半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

Phone-Service-Centre via Getty Images

米国では「修理する権利」つまりユーザーが自ら選んだ方法で(主に製造メーカー非公認の修理業者に持ち込むことで)購入した製品を修理する権利に関する法案が次々と提出されています。具体的には製造メーカーに純正の修理部品や回路図を独立系の修理業者に提供することを義務づける内容です。

こと新型コロナ感染拡大によるリモートワークや自宅学習が広まったもと、タブレットやChromebookなどの需要が増えており、壊れたデバイスをメーカー修理に送ると時間や費用がかかることや、半導体不足が悪化の一途をたどり新品の入手が困難となっているため、いっそう機運が高まっている事情もあります。

しかしアップルやマイクロソフト、アマゾンやGoogleといったハイテク大手が、それらの法案成立を阻止するために数々の努力をしていることが報じられています。

米Bloombergによると、2021年だけで全米27の州にて「修理の権利」法案が検討されたものの、そのうちの半分以上はすでに否決されたり、却下されたとのことです。それはハイテク大手を代表するロビイストや業界団体が猛反発しており、特にアップルはこうした法律がデバイスの損傷や、修理しようとする消費者の自傷行為につながる可能性があると主張していると伝えられています。

例えばワシントン州の下院議員ミア・グレガーソン氏も「修理する権利」法案を提出したところ、MS、Google、アマゾン、そしてアップルを代表するロビイストに反対されたと述べています。なかでもアップルのロビイストは法案が取り下げられれば、地元の大学での修理プログラム(授業)を支持すると持ちかけたそうです。

ほかアップルはコロラド州やネバダ州でも法案に反対しており、独立系修理業者のひとりは学校で需要が高いiPad(その地域で1万3000台以上が流通し、うち10~15%が修理が必要のため)のスクリーンを調達するのに苦労しているとのこと。その人物はアップルが新しいデバイスを買ってもらうために修理プログラムに反対していると主張しています。

アップルは「修復する権利」法案と戦う一方で、日本を含む世界各地で独立系修理業者の認定プログラムを展開しています。これは非正規業者にも純正部品や工具、修理マニュアル、診断方法を提供し、アップル直営店や正規サービスプロバイダと同等の品質を受けられるようにすることが目的とされています。

このプログラムは無償で提供されていますが、やはり独立系業者はiPadのディスプレイなど一部の部品は入手できないため、アップルと正規サービスプロバイダが修理する上で唯一の選択肢となっているわけです。

ほかBloombergの記事はMSのブラッド・スミス社長がワシントン州の議員らを集めた会議を仕切って、「修理する権利」法案が自社の知的財産権を脅かすもので「存亡の危機」だと主張したこと。そうした会社そのものが関わるMSと違い、アップルは雇ったロビイストや業界団体に反対運動を任せているなど興味深い事実も伝えられています。

ある議員が発した「なぜ自分のXboxのファンが壊れたとき、ゲーム機をMSに返送し、修理のために何週間も待たなければならないのか」という疑問は、多くのゲーマーが頷けるところかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)カーボンニュートラル(用語)Google / グーグル(企業)修理する権利 / Right to Repair(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)リサイクル(用語)

バッテリーのリサイクルと製造を商業化するBattery Resourcersが約22億円調達

輸送市場の電動化が進むにつれ、メーカーは今後10年間に道路から湧き出てくる何万トンもの使用済みバッテリーの処分方法に頭を悩ませ始めている。

Battery Resourcers(バッテリー・リソーサーズ)は、一見簡単そうなソリューションを提唱している。リサイクルだ。しかしこの会社はそこで終わらない。リサイクルした材料をニッケルマンガンコバルト・カソード(陰極)にしてバッテリー製造メーカーに売り戻す「閉じたループ」を開発した。さらに、アノード(陽極)に使われているグラファイトを回収・精製してバッテリーグレードにするプロセスも開発している。

Battery Resourcersのビジネスモデルは新たなラウンドへの投資家の注目を集め、2000万ドル(約22億円)のシリーズBラウンドをOrbia Venturesのリードで完了し、At One Ventures、TDK Ventures、TRUMPF Venture、Doral Energy-Tech Venturtes、およびInMotion Venturesも出資した。Battery Resourcers CEOのMike O’Kronley(マイク・オクロンリー)氏は今回の企業評価額を明らかにしていない。

カソード、アノードと電解槽はバッテリー構造の主要構成品であり、オクロンリー氏はTechCrunchに、このリサイクル・製造プロセスが他のリサイクル業者との差別化要因だと語った。

「私たちがこの業界で革命を起こそうとしているいうとき、それは私たちがやっているのはカソード活物質を作ることだという意味であり、他の多くのリサイクル業者がやっているようなバッテリーの金属を回収するだけではありません」と彼はいう。「私たちはこれらの材料を回収し、まったく新しいカソード活物質を作るとともに、グラファイト活物質の回収と精製も行っています。2種類の活物質はバッテリー製造メーカーに売られて新しいバッテリーに使われます」。

「他のリサイクル業者は金属の回収だけに集中しています。それは銅であり、アルミニウムであり、ニッケルであり、コバルトです。彼らはこれらの金属を汎用品としてそれを必要としているどんな業界にでも売っています」と同氏は付け加えた。「だからバッテリーに戻ることも戻らないこともあります」。

このアプローチによって、バッテリー業界は発掘金属への依存を減らせる可能性がある。今後高まるだけだと予想されている依存性だ。2020年12月に発表された研究によると、EV普及の速さとバッテリー科学の進歩の程度によっては、コバルトの需要は17倍、ニッケルは28倍になるかもしれない。

これまで同社は、マサチューセッツ州ウースターのデモンストレーション規模の施設で運営してきたが、ミシガン州ノバイの施設へと拡大し、分析試験と材料特性解析を行っている。2か所合わせて同社は年間15トンのカソード材料を製造する能力を持つ。今回の資金調達は、商業規模施設の開発に役立てられ、Battery Resourcersは声明で、年間1万トンのバッテリーを処理できるように能力を強化すると言った。これはEV約2万台分に相当する。

この独自のリサイクルプロセスのもう1つの特徴は、旧型新型両方のEVのバッテリーを処理して、現在のバッテリーで使われている最新タイプのカソードを作れることだ。「つまり、Chevy Voltの10年前のバッテリーから取り出した金属を再構成して、現在使われているハイニッケル・カソード活物質を作ることができます」と広報担当者がTechCrunchに説明した。

Battery Resourcersはすでに自動車メーカーや家電メーカーから問い合わせを受けている、とオクロンリー氏は語ったが、それ以上の詳細は明かさなかった。しかし、Jaguar Land Roverのベンチャーキャピタル部門であるInMotion Venturesは声明で、今回のラウンドへの参加は「重要な意味のある投資」であると語った。

「Battery Resourcers独自のエンド・ツー・エンド・リサイクリング・プロセスは、Jaguar Land Roverの2039年までにネットゼロカーボン企業になる旅を手助けするものです」とInMotionのマネージングディレクターであるSebastian Peck(セバスチャン・ペック)氏は語った。

Battery Resourcersは2015年にマサチューセッツ州のウースター工科大学からスピンアウトした後に設立された。同社は以前、全米科学財団、およびGeneral Motors、Ford Motor Company、Fiat Chrysler Automobilesのジョイントベンチャーである米国先進バッテリー協会の支援を受けていた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Battery Resourcers資金調達バッテリーリサイクル電気自動車

画像クレジット:Battery Resourcers

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

使用済み電子製品を簡単に現金化できるBackflip

Mike Barile(マイク・バリレ)氏は、2年という時間と2万ドル(約220万円)ほどのカードローンで彼の最初のスタートアップBackflipを立ち上げた。

元経営コンサルタントの彼は、最初はUber、そしてAppAcademy(ここで共同創業者になるAdam Foosaner[アダム・フーザナー]氏と出会った)でコーディングアカデミーを受講した後、Google、そして失敗に終わった暗号資産(仮想通貨)のスタートアップとスタートアップの世界で何年も過ごしてきた。

暗号資産での経験で燃え尽きてしまったバリレ氏は、次の仕事を模索し、何とか捻出しようとしていたときにBackflipのアイデアを思いついた。オンラインで電子機器を販売することはまだいかがわしいもので、バリレ氏とフーザナー氏はもっと良い方法があるはずだと考えたのだ。

こうして2人はBackflipにたどり着いた。それは、顧客が使わなくなった電子製品を持ってくるとお金を払う。AndroidスマホでもXboxでもApple製品でもGame Boyでも何でもよい。

「次の方向を考えていた2019年の3月に、Chris(クリス)という子に会った。彼は、私の古いiPhoneを何台か買いたいと言った。彼はサンフランシスコ大学の学生で、副業として中古のデバイスを買い集め、それらを再生して自分で売ったり正規の再販業者に売ったりしていた。クリスの副業はかなり儲かり始めたので、彼は大学を中退した。『これだ!』と私は思った。彼はこれで大儲けをしているし、人の役に立つ良いこともしている」とバリレ氏は語る。

問題は安全性だった。「彼は現金を即金で払ってデバイスを集めていたし、そのために街中をドライブして回っていた。こういう再生再販業界にいる者は例外なく、銃を突きつけられて強盗に遭った経験が1度以上ある」。

Backflipはその問題を、バイヤーとセラーの仲介者になることで解決した。そして小額の仲介料を取った。

同社は最初の資金を2019年の終わりに調達したが、それまでのフーザナー氏とバリレ氏は、ローンと中古電子製品で生計を支えていた。

これまでBackflipは、ほぼ3000台のデバイスの売買を仲介した。デバイスをきれいにしたり、必要な修理をしたり、バイヤーを見つける仕事はすべてBackflipが行う。1台あたりの買い取り価格はほぼ150ドル(約1万6600円)で、同社のデータによると、これまでユーザーに払った総額は50万ドル(約5500万円)をやや超えている。

「最初のわずかなユーザーを獲得するために、ありとあらゆることをしました」とバリレ氏は語る。「Facebook MarketplaceとCraigslistに広告を出しました。2020年夏の終わりには、簡単なモバイルアプリで実験を始めました。そのころは、アダムと私の2人だけでした」という。

BackflipはUPSのストアと協力して、使用済みの電子製品をユーザーが直接持ち込み、店側が小包としてパッケージするセンターを提供する。長期的にはこれを、Amazon return(アマゾンの返品窓口)のようなものに育てたい、とバリレ氏はいう。もちろん、同社がユーザーにお金を払う。

現在、Backflipの在庫の約半分は中古のスマートフォンや、タブレットなどその他のモバイルデバイスだが、ありとあらゆる種類の電子製品を受け入れていることが世の中に広まれば、モバイルは在庫の3分の1ほどに減るだろう、とバリレ氏はいう。

フーザナー氏は声明で次のように述べている。「他の再販店と違い、Backflipはユーザーの時間と利便性を最優先する。来店の時間を予約する必要はないし、面倒な価格交渉もない。セラーのためにやるべきことはすべて私たちが行うし、迅速で公正な支払を確実に行う。ユーザーはデバイスをThe UPS Storeに持参するか、自分で箱に入れるだけで、他には何もしないでいい。後はすべて、Backflipがやります」。

実はバリレ氏にとって、再生業界は知らない世界ではない。母親が彼の子どものころから、彼のニュージャージーの牧歌的な故郷で「Stone Cottage Workshop」という商標で再生家具をeBayや地元の安売り店で転売していたのだ。

「私たちは、あなたのアパートからモノが消えていくためのAmazonになりたい」とバリレ氏はいう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Backflip中古リサイクル

画像クレジット:Getty Images/Lya_Cattelのライセンス.

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hiroshi Iwatani)

リサイクルのRedwood MaterialsがProterraと提携しEV用バッテリーの原材料を持続可能なかたちで供給

この数年間で、電気自動車(EV)用バッテリー市場の廃棄物削減を目的とした企業が数多く現れた。なかでもその代表格がRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)だ。2017年にTesla(テスラ)の共同創設者J.B.Straubel(J・B・ストラウベルストラウベル)氏によって北米最大のリチウムイオンバッテリーのリサイクル企業を目指して創設されて以来、急速な拡大を遂げてきた。このほど同社は、商用EVのメーカーProterra(プロテラ)と手を組み、米国内のバッテリーのサプライチェーンを強化することで協力し合うことになった。

Redwoodと他の自動車メーカーとの提携が公表されたのは、これが初めてだ。

契約に従いProterraは、すべてのバッテリーをネバダ州カーソンシティーにあるRedwoodのリサイクル施設に送ることになる。両社は2021年1月にこの提携に合意したが、協議はそのリサイクル工程を詳しく知りたいとProterraがRedwoodに話を持ちかけた2020年夏から続いていた。その中でProterraは、Redwoodのネバダのリサイクル施設に足を運び、Proterraのバッテリーパックの処理が可能かどうかを確かめた。

「実に順調にいきました」とProterraのCTOであるDustin Grace(ダスティン・グレース)氏はTechCrunchに話した。グレース氏は、Teslaのストラウベル氏のもとで9年間働いていた人物だ。「その作業を見て最高に興奮しました。そこから、供給の本契約に向けて作業を開始したのです」。

提携関係を結んでからProterraは、およそ11.8トンのリサイクル用バッテリー素材をネバダに送り込んでいるが、これは将来の供給ペースを示すものではない。全体としてRedwoodは、1日60トン、年間2万トンのバッテリーを受け入れることができる。

Proterraの車両を動かすバッテリーは、車両の寿命が尽きるまで使えるように設計されているのだが、同社では6年後のバッテリーを交換を約束するリースプログラムも提供している。その時点でバッテリーには80〜90パーセントの充電容量が残されており、まだまだ十分に使える状態にある。この容量を活用するためProterraは、ネバダに送る前に、バッテリーに第二の人生を送らせる計画を立てている。例えばProterraの充電設備のための固定型蓄電システムでの利用だ。

「まずは、Proterraの再製造エンジニアリングチームがバッテリーの評価を行います。第二の人生が送れる状態だと認められると、そのための施設で利用されます。評価が低ければ、リサイクルに回されます」とグレース氏は話す。

耐用寿命を迎えたとき初めて、バッテリーはRedwoodに送られ、廃棄物処理によって価値ある原材料に再生される。商用EVの市場は2025年までに、年間の全売上げの50パーセントに達するとの予測もあり、膨大な数のバッテリーの再処理が必要となる。

このニュースは、Redwoodが電動バイクのメーカーSpecialized(スペシャライズド)とバッテリーのリサイクル契約を交わしたことを発表してから、わずか数週間後に届いた。Redwoodはすでに、Nevada Tesla Gigafactory(ネバダ・テスラ・ギガファクトリー)でパナソニックが行っているバッテリー生産による廃棄物の処理に加え、Amazon(アマゾン)ともEV用バッテリーやその他の廃棄物の処理でも合意している。こうした企業間提携を通じて、Redwoodは、原材料をメーカーに戻す循環型のバッテリー・サプライチェーンを構築しようとしている。同社はまた、一般消費者向け製品の電子部品やバッテリーの処理も受け入れており、利用者はRedwoodのウェブサイトにある住所に郵送できることになっている。

関連記事:リチウムイオン電池のリサイクルに挑戦するRedwood Materialsが古いスマホなどの受け入れ開始

今回の提携は、両社とも大規模で長期的な事業を考えている証拠だ。Redwoodの広報担当者はTechCrunch宛の声明で「EVバッテリーの完全閉ループのリサイクリングのためのソリューション開発」に注力すると話していた。つまり、コバルト、リチウム、銅などの原材料の供給源を、採鉱から、本当の意味での持続可能な、長期的に利用できるリサイクルに移行させるということだ。またストラウベル氏はかつて、Redwoodを世界最大のバッテリー原料メーカーにするという野望を公言していたこもある。

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米国内で調達できる、バッテリーに使用可能なグレードの原材料が増えれば、Proterraは、やがてはバッテリーセル製造の分野に拡大する機会を得るだろう。

「まだ始まったばかりですが、私たちはこの市場の大きくなった未来の姿に目標を定めていきます。それこそが、今このパートナーシップが存在する最大の意義だからです」とグレース氏。「我々の観点では、Proterra向けのセルの国内生産は、今後数年にわたる私たちのロードマップにおいて、実に重要な部分を担います。北米でバッテリーに使えるグレードの原材料を生成するというアイデアは、米国内でバッテリーを生産するというコンセプトの拡大に直接寄与します。そのため、今これを始めることが、近い将来のセルの国内生産計画を間違いなく支えることになると思っています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Redwood Materialsバッテリーリサイクル電気自動車

画像クレジット:PRNewsFoto/Proterra

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:金井哲夫)

デュポンとVCはリチウム採掘が電動化が進む未来に向けての超重要な投資先だと考える

「採掘(マイニング)」は、テック業界では数年前から暗号資産と同義になっている。ビットコインは5万ドル(約5万3000円)の壁に穴を空け、GPUとASICは分散型暗号資産の恩恵に賭けて、世界中でハッシュ関数のシェア獲得合戦を繰り広げている。その興奮は、皮肉なことにベンチャー投資資金と起業家の思考をマイニング1.0(実際の鉱物資源の採取)に引き戻そうとする力に油を注いでいる。

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中でも注目を集めるターゲットはリチウムだ。スマートフォンや電気自動車のバッテリー、さらには現代生活の利便性や産業の重要な部分を担うほぼすべての電気製品に欠かせない素材だ。中国は、自国のリチウムの採掘業とバッテリーの製造業が現在のところ世界をリードしていると考えている。それは、長年にわたるリチウムの供給統制と、世界の需要に応えるための大量生産能力の拡大を推進してきたおおかげ。だが米中関係の緊張が高まり、また世界がますます基盤システムの電動化を進めるようになるにつれいぇ、企業は別のサプライヤーを競って求めるようになった。

DuPont(デュポン)が抽出技術の実用化を推し進めているのは、そのためでもある。

水のろ過と浄化サービスを提供するDuPont Water Slutions(デュポン・ウォーター・ソリューションズ)は、リチウム採掘技術の開発と再生可能エネルギー事業を行うVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リリソーセズ)と手を組み、リチウムの新しい直接抽出方式の試験を行うことにした。

現在、リチウムの採掘方法は、どう控えめにいっても環境に悪い。毒性の化学薬品を大量に使用し、水資源の汚染を拡大している。ドイツのアッパーライン渓谷で準備中のこの新しい合弁事業では、DuPontのリチウム直接抽出製品とろ過に関する専門知識を活かして、リチウムの採掘と精製を環境にやさしいかたちで行うものだと、同社は話している。

バルカンの業務執行取締役であるFrancis Wedin(フランシス・ウェディン)博士は、声明の中でこう述べている。「大きなスケールで製造されるDuPontの多様な製品群は、持続可能な方法でブラインからリチウムを抽出する方式への高い適応性を示しています」。

DuPontでは、この技術を鉱業全体に押し広げ、吸着剤、ナノろ過技術、逆浸透フィルター、イオン交換樹脂、限外ろ過、閉回路逆浸透などの同社のポートフォリオにある製品を広範な顧客グループに利用してもらおうと考えている。

DuPontがリチウム採掘事業に本格的に乗り出したことで、独自のリチウム抽出技術を開発したLilac Solutions(ライラック・ソリューションズ)などのスタートアップは、激しい競争に捲き込まれることになるだろう。Lilacは、カリフォルニアで最も環境汚染が深刻なソルトン湖でリチウムブラインの鉱床(プール)の開発を行うため、オーストラリアのControlled Thermal Resources(コントロールド・サーマル・リソーシズ)と提携した。

2020年はオークランドのスタートアップが、Breakthrough Energy Ventures(この人たちはどこにでも顔を出す)、MIT傘下の投資会社The Engine(ジ・エンジン)、設立当初からのUber(ウーバー)の投資家Chris Sacca(クリス・サッカ)氏の比較的新しい気候変動に特化した投資会社Lowercarbon Capital(ローワーカーボン・キャピタル)の主導による2000万ドル(約21億円)の投資を獲得したと発表している。

Lilacの他にも、ソフトウェアによって抽出企業の事業が効率化されるのにともない、ベンチャー投資金(暗号資産ではない)が、マイニングビジネスに流れ込んでいる。注目を集めた投資先には、ハイテク技術で鉱床を探し出すKoBold Minerals(コボンルド・ミネラルズ)がある(これもまたBreakthrough Energy Venturesのポートフォリオ企業)。この会社は、ビッグデータと機械学習を活用して有望な鉱床の選定を支援する。また、宇宙から衛星を使って鉱床探索を行うLunasonde(ルナゾンデ)もそうだ。

この他のリチウム問題のソリューションも、投資家たちの関心を集めている。バッテリー技術に投資するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)の創設者であり最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チャンバーレイン)氏は、もう1つのソリューションを「都市鉱山」に見いだしている。つまり、使用済みリチウムイオンバッテリーのリサイクルだ。鉛蓄電池は、何十年も前から部品のリサイクルが行われてきた。チャンバーレイン氏は、リチウムイオンのサプライチェーンも、今ある資源の再利用がより効率的に行われるよう進化することを期待している。

チャンバーレイン氏の考えが正しいことを実証しようとする企業も数多い。米国時間2月16日、特別買収目的会社(SPAC)を通じて株式公開を果たしたLi-Cycle(リサイクル)もその1つだ。同社の評価額は、この時点で16億7000万ドル(約1770億円)と見積もられている。

一方、非公開またはベンチャー投資家が支援するスタートアップも、別のリサイクルソリューションを開発している。マサチューセッツのウースター工科大学からスピンアウトしたBattery Resourcers(バッテリー・リソーサーズ)は、回収したスクラップから新しい陰極材料を作り出すことに特化している。シンガポールのGreen Li-ion(グリーン・リアイオン)もまた、リチウムイオンバッテリーのの陰極を製造するリサイクル工場を開設しよううとしている。2016年に元Tesla(テスラ)の幹部によって創設されたスウェーデンのバッテリースタートアップNorthvolt(ノースボルト)は、すでにリサイクルの実験工場を稼働させている。

もう1つ、J.B. Straubel(ジェイ・ビー・ストローブル)氏がネバダに創設したスタートアップRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)もある。これは、Amazon(アマゾン)のClimate Pledge Fund(気候誓約基金)を通じて資金援助を受けた最初の企業の1つだ。

「究極的には、石からリチウムを抽出しなければならないことはないのです。ブラインプールや都市鉱山からもリチウムは採れます」とチャンバーレイン氏は話す。これは「マイニング1.0バージョン2」といえる。だがまさにそれが、気候の未来を確実に安定させたいと私たちが願ったとき、この世界が投資すべき分野だ。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:DuPontリチウムバッテリーリサイクル

画像クレジット:SeppFriedhuber / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber, Danny Crichton、翻訳:金井哲夫)

リチウムイオン電池のリサイクルに挑戦するRedwood Materialsが古いスマホなどの受け入れ開始

Redwood Materialsは、Tesla(テスラ)の元CTO、JB Straubel(J・B・ストラウベル)氏が創業したリサイクルスタートアップだ。これまで特にメディアに報じられることもなかったが、これからは一般消費者にも門戸を開き、彼らのガラクタだらけの引き出しに眠っているすべての古い電子製品を集めようとしている。

ネバダ州カーソンシティに本社を置くRedwood Materialsは、これまで主にPanasonic(パナソニック)やAmazon(アマゾン)といった企業顧客の、バッテリーセルの生産や消費者電子製品からのスクラップをリサイクルしていた。

同社ウェブサイトには「recycle with us(私たちでリサイクルしましょう)」というタブがあり、「リチウムイオンバッテリーや電子製品のゴミはありますか?私たちは、あなたのスマートフォンやタブレット、電動工具など、リチウムイオンバッテリーを使用するすべてのデバイスをリサイクルします」と書かれている。そのウェブサイトには住所以外の情報はほとんどなく、消費者はそこに自分の電子ゴミを送る。ウェブサイトには、「contact us(お問い合わせ)」ボタンもある。

ストラウベル氏は2020年10月にTechCrunchに対して、そのうちRedwood Materialsのビジネスモデルは、消費者も含めるようになる。すでに、消費者からの問い合わせがとても多い、と語っていた。その時が来たようだ。

同社の広報担当者によると、Redwood Materialsは消費者が送ることができるものに厳しい制限を設けていない。ケーブルでも受け入れているというだ。同社はTechCrunchに対して、消費者事業をもっと形式化して、箱やラベルを定型化し処理を容易にするなど、今後は消費者の考えも取り入れて、事業の拡張方向を探りたいと語っている。

当面、Redwoodはとにかく門戸を大きく開き、成り行きを見守りたいという。

スマートフォンなどの消費者電子製品に使われているリチウムイオンバッテリーは大半がリサイクルされず、所有者の引き出しにしまわれて忘れ去られたり、ゴミとして埋め立て地へ行っている。

Redwood Materialsは、循環的なサプライチェーンを作ることでこれを変えようとしている。同社はオパナソニックのバッテリーセルの生産やスマホ、ラップトップコンピューター、電動工具など消費者電子製品からスクラップを集める。そこから同社は、通常は採鉱されているレアメタルを取り出し、パナソニックなどの顧客に供給している。

ストラウベル氏は最終的に、Redwood Materialsを電気自動車のバッテリーの寿命を延ばすソリューションの一部にしたいと考えている。CEOは、このニーズを満たすために、世界中の戦略的な地域拠点に施設を設置することを望んでいる。現在のところ、カーソンシティにあるレッドウッドの2つの施設でリサイクルおよび処理された製品のほとんどは、パナソニックや他の匿名の家電関連企業のためのものだ。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Redwood Materialsリサイクルバッテリー

画像クレジット:Redwood Materials

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

リサイクルロボット企業AMP Roboticsが最大73.2億円を調達か

Sequoia CapitalやSidewalk Infrastructure Partners(AMP Roboticsリリース)などの投資家たちが支援する、リサイクルロボット技術の開発企業AMP Robotics(AMPロボティクス)が、最大7000万ドル(約73億2000万円)規模の新しい資金調達を行おうとしているようだ。この情報は同社の計画を知る複数の情報源からもたらされた。

この新しい資金調達は、AMP Roboticsのパイロットプロジェクトや、同社の展開を飛躍的に拡大できる新しいパートナーシップが、継続的に成功していることを証明している。

11月初めに、同社はごみの仕分けロボットならびにリサイクルロボットに対する過去最大規模の新規注文を受けたことを発表した。

廃棄物処理会社Waste Connections(ウエイスト・コネクションズ)に対して、機械学習式リサイクルロボットシステムを24セット納品したこの注文は、同社のリサイクル技術の有効性のショーケースである。

これは、2020年初めにトロントのアパート複合施設で行われたパイロットプログラムに続けてやってきた取引だ。このパイロットプログラムでは、アパートの借り手たちが、自らのリサイクル活動の改善のために、AMP Roboticsによってモニターされているリサイクル活動を、ビルの貸し手と共有することができるようになっていた。

AMP Roboticの機械学習式ロボットが持つであろう可能性は否定できない。同社の技術は、従来のシステムでは決して行えなかったやり方で、そしてほとんどの廃棄物処理施設よりもはるかに低いコストで、連続的に廃棄物を分類することができる。

TechCrunchが以前にもレポートしたように、この技術は高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを区別することができる。またロボットは色、透明度、不透明度、そして蓋、容器、折り畳み構造、カップなどの形状を分類することもできる。さらにはパッケージ上のブランドを識別することさえできるのだ。

AMPのロボットはすでに北米、アジア、ヨーロッパで配備されていて、最近ではスペインやカリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ミネソタ州、ミシガン州、ニューヨーク、テキサス州、バージニア州、ウィスコンシン州などの米国全土でも導入されている。

今年の初めAMP Roboticsは、投資家のSidewalk Labsと協力し、トロントにある250ユニットを収容する1棟のアパートの入居者たちに、リサイクル習慣に関する詳細な情報を提供するパイロットプログラムを開始した。Sidewark Labsは、その廃棄物をCanada Fibers(カナダ・ファイバーズ)の材料回収施設に輸送している。この施設では、Canada Fibersの従業員とAMP Roboticsの両社がゴミを分類している。

廃棄物が分類され、整理され、記録されると、Sidewark は建物の住民に対して。彼らのリサイクル活動の結果がどのようなものであったかを報告する。

デンバーに拠点を置くAMP Roboticsが、その技術の早期商業化の資金を手にするために、Sequoia Capitalなどから1600万ドル(約16億7000万円)を調達したのは、ついこの間である2019年11月だ。

このときTechCrunchが報告したように、当時のリサイクル事業は(材料の品質に関わりなく)、一連の廃棄物を中国による買い上げに頼ることができていた。しかし約2年前、中国はもはや世界のゴミ捨て場として機能することをやめることを決定し(Yale大学リリース)、他の国から受け取ることができる原材料の種類に厳しい基準を定めた。

その結果、リサイクル施設での処理コストが高くなり、実際にゴミをより効率的に分別する必要が生じている。また当時は、失業率がゴミ仕分け施設での労働力を圧迫していた。この1年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが、リサイクル施設と廃棄物処理施設に「エッセンシャルワーカー」に分類されているにも関わらずさらなる圧力をかけている。

経済的現実を考慮した結果、リサイクル業者たちはAMPの技術に目を向けている。コンピュータビジョン、機械学習、ロボット自動化の組み合わせにより、施設での効率を向上させるのだ。

そして、ストリーム中の廃棄物を特定するAMPの技術力には、他の利点がある。最高経営責任者のMatanya Horowitz(マターニャ・ホロウィッツ)氏は2019年、TechCrunchに対して次のように語った。

「私たちの技術は、コーラ缶かペプシ缶か、スターバックスのカップなのかを識別することができます。それはリサイクル性を考慮した製品デザインを助けることができます。【略】私たちはそうしたデザインを行うひとたちからの関心が高い、レポート機能を構築しています」。

AMP Roboticsはこの記事へのコメントを拒否した。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:AMP Robotics資金調達リサイクル

画像クレジット:Alashi / Getty Images(画像修正済)

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(翻訳:sako)