福岡のヌーラボが1億円を調達しオランダに新拠点、コラボレーションツールの「Backlog」や「Cacoo」などクロスセルを狙う

Backlog」「Cacoo」「Typetalk」という3つのツールを通じて、チームのコラボレーションを支援するヌーラボ。同社は9月28日、East Venturesを引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達により、オランダのアムステルダムに新たな拠点を開設。開発体制や海外でのマーケティングを強化していくことに加え、各プロダクトの機能改善やプロダクト間の連携を強めながら、さらなる成長を目指していく。

3つのサービスでチームのコラボレーションを促進

プロジェクト管理ツールBacklog

「チームのコラボレーションを促進する」という軸の下、現在ヌーラボでは3つのサービスを提供。中でもオンライン上でワイヤーフレームや組織図を手軽に作成できるCacooは現在280万人のユーザーを抱える。海外ユーザー比率は86.2%にのぼり、100ヵ国以上で使われている点が特徴だ。

リリースから10年以上が経過したプロジェクト管理ツールBacklog(2005年ベータ版リリース)は現在5万社、78万人が利用。有償版を利用する企業数は5000社を超え、同社の売り上げの8割以上を占める主力サービスとなっている。

2014年にリリースしたビジネスチャットツールTypetalkはCacooやBacklogに比べるとまだユーザー数は少ないが、「福岡市トライアル優良商品」に認定され福岡市役所にも導入されている。Slackやチャットワークを筆頭に競合するツールも多いが、単独での機能面やマーケティングの強化に加えて、他の2サービスとの連携を強めてシェア拡大を目指していく。

さらなる成長を目指して、投資家から初の資金調達

ヌーラボは2004年に代表取締役の橋本正徳氏ら3人が福岡で創業したスタートアップだ。現在も本社は福岡だが、東京と京都に加えニューヨークとシンガポールにも拠点を保有し、他地域で事業を展開。Cacooを筆頭に海外ユーザーも多く抱えている。

2013年に受託をやめ、それ以降は自社サービスに集中。2014年リリースのTypetalkだけでなく、長年提供してきたCacoo(2009年ベータ版リリース)やBacklogも継続的に成長している。ヌーラボの昨年度の売上高は約6億円。今季はさらに140%の成長を見込んでいるという。

2014年リリースのTypetalk

実際のところ「自己資金だけでやれないこともない」と橋本氏は話すが、今後成長スピードをさらに加速させるため、今回初めて外部の投資家から資金調達を実施。オランダ・アムステルダムに拠点を新設することも決めた。

「国内、海外のようなロケーションを特に意識はしていない。それよりも自分たちの提供するツールを使ってくれる可能性のある人たちがいるから、世界にもでていこうという考え方。これまでグローバルで展開してきて、特に先進国では物価の差もあって資本力がすごく必要だということを実感した。今まで以上に海外展開にも力を入れていくことを踏まえて、外部からの資金調達を決めた」(橋本氏)

ヌーラボに出資したEast Venturesは、日本国内だけでなくアジアを中心に海外スタートアップにも投資をしている。グローバル展開の実績があるスタートアップ、VCというのが双方にとって好印象で、今回の話が実現したそうだ。

プロダクト間の連携を強化し、クロスセルを本格化

調達した資金はマーケティング及び開発体制の強化に用いる。現時点でもヌーラボにおける外国人(第一言語が日本語ではない)比率は25%ほど。ただ「作るチームがグローバライズされていないと、グローバルなプロダクトは作れない」(橋本氏)という考えの下、今後はさらにこの比率を高めるべく地域に問わず採用をしていくつもりだという。

プロダクトについては個々で機能改善をしつつ、近年は相互連携の強化にも力を入れている。9月にはそれまで対応できていなかったBacklog側の準備が整い、全サービスの契約や支払い、ユーザー管理などを1つのヌーラボアカウントでできるようになった。

これを機にヌーラボでは今後クロスセルを本格化する。たとえば海外のCacooしか使っていないユーザーにBacklogやTypetalkも合わせて使ってもらうなど、ユーザー数の多いCacooを起点にBacklogなどの有料ユーザーを獲得していくのが狙いだ。

Cacooは今のところ無料ユーザーが多く、「有料で使ってもらえるユーザーをいかに増やせるか」が目下の課題だそう。海外ユーザーの方が有料課金のハードルが高いというから、Cacooで顧客との接点を増やしつつ、BacklogやTypetalkで課金してもらうということもありえそうだ。

280万人が使うCacoo

ちなみになぜ新拠点にアムステルダムを選んだのだろうか? 橋本氏によると「(スタートアップ文化が盛り上がってきているという)時代の流れ的にアムステルダムかベルリンかで悩んだが、福岡からのアクセスや英語の通じやすさなどを検討してアムステルダムに決めた」のだという。(橋本氏がテクノミュージック好きであることも、気持ちの面では多少影響しているそうだ)。

ヌーラボにとってはアジア展開におけるシンガポール拠点と同じような位置付けで、アムステルダムをハブとしてヨーロッパでも事業を拡げていく計画だ。

Slack共同創業者のCal Henderson氏がTC Tokyoに登壇決定、失敗から2つの「ホームラン」

TechCrunch Japanの読者には今さらSlackについて説明は不要だろう。Slack共同創業者でCTOのCal Henderson氏が11月16日、17日に東京・渋谷ヒカリエで開催するTechCrunch Tokyo 2017に登壇することが決定したのでお知らせしたい。

Henderson氏はFlickrとSlackという2つのサクセスストーリーを持つ起業家だ。Slackのことは知っていても、彼と彼の共同創業者であるStewart Butterfield氏の2人がゲーム開発の副産物としてFlickrとSlackという、いずれもホームランと言えるスタートアップ企業を生み出したことは知らない人もいるかもしれない。彼らはゲーム開発スタートアップとしては失敗続き。しかし、その副産物として生み出したサイドプロジェクト2つがFlickrとSlackというホームランなのだから恐れ入る。

ソーシャルサービスの先駆けFlickrはゲーム開発の副産物だった

2004年にスタートした写真共有サービス「Flickr」は後に続くFacebookやInstagramなどソーシャル系サービスの先駆けとなった輝かしい成功事例だ。Flickrは2005年に米Yahoo!に推定2200万〜2500万ドルで買収され、2013年の時点では8700万人という当時としては巨大なサービスに成長していた。時代がWebからモバイルアプリへ変遷するに連れて世代交代していった感があるが、Web時代には間違いなくナンバーワンの写真共有サービスだった。

そんなFlickrは、実は「Neverending」というWebベースのオンラインゲームのために作られたツールだった。ただ、NeverendingよりもFlickrのほうにサービスとしての成長の目があるとして、2人はFlickrに注力することになったというのがFlickr誕生の経緯だ。

Henderson氏ははFlikrのチーフソフトウェアアーキテクトとして、ネット全体にとっても重要な仕事をしてる。

今では当たり前の存在だが、Flickrは「タグ」をネットユーザーに広めたサービスの1つだし、「フリーミアム」という言葉が2009年に生まれる前から無料ユーザーの一部がプレミアムサービスのために有料プランを使うサービスとして名を馳せもした。

Web上で複数サービスを緩やかにつなぐ「マッシュアップ」という言葉が流行したころ、Flickrは先進的なAPIを生み出した企業でもあった。例えば、Henderson氏はOAuth策定で牽引役となったという。OAuthは「認可」プロトコルと呼ばれるもので、特定サービスIDに紐づくデータを異なるサービス間でやり取りする技術標準。ソーシャルサービスの普及にともなって今また注目を集めている。

大規模トラフィックに対応するサービスを提供する「スケールアウト」という言葉が出てきたのもこの頃で、Henderson氏が『スケーラブルWebサイト』の著者だといえば懐かしく思い出すエンジニアも多いのではないだろうか。

Slackもゲーム開発のための社内ツールだった

スタートアップの成功確率は低い。ホームランなど狙って打てるものではない。それなのに、ゲーム開発の副産物としてHenderson氏とButterfield氏がFlickrに加えてもう1つ生み出したホームランが、チャットサービス「Slack」だ。Glitchというゲーム開発のための社内ツールとして、Slackは生まれたのだった。

Slackは2013年にローンチし、あっという間にシリコンバレーに広がった。FlickrやTwitterが周辺ツール・アプリを巻き込んで大きくなったのと同じで、SlackはAPIの使いやすさに定評があった。Slackは、単なるチャットアプリというよりも、ほかのサービスとの繋ぎ込みが容易なメッセージプラットフォームという面がある。だからエンジニア密度が高く、自分たちが利用するサービスを繋ぎ込んだり、自分たちでボットを開発するシリコンバレーで受け入れた。日本でもスタートアップ企業の多くが使っていることだろう。

実際、Henderson氏は2016年のインタビューの中でSlackは「ビジネスOS」なのだと言っている。かつてビジネスではマイクロソフトやSAPといったベンダーの提供するプラットフォームの上で、業務に関連するすべてのアプリを使っていた。ところが過去10年ほどの間にネット上でSaaSが台頭するにしたがって、業務で使うアプリがバラバラになっている。例えばマーケ分析ツールといったジャンルはかつて存在していなかったが、今や一大ジャンル。かつてアプリを統合するOSとしてWindowsが存在したように、そうした現代的サービスを繋ぎこんで統合するプラットフォーム、それがビジネスOSとしてのSlackなのだ、というのがHenderson氏の説明だ。

直近では9月にソフトバンクの孫氏が率いるビジョン・ファンドをリードVCとして50億ドル以上の評価額で2億5000万ドルという大型のシリーズG投資を決めたビッグニュースが飛び込んできた。Slackの調達総額は7億9000万ドル(約800億円)となっている。

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、9月末まで(今週土曜日まで!)は超早割価格1万5000円でチケットを販売しているので、ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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動きをトラッキングするハイテク衣服、東大発ベンチャーXenomaが2億円調達

スマートアパレル「e-skin」を展開する東大発ベンチャーのXenomaは9月27日、東京大学協創プラットフォーム開発Beyond Next Ventures国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2億円だ。

以前にもTechCrunch Japanで紹介したe-skinは、通常の服のような着心地でありながらユーザーの動きをトラッキングできる“IoT衣服”だ。

e-skinに使用されているのは、Xenomaが開発した「布状電子回路基板Printed Circuit Fabric(PCF)」と呼ばれる変形・伸縮可能な電子回路基盤。高い引張耐久性を持つだけでなく、洗濯にも耐える。

「e-skin Shirt」という名のTシャツをはおり、胸の部分にコントローラーとなる「e-skin Hub」を取り付けて使用する。Shirtには14個の伸縮センサーが搭載されていて、Hubには加速度計、ジャイロセンサー、6軸のモーションセンサーが備わっている。Bluetooth経由でスマホやPCに接続して、データを取り込む仕組みだ。

e-skinの特徴は、屋外を移動しながらでもユーザーの動きをトラッキングできる点だ。その特徴を生かし、Xenomaは屋外で行なわれるスポーツのゴルフでスイングの正しさを計測する「Golf-Swing」を開発した。

「将来的には人の生体情報ビッグデータから予防医療や安心・安全な社会の実現に貢献することを目指す」(Xenomaプレスリリースより)

Xenomaは、東京大学の染谷研究室およびJST ERATO染谷生体調和プロジェクトからのスピンオフとして誕生したスタートアップ。設立は2015年11月だ。また、2017年9月にはクラウドファンディングプラットフォームのKickstarterでキャンペーンをローンチ。目標額である5万ドルを超える支援を獲得した。

同社はこれまでに、今回も出資に参加したBeyond Next Venturesをリード投資家とする調達ラウンドで1億8500万円を調達している(2016年4月)。

Xenomaはプレスリリースのなかで、今回調達した資金を利用して「プロトタイピングから量産までの一貫した開発力を生かし、様々なセンサーを搭載したカスタマイズe-skinの法人向け受託開発に対応するための体制を強化」するとしている。

個人向けへの提供は2019年をめどに開始する予定だという。

“腰をすえない転職アプリ”、TinderライクなUIが特徴の「GLIT」が企業向けβ版をリリース

学生のあいだに行う就職活動は、腰をすえてじっくりと取り組む時間がある。でも、働きながら行う転職活動は、まとまった時間が取れないことも多い。

そんななか、日本のスタートアップであるCaratは、TinderライクなUIが特徴的な「腰をすえない転職アプリ」を開発した。同社が2017年6月にリリースした「GLIT」だ。

ユーザーは、アプリに表示される求人情報を左右にスワイプしていくことで、その求人に対する興味度のアリ・ナシを分ける。興味があると回答した求人はアプリ内に履歴として残り、アプリから直接求人に申し込みをすることもできる。20代中盤の忙しいビジネスマンをターゲットにしたアプリだ。

ただし、これまでのGLITが表示する求人情報は外部の求人サイトから取得したものだった。求人への申し込みも、アプリ内に搭載したブラウザから外部サイトを通じて申し込むという流れだ。

そこでCaratは9月27日、GLITの企業向けサービスをβ版としてリリースすることを発表した。Webアプリを企業に提供して、GLIT独自の求人情報を集めることが目的だ。また、ユーザーのスワイプ結果を企業に提供し、興味があると回答したユーザーへ企業側から直接アプローチすることも可能になった。

Carat代表取締役の松本直樹氏によれば、リリース時点ですでに20〜30社の利用が決まっているという。リリースから3ヶ月で集めた個人ユーザー数は約500人だ。

「単に興味のアリ・ナシを企業に通知するのではなく、興味の度合いも提供していく。たとえば、同じ『興味アリ』でも、それが興味アリと答えた100個の求人情報のうちの1つなのであれば、興味の度合いは比較的低いと考えられるだろう」と松本氏は話す。

また、Caratはアプリに機械学習のテクノロジーを利用している。スワイプ結果をデータとして蓄積し、ユーザーの年齢やデータから抽出したキーワードをもとにユーザーをグループ化する。各グループごとに、興味を持つであろう求人情報を表示するという具合だ。

Caratは個人ユーザーにアプリを無料で提供する一方で、企業向けサービスには課金をしてマネタイズを目指す。β版の期間はサービスを無料で提供するため、詳しい料金プランはまだ未定だが、正式リリース後は月額数万円程度のコストで利用できるようにするという。

「企業ユーザーとして想定しているのは、求人エージェントに高いコストを払うだけの体力がまだないスタートアップ企業や中小企業」だと松本氏は話す。

2016年12月創業のCaratはこれまでに、シード資金としてSkyland Venturesおよび個人投資家から1500万円を調達している。

Carat代表取締役の松本直樹氏

KDDIとクーガーがブロックチェーン技術Enterprise Ethereumを修理業務に適用する実証実験を開始

KDDIKDDI総合研究所クーガーは、ブロックチェーン技術Enterprise Ethereumを活用したスマートコントラクトの実証実験を開始する。KDDIは今回、同技術を推進する団体Enterprise Ethereum Alliance(EEA)に加入したことも合わせて発表した。

実証実験の対象分野は携帯電話の修理業務である。携帯ショップでの店頭修理申し込みから修理完了までの情報共有を対象とし、リアルタイム性、プライバシー情報の流通制御、オペレーション効率化の可能性を検証することを目的とする。また修理事業とは別の事業であるリユース(再利用)サービスとのシステム間連携の可能性も検証する。例えば、修理時点で修理価格と機種変更価格、中古市場価格を比較して、最適な選択肢を自動判別して顧客に提示できるかを検証する。

修理業務を対象とする背景について、クーガーの代表取締役 CEOの石井敦氏は「携帯端末の修理業務は、ショップ、配送、修理と複数の事業者が連携する必要があり、ブロックチェーン技術が有効となるユースケースといえる」と説明する。将来的には、多数のデバイス間の情報共有にブロックチェーン技術を適用するようなIoT分野も視野に入れているとのことだ。「IoT分野向けに、IOTAやBigchain DBのような技術も興味を持って調べている」(石井氏)。

スマートコントラクトはブロックチェーン上で動くプログラムで、改ざん困難である点、プログラムされた約束事を自動的に執行する点が特徴。ブロックチェーン技術を業務に適用する場合、スマートコントラクトとしてブロックチェーンの内部(オンチェーン)でプログラムを動かすか、ブロックチェーンの外部でプログラムを動かすかで設計上の選択肢が分かれる。今回の実証実験ではスマートコントラクトを用いたオンチェーンでの業務のモデル化を目指しているとのことだ。

実証実験に参加するクーガーは、本田技術研究所へのAI学習シミュレータ提供や、Amazonが主催するロボットコンテストAmazon Robotics Challenge(ARC)上位チームへの技術支援で知られる。最近は「AI×ブロックチェーン」への取り組みを進めている。またCEOの石井氏はブロックチェーン技術者コミュニティ「Blockchain EXE」の立ち上げに参加している。先端技術にフォーカスしたスタートアップ企業と大企業が組んで技術開発を行う形態は、R&Dのひとつのパターンとして定着しつつあるが、今回の実証実験もそのような取り組みの一例といえる。

また今回の実証実験では、スマートコントラクト開発を手がけるトライデントアーツケンタウロスワークスが開発に協力する。

「パブリック型の可能性を残す」Enterprise Ethereumを活用

ブロックチェーン技術の実証実験に関する発表は徐々に増えているが、金融分野での事例が目立っていた。今回の実証実験で注目したいポイントは大きく2点ある。1点目は、通信事業者であるKDDIの実際の業務をモデル化した実証実験であること。通信事業者の業務は、今回の対象業務である修理を始め、複数の事業者が連携する業務が多い。そこで通信事業者の業務では複数の業者間で情報共有するための「信頼できるデータ基盤」としてのブロックチェーン技術の使いどころが多いと見込まれている。

2点目の注目点は、まだ新しい技術であるEnterprise Ethereumを用いることだ。実証実験で使うEnterprise Ethereumの実装として JPMorgan ChaseがOSSとして公開した「Quorum」を使う。Enterprise Ethereumは、パブリックブロックチェーンEthereumの技術をベースにしながら、企業情報システム向けにデータのプライバシーコントロールや、コンソーシアム型ブロックチェーン向けの合意形成アルゴリズムを取り入れている。スマートコントラクトの開発では、Ethereumと同様にSolidity言語を用いることができる。

コンソーシアム型ブロックチェーン技術(および分散型台帳技術)として、Hyperledger Fabric、R3 Corda、mijin、Miyabiなど各種技術が登場している。Enterprise Ethereumの当面の位置づけは、特定の信頼できるノードだけが参加できるコンソーシアム型(パーミッション型)のEthereum派生技術ということになるが、将来的にはパブリックブロックチェーンとコンソーシアム型ブロックチェーンのハイブリッドを目指すとしている。この点は、従来のコンソーシアム型ブロックチェーン技術や分散型台帳技術と性格が異なるところだ。「パブリック型の可能性を残しているEnterprise Ethereumには期待している」とクーガーの石井氏は話している。

【残り5日】超早割チケットの販売は9月30日まで

今年も11月16日、17日に渋谷ヒカリエで、スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」を開催する。お得な超早割チケットの販売終了まで残り5日に迫ってきたのでお知らせしたい。

一般チケット4万円(税込、以下すべて同じ)のところ、9月末までの超早割チケットは限定価格1万5000円となっている。なお10月から販売する前売りチケットは3万円。まだまだ登壇者の発表は残っているが、今月中にチケットを買えば前売りの半額でイベントに参加できるという超お買い得な価格設定になっている。

今年も国内外のゲストスピーカーを迎えたキーノートやファイアサイドセッション、創業3年以内のスタートアップが今年公開したプロダクトをプレゼンで競い合う「スタートアップバトル」を開催予定だ。

今年のイベントでは、ビットコイン開発の中心地にいるBlockstreamのサムソン・モウ氏​Google アシスタントのプロダクトマネージャーを務めるブラッド・エイブラムス氏​、Fog Creek Softwareの共同ファウンダーで、現在TrelloのHead of Productを務めるMicheal Pryor氏ソラコム共同創業者の玉川憲氏らの登壇が決定している。

登壇者はTechCrunch JapanのサイトとTechCrunch Tokyo 2017のイベントページの両方で続々とアップデートしていくので、ぜひチェックしてほしい。

繰り返しになるが、超早割価格は9月30日までの販売となっているので、この機会に購入を検討いただければと思う。

副業やリモートワークなど“新しい働き方”特化の求人サイト「REWORK」、オンライン秘書のキャスターが公開

オンラインアシスタントサービス「CasterBiz(キャスタービズ)」などを展開するキャスターは9月25日、新しい働き方に特化した求人サイト「REWORK」のベータ版をリリースした。

REWORKでは新しい働き方として「リモートワーク」「時短勤務」「副業」「フリーランス」の4つに着目。いずれかの条件に当てはまる求人のみを掲載するのが特徴だ。

掲載費用は月額5万円(税別)で、掲載できる求人数は無制限。ベータ版期間は1つの求人に限り、1ヶ月間無料で掲載できる。キャスターではCasterBizなどを提供してきたノウハウを活かし、初めてリモートワークを導入する企業向けに業務設計や運用支援も行っていく。

新しい働き方を求める人からの応募が殺到

オンラインアシスタントサービスを運営するキャスターが求人サイトをリリースする背景には、新しい働き方を求める人からの応募が殺到している現状があるという。

「CasterBizには多い月だと月間で1000件ほどの応募がある。ただCasterBizの場合は勤務時間の指定(9時〜18時)があるなどハードルが高い。(派遣社員として在宅ワーク可能な)『在宅派遣』や(デザインエージェンシーの)『Remote Style』といった別サービスも運営しているが、それでも条件に合致しない人も多く、新しい選択肢が必要だと考えた」(キャスター代表取締役の中川祥太氏)

地方在住者からの応募が多く、割合は「地方が7割、都内が3割ほど」とのこと。東京水準の給料設定のため、在宅勤務・リモート勤務に変わるのに現職より給料があがる場合も珍しくない。そのため現在働いていて、新しい働き方への転職目的で応募してくる人も多い。

中川氏が語ったように、キャスターではCasterBiz以外にも複数のサービスを提供している。Remote Styleもクライアント企業や求職者のニーズに応える新たな手段として、5月にリリースしたものだ。これらのサービスの導入企業社数は合計で約350社ほどになるが、サービスの成長以上に求職者からの応募が増えているという。

キャスターが提供するサービス

企業の成功体験を作る

今回リリースしたREWORKは、勤務時間や勤務場所、雇用形態などがフレキシブルな求人が集まるサイトだ。最近「フルリモートOK」「副業可」「週3で時短OK」などの求人も少しずつ目にする機会が増えたが、これらの働き方に限定して掲載しているサイトは珍しい。一方でサイト自体は非常にシンプルな作りで、従来の求人サイトと根本は変わらないという。

「『リモートワークを当たり前にする』というミッションのもと、一貫してやり続けるだけ。既存のCasterBizなど現在提供しているサービスだけだと限定的になってしまうので、幅を広げる手段の1つがREWORK。(他サイトなど)外部の環境を気にして始めたというよりも、新しい働き方で仕事をしたいというニーズに応えるべく始めた」(中川氏)

すでに新しい働き方に挑戦したいという人が多数集まっているからこそ求職者のニーズを汲み取ったサービスが作れるし、掲載企業にってもも求める人材を確保できる可能性がある。

今後新しい働き方をさらに広めていくためには「企業側の成功体験」が必要だというのが中川氏の見解だ。

「企業が新しい働き方を採用することで、優秀な人材が確保できたり事業が成長したりといった経験をすることが必要。これからの時代では新しい働き方のほうが生産性が高い、そこに予算を投下しないとどうしようもない、と感じてもらえるようにしていきたい」(中川氏)

REWORKではリモートワークを初めて導入する企業に対して、人事制度の設計やオペレーションの構築といったキャスターが持つノウハウも提供しながら新しい働き方を広めていくという。

案件ごとに情報を集約し業務を効率化、ビジネスコラボレーションツールのOneteamが3.8億円を調達

ビジネス向けのコミュニケーションツール「Oneteam」を提供するOneteamは9月25日、大和企業投資、ニッセイ・キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、いわぎん事業創造キャピタル、Fringe81を引受先とした総額3.8億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

なおFringe81とは業務提携も結んでおり、セールスやマーケティング面、および商品開発での協業に加えて同社が持つ事業展開ノウハウの提供も受けるという。また提携の一環としてFringe81取締役COOの松島稔氏がOneteamの社外取締役に就任する。

Oneteamはこれまで2015年5月にサイバーエージェント・ベンチャーズから約6000万円、2016年1月にニッセイ・キャピタルから2億円を調達。今回のラウンドで累計の調達額は約6.4億円となる。

有料ユーザー数はここ1年ほどで約10倍、大手企業にも導入

Oneteamは課題や目的、案件ごとに「トピック」を立て、情報共有や議論を行っていくことが特徴のコミュニケーションツールだ。

仕事で使うコミュニケーションツールといえば、SlackやChatWorkを思い浮かべる人も多いかもしれない。ただそれらのツールでは最初に「グループ」という概念があり、作成したグループ内で様々な案件のやりとりをしていく。一方Oneteamではまず案件ごとにトピックを作成。1つ1つのトピックごとに、関係者をアサインするという仕組みだ。

そのため1つのグループに様々な情報が入り混じること、情報が流れてしまい蓄積できないことを防げる。プロジェクトごとに議事録やレポート、提案資料などの情報を集約し「ストック」化できるとともに、チャットを通じて「フロー」情報をやりとりすることも可能。議事録や日報などまとまった情報が書き込みやすいように、テンプレート機能も備える。

「従来はメッセンジャーツールを使っていたが、ログが残らないことや複数の案件に関するやりとりが混在してしまうことを課題に感じ、Oneteamを導入する企業が多い。Excelやメールなど複数のツールに散らばっていた会議の情報をOneteamに集約することで、業務の生産性向上に活かしていただいている事例も増えてきた」(Oneteam取締役の山田正浩氏)

山田氏によると現在は「1つのプロジェクトに多くの人が関わる、広告やメディア業界・部署での利用が増えている」という。2016年6月にサービス有料化を始めた時から、有料ユーザー数は約10倍に拡大。パーソルキャリアのような大手企業から中小企業まで幅広く導入が進んでいて、その成長を加速するために今回資金調達を実施した。

Oneteamが目指しているのは単なる情報共有ツールではなく、チームメンバーが一緒に働くワークプレイス。「業務の生産性向上にしっかりとつながるサービスを作っていく」(山田氏)ことに向けて、今後は会社や部署をこえてコラボレーションできる機能やタスク管理機能やファイルの一覧表示機能などをリリースし、利便性の向上をはかる。

ソラコムの玉川憲CEOもTechCrunch Tokyoに登壇、大型M&Aの背景と今後を聞く

ソラコム共同創業者の玉川憲氏(写真はTechCrunch Tokyo 2015登壇時のもの)

 

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、IoT通信プラットフォームを提供するソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏に登壇頂けることとなったのでお知らせしたい。

ソラコムについて本誌TechCrunch Japanでは、2015年3月のステルス状態での大型のシード資金調達からはじまり、大きな話題となった2015年9月のサービスローンチ、その後の関連プロダクトローンチや24億円のシリーズB調達を経ての世界展開などお伝えしてきた。そして2017年8月にはKDDIによる大型M&Aのニュースで業界に衝撃が走り、買収発表直後にはインタビューも行った。

わずか2年と少しのスピードエグジット。もっとも立ち上げ当初から「日本発のグローバルプラットフォームを作りたい」と語っていた玉川氏にしてみれば、現状でのベストな選択としてKDDI傘下に加わるということだからエグジットといっても、これからが本番というところかもしれない。

一方、テクノロジーをコアとするスタートアップ企業で、これほど短期に3桁億円以上(買収総額は非公開だが推定200億円と言われている)の企業価値を作り出してM&Aというエグジットを決めた事例は日本ではめずらしい。約40人の社員は、ほぼ全員がストックオプションを手にしたといい、日本のスタートアップ業界にとっては1つの模範となるような成功事例と言えるだろう。Amazonクラウドのエバンジェリストとして活躍した後の、業界のベテランによる「大人の起業」でもある。

そんな玉川氏には、これまでの歩みや、今後のKDDIグループの一員としてのサービスの展開について対談形式で話をうかがおうと思っている。ソラコムがクラウドで提供する「Soracom」はIoTのためのプラットフォームだ。ちょうどAmazonクラウドによって多様な新世代サービスがたくさん生まれてきたように多くのIoTサービスが花開くのではないかと思う。日本からIoTサービスを作り出したいと思っているエンジニアの皆さんにも、玉川氏のビジョンと今後のIoT関連サービスについて聞きにきてもらえればと思う。

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、9月末まで(来週いっぱい!)は超早割価格1万5000円でチケットを販売しているので、ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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荷主と個人ドライバーをつなぐマッチングプラットフォーム、「PickGo」が3.4億円調達

荷物を運んで欲しい荷主と、荷物を運びたい個人ドライバーをつなげる「PickGo」を運営するCBcloudは9月21日、シーアールイーKLab Venture Partners東熱パネコンのほか、名称非公開のコマース事業会社とベンチャーキャピタル1社を引受先とする第三者割当増資を9月1日に実施したことを発表した。調達総額は3億4000万円だ。

運送業界では、県をまたぐ長距離輸送に対して、荷物が倉庫から顧客へと受け渡される最後の区間の配送を「ラストワンマイル物流」と呼ぶことがある。

PickGoは、その短距離の輸送において、荷主である企業が個人ドライバーのちからを利用できるマッチングプラットフォームだ。

プラットフォームへの登録は荷主とドライバーともに無料。配送料金は距離料金と時間制料金の2つのメニューを用意しており、依頼登録画面で案件ごとに料金を算出する方式だ。CBcloudが受け取る手数料は、配送料金の10%だ。

ドライバーとして登録できるのは貨物軽自動車運送事業の届け出をしている人(いわゆる黒ナンバー保持者)のみとなっている。企業と契約してフリーのドライバーとして仕事をする人たちがPickGoのターゲットのようだ。現在の登録ドライバー数は2000人となっている。

具体的な配送件数は非公開だが、月に数千件程度だという。サービスを開始した2016年6月に比べ、配送件数は15倍に拡大したという。

2017年8月からはCtoCサービスも開始

CBcloudは、ここまでで説明した企業向けの「PickGo for business」のほかに、個人向けの「PickGo for personal」の提供も2017年8月より開始している。

personalでは、ユーザーが配送依頼をすると、PickGo登録ドライバーにその依頼が一斉配信される。それに反応したドライバーが提示する金額や日程などをもとに、条件の合うドライバーを選ぶという流れだ。

サービスのユースケースは個人の引っ越しなどを想定していて、配送料金は最低5000円から。ドライバーから提示される金額をもとに交渉することもできる。こちらも、登録ドライバーは黒ナンバー保持者のみだ。

ラウンドに参加した事業会社とのシナジーも

今回のラウンドにも参加したシーアールイーは、物流不動産を中心に約1400物件、約120万坪の管理運営を行っている。

本ラウンドを期に、CBcloudとシーアールイーは資本業務提携を締結。シーアールイーは今後、PickGoのサービス拡大にともなって必要になる配送拠点スペースを提供していくという。

また、同じく出資に参加した東熱パネコンはオーダーメイド型ワイン熟成セラー「Terroir(テロワール)」の製造・販売を行う企業。CBcloudは東パネコンは共同ビジネスとして、店舗向けワイン配送サービスの「動くワインセラー」を2017年6月から開始している。

これは、レストランに来店したユーザーが専用タブレットを使ってワインを注文すると、最短30分でそのワインが店舗に届くというサービス。

「好みのワインが店に置いてないが、どうしても飲みたい」というコアなワイン愛好家には嬉しいサービスかもしれない。30分のあいだに食事が済んでいなければ、という条件付きだけれど。

“音”を元にスマホで3分で設備機器の異常を診断、スカイディスクの「スマート聴診棒」ベータ版

センサデバイスの開発からAIを活用したデータ分析まで、IoTサービスをワンストップで提供するスカイディスク。同社は9月21日、スマホのマイク機能を使って取得した「音」により、設備機器の異常診断ができる「スマート聴診棒」のベータ版を発表した。

スマート聴診棒はスマホやAIを活用して、工場などで必須となる機器の診断の仕組みを変えるサービスだ。従来の方法では「聴診棒」という棒状の器具を用いて、それぞれの機器から発せられる振動音をもとに異常診断を行っていた。

機器の定期的な診断は法律や社内規定により義務付けられている一方で、高度な技術や経験が必要になるため熟練の技術者を選任する必要がある。技術者の高齢化が進み、培われた経験やノウハウを継承することも課題となっていた。

スマート聴診棒では専用のスマホアプリを使い、異常診断を行いたい機器の振動音のサンプルデータを20分間かけて取得する。そのデータをスカイディスク側でAIを用いて分析、異常を判定するための学習モデルを作成。完成したモデルをアプリにインストールしておけば、現場の担当者が対象の機器に3秒間スマホをかざすだけで異常診断ができるようになる。

学習モデルをインストールしておけば、オフラインでも診断が可能。異常があった場合は箇所の特定など詳細の判定もしてくれる。

福岡に拠点を置くスカイディスクは、2013年の創業時から着脱式センサとデータ分析プラットフォームを提供している。2016年にはニッセイ・キャピタル、アーキタイプベンチャーズ、ドーガンから1億円を調達。2017年4月にはセンサーで取得したデータをもとに機器の故障を予測する「SkyAI」をリリースした。

以前から電力会社向けに音声データを活用したAIによる故障予測サービスを提供。そこから得られたノウハウを活用してスマート聴診棒が開発された。今後ベータ版の実証実験を行う予定で、現在は体験企業を募集している。

 

ECプラットフォームのBASEがライブコマースに参入——店舗登録者ならアプリで即配信可能

日本でも続々とサービスが始まっているライブコマース。Candeeが6月にライブコマースアプリ「Live Shop!」の提供を開始、7月にはメルカリがライブフリマ機能「メルカリチャンネル」をリリースしたが、今度はネットショップ作成サービスとショッピングアプリを提供するBASEが、ライブコマースへの参入を発表した。

BASEが9月20日から提供を開始する「BASEライブ」は、ショップ作成サービスに登録する店舗が商品や店をライブ配信で紹介できる機能だ。店舗をフォローする顧客との間で、リアルタイムで双方向のコミュニケーションを取ることもできる。

BASEライブの利用料は無料。1配信につき15分、毎日19時から約3時間の間を配信時間としている(配信時間は順次拡大予定とのこと)。視聴する側は、ショッピングアプリ「BASE」の最新版で、フォローしている店舗のライブ配信を見ることができる。ライブ配信を見ながら商品を買うことや、ハートやコメントによるリアクションも可能だ。

配信する店舗側は、配信専用アプリ「BASEライブ 配信アプリ」(現在はiOS版のみ)をダウンロードすれば、ライブ配信が可能になる。BASEでは、タレントやインフルエンサーが、自らの公式ショップで配信を行うことも予定しているというが、店舗自身でアプリを使ってライブ配信する手段が最初から用意されている。Live Shop!やメルカリチャンネルでは今のところ、一部のユーザーやインフルエンサーのみに配信機能が提供されているのと対照的だ。

BASEでは、ネットショップ作成サービスをこれまでに40万店舗が利用。またショッピングアプリの方は、300万ユーザーが利用するという。アプリでは、これまでにもブログ機能やプッシュ機能、店舗のフォロー機能など、集客や販促をサポートする情報発信の機能が提供されてきたが、今回のBASEライブの提供により、商品紹介ページの説明文や画像だけでは伝えきれなかった店舗・商品の魅力を、ライブ配信ならではの距離感でファンに情報配信できる、としている。

スマホ専用ブラウザ「Smooz」が広告ブロックなどiOS 11対応アップデート、8500万円の資金調達も実施

モバイルブラウザ「Smooz」を提供するアスツールは9月20日、ファンコミュニケーションズ、およびユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏らを引受先とする、8500万円の第三者割当増資の実施を発表した。伊藤氏からの出資は2016年8月のシードラウンドでの資金調達に続き、2度目となる。

またアスツールは、iOS 11アップデートに対応したSmoozのバージョンアップも同日発表。App Storeでの配信を開始している。新バージョンでは「広告ブロック」、「かざして検索」などの新機能が追加された。

Smoozはスマホ専用のブラウザアプリ。スマホでの片手操作を念頭に、新規タブをバックグラウンドで読み込み、スワイプで切り替えやタブを閉じることができる独特のタブ操作や、読んでいるページを解析してユーザーが次に検索したいであろう検索語を予測表示する機能、SNSでの反応をワンタップで呼び出せる機能などが備わっている。2016年末にはAppleが選ぶApp Storeの2016年ベストアプリの1つに選ばれた。

新機能の広告ブロックは、Smoozユーザーへのアンケートで最も要望が多かった機能とのこと。iOS 11のコンテンツブロックAPIを利用しており、iOS 11上で動作する。設定をONにすることで、ウェブページ上の広告が表示されなくなる。機能の利用には、月額380円のプレミアムサービスへの加入が必要だが、初月は無料で利用することが可能だ。

また、調べたいものにスマホのカメラをかざすだけで、最適な検索結果を提供する新機能が、かざして検索だ。これまでのSmoozのバージョンでも、QRコードを開く、文字を認識して検索する、撮影した画像に似た画像を検索する、といった機能はあったのだが、今回のバージョンでは、iOS 11のVision Frameworkと呼ばれる機械学習ライブラリを使って被写体を自動的に判別する「自動モード」が搭載された。こちらの機能も利用するにはプレミアムサービスへの加入が必要だが、月10回までは無料で利用できる。

アスツールは、2016年2月に元楽天社員の加藤雄一氏が設立したスタートアップ。2016年9月のSmoozローンチ以来、これまで日本のApp Storeのみでアプリを配信してきたが、Android版の提供やグローバルでの展開も視野に入れているという。今回の調達資金はこれらの展開を見据え、開発チームおよびカスタマーサポートチームの強化に活用していく、としている。

MFが5年ぶりに個人向けアプリ――自動貯金アプリ「しらたま」が本日リリース

家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードは9月19日、自動貯金アプリ「しらたま」のリリースを発表し、同日記者会見を開催した。同社がBtoC向けサービスを発表するのは、家計簿アプリの「マネーフォワード」以来これが5年ぶりのことだ。

毎日コツコツ積み立て、おつりで貯金

マネーフォワードが本日発表した「しらたま」は、“貯金したいけれど、なかなかできない”人たちをターゲットにした自動貯金アプリだ。しらたまの由来は、「しらずに、たまる」。その名前の通り、最小限の負担で貯金の習慣づけができる。こちらから無料でダウンロード可能だ。

しらたまは住信SBIネット銀行の更新系APIを利用している。同行で銀行口座を開設済みのユーザーがしらたまの利用登録をすることで、アプリ専用の貯蓄口座ができあがる。アプリで貯めたお金はその専用口座に溜まっていくという仕組みだ。

貯金の方法は2つある。毎日の積立額を設定して自動で銀行口座から貯金できる「つみたて貯金」と、クレジットカードを利用した買い物の“おつり”を利用する「おつり貯金だ」。これは、事前にユーザーが決めた設定額が500円で、クレジットカードを使って460円の買い物をした場合、差し引きした40円を自動で貯金できるというもの。

旅行や欲しいものなど、貯金の目的や目標金額を設定したり、貯金のペースを自由に選択することができるのも特徴の1つだ。目標到達時には、アプリの貯金箱をタップで“割る”ことでメイン口座に資金を戻すことができる。

ただし、現時点で同アプリと連携できる金融機関は住信SBIネット銀行のみとなっている。同行の銀行口座を保有していなければ、しらたまを利用することはできない。プロジェクトリーダーの伊藤徹郎氏は、「(改正銀行法が施行する)来年春ごろをめどに、順次連携先を拡大していきたい」と話している。

“貯金”という個人ユーザーの課題解決

しらたまのプロジェクトが始動したのは2017年5月のこと。

ちょうど同じ頃に改正銀行法が成立し、同年3月にBtoB領域での更新系API連携を発表したマネーフォワードが、BtoC領域でも更新系APIを利用したアプリを開発することを目的として始まったプロジェクトだ。

マネーフォワード代表取締役の辻庸介氏は、「これまでは“見える化”に取り組んできたマネーフォワードだが、これからは、そこで見つかった課題を解決するサービスをつくりたかった」と話す。

その言葉通り、マネーフォワードは2017年6月に中小ビジネスの課題である与信・請求業務を自動化するMF KESSAIを発表した。その一方、しらたまは個人が抱える課題である貯金の問題を解決するアプリとして生まれたというわけだ。

しらたまと同様の自動貯金アプリとしては、以前TechCrunch Japanでも紹介したfinbeeなどが既に存在している。辻氏は、そのようなアプリとの差別化要因について、「家計簿アプリとの連携により、ユーザーの収支状況から適切な貯蓄金額などを提案できることなどが挙げられる」と話した。

また、辻氏によれば、マネフォワードは貯蓄した資金を利用した自動投資機能の追加も今後の展開として考えているという。

今年も11月開催!「CTO・オブ・ザ・イヤー2017」―TechCrunch Tokyo CTO Night参加者募集

毎年11月に開催しているテックイベント「TechCrunch Tokyo」ではイベント内イベントとして、2013年から「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催してきた。ネットやテクノロジーを最大限に利用して急激な成長を目指すスタートアップという企てにおいて、システムや組織の急成長にともなう技術課題に向き合うCTO(Chief Technology Officer)にフォーカスを当てたピッチコンテストだ。

CTOという職種は担っている役割の重要さの割に十分に光があたってこなかったと思う。そこで2014年から「CTO・オブ・ザ・イヤー」という表彰イベントを続けていて、今年は4年目になる。自薦・他薦によって選ばれたCTOたち約10人にステージに登壇していただいて、ピッチ・コンテスト形式で日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場だ。同業者だからこそ分かる苦労話もあるだろうし、同じプロとして惜しみない賞賛を送りたくなるような仕事もあるだろう。

これまで2014年から2016年までの優勝者と記事は以下のとおり。

2014年に初代CTO・オブ・ザ・イヤーに輝いたユーザーベースの竹内秀行CTOは、予算ゼロで新サービス開発に取り掛かった話をはじめ、サービスの技術的改善、エンジニアのスキル向上、健全な組織を作るための施策も検討・実行しなければならないというCTOが向き合う課題について「多様性」をキーワードにプレゼンを行った。

2014年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたユーザーベースの竹内秀行CTO

 

2015年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコム安川健太CTOは、チームもアーキテクチャも「疎結合で非同期」というテーマで発表を行った。チームは1日1回30分の全体進行のシェアをするが、それ以外はSlackで連携しつつ非同期で動くチームとなっている、という。これがKDDIによる大型買収に繋がるスピード感の秘密だったのかもしれない。

2015年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムの安川健太CTO

 

2016年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたReproの橋立友宏CTOは、オープンソースソフトウェアのコミュニティをはじめとするエコシステムの力を借りることの重要性を語った。Rubyコミュニティーで広く知られた橋立CTOは、限られたリソースの中でスピード感を持ってサービスを形にしていくには「先達の知識」を借り、一方コミュニティーに還元できることを還元していくことが必要だと説いた。

2016年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたReproの橋立知宏CTO

 

なんと、2014年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれた竹内秀行CTOのユーザーベースは2016年10月に上場、同じく2015年に選ばれた安川健太CTOのソラコムは2017年8月にKDDIによる大型買収と両方ともエグジットを果たしている(こう書くと2016年にCTO・オブ・ザ・イヤーに選ばれたReproの橋立知宏CTOにはプレッシャーがかかりそうだ。2018年を楽しみにまとう!)。

さて、そんな未来のテックビジネスの立役者ともいえる「CTO・オブ・ザ・イヤー」を決めるCTO Nightの概要は以下の通り。CTOもしくは、それに準じるポジションの人であれば参加はいつも通り無料。ぜひ11月16日木曜の夕方にアツいセッションを見に渋谷・ヒカリエに立ち寄ってほしい。

CTO Night参加登録はこちらから

TechCrunch Tokyo CTO Night 2017
【イベント名】「TechCrunch Tokyo CTO・オブ・ザ・イヤー 2017 powered by AWS」
【日時】TechCrunch Tokyo 2017初日の11月16日木曜日の夕方(19時20分〜21時)
【会場】東京・渋谷ヒカリエ9階Bホール
コンテスト概要
「CTO・オブ・ザ・イヤー2017」のピッチコンテストを実施
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / Oath Japan
【チケット】無料(参加登録は必須)
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

“わが社のストーリー”を発信するプラットフォーム「PR​​ Table」が1.5億円を調達

企業がプレスリリースを打つサイトといえば、PR TIMESValurPress!DreamNewsなどがある。これらのサービスは伝統的なメディアに対して、伝統的な「プレスリリース」という完成された形式で自社ニュースなど発表文を効率良く届けるものだ。一方、2015年12月にスタートした「PR Table」は企業に埋もれている「ストーリー」を伝えることで、企業ブランディングや採用広報、社内広報、IRなどを支援するプラットフォームだ。

定食屋のスタートアップ「未来食堂」が、飲食業界の定説を覆す!?」というバズった記事を読んだ記憶があるだろうか? 2015年10月の記事だ。これがPR Tableのいうストーリーの1つで、この記事をきっかけにしてPR Tableはコンテンツと売上を伸ばしてきた。

そのPR Tableが今日、シリーズAラウンドとして1億5000万円の資金調達を終えたことを発表した。リードインベスターはDGインキュベーション。ほかに大和企業投資、みずほキャピタル、静岡キャピタル、ABCドリームベンチャーズが本ラウンドにVCとして参加している。PR Tableは2014年12月創業で、2016年10月には大和企業投資、みずほキャピタル、および個人投資家数名からシード資金として3000万円を調達していて、累計1億8000万円の資金調達となる。

共同ファウンダーで代表取締役の大堀航氏はTechCrunch Japanの取材に対して、「エモーショナルなものを発信する文化がどれだけ作れるか」がPR Table成功のカギの1つだと話す。プレスリリースというのは非常に歴史が古いものだが、ネット上のプレスリリース配信が始まったのは2009年ごろのこと。PR TIMESが上場したのは2016年3月のことで「10年近くかかっている」(大堀氏)。大堀氏らが次に普及させたいのは、従来ならニュースやプレスリリースにならないような企業情報をストーリーによって発信する文化だという。

「ゴールは、それぞれの企業が自分でストーリーを書けるようになることです」(大堀氏)

もともとPR Tableは企業から請負で、すべてのストーリーを制作していた。初期導入費用とストーリー5本で150万円。編集者がついて戦略やロードマップを策定し、実際のコンテンツの制作、公開、配信、集客、活用といった一連のプロセスを全部サポートするといったサービスだ。

このサービスで800アカウントほど獲得して足元の売上を作ってきたが、現在はプラットフォーム利用の月額制に移行を終えたという。初期導入費用30万円、月額10万円(初期キャンペーンは4万円)だ。

「企業からみるとコーポレートサイトに近いようなものを運用していくイメージで、1社1社の企業カルテのようなものになる」(大堀氏)という。できあがったランディングページを見てみると、今どきのHTMLでできた創業以来のイベントがタイムラインにアニメーションで表示されたりして、確かに「良い容れ物」という印象だ(たとえば例はここ)。ブラウザ下部には「働きたい」「事業を知る」「取材したい」という3つの大きなボタンが用意されていて、閲覧者にアクションを促す仕組みになっている。

各企業のストーリー作りは、これまでの知見を反映して戦略策定やコンテンツでフォーマットを標準化したり、工程管理のワークフローで業務を効率化できるようにするのが1つのポイントだそうだ。もともと大手PR会社にいた大堀氏は、「広報業務は非効率なところが多いのです。メディアリストをExcelで管理していたり。ストーリー発信は余計な業務なので効率化を進めたい」と話す。ワークフローを情報としてストックしていくことで、広報担当者が変わったときにも社内資産として引き継げるようなものになるという。現場利用者としては広報部以外も想定する。「広報部だけじゃなくて人事部もユーザーです。今後はIRもやっていきます。すでに現在、経営企画室でIR・広報・人事のすべてを見ている人がユーザーにいるのですが、好評です」(大堀氏)

現在すでにPR Tableには500ストーリーほどが掲載されていて、このうち4割ほどは顧客企業が制作している。全く添削が不要なストーリーは5%程度と、まだ編集や広報のプロの視点が必要とされている面もあるようだ。

既存媒体との連携も進めていて、今後は地方紙とも連携していく。例えば熊本出身の起業家のストーリーなどで、日経新聞連載の「私の履歴書」の地方版のようなものをPR Tableで作り、それを地元紙に掲載する取り組みだ。「地方にはニーズがあると思います。地方企業はニュースが少ないのでプレスリリースが出しづらい。でも企業内に良いストーリー自体はあるのです」(大堀氏)

C2Cの荷物預かりサービス「monooQ」、長期保管に対応した個人間トランクルームをリリース

荷物を預けたい人と預かってくれる人をつなぐC2Cシェアリングサービス「monooQ(モノオク)」を運営するLibtownは9月15日、長期間荷物を保管できる個人間のトランクルームサービスをローンチした。

今まではコインロッカーを代替するような形で、短期間の荷物預かりサービスとして打ち出していたmonooQ。今回の新サービスにより、monooQ上で荷物を預ける場所を検索する際「長期(1カ月から)」「短期(1日から)」と期間に応じて探せるようになった。

Libtown代表取締役の阿部祐一氏は「1日から荷物を預けることのできる、個人間トランクルーム」だと説明する。

荷物を預かるユーザーは使っていない部屋や、押入れ、余っている倉庫、部屋の一角などをトランクルームとして長期的に運用することで、まとまった収益を得られる可能性がある。一方荷物を預けたいユーザーも、従来のトランクルームより安く荷物を保管できる。

長期間の保管サービスは8月からベータ版として運用を開始。今までも長期間荷物を預けることはできたが、ユーザーにとって1カ月あたりの利用料が分かりやすいような仕組みを整えた。阿部氏によると、すでに短期利用よりも長期利用の件数が上回っているという。

「自宅にある服を継続的に保管したり、引越し時に数週間から1カ月くらい荷物を保管するのに使われている。空きスペースを活用しているため、従来のトランクルームよりも利用料が安い点が1番のメリットだ」(阿部氏)

monooQの利用料金は1畳で5000円ほどが目安。実際にサービスをのぞいてみると東京の中心地でも1カ月3000円で荷物を預けれらる場所もある。従来のトランクルームだと、東京の中心地であれば1カ月1万円を超える所も多い。敷金や礼金などの初期費用が加算されることもあるという。

monooQでは直近1カ月で約200カ所のホスト登録があり、2017年内に合計で3000カ所まで拡大を目指す。また並行して登録場所の使用率60%を目指していく。

「都内ではホストの登録がある程度増えてきているからこそ、まずはそのマッチング率を上げることを重視する。その後は地方にも拡大し、上京している人が地方の実家に荷物を預けるような感覚で、安く荷物を保管できるようなサービスにしていきたい」(阿部氏)

このあたりのアプローチは大阪や福岡、札幌など積極的に地方展開を進める「ecbo cloak」とは少し違うのかもしれない。とはいえダンボール数箱を預けるとなると、そもそも保管場所まで荷物を持っていくハードルが高い。たとえば宅配型トランクルームのように荷物の宅配をサポートする機能など、まだまだ改善の余地もありそうだ。

複数メールサービスの一元管理、未来の予定からニュースをリコメンド――「Swing!」の統合版Webアプリ登場

メールアプリの「Swingmail」、TODO管理アプリの「Swingdo」などを展開するBHIは9月15日、同社がこれまでに提供してきたプロダクティビティツールを統合したWebアプリ「Swing!」の提供を開始すると発表した。

統合WebアプリであるSwing!で利用できる機能は4つある。メール管理アプリ、買い物履歴の管理アプリ、ニュースアプリ、そしてカレンダーアプリだ。

Swing!のメール管理アプリはGmailやYahoo!メールなどの複数のサービスに届くEメールを一元管理できるアプリだ。特徴は、それぞれのEメールを送信者ごとに名寄せし、管理するという点。たとえば、Gmailに届いた上司Aからのメールと、Yahoo!メールに届いた同じ人物からのメールをまとめ、それらを時系列で確認することができる。

お買い物アプリは、楽天やAmazonなどのECサイトから届いたEメールから自動で購入履歴、配達予定を抽出して管理する機能だ。買ったものがいつ届くのかなどをSwing!のカレンダーアプリ上に表示するほか、何にいくら使ったのかをレポートとして表示する家計簿アプリ的な機能も備えている。

Swing!にはニュースアプリも搭載されている。このアプリでは、ユーザーが選んだ注目キーワードに関連する各種メディアの記事を表示するだけでなく、買い物の購入履歴や未来の予定などをもとに自動でニュースをリコメンドしてくれる。

たとえば、ビットコインの解説本を買ったユーザーにはビットコイン関連のニュースを表示したり、来月に北海道に行く予定があるユーザーには北海道のローカルニュースを表示したりする。このように、Swing!は各アプリがそれぞれに連携することでより便利になる仕組みになっている。

BHIはこれまでにも同様の機能をモバイルアプリとして提供してきた。代表取締役の日昔靖裕氏によれば、Swing!の各モバイルアプリを利用できるSwing!アカウントの登録ユーザー数は、これまでに30万人だという。

メールやカレンダーなど様々なプロダクティビティツールを提供するBHIであるが、ここまで読んだTechCrunch Japan読者のなかには、正直「Googleでいいんじゃない?」と思った人もいることだろう。

日昔氏はそれについて、「(Googleのような)大手のプラットフォームは、全世界にいる人々の最大公約数としてサービスを作っている。日本のスタートアップであるBHIは、日本のユーザーを細かくケアできるような機能を増やしていきたい」と話す。

2013年創業のBHIは、これまでにニッセイキャピタル、大和企業投資、サムライインキュベート、フリービットインベストメントなどから資金調達を実施している。

不動産テックのライナフがアットホームと業務提携——AI音声認識で仲介会社に物件情報を提供

スマートロックと、それに連動する不動産管理ソリューションを展開するライナフ。これまでにも、オンラインで物件の内覧を予約し、セルフ内覧ができる「スマート内覧」や、貸し会議室の予約、スマホや電話での入室が可能な「スマート会議室」といったサービスを提供してきた。そのライナフが新たに提供し始めたのが、AIによる音声認識で物件確認の電話に自動応答するサービス「スマート物確」だ。ライナフは9月15日、不動産情報サービスのアットホームとの業務提携を発表。スマート物確をアットホームの加盟・利用不動産店に対して、9月27日より提供開始する。

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏によれば、準大手の不動産管理会社の場合、仲介会社から物件の成約状況や紹介可否を確認する電話は、1日600件ほどかかってくるという。現状では管理会社では、問い合わせのたびにExcel表などを確認しながら回答することになるのだが、この業務の負荷を自動音声応答で軽減しようというのが、スマート物確の狙いだ。

「物件名にしか反応しない」独自の音声認識システム

スマート物確では、仲介会社が物件確認専用の番号に電話をかけると自動アナウンスが流れ、物件名を声に出すとAIが音声認識によって物件を特定し、その物件の情報を自動で応答する。

物件確認の自動応答システムでは、すでにイタンジが提供する「ぶっかくん」があるが、滝沢氏は「ぶっかくんでは、電話をかけると、物件名ではなく賃料や部屋番号、専有面積をプッシュ入力することで物件を絞り込んで特定し、物件情報を答える仕組みになっている。スマート物確は、より人の会話に近い形を目指した」と既存サービスとの違いを説明する。「音声で物件名(建物名)を言うと、対象が1室であればその部屋の情報をすぐにアナウンスする。複数の空き物件がある場合は、そこで部屋番号を入力する仕組みだ」(滝沢氏)

物件名を検索の基準とするスマート物確では、賃料などの条件変更があり、仲介会社が把握する賃料と自動応答システムのデータベースの賃料との間に相違がある場合でも、物件を特定することが可能となっている。

実際に、スマート物確の自動音声対応が聞けるデモ番号に電話をかけて、試してみた。アナウンスに従って、サンプルの物件名を声で話すと物件の検索が始まり、約10秒ぐらいで物件を確認する音声が返ってくる。音声でも思った以上にスムーズに検索ができる印象だ。

スマート物確の音声認識システムは、物件名だけを認識する不動産専用のものだという。滝沢氏は「いろいろな音声認識APIを使ってみたのだが、これまでのGoogleなどの音声認識システムでは、日常会話には強いが、固有名詞の認識で弱いことが分かった。そこでオープンソースの音声認識プログラムに手を加え、エンジンを自社開発した」と説明する。

管理会社はスマート物確で、物件ごとに読み上げる回答項目を設定、追加できる。また、営業時間の案内なども設定することが可能だ。

応答項目設定画面

さらにどの物件に、いつ、どの仲介会社から電話がかかってきたかを確認できる受信履歴画面や、問い合わせの多い物件が把握できる、受電ランキングなどの機能も備わっていて、物件の分析やマーケティングに活用することもできる。

物件ランキング画面

スマート物確では、自動音声案内だけではなく、仲介会社がオペレーターと直接話したいという場合には、通話を切り替えることもできる。滝沢氏によると、今回の本格リリースの前にベータ版を実際の業者で使ってもらった例では、半数以上の問い合わせが物件情報の自動音声案内のみで完了しているケースもあるそうだ。ベータ版の不動産会社による導入も進んでおり、9月15日現在の管理物件数は既に10万室を超えたという。

「電話は重要なチャネル」「他社連携さらに進める」

ライナフでは、不動産業界での問い合わせや予約で、いまだに電話は重要なチャネルだと捉えている。「宅配便の再配達や飲食店の予約でも、やはりネットよりも“確実に申し込みできた”という印象が強いのが電話。今後、スマート物確を内覧予約システムのスマート内覧ともつなぎ込み、年内にもリリースする予定だ。これにより、物件の空き状況の確認から内覧予約、現地の開錠と内覧までを、ネット経由に加えて電話でも行えるようになる。さらにスマホへの普及率が9割を超える、LINEとの連動も進めていく」(滝沢氏)

ライナフはスマートロック「NinjaLock」を切り口としてはいるが、以前から滝沢氏が取材で述べているように、“不動産管理”を軸にした不動産テックサービスを提供する姿勢を貫いている。その過程の中で、不動産の物件情報、予約情報、鍵情報を集め、一元的に管理するデータベースを構築してきた。滝沢氏は「これまでの物件内覧、貸し会議室などのサービスに加えて、他社への情報提供も視野に入れている。ホテル業界での予約・在庫管理ASPのようなサービス提供を、不動産の分野で目指している」と話している。また賃貸物件だけでなく、Airbnbやスペースマーケットなどが扱っているような短期の空きスペースの物件、時間、鍵の情報についても、他社へ一括で提供できる仕組みを検討しているそうだ。

今回のアットホームとの提携も、そうした他社への情報提供やサービス連携の一環だと滝沢氏は言う。「アットホームは5万4000店舗の販売網を持ち、また元々ファクトシート(物件情報の図面)の印刷・配布では最大手の企業。不動産情報のネットワーク化を進め、不動産業務の支援サイトも提供しているアットホームとの情報、システム連動を進めることで、業務の効率化、データ化も進み、不動産業界自体が一歩先へ進むと考えている」(滝沢氏)

ビジュアルTo-doリスト「Trello」のCEO、Micheal Pryor氏がTechCrunch Tokyo 2017に登壇決定

TrelloのHead of Productを務めるMicheal Pryor氏

11月16日と17日に渋谷ヒカリエで、スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」を開催する。今回、タスク管理ツールTrelloのHead of Productを務め、Fog Creek Softwareの共同ファウンダーであるMicheal Pryor氏の登壇が決まったのでお知らせしたい。

TechCrunch Japanの読者の中には、仕事や家事のタスクをto-doリストにまとめて管理しているという人も多いかと思う。タスク管理ツールにはtodoistやwunderlistなどいくつかあるが、Trelloはカードにタスクを入力して管理できるのが特徴のサービスだ。

Trelloは2011年にFog Creek Softwareの社内プロジェクトとして始まった。その後クローズドベータ版の公開を経て、2011年9月に開催された米国TechCrunchのスタートアップイベントDisruptで正式ローンチした。

Trelloを輩出したFog Creek SoftwareはJoel Spolsky氏とMichael Pryor氏が2000年に創業した会社で、FogBugzなどのコラボレーションツールを提供している。Fog Creek Softwareという名前に馴染みはなくても、Joel SpolskyとJeff Atwoodが制作した開発者専用のQ&AサイトStack Overflowを知っているという人は多いかもしれない。2008年に立ち上がったStack Overflowはプログラマーが開発の課題を解決したり、新しい技術を身につけたりするためのコミュニティーで、毎月5000万人の訪問、1400万以上の質問が集まるサイトとなっている。

Trelloは2014年、Fog Creek Softwareからスピンアウトし、Michael Pryor氏がCEOに就任した。同年、Spark CapitalとIndex Venturesから1030万ドルを調達。そして2017年1月、Atlassianに4億2500万ドルで買収されるに至った。

2016年4月に実施したサービスの多言語化で日本語にも対応している。私たちTechCrunch Japanでもしばらく前から、どのライターがどのニュースを担当するのかといったことを管理するのにTrelloを活用している。

今回、TechCrunch Tokyo 2017にMichael Pryor氏をお招きし、Trelloの着想からグロース、バイアウトまでの過程や今後の戦略について聞きたいと考えている。Stack Overflowに続きTrelloと、立て続けにユーザーに愛されるサービスを作る秘訣にも迫りたい。

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、9月末までは超早割価格1万5000円でチケットを販売しているので、ぜひこの機会に検討いただければと思う。

チケット購入はこちらから