SpotifyとChernin Entertainmentがポッドキャストのテレビ番組化・映画化に向け優先交渉権契約を締結

まもなくより多くのSpotify(スポティファイ)ポッドキャストがテレビ番組化・映画化されることになるだろう。米国時間9月24日、Spotifyは、ストリーミング音楽のプロバイダーであり、映画やテレビ番組の制作会社でもあるChernin Entertainment(チャーニンエンターテイメント)と複数年契約を結んだことを発表した。この契約により、合計数千時間のコンテンツに相当する250を超すオリジナルポッドキャストシリーズを収めたライブラリから、Chernin Entertainmentが映画化・テレビ番組化に相応しいコンテンツを特定できるようになる。

両社はすでに、Spotifyが所有するGimlet Media(ギムレットメディア)を通し、連続殺人犯Edward Wayne Edwards(エドワード・ウェイン・エドワーズ)に関するポッドキャストシリーズ「The Clearing」の映像化に向けた取り組みをPineapple Street Media(パイナップルストリートメディア)と共に共同で進めていた。これらの取り組みは今後も引き続き行われるが、今回の契約によりChernin Entertainmentは、世界中から寄せられた数多くのポッドキャストを収めたSpotifyのライブラリにアクセスできるようになる。

Image Credits: Spotify screenshot via TechCrunch

Chernin Entertainmentは現在、「フォードvsフェラーリ」 、「The Planet of the Apes/猿の惑星」トリロジー、「グレイテスト・ショーマン」、「ドリーム」などの映画のほか、「New Girl ~ ダサかわ女子と三銃士」やApple TV+の 「See」、「真相 ~Truth Be Told~」といったテレビ番組の制作でも知られている。同社は、20th Century Fox(20世紀フォックス)との優先交渉権契約を締結することを望んでいたものの、Disney(ディズニー)がFoxの長編映画部門を買収したためこれをなし得なかったが、今春、Netflix(ネットフリックス)との優先交渉権契約を締結した

こうした契約や業界での他の変化により、Chernin Entertainmentは映画、テレビ、その他のデジタルビデオ化が可能な新たなIP(知的財産)を求め、歩み出すこととなった。

一方、ポッドキャストの成長により、オーディオプログラミングは映画やテレビといった他のメディアへの置き換えが可能なオリジナルコンテンツの有望なソースとなっている。このポッドキャスト市場は、SpotifyがGimletThe Ringer(ザ・リンガー)といったポッドキャスト制作会社や、より多くの人がクリエイターになることを可能にするAnchor(アンカー)といったポッドキャスト作成ツールの買収を通し、多額の投資を行ってきた市場である。

「オーディオは、エンターテイメントビジネスにおいて最も急成長中のメディアです。Spotifyは今日、数千時間にもおよぶ250以上のオリジナルコンテンツを収めた、世界最大の手つかずのIPライブラリの1つを所有しています。そして、このライブラリには日々作品が追加され続けているのです」とChernin Entertainment会長兼CEOのPeter Chernin(ピーター・チャーニン)氏は語る。「このコンテンツの宝庫に加え、さらに新たなストーリーが加速度的に追加されており、これにより、魅力的なストーリーや知的財産をスクリーンコンテンツへと置き換える巨大な機会がもたらされます」

SpotifyがTechCrunchに語ったところによると、この契約には、いくつのポッドキャストを映像化するかについての明確な数の取り決めは含まれていないが、Spotifyではかなりの数になると見込んでいる。収益配分の詳細など、契約の具体的条件も公開されていないが、この契約では、Chernin Entertainmentが映像化を見送ったプログラムについては、Spotifyが他の制作会社と映像化を進めることを禁止する条件は含まれていない。またマーケティングやプロモーションへの取り組みについても具体的な取り決めはなされておらず、Spotifyによると、これらについては、プロジェクトごとに処理することになるという。

Spotifyの250にのぼるオリジナル番組を収めたライブラリ、そして数週間後、数カ月後に継続的にリリースされるコンテンツそのものが、依然としてこの契約の中心である。しかし、Spotifyによると、両社がそのグループの枠を超え、映像化に共に取り組むシナリオもあるとのことである。

その目的は、どういった種類のプログラムが映画やテレビ番組へうまく置き換えられるかを発見することである。Spotifyはこの点について、Spotifyの多彩なコンテンツ、データ分析能力、クリエイターからのアクセスが同社に有利に働くと考えていると語った。

Spotifyのオリジナルポッドキャストライブラリには現在、さまざまなジャンルの人気番組が収められおり、これがこの契約の一番の資産である。さらにSpotifyは、先に開発した分析専用ツールにより、その番組の視聴状況を確認するデータを活用することができるようになる。

例えば、Spotifyは現在Spotify for Podcasters(スポティファイ・フォー・ポッドキャスターズ)を通して、ポッドキャスターが自らの番組の視聴状況を確認したり、他の匿名化された視聴者データを追跡できるようにしている。今後、同社はこのデータを使用して、映像化が成功しそうなものを特定できるようになる。Spotifyは複数の制作会社を所有しているため、より大規模な映像化に適したビジョンを持つクリエイターを特定する作業を支援することも可能だ。

Spotifyのポッドキャストコンテンツが映画化またはテレビ番組化されるのはこれが初めてではない。同社は現在Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)向けの「ホームカミング」の映像化や、HBO Max(HBOマックス)向けの「The Two Princes」、Prime Video向けの「The Horror of Dolores Roach」といった今後のプロジェクトを含め、様々な制作段階のプロジェクトを12件抱えている。

SpotifyとChernin Entertainmentは、本日発表された契約を契機として進められることになる最初のプロジェクトについて何ら発表を行ってはいないが、通常の企画と制作のタイムラインを踏まえると、そうしたコンテンツがお目見えするのは、最も早くて2021年になるだろう。

「Spotifyでは、オーディオの驚異的な成長が世界で最も才能に溢れたクリエイターたちを今後も魅了し、ポッドキャストがオリジナルIPの最高の到達点になることを確信しています。当社が引き続きコンテンツに対する志を拡大させて行く中、チャーニン氏や彼の優秀なチームと手を組むこととになったことに期待を膨らませています。当社がこれらのストーリーをさまざまなメディアを通し世界中の視聴者に配信して行くにあたり、Chernin Entertainmentは完璧なパートナーと言えます。私たちは、ソース素材としてのポッドキャスト新時代の到来を共に告げようとしています」とSpotifyのコンテンツおよび広告事業責任者のDawn Ostroff(ドーン・オストロフ)氏は語った。

関連記事:音声配信アプリ「stand.fm」が配信者の収益化を支援する「月額課金チャンネル機能」開始
カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Spotify エンターテインメント ポッドキャスト

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

音声配信アプリ「stand.fm」が配信者の収益化を支援する「月額課金チャンネル機能」開始

音声配信アプリ「stand.fm」が配信者の収益化を支援する「月額課金チャンネル機能」開始

stand.fmは9月29日、音声コンテンツ配信アプリ「stand.fm」(Android版iOS版)において、配信者の収益化を支援する「月額課金チャンネル機能(承認制)」のリリースを発表した。

stand.fmは、誰でも・どこでもスマホひとつで気軽に収録から配信まで行える音声コンテンツ配信アプリ。2020年8月20日に発表した資金調達リリースから約1ヵ月間で、アクティブユーザーが180%増、滞在時間は15分増の平均75分に到達したという。

月額課金チャンネル機能は、チャンネルを応援してくれる月額課金ユーザー(サポーター)だけに、収録放送を公開できる機能。月額課金額は、配信者が任意で決めることができ、月額税込み120円〜1万円の間(55段階)で設定できる。stand.fmは、プラットフォーム手数料などを差し引いた差額を収益還元するとしている。

同機能の利用は現在承認制となっており、申請希望者は「月額課金チャンネル応募フォーム」より応募する必要がある。

なお同機能では、収録放送のすべてを限定公開にするだけではなく、1秒単位で無料公開範囲を設定できる機能も用意している。例えば、「放送の8割は全ユーザーが再生可能、残り2割はボーナストラックとして限定配信」という使い方も可能。配信者は、既存チャンネル登録者やSNSのファンに対して、より深いつながりを通して収録放送を配信できるとしている。

音声配信アプリ「stand.fm」が配信者の収益化を支援する「月額課金チャンネル機能」開始

関連記事
音声配信アプリ「stand.fm」が5億円を調達、配信者の収益化支援プログラムを開始

人気ポッドキャスターのコナン・オブライエンが語る「変化し続けるメディアの世界でやっていくには」

「私の人生で起きた良いことのほとんどがそうだったように」とコメディアンであるConan O’Brien(コナン・オブライエン)氏が苦笑しながら説明する。「ポッドキャストの成功はまったくもって驚きだった」。同氏の答えはいつもの控えめなものだった。2年ほど前にポッドキャスト「Conan O’Brien Needs a Friend」(コナン・オブライエには友達が必要)を始めて以来、ポッドキャストチャートで急速に順位を上げ、米国で最も人気のある番組の1つになった。

同氏の30年におよぶエンターテインメントのキャリアを見つめてきた人ならその理由は簡単にわかる。機知に富み、ほとんど超人的に愛想が良いため、ポッドキャスティングへの移行は振り返ってみれば当然の帰結だったように思える。結局、何十年にもわたって次々に深夜の全米ネットワークのトークショーを主催していたのだから、新しいエンターテインメントベンチャーを立ち上げるとはいえ、まったく最初から始めたというわけではないのだ。さらに言えば、何千万ものTwitterのフォロワーと独自のオンラインメディア会社であるTeam Coco(チームココ)の存在もある。

物事が万事順調に運んだというわけではない。長期間の放送が約束されていたTonight Show(トゥナイトショー)の番組枠はすべてがオブライエン氏の望むどおりには運ばず、期待の高かった深夜番組から8カ月足らずで大々的に離れることになった。同氏が出演したシリーズの中では最も短い期間となった。テレビ放映されたSteve Carrell(スティーブ・カレル)氏との「撤退」インタビューでは、The Office(ザ・オフィス)のスターであるオブライエン氏が自身のNBCバッジを細断した。しかしオブライエン氏の深夜番組の中断は短命に終わった。その年の後半、同氏は米TBSの番組「Conan」で復帰した。同番組は11月の放送で10年目を迎える(少なくとも2022年まで更新予定)。

2018年の「Conan O’Brien Needs a Friend」の開始とともに同氏はポッドキャスティングに新たな自由を発見した。

「ポッドキャストはトークショーより優れていること、楽しいことがある」と外出禁止期間中に髪が伸びたオブライエン氏は、今週のTechCrunch Disruptのインタビューで語った。「伝統的なトークショーには制約がある。何年もの間、全米ネットワークテレビに出演していた頃は6~7分ごとのパターンを守る必要があった。私があなたと、または私が話したいと夢見ていた誰かと話しているとする。トム・ハンクスかもしれないし、ジム・キャリーかもしれないし、ロビン・ウィリアムスかもしれない。6〜7分ごとに笑いを挟んで、休憩を入れて、また戻るということを繰り返す」。

「そういうのは自然な会話の流れとは言えない」と同氏は続けた。「ポッドキャストでできることは本当に素晴らしい。1時間と15分をかけて誰かと話すことができる。編集で短くしようとするが、ほとんどの場合人々は気を緩める。もう1つ好きな点はヘアセットと化粧が要らないことだ。冗談のように聞こえると思う。しかし、いろんな人が私の真っ白な顔をほぼ30年化粧で固めてきた後に改めて眺めると、私はまだ生きているみたいに見える」。

「Team Coco」は合計10のショーを制作した。長年の相棒であるAndy Richter(アンディ・リヒター)氏と俳優のRob Lowe(ロブ・ロウ)氏によるショー、作家のMike Sweeney(マイク・スウィーニー)氏とJessie Gaskel(ジェシー・ガスケル)氏とのショーで親しみを込めたタイトルの「Inside Conan(インサイドコナン)」、Saturday Night Live(サタデーナイトライブ)出身のDana Carvey(ダナ・カーベイ)氏との6部構成のインタビューのミニシリーズなどだ。

「数字の目標は設定したくない」とオブライエン氏は言う。「私は驚いている。2年間で、10種類のポッドキャストを公開した。そのうちのいくつかはスクリプト化されていないが、されたものもある。『いつまでに35作のポッドキャストを制作しなければならない』とは言いたくない。良いものを作りたいからだ」。

同氏はトークショーの方も独自の変革を遂げるべく力を注いできた。

2019年に番組は30分形式に再編成された。オブライエン氏は机とスーツを捨て、より自由な形式を採用した。ポッドキャスティングベンチャーだからこそ可能な新しい自由に影響を受けた部分がある。新型コロナにより対面のショーが不可能になったとき、同氏は他の多くの人と同じように自宅から働き始め、リモートのZoomインタビューに切り替えた。これまで「Conan O’Brien Needs a Friend」は毎週インタビューを投稿し続けている。

契約が数年後に終了した後、深夜のショーを続けるつもりかどうか尋ねられたが、オブライエンは決めかねているようだった。

「それについて考えるのは間違いだと思う。ショーをやめ、ポッドキャストだけにするのか。それとも引退して小屋で静かに手紙を書き続けるのか。何かを創り出すのが好きなんだ。エネルギーにあふれている。私は人を笑わせるのが大好きだ。今起こっていることが収束していくことはわかっている。TechCrunch Disruptを今見ている全ての人へのメッセージは、皆が少し心を開く必要があるということだと思う。ポッドキャストを作っているからといって、他のことをしてはいけないということでは多分ない。これはモノづくりが好きな人だけでなく、誰にも言えると思う」。

画像クレジット:Bryce Durbin

数十年にわたる成功のおかげで、オブライエン氏はプラットフォームにとらわれないという比較的ユニークな立場にいるようだ。予想外の技術的変化によりエンターテインメント業界がひっくり返るような変革が起きている今、単一の媒体に縛られないことは強みになる。

「今から5年後、私たちの娯楽は錠剤になるかもしれない」と同氏は言う。「The Sopranos(邦題:ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア)を大量に飲む。The Sopranosをボトル1本分と大量の水を飲めば、赤身の肉は必要ない」v

「こじつけに聞こえると思うが、これまでのキャリアの中で今が最も刺激的だと言えるのは、クリエイティブになる方法が非常に多かったからだ。人々を笑わせる方法はたくさんあり、私は新しいチャンスを楽しんでいる。あなたが私と同じくらい生きてきた人なら選択肢があると思う。変化を恐れることもできるし喜ぶこともできる」。

画像クレジット:Team Coco

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

ポッドキャスト分析スタートアップのChartableが約2.4億円を調達

ポッドキャストの信頼できるダウンロードチャートで知られるスタートアップのChartableが、シードラウンドで225万ドル(約2億4000万円)を調達したと発表した。

創業者のDave Zohrob(デイブ・ゾーロブ)氏とHarish Agarwal(ハリシュ・アガルワル)氏は以前はAngelListの同僚で、Hacker Newsから主な項目をまとめたポッドキャストのHacker Dailyを一緒に制作していた。ChartableのCEOであるゾーロブ氏は筆者に対し、自分たちでポッドキャストを配信した経験から分析用のプロダクトを作ろうと強く思ったと語った。

「ポッドキャストは奇妙な市場だ。ある日、ダウンロード数が1日4000回から5000回になった。なぜそうなったのか、我々にはわからなかった」と同氏は言う。

そこで2人はChartableを作り、オーディエンスやビジネスを理解するために必要なインサイトをパブリッシャーや広告主に提供することにした。

業界全体のチャートを作っているわけだが、これはパブリッシャーがさまざまなポッドキャストアプリにわたる聴取データを集計したり、ChartableがSmartAdsやSmartLinks、SmartPromosのようなプロダクトを提供したりするのにも役立っている。SmartAdsはポッドキャスト広告の効果を測定するプロダクト、SmartLinksはポッドキャストのダウンロードを促進するデジタルマーケティングキャンペーンの効果を測定するプロダクト、SmartPromosは複数のポッドキャストにまたがるプロモーションキャンペーンのためのアトリビューションプロダクトだ。

2018年に創業したChartableは、1年前には毎月1億回のダウンロードを調査していたが、現在は10億回のダウンロードと広告インプレッションを調査しているという。同社は独立系のポッドキャスター向けに無料版を提供しているが、現時点で世界トップ10のパブリッシャーのうち8社と連携しているとゾーロブ氏は強調した。

Chartable創業者のハリシュ・アガルワル氏とデイブ・ゾーロブ氏(画像クレジット:Chartable)

ゾーロブ氏は、歴史は繰り返すものでChartableはアプリストアに関するApp Annieのような分析会社と同じような役割をポッドキャストに関して担っていると述べる。同時に、ポッドキャストはまったく異なる市場であるとも示唆する。

「もっと細分化されていて、AppleとAndroidだけではない。ビジネスモデルの種類も膨大で、ずっと複雑だ」(ゾーロブ氏)。

iOSでプライバシーの取り扱いが今後変更されるとChartableのアトリビューションツールに影響が及ぶかどうかについてゾーロブ氏は、ポッドキャストのアトリビューションに関するデータは今もすでに制限されているため「大きな変更」は生じないはずだと述べた。

「結局、ほかのデジタル広告で何が起きているかというと、面白いことにポッドキャスト広告のようになり始めている。おそらく最終的に両者はどこかで交わるだろう」と同氏は語った。

今回のラウンドを主導したのは、2019年のラウンドでChartableに150万ドル(約1億6000万円)を調達したInitialized Capitalだ。ほかにNaval Ravikant(ナバル・ラビカント)氏、Greycroft Partners、The Fund、Weekend Fund、Jim Young(ジム・ヤング)氏、Lukas Biewald(ルーカス・ビーワルド)氏が参加した。

Initialized Capital共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏は発表の中で「Chartableはポッドキャストの分析とアトリビューションの権威だ。ブランドやパブリッシャーがポッドキャスト業界を推進するために必要なツールを作っている同社を支援することができ、これほど嬉しいことはない」と述べている。ちなみにオハニアン氏は、Initialized Capitalを去る前にChartableのラウンドを主導した。

画像クレジット:Nicola Katie / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

アップルがOprah’s Book Clubシリーズを公開してポッドキャストの活用を拡大

Apple(アップル)はポッドキャストへの投資を拡大している。米国時間9月8日、Apple BooksとOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏は「Oprah’s Book Club」ポッドキャストの公開を発表した(Appleプレスリリース)。オプラ氏が本を紹介するOprah’s Book Clubで取り上げられたベストセラーで、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストのIsabel Wilkerson(イザベル・ウィルカーソン)氏が書いた「Caste: The Origins of Our Discontents」に関連するテーマを8本のエピソードで探る。このポッドキャストは、アップルのストリーミングTVサービスであるApple TV+との初のクロスオーバーとなる。

2020年1月、アップルはApple TV+の番組と関連するオリジナルのポッドキャストの制作を計画しているとにBloombergは報じた。ポッドキャストはApple TV+のコンテンツと連携して提供され、Apple TV+オリジナル作品の成長に活用されると見られていた。

ポッドキャストを開発中であるという記事は、ほかにもあった。例えばApple TV+のアンソロジーシリーズ「リトル・アメリカ」のエグゼクティブプロデューサーであるLee Eisenberg(リー・アイゼンバーグ)氏Forbesとのインタビューで、この番組にはオリジナルのポッドキャストもあると述べていた。しかしそのポッドキャストはまだ公開されていない。

アップルはOprah’s Book Club以外のポッドキャストについてはコメントしなかった。

とはいえ、Oprah’s Book Clubが新たな拡張の始まりであることは明らかだ。

画像クレジット:Apple Podcasts、スクリーンショット作成はTechCrunch

アップルは現在、Oprah’s Book ClubシリーズをApple TV+でストリーミング配信している。アップルは、このブッククラブのコンテンツをさまざまなチャネルで宣伝できる。新しいポッドキャストシリーズに加え、オプラ氏が選んだ本はApple Booksで購入できるし、Apple Booksでディスカションガイドも利用できる。Apple Newsで「Caste」からの引用を限定で読んだり聴いたりすることもできる。Apple Music Radio(以前のBeats 1)でも著者インタビューを公開している

新たに公開されたポッドキャストの最初のエピソードでは、著者のウィルカーソン氏が『Caste』を書いたきっかけや、社会には人種差別について語る新しい方法が必要だという同氏の考えがとり上げられている。アップルによれば、今後のエピソードは著書に書かれているカースト制度の具体的な要点を語るものになるという。新しいエピソードは9月8日を皮切りに、今後週に2回、火曜日と木曜日に公開される。

Spotify、Pandora、Amazon(アマゾン)といった競合はポッドキャストに対してかなり力を入れているが、アップルはこれまでポッドキャストにあまり投資してこなかった。Spotifyは数百ものオリジナルプログラムや限定プログラムをユーザーに提供している。SpotifyはGimlet、Parcast、Anchor、The Ringerといったポッドキャストネットワークやスタートアップも買収した。

Pandoraは親会社であるSiriusXMの資産を活用してトークショーをポッドキャストにしたり(未訳記事)、ポッドキャストと音楽の新しいフォーマットであるPandora Storiesを開発したりしている(未訳記事)。アマゾンはAudibleのポッドキャストをプレミアムコレクションとしてまとめ、プライム会員に提供している。

一方のアップルは、Apple Keynotesや四半期ごとの業績発表といった一般的な企業活動をポッドキャストとして公開している。Apple Storeでは以前にポッドキャストをテーマにしたイベントを開催していたが、アップデートされていない。Apple Newsは「Apple News Today」をプロデュースしている。Apple Musicは「The Zane Lowe Interview Series」や「Songs for Life」をプロデュースし、Apple Musicでもストリーミング配信している。

Apple Booksはオプラ氏のポッドキャストの共同制作者であって、Apple TV+の共同制作者ではない。したがって、Apple TV+と連携した初のシリーズとして「正式に」カウントすべきではないかもしれないことは付記しておきたい。

Spotifyの取り組みとは異なり、アップルのポッドキャストはまさにポッドキャストだ。すなわち、Apple Podcastsで無料で聞くことができ、ポッドキャスト形式の条件であるRSSを利用してほかのポッドキャスト聴取アプリに追加することができる。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Apple ポッドキャスト

原文へ

(翻訳:Kaori Koyama)

米国のGoogleポッドキャストに機械学習でニュースをカスタマイズする機能が登場

2019年にGoogle(グーグル)は、Googleアシスタントでオーディオニュースをカスタマイズする「Your News Update」というプレイリストをリリースした(未訳記事)。機械学習の技術を活用してニュースコンテンツを理解し、そのコンテンツがリスナーの好みや関心とどう関連するかを判断する機能だ。米国時間9月2日、グーグルはオーディオのカスタマイズをGoogleポッドキャストに広げ、米国の数百万人のポッドキャストリスナーに提供すると発表した(Googleブログ)。

Your News Updateを購読するには、Googleポッドキャストアプリを起動し、Exploreタブでいくつかのストーリーを購読して聴く。これにより、関心や地域、履歴、設定が反映されるようになる。

画像クレジット:Google

Your News UpdateはAlexaで人気のFlash Briefingをさらに賢くした機能として設計された。現在、Alexaユーザーは1万種類を超えるFlash Briefingのスキルからニュース提供元やコンテンツを追加して自分のFlash Briefingをカスタマイズすることができる。しかしこの作業はユーザーがやらなくてはならない。

Your News Updateは、グーグルがユーザーの関心を理解することで、この面倒な作業をアルゴリズムに任せる。

カスタマイズではユーザーがGoogleに対して明示的に提供しているデータが考慮される。フォローして関心を示したトピック、ニュース提供元、地域などだ。これに加えグーグルは、ユーザーのグーグル製品利用状況から収集したデータ(Googleアカウントの設定)を利用し、ユーザーの関心に応じてニュースをさらにカスタマイズする。ただしユーザーは自分のアカウント設定のページでカスタマイズをオフにすることができる。

Your News Updateの下にあるGoogleアシスタントのリンクから、ニュースのアルゴリズムの仕組みを詳しく説明したウェブサイトにアクセスできる。グーグルは、ニュースのアルゴリズムではユーザーの政治的信条や属性に基づくカスタマイズはしないと説明している(Googleの説明ページ)。

とはいえ、GoogleニュースやDiscoverで特定のパブリッシャーをフォローしたり非表示にしたりする、あるトピックをフォローする、似た記事をもっと多くまたは少なく表示するように指定するといったアクティビティから、グーグルは知り、学んでいく。

つまりグーグルはYour News Updateを組み立てるために、ユーザーに関して知っている豊富な情報と、ユーザーが好みに合わせてニュースをカスタマイズした行動についての知識を組み合わせる。

これが有効に働く場合もある。例えば好きなスポーツチームや地元の最新ニュースを受け取ることができる。ユーザーを左派寄りあるいは右派寄りのニュース提供元に誘導しようという意図はないだろうが、カスタマイズ技術の仕組みとグーグルのパブリッシャーのラインナップに基づいて結果としてそうなることはあり得る。グーグルのラインアップには左派寄りと右派寄りの両方のニュース提供元(ad fontes mediaサイト)がある。

画像クレジット:Google

さらにグーグルはサービス開始にあたって、ユーザーの使い方から学ぶのでGoogleアシスタントの機能を使えば使うほど適切にカスタマイズされるようになると述べている。

ポッドキャストのアップデートとあわせて、グーグルはGoogleアシスタントで地元の話題を簡単に聴けるようにする。「Hey Google, play local news(ローカルニュースを再生して)」「Hey Google, play news about [your city]((街の名前)のニュースを再生して)」と話しかければ、ネイティブ音声とテキスト読み上げのローカルニュースのミックスを聴くことができる。この機能を利用すると、Your News Updateの選択にも反映されるようになる。

画像クレジット:Google

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

人気ポッドキャストTwenty Minute VCのホスト、ハリー・ステビングス氏が、番組の人気に乗じてマイクロVCを設立

ポッドキャストが大きなビジネスなりつつある。他の多くのメディアがあのとらえどころの無い尺度であるエンゲージメントの獲得に苦戦している中、ポッドキャストはうまくオーディエンスを惹きつけ維持できるのがその理由の1つだ。今、世界中のスタートアップ投資家たちに人気のシリーズを創ったあるポッドキャストホストが、その勢いを活かして自身でも投資ファンドを設立しようとしている。ロンドンを拠点とするクリエーターでThe Twenty Minute VCのホストであるHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏は830万ドル(約8億8632万円)のマイクロVCファンドを立ち上げようとしている。20VCという名前のこのファンドは、「tier 1」の共同投資家たちといっしょに米国のさまざまなステージのスタートアップに出資する予定だ。

ステビングス氏は、投資に関する投資家たちとの談話に多くの時間を費やしていて、口で言うだけではなく実際に投資行動を行うのは今回が2度目だ。同氏は、2018年にFred Destin(フレッド・デスティン)氏と共同で設立したStride.vc(ストライド・ヴィーシー)のパートナーでもある(その後、3人目のパートナーPia d’Iribarne(ピア・ディリバルヌ)氏が加わる)。ステビングス氏によると、20VCは通常のVCとは異なるニーズを満たすものだという。従来のファンドはイギリスとフランスへの投資を重視しており、eコマースに変革をもたらす事業者やアーリーステージスタートアップに投資する傾向が強かった(他の投資は一切行わないというわけではないが)。

対照的に、ステビングス氏の新しいファンドは米国を重視していて、典型的なマイクロファンドを形成すると思われるような位置付けだ。マイクロファンドとは、名前のとおり、小規模な投資と一緒に他のスキルも提供することで大きな投資効果を狙うもので、ここ数年でよく使われるようになってきた手法である(「500万ドル(約5億3396万円)程度のマイクロファンドに1つも出資したことがないVCなど聞いたことがない」と以前業界にいた人物が教えてくれた)。

20VCの場合は、会社の構築と成長にステビングス氏自身のスキルセットをセールスポイントとして提供することで、他のVCの投資案件で有利な位置を確保することを狙っている。

典型的な投資規模は10万ドル(約1068万円)から30万ドル(約3204万円)(通常の小切手の額は25万ドル(約2670万円))程度だ。ファンドの正式発表は今日だが、Sequoia(セコイア)、Index(インデックス)、Founders Fund(ファウンダーズファンド)、a16zなどのVCと共同で、すでに12件の出資が完了している(そのうち現時点で株式公開に至ったのはNex Health(ネックス・ヘルス) とSpiketrap(スパイクトラップ)の2件のみ)。

ファンドの名前20VCをポッドキャストの番組名と関連付けたのも意図的だ。ステビングス氏のポッドキャストはテック業界で独自のブランドを形成していて、約20万人の登録者がおり、週2回の番組配信で現在までに計8000万ダウンロードを記録している。また、20VCは、ステビングス氏自身の企業家としての経験だけで成り立っているわけではない。ポッドキャストの出演者や番組を通じて同氏を知っている人たちのネットワークを活用してLPを構成しているのだ。

LPは64人ほどで、Atlassian(アトラシアン)、 Yammer(ヤンマー)(David Sacks(デイビッド・サックス)氏)、Plaid(プレイド)(William Hockney(ウィリアム・ホックニー)氏)、 Superhuman(スーパーヒューマン)、Airtable(エアテーブル)、Calm(カーム)、Cazoo(カズー)、Zenly(ゼンリー)、Alan(アラン)、Spotify(スポティファイ)(Shakil Khan(シャキル・カーン)氏)、Tray.io(トレイ・アイオ)というように、創業者や現幹部および旧幹部が含まれる。GPには、Kleiner(クレイニアー)(Mamoon Hamid(マムーン・ハミド)氏)、 Social Capital(ソーシャル・キャピタル)(Chamath(チャマス)氏)、Thrive(トライブ) (Josh Kushner (ジョッシュ・クシュナー)氏とMiles Grimshaw(マイルズ・グリムショー)氏)、 Atomic(アトミック)、ファウンダーズファンド(Brian Singerman(ブライアン・シンガーマン)氏)、Coatue(コート)、インデックス(Danny Rimer(ダニー・リマー)氏)、True Ventures(トゥルー・ベンチャーズ)(Phil Black(フィル・ブラック)氏)、Beezer Clarkson(ビーザー・クラークソン)氏などが名を連ねる。面白い投資家やスタートアップたちに焦点を当てた人気のポッドキャストをホストしていることが奏功して、ファンド構築のネットワーク作りに良い結果をもたらしているのだ。4週間で定員の3倍を超える申し込みがあったという。

若者のVC

ステビングス氏のスタートアップ投資への参入は、それ自体、典型的なスタートアップストーリーだ。

実は同氏は、ポッドキャストのアイデアを思いつく前からベンチャーキャピタルの世界に興味を持っていたのだが、当時は別の道を目指していて、ロンドン大学キングズカレッジに法学部の学生として在籍していた(英国では大学生としてロースクールに入る)。

「ポッドキャストを始めたのは、何か興味を持てることに、もっとはっきり言えばいくらかお金を稼げることに取り組みたいと思ったからだ」とステビングス氏は言う。同氏の母親は多発性硬化症を患っていて、医療費の支払いに窮していた。それで広告収入で得たお金を母親の医療費の支払いに充てるつもりでポッドキャストを始めることにしたという。

ステビングス氏はテック業界では無名だったが、ゼロから成功するための非常に具体的な計画があったし、いつも笑顔で積極性にあふれていた。

まずは、最初のゲストとしてふさわしい人物を見つけることから始めた。注目と尊敬を集めているが、好人物でもあり、うまくアプローチすればインタビューに応じてくれそうな人物(ステビングス氏に言わせると「もぎとりやすい果実」)を見つける必要があった。

そうして見つかったのがGuy Kawasaki(ガイ・カワサキ)氏だ。ステビングス氏はカワサキ氏からインタビューの同意を取り付けただけでなく、次回の出演者候補として3人を推薦してもらい、その人に何を聞くべきかも尋ねた。そしてその3人からも同じように他の人物を推薦してもらう。このように意図的なネズミ講とでもいうべき方法で人脈を広げていったのだ。

「私は、コンテンツの配布というものを非常に科学的に見ている。できるだけ多くの人たちにコンテンツ作成プロセスに関わってもらいたいと思っている」とステビングス氏は言う。このインタビューは寝室で座った状態で行ったが、最近の同氏のポッドキャストの録音は通常、上記の写真のようにスタジオで行っていると思う。

「20分」という時間枠もステビングス氏の計算に基づいている。同氏は何とか体重を落とそうと必死になっていたとき、Tim Ferriss(ティム・フェリス)氏の4-hour Bodyという方法でやっと数キログラム落とすことができたのだが、以来タイミングの重要さを考えるようになったという。それに、ロンドンの通常の通勤時間は約30分だとわかっていたので、定期的なリスナーになってもらうには20分くらいがちょうどよいと判断したのだ(とはいえ、最近のポッドキャストの多くは20分より長いのだが)。

面白さに惹かれて始めたポッドキャストにステビングス氏が本格的に取り組むようになったのは、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の妹で自身もテック業界の人間であるArielle Zuckerberg(アリエル・ザッカーバーグ)氏(現在は投資会社コートのパートナー)が番組に出演してからだ。この回の同番組は10万ダウンロードを記録し、あらゆる兆候がThe Twenty Minute VCのさらなる成長の可能性を示していた。ステビングス氏は大学を辞め、ポッドキャストに全力投球するようになる。1学期に入って4週間経った頃だった。

「とにかくVCとこの仕事のすべてが好きだとわかったから。自分の望まない人生を歩むよりも、ポッドキャストに挑戦してみたかった。大きな決断だった。まだ18だったし、当時の私は会社勤めには向いていない人間だったと思う」と同氏は大学を辞めた理由について話してくれた。

母親の医療費に関しては、今でも番組の広告収入でまかなっているという。

「番組の最初と最後に広告が入る。大した額ではないけれど、母の医療費が賄えればそれで十分だ」。

番組もステビングス氏自身も、最悪の状況を逆に活かして成長していく。

ポッドキャストが出現してから何年にもなるが、人気に火が付いたのはここ数年のことだ。携帯電話とアプリがあれば聴ける手軽さが、情報に飢え、マルチタスクが当たり前となった現代社会に自然にマッチした。番組の種類は豊富で、リスナーのあらゆる好みに対応している。それに、聴きたいときにすぐに聴けるという点でラジオのトーク番組より優れている。こうした形態で決まった日時に配信される番組を持っている(ステビングス氏の番組は週2回の配信で、5年間休むことなく続いている)ということは過小評価されるべきではない。

考慮すべき重要な点は他にもある。テクノロジーが現代社会と経済において果たす役割は信じられない勢いで増加している。これは、すでにテック業界で働いている人たちだけでなく、(ステビングス氏のように)これから業界で成功してやるという野心と、あふれんばかりの情熱を持った人たちもポッドキャストの視聴者に含まれることを意味する。

そうした状況を利用して、ベンチャーキャピタルはお金をまさに爆発的に増殖させてきた。テック系の人材がスタートアップの原動力であると信じている者もいるが、そうした人材がスタートアップの原動力としての役割を果たしながら働けるようにするファンドの重要性を強力な証拠を挙げて主張する者もいる。いずれにしても、お金が引き寄せるものはいつでも大きい。

「VCの人気は高まる一方だ。VC20がこの規模にまでなったのもVCが多いに関連していると思う」と同氏は言う。

ステビングス氏自身も、VCにとっての優良な投資先に不可欠な存在だ。ステビングス氏はジャーナリストではない。メディアとテック業界が十分な慎重さと緊張感を持って互いの関係を維持していると思われる時代に、同氏は、個人的な見解を述べる記者として、情報とメッセージの伝達役として、ゲストとの間でフレンドリで友好的な立場を保った。結果として、番組のターゲットであるゲストやリスナーから暖かく受け入れられたようだ。

ステビングス氏は覚えていないかもしれないが、筆者は数年前、ロンドンで開催されたテック系のイベントで彼に初めて会った。彼は本当にうまく立ち回ってよい雰囲気を作っていた。笑顔で話し、すでに知っている出席者も多いため、とてもスムーズに自己紹介を続け、初めて会う人にも顔馴染みのような親密さで接していた。多くの中高年の出席者に混じって彼の若さが際立っていたことを覚えている。

このイベントのことを思い出しながらステビングス氏に尋ねてみた。年配の人たちは自分より若い人間に囲まれてお世辞を言われると気持ちが若返ったり、自身がより重要な人間だと感じることがあるが、ポッドキャストのホストという仕事で成功できたのはまさしくそのせいではと感じたことがあるかと。すると、「というより、年配の人たちと接する環境に身を置いた方が居心地がいいというほうが当たっている」という返事が返ってきた。

「私にとっては、すべてが関係構築の場だ。若くて知り合いも少ないとき、番組を録音する部屋ではいつも50代のように振る舞ってきた。番組を通して最高の友人もできた」と同氏は言う。

皮肉なことに、最近は、同年代の昔の知り合いから連絡がくることがあるという。同氏の強力なネットワークとつながって、自身で起業する予定のテック企業の追い風にしようという目論みだ。

20VCとステビングス氏の冒険の皮肉な側面はこれだけではない。そもそも自身のポッドキャストはすべて一から創り上げたもので、資金は広告収入で調達し、外部からの投資は一切受けていない。つまり、ステビングス氏のケースから得られる教訓は、いかに成長しスケールするかという点だけではない。VCをまったく利用せずにいかにそれを実現するかという点なのだ。

ただ、こうしたケースはまれなため、同氏の手法を一般的な視点で見たときに注目すべきは、出資するだけでなく、プラスアルファでいかに多くのことを提供できるかという点になるだろう。

「シリコンバレーでは誰でもお金は持っているが、新興企業が人間関係とブランドを構築していく成長過程を経験した人はほとんどいない。私なら、事業拡大と顧客獲得に必要なことに関してあらゆるコツと教訓を提供できる。話し方のコツやコンテンツの配布、ブランドの構築方法などについてだ」。

関連記事:ポッドキャストのすすめ:Avery TrufelmanによるArticles of Interestの場合

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:ポッドキャスト

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

Spotifyがビデオポッドキャストをグローバル展開、まずは限定コンテンツで

Spotify(スポティファイ)は米国7月21日、ビデオポッドキャストをグローバルで立ち上げたと発表した。無料ユーザー、有料購読者ともにいくつかのグループのクリエイターによるビデオコンテンツを視聴できる。しかし有料ユーザーだけが、デバイスで他のことをしながらビデオコンテンツをバックグラウンドで聴けるYouTubeと違い、Spotifyではユーザーはビデオバージョンとオーディオバージョンをシームレスに行き来できる、と説明している。他のアプリを使うなど複数のことを同時に行うとき、あるいはスマホがロック状態になったときも、オーディオコンテンツはバックグラウンドで流れ続ける。

ビデオポッドキャストはデスクトップとモバイルアプリの両方に対応する。オーディオの代わりではなく、追加の要素となる。つまり、必要に応じてオーディオをストリームしたり、オフラインリスニングのためにポッドキャストをダウンロードしたりできる。

クリエイターにとって、ビデオポッドキャストの立ち上げはオーディエンスを増やすことにつながる、とSpotifyは話す。ポッドキャストにはすでにビデオオプションがあるが、これまでSpotifyはビデオコンテンツをSpotifyプラットフォームでシェアする方法をクリエイターに提供していなかった。これは、ポッドキャストクリエイターが音声ポッドキャストをSpotifyや他のサービスで配信し、ビデオはYouTubeで公開しているということを意味する。もちろん、こうした状態は続くかもしれない。特に、すでにYouTubeでファンを確保している場合は続けない手はない。

しかしSpotifyで直接ビデオを公開できることは、さまざまな種のコンテンツを扱うプラットフォームで競うのではなく、ポッドキャストのリスナーとこれまで以上にダイレクトにつながれることになる。一方で、Spotifyにとってビデオは広告を売る新たな場所になる。しかし同社はビデオ広告の取り組みはまだ「初期段階」にあるとして、広告戦略についてのコメントは却下した。

ビデオポッドキャストは今日から提供されるが、ひと握りのポッドキャストに限定されている。 Book of Basketball 2.0Fantasy FootballersThe Misfits PodcastH3 PodcastThe Morning ToastHigher Learning with Van Lathan & Rachel LindsayThe Rooster Teeth Podcastなどだ。これらはすでにポッドキャストが提供されているマーケットでのみ利用できるとのことだ。

これらのポッドキャストはオリジナル、独占、サードパーティのポッドキャストが混ざっている。現状では、クリエイターのみが自身のビデオコンテンツをアップロードできる。ゆくゆくは機能を拡大する、とSpotifyは話している。

Spotifyのビデオへの進出はほぼ不可避だった。2020年2月にSpotifyはポッドキャストスポーツコンテンツを拡大するためにThe Ringerを買収した(未訳記事)。この買収にはYouTubeベースのビデオオペレーションも含まれており、メディア拡大への興味を示すものだった。

Spotifyはすでに著名なポッドキャストと提携している。これらは簡単にビデオにも移せるものであり、ここにはDCスーパーヒーローにフォーカスしたWarner Bros.(ワーナー・ブラザーズ)との提携も含まれている。また、ウィールストリートジャーナル紙が2020年6月に報じたが、SpotifyはKim Kardashian West(キム・カーダシアン・ウェスト)氏との独占取引も結んだ。他の独占取引としては、The Joe Rogan Experienceがある。そして7月20日、SpotifyはTikTokスターのAddison Rae(アディスン・レイ)氏とのポッドキャスト契約を結んだ(Variety記事)。

Spotifyはこうした著名ポッドキャスターのビデオ計画は発表しなかったが、もちろん人材へのアクセスはある。そしてビデオ提供は将来のより良いディール交渉につながるはずだ。

Spotifyのビデオポッドキャストのテストは2020年初めに確認されていた(The Verge記事)。しかしそれはYouTubeスターであるZane and Heath: UnfilteredのZane Hijazi(ゼイン・ヒジャジ)氏、Heath Hussar(ヒース・ハッサー)氏とのものだった。今日の発表の中には彼らの名前はなかった(Spotifyリリース)。

ビデオポッドキャストはサポートされている地域で本日から展開される。すぐには現れないかもしれないが、直に追加されるはずだ。

画像クレジット:stockcam / Getty Images

原文へ
(翻訳:Mizoguchi

検閲により中国のApple App Storeから2つのポッドキャストアプリが消える

毎年6月前になると、中国政府が天安門事件を記念する動きにつながる情報へのアクセスを取り締まるため、中国のコンテンツやメディアのプラットフォームは新な検閲を懸念する。

2020年、中国のユーザーは2つのポッドキャストアプリが使えなくなった。Pocket CastsとCastro Podcastsだ。この記事執筆時点で、Apple(アップル)の中国App Storeで検索してもどちらも出てこない。

2018年に米国の大衆ラジオ企業グループに買収されたPocket Casts(未訳記事)は、中国のインターネット監視当局である「国家インターネット情報弁公室(CAC)からの要求に基づき、アップルが中国App Storeから削除した」とツイート(未訳記事)した。

Pocket Castsが説明を求めると、アップルのアプリレビューチームはCACに直接連絡するよう案内した。TechCrunchが確認したメールにそう書かれていた。

「我々にはアプリ削除を阻止する手立てはなく、唯一の解決策はアプリの復活だが、詳細を求めてCACにコンタクトを取るつもりだ。問題視され、そして中国App Storeから完全に削除されるまでの間、ほとんど警告が与えられていないというのは問題だ」とPocket Castsの広報担当はTechCrunchに語った。「我々に削除させたかったものは特定のポッドキャストと、我々が投稿した一部のBlack Lives Matterコンテンツかもしれないと想像している」。

2018年にDribbble(未訳記事)のオーナーTinyに買収されたCastro Podcasts(9to5Mac記事)は、中国での削除について説明はないが、「抗議者のサポート」が削除につながったのかもしれない、とツイートで述べた。

アップルにコメントを求めようとしたが、すぐには連絡がつかなかった。

2つのポッドキャストアプリの削除は、2019年のこの時期にあったアップルによる中国語ポッドキャスト締め付け(未訳記事)を思い出させる。中国の独立した多くのポッドキャストクリエイターにとって、表現の自由の終焉の始まりだった。国内のポッドキャストプラットフォームが自己検閲するという政府のルールに則っている一方で、Apple Podcastのような中国外のプラットフォームには締め付けがある。

サービスを主催するというより、RSSフィードとして機能するアップルのアプリは、オーディオコンテンツに対しどちらかというとハンズオフアプローチを取っている(未訳記事)ために当局をイラつかせてきた。公開するためにコンテンツすべてをチェックしている中国における同様のサービスとは対照的な点だ。アップルはコンテンツを配信するだけだが、中国のポッドキャスト企業であるJustPodのブログ投稿にあるように、アップルが競合する中国企業は、同国の規制と何年もの商業開発の結果、コンテンツホストとコンテンツ配信、ユーザーリスニングを組み合わせている。

中国では、海外のポッドキャストのほとんどがアップルで利用できない。コンテンツを精査する政府認証のホスティングパートナーを欠いた中国番組をアップルが淘汰し始めたとき、多くの人が法を遵守する動きと見せかけている検閲をアップルが肯定したととらえた。

同社の株主たちは抗議し、同社が検閲に関する中国政府の要求にいかに対応しているか、より透明性を確保しなければならないという提案(Appleリリース)に40%が賛同した(Financial Time記事)。

Pocket CastsとCastro Podcastsは検閲がなく、2019年の粛清以来、多くの中国のポッドキャストクリエイターが利用してきた。Pocket Castsは、中国が世界で7番目の急成長中のマーケットになっていると述べた。しかしこれらの選択肢はもうない。

最近の動きは、アップルがマーケットに残るために中国政府の圧力に屈しつつあるのかもしれない、ということをうかがわせる。2020年2月に同社は大ヒットとなったシミュレーションゲームのPlagueを削除した。「CACが定めた中国では違法となるコンテンツ」が含まれていた、とされた。また2017年にアップルは、中国本土のユーザーがウェブサイトにアクセスするのに使う何百ものVPN(仮想プライベートネットワーク)を削除した際(未訳記事)にかなりの議論を巻き起こした。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Zencastrが人気が高まるビデオポッドキャストツールを限定版ベータとしてテスト中

6月8日の週の前半に、Zencastrは一部のユーザーに対して、新しいビデオポッドキャスティングツールのテスト計画を説明するメールを送った。簡単にリモート録画ができるサービスを求めるポッドキャスターが急増しているおり、このようなサービスは2019年あたりから人気が大きく高まっている。

Zencastrはこの新機能を幅広くテストするために、限定の無料ベータ版として公開している。注目の機能は双方向の会話を720pで録画できることで、自動のポストプロダクションで最大1080pでミックスされ、レンダリングされる。その後、そのビデオを直接YouTubeやVimeoなどのプラットフォームで公開できる。

また、このツールはZencastrの標準のオーディオ機能と似た動作をするようで、スマートなストリーミングのアップロードや、録画中でもコンテンツをクラウドにバックアップする機能を備えている。出演前にゲストが番組の準備をするための仮想の待機場所である「グリーンルーム」機能にも注目だ。

Zencastrはしばらく前からこの機能に取り組んでいたようだが、この時期に広く公開することにした理由は明らかだ。同社CEOのJosh Nielsen(ジョシュ・ニールセン)氏はTechCrunchに対し「今日の未来はポッドキャストにあり、明日の未来はビデオポッドキャストにある。そのため、我々は新しいビデオベータプラットフォームを公開できることをたいへん喜んでいる」と述べた。

新型コロナウイルス(COVID-19)による経済活動停止から波及した影響として、すでに急成長を見せていたポッドキャスト業界で、ビデオコンテンツが思いがけず勢いを増した。その要因のひとつは間違いなく、Zoomなどのビデオプラットフォームがこの時期に成功したことだ(比較的小さい要因ではあるが)。リモート会議のプラットフォームはリモート会議に特化して設計されたものだが、いざとなればビデオポッドキャストにも使える。そしてもちろん、ライブストリーミング配信のTwitchもある。

しかしZencastrは、オーディオポッドキャスティングにSkypeが長く使われていることに対抗してきたのと同じように、今度はビデオ番組向け機能を揃えた専用プラットフォームをポッドキャスターに提供しようとしている。現在はまだ初期段階で、実現までには多くの問題を解決する必要がありそうだ。興味のあるユーザーはZencastrのサイトでベータのウェイティングリストに申し込める。ベータは無料で提供が開始されるが、その後の価格については言及されていない。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

ポッドキャストのすすめ:Avery TrufelmanによるArticles of Interestの場合

ポッドキャスティングの最大の利点は、誰にでもできるという点だ。オーディエンスになるのと同じくらい簡単に制作者になることのできる珍しいメディアなのだ。そのため同じポッドキャスティングは2つとして存在しない。ポッドキャスターのためのソリューションはハードウェア、ソフトウェア共に豊富にあるため、NPR studiosからUSB Skype装置まで、セットアップは多種多様である(現在のパンデミックにおいて後者はある種デフォルトとなったのではないだろうか)。

我々が好きなポッドキャストのホストやプロデューサーに、彼らが制作時に使用する機器やソフトウェアなどのワークフローを尋ねてきた。これまでのリストは下記の通りだ。

「家に閉じこもる今、ポッドキャストを始めるためのヒント」
Anita Flores(アニータ・フローレス)氏による「I’mListening」(英文)
Justin Richmond(ジャスティン・リッチモンド)氏による「Broken Record」(英文)
Lauren Spohrer(ローレン・スパレール)氏による「Criminal/This Is Love」(英文)
Jeffrey Cranor(ジェフリー・クラナー)氏による「Welcome to Night Vale」(英文)
Jesse Thorn(ジェシー・トーン)氏による「Bullseye」(英文)
Ben Lindbergh(ベン・リンドバーグ)氏による「Effectively Wild」(英文)
著者自身によるポッドキャスト(英文)

大人気のラジオ番組「99% Invisible」のミニシリーズ「Articles of Interest」は、アパレル産業における幅広いトピックを取り上げている。第二シーズンに入った今、パンクファッションから子供服に至るまで、複雑で絡み合ったストーリーを織り成すクリエイター、Avery Trufelman(エイブリー・トラッフルマン)氏の能力が高く評価されている。

—–

原則として、私はガジェットマニアではない。多くの人はどのような機器に投資したら良いのか分からず(一種威圧的でさえある)、その時点であきらめてしまうことが多いのではないかと思う。私は長い間Zoom H1nを使用したラジオの作り方を独学で学んでいた。内蔵マイクを使用してインタビューをし、GarageBandとAudacityで編集するというプロセスだ。これですべてまかなえてしまうのだ。全オーディオ編集プログラムは同じ言語の方言にすぎず、コマンドキーとマイクの配置の技術を理解する前に、ストーリーの組み立て方を理解することがより重要である。技術要素を理解するのはそれほど難しくないが、私にとってはストーリーを作り出す方法については学ぶことがまだまだある。

私はかなりの時間をかけて機材のアップグレードをしていったが、今ではRode NTG-2ショットガンマイクとZoom H5を使用している。できる限りゲストの自宅やオフィスで実際に会って直接インタビューをするようにしている。そうする事でゲストがリラックスできる上、スタジオの予約に伴う時間的な制約もない。私はまた、実際の部屋が放つ生の音や質感がとても好きである。それに比べてスタジオはあまりにも無機質である。「現場」に出かける際には予備のZoom H2nをバックアップとして持参する。これらのレコーダーは非常に頑丈で信頼性が高く、これまでに何度も落としたが問題ない。私はバックアップの録音が必要な場合にこれを使用する他、1つの個別の音声ではなく雰囲気やシーンを目立たないように録音する場合にも愛用している。

ナレーションを録音するために通常私は、カリフォルニア州オークランドにある99% Invisibleのオフィスを訪れ、防音室にあるNeumann社製のコンデンスマイクを使用していた。しかし現在の隔離状況においては自分のRode/H5nキットをナレーション用に活用し、自宅のクローゼットの中で録音している。私は衣類についての番組を制作しているため、これは実に理にかなっている。7年前に99% Invisibleでインターンとして働き始めた際、これと同じような方法でナレーションを録音していたので、私はこれはこれで大いに楽しんでいる。当時もクローゼットの中でショットガンマイクを使用していたのだ。かなりパンクよね。

本当はこれで結構十分なのだが、贅沢なことにSharif Youssef(シャリ・ユーセフ)氏のような最高のエンジニアと働いてきてしまったがために私は甘やかされている。非常にミスマッチな録音が詰まった私のPro Toolsセッションを彼に渡すと、どういうわけか彼はそれを非常にきれいに聞こえるものに変身させてしまうのだ。彼がどんなことをしているのか全く分からないけれど、彼の仕事には本当に感謝している。

Articles of Interestの宣伝関連の準備をし始めた途端にCOVID-19問題が勃発したため、そのための写真撮影の予定が総崩れになってしまった。しかし、私の自宅のホールの向かい側に住む隣人が写真家であることを思い出した。我々はソーシャルディスタンスをとっての写真撮影をフィルムで行い、隣人の写真家Austin Hobart(オースティン・ホバート)氏は彼の風呂場で写真を現像したのである。結果とても美しい写真が出来上がったと思う。中でも私のお気に入りは、偽物ブランドについてのエピソードのために撮った写真で、紙バッグ一面にLouis Vuittonのロゴを私が描いたのを撮影したものだ。

関連記事:

Catefory:ハードウェア

Tag:ガジェット ポッドキャスト

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)