究者と協力して進めているそうだ。これにより、ユーザーカテゴリーの幅を広げて細分化できるようになるという(アプリの最初のバージョンには3つのカテゴリーがあるが、それを9つに増やしたいそうだ)。

スマートフォンとセンサーハードウェア、それにAI技術のおかげで、何年か前から、新世代のガイド付き理学療法アプリが登場し始めている。これらのアプリは、慢性的な痛みに対して、薬剤を使う治療に代わるものを提供しようとしている。Kaia Health(カイア・ヘルス)Hinge Health(ヒンジ・ヘルス)がその例だ。そしてもちろん、マインドフルネスやガイド付き瞑想は巨大なアプリビジネスになっている。一方、「デジタルヘルス」という広い概念から、いつでも気軽に利用できるCBT(認知行動療法)という治療プログラムがここ5年ほどで増えてきている。したがって、高齢者向けの健康長寿コーチングサービスという考え方は、そもそも奇妙なものでも、物珍しいものでもない。

とはいえ、意図された通りのユーザー体験を実現することが最大の課題になるかもしれない。 カルタヘナ氏は、バーチャルコーチと実際に良い関係を築き、利用を継続してもらうには、アプリのトーンが重要だと言う。「横柄」な印象を与えたり、アプリが「宿題」を与えているように感じさせたりしないトーンにしたいということだ。

フェルナンデス氏も、目標は良い習慣を維持することだと強調している。それには、全力で走る短距離走ではなく、ゆっくり走るマラソンの方が向いている。

高齢者が不快に思ったり、退屈、混乱を感じたりしない、安全で魅力的な体験を設計することができれば、生活の質を向上させるセラピーや活動、情報へのアクセスを拡大できる可能性は非常に大きくなる。フレイルはRosita Longevityアプリチームが取り組む最初の課題にすぎない。製品を開発し、利用率を上げていく中で、例えば認知症などの神経変性疾患の予防に役立つ健康習慣をユーザーが身につけられるようなサポートも提供していきたいそうだ。孤独感や社会的孤立に対処することも目標の1つだ。そのため、同アプリでは多種多様な健康プランを提供していきたいと考えている。

フェルナンデス氏は次のように語る。「現在の取り組みは、特にフレイルに焦点を当てており、その上でパーソナライズされたAIコーチを開発しています。そしてこれからは、長寿コーチングとは別に、さまざま健康プランを作り、追加していくことを考えています。栄養学、認知刺激、リラクゼーション、呼吸法、さまざまな予防戦略など、健康長寿を目指すためのさまざまなクラスを導入していく予定です」。

「私たちがクリニックで試してきたことの中で非常に重要なものの1つに、ユーザーへの助言があります。 その日何をすべきかということだけでなく、その人の老化プロセスがどうなっているのか、代謝がどうなっているのか、筋骨格系がどうなっているのかについても話します。 自分の体がどんな風に、なぜ老化するかを知らなければ、日常のちょっとした決定を下すことはできません。 助言を通じて力づけることにより、ユーザーは、その助言が長期的に役に立つ理由を理解し、共感できるようになります」。

「私たちは、現在進行形で体に生じている長寿化という現象と、長寿について科学が現在理解していることに基づいてコーチングプログラムを開発しました。これは大きな成功を収めてきた戦略の1つです。加えて、老化の症状を最小限に抑える方法も突き止めました。そして、これらを完全に[アプリ]の形に落とし込んでいることも、この戦略が成功している理由です」と同氏は付け加えた。

カルタヘナ氏はまた、新型コロナウイルス感染症「第4波」での死亡リスクについても指摘している。ロックダウン措置や感染リスクへの懸念から高齢者の活動がさらに制限され、その結果、体を動かさないためにフレイルが進行し、死亡リスクが高まる可能性があるという。

言い換えれば、自宅のソファに座っていれば高齢者のウイルス感染を防げるかもしれないが、急に動かなくなり、活力が低下すると、それもまた健康寿命を縮める原因になり得るということだ。そのため、高齢者のアクティブな生活を維持するためのツールは、これまで以上に重要になっているように思える。 こうした状況に鑑みて、Rosita Longevityアプリはパンデミックが終息するまで無料で提供する予定であり、その期間は2022年まで伸びる可能性がある、とカルタヘナ氏は言う。
Rosita LongevityアプリのビジネスモデルはB2Cであり、ユーザーとセラピストを直接つないで進捗状況をチャットで共有する機能などの有料コンテンツに力を入れているようだ。その一方で、デジタル版「モチベーションエンジン」であるこのアプリを市場に出すために、VCから支援を受けている。

現在、アプリには5000人が事前登録していて、1000人の高齢者が積極的に体験利用に参加している(場所はスペインで、ユーザーはいずれも60歳~80歳)。最近、アプリの更新プログラムがリリースされた。ソフトウェアは「早期アクセス」の段階を終え、「長寿のための個別AIコーチ」サービスの提供に向けて準備中だ。

Rosita Longevityアプリのコーチングが対応している言語は現在スペイン語のみだが、チームはこれまでにさまざまなレベルや慢性疾患に対応した「何百本」もの動画を作成しており、英国市場から始めて欧州全体に(そしておそらく欧州外にも)規模を拡大していくことを目指している。 そのため、次は英語のコンテンツを開発することになるだろう。

関連記事:新型コロナで好調のエクササイズコーチングアプリFutureが約25億円調達

カテゴリー:ヘルステック
タグ:エクササイズ 健康

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(翻訳:Dragonfly)

フランスが新型コロナ接触者追跡アプリをリブランディングしてダウンロード促進を狙う

これからは、StopCovid(ストップコビッド)とは呼ばないで欲しい。フランスの接触者追跡アプリがアップデートされ、いまではTousAntiCovid(トゥザンチコビッド)と呼ばれるようになった。「みんなで新型コロナウイルス(COVID-19)に対抗」という意味だ。フランス政府は、もはや接触者追跡アプリではない方向へ――少なくとも単なる接触者追跡アプリではない方向へ方針転換を行おうとしている。

現時点でのTousAntiCovidは、単なるリブランディング以上の方向転換のようにみえる。新しい名前になり、ユーザーインターフェイスにはいくつかの変更点がある。とはいえ、アプリのコア機能は変わらない。

StopCovidは成功していなかった。まず第一に、接触者追跡アプリが新型コロナウイルス感染症陽性と診断された人と対話した人に警告するための有用なツールであるかが、まだ不明だということだ。第二にそれを使おうと思っても、アプリ自身がまったく使われていないのだ。

フランス政府は、ローンチの3週間後である2020年6月には、StopCovidのアップデートを行った(未訳記事)。180万人がアプリをダウンロードしたものの、StopCovidは14回の通知しか送っていない。

それから4カ月後、StopCovid / TousantiCovidは280万人近くによってダウンロードされ、アクティベートされた。しかし、アプリ内で陽性であると宣言した人の数は1万3651人にとどまり、送られた通知は823回である。もしあるユーザーが陽性と判定されても、多くの場合には、誰もその通知を受けとることはない。

そこで、今回のアップデートが行われた。これまでアプリを使用していた場合には、ソフトウェアアップデートによりTousAnticovidを受け取ることになる、フランス政府は、iOSのApp StoreAndroidのPlay Storeの両方にこのアプリを登録している。初めてアプリを起動すると、通知のアクティブ化やBluetooth(ブルートゥース)のアクティブ化などの、接触者追跡に焦点を充てた登録手続きを行うことになる。

フランスはROBERT(未訳記事)という名前の独自の接触者追跡プロトコルを使用している。研究者や民間企業で構成されるあるグループが、集中型アーキテクチャに取り組んできた。サーバがユーザーにパーマネントID(仮名)を割り当てて、そのパーマネントIDから派生させた一時的IDのリストをスマートフォンに送信する。

ほとんどの接触者追跡アプリと同様に、アプリユーザーが数分以上対話した他のアプリユーザーの包括的なリストを作成するために、TousAnticovidはBluetooth Low Energy(ブルートゥース・ロー・エナジー)を利用している。アプリを使用しているときに、アプリは周囲の他のアプリユーザーの一時的IDを収集する。

アプリを使用していて陽性と診断された場合は、検査機関がQRコードまたは文字と数字の文字列を渡す。アプリを開き、そのコードを入力することで、過去2週間間にやり取りしたユーザーの一時的IDのリストを共有することができる。

サーバーのバックエンドは、これらの一時IDを、すべて新型コロナウイルスにさらされた可能性のある人たちとしてフラグを立てる。サーバー上で再び各ユーザーは、リスクスコアに関連づけられる。そのスコアが特定のしきい値を超えると、ユーザーは通知を受け取る。それを受けがアプリが、ユーザーが検査を受け、公式の指示に従うことをすすめてくる。

しかし、アプリには新しいものが何点か追加されている。フランスにおける、パンデミック関係の最新のデータ(過去24時間の新しい感染者数、集中治療室に入っている人数など)にアクセスできるようになった。ニュースフィードにも新しい項目がある。現時点で、フランス国内でできること、できないことを要約している。

また、いくつかの有用なリソースへの新しいリンクが含まれている。検査を受けることができる場所を示すサービスや、外出禁止令発令中の免除証明書へのリンクだ。これらのリンクをタップすると、ブラウザが起動され公式ウェブサイトが開かれる。

フランス政府がTousAntiCovidをより魅力的なものにするために、繰り返しどのような取り組みを行い、アプリがどのように進化しているのかを見てみることにしよう。TousAntiCovidがスマートフォン上での中央情報ハブになることができれば、より多くのダウンロードを誘うことができるだろう。

関連記事:フランス人研究者ら、接触者追跡に関してプライバシー保護を求める書簡に署名

カテゴリー:ヘルステック
タグ:フランス新型コロナウイルス

画像クレジット:Ludovic Marin / AFP / Getty Images

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(翻訳:sako)

ゲノム医療情報サービス提供の東大発スタートアップ「Genomedia」が資金調達

ゲノム医療情報サービス提供の東大発スタートアップ「Genomedia」が資金調達

ゲノム医療情報サービスの提供を行うGenomedia(ゲノメディア)は、第三者割当増資として資金調達を実施したと発表した。引受先は、住友商事、シップヘルスケアホールディングス、米Aflac Ventures LLC(アフラック・イノベーション・パートナーズが支援)。

Genomediaでは、今回の第三者割当増資に加え、住友商事およびシップヘルスケアとの業務提携により、ゲノム医療を推進する医療機関・研究機関・サービスプロバイダーなどに対するゲノム医療関連情報サービスのソリューション提供を加速する。また、臨床現場へのサービス提供実績の蓄積を通して、ゲノム医療情報を活用した創薬支援、ゲノム医療の質向上への貢献を進めていくとしている。

がんゲノム医療では、医療機関で患者のがん組織が採取され、解析センターなどでがん関連遺伝子解析が実施される。その結果検出された遺伝子異常などの検査結果は、エキスパートパネルと呼ばれる会議において検討され、治療法が決定される。エキスパートパネルとは、主治医のほか、がん薬物療法や遺伝医学、病理学、分子遺伝学、バイオインフォマティクスなど、がんゲノム医療に関わる複数の医師、専門家が参加する会議のこと。

エキスパートパネルにおいては、より良い治療法を決定するための様々な幅広い情報に基づいた検討を行う必要があるものの、情報収集や整理作業などの負担が医療現場の課題となっているという。

Genomediaは、2015年より、国立がん研究センターをはじめとするさまざまな医療機関、研究機関などに、ゲノム情報と臨床情報の統合システム「Genomedia Front」を提供。同社独自の知識データベースを用いたゲノム医療関連情報サービスの提供を通して、エキスパートパネルなどにおける情報収集や整理作業などの業務を支援している。

Genomediaは、2013年創業の東京大学発スタートアップ企業。「ゲノム情報を活用して、豊かな生活、より良い地球環境の実現に貢献する」というミッションのもと、2015年より、国立がん研究センターをはじめとする様々な医療機関、研究機関などに、ゲノム情報と臨床情報の統合システムGenomedia Frontを提供SCRUM-Japan第一期、第二期への提供を経て、ゲノム医療向けクラウドサービス「Genomedia Front Cloud Service」を開発・提供を行っている。

カテゴリー: ヘルステック
タグ: 資金調達Genomedia東京大学日本

EUで国境を越えた新型コロナ接触追跡アプリの相互運用開始、ドイツ、イタリア、アイルランドのアプリが対象

欧州連合(EU)は、先月、2020年9月に行われたシステムの試験運用を経て、Bluetooth近接通信機能を利用してスマートフォンユーザーの接触リスクを計算する新型コロナウイルス接触追跡アプリの国境を越えた相互運用を最初のグループで開始した。

各国のアプリのうちバックエンドがゲートウェイサービスを通じてつながるのは、ドイツの「Corona-Warn-App」、アイルランドの「COVID tracker」、イタリアの「Immuni」だ。

この意味するところは、アプリのユーザーが他の国に旅行するとき、追加でソフトウェアをダウンロードしなくても、旅行しなかった場合と同じように自国のアプリから接触通知が送られてくるということだ。

合計すると、上記3カ国の新型コロナアプリは約3000万人がダウンロードしており、EUによるとそれはEU内のダウンロードの3分の2に相当する。

画像クレジット:EU Publications Office

他国のアプリも今後数週間でサービスに参加し、相互運用性を得ると予想される。その段階で互換性をもつ国内アプリが少なくとも18個増える。

各国アプリの次のグループは、試験期間を経て来週参加する。チェコの「eRouška」、デンマークの「Smitte|stop」、ラトビアの「Apturi COVID」、スペインの「Radar Covid」だ(ただし「Radar Covid」はまだスペインを完全に網羅していない。カタルーニャ地域は地域の医療システムと統合されていない)。11月には互換性のあるアプリがさらに追加される予定だ(欧州委員会リリース)。

ゲートウェイは現状、分散型アーキテクチャー(基本設計)を備えた公式の新型コロナアプリで動作するように設計されている。つまり、フランスの「StopCovid」アプリなど、集中型アーキテクチャーを使用するアプリは今のところ互換性がない。

一方、英国のアプリ(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド向け)は、技術的に互換性のあるアプリアーキテクチャーを備えているが、プラグインされる可能性は低い。英国は2020年末に貿易圏から外れるからだ(したがって相互運用するには英国・EU間の合意が別途必要になる)。

「EU加盟国の約3分の2が互換性のある追跡・警告アプリを開発しています。接続の準備が整えば、ゲートウェイはすべての加盟国に開かれています。接続は10~11月にかけて徐々に行われますが、各国当局の希望でもっと後の段階でアプリを接続することもできます。『オンボーディングプロトコル』が開発されており、そこに必要な手順が示されています」と欧州委員会はQ&Aで述べている。

EUのアプリのための国境を越えたシステムは、ゲートウェイサーバーを使用することにより機能する。T-SystemsとSAPによって開発・設定されており、ルクセンブルクにある欧州委員会のデータセンターで運用される。このデータセンターが、各国のアプリ間で任意の識別子の受け渡しを行う。

「アプリによって生成された任意のキー以外の情報をゲートウェイが処理することはありません」とEUはプレスリリースで述べている。「情報は匿名化され、暗号化され、最小限に抑えられ、感染を追跡するために必要な期間のみ保存されます。個人を特定したり、デバイスの場所や動きを追跡したりすることはできません」。

欧州の広い地域でパンデミックの第2波(The Guardian記事)を迎える中、各国の新型コロナアプリのパッチワーク全体で国境を越えたシステムを非常に迅速に稼働させるに至ったことはEUにとっての成果だ。もちろん、Bluetoothベースの接触通知が、新型コロナの感染拡大との戦いにおいて有用なのかについてはなお疑問があるにもかかわらずだ。

しかし、EUの委員会は10月19日、そうしたアプリが人間による接触追跡など他の手段を補完するのに役立つ可能性があると示唆した。

EUの健康・食品安全担当のStella Kyriakides(ステラ・キリヤキデス)委員は声明で次のように述べた。「新型コロナの追跡・警告アプリは、テストの強化や人間による接触追跡などの他の手段を効果的に補完できます。感染者数が再び増加している中、感染経路を遮断する上でアプリが重要な役割を果たすことができます。国境を越えて機能すれば、アプリはさらに強力なツールになります。本日稼働を開始するゲートウェイシステムは我々の仕事の重要なステップです。お互いを守るためにアプリの利用を呼びかけたいと思います」。

「移動の自由は単一市場の不可欠な部分です。ゲートウェイは人命救助に役立ちながらこれを促進していきます」と内部市場のコミッショナーであるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は付け加えた。

関連記事:欧州が国境を越えた新型コロナ陽性者接触アラートアプリの相互運用性テストを開始

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(翻訳:Mizoguchi

AIとサブスクモデルで補聴器に変革をもたらすWhisperが約37億円調達

数年前、Whisper(ウィスパー)の社長で共同創業者のAndrew Song(アンドリュー・ソン)氏は、祖父がつけていた補聴器について祖父と話していた。祖父は聴覚改善のために設計された医療機器に数千ドル(数十万円)を費やした。その過程で彼の生活の質は向上したが、補聴器は着けなくなってしまった。ソン氏の共同創業者も祖父母が同様の体験をしており、エンジニアや起業家として、より優れた最新の補聴器を開発するために行動を起こすことにした。

同社は10月15日、ゼロから構築した新しい補聴器とともにステルスモードから抜け出した。同社の補聴器は、騒がしいレストランにいるときやテレビを観ているときなどさまざまな聴覚の環境に対し、人工知能を利用して自動で学習・調整する。また、最初に数千ドル(数十万円)を払う必要はなく、3年間のサブスクリプションで月額料金を支払いさえすれば、その間無料でソフトウェアアップデートが受けられる。

同社は開発と並行して、Quiet Capital(クワイエットキャピタル)がリードする3500万ドル(約37億円)のシリーズBラウンドを発表した。既存投資家からはSequoia Capital(セコイアキャピタル)とFirst Round Capital(ファーストラウンドキャピタル)が参加した。同社は、本日発表した補聴器システム開発のために、累計では5300万ドル(約56億円)を調達した。

ソン氏は同社を立ち上げる前に祖父と話し、なぜ補聴器を装着しなくなったのか、どんな問題を抱えていたのか、なぜうまくいかなかったのか疑問に思うようになり、最終的にスタートアップを立ち上げることになった。

「そのことが我々を新しい製品の開発に向け突き動かしました。使用する人のニーズを適切にサポートし、時間が経つほどに良くなる補聴器です。補聴器自体が良くなると同時に、人工知能により使用者が捉える音を実際に改善する補聴器です」とソン氏は説明した。

創業チームにはテクノロジーとエンジニアリングのバックグラウンドはあったが、聴覚科学の専門知識がなかったため、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)オーディオロジー学科からRobert Sweetow(ロバート・スウィートウ)博士を招いた。

同社が開発したテクノロジーは、3つの主要な部分で構成されている。まず、耳に合う補聴器があり、次にウィスパーブレインと呼ばれるポケットサイズの『外箱』がある。同社によればそれが「イヤーピースとワイヤレスで連携し、その中で独自のAIベースのサウンドセパレーションエンジンが動く」。最後に、システム上のソフトウェアを更新するスマートフォンアプリがある。

  1. Whisper1

  2. Whisper2

  3. Whisper3

ソン氏によると、他の補聴器と同社製品を分かつのはAIだという。「困難な体験に遭遇し毎日が荒れ狂う中で、当社がサウンドセパレーションエンジンと呼ぶものが、あなたを助けてくれます。これは当社が開発した一種のAIモデルで、信号処理を支援してくれます。本当に独自性のあるものだと思います」と同氏は述べた。

さらにソン氏によると、自動運転車が時間の経過とともに学習し、ドライバーから会社にフィードバックされるデータから恩恵を受けるのと同じダイナミクスが補聴器で機能する。補聴器が時間をかけて信号をより適切に処理する方法を学習する。特定の個人だけでなく、Whisperのすべての補聴器ユーザーの体験が利用される。

同社はこの補聴器を店頭ではなく、補聴器の専門家のネットワークを通じて提供する。ソン氏によると、これは複雑な機器であるため、製品のフィットとサポートのために製品の一生にわたりオーディオロジストを関与させることが重要だと同社が認識しているためだ。

Whisperは、補聴器を3年契約、月額179ドル(約1万8800円)のサブスクリプションベースで提供する。これには、すべてのハードウェア、ソフトウェアのアップデート、聴覚ケアのプロからの継続的なサポート、3年間の損害保険、業界標準の機器保証が含まれる。同社は期間限定で月額139ドル(1万4600円)の導入価格を設ける。

月額179ドル(約1万8800円)だと、補聴器を借りるのに3年間で合計6444ドル(約67万7000円)になる。サブスクリプション終了時に、ユーザーは(契約を)更新して最新のハードウェアを手に入れるか、またはハードウェアを返却することができる。ユーザーが補聴器を所有するわけではない。

Widex(ワイデックス)やStarkey(スターキー)など、他の補聴器会社も補聴器にAIを使用しており、どちらも外部ハブを必要としないことは注目に値する。多くの補聴器会社がさまざまな支払いプランやサブスクリプションプランを提供しているが、Whisperは補聴器に対し異なるアプローチを提供する試みだ。

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新型コロナで好調のエクササイズコーチングアプリFutureが約25億円調達

米国中の何千というジムが新型コロナウイルスパンデミックの間に閉鎖を余儀なくされたが、在宅ソリューションを提供するフィットネス企業はかつていないほどのチャンスを手にしている。こうした状況はPeloton(ペロトン)のような上場企業の株価を驚くほどのものにした。同時にベンチャーキャピタリストを数多くのフィットネス業界ディールに向かわせた。なお、時価総額は約400億ドル(4兆2000億円だ)。

Future(ヒューチャー)は、ユーザーと実在のフィットネスコーチがバーチャルでチームを組む月額150ドル(約1万6000円)のサブスクを消費者に提供している。Apple Watchの健康情報を追跡できる能力を活用し、Futureはチームモチベーションやアカウンタビリティ、フィットネス洞察のためのプラットフォーム構築を目指してきた。

画像:Future

Kleiner PerkinsがリードしたシリーズAラウンドを発表してから18カ月近くたち、Futureは2400万ドル(約25億円)のシリーズBをクローズしたとTechCrunchに語った。本ラウンドはTrustbridge Partnersがリードし、既存投資家のCaffeinated CapitalとKleiner Perkinsが参加した。

在宅フィットネスブームでFutureの利用はかなり増えている。 CEOのRishi Mandal(リシ・マンダル)氏は、何千ものジムが閉鎖されたためにここ数カ月で同社は3倍に成長したと話す。外出禁止が、現在も続いているテックを使ったフィットネスサービスへのシフトを加速させた、と指摘する。忙しいユーザーはテックを活用したサービスによってエクササイズの時間を確保することができる。

「現代の生活はパンデミック期間に限らず通常においても本質的にはクレイジーだと当社は考えています」とマンダル氏は話す。「セットルーティーンを持つという考えは完全に誤っています」。

Futureは月149ドル(約1万5700円)で、PelotonやFitbit(フィットビット)、Apple(アップル)が提供しているデジタルフィットネスプログラムがターゲットとする消費者マーケットを取り込もうとしているわけではない。Futureはどちらかというと、パーソナルトレーナーを見つけようとしているがまだ実際にはそこまでいっていない、あるいは全体的なガイドラインやアカウンタビリティを必要としつつガイド付きのインストラクションはさほど求めていない、といったユーザーをターゲットとしている。

前回よりも大きな額を調達し、Futureはネットワーク拡大という大きな目標を掲げている。来年の今頃までにFutureプラットフォームのコーチの数を1000人にすることを目指す。規模を拡大することで、Futureは新たな取り組みができる。マンダル氏は、「人々の健康全般をサポートするところに真の機会があります」と話し、成長に伴ってコーチングサービスの対象をフィットネス以外にも拡大することにチャンスを見出している。

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タグ:Future、資金調達

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5分以内に終わるオックスフォード大学の機械学習ベースの高精度新型コロナ検出技術

オックスフォード大学の物理学科の科学者たちが、SARS-CoV-2を高精度で検出できる新しいタイプの新型コロナウイルス試験法を開発した。患者から採取した検体から直接検査し、機械学習ベースのアプローチを用いて、試験供給の限界を回避に役立つ可能性がある。またこの検査は、抗体やウイルスの存在の兆候ではなく、実際のウイルス粒子を検出する場合にも利点がある。これらの兆候は必ずしも、活動的な感染性のある症状と相関しない。

オックスフォードの研究者たちが作り出した試験はまた、スピードの点でも大きな利点があり、検体の前処理を必要とせず5分以内に結果を出すことができる。これは、現在の新型コロナウイルスパンデミックに対処するためだけでなく、将来の世界的なウイルス感染の可能性に対処するためにも必要不可欠なものであり、大量検査を可能にする技術のひとつになり得ることを意味している。オックスフォード大学の手法は、多くのウイルスの脅威を検出するために比較的簡単に構成することができるため、実際にはそのためにも十分に設計されている。

これを可能にした技術は、採取したサンプルに含まれるウイルス粒子を、マーカーとなる短い蛍光色のDNA鎖で標識づけすることで実現している。顕微鏡でサンプルとラベル付けされたウイルスを画像化した後、チームが開発したアルゴリズム解析を用いて機械学習ソフトウェアが自動的にウイルスを識別し、物理的な表面構造、大きさ、個々の化学組成の違いにより、それぞれのウイルスが発する蛍光光の違いを利用してウイルスを識別する。

研究者らによると、この技術は検体収集装置、顕微鏡画像、蛍光体挿入ツール、コンピューターシステムを含めて、企業や音楽ホール、空港など、あらゆる場所で使用できるほど小型化できるという。現在の焦点は、すべてのコンポーネントを統合したデバイスの商業化を目的としたスピンアウト会社を設立することだ。

研究者は、起業し来年初めまでの製品開発をスタートを目指している。デバイスの実用認可と流通の整備にその後約半年かかるだろう。新しい診断デバイスの開発としてはタイトなスケジュールだが、パンデミックに直面してすでにスケジュールは変更されており、新型コロナウイルスは近い将来に消え去るとは考えづらいため今後続けられるだろう。

関連記事:Carbon Healthが簡易の新型コロナ検査クリニックを全米で100カ所立ち上げ

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タグ:オックスフォード大学新型コロナウイルス機械学習

画像クレジット:オックスフォード大学

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ミリ波利用の超小型センサーで心拍数・呼吸数・体動など24時間監視するシステムが12月1日販売

ミリ波利用の超小型センサーで心拍数・呼吸数・体動など24時間監視するシステムが12月1日販売

フィンガルリンクは10月16日、ミリ波レーダーを応用した生体情報監視システム「FLミリ波バイタルセンサー」を開発、2020年12月1日から販売すると発表した。販売料金は未定(10万円前後)。

FLミリ波バイタルセンサーは、60~64Ghzのミリ波レーダーを活用することで、遠隔地でヒトの心拍数・呼吸数を24時間計測し、クラウドを使って様々な端末にその情報を蓄積・通報する生体情報管理システム。

同システムでは、サイズ縦700×横60×幅20mm/重量100gの超小型センサーを設置。室内のどこに設置しても、60~64Ghzのミリ波レーダーで対象者の心拍数や呼吸数、体動などを24時間計測できる。

また、センサーの高感度化により対象者の様々な動きにも対応可能で、センサー1台で最大12人を追跡・計測できるという。対象者に装着する器具などは不要で、普段のまま行動でき、健康への悪影響もまったくないとしている。

センサー内蔵のCPUで計測データを暗号化してクラウドに送信するほか、トラッキングも行え遠隔での監視が可能。複数センサーをネットワークでつなげれば、建物1棟を管理できる。

想定される活用先としては、病院(入院患者の監視)、介護施設(入寮者の健康管理)、保育施設(園児の動向監視)、一般家庭(高齢者の健康管理)を挙げている。

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タグ: FLミリ波バイタルセンサーフィンガルリンクミリ波レーダー日本

クリエイターファーストのフィットネスプラットフォーム「Playbook」が約9.8億円調達

フィットネスコンテンツのPatreon(コンテンツ制作者向けクラウドファンディング)を目指すPlaybookが、シリーズAでE.ventures、Michael Ovitz、Abstract、Algae Ventures、Porsche Ventures 、FJ Labsから930万ドル(約9億8000万円)を調達した。

新型コロナウイルスの感染拡大により、パーソナルトレーナーやフィットネス業界は大打撃を受けた。ジムが閉鎖され、トレーナーが新規顧客を獲得する手段は閉ざされた、あるいは減ってしまった。Playbookは、コンテンツを通じてトレーナーの収入源を作ろうとしている。

Playbookのクリエイターには、ビデオを制作し視聴者を増やすツールが提供される。ほかの多くのフィットネススタートアップとは異なり、エンドユーザーではなくクリエイターのビジネスに着目している。収益化に適したツールとプラットフォームがあればトレーナーは視聴者を引きつけることができると考えているのだ。

Playbookは、クリエイターが固有のリンクでプラットフォームに視聴者を誘導すると、そのユーザーからの売上の80%をクリエイターに支払う。どのクリエイターからプラットフォームに来たかわからないユーザーの場合、トレーナーは再生された秒数に応じて支払いを受ける。

エンドユーザーの利用料金はシンプルだ。見放題のサブスクリプションで月額15ドル(約1600円)、年額99ドル(約1万500円)だ。

Playbookは、2020年6月にシードラウンドで300万ドル(約3億1600万円)を調達した(未訳記事)。同社のプラットフォームには魅力的なトレーナーがそろっている。Kevin Hart(ケビン・ハート)のトレーナーであるBoss Everline(ボス・エバーライン)、Gal Gadot(ガル・ガドット)とAlicia Vikander(アリシア・ヴィキャンデル)のトレーナーであるMagnus Lygdback(マグナス・リッドバック)、Ryan Reynolds(ライアン・レイノルズ)とBlake Lively(ブレイク・ライブリー)のトレーナーであるDon Saladino(ドン・サラディノ)などだ。

Playbookの共同創業者でCEOのJeff Krahel(ジェフ・クリエル)氏は、クリエイターに提供するテクノロジーのサービスを増やすことに取り組んでおり、そうすればほかのことはついてくるだろうと述べた。

クリエル氏は「このことが、Michael Ovitz(マイケル・オービッツ)氏を戦略的投資家として迎えた理由のひとつです。我々はテック主導の芸能事務所であり、クリエイター向けツールを備える優れたテックプラットフォームです。当社はほとんどアクセラレーターのように、クリエイターを支援して影響を最大化することを目指しています」と語った。

同社はクリエル氏のほか、Michael Wojcieszek(マイケル・ボイチェシェック)氏とKasper Ødegaard(カスパー・エデゴール)氏が共同で創業した。

今回の資金調達で、Playbookの調達金額の合計は1230万ドル(約13億円)になった。

カテゴリー:ヘルプテック
タグ:Playbook、資金調達、フィットネス

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(翻訳:Kaori Koyama)

心のワークアウトをフィットネス療法にもたらす、メンタルヘルスジム運営のCoaとは?

SoulCycle(ソウルサイクル)でサイクリングマシンを漕ぎながら聞く熱いトークには涙がこみ上げるだろうが、Coa(コア)の共同創設者Alexa Meyer(アレクサ・マイヤー)氏とDr. Emily Anhalt(エミリー・アンハルト)博士が求めるのは、そのやり方ではない。むしろ彼女たちは、人々に自問を促したいと考える。「最後に自分の魂を鍛えたのはいつだったか?」と。

すぐに答えられなければ、それがメンタルヘルスのジム、オンライン感情フィットネス講座Coa(コア)の牽引力となる。同社はCrosslink Ventures主導のシードラウンド300万ドル(約3億1500万円)を調達したばかりだ。これには、Red Sea VenturesAlpaca VCも参加している。その他、Casper(キャスパー)の創設者Neil Parikh(ニール・パリク)氏とプロバスケットボール選手のKevin Love(ケビン・ラブ)氏も投資に加わっている。

ローンチ目前のCoaの中核的製品は、有資格のセラピストによる少人数のスタジオクラスだ。参加者は、診断を受けた後に一連のクラスを受講することになる。クラスは、パンデミックの中を一人で生き抜く方法や、政治的不安に対処する方法など幅広い。

クラスは、講義型の授業と、話し合いを誘発する個別セッションを組み合わせたスタイルになっている。大まかに言えば、Coaの使命は、SoulCycleを大成功させた少人数対象のフィットネス文化をメンタルヘルスに応用することだ。小さいグループのフィットネスなら、忙しい中でも予定を入れやすいし、仲間意識も生まれ、何度も戻って来たくなるコミュニティーの帰属意識も芽生えると考えれば、合理的なスタイルだ。

スタジオクラスの他に、Coaでは個人向けのクラス、つまり1対1のセラピーと、無料のコミュニティークラスも提供する。

Coaのスタジオクラスは、セラピーに取って代わるものではない。共同創設者たちは最初からそう考えていた。Coaはむしろ「癒やしの体験」でありたいと望んでいる。そのため、有資格のセラピストは、コンテンツ制作や指導に関わる人間に限られている。1対1のサービスでは、Coaはセラピストのマッチングも行う。今のところはカリフォルニア州限定だ(じきにニューヨークやその他の州でも実施される)。だが、Coaはセラピストの引き合わせサービスを行うという事実は、セラピーに興味のある人たちの目を、別の選択肢を示してくれる同社のネットワークに向けさせることになるはずだ。

Coaのスタジオクラスのターゲットはグレイゾーンの人々、つまりメンタルヘルスにお金を出す気持ちはあるが、セラピーを受けるほどのお金はないという人たちだ。そこで重要になるのが価格設定だ。聴講型のクラスなら25ドルから参加でき、限定的なアクセス権が与えられ、メンタルヘルスの意識を高めることができる。このスタートアップの今の主要市場戦略は、無料のコミュニティークラスと、雇用主の直属で仕事をしている従業員のための安定したプログラムの提供だ。現在Coaは、 Silicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)、Spotify(スポティファイ)、Asana(アサナ)、Salesforce(セールスフォース)といった企業と提携している。

「2人の人間が毎週継続的に面談して関係を深める中で起きる魔法に取って代わることは、ほぼ不可能です」とマイヤー氏は話す。「私たちが解決を目指してきた取り組みでは、安全なグループ活動から先へ踏み出すことを要求せずに、人々と深い関係を築いてサポートできる方法が課題でした」。もうひとつのハードルは、やがてはCoaが確保するコアカスタマーにも及ぶことだが、少人数グループの形式では、クラスごとに、参加者自身の弱い部分をある程度まで他人に見せざるを得ないという点だ。

「人は自分の心の状態について語りたがらない、クラスに登録したことを他人に知られたくないのだと、私たちは忠告されてきました」とアンハルト氏はTechCrunchに語った。「私たちのコミュニティーでは、それとはまったく逆のことが起きています」。

アンハルト氏は、グループセラピーでは参加者に秘匿義務を課する法的な決まりはないが、その代わりに、参加者は通常、プライバシーは重要な資産であるとの共通の認識に従っていると指摘する。Coaはそれと同じ枠組みに従い、最初に秘密保持契約を求めている。参加者は、事前に個人情報の提供を求められることは一切ない。

「プライベートな秘密を守るよう法的に義務づける方法は存在しません。しかし今のところそれが問題になったことはありません」とマイヤー氏は話す。

しかし、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が報じたTalkspace(トークスペース)の捜査の問題にも見られるように、セラピー関係のスタートアップは、プライバシーには常に頭を痛めている。Coaと同様、Talkspaceにも高尚な使命があった。メンタルヘルスを民主化し、より利用しやすくするというものだ。Talkspaceの場合、利用者の会話のプライバシーを危険にさらしていると報じられたことで、その目標に水を差されたかたちだ。

Coaは、倫理的に妥協することなく、この問題を回避できると楽観的だ。

「守秘と臨床上の誠実さがすべてです」とアンハルト氏は言う。「そのため私たちは、法的、倫理的に求められるよりもずっと高い基準を設けています」。その基準の中には、こんなものもある。患者とセラピストの情報の管理は決められた専門の担当者があたる。セラピー後の調査や分析は行わない。誰がどのクラスに参加したかは明かさないことを内部関係者に義務づける。

セラピー分野のどのスタートアップとも同じく、Coaの競争相手は、Talkspace、TwoChairs(トゥーチェアーズ)、Real(リアル)、Alma(アルマ)、Octave(オクターブ)と数多い。

Coaの共同創設者エミリー・アンハルト博士とアレクサ・マイヤー氏。

出張ジムを通じて、Coaはプライベートな心のフィットネス・カリキュラムを、Asana、GitHub、Silicon Valley Bank、Spotifyの企業幹部たちに提供してきた。彼らは、そのカリキュラムを、多様な価格設定で、もっと幅広いターゲット層に広げようと考えている。現在は、ソーシャルディスタンス確保の要請に従いオンラインクラスに集中しているが、Coaの予約リストにはすでに3500人が登録し、受講を楽しみにしている。

だが2人の共同創設者は、大胆な長期目標も立てている。米国中のすべての主要都市で、対面のクラスを開講することだ。現実の物理的なメンタルヘルスジムを想像してほしい。

「目に見えて、実際に訪れることができる、メンタルヘルスのためのジムを目指しています」とマイヤー氏。「そうすれば、スポーツジムと同じように、街を歩いているうちに心の健康のための場所を発見できるようになります」。

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(翻訳:金井哲夫)

シードラウンドで約2.3億円を調達のCaliberがフィットネスコーチングプラットフォームを公開

新型コロナウイルスの感染拡大は、フィットネス分野に大きな打撃を与えた。米国時間10月13日、1対1のパーソナルトレーニングを手がけるスタートアップのCaliberは、Trinity Venturesが主導する220万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを経て、新たにデジタルコーチングプラットフォームを公開した。

Caliberは2018年にコンテンツモデルをリリースし、メールのニュースレターとフィットネスを指導するコンテンツのライブラリを提供していた。

「共同創業者たちは個人コーチングのアイデアをテストし始めたところでひらめきました。何よりも、人々は自分のフィットネスのルーティンに関して専門家による指導と真の意味でパーソナライズされたプランを必要としていることに気づいたのです」と共同創業者でCEOのJared Cluff(ジャレッド・クラフ)氏は語る。

これが現在知られているCaliberの始まりだ。

ユーザーがこのプラットフォームに参加すると、Caliberのコーチとマッチングされる。コーチは100人の応募から5人しか採用されず、まさに最高のトレーナーを厳選していると同社は言う。

こうして採用されたコーチは、最初はビデオか電話でのコンサルティングでユーザーと相談しながら、ユーザーの目標を考慮してその人に合うフィットネスプランを作成する。筋トレ、有酸素運動、食事を組み合わせたプランが完成すると、コーチはそのプランをアプリに入れる。

ユーザーはアプリで提示されたインストラクターからの指示に従い、進捗を記録する。興味深いのは、トレーナーとのライブビデオを予約するのではなく、アプリでコーチと非同期の対話をすることだ。

ユーザーはアップルのヘルスケアアプリをCaliberと統合して食事や有酸素運動を追跡管理し、コーチに進捗を全面的に報告することもできる。

コーチはフィードバックや励ましを与え、最終的には説明責任のレイヤーとなる。

  1. app_plan

  2. app_muscles_involved

  3. app_dashboard

  4. app_calendar

このように人間によるコーチングを時間のかかる非同期の方法で組み合わせることにより、Caliberは一般的なワークアウト生成アプリよりは高価だが実際に対面で指導するパーソナルトレーナーの平均価格よりはずっと安価な費用を設定している。

Caliberのユーザーの大半は月に200〜400ドル(約2100〜4200円)を支払っている。Caliberで働いている1099人のコーチは、ユーザーからの売上の60%を受け取る。

同社によれば、公開前にCaliberの会員数は直近の半年間で3倍になり、会員あたりのワークアウト数は150%になったという。年間経常収益は100万ドル(約1億500万円)を上回っているとクラフ氏は語る。

このプラットフォームの41人のトレーナーのうち、37%が女性で、およそ4分の1が白人ではない。本部メンバー7人のうち1人が女性で、創業者チームの3分の2がLGBTQだ。

クラフ氏は次のように語る。「最大の課題は、私が直近で所属していたBlue Apronが直面していた課題と似ているとも言えます。Blue Apronはミールキットに関するカテゴリーを作ろうとしていました。我々はブランドリーダーのいないきわめてバラバラの業界で、フィットネストレーニングに関するカテゴリーを構築しようとしています」。

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タグ:Caliber、資金調達

画像クレジット:Caliber

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(翻訳:Kaori Koyama)

いまだに非効率な実験室の備品管理をサポートするGenemodが1.8億円を調達

Genemodは実験室の在庫を管理するソフトウェアで、ワシントン大学医学部大学院やカリフォルニア大学バークリー校、国立衛星研究所などが利用している。同社はこのほど、高名なベンチャー投資家たちから170万ドル(約1億8000万円)を調達した。

その小さなシードラウンドはDefy.vcがリードし、OmicronやUnpopular Ventures、Underdog Labs、そしてCanaan Partnersが参加した。

同社によると、この資金でプロダクト管理のソフトウェアを開発しこれまでの在庫管理サービスを補強したい、という。また同社は、それらはすべてデータ共有を行うコラボレーションで新薬を開発していくという新しい道を築くための踏み石だ、という。

製薬業界のためのコラボレーションソフトウェアを構築している企業は他にも存在し、大金を調達して開発に参加しているOwkinやWithin3の2社はその例にすぎない。

Genemodのセールスポイントは、同社のサービスにより研究者が自分が使用するツールの理解が高まる点であり、またツールを待つ必要がなくなり、実験が遅延しない点だ。

同社のCEOであるJacob Lee(ジェイコブ・リー)氏は「生命科学の分野は、世界最大の健康問題を解決するために、常に研究が行われているが手作業で、独善的で、非効率な工程で進められている」と語る。

Defy.vcはGenemodに投資するだけでなく、グロウスパートナーとして2020年後半のプロダクトロードマップの踏破を助ける。Defy.vcの共同創業者で専務取締役のNeil Sequeira(ニール・セケイラ)氏は、そのためにGenemodの取締役になる。

2018年に創業されたGenemodは、インキュベーターVenture Out Startupsの最初の卒業生で、ここはプレシードの投資も行い起業を助けている。

関連記事:バイオテックや医薬品研究のコラボサービス「Within3」が105億円超を調達

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Genemod資金調達

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ZoffのR&D機関が網膜に直接投影するメガネ型ディスプレイ提供のQDレーザと業務提携

ZoffのR&D機関が網膜に直接投影するメガネ型ディスプレイ提供のQDレーザと提携

メガネブランド「Zoff」(ゾフ)を運営するインターメスティックの研究・開発機関「Zoff Eye Performance Studio」(ZEPS。ゾフ アイパフォーマンス スタジオ)は10月13日、半導体レーザーおよび応用製品の企画・設計開発・製造・販売を行うQDレーザ(キューディーレーザ)との業務提携を発表した。

この業務提携により、半導体レーザー技術を援用した眼鏡処方プロセス刷新への取り組み、「レーザ網膜投影」による眼鏡型弱視支援器具および、次世代の眼鏡であるスマートグラスの共同開発・商用化を開始する。

ZEPSは、「新しい商品」「新しいサービス」を研究・開発し社会実装することを目的に設立したZoff初の研究・開発機関。「メガネや店舗にIT・AI技術を援用することで人間の可能性を拡張し、顧客体験を洗練すること」をビジョンに掲げている。

一方QDレーザは、主要事業のひとつとして「レーザ網膜投影」をコア技術とするレーザーアイウェア事業を展開。すでに弱視を抱える人々を対象とした網膜投影型エイドの商用化と医療機器認証取得を達成しており、「見える」の拡張を続けている。

今回、両社の描く未来像が一致したことから、今回の業務提携が実現。ニューノーマルに順応した「眼鏡処方のプロセス革命」に挑み、さらに、「レーザ網膜投影」による眼鏡型弱視支援器具と次世代の眼鏡であるスマートグラスの共同開発・商用化を開始する。

QDレーザは、富士通研究所のスピンオフベンチャーとして2006年に設立。半導体レーザに関する種々のコア技術を有し、事業を展開。主要事業の一つであるレーザアイウェア事業では、1)ロービジョン・エイド、2)ビジョン・ヘルスケア、3)オーギュメンテッド・ビジョンの3領域で研究開発・製品の製造販売を展開している。

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アスリート向けセラピー機器の「Hyperice」が大坂なおみ選手らのスーパースター投資で企業価値740億円に

著名アスリートのグループが手を組んで、4780万ドル(約50億6000万円)をHypericeに投資した。同社は、スポーツ選手やフィットネス愛好家がワークアウトや試合後の回復を早めるための医療機器を開発している会社だ。

会社を支援するのは、野球、バスケットボール、フットボール、サーフィン、テニスなどの以下のビッグネームだ。

  • Seth Curry(セス・カリー)
  • Anthony Davis(アンソニー・デイビス)
  • Rickie Fowler(リッキー・ファウラー)
  • DeAndre Jordan(デアンドレ・ジョーダン)
  • Jarvis Landry(ジャービス・ランドリー)
  • Patrick Mahomes,(パトリック・マホームズ)
  • Christian McCaffrey(クリスチャン・マカフリー)
  • Ja Morant(ジャ・モラント)
  • 大阪なおみ
  • Chris Paul(クリス・ポール)
  • Doc Rivers(ドック・リバース)
  • Ben Simmons(ベン・シモンズ)
  • Kelly Slater(ケリー・スレーター)
  • Fernando Tatis Jr(フェルナンド・タティス)
  • J.J. Watt(J.J・ワット)
  • Russell Westbrook(ラッセル・ウェストブルック)
  • Trae Young(トレイ・ヤング)

新たな投資は「カリフォルニア州アーバイン拠点の同社に7億ドル(741億円)の会社価値をもたらす」と同社の声明に書かれており、資金は営業とマーケティングと製品開発に使用されるとのこと。

そしてこのスポーツ医療技術開発会社を支える投資家はプレーヤーだけではない。米国トップの各スポーツリーグの投資部門もHypericeを支援している。NFL所属32チームのために戦略的投資を指揮する32 Equity、野球、バスケットボール、サッカー、アメリカンフットボール、およびNBAの選手会のための投資グループであるOneTeamがそれだ。

声明によると、財務顧問・投資会社のMain Street AdvisorsとSC Holdingsが今回のラウンドをリードした。新たな現金に加えてHypericeは、NBAおよび総合格闘技団体のUFCと、公式回復技術パートナーとして重要なパートナーシップ契約を結んだ。

画像クレジット: Hyperice

「Hypericeを始めたのはアスリートのパフォーマンスと選手寿命を改善するためだけではなく、同じ水準の技術を一般の人たちにも提供するためです」と創業者のAnthony Katz(アンソニ−・カッツ)氏が声明で言った。「私たちは何年もかけて、当社製品を毎日使うアスリートたちと強固な関係を築いてきました。彼らを投資家として会社に迎えることは、当社ブランドとの深い結びつきを考えればごく自然な成り行きです」。

次の大きな一歩は、アスリートのパフォーマンスを監視、管理して最適な休憩・回復時間を、ウェアラブルデバイスやApple HealthやStravaなどのサービスから得た情報に基づいて推奨するソフトウェアサービスだ。

「Hypericeを使い始めてから、トレーニングの効果を最大限に高め、競技にむけて体を準備するためには、いかに回復が重要なのかを知りました」とテニスのスーパースターである大坂なおみ選手が声明で語っている。「Hypericeは私の体と全身の健康を改善してくれました。私はこれが長く健康的な選手生活を送る基盤になることを知っています。それが投資した理由であり、私はこの立場を利用して全アスリートに対して回復を真剣に考えることを奨励していきます」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが英国とカナダでiPhoneに健康記録機能を追加、サーバー経由なしで暗号化データを医療機関に直送

アップルは、英国カナダの2つの新たな市場で、iPhoneの「ヘルスケア」アプリの「健康記録」(Health Records)機能のサポートを追加した。電子カルテ機能はもともと2018年に米国でデビューしたもので、現在では米国の500カ所以上の施設でサポートされている。まず、カナダでは3つの病院、英国では2つの病院でサポートされることになるが、もちろん時間の経過とともにサポートをより多くの病院に拡大する計画だ。

アップルのEHR(Electronic Health Record、医療情報基盤)機能は、ユーザーのプライバシーを念頭に置いて開発されている。具体的には、ユーザーのiPhoneと医療提供者の間で転送される情報は暗号化されており、中間のサーバーストレージなしにデータが直接転送される。また、ユーザーのデバイス上の健康記録データは完全に暗号化されてローカルに保存され、ユーザー個人のパスコード、およびTouch IDやFace IDに対応したデバイスでのみロックを解除することができる。

iPhone上の健康記録は、組織的なサポートを必要とするが、個人の医療データの高度な所有権を提供できるだけでなく、データがポータブルであり、患者を追跡してさまざまな医療施設や医療提供者と統合できることを確認する手段も提供できる。これまで世界各地でEHRシステムを統一し標準化するために多くの努力がなされてきたが、広範な支持を得たものはほとんどない。アップルの強みは、モバイル市場の約半分を占めるデバイスであるiPhoneを世界で幅広く扱うことができ、ユーザーフレンドリーで明確かつ簡潔なデザインだ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Googleアシスタントが視線操作のデバイスにも対応

日常的にデバイスとのやりとりを視線追跡に頼っている人は強力なツールを手に入れることになった。Googleアシスタントだ。視線を音声ベースのインターフェイスに置き換えることで、アシスタントの複数の統合とコミュニケーションツールがTobii Dynavoxデバイスの機能を向上させる。

GoogleアシスタントはTobiiのアイトラッキングタブレットやモバイルアプリにタイルとして加えることができ、そこにはよく使うアイテムを並べた大きなカスタマイズ可能なグリッドが表示され、ユーザーはそれを見て起動する。これはGoogle(グーグル)がサポートしている他のソフトウェアやハードウェアのインターフェイスの仲介役として機能する。

例えば、スマート家電は特定の障害を持つ人にとっては非常に便利だが、一部の身体が不自由な人にとっては視線追跡デバイスのインターフェースに簡単にアクセスできない可能性があり、他の手段を必要としたり、ユーザーが実行できるアクションを制限したりすることもある。Googleアシスタントは多種類のそんなデバイスに、最初から対応しているのだ。

Tobii DynavoxのCEOであるFredrik Ruben(フレドリック・ルーベン)氏は「身の回りの物と『世界』をコントロールできることが、ユーザーにとって一番大切だ。Googleアシスタントのエコシステムにはほぼ無限の可能性がある」と語る。

Googleアシスタントのタイルに置かれるコマンドやアプリはユーザーがセットアップでき、「今日はカレンダーに何がある?」のような質問も自動化できる。セットアップにはGoogleのアカウントが必要なだけで、Google Homeアプリへ最初にTobii DynavoxのSnap Core Firstという不思議な名前の視線追跡デバイスをスマートスピーカーもしくはディスプレイとして登録する。するとAssistantのタイルを加えられるようになり、話し言葉でコマンドをカスタマイズする。

画像クレジット:Google / Tobii Dynavox

ルーベン氏によると、Googleのソフトウェアの統合は「技術的には簡単で」「私たちのソフトウェア自体がすでに多様なアクセスニーズをサポートしており、サードパーティのサービスもローンチできるため、Googleアシスタントのサービスとも相性が良い」とのことだ。

Tobiiが提供しているアイコンのライブラリ(点灯する矢印、開いたドア、閉じたドアなど)を、簡単にGoogleアシスタントのショートカットとして使うこともできる。

これはグーグルにとって同社が開発した一連の興味深いアクセシビリティーサービスの最新のものだ。その他にもリアルタイムの書き起こしや、グループビデオ通話で手話が使われたときの検出、標準的でない発音に対する音声認識などがある。まだウェブの多くが離れた場所からはアクセスできないが、少なくとも大手テクノロジー企業は時折、良い仕事をしている。

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画像クレジット:Google / Tobii Dynavox

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コロナ禍に大麻吸入器メーカーの売上が急増、全米での合法化を見据え転換期を迎える大麻業界

世界的なパンデミックで大麻に興味を持つ人が急増しており、吸入器メーカーは記録的な売上を達成している。TechCrunchの取材に対し、スタートアップから大手メーカーまで複数の主要メーカーが、「コロナ危機が始まって以来、売上が増加している」と語った。供給量が制限されていることもあって、一部の上位モデルの吸入器は品薄となっており、各メーカーは増産対応に追われている。

一部のメーカーのCEOらは、パンデミックによって大麻が消費者に広く受け入れられるようになり、全米での合法化を求める声が高まっている状況を目の当たりにしている。合法化されれば、新たな消費者が市場に入ってくるため、Canopy Growth(キャノピー・グロース)、PAX(パックス)、Grenco Science(グレンコ・サイエンス)などの企業は市場トップ水準の大麻吸入器メーカーとして利益を享受することになるだろうが、肝心の製品が品薄ではそれもかなわない。

こうした品薄の原因の一部はサプライチェーンにあるが、品薄に苦しんでいる大麻関連製品だけではない。米国市場では現在、自転車からカヤックまで、多くの製品が品薄になっている。そうした製品は、もともと供給量が少なかったが、需要が増大したため、品薄に拍車がかかっている状態だ。

2012年に創業されたグレンコ・サイエンスは、ドライハーブの吸入器市場では早期参入組である。同社は2019年、シリーズAで資金を調達し(金額は非公開)、革新的な製品を開発、リリースした。さらに、安価な水ろ過式携帯型コンセントレート吸入器DashとRoamを2020年の初めに市場に投入する準備を整えていた。

ちょうどそのタイミングで新型コロナウイルスのパンデミックが発生した。

CEO兼共同創業者のChris Folkerts(クリス・フォルカーツ)氏によると、RoamとDashのリリースは延期されたが、製品を市場に投入する余力はまだ残っていたという。

フォルカーツ氏は次のように語る。「(パンデミック発生後も)引き続き成長を維持し、製品パイプラインを大幅に拡張できたと思っている。今年の後半にいくつか製品をリリースする予定になっており、買収後に新しいデザインのStundenglassを投入できると思う」。

実際、グレンコは、パンデミックの最中でも2つの製品のリリースや他メーカーの買収で大忙しだった。そして、その忙しさはまだ続くようだ。消費者のドライハーブへの興味が急速に高まっている一因は、同社がリリースしたDash吸入器ではないかとフォルカーツ氏は言う。グレンコは、さらに3つのドライハーブ吸入器をリリースする予定だ。

フォルカーツ氏は、現在に至るまでに、特に顧客サポートや製品出荷に関して問題に直面してきたことを認めている。オンラインショップや代理店経由で注文が殺到したが、それに対応する準備が整っていなかったのだ。そこで、かなりの人数の社員を再教育して、製品・出荷サポート担当として直接、顧客対応を行わせた、と同氏は語る。

キャノピー・グロース傘下の有名な吸入器販売会社Storz & Bickel(ストーズ・アンド・ビッケル)も顧客サポートの問題に頭を悩ませている。どのユーザーフォーラムを見ても、同社の顧客対応が追いついていないことは明らかだ。出荷が遅いとか、顧客対応が悪いといったクレームが購入者から寄せられている。同社のウェブサイトstorz-bickel.comに掲載されている商品の大半には、正規代理店には在庫があるにもかかわらず、「残りわずか」の警告が表示されている。

キャノピー・グロースのグローバル吸入器部門担当副社長Andy Lytwynec(アンディ・リトイネック)氏によると、ストーズ・アンド・ビッケルは予想を越えて急速に成長し、急ピッチで生産拡大が行われ、「ドイツの工場では、高まる切迫感の中で30人の社員が追加採用された」という。

2000年、 ストーズ・アンド・ビッケルは、世界初のデスクトップ型ドライハーブ吸入器と言われているVolcanoをリリースした。同社は現在、2種類のVolcano、およびVolcanoと同じ技術を用いた数種類の携帯型吸入器(いずれも医療用として認可済)を販売している。2018年、キャノピー・グロースはストーズ・アンド・ビッケルを買収し、他の吸入器ブランドをストーズ・アンド・ビッケルに統合した。

リトイネック氏は、ストーズ・アンド・ビッケルは新型コロナウイルスの影響度を判断するためのある種のバロメーターだ、と指摘する。キャノピー・グロースの最新の四半期報告によると、売上は増加しており、第1四半期が終了する6月末までに71%の売上増を記録した。財務報告書によると、この売上増の主な要因は、ストーズ・アンド・ビッケルの売上増と代理店販路の拡大であるという。

パンデミックの最中、消費者が購入したのはドライハーブだけではない。濃縮大麻吸入器のメーカーの売上も増加している。

Puffco Peak e-rigという優れた吸入器を製造するPuffco(パフコ)も売上が急増した。パフコの創業者Roger Volodarsky(ロジャー・ボロダスキー)氏はTechCrunchに次のように語った。「パンデミック発生以降、多くの新規嗜好者が大麻市場に入ってきたようだ。パフコでは、この期間、創業以来最大の売上を記録した。さまざまな課題に直面している中で、継続的に成長できていることに感謝している」。

パフコの製品は、粉ではなく、濃縮大麻で使用するように設計されている。濃縮大麻というカテゴリーは、大麻の吸入器市場でこれから大きく伸びることが予想される。乾燥粉末と、いわゆる携帯用ペン型吸入器との中間にあたるカテゴリーだ。

Jupiter Research(ジュピター・リサーチ)は、CCELL吸入ハードウェア販売の最大手で、米国を含む世界の規制された大麻市場でビジネスを展開している。事前にパッケージングされた自給型THCカートリッジであるCCELL市場で、ジュピター・リサーチは新型コロナウイルスの影響をほとんど受けなかった。

ジュピターの最高執行責任者兼社長のTim Conder(ティム・コンダー)氏は次のように述べている。「少なくともデータを見る限りでは、吸入器市場全体で新型コロナウイルスの影響による大きな変化はなかった。実際、当社は吸入器カテゴリー全体で市場シェアを伸ばし続けている。吸入器(ベイブ)は、大麻ヘナ粉末で2番目に大きなカテゴリーで、3番目は食用だ」。

コンダー氏は、新型コロナウイルスがきっかけとなって、大麻に対する政府の姿勢が変化する可能性があると見ている。「大麻合法化の動きが連邦レベルで勢いを増しているように感じる」と語る同氏は、各州政府にも連邦政府にも、全米の合法大麻市場によってもたらされる財政上のメリットに注目してほしい、と考えている。

他の大麻関連機器メーカー企業も、新型コロナウイルスによって米政府が大麻をさまざまな角度から見るようになった、という見方に同意している。

ウィスコンシン州に本社を置くDynaVap(ダイナバップ)によると、大麻に対する一般大衆の認識は、社会的な受容に向けた機運の継続的な高まりと同調する形で拡大してきたという。DynaVapの創業者兼CFOのEric Olson(エリック・オルセン)氏は、「大麻草にはプラスの効能さえあり、新型コロナウイルスの影響を軽減するのではないかと思う」と指摘する。さらに同氏は、

「業界が州および国レベルでの合法化を推進し続けることができれば、パンデミック後、大麻草をめぐる動きは肯定的で影響力のある住民運動となるだろう」と語った。

ウィスコンシン州を拠点とする従業員50人のダイナバップは、5月に人員を増強し始め、最近、「Orion」と呼ばれる誘導加熱器など、いくつか新しい製品をリリースした。

世界的なパンデミックの発生から6か月が経過した今、前述の各メーカーは需要増に対応すべく増産と人員増を図っており、大麻市場は勢いよく拡大しているようだ。

キャノピー・グロースのリトイネック氏は、ここ数か月間が大麻業界のターニングポイントになったと考えている。それは、大麻の合法化(および課税)による経済的影響のみを指しているのではない。消費者が大麻に対して洗練された感覚を持つようになっている、と同氏は言う。

「消費者は違法の雑草にではなく、より高級な商品にお金を使うようになっている。パンデミックの最中にカテゴリーが成熟していくのは良い傾向だ。吸入器や高品質の消耗品が売れるようになっている。これは大麻が受け入れられている証だ。今後業界が追い風に乗って、この暗黒の時期を可能な限り早く脱出できることを祈るばかりだ」とリトイネック氏は語った。

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タグ:新型コロナウイルス 大麻

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(翻訳:Dragonfly)