Beyond Next Venturesの共同創業プログラム「APOLLO」から起業第1号、医療系スタートアップALY誕生

Beyond Next Venturesの共同創業プログラム「APOLLO」から起業第1号、医療系スタートアップALY誕生

ベンチャーキャピタル・アクセラレーターのBeyond Next Ventures(BNV)は3月29日、起業家候補人材とともに革新的な事業創造に挑む共同創業プログラム「APOLLO」において、医療系ディープテック企業ALY(アリー)が第1期参加者初の会社登記(2021年12月)を実現させたと発表した。同時に、第2期の募集を開始した。

ALYは、「データ技術で医療分野に化学反応を起こし、前へ進める」ことをミッションとする医療系スタートアップ。「データ分析で医療分野に良いインパクトを与えられる事業」を目指している。

共同創業プログラム「APOLLO」

APOLLOは、ディープテック領域に特化した起業家を対象に、構想段階からともに事業を練り上げ、スタートアップの起業を目指す創業プログラム。特定の事業テーマを選んで共創するという特徴がある。APOLLOが提供するのは、創業資金と成長資金、BNVの研究領域ネットワークを通じた事業に必要な研究シーズの探索や連携、事業構築と成長支援、目標領域に精通する投資家とともにビジネスモデルの策定や創業メンバーの採用などを行う事業構築と成長支援、起業家コミュニティーへの参加となっている。例えばALYでは、創業者・代表取締役の中澤公貴氏が、医療分野に精通するBNV執行役員の橋爪克弥氏と手を組み、創業に繋げている。

現在APOLLOは第2期の募集を行っている。対象となる事業テーマは、医療デジタルイノベーション、医療系IoT、バイオスティミュラント、カーボンオフセット、微生物/発酵、宇宙バイオテック、生殖医療/ファミリーヘルス、ベビーテック/チャイルドテック、インド市場となっている。これらの中で、少子高齢化、健康問題、環境問題などの社会課題の解決を目指す起業家を募集する。

対象者としては、強い挑戦心と起業家精神の持ち主、インパクトの大きな課題解決に取り組む強い意志の持ち主、スタートアップやスタートアップ的環境で新規事業に関わったことのある人を挙げているが、とりわけ、グローバル市場に挑戦する志向性がある人、特定の産業または事業モデルに強い興味と専門性がある人、起業経験がある人、医師、MBA、海外駐在経験者は歓迎するとしている。

説明会は下記のとおり領域ごとに開催される。

  • アグリ・フード領域(バイオスティミュラント、カーボンオフセット、微生物/発酵など)
    ・開催日:4月19日19時~20時
    ・詳細および申し込み: https://apollo20220419.peatix.com/view
  • 医療・ヘルスケア領域(IoMT、医療DXなど)
    ・開催日:4月27日19時~20時
    ・詳細および申し込み:http://ptix.at/Q4428G
  • バイオ領域(宇宙バイオテック、生殖医療/ファミリーヘルス、ベビーテック/チャイルドテックなど)
    ・問い合わせフォーム(https://talent.beyondnextventures.com/apollo)より連絡

近畿大学とインキュベントファンドが包括連携協定、起業やイノベーション創出・社会問題解決に挑戦できる人材養成を支援

近畿大学インキュベイトファンドは3月25日、起業やイノベーション創出、社会問題解決などに挑戦できる人材の養成や学術振興、世界ならびに地域社会の発展や産業振興への寄与を目的として、包括連携協定を締結したと発表した。

近畿大学は、起業家育成やアントレプレナーシップを持つ人材養成を目的として、大学院に新たな修士課程「実学社会起業イノベーション学位プログラム」の2023年4月設置を構想中という。今回の協定では、同プログラムを中心とするアントレプレナーシップの人材養成、大学発スタートアップ・エコシステムの形成と、それらの持続的発展に向けた組織的な連携強化を図る。これにより、大学院生を中心とするスタートアップを投資家目線の指導で直接的に支援するとともに、将来の有望企業の早期発掘を目指す。

具体的な取り組み内容は以下の通り。

  • 講師の紹介:起業家・若手実務家を招いたオムニバス講義など実施
  • 長期インターンシップ先の紹介:スタートアップ起業等での2カ月以上のインターンシップの実施
  • 大学院生のスポットメンターの紹介:文系・理系の教員および起業家の計3名による複数指導体制の構築
  • インキュベイトファンド主催プログラムへの参加:アクセラレータプログラム・ピッチコンテストへの学生の参加
  • 大学発ベンチャーの起業支援:ディープテックスタートアップのシード期支援

インキュベイトファンドは、創業前後のシードステージに特化したベンチャーキャピタル(VC)。2010年の創業以来、総額850億円以上の資金を運用し、関連ファンドを通じて、520社以上のスタートアップへの投資活動を行っている。投資分野は宇宙、医療、エンタメ、AI、ロボティクスなど多岐に渡り、「Zero to Impact」をモットーに、起業家とともに「Day Zero」から次世代産業の創造に取り組んでいる。より創業期に近い起業家との接点としてシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp」も運営。スタートアップの創業・飛躍の場として、またベンチャーキャピタリストのコアコミュニティの場として提供している。

Yazawa Ventures、女性起業家向けインキュベーションプログラム「アントレジェネレーター」採択企業発表

Yazawa Ventures、女性起業家向けインキュベーションプログラム「アントレジェネレーター」採択企業発表

独立系シードに特化したベンチャーキャピタル、Yazawa Venturesは1月17日、女性起業家を支援するインキュベーションプログラム「アントレジェネレーター」の3つの採択企業を発表した。このプログラムは、「世界に大きなインパクトを出せる事業創造に挑戦する女性」を対象に起業前後に出資を行い、専門家による起業講座やメンタリングを提供しつつ4カ月間でPMF(プロダクトマーケットフィット)を目指すというものだ。

採択起業は次の3社となる。

  • plusbase(代表:Wim.サクラ氏)
    医療業界には、もっとも就業者数が多い看護師の54%が抑うつ症状を訴えているという課題がある。これに対して、医療機関特化型メンタルサポートSaaS「+Nurse EAP」で解決を目指す
  • Josan she’s(代表:渡邊愛子氏)
    助産師、女性、家庭を結ぶマッチングサービスを展開。働き方に柔軟性がなく就業継続が困難な助産師に寄り添い、産前産後のお母さんの心身ケアを目指す。
  • Kaguya(代表:梶睦菜氏)
    メタバースで使えるバーチャル家具に特化したNFTマーケットプレイス「Kaguya」を展開。厳選されたアーティストやデザイナーの家具が購入できる。

Yazawa Venturesは、おもに働き方の改革を目指すスタートアップへの出資を行っている。投資領域は、「企業や組織の改革を目指すスタートアップ」と「個人の働き方の改革を目指すスタートアップ」とのこと。誰もが経済活動を楽しめるダイバーシティー性の高い社会を作る企業に積極的に投資、支援を行うとしている。

ガイアックスが学生のうちに起業体験ができる教育機関をリストアップした「全国起業部マップ」第1弾を公開

ガイアックスが学生のうちに起業体験ができる教育機関をリストアップした「全国起業部マップ」第1弾を公開

ガイアックスは10月20日、起業に興味がある高校生また大学生に向け、「全国起業部マップ」を公開した。同マップでは、学業で専門性を学びながら、部活・サークル活動という形式で起業の経験を得られる教育機関をリストアップしている。また、全国起業部マップ掲載の大学一覧は「全国起業部マップ by GaiaxStartupStudio」で確認できる。

ガイアックスが学生のうちに起業体験ができる教育機関をリストアップした「全国起業部マップ」第1弾を公開

全国起業部マップ掲載の大学一覧「全国起業部マップ by GaiaxStartupStudio

同社調査によると、コロナ禍の影響を受け、Z世代の64%が「自分らしさ」や「変化に強い」進路を目指すと回答しているという。同社ではそのニーズに応えるため、大学のうちから起業の経験を得られる大学リストを作成、また国内で初めて公開したという。同社は起業という選択肢を人生の早い段階から提供する環境作りに貢献することで、新しい未来を作る人材の育成に取り組むとしている。

  • 調査期間:2019年1月〜2021年9月
  • 対象:大学の公式・非公式の起業部またはサークル、その他ビジネスコンテスト運営組織
  • 手法:インターネットリサーチ
  • 調査方法:「全国起業部マップ」は、内閣府「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」選定地域に拠点を置く大学を中心に、起業部または起業サークルの有無を調査

同社調査では、日本国内のZ世代の約64%が、学生時代に未曾有の厄災を経験したことが「自身の将来選択に影響する」と回答した。将来の選択肢としては、「より安定的な進路を選択したい」(17.5%)という人よりも「より自分らしい進路を選びたい」(43.2%)や「より変化に対応できる進路をもちたい」(21.3%)と回答する人が多いという。

また同調査において、全国の大学で起業部の設立が続いており、2018年より起業部の数が250%増加していたことが明らかになった。ただ、社会人経験が少ない学生が、アイデアと技術だけで起業を選択することは容易ではない。そのため起業を目指す人は、大手企業やスタートアップに就職し、首都圏などに出てビジネス経験を持ち、起業する傾向があるという。

ガイアックスによると、今回一般公開したマップにより学生が起業経験を得られる大学が地方都市にもあるとわかるようになり、潜在的な起業家層となる学生が、首都圏に出ずとも起業を試みることができるとしている。

LinkedIn共同創業者リード・ホフマン氏の新著は起業家精神を見直す10の方法を教えてくれる

激励の言葉が欲しい気分のとき、いつも味方でいてくれる人脈の広い楽観的なメンターほど適切な人物はいない。頼りがいのあるその肩こそ書籍「Masters of Scale(スケールの達人)」が演じようとしている役どころだ。

LinkedIn(リンクトイン)の共同ファウンダーにしてGreylock(グレイロック)のパートナー、Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏の人気ポッドキャストから生まれ、ホフマン氏が彼のポッドキャストの総括責任者であるJune Cohen(ジュン・コーエン)氏、Deron Triff(デロン・トリフ)氏の2人と共同執筆した新著が今週出版された。さまざまなエピソードとすぐに使えるヒントが散りばめられた本書の強みは、登場する起業家たちが実に多様であることだ。テック界のリーダーにとどまらず、本書はSpanx(スパンクス)のファウンダー、Sara Blakely(サラ・ブレイクリー)氏、Starbucks(スターバックス)のファンダー、Howard Schultz(ハワード・シュルツ)氏、およびUnion Square Hospital Group(ユニオンスクエア病院グループ)のCEO、Daniel Meyer(ダニエル・マイヤー)氏からも教訓を学ぶ。どのすぐれたメンターとも同じく、本書は現実的だ。著者はあなたがまだ、Bumble(バンブル)のWhitney Wolfe(ホイットニー・ウルフ)やAirbnb(エアビーアンドビー)のBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)でないとわかっている。それでも、リーダーたちから広く適用できる教訓を引き出し、読者が共感を得られるようにすることができる。

メディアはこの本の主題ではないが、「Master of Scale」は、私がファンダーをインタビューする際の視点をすでに変えている。Tristan Walker(トリスタン・ウォーカー)氏は、私がファウンダーに質問する時、新しいラウンドで調達した資金の使い道よりも、彼ら自身のことや、彼らの最も物議を醸す信念について聞きたくなるように仕向けた。地理学者のAndrés Ruzo(アンドレス・ルゾ)氏の言葉からは、理に適ったスタートアップには読みやすい話にはなるかもしれないが、世界を破壊する大ヒットにはならないかもしれないことを気づかせてくれる。つまり、一見ばかばかしい野望ばかりのスタートアップを追いかけろ、ということだ。なぜなら最高の一歩や物語はそこで起きるから。そして私は、ファウンダーを見分ける最高のリトマス試験紙は、目の前にある苦難について彼らが誠実かつ謙虚に話そうとするかどうかである、という信念を本書で確認した。

心地よい物語を読むたびに、私はパンデミックへの言及を待った。パンデミックがスターアップに与える影響についてのアドバイスは、ピボットの技法に関する一章にほぼまとめられている。パンデミックへの対処方法のアドバイスを、ベンチャーキャピタル、資金調達、市場などさまざまな分野にちりばめる代わりに、本書はこの激変への言及を最小限に絞った。この選択によって、アドバイスの新鮮さは維持されるだろう。とはいえ、スタートアップ世界の醜い部分についてあまり語らない本書の選択には、一種のアンバランスさを感じた。もっと対立問題、たとえばWeWork(ウィワーク)のAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏がビジョナリー・ファウンダーに対する我々の見方をどう変えたのか、あるいはBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏のCoinbase(コインベース)メモとスタートアップカルチャーに与える影響、さらには現在のテック出版の役割などについて直接的に書いてくれていれば、さらに得るものがあっただろう。ただしこの本は、自らジャーナリズム性を謳ったことはなく、演じようとしたのはチアリーディングするメンターであって皮肉なメンターではないということもしれない。

人気ポッドキャストに基づいて本を書くことは、簡単であるとは限らない。オーディオは文字とはまったく異なるメディアであり、音声による会話の強い個性や謙虚さを文字に変換するにはそれなりの手腕が必要だ。実際ホフマン氏と共著者の輝き具合は話によってまちまちで、繰り返し、しかし効果的に使われている物語のアーク(横糸)に強く依存している。問題を紹介し、なるほど!の瞬間を見せ、ソリューションを示して普遍的教訓を伝える、というやり方だ。

私はこの本を週末に読んだ。1冊手に取ろうとしている起業家志願者、技術者、ジャーナリストにも同じやり方をお勧めする。ホフマン氏と共著者が70人以上の起業家の話を見事にまとめた仕事はすばらしい。共鳴したファウンダーを検索するのか、自分のインタビュー・スタイルを変えるのか、はたまた、いつの日かブリッツスケーリングできるアイデアを実現し始めるのか。真のマジックは、読者が物語の合間にひと息ついたときに起きる。

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画像クレジット:Kelly Sullivan/Getty Images for LinkedIn

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

プレシード期・シード期のスタートアップを支援する独立系ベンチャーキャピタル「F Ventures」は7月29日、25歳以下の資金調達前の起業家と起業予定者を対象に創業前後の支援を行うコミュニティー「TORYUMON ZERO」(トウリュウモン・ゼロ)の第3期メンバー募集の開始を発表した。参加者には、プログラム期間中限定で、渋谷のレンタルオフィス利用の権利と、アマゾンのクラウドプラットフォーム「AWS」の無料クレジットとテクニカルサポートが提供される。

TORYUMON ZEROは、数多くのエンジェル投資家や起業家をアンバサダーに招いて「将来の日本を支えるような経営者の輩出」を目指す、オンラインメインのコミュニティ。これまで2回募集を実施しており、ここから初めての資金調達につなげたメンバーも複数あった。第3期となる今回は、次のような活動が予定されている。

「TORYUMON ZERO」第3期・提供特典および活動内容

  • TORYUMON SEMINAR
  • 事業の「壁打ち」をはじめとしたVCメンバーによるメンタリング
  • 外部のキャピタリストの方々によるオフィスアワー
  • 創業支援・資金調達支援
  • TORYUMONでのピッチ機会
  • 事業を作る上で役立つ情報やノウハウの共有
  • オフライン含む交流会などを通じた横と斜めのつながり提供
  • AWSで使える無料クレジット、テクニカルサポート、トレーニングなどの提供

U25起業家と起業家予備軍対象に創業前後の支援を行うコミュニティ「TORYUMON ZERO」が第3期メンバーの募集開始

また活動は、9月初旬から開始される。利用できるオフィス(9月以降利用開始)は、レンタルオフィス「H¹O 渋谷三丁目」(東京都渋谷区渋谷3丁目1-1 PMO渋谷Ⅱ内)。ただ活動自体は完全オンラインで行われるため、日本全国から応募できる。

募集対象は、応募時点で調達前の25歳以下の起業家(登記前でも可能)。募集開始は7月29日、締め切りは8月20日午後11時59分。応募は「TORYUMON ZERO3期生応募フォーム」から行える。書類審査による一次選考と、オンライン面談による二次選考がある。一次選考の結果は1週間以内にメールで知らされる。二次選考通過者は順次コミュニティーのSlackに招待される。

詳細はこちらから

「TORYUMON ZERO」3期生募集概要

  • 募集人数:30名程度
  • 募集期間:2021年7月29日〜8月29日23時59分
  • 活動開始:2021年9月初旬始動
  • 対象:応募時点で調達前のU25起業家(登記前・エンジェルラウンド調達済でも可)。起業する予定のある学生・社会人。成長に貪欲な人。積極的にコミュニティの環境を活用できる人
  • 応募フォームTORYUMON ZERO3期生応募フォーム

募集スケジュール

  • 2021年7月29日:募集開始
  • 8月20日:募集締切、順次選考
  • 9月初旬:コミュニティ活動開始

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アントレプレナーシップ / 起業家精神(用語)F VenturesTORYUMON ZEROVC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

名古屋市がイノベーターのための人材育成プログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」参加者を募集

名古屋市がイノベーターのための人材育成プログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」参加者を募集

愛知県名古屋市は6月14日、イノベーションの担い手となる起業家や新規事業の開発を目指す人材を育成するプログラム「NAGOYA BOOST 10000 2021」(ナゴヤ・ブースト・テンサウザンド 2021)を、2020年に引き続き開催すると発表した。また2021年度からは、起業家(アントレプレナー)向けと新規事業担当者(イントレプレナー)向けの「AI・IoT人材BOOSTプログラム」をそれぞれ1コースずつ実施することを決め、参加者を募集している。募集期間は2021年7月18日まで。

またオンライン事前説明会が、7月1日午後6時から行われる予定。参加方法などの詳細は、Peatixイベントページ「NAGOYA BOOST 10000 2021 オンライン事前説明会」にまとめられている。

「NAGOYA BOOST 10000」は、名古屋発のイノベーション創出を目標とする「名古屋の看板事業」。2017年度開催のNAGOYA HACKATHON(ナゴヤ・ハッカソン)、若手人材育成のための「AI・IoT人材BOOSTプログラム」、それらの成果を発表してビジネスマッチングを行う「NAGOYA BOOST DAY」(ナゴヤ・ブースト・デイ)を追加し成長してきたものという。

2021年度からこのNAGOYA BOOST 10000は、「AI・IoT人材BOOSTプログラム for アントレプレナー」と「AI・IoT人材BOOSTプログラム for イントレプレナー」、そしてNAGOYA BOOST DAYの3本立てとなる。

募集概要(両コース共通)

  • 募集期間:2021年7月18日まで
  • 募集者数:各コース25名程度
  • 実施期間:2021年8月〜2022年2月
  • 参加費用:無料
  • 会場:NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE(一部オンラインの場合もあり)

AI・IoT人材BOOSTプログラム for アントレプレナー

AIやIoTの最新プロトタイピング技術、それを使った事業開発に必要なスキルや知識を学ぶ。「インプットとアウトプットを繰り返しながら、アウトプットに対するユーザー評価を通じ短期間でその精度を上げていく『アウトプット型 新規事業創出・学習プログラム』」とのこと。

参加対象

  • 起業、スタートアップにチャレンジしてみたい方
  • AI・IoTなど最新テクノロジーを使ったアイデアで起業にチャレンジしてみたい方
  • 起業に向けて仲間を集めていて、アイデアを形にしたい方
  • 将来的に起業家を目指している方
  • ゼロから自分で作り出したい、ビジネスを生み出したい方

AI・IoT人材BOOSTプログラム for イントレプレナー

AI、IoT、ロボティクス、クラウドなどの最新テクノロジーを、業界をリードするスタートアップの事例などとともに幅広く学ぶ。「豊かな知識をフルに活用し社内事業を牽引できるリーダー人材を育成」するという。

参加対象者

  • 最新の技術トレンドを学びたい新規事業担当者、エンジニアの方
  • 最新の技術トレンドを活用した開発にチャレンジしたいエンジニアの方
  • 最新の技術トレンドで新しいアイデアを創出したい新規事業担当者
  • 社内起業予定、もしくは社内起業にチャレンジしてみたい方
  • 社内新規事業創出・創造にチャレンジしてみたい方
  • AI・IoTなど最新テクノロジーを使った新しい取組みにチャレンジしてみたい方

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カテゴリー:EdTech
タグ:IoT(用語)AI / 人工知能(用語)日本(国・地域)

女性起業家の輩出目指す、世界最大の女子中高生向けアプリコンテストTechnovation Girlsが日本公式ピッチイベント

女性起業家の輩出目指す、世界最大の女子中高生向けアプリコンテストTechnovation Girlsが日本公式ピッチイベント

IT分野のジェンダーギャップの解消を目指すWaffle(ワッフル)は3月24日、世界最大の女子中高生向け社会課題解決型アプリコンテスト「Technovation Girls」(テクノベーション・ガールズ)の日本公式ピッチイベントのオンライン開催(Zoom)を発表した。開催日時は4月25日18時~20時。イベント内容は、日本出場チームによる成果物発表、授賞式、フォトセッションなどで、「Technovation Girls 2021 日本公式ピッチイベント観覧申し込みフォーム」で観覧希望者を広く募集している。

Technovation Girls日本公式ピッチイベント概要

Technovation Girlsは、米国の非営利団体「Technovation」が主催する、次世代の女性IT起業家の育成を目的としたコンテスト。2010年の開始から現在までに世界100か国以上5万人以上の女性が参加しているという。

同コンテストは、10〜18歳の女性を参加対象としており、1〜5人から編成されるチームが約3カ月間をかけて身近な課題を解決するアプリとビジネスプランの制作を行う。プログラミングなどの技術的なスキルだけでなく、社会課題の解決のためのアイディアや、ピッチ(プレゼンテーション)スキル、起業家精神などをチーム形式で競うという。また同イベントの公用語は英語で、公式の情報提供から提出物への記載に至るまで、すべて英語で実施される。

日本国内では、WaffleがTechnovation Girlsの日本公式アンバサダーとして、スポンサー企業とともに日本出場チームのサポートを行っている。各出場チームには、WaffleおよびTechnovation Girlsに賛同する2名の社会人メンターがつき、同コンテストで求められるデザイン思考やプログラミングスキルなどの習得を中心に、総合的なサポートを実施しているという。なお今回日本では、75名23チームが参加しているという。

Waffleは、IT分野のジェンダーギャップの解消を目指す非営利法人。国内の女子中高生向けにオンラインIT(コーディング)コース「Waffle Camp」(ワッフル・キャンプ)の提供、日本国内での「Technovaton Girls」(テクノベーション・ガールズ)のサポート、企業との協働による各種イベントを開催している。

Technovation Girls概要

  • 主催Technovation、Waffle(日本公式アンバサダー)
  • 日程:2020年11月〜2021年8月(予定)

実施内容

  • 2020年11月:参加登録開始
  • 12月:説明会登録および参加登録締締め切り
  • 2021年1月:チーム編成、デザイン思考ワークショップの実施
  • 2月:チームごとの社会課題と解決策の決定、プログラミング学習の実施
  • 3月:ビジネスプランの作成、アプリ開発、ピッチビデオの作成
  • 4月19日:米国本部への応募作品 提出締め切り
  • 4月25日:日本公式ピッチイベント(オンライン) 開催
  • 5月25日:ファーストラウンド審査結果発表(全体の5%)
  • 6月16日:セカンドラウンド審査結果 発表(8チーム)
  • 8月:ワールドサミット(オンライン)の開催

応募資格(日本国内)

  • 世界を変えるために成長する意欲がある
  • 2021年8月1日時点で中学2年生以上、18歳以下
  • 2021年1月から4月の3カ月間に合計30時間ほど、オンライン環境での活動時間を確保できる
  • 日本語が話せること(現時点での英語力は不問)
  • 女性アイデンティティをもつ、またはトランスジェンダー、ノンバイナリー、gender noncomformingの者

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アントレプレナーシップ / 起業家精神(用語)インクルージョン(用語)エンジニア(用語)学生(用語)教育 / EdTech / エドテック(用語)ダイバーシティTechnovation Girls(用語)プログラミング(用語)Waffle(組織)日本(国・地域)

立命館が学生向け社会起業家支援プラットフォームRIMIXを本格化、10億円規模のファンドを創設し起業を後押し

立命館は学生起業の支援に注力している

立命館は学生起業の支援に注力している

学校法人立命館は、学生起業を対象にした支援事業を本格化している。2019年に始めたばかりだが、ピッチイベントなど学生の活動にも熱を入れている。また、立命館は自らの資産だけで10億円規模のファンドを創設し、ソーシャルインパクトを踏まえて、長期的な視点で学生起業を後押ししている。この支援事業は、スタートアップのジレンマでもあるLP投資家に短期間でリターンを求められるといった構造と無縁のものだ。

社会起業家を目指す学生たちに手を差し伸べるRIMIX

「他の大学では真似できないことができるのではないか。立命館らしさを出していきたい」と立命館大学の酒井克也財務部次長兼人事部次長は語る。同氏は立命館による社会起業家支援プラットフォーム「RIMIX」の立ち上げ時から関わっている。

2019年9月にスタートしたRIMIXは「Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(Cross) Platform」の略称となる。立命館は、立命館大学や立命館アジア太平洋大学のほか、付属の小中高、大学院まで一貫教育を行う私立総合学園だ。そのため、RIMIXの対象は主に立命館に所属する小中高大院までの学生やその卒業生となる。

同プラットフォームは、社会にインパクトを与える人=「社会起業家(Impact-Makers)」と位置づけている。単に起業家支援というよりも、教育機関としてSDGsをはじめとする社会課題を解決するために起業する学生らの支援に的を絞っており、ソーシャルインパクトをより重要視する。

またRIMIXでは、立命館で行う社会起業家を目指す人材やマインド養成から本格的な起業支援などの取り組みを、1つのプラットフォームとして見える化している。立命館のさまざまな教育プログラムを有機的に組み合わせ、ビジネスを通じて社会課題を解決するImpact-Makersを育成していく考えだ。さらにSony(ソニー)をはじめとした外部機関との連携も含め、起業までの道のりをしっかりと整えている。

ソニー×「総長PITCH CHALLENGE」

ソニーは、自社で行っているスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム「SSAP(Sony Startup Acceleration Program)」を通じてRIMIXと連携する。RIMIXは「総長PITCH CHALLENGE」というコンテストを主催している。学生たちは約半年間、「ワークショップ」「インプット」「ブラッシュアップ」の3段階に分けて、SSAPの支援を受けながら社会起業家を視野に入れたビジネスプランを作り上げ、ブラッシュアップしていく。

総長ピッチで学生は「起業」を学んでいった

総長ピッチで学生は「起業」を学んでいった

2020年の「総長PITCH CHALLENGE」には32チーム(87人)の応募があり、オーディション後、7チーム(17人)が最終決戦の舞台となるピッチイベント「総長PITCH THE FINAL 2020」に挑んだ。

最後のイベントとなる「総長PITCH THE FINAL 2020」は2020年12月19日に開催、その模様はオンラインで配信で配信されている。当日は、立命館大学学長も兼任する学校法人立命館の仲谷善雄総長のほか、Sony Startup Acceleration Programの副部門長小田島伸至氏、新生企業投資インパクト投資チームシニアディレクターの高塚清佳氏、ジャフコグループのパートナーである佐藤直樹氏ら、スタートアップ分野の第一線で活躍する面々を審査員に迎えた。チームにはピッチを行うための5分間と審査員による質疑応答の3分間が与えられ、それぞれのチームが努力の成果を披露した。

ここで、ファイナルの舞台に立った学生の声を紹介したい。

下着を通して性が多様であることが当たり前の世界の実現を目指す「KAKITSUBATA」の代表を務める立命館アジア太平洋大学国際経営学部3回生の安藤晶美さんは「参加前は起業に対する知識もなく、私のビジョンをどうカタチにすればいいのか悩んでいた。しかし参加してみると、起業までのインプットはもちろん、当事者へのインタビューや検証、商品サンプル作成まで進み、商品化の一歩手前までくることができた。この経験を糧に事業の実現に挑みたい」と振り返る。

同大学アジア太平洋学部2回生の三浦宗民さんは「総長PITCHで身につけた知識やスキルをさまざまな場面で活用して、『温もり』や『優しさ』といった目に見えない価値を世の中に広め続けていきたい」と話す。

三浦さんは、人から人へ感謝の物語を紡ぐ珈琲と手紙のセットで、思いやりが循環する社会の創出を目指す「ものがたり喫茶」の代表だ。「総長PITCHで資料作成やプランの順序といった知識を深めた上で、ブラッシュアップをしてもらい、事業の仕組みや規模感なども実践的に学ぶことができた。私たちだけでは気づけなかった視点や方向性を知ることは、今後の活動への良い刺激であり、貴重な経験になった」と振り返った。

総長ピッチのファイナルの舞台に立つ学生たち

総長PITCHのファイナルの舞台に立つ学生たち

酒井氏は「RIMIXは初め、小さな取り組みの1つだったが、総長ピッチによって学園内での認知度も高まりつつある」と期待を寄せる。

他にもマネーフォワードREADYFORコモンズ投資JAFCOSDGs Impact Laboratoryといった企業もRIMIXの取り組みに参画している。外部機関をの招聘は、教育機関だけではフォローできない具体的、実践的なノウハウを補完してもらうことが狙いだ。

立命館単独のファンドで長期的な支援を

10億円規模の立命館ソーシャルインパクトファンド(RSIF)は立命館のみの資産で創設され、単独LP投資家のようなカタチになっている。他のLPを入れるとリターンについての議論に陥ってしまいだが、RSIFは他のLPがいないため、RIMIXのプラットフォームにおける投資機能に集中することができる。酒井氏は「金銭的なリターン目線はやや抑え目であり、融通の利くスキームを取り入れている」と説明する。

ソーシャルインパクトも重要視した支援を図る

ソーシャルインパクトも重要視した支援を図る

学生起業は社会経験を経た大人たちによる起業と比べて、成果が出るまで時間がかかることが多い。RSIFは単独で10億円規模の資金があるため、学生に寄り添いながら未来を見据えた投資回収を考えることができ、社会課題の解決を目指す学生たちの「やりたいこと」に軸足を置いた運用をしやすくなっている。

またRSIFは、経済的リターンだけでなく、事業活動による社会的・環境的な変化や効果といったソーシャルインパクトも求めており、RIMIXの理念に通底している。

RSIFがあることで、RIMIXは経済的な面においてもその社会起業家を産み、育てる環境が盤石なものになっている。短期的なリターンではなく、長期的に事業の成長を支える仕組みは、スタートアップ業界において理想的なものだ。

RSIFによる投資の第一号案件は2020年9月、居住拠点プラットフォームを提供するADDressに対して行われた。代表取締役社長の佐別当隆志氏は、立命館大学の卒業生。空き家対策といった社会課題の解決に挑むサービスなどが、RIMIXの理念と合致した。なお、投資先の選定はプラスソーシャルインベストメントに委託している。

一貫教育で起業への道筋を若い世代から

小学校から大学院までの一貫教育を行う立命館には約5万人の学生が在籍している。RIMIXは小学生を対象にしたSDGs関連イベントなども行っており、いつでも社会起業家を目指せる土壌を用意をしている。

また、付属校から高校、大学に進学する際に入試がないことも強みだ。国立大学などを受験するとなれば、学生は試験勉強でいっぱいになってしまうものだ。立命館では、試験勉強に充てる時間を削減できることで、学生は起業までの効率的なルートを歩むことができる。

幼い頃から起業を啓発し、卒業生らが将来、RIMIXの取り組みを手助けするといったエコシステムの確立も目指している。酒井氏は「社会起業家に興味がある子に起業までの道筋を示すとともに、こちらからも積極的にアプローチしていきたい」と意気込む。

多角的にへ起業の道筋を用意するRIMIX

さまざまな起業への道筋を用意するRIMIX

支援体制のさらなる強化を図るRIMIX

今後は起業を夢みる学生に向けた支援の幅を広げていく。卒業生らが学生をメンタリングしていく枠づくりや、起業だけでなく投資に回る人材などの育成分野も開拓していきたい考えだ。「もうひと段階アクセルを踏まないといけない」と酒井氏はいう。

また、現状はRIMIXによる取り組みは単位取得にはつながらないが、酒井氏は「教育機関としての役割を強める意味も込め、RIMIXと教学との関係をより密にするカタチも検討していきたい」とさらなる展望を語った。

カテゴリー:その他
タグ:立命館起業学生

女子大学生のための「ハッカーハウス」がない、だから自分たちで作る

リモート勤務が長引くにつれ、「ハッカーハウス」が起業家たちの間で復活しつつある。企業創設者たちは、自宅に閉じ込められる現在のスタイルを受け入れられても、20代の女子大学生たちは、大学を卒業してそうしたライフスタイルに飛び込むまでの間、ただ待ってはいられない。

大学2年生のCoco Sack(ココ・サック)氏とKendall Titus(ケンダル・タイタス)氏が立ち上げたWomxn Ignite(ウムエックスエヌ・イグナイト)は、女子またはノンバイナリーの学部学生がコンピューターサイエンスを学ぶための家だ。このアイデアは、サック氏とタイタス氏が、それぞれエール大学とスタンフォード大学のリモート授業に疲れ切ってしまったことから生まれている。退屈なZoom講義をさんざん聞かされた挙げ句に、彼女たちは休学し、もっと生産的な時間の過ごし方を模索し始めた。

「高校でコーディングを学んだ若い女性のためのプログラムはたくさんあります。また、就職の機会を逃した女性のための、企業グループや企業創設者のグループも数多くあります」とタイタス氏。「しかし、20歳から25歳の間の、自分で道を切り開き、声を上げ、自分の立場で踏ん張ろうとするすべての女性のための場所がありませんでした」。

そこで彼女たちは、独自のプログラムをスタートさせた。2人は、カリフォルニアのウェディングリゾート施設を借り、ライフスタイルの冒険を望み1年間の休学ができる女性を募った。40%以上の学生が休学を考えているこの時期だけに、みるみる学生の関心が集まった。参加申し込みは500人を超え、そこから20人だけが選ばれた。

Womxn Igniteは、住み込み式のインキュベーターとして整備された。参加者は興味のある分野ごとにグループ分けされ、それぞれに解決すべき課題が与えられる。

こうすることで、各グループはさまざまなメンターセッションが受けられるようになる。月曜日と火曜日と木曜日には、女性起業家が持ち回りでメンターセッションを行うことになっている。また1週間を通して、Melinda Gates(メリンダ・ゲイツ)氏やBumble(バンブル)のWhitney Wolfe Herd(ホイッニー・ウルフ・ハード)氏といった著名な起業家による講演もちりばめられている。

週の終わりには、各グループは課題、解決策、顧客による検証、製品開発の進捗状況をプレゼンテーションする。

タイタス氏によれば、目標はすべての参加者が会社を興すことではなく、むしろ豊富な人脈を築き、事業を立ち上げる際に役立つ豊かなアイデアを身につけて卒業してもらうことだという。ある参加者は、テック業界で生きる黒人女性を題材にしたテレビ番組の脚本を書いている。また別の参加者は、Womxn Igniteのようなプログラムを、もっと簡単に大規模に実施できる企業を創設しようとしている。

セッションの空き時間は、多くがグループ単位の協調とネットワーク作りにあてられる。テーマを持たせたディナーや、ペアを組んで近所を散策したり一緒に何かを行って、互いをよく知り合うための「プラトニック・デート・ナイト」も催される。週末には、彼女たちは、顔認証に対する倫理的な懸念やナノスケール素材など、各自のニッチなこだわりを語る会に招かれる。

タイタス氏とサック氏は、参加費は5000ドル(約52万円)以上にはならないと話しているが、大半の参加者は匿名の起業家が出資する奨学金を利用している。

コホートの多様性は、経歴にこだわらず女性の力を組織的に高めるコミュニティを作ろうとする際に物をいう。Womxn Igniteでの割合は白人が最も多く、次いで黒人とラテン系、中東系、アジア・インド系がそれに続いている。全員がスタンフォード、エール、ジョージタウン、コロンビア、ハーバード、ダートマス、MITといった一流大学の在学生だ。

参加者たち(画像クレジット:Womxn Ignite)

参加者たちは、多くが大学に戻りたいと考えている。人生の中のいまの時期を踏まえ、デモデーや最初に受け取る小切手などといった古典的なアクセラレーターで聞かれる言葉にはこだわってはいない。反対に、プログラムの修了時、各参加者はこんな誘いを受ける。「今後5年間、年収の1%をシンジケート作りに寄付してくれますか?」と。2人の共同創設者によれば、ほとんどが大学に戻ろうといているわけだが、それでもいまのところ、ほぼ全員がイエスと答えているという。

この資金は、企業を創設したいを女性への投資と、Womxn Ignite卒業生のそれぞれの職種での成長のために使われる。

「その額が増えていくことを期待しています」とタイタス氏。「私たちのような企業創設を目指す女性を応援するために、どのように資金を活かせばよいかをみんなで考えられるよう、共同出資していきます」。

Womxn Ignite参加者のClara Schwab(クララ・シュワブ)氏は、この契約はもっと多くの女性が、若い時期から、男性に支配されているベンチャー投資の世界に参加できるようにするものだと話していた。

「私自身と、その他19人の本当に才能があり頭がよくて意欲があって、全員がテクノロジーに興味を持っている女性が集まって、こんな話ができる環境も状況も、他には知りません」と彼女はいう。

2人の共同創設者は、2月に新しいコホートを迎え、彼女たちのためのデジタルコミュニティー作りに専念する計画だ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Womxn Igniteアントレプレナーシップ学生

画像クレジット:Softulka / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

起業家精神とソーシャルグッドとしての投資

著者紹介:Sree Kolli(スリー・コリ)氏は、全世界の優秀な事業者、ファミリーオフィス、選ばれたVCと創業者を繋ぐプレミアム投資プラットフォームのConduit(コンジット)の共同創設者。

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2020年は社会的動乱の年だ。世界各国で、文化に潜むさまざまな問題が社会的にあぶり出され、さまざまな変化が推し進められている。排他的な企業ポリシーを改めたり、行動を伴う嘆願書に署名したりなど、私たちの誰もが取りうる重要な手段がある一方で、VCと投資の世界にはそれとは別の、しばしば見過ごされがちな選択肢がある。世界を変えるスタートアップに投資することだ。

エンジェル投資家たちと機関投資ファンドは徐々に、資金の一部を多様性やソーシャルグッドに焦点を合わせるスタートアップに配分し始めている。 重視するのは医療や福祉への民主化されたアクセスであったり、気候変動のようにより大規模な問題であったりする。

ソーシャルグッドに力を貸すために資金を移転するということは、一見して手に余る業のように思えるかも知れないが、投資家たちはこの思考の変化を3つのシンプルな手順で受け入れられるようになる。3つの手順とは(1)停滞している投資を再配分すること、(2)チェンジメーカーとなるスタートアップに出会うための民主化されたアクセスを活用すること、そして(3)成功に向けて軌道に乗る創設者の目星を付けることだ。

変化を育む投資により多くを配分すること

世界中のほとんどの資金は停滞中の場所に投資されている。不動産投資であれ、債券やその他の伝統的な組織体であれ、そのような資本が投資家にもたらすリターンは往々にして控えめなものであり、社会に与えるインパクトはごくわずかだ。その考えに悪意はない。

ほとんどのファミリーオフィスや個人資産運用マネージャーは損失を最小化することに熱心で、そういった画一的なポートフォリオは安全なのである。 最も経験豊富な投資家たちでさえ、ポートフォリオにいっそうの多様性を組み入れるべきだ。ソーシャルグッドを推進しつつ高いリターンを得られ利益を生める投資先を判断することになる。投資家たちはいくつかの小さな段階を経てから、いっそう確信を持って自らの戦略を広げればよい。

始めに、思考の枠組みを作り直し、リスクよりもむしろ潜在的な機会に目を向けるようにする。これを実践する良い方法がある。過去5年間にハイリスクな上場株式のパフォーマンスがどのようなものだったかを思い起こし、それをテック分野のベンチャー企業と比べてみるのだ。大きな差異があることと別のリターンを得られたかも知れない機会に、投資家たちは気付くだろう。

この考え方はプロファイル全体をひとつのベンチャーに配分するのではない。むしろ、ポートフォリオの一部をハイリスクな上場株式やファンド構造などの投資セクターに投資すべきであり、それをよりリターンの高い同じようなリスクプロファイルに配分する。この増分を徐々に大きくしながら、15%から開始してゆっくりと拡大すると、過程に変化を生み出しつつも大きなリターンを得やすくなる。

情熱の世界はすぐ手の届くところにある

あらゆる規模のスタートアップにとって、投資家への民主化されたアクセスがあることは、ソーシャルグッドのための資本の活用を促進する。最近まで、世界中の最も裕福な人たちだけがプレミアム資本との接触を持っていたが、クラウドファンディングやアクセラレータープログラムの普及によって新たな機会が引き出され、他の方法ではあり得なかったような関係性が築かれている。

これらの手段は投資家たちとスタートアップの出会いに新たな扉を開いてきた。 シリコンバレーのような進んだネットワークやイノベーションハブは、もはや資本調達を目指す人たちにとって運命を左右する要因ではなくなった。スタートアップにはグローバルな機会が拡大し、投資家たちにとっても、場所にとらわれずに価値観の合う有望なベンチャーを探せる選択肢が増えたということになる。

ただし、クラウドファンディングやアクセラレータープログラムには、世界をいっそうアクセシブルにする一方で相当に大きな課題もある。アーリーステージの投資が身近になったにもかかわらず、往々にしてクラウドファンディングは最も重要な投資家たちを引き込んでいないのだ。

また、クラウドファンディングではプラットフォームに質の低い案件が殺到し、実りある機会を得るのは投資家にとってもいっそう骨が折れる。一方で、さまざまなアクセラレーターやインキュベーションプラットフォームが台頭している。先進的かつグローバルな繋がりを持つものだが、こちらは至って静かなことが多い。

成功する起業家に必要なのは資本だけではない。意思決定を手助けし、インパクトをもたらすやり方で事業を拡大する支えとなれる経験豊富な投資家たちから、戦略面でのサポートを受けることが必要だ。アイデアの世界はすぐ手が届く場所にあるのだから、投資家たちは選択肢をじっくりとふるいにかけ、質の高い案件を優先しながら、有望な関係性を厳選して提供するプラットフォームに目を向け、最も感動するアイデアを見つけるべきだ。

成功に向けて準備ができている起業家に力を貸す

今はスタートアップに投資する良いタイミングだ。パンデミックの期間中にイノベーションを行った人たちは、安全な経済に安住した人たちよりも動きが3倍速い。ただしタイミングが良いだけでなく、かみ合いも同じくらい重要だ。私はポテンシャルに投資することについては信念を持っている。 強気であること、揺るぎない粘り強さと共感力があることは、革新的なアイデアの実現を支える望ましい資質である。

投資家が力強いビジョンと人材を惹きつける力がある情熱的なリーダーに資金を提供するならば、意味あるものを手にするための下地作りがある。投資するチェンジメーカーを検討するとき、こう自問しよう。この会社を築き上げるのにふさわしい人物か?人材を惹きつけ導く力がある人たちか?市場の大きさは十分か、そして周りで会社を立ち上げることの支障になるのに十分な大きな問題があるか?

これらすべての問いへの答えがイエスでない場合は、理論的に出口を見いだせるか、あるいはその会社がプレシードまたはシリーズAか、彼らに会社をほどよい規模へと拡大する能力があるかどうかを正確に評価することが重要だ。

それでもスタートアップに投資するのは、相手の狙いがどれほど良かろうと、投資家には怖いことかもしれない。そんな不安を克服する方法のひとつに、リスクが低そうなよりレイトステージのスタートアップに投資し、それから自分のペースでアーリーステージのスタートアップを手掛けるという方法がある。特別目的会社(SPAC)もまた興味深い投資の選択肢になりつつある。

SPACとはIPOを通じ投資資本を調達することを唯一の目的として設立される企業だ。その収益を使用して既存の会社を1社または複数購入する。リスクを嫌う投資家のコンフォートゾーンを広げて不安を減らせる選択肢だ。

ソーシャルグッドを受け入れるために投資家が取る戦略は、どのようなものでも正しい方向への一歩だ。資本とはイノベーションに力を与えインパクトのある変化を起こすための具体的な手段なのだ。

スタートアップへの民主化されたアクセスがあることで、投資家たちには価値観の合うベンチャーを見つける機会が増え、プロファイルの多様化を図ることがとてつもない成果をもたらす可能性がある。そのリターンが現状を打ち破り、社会的な変化に力を与えることになれば、誰もが恩恵を得るのだ。

関連記事:買い手の視点でスタートアップを経営する

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:コラム   起業家精神

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(翻訳:Dragonfly)

人種差別、がん、離婚などのトピックを扱う子ども向け書籍のスタートアップ、創業から現在に至るまでの歩み

企業家であり父親でもあるJelani Memory(ジェラニ・メモリー)氏は、長い間、子ども向けの本を書きたいと思っていた。同氏は、自分が経営するスタートアップであるCircle MediaのシリーズB投資ラウンド中に、燃え尽きたように感じ、もっとクリエイティブで充実した何かを始めたいと思い始めた。これが、A Kids Book Aboutを創業するきっかけとなった。A Kids Book Aboutは、親が子どもといっしょに難しいトピックや会話に挑むのを支援する書籍出版プラットフォームだ。最初に出版された本のタイトルは『A Kids Book About Racism』だった。

メモリー氏は次のように述べている。「私自身、父親として子どもたちと人種差別に関する会話をしようとしていた。子どもたちもこの本を気に入っていた。この本を読んだ後、子どもたちは新しい質問をいろいろとしてきた。人種差別という話題についてそんな質問を子どもたちから受けたことはそれまでなかった」。

メモリー氏がこの本を友人や同僚にも読んでもらったところ、他のトピックについても本を書いたらどうかと勧められた。

同氏は次のように語っている。「それがすべての始まりだった。朝起きたときも、夜寝る前も、日中仕事をしなければならない時間もそのことで頭がいっぱいだった。このような本が必要だ、少なくとも自分の子どもたちには絶対に必要だと直感的に感じていた。一部のトピックは、子どもたちとの会話で取り上げることがあまりに難しいと感じていたからだ。私は自分がオープンな父親で、子どもたちとさまざまなことを話していると思うが、中には取り上げにくいトピックもある。取り上げるつもりでいても、何と言ってよいかわからないこともある」。

これには多くの人たちが共感するのではないか。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警官に殺された翌日、『A Kids Book About』シリーズは、その前の月全体と同じ冊数が1日で売れた。そして、その勢いは止まることがなかったそうだ。その翌日の売り上げは2倍、さらにその翌日も2倍になり、その後も安定した売り上げを記録した。10日という短い期間で、A Kids Book Aboutは100万ドル(約1億600万円)を超える収益を達成した。

メモリー氏はこう述べている。「正直なところ、あの時点の在庫で年末まで十分に持つだろうと思っていた。だが、2つのタイトルを除き、すべて売り切れてしまったのだ」。

6月のある時点で、入荷待ちは5万冊ほどになっていた。

メモリー氏は次のように語っている。「大人たちもやり方がわかってきて、子どもたちとこうした有意義な会話ができるようになっていった。人種差別に関する本が本当によく売れたが、読者の意欲は素晴らしく、がん、フェミニズム、共感、マインドフルネスといったテーマの本が瞬く間に売れていった。見ていて快感だったよ」。

A Kids Book Aboutは2019年に正式に創業し、同年10月には12タイトルが発売された。現在は25タイトルが販売されており、今後さらに増えていく予定だ。A Kids Book Aboutは直販ビジネスを主体とした「かなりユニークで新しい出版モデル」だとメモリー氏は説明する。

同社では、少人数の集中的なワークショップによって本をあっという間に書き上げてしまう。まず作家に声をかけ、会社のビジョンとミッションについて説明し、その作家と本を共同で執筆する。本を出した経験がない人を意図的に探しているが、以前に本を出した経験がある作家もいる。

メモリー氏は次のように説明している。「本を出した経験がある人となると、大抵は、同性愛者ではない白人の男性になってしまう。我々としては、個人的にさまざまな経験をしており、実体験を通してそのトピックの裏も表も知り尽くしている人を求めている」。

Image Credits: A Kids Book About

出版業務に話を移すと、A Kids Book Aboutでは、本の収益の10%以上を印税として作家に渡すという。従来の出版社の印税は6%程度だ。また、書店に並ぶまでの平均日数は45日と大変短い。従来の出版業界では18か月もかかるところだ。

新型コロナウィルス感染症のパンデミックが発生したとき、A Kids Book Aboutでは、このトピックを取り上げる必要があると考えた。そこですぐにゴーサインを出し、ある社会疫学者と協力して4日間で無償の電子ブックを作成した。書籍版は来月、先行予約を開始する。

フロイド氏の死によって火がついた大きな社会運動の最中、同社では、人種をテーマにした本を追加する必要があると考えた。

メモリー氏は次のように述べている。「私の書いた『A Kids Book About Racism』は人種差別についての会話を始める良いきっかけにはなると思うが、このテーマであと数冊は出す必要があると考えた。今、白人の特権に関する本を急いで執筆しており、今年の秋に出版する予定だ。また、人種差別シリーズの最後の分野として使えるよう、組織的人種差別についての本も執筆中だ」。

A Kids Book Aboutのビジネスのやり方で従来と異なる点がもう一つある。資金調達の方法だ。資金調達プロセスでは、投資家が自分を選ぶだけでなく、自分も投資家を選ぶ、とメモリー氏は言う。

メモリー氏はこう説明している。「これによって、多くの無益なやり取りを回避できる。もちろん、投資の申し出の一部を断る必要もあった。しかし、何よりも、視野を広げて、非白人の投資家を増やすことができるのだ」。

メモリー氏は、スタートアップに今まで投資したことがない投資家も探した。

「適格投資家からだけでなく、適格投資家以外の人からも資金を調達する余地を残しておくことがとても重要だった。富の連鎖がこのまま続くと、富める者だけがますます富むという結果になることがわかっていたからだ」と同氏は述べている。

A Kids Book Aboutは、Cascade Seed Fund、Color Capital、Black Founders Matterなどの一握りのシードファンドから100万ドル(約1億600万円)を調達した。

メモリー氏は次のように述べている。「がんや人種差別などのトピックを扱う子ども向け書籍の直販スタートアップなど、ベンチャーキャピタルにはあまり受けない。私が非白人の創業者であること、またこれが2度目の創業であることもあり、投資家に感銘を与える話をすべきだと何度も勧められた。そのたびに私は、『わかっていない。これは慈善事業じゃないんだ』と答えた。そうした人の投資はすぐに断った」。

メモリー氏によると、eコマースや消費者向けファンドを除けば、全体として、投資家たちの反応はとても良かったという。だが、出版業界について、また同氏のビジネスが今までにないものだということについて、よく分かっていない投資家だけになってしまうこともあったという。

メモリー氏は次のように語っている。「大半の投資家は自分のことを、恐れずにリスクを負う人間だと思っているようだが、私に言わせれば、彼らは地球上で最もリスクを嫌う人たちだ。資金調達とはつまり、自分のしていることを本当に理解してくれる真の支援者を見つけることだ。このビジネスのために100万ドル(約1億600万円)を調達できたことに今でも少し驚いている。しかも、その半分はパンデミックによるロックダウンの真っ只中に調達できたのだ。でも、素晴らしい結果を出していることを書いても、もう問題ないだろう。あの当時、すでに多くの人たちと話をしていたことも。数日で50万ドル(約5300万円)を売り上げるようになった頃には、自分たちとは考えが合わないか、単純に資金の割り当て先を確保できなかったという理由で、かなりの数の投資家たちの申し出を断るようになっていたことも」。

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カテゴリー:EdTech

タグ:A Kids Book About アントレプレナーシップ 差別

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(翻訳:Dragonfly)

買い手の視点でスタートアップを経営する

著者紹介:Tyler Griffin(タイラー・グリフィン)氏は、2012年に消費者向け決済ツールPrism Money(プリズム・マネー)を共同創業した。現在は、Financial Venture Studio(ファイナンシャル・ベンチャー・スタジオ)のマネージングパートナーとしてアーリーステージのフィンテック系スタートアップに投資している

「デュアル・トラック・プロセス(複線戦略)を決して取ってはならない」。

資金の調達と会社の売却という2つのプロセスを並行して実行することについて投資家に意見を聞くと、おそらくこのようなアドバイスが返ってくるだろう。そしてこれは、的確なアドバイスだ。2つのプロセスはまったく異なるうえに、どちらも大変な労力を必要とする。さらに、物事を進める際の優先順位が大きく異なるため、両方のプロセスを同時に首尾よく実行することは不可能に近い。ただし、売却プロセスを進めることと、会社を売りに出すことはまったく異なる。会社を売りに出すことは、会社の経営と資金調達に注力しながらでも簡単にできる。会社を売却する予定がない場合でも、買収側の立場で考えることは、ビジネスの改善につながる場合が多い。さらに、いつかは合併や買収(いずれもIPOよりはるかに一般的な方法)でイグジットすることになる場合でも、今から買い手の視点で考えておけば、イグジットを大幅に早めることができる。

KPIだけの問題ではない

投資家は手段よりも結果を重視する。ビジネスが成長していて好業績の場合、創業者が投資家から経営手法の詳細について尋ねられることはほとんどない。

そのため、売却交渉中に買収側がありとあらゆることについて質問を始めると、創業者は想定外の展開に驚くかもしれない。買収というのは、単に収益源を買うことだけを意味するのではない。チーム、テクノロジー、文化、さまざまな契約関係も買い取ることになる。買い手は、今までに創業者が築いてきたすべてのものを取得しようとしている。業績だけでなく、会社に関するすべてのことに強い関心を持つのも当然だろう。

そのせいで、創業者が腹立たしくなるほど不当な扱いを受ける場合もある。筆者が最初に創業したスタートアップPrism(プリズム)を売却した時も、.NET上に構築したことを厳しく非難する買い手が何人かいた。製品は問題なく動いていたし、収益も安定して伸びていた。技術スタックも効率的で信頼できるものだった。実のところ、こちらが開発したテクノロジーを称賛したかと思えば、その舌の根が乾かぬうちに、同テクノロジーの構築手法をあからさまに批判する買い手も多かった。確かにフェアではないかもしれない。しかし、買い手は、買収対象の会社が生み出している結果だけでなく、その会社のチームと製品を自社に統合する方法も考慮する必要があることを考えれば、まったく当然なことだ。文化、人事採用から、コアタイム、パートナーシップまで幅広い問題について、同じような話を創業者仲間から聞いたことがある。

確かに、常に第一に考えるべきなのは会社の成長だ。しかし、たとえ買い手が出現して質問し始めることがないとしても、自社のビジネスを客観的に見つめることには益がある。組織の中にいると視野が狭くなり、好調なKPIの下で悪化している問題を無視してしまいがちだ。自社を買収する企業の視点で考えることは、問題の早期発見に役立つ。そのような問題点の最も分かりやすい例はセキュリティと会計だが、他にも多くある。発見された問題について何らかの変更を行わない場合でも(例えば、プリズムの売却時に技術スタックを変更することはなかった)、何か異議が唱えられた場合に、正面から取り組むことができるようになる。攻撃はいつでも最大の防御だ。買い手と見解が相違しそうな部分を事前に解消しておけば、その分だけ有利な立場で交渉を進めることができる。

売却交渉の舞台裏

会社の売却は実際にはどのように行われ、事前に準備しておくことでどの程度有利になるのだろうか。売却プロセスには、従来型と「偶然の」出会い型の2つのパターンがある。従来型のプロセスでは、創業者が自社の売却を明示的に表明する。大規模な取引では、投資銀行を使ってプロセスを仕切ってもらうのが普通だ。小規模の取引であれば創業者が自分で取り仕切る傾向がある。いずれにしても、創業者と銀行は買収候補者リストを綿密にチェックして、事業内容をプレゼンテーションする。資金調達のプロセスと同じような感じだ。

出会い型のプロセスはもっと緩やかに進む。買収側が思いがけず興味を示す場合など、本当に「偶然」の出会いのようにプロセスが始まることがある。「偶然の」と角括弧が付いていることには重要な意味がある。創業者は、自社のビジネスの素晴らしさを周囲の人間に何気なく話すことによって、実は潜在的な買い手を探し始めている。中には、このようなアプローチが他より抜きんでて上手な創業者もいるが、ひとたび買い手が本当に関心を示したら、後は通常の売却プロセスと同じだ。売却交渉に競合相手がいないことが理にかなっている環境もあれば、「今は、あの大物と戦うことが前に進む最善の道だ」という言葉が妥当な環境もあるだろう。どちらの環境になってもおかしくない。ほとんどすべての場合において、まずは他の企業が自分の会社の買収に関心を持つようにすることが必要不可欠だ。たとえ最初の買い手に売るつもりであっても、それは変わらない。競り合いになれば売却値が上がり、ほぼすべての事項について交渉を売り手に有利に進めることができるので、たとえ事実でなくても、まるでそれを最初から計画していたかのようにプロセスを進めることが必要だ。

では、「関心」とは何を意味するのだろうか。あいまいな概念だが、通常は、誰か(経営幹部レベルの役職または企業のM&A部門)が代理人を通じて、あなたの会社の買収を検討したいと伝えてきた状態を指す。買い手はこの時、創業者を怖がらせないようにありとあらゆる遠回し表現を駆使する。「親密な関係を構築する」とか、「より体系的で一貫性のある方法で提携する」といった言葉のサラダが並べられる。相手がニューヨークの投資銀行にいたことがある人物なら、テーブルの表面を指でコツコツとつついて意欲をアピールしながら「早速、交渉をまとめましょう」と言うだろう。これらのフレーズはすべて同じこと、すなわち、その人物が代理人を務める企業があなたの会社を買収することを検討している、ということを意味している。

この時点では、企業の全体像を把握するための話し合いが行われる。通常、創業者はここで自社の優れた技術力についていきなり力説するようなことはせず、交渉を有利に進めるためのカード(優れたビジネスモデル、信頼性の高い製品、チームのメンバー間の強い絆、買い手のビジネスにぴったりの製品など)はこちらが持っていることをはっきりと示す。創業者であるあなたと共同創業者、数名の上級エンジニアが買収側企業のオフィスで時間を過ごし、管理部門や生産部門の人間と会って、さまざまな部門がどの程度互いにうまくやっているかを観察する。CEOは買収側のCEO(大企業の場合は部門長)と会って、従業員の福利厚生や買収側企業への移行契約について詳細に議論する。ここでプロからのアドバイスを一つ。「シナジー」とは社員の解雇を意味する。もし、社員の解雇は受け入れられない、という場合は事前のその意思表示を明確にしておくこと。チームの全メンバーを残したいという要望があったとしても、すべての従業員が買収側企業に移ることはめったにない。

最初の数回のミーティングがうまくいったら、次は、交渉プロセスを正式なものにする必要がある。売却のかじ取りをする社内の担当者(CEOの場合もあるが、経営企画部長、部門長、相談役が理想的)を任命すれば、売却取引が成功する確率はぐっと上がるだろう。キーパーソンを1人決めておくと、プロセスが効率的に進むため、創業者は、売却のどさくさのせいでビジネスがさまざまな混乱によってビジネスが破たんすることを防ぐことにのみ集中できる。

このプロセスの初期段階で、Initial Indication of Interest(IOI:初期関心確認書)を買収側に要求してみるとよいだろう。法的拘束力はないが、正直な人物であれば約束を守ってくれる。IOIには、提案された契約の条項、想定される時期、その他の主要契約事項が記載されている。実際はIOIの通りに物事が進まないことも多い。しかし、売却側と買収側で共通の開始点を文書化しておくことは重要だ。NDA(機密保持契約)もこの時期に締結されることが多いが、より正式な形で交渉プロセスを開始した場合にはすでにNDAが締結済みである場合もある。もし他にも買収に名乗りをあげている企業があるなら、この時点で、それらの企業に連絡して、現在「排他交渉中」なので、他の企業とは交渉できないことを伝える必要がある。そうすると、買い手候補企業の関心は一段と高まる場合が多い。それが人間の性だ。そこからは、新たな買い手候補企業とビジネスについて話すことは、ほぼ確実に禁止されるため、交渉が決裂しても、すでに交渉プロセスに入っている別企業に変更することしかできなくなる。

その後は、ゴールに向けて一気に進める。技術デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、セキュリティレビュー、会計レビューなどを行う。これらの調査はすべて、当初の予定より長くかかり、いろいろと頭の痛い問題が出てくる。交渉が頓挫する可能性はいくらでもあるが、デューデリジェンスの結果は大抵、買収側企業の交渉の余地を広げるだけだ。高額で時間のかかる不動産査定のようなもので、今まできちんとメンテナンスを行ってきていれば、査定はスムーズに進む(前のセクションを参照)。

売り手の利害関係者も重要

売却側の投資家、従業員、顧客もすべて、売却交渉の結果に関心を持っている。買い手の立場で考えることも重要だが、売り手側のすべての利害関係者にも配慮する必要がある。個々の交渉によって状況は異なるので、どの状況にも当てはまる一般的なアドバイスをすることは難しい。十分なコミュニケーションを取ることが理想的だ。とりわけ、M&Aを最初に承認する必要があると思われる主要投資家への連絡は重要である。売却交渉が突然始まると、事態が絶望的に感じられ、投資家はまだ交渉の余地が残っている点がないかと必死で考えるだろう。そして、コミュニケーションが不十分なのは経営体制が貧弱なせいだと考えるようになる。それを不当な思い込みだと言うことはできない。

デューディリジェンスプロセスに入ったら、従業員をプロセスに参加させる必要がある。経営幹部をプロセスに参加させることは、適切な最初のステップとなる場合が多い。経営幹部たちに交渉に参加してもらう必要がある。交渉プロセス中および交渉結果について発言権が与えられれば、高い士気を持って売却取引に取り組んでくれる。残念ながら、顧客は売却が公式に発表されるまで待つ必要があるが、公式発表は透明性が高くごまかしのない内容にする必要がある。発表はCEOが行うべきだ。

最後に、ジャーナリスト、ブロガー、ポッドキャストホスト、アドバイザーなど、これまでに支援してくれた人たちにも、不意打ちを食らったと思われないように、事前に連絡を入れておく。買収によって自社製品が混乱に巻き込まれる可能性がある場合は、この連絡が特に重要だ。この売却で自分の評判が危険にさらされる人がいる場合は、その人が売却の話を朝のニュースで初めて知る、というようなことがないように、事前に知らせるよう最善を尽くすべきだ。

セールスリーダーのように考えよ

すべてのCEOはセールスの仕事をしている。投資家へのプレゼンテーション、顧客への販売、重要ポストの採用、買収企業へのアピールなど、すべてセールス活動である。自分の最も重要な資産である会社を売却する準備をするということは、まさにセールスのエキスパートのDNAそのものだ。創業者はセールスリーダーとして考えることを止めてはならない。

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コロナ禍で進化する学生起業

編集部注:本稿はEric Tarczynski(エリック・タルツィンスキ)氏による寄稿記事。同氏は、フェイスブック、テスラなど多数の企業の創業者から支持されているネットワーキング主体のベンチャー企業Contrary(コントラリー)のマネージングディレクター。

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California State University(カリフォルニア州立大学)は2020年秋に始まる新学期の授業はすべてオンラインで行うと発表した。Northeastern University(ノースイースタン大学)は通常体制で再開する。UT Austin(テキサス大学オースティン校)は、感謝祭の休暇までは対面授業を行い、その後にやってくるインフルエンザの流行期にはオンライン授業に切り替えるというハイブリッド型の対応策を予定している。

これは学生起業家にとって、今までに経験したことのない状況だ。従来のリソースやネットワークはまったく機能していない。しかし、起業への意欲に燃える学生たちにとってこれまでは最も希少なリソースであった「時間と集中」が、今はかつてなく豊富に使える。

Facebook(フェイスブック)もMicrosoft(マイクロソフト)もハーバード大学の試験勉強期間(学生が試験準備に集中できるよう授業が休講になる週)に創業されたというのは有名な話だ。今年の春は、いわば長い試験勉強期間のようだった。大学によっては通常の試験勉強期間より課題が少ないところもあった。

低下する授業の優先度

Stanford University(スタンフォード大学)の学部生Markie Wagner(マーキー・ワグナー)さんは、大学が導入した必修単位の「合格・不合格」評価制度をうまく利用している。合格しさえすれば単位が取得でき、レター・グレードによる評価を気にしなくてよいため、マーキーさんと友人たちは思うままに、講義への出席は二の次にして、起業家に会うことやビジネスのアイデアを試すことに力を注げる。

「今学期は完全ハッカソンモードで動く予定。これまでにたくさんの創業者やVCに会って勉強してきたわ」とマーキーさんは語る。最終学年となる来年度は会社の設立に時間をあてたいと考えているマーキーさんにとって、一足先にリサーチや人脈作りを始められるいい機会になっているようだ。

新型コロナウイルスのパンデミックにより大学の閉鎖が長期化した場合、学生たちは、履修単位数が少ない期間が1学期とはいわずもっと長く続く事態に直面せざるを得なくなる。

オンライン授業になっても学費が減額されないことについて、腹立たしく思っていない人はほとんどいない。Contrary(コントラリー)のネットワークに参加している学生の多くがギャップ・イヤー制度の利用を計画している。または、Austin Moninger(オースティン・モニンガー)さんのように、最終学年を丸ごと飛び級しようとしている学生もいる。Rice University(ライス大学)でコンピューターサイエンスを専攻している大学4年生のオースティンさんは当初、2021年春の卒業を予定していたが、今後もオンライン授業が続く見込みを踏まえて卒業を早めることを決めた。現在、フルタイムのソフトウェアエンジニア職に就こうと求職中だ。「結局は経験や人脈を得るために学費を払っているということにみんな気づいたんだ。大学で経験と人脈が得られなくなったんだから、自分の時間とお金は別のところで使った方がいいよね」とオースティンさんは語った。

これは大学の立場を揺るがす事態だ。休学や入学延期を許可してクラス規模や財務状況を危険にさらすか(実際に、Dartmouth’s Tuck School of Business(ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス)はこの理由から、入学延期を許可しないことを決めた)、今後も学費を減額せずにブランドイメージを危険にさらすか、どちらかを選ばなければならない。

一方で、キャンパス閉鎖や授業のオンライン化の影響を大学以上に受けている学生たちもいる。バイオテクノロジーやハードウェアなどの分野でリサーチ主導の起業を目指す学生にとって、目標に向かって進むには高価な実験器具が備わっている大学のラボを使うことが欠かせない。大学で起業と聞くとフェイスブックやSnap(スナップ)などの、純粋にソフトウェアだけが必要な業態を最初に思い浮かべるかもしれないが、すべての学生起業家がそのように設備をあまり必要としない事業を立ち上げているわけではない。

長引くキャンパス閉鎖やオンライン授業が教育そのものに及ぼす影響や、それが創業者に与える長期的な影響も不透明だ。これまで創業者は本格的に起業して利益をあげようとする前に、学位取得に必要な単位をほぼ履修し終えていることが多かった。2020年に入ってから現在までの間に、市場が必要としているスキルと大学が教育しているスキルとのギャップについて観察する機会はまだ得られておらず、この状況は年末まで続くだろう。

高度に技術的なスタートアップを起業する場合を除き、起業に必要な技術的または財務的知識を独学と実践によって習得できる起業家であれば、会社を興すことは可能だ。それを示す絶好の例が、Malwarebytes(マルウェアバイツ)のMarcin Kleczynski(マーチン・クレジンスキー)CEOである。クレジンスキー氏はThe University of Illinois at Urbana–Champaign(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)の1年生だった時に、のちに有名企業となるサイバーセキュリティ企業マルウェアバイツを起業したが、大学ではC評価を得るのに必要最低限の勉強しかしていなかった。

キャンパス環境のバーチャル化

大学のキャンパス閉鎖が始まってからも学生起業家に対するシード投資は鈍化していないとはいえ、起業は相変わらず簡単な仕事ではない。

22歳の学生起業家たちにとって最大の障壁は通常、スタミナ不足でも生意気な性格でもなく、適切な共同創立者を起用し、初期チームを採用するのに必要な人脈を築くことだ。キャンパスにいれば、そのような人材と幸運にも自然に出会える確率は十分高い。しかし、大学の閉鎖が長期化し、オンライン化がその穴を埋めることができなければ、新規起業数も停滞することだろう。

知り合って1年以内の創業者たちが共同でスタートアップを立ち上げることはほとんどない。現時点では、この問題が顕在化するほどの時間はまだたっていない。しかし、学生仲間と深く知り合うことができないキャンパスでは、長期にわたる絆を築くのは不可能だ。

この問題を解決する1つの手段として、コントラリーは今年の春に創業者のためのバーチャルコミュニティを開設した。1つのコミュニティルーム(実際にはSlackのチャンネル)に100人が参加できるようにし、参加者どうしが一緒に時間を過ごす機会や起業のためのツールを提供するというシンプルな仕組みだ。

このコミュニティで参加者がさまざまなアイデアやプロジェクトを試した結果、6週間で150以上のコラボレーションが生まれた。参加した創業者の75%は、リモート作業に移行して以来こんなに生産的に仕事ができたのは初めてだと述べ、コミュニティプログラム終了後には参加者の約70%が自社の業務を続けよう、あるいは新しいプロジェクトを始めようと計画していた。

おそらく、最も特筆すべきは、形成された人脈の幅広さだろう。参加者による交流のほとんどは別の大学に通う学生たちとのものだった。たとえ世界トップレベルといわれる大学でも、1校だけでは全国にいる優秀な人材のうち数パーセントしか集めることができない。バーチャルコミュニティにより、有望な人材をつなぐ人脈をはるかに拡大することができたのである。

Reddit(レディット)のSteve Huffman(スティーブ・ハフマン)氏やKayak(カヤック、現在はLola(ロラ))のPaul English(ポール・イングリッシュ)氏などの成功した起業家によるオフレコ講演会も開催したが、参加者にとって最大の収穫は、このコミュニティに参加しなければ出会えなかったであろう、同じ目的を持つ仲間とつながることができたことだった。このコミュニティプログラムは、大学の閉鎖により失われた幸運な出会いを人工的に創り出し、それを「話すよりも行動する実際の機会」という、起業に欠かせないもう1つの材料と混ぜ合わせたのである。

大学はツールセットのようだと考えることができる。教育、人脈、資格、社会的学習などすべてが1つの総合的な経験を形成している。

しかし、ここ10年ほどは、大学が提供していたそのような価値の大部分が他の組織に侵食されてきていた。

例えば、Thiel Fellowship(ティール・フェローシップ)に応募するか、有名企業の実績あるインターンシップに参加すれば才能があることを証明できるし、Scott Kupor(スコット・カーパ)氏の著作Paul Graham(ポール・グレアム)氏のブログを読めばベンチャー起業について学ぶことができる。

つい最近まで、大学が提供する主な「ネットワーク効果」は、優れた実績を持つ人物に会うためにはキャンパスに行かなければならない、という事実の上に成り立っていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で人との交流の大部分がクラウド上へとシフトした今、その定石に従わなくても人脈が作れるようになったのだ。

学生起業家の未来は明るい

新型コロナウイルス感染者数が横ばいになり、いずれはゼロになることを誰もが望んでいる。しかし、その時が来るまで、学生起業家は資金調達、人脈や信用の構築、学習の場を学外で探して集中的に活用していく必要があるだろう。

コントラリー、Slack(スラック)、Y Combinator(ワイ・コンビネーター)、AWSの無料クレジットがもし存在していなかったら、大学の閉鎖は学生起業家にとって死刑宣告と同じだっただろう。しかし、シリコンバレーとつながってビジネスを始める方法は大学以外にも数多くある今、意外なことに状況はコロナ禍前後でほとんど変わっていないのである。

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(翻訳:Dragonfly)

イノベーティブな起業家を動かすものは「金」か「利他主義」か?

新型コロナウイルス(COVID-19)に完全に飲み込まれたこの新しい世界では、難局を打開しようとさまざまなイノベーションが湧き上がっている。3Dプリンターは医療用具を次々に作り出す(Technology Review記事)。検査方法は急速に進歩(Bloomberg記事)し、5分で結果がわかるようになった。教師たちは完全なオンライン授業のためにカリキュラムを作り変えた(Quartz記事)。これは人類とウイルスとの戦いだ。世界はできる限り迅速に対応しようとしている。

そんな中で先日、シリコンバレーを代表する投資家と起業家精神を鼓舞するものについて話し合った。彼の場合、そしてシリコンバレーの彼の仲間たちも含め、答は明らかだった。人はヒーローへの憧れに突き動かされる。その野望は、勝者として認められたい、そしてそれがもたらす富を享受したいという永遠に満たされぬ渇きに根ざしている。

だがこの認識には問題がある。新型コロナウイルスに対処している数多くのイノベーターたちは、そこに含まれないからだ。貧困、公衆衛生、教育といった難しい問題の解決に情熱を燃やす人々だ。MIT Solveで、100人を超える国際的な社会起業家たちと密接に仕事をしてきた私は、シリコンバレーのヒーローたちとはまったく異なる人物像があることに気がついていた。私が知る起業家たちは、本当の問題を解決したいと考えている。インフルエンサーやNetflixのスターを目指してはいるわけではない。

例えば、子供の発達を促すツールを両親に提供する「Kinedu」(キネデュー)アプリの開発者であるLuis Garza(ルイス・ガーザ)氏だ。中南米の育児チェーンで働いていた彼は、初めて子どもを持った親たちの、赤ちゃんの育児に対する不安を感じていた。彼は、何をすべきかをみんなに教え「自分はいい親だと自覚させる」ための方法はないかを模索した。開発以来Kineduは、400万人の生活に大きな影響を与え、いまは新型コロナウイルス対応として、家で孤立して助けを求めているすべての親に無料のサブスクリプションを提供している。

イノベーションの誘因を評価する目的で最近行ったコロンビア・ビジネス・スクールとカーネギーメロン大学との共同実験では同じ結論が示された。すべての起業家が富と名声のために動いているわけではないというものだ。もし富と名声が誘因だとすれば、そうでない人たち、つまり「ヘルパー」起業家たちは排除されてしまうことになる。

我々は世界76各国の1万1000人の起業家に電子メールを送り、Solveが主催する「Global Challenges」(グローバル・チャレンジズ)への参加を呼び掛けた。独自のビジネスソリューションを提出し、審査に合格すれば資金、指導、援助が受けられるというプログラムだ。各自には、次の3つのメッセージのうちひとつがランダムに送られた。ひとつは社会的影響を強調するもの。ひとつは賞としての資金援助を強調したもの。もうひとつは神経抑制的なものだ。私たちは彼らからの申し込みメールを見て、どのメッセージがもっとも響いたかを評価した。

その結果、女性には社会的影響がもっとも大きな誘因になり、一方男性は資金が誘因になることが多いことがわかった。国の文化も影響していた。利他的な文化を持つ国の人たちは社会的影響に動かされることが多く、そうでない国の人たちは資金が誘因になることが多かった。

性別、文化、経歴などに関して真にインクルーシブになるためには、意図的に起業家を刺激し支援する方法を考えるなければならない。私たちはそのヒーローとヘルパーという2つの本能に訴える必要がある。だが、多様な参加者を呼び寄せるための言葉選びは、第一段階に過ぎない。ここに、多様なイノベーターを意識的に鼓舞したいと考える投資家や支援者のための3つのガイドラインを示そう。

起業家の参入のハードルを下げる

申し込み書には難解な業界用語を使わない。イノベーターにピッチの指導をして準備させる。使命によって突き動かされたことをアピールする言葉を選び、単に金目当てのイノベーターでないことを示す。以上のことを守れば、MBAやハイテク業界での経歴を持たないイノベーターも、いつでも気軽にプログラムに申し込めるようになる。その代表がコメディアンからスタートアップ創設者に転身したArturo Hernández(アルトゥーロ・エルナンデス)氏だ。彼はSupercívicos(スーペルシビコス)という、都市インフラで問題のある地点を記録し、行政が対応できるようクラウドソース化するという、150万人の利用者を擁するアプリを開発した。

起業家の「有望性」の定義を広げる

「右肩上がり」の急成長で次なるユニコーン企業を築く有望なベンチャーの判断基準はパーカーを着た起業家、というのはいつ決まったのだろうか? シマウマ(利益と使命という2色の目的を生き残りのために協調させている起業家が実際にいる)ではダメなのか? Nicole Bassett(ニコール・バセット)氏はThe Renewal Workshop(ザ・リニューアル・ワークショップ)を共同創設した。彼女は、アパレルと繊維ブランドのために廃棄物ゼロの循環型ソリューションを提供している。彼女は衣服のリサイクルとアップサイクルのための新しいビジネスモデルを急成長させ、営利目的のスタートアップとして利益を追求しながら、およそ45万トンの繊維製品を埋め立て処分から救い出した。

資金提供を超える支援を

新しいベンチャーを興すには、資金はきわめて重要だが、社会起業家には技術的専門性や指導も同じぐらい重要であると認識しなければいけない。一流の起業家から指導を受けた創設者は、自社を一流企業を育てられる可能性が3倍高くなる。データと分析の技能を訓練するプラットフォームRefactored.ai(リファクタード・エーアイ)を作り上げたRam Katamaraja(ラム・カタマラジャ)氏の場合を見てみよう。彼は規模の拡大のためのマーケティングとブランディングの支援を必要としていたが、指導によって「大混乱と恐怖に陥りがちなそのプロセスが、満足のいく、非常に生産性の高いものに変わった」と話している。Refactored.aiは8000人以上のユーザーの技能を高めてきた。

有望な起業家に対する理解を広げ、プログラム参加へのハードルを下げ、個々に即した支援を行わないかぎり、戦局を変えてこのパンデミックを克服する数々のアイデアを、私たちは無視してしまうことになる。その結果、大きな問題が解決されないまま残され、大きなコミュニティーが放置されることになる。

【編集者注】著者のHala Hanna(ハーラ・ハンナ)は、社会的インパクトのあるイノベーションのマーケットプレイスMIT Solveのマネージング・ディレクター、コミュニティー担当。

画像クレジット:Luisella Sem/EyeEm / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)