【コラム】システム思考は世界の女性に害を与える慣習を終わらせるのに役立つ

世界の有害な慣行や問題の多くは、戦うのが難しく、終わらせるのが複雑すぎると言われている。極度の貧困、食糧不安、ジェンダーに基づく暴力、その他の人道的危機などの問題は、しばしば乗り越えられないと感じられることがある。これらの問題は、世界の貧困層に不均衡な影響を与える気候変動という存亡の危機によって悪化している。中でも子ども、女性、障がい者は最も脆弱であり、適応するのも困難だ。

これらの問題は信じられないほど複雑だ。しかし、解決不可能な問題ではない。

なぜ、わかるのか?私は、女性器切除と強制結婚の廃止に取り組むプロジェクトのグループと一緒に仕事をしたからだ。そして、私たちが協力したケニアのコミュニティでは、これらの有害な慣習は一世代のうちに、時には10年未満で終了した。

30年以上テクノロジーの世界に身を置き、Microsoft(マイクロソフト)では長年、さまざまな業界や教育機関のデジタル変革を支援する仕事に携わってきた私は、自分が学んだことを複雑なグローバル問題に適用しようと考えた。10年以上にわたって、World Vision(ワールド・ビジョン)やGlobal Give Back Circle(グローバル・ギブ・バック・サークル)、そして最近では私自身の団体であるMekuno Project(メクノ・プロジェクト)を通じて、女性器切除や児童婚など、ジェンダーに基づく暴力の問題に取り組んできた。

私がテクノロジーのキャリアで学んだことのいくつかは、公共部門や非営利団体にも応用できる。ここでは、特に人権を向上させ、有害な慣習をなくそうとする組織のために役立つ洞察と戦術を紹介する。

システム思考を応用した多面的な問題の理解と解決

テクノロジーの仕事をしている人は、システム思考に馴染みがあるかもしれない。簡単に言えば、複雑な問題をより小さな論理的な部分に分解して考える分析手法だ。システムを一連の部分としてではなく、全体として捉えながら、システムのさまざまな部分がどのように相互作用しているかを理解することが必要だ。その目的は、最終的に複雑なものを単純化することであり、Microsoftが社内文化の見直しを図った際に適用された

例えば、ケニアにおけるジェンダーに基づく暴力の問題を考える場合、システム思考では、強制結婚といった特定の問題を超えて、なぜその問題がそもそも存在するのかという大局を見据えることが求められる。

単に問題に目を向けるだけでは不十分で、その問題が存在する生態系に目を向ける必要があるのだ。例えば、女性器切除や児童婚は、孤立して存在するものではない。それらは、極度の貧困、文化的規範、非識字率の高さなどと関連しており、これらすべてが農村地域の少女たちに不当に影響を及ぼしている。これらの危険因子は、気候変動と新型コロナウイルス(COVID-19)の流行によっても悪化し、両方の有害な慣習の割合の急増につながっている。このような根本的な原因がコミュニティに影響を与え続けるため、このサイクルは次の世代へと続くことが多いのである。

有害な習慣をなくすには、パートナーの協力のもと、現場で全体的かつ拡張可能な、相互作用のあるアプローチが必要だ。これなくして、どのような介入も持続可能な変化をもたらすことはできない。

私たちは、世界的な問題や有害な慣行が存在する理由を理解することで、それらを取り除くことができる。システム思考は、大局的な見地から、これらの問題を解決することを可能にする。

人を巻き込むデザインを通してコミュニティを活性化する

ジェンダーに起因する暴力を含む問題を、地域社会の総体的なアプローチによって解消することは、1つの地域社会で機能するだけでなく、複数の組織が目標達成のために協力すれば、規模を拡大することもできる。

しかし、コミュニティへの信頼が育たないやり方もあり、常にコミュニティの条件での成功を優先させなければならない。人を巻き込むデザインは共感に根ざしている。つまり、コミュニティとの信頼関係、包括性、そして共有のビジョンを構築するために、そのコミュニティにとって何が有効かを学ぶつもりで耳を傾けなければなない。

このように共感することで、より早く変革的な変化をもたらす新しいイノベーションを生み出すことができる。私たちが支援しようとしているコミュニティの中で協力体制を築けなければ、持続可能で大規模な変化をもたらすことはできない。

地域社会を巻き込み、共感をもって耳を傾け、解決策を共同で創造し、透明性をもってコミュニケーションを図り、地域社会のニーズや懸念を尊重し優先することが、複雑な問題を解決する上で最も重要なことなのだ。

コミュニティの信仰指導者を巻き込む

これは、多くのコミュニティで根深い問題を解決するために重要であり、見落とされがちな点だ。

The Gates Foundation(ゲイツ財団)の副理事長であるBlessing Omakwu(ブレッシング・オマクウ)氏は、宗教的なパートナーの関与なくしてジェンダーの平等は実現できないし、実現することもないだろうと述べている。宗教指導者はコミュニティで最も信頼されている人物であることが多く、オーガニゼーションがコミュニティと関わるための道徳的な枠組みを作る手助けをすることができる。実際、World Economic Forum(世界経済フォーラム)は、信仰指導者はコミュニティとの協働において未開発の資源であると述べている

私たちが抱える問題は、乗り越えられない、解決不可能なものに見えるかもしれないが、決してそうではない。世界最大の問題の多くを解決する鍵は、個々に取り組むことではなく、相互に関連する考え方で取り組むことだ。なぜなら、最大の問題は他の問題から独立して存在するわけではないからだ。そして、今日の相互に関連しあっている世界で、私たちはそれらの問題の解決に向けて動き出すことができる。そして、多角的な戦略を用いることで、一世代のうちにより良い世界を作り始めることができるのだ。

編集部注:執筆者のMargo Day(マーゴ・デイ)氏は、ケニアで女性器切除と児童婚の根本原因を取り除くために活動する非営利団体Mekuno Project(メクノ・プロジェクト)のCEO兼共同設立者。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Margo Day、翻訳:Yuta Kaminishi)

Rivianが有害な「ボーイズクラブ文化」で女性の元副社長に性差別訴訟を起こされる

このほどIPOを申請した電気自動車メーカーのRivian(リビアン)が、元営業・マーケティング担当副社長から性差別の疑いで訴えられた。

この訴訟では、2020年11月にRivianに入社する前にJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)やAston Martin(アストン・マーティン)で長い職歴を持っていた元営業・マーケティング担当のLaura Schwab(ローラ・シュワブ)氏が、同社の人事部に性差別を報告した後に解雇された、としている。米国時間11月4日にオレンジ郡のカリフォルニア高等裁判所に訴状が提出された。

Rivianの広報担当者はTechCrunchに対し、株式公開を控えた静粛期間にあるため、コメントは出せないと話した。

シュワブ氏は、米仲裁協会(AAA)に主張の声明を提出し、Mediumに掲載されたブログ記事の中で自身の主張を述べている。TechCrunchが閲覧したAAAの声明では、同社の上層部における「有害な兄弟文化」について述べられている。この訴訟では、シュワブ氏は問題を指摘しようとしても上司に度々無視されていたと主張している。また、男性の同僚が出席する会議からもよく排除され、シュワブ氏のチームに関する決定は同氏の意見を無視して行われていたと、声明には書かれている。また、AAAに出した声明によると「Rivianの誤解を招くような公表や欠陥のあるビジネス慣行」に関する彼女の懸念は却下されたという。

シュワブ氏が「ボーイズクラブ文化と、経営幹部から受けていた性差別」について人事部に話したところ、Rivianは突然彼女を解雇した、と声明にはある。

ブログの中で、シュワブ氏は次のように書いている。

Rivianは自社文化を公に自慢しています。ですから、私が入社してすぐに、女性を疎外し、会社のミスを助長するような有害な兄弟文化を経験したときは、痛烈なショックを受けました。上司からの性差別「ボーイズクラブ」文化、そしてそれが私や私のチーム、会社に与えている影響について、私は人事部に懸念を示しました。その2日後、上司は私を解雇しました。

この訴訟は、Amazon(アマゾン)の支援を受けているRivianが、2021年最も期待されている上場の1つを行う準備をしている中で起こされた。規制当局に提出された直近の書類によると、Rivianは新規株式公開で最大84億ドル(約9560億円)の資金調達を計画している。同社は、1億3500万株を57〜62ドル(約6480〜7055円)の価格で提供する予定だ。また、引受人は2025万株まで追加購入できるオプションを持っている。引受人がこのオプションを行使した場合、Rivianは最大で96億ドル(約1兆925億円)を調達することになる。

発行済み株式数に基づくと、その市場評価額は約530億ドル(約6兆320億円)になる。従業員のストックオプションやその他の制限付き株式を考慮すると、評価額は600億ドル(約6兆8290億円)にもなる。同社は10月1日に米国での上場を申請した。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi)

Netflix社員がトランスジェンダーの連帯を受けてストライキと要求リスト提示を計画

米国時間10月20日、Netflixの従業員が10月5日に封切られたデイヴ・シャペル・スペシャルに対する同社の取り扱いをめぐってストライキを行った。それと同時にロサンゼルスのトランスジェンダー活動家Ashlee Marie Preston(アシュリー・マリー・プレストン)氏が、ストライキに参加しているNetflixの従業員への連帯集会を主催した。その集会のために作られた動画では「Queer Eye(クィア・アイ)」のJonathan Van Ness(ジョナサン・ヴァン・ネス)や「Cowboy Bebop(カウボーイビバップ)」と「The Sandman(サンドマン)」のMason Alexander Park(メイソン・アレクサンダー・パーク)といったNetflixのスターたちが、その他のハリウッドスターや、Angelica Ross(アンジェリカ・ロス)、Jameela Jamil(ジャミーラ・ジャミル)、Kate Bornstein(ケイト・ボーンスタイン)、Our Lady J(アワー・レディ・J)、Sara Ramirez(サラ・ラミレス)、Peppermint(ペパーミント)、Colton Haynes(コルトン・ヘインズ)らのトランスジェンダー擁護者とともに連帯を表明した。

Netflixの広報担当者は「私たちはトランスジェンダーの同僚や協力者を大切に思っており、ストライキを行った社員の決定も尊重します。また私たちは、Netflixのコンテンツ内にも、やるべき多くの仕事があることも認識しています」とTechCrunchに述べている。

従業員のストライキや連帯集会の正確な参加者数は不明だが、プレストン氏が先手を打ってもっとスペースのある場所に移動させたことで、周辺では大きな騒ぎとなった。

ストライキに参加した従業員が求めているのは、Netflixが「トランスフォビアやヘイトスピーチのプラットフォームにならないための対策を講じること」と書簡に記している。彼らは、コンテンツへの投資や従業員関係、安全、被害の縮減などの分野でNetflixが対応すべき要求のリストを作っている。

コンテンツでは、Netflixがトランスジェンダーやノンバイナリーの人材への投資を増やすことと、有害の可能性のあるコンテンツに関しては話し合いに被雇用者専門集団を参加させること、製作担当役員としてトランスとノンバイナリーを増やすこと、センシティブな作品については検討委員会の内部手続きを改定することを要求している。従業員関係と安全については、トランスやBIPOC(黒人、先住民、その他有色人種)を上級管理職に雇用することと、ダイバーシティや差別解消の宣伝動画への出演を拒否(あるいは前作からの消去)できること、そしてトランスフォビックのタイトルやタレントの利用を避けることが求められている。被害の縮減に関しては、Netflixがトランスフォビックのプラットフォームなることによって加害者になることを認め、そんなタイトルを使う場合は免責事項があること、トランスを肯定するタイトルに変えること、反トランスとされている作品については、トランス肯定のコンテンツを提案せよとしている。

要求には、今回の騒動の元となったデイブ・シャペル・スペシャルのNetflixからの削除は含まれていない。それは最初、トランスフォビック発言のプラットフォームになることを懸念する一部のNetflix従業員と会員からの反発を浴びた。

The Hollywood Reporterのインタビューで、共同CEOのTed Sarandos(テッド・サランドス)氏は、要求への応否を明言しなかった。

「この2、3日の間、人々の声に耳を傾け、彼らがどう感じているか、何を望んでいるかを聞き出すことに専念してきました。私たちは、スクリーン上でも、カメラの後ろでも、そして職場においても、インクルージョンに深くコミットしていることをお伝えしたいと思います」とサランドス氏は述べた。

ストで不在です。

シャペルの特別番組の前にトランスフォビアに関する免責事項を追加して欲しいという要求に対してサランドス氏は、あまり乗り気でないようだった。

「コンテンツにすでに年齢制限があり、番組の冒頭でデイブ自身がはっきりと警告しているため、これに関しては不要だと思う」とサランドス氏はいう。

Netflixがシャペル・スペシャルを公開する前から、従業員たちは反トランスのジョークがあることに懸念を表明していた。シャペルは、自分が「チームTERF」であると宣言し、トランスジェンダー運動に反対する女性過激集団の名を具体的に挙げていた。しかしサランドス氏は社内のメールでもその特別番組を擁護し「画面上のコンテンツが現実の害になることはない」という。しかし批判を浴びた彼はその後のThe Hollywood Reporterで「画面上のコンテンツが現実世界でインパクトを持つこともありうると、私は100%信じている。肯定的なインパクトもあれば、ネガティブなインパクトもある」という。

カリフォルニア州ロサンゼルス、10月20日。トランス派の従業員と賛同者たちがカリフォルニア州ロサンゼルスで、2021年10月20日にデイヴ・シャペル・スペシャルに抗議してNetflixでストライキを行い、その壇上でライターで監督のJoey Soloway(ル・ソロウェイ)氏がスピーチしている。Netflixが放映を決めたシャペル・スペシャルには、トランスジェンダーの人たちに関するジョークがあり、すでに一部の従業員が懸念の声を上げていたにもかかわらず、会社はそれを無視した。(画像クレジット:Rodin Eckenroth/Getty Images)

自身もトランスジェンダーであるNetflixのシニアソフトウェアエンジニアTerra Field(テラ・フィールド)氏が、シャペル・スペシャルに関するバイラルなスレッドをツイートしている。

私たち自身は被害者でもなければ、神経過敏でもない。私たちが反対しているのは、今後このようなコンテンツがトランスのコミュニティに及ぼす被害に対してだ。特に有色のトランス、トランスの黒人女性への悪影響が大きい

報道によると、フィールド氏はその後、他の2人の社員とともに、トップのオンライン会議に出席しようとしたため、停職処分を受けました。しかし、Netflixは、ある取締役が会議のリンクを彼女と共有し、出席しても問題ないことをほのめかしていたことを発見し、彼女を復職させた。取締役級の上司同伴ならOKのようだ。

 

真実も多少はある。Netflixは多くの人の生活を変えたすばらしい企業だ。Netflixは大失敗を犯した。しかし、ここが分岐点だ。Netflixの社員としての私たちには、このプラットフォームの上や外に変化を作り出す特権と責任がある。

そのすぐ後に、Netflixのトランス社員のリソースグループがストライキの組織化を開始した。しかし、その組織者で、黒人とトランス両方の社員のリソースグループのグローバルなリーダーであるB. Pagels-Minor(B・ページ-マイナー)氏たちは、米国時間10月15日に解雇された。これらの解雇で、Netflixに対する反発は一層激化した。

関連記事:Netflixがトランスジェンダーの従業員によるストライキを計画した社員を解雇

先週、Netflixの代表者はTechCrunchに対して「当社は、商業上の機密情報を社外で共有した従業員を解雇しました。この社員がNetflixへの失望や被害が動機となっていることは理解していますが、信頼と透明性の文化を維持することは当社の中核をなすものです」という。

TechCrunchはB・ページ-マイナー氏らに接触できたが、彼らのコメントは得られなかった。

その問題のリーク情報は、Bloombergの記事に登場する「The Closer」に関する内部的な数字のようで、Netflixはその1回かぎりの特別番組に2410万ドル(約27億4000万円)を投じたという。一方、同社はBo Burnham(ボー・バーナム)の最近のコメディ・スペシャル「Inside(明けても暮れても巣ごもり)」に390万ドル(約4億4000万円)、9話で構成される大人気の「Squid Game(イカゲーム)」には2140万ドル(約24億3000万円)投じた。後者は、Netflixのデビュー番組としては過去最高の視聴率だった。

Netflixによると、その社員はコンテンツを外部にシェアしたことを認めた。しかしページ-マイナー氏の弁護士がThe New York Timesに今週語っているところによると「ページ-マイナー氏はセンシティブな情報をプレスにリークしたことを強く否定している」という。この状況に詳しいNetflix社員によると、ページ-マイナー氏がこれらの文書をリークしたことは非常に疑わしいとみんなが思っているという。なぜなら、2人とも上場企業のチャットでリークすることには批判的だったからだ。

Netflixによると、同社の内部的アクセスのログによると、Bloombergの記事の中で言及されている番組に関するセンシティブなデータを見た人物は1人だけだったという。

画像クレジット:Al Seib/Los Angeles Times/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

メルカリCEO山田氏がダイバーシティ&インクルージョン推進財団設立、高校入学時点で理系を目指す女性100名に奨学金支給

メルカリCEOの山田進太郎氏が財団設立、高校入学時点で理系を目指す女性100名に奨学金支給

メルカリ代表取締役CEOの山田進太郎氏は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進していくため、「山田進太郎D&I財団」を7月1日に設立したと発表した。第1弾として、「高校入学時点で理系を目指す女性」最大100名に対して奨学金を支給するプログラムを開始する。今後総額30億円を財団に寄贈し、D&I推進のための取り組みを行う。第2弾以降のプロジェクトとしては、第1弾の対象ではない高校へ進学した・する方も対象にできるように検討中という。

また、理系に興味のある女子中学生を対象に、理系職で活躍する女性研究者や起業家が登壇するオンラインイベントを8月22日に開催する。

メルカリCEOの山田進太郎氏が財団設立、高校入学時点で理系を目指す女性100名に奨学金支給

山田氏は、これまで企業活動を通じてD&Iの推進に取り組んできたものの、中長期な取り組みは営利企業では難しいことも多くあると感じ、一般財団法人を設立したという。ジェンダー・人種・年齢・宗教などに関わらず誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現を目指すとしている。

同財団は、初の取り組みとして、理系職種が男性に偏り、国内の女性エンジニア比率は20%にとどまる(情報サービス産業協会「2019 年版 情報サービス産業 基本統計調査」)などジェンダーバランスが崩れているという課題に注目。この背景には、日本の大学における理工学系女性比率が18.15%とOECDの中でも最低という現状がある(令和2年度 文部科学省 学校基本調査 関係学科別 大学入学状況より)。また、中学生時点では理系科目の成績の男女差はないにも関わらず、周囲の反対やロールモデルの欠如から、進学時に文系を選択する女子学生が多くなっているという。

このような状況をふまえ、同財団は、中長期的な課題解決として中高生教育の時点で理系を選ぶ女子学生の増加に取り組む。目標として、大学における理工学部系の女性比率を2035年までに28%まで伸ばすことを目指す。

「高校入学時点で理系を目指す女性」100名に対して奨学金を支給

第1弾として「高校入学時点で理系を目指す女性」100名に対して奨学金を支給するプログラムを開始する。これにより、理系科目が好き・得意、あるいは理系職種に興味があるにも関わらず、周囲の環境からイメージがつかめない、または金銭的な問題で諦めているなどの女子学生が自身の可能性を広げるために理系を選ぶことを後押しする。

同奨学金プログラムでは、応募・選考・支給などのプロセスを極力オンライン化することで、劇的な効率化を目指し、将来的には常時1000名以上への支給を目指す。

また、より多くの方に興味を持って気軽に応募できるよう、能力主義ではなく抽選制で支給者を決定する。応募のハードルを下げるため、面接も行わない(ただし、多様性などの観点から調整を行う可能性はある)。

奨学金募集概要

  • 募集期間:2021年8月4日~9月30日
  • 対象高校:日本国内の高等学校理数科、令和3年度スーパーサイエンスハイスクール指定高等学校、または高等専門学校を受験し入学予定(中学校からの内部進学者を除く)
  • 選考方法:選考は書類審査と抽選により実施。抽選では、同財団が掲げるミッションであるD&Iなどの観点から調整を行うことがある
  • 支給金額:国公立学校25万円(年額)、私立学校50万円(年額)
  • 支給方法と時期:2022年5月頃、指定の口座への振り込みを予定。最大高校在学中の3年間、高専在学中の5年間の支給(ただし継続審査を行う)
  • 採用人数:最大100名程度
  • 応募方法:財団サイト上の「エントリーフォームより応募
  • その他支給条件:他の奨学金との併用可。休学・復学・転学・退学や、停学・除籍等の処分を受けた際、正規の最短修業年限での成業の見込みが立たなくなった場合等は給付を中止することがある。負傷、疫病などで就学が困難になった場合や、氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどの重要事項に変更がある場合には必ず問い合わせフォームより連絡

オンラインイベント概要

  • タイトル:活躍中の先輩が語るSTEM(理系)の面白さ
  • 日時:2021年8月22日17:00〜18:00(オンライン)
  • 対象:理系に興味のある女子中学生
  • 参加料:無料
  • 内容:第1部は「理系職先輩のパネルディスカッション&QA」。登壇者は、スプツニ子!氏(アーティスト/東京藝術大学デザイン科准教授)、高橋祥子氏(ジーンクエスト代表取締役社長/ユーグレナ執行役員、農学博士(生命科学分野))、大隅典子氏(東北大学副学長・附属図書館長・大学院医学系研究科教授)、山田進太郎氏(同財団代表理事/メルカリ 代表取締役CEO)。第2部は奨学金の概要、第3部は事務局QA
  • 申し込み:「8月22日【女性中学生向け】オンライン配信イベント開催のお知らせ」より応募(学校推薦は不要)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インクルージョン(用語)学生(用語)教育 / EdTech / エドテック(用語)ジェンダー(用語)STEM教育(用語)ダイバーシティ / 多様性(用語)メルカリ / Mercari(企業)山田進太郎D&I財団(組織)日本(国・地域)

分散型投資組織「Komorebi Collective」が女性・ノンバイナリーの暗号分野創業者を支援するために発足

ここ数カ月、分散型通貨の伸びにともない、投資家グループがユニットとして資金を投入し、その投資に対し集合的に議決権を行使する手段として、DAO(Decentralized Autonomous Organizations、分散型自律組織)が注目されている。DAOは、ブロックチェーンの精神に基づき、投資意思決定の透明性を高めることを目的としている。

暗号資産ブームの熱気が高まる中、ここ数カ月の間にハイプロファイルのDAOが続々と誕生している。米国時間5月21日に発足した「Komorebi Collective」(日本語の「木漏れ日」から取ったもの)は、ブロックチェーン分野の女性たちによって設立された新しい組織だ。創設メンバーのManasi Vora(マナシ・ヴォラ)氏がTechCrunchに語ったところによると「卓越した女性およびノンバイナリーの暗号分野創業者」に限定して投資を行うとのこと。

このグループはヴォラ氏をはじめ、Eva Wu(エヴァ・ウー)氏、Kristie Huang(クリスティー・ファン)氏、Medha Kothari(メダ・コータリ)氏、Kinjal Shah(キンジャル・シャー)氏など、主にブロックチェーン関連の非営利団体she256Women in Blockchainの組織から集められたコアチームメンバーで構成されており、彼女らが集団として、投資先を見つけグループに提示するための大部分の作業を行う。厳選されたその他のメンバーは最低5000ドル(約54万円)をコミットしているが、より軽いコミットメントとなる。

それぞれの投資案件は、大多数が女性の主要メンバー36名の投票によって決定される。

暗号資産VC企業Blockchain Capitalの投資家でもあるシャー氏はこう語った。「DAOは、みんなが議決権を持てるようにすることで、ベンチャーファンドのヒエラルキーをより公平にします。私たちは、本当にミッションが合致した支援者にアプローチするよう細心の注意をはらっています」。

DAOの他のメンバーには、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、Mechanism Capital、Dragonfly Capital、IDEO CoLab Ventures、Stacks Acceleratorなどの企業に加え、Twitter(ツイッター)、Coinbase(コインベース)、Skynet Labs、Celo Labs、Gitcoinなどで働く多くの個人や創業者が含まれている。

組織自体は、Komorebi Collectiveと一部支援者が共通するプロジェクトであるSyndicate Protocolをベースに構築されている。

同グループは、自分たちの組織の構造が、DAOモデルの持続可能性を証明すると同時に、暗号資産分野における多様性を向上させるようなミッション・ベースのアプローチを取れるようになることを期待している。ここ1年でスタートアップへの投資は爆発的に増加したにもかかわらず、女性が率いるスタートアップは2020年に投資されたベンチャー資金のわずか2.3%しか受け取っていないことが、HBRの調査で明らかになった。

シャー氏はTechCrunchに語った。「女性の創業者が資金を得ることに関しては、まだまだ成長の余地があり、私はそのソリューションの一部になりたいと思っています」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Komorebi Collective女性ジェンダー暗号資産

画像クレジット:James A. Guilliam/Taxi / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

マリオ風ゲームで女の子にコーディングを教えるErase All Kittensが1.08億円のシード投資を調達

Erase All Kittens創設者ディー・サイガル氏とレオニー・バン・ダー・リンダ氏

Erase All Kittens(EAK、イレース・オール・キトゥンズ)は、8歳から12歳の子ども向けに「マリオ・スタイル」のウェブゲームを開発したEdTech系スタートアップだ。ただし、このゲームには特別な仕かけがある。女の子のコーディング学習の意欲を湧かせるゲームなのだと、同社は強調する(ほとんどのコードは男性が書いているのが現実だからだ)。100を超える国々でプレイヤーが16万人に達した現在、同社はTwinkl Educational Publishing(トウィンクル・エデュケーション・パブリッシング)主導のシードラウンド投資100万ドル(約1億800万円)を調達した。このラウンドには、A Black Square(エイ・ブラック・スクエア)ファミリーオフィスのChristian Reyntjens(クリスチャン・レンジェンス)氏が初めて参加し、その他以前からの支援者であるShazam(シャザム)の創設者の1人も加わっている。

これまでのEAKゲームは無料だったが、2021年7月に公開される新しいゲームは有料化される予定だ。これにより、製品のビジネスモデルを強化する狙いがある。

EAKによれば、プレイヤーの55%は女の子で、95%はゲームをプレイした後に、コーディングのことをもっと学びたいと思うようになったという。現在EAKは、3000の学校で利用されている。そのほとんどは英国と米国だが、パンデミックによるロックダウンの影響で、トラクションは500%まで伸びた。

コーディング教育用のツールは、大半が男性によって作られているため、自然と男の子にアピールするものになっているというのがEAKの主張だ。非常に硬直的で指導的な形で繰り返しコーディングを教え込むやり方は、女の子よりも男の子の心に訴えるものだとEAKは話す。

女性チームによって創設されたこの企業には、子どもたち、特に女の子がコーディングに対する考え方を改めさせるプラットフォームがある。2年間の研究開発の結果、高度にゲーム化された物語形式の遊びを通じて、HTML、CSS、Javascriptなどのスキルを、8歳からの子どもや女の子が学べるゲームが完成した。たとえば子どもたちは、ゲームの旅の間にキャラクターたちとチャットができる。その中には、熟練の起業家でユニコーンの人魚Tarquin Glitterquiff(ターキン・グリッタークイフ)というキャラクターもいる。

「プレイヤーは、夢のインターネット宇宙に暮らす仔猫たちを救うために、ゲームをプレイしながらレベルを作ったり修正したりして、コード編集によりゲーム環境を管理します」と共同創設者でCEOとクリエイティブディレクターを務めるDee Saigal(ディー・サイガル)氏は話す。サイガル氏のチームに加わったのは、共同創設者Leonie Van Der Linde(レオニー・バン・ダー・リンダ)氏、CTOのRex Van Der Spuy(レックス・バン・ダー・スプイ)氏、上級ゲーム開発者Jeremy Keen(ジェレミー・キーン)氏、2DゲームアーティストMikhail Malkin(ミクヘイル・マルキン)氏だ。

画像クレジット:Erase All Kittens game

現行のゲームはHTMLの技術とURLの作り方を教えるものだが、新しいゲーム(2021年7月に公開予定)では、HTML、CSS、Javascriptのスキルが学べる。コーディングの理論を学んでも、すぐに実際の開発者のようにウェブ上でゲームが作れるわけではなく、そこには大きなギャップがある。それを埋めようという狙いだ。

サイガル氏はこう話す。「私たちは、女の子が本当に好きになれるコーディングゲームを開発しています。そこでは、創造性が大きな柱になっています。コードを書けば、すぐにその結果が見られます。ゲームの進め方にはいくつもの道があり、物語の中にコーディング学習が溶け込んでいます」。

さらに同氏は続ける。「私は小さいころ、ゲームデザイナーに憧れていました。ゲームのアイデアを考えるのが大好きだったのですが、コーディングはまったく太刀打ちできない難関に感じていました。学校ではコーディングは教えてくれません。私と同じようにゲームを作りたいと思っている人も周囲にはいませんでした。なので、それは私には不可能なことなのだと思っていたのです」。

「ターゲットとなるオーディエンスの調査をしていたときにわかったのが、女の子の最大の障害は、幼少期から、未だにジェンダーのステレオタイプにはめられていることでした。学校に上がるまでに、それは雪だるま式に大きくなり、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の自信はすでに失われています。教師たちも女の子には期待しません。結果としてそれが成績を下げ、年齢を重ねるごとに、ギャップは広がる一方となります」。

EAKと競合するツールに、Code Kingdoms(コード・キングダムズ)、Swift Playgrounds(スウィフト・プレイグラウンズ)、CodeCombat(コードコンバット)などがある。しかし、これらのゲームは女の子向けというより、はるかに男の子向けだとサイアル氏はいう。

新しいゲーム(下の動画)は、世界中の学校や両親に販売される。EAKではまた、ワン・フォー・ワン方式の支援も行っている。つまり、1つの学校がアカウントを購入するごとに、テック企業、教育団体、NGOなどの提携団体を通じて恵まれない学校に寄付が送られるというものだ。

Twinkl(トウィンクル)の共同創設者にしてCEO、またはTwinklHive(トウィンクルハイブ)のディレクターであるJonathan Seaton(ジョナサン・シートン)氏はこう話す。「Erase All Kittensのパートナーになれたことを本当にうれしく思っています。デジタル企業であるTwinklは、子どもたちにデジタル時代で成功する準備をさせることの重要性を認識しています。このパートナーシップによって大きな変化を起こせると、私たちは確信しています」。

「私たちのチームは、女の子たちを励まし、コード学習と独自のデジタル創作物の制作の機会を平等に与えるというErase All Kittensの使命を後押しできることに、特に胸躍らせています。すべての子どもたちが平等に学習機会を得ることは、Twinklのビジョンの中核でもあり、双方の企業の提携関係を深める決定的な動機でもあります」。

画像クレジット:Erase All Kittens

Erase All Kittensは、ジェンダー格差がますます広がる世界のスキルの格差に対処したいと話している。PWCによると、テック業界で働く女性の割合は24%に過ぎず、全エンジニアのうち女性はわずか12%だ。また、英国の女子学生で就職先の第一志望に技術職を選んだ割合はたったの3%だった。

Childwise(チャイルドワイズ)の調査では、女の子のうち90%は、最初の挑戦でコーディングを諦めている。11歳になるまでにSTEM分野への興味を失えば、二度と興味を持つことはないという。これはテック業界にとって、そして投資家にとって、実に深刻な問題なのだが、拡大は続いている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Erase All Kittens子どもコーディングジェンダーSTEM教育

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(文:Mike Butcher、翻訳:金井哲夫)

ゲイ向けデートアプリManhuntがハックされ数千件のアカウント情報が盗まれていた

600万人の男性会員を誇ると主張するゲイ向けのデートアプリManhunt(マンハント)は、2021年2月にアカウント用データベースがハッカーに侵入され、データが漏洩していたことを認めた。

ワシントン州検事当局に報告された内容によると、ハッカーは「Manhuntユーザーのアカウント証明書を保管していたデータベースに侵入した」とManhuntは語っている。さらに「2021年2月初旬に、1つのユーザーサブセットのユーザー名、メールアドレス、パスワードが盗まれた」という。

報告では、人が見たとしてもわからないようにするパスワードのスクランブル方法について、またスクランブルをかけていたかについては触れられていない。弱いアルゴリズムでスクランブルされたパスワードはプレーンテキストに解読される恐れがあり、悪意あるハッカーにそのアカウントへのアクセスを許してしまう。

データ漏洩の後、Manhuntは2021年3月中旬にアカウントのパスワードを強制リセットし、ユーザーに注意を呼びかけた。Manhuntは、データが盗まれたユーザーが全体の何割程度だったか、どのように漏洩したかについては明かしていないが、ワシントン州の住民7700人以上が関連していると話している。

Manhuntを代表する法律事務所ZwillGen(ズウィルジェン)の弁護士Stacey Brandenburg(ステイシー・ブランデンバーグ)氏は、Manhuntのユーザーの11パーセントが影響を受けたとメールで話してくれた。

しかしManhuntの対処には、まだ疑問が残る。同社は2021年3月「現時点では、すべてのManhuntユーザーは新しいパスワード要件に合致するパスワードに更新することが必要です」とツイートしている。ここでは、ユーザーアカウントが盗まれたことは知らせていない。

Manhuntは2001年、Jack’d(ジャックト)というゲイ向けデートアプリを提供していたOnline-Buddies Inc.(オンラインバディーズ)によってローンチされた。Jack’dは2019年にPerry Street(ペリー・ストリート)に、非公開の価格で買収された。この買収のわずか数カ月前、Jack’dはセキュリティ上の欠陥からユーザーのプライベートな写真や位置情報を公開してしまっている。

デートサイトには、極めて個人的なユーザー情報が保管されているため、悪意あるハッカーの標的にされることが多い。2015年、ユーザーの浮気を煽るデートサイトAshley Madison(アシュレイ・マディソン)がハッキングされ、ユーザーの名前、住所、メールアドレスが晒されてしまった。盗まれたデータがオンライン上で公開され、自殺に追い込まれたユーザーが数人いる。1年後、AdultFriendFinder(アダルトフレンドファインダー)がハッキングされ、4億件を超えるユーザーアカウトが晒された。

2018年には、同性デートアプリGrindr(グラインダー)がデータ分析業者2社にユーザーのHIV感染情報を渡して問題になった

この他、セキュリティの甘さから(セキュリティがまったく存在しないこともあるが)、非常に個人的なデータが流出してしまった事件もある。2019年、中国の同姓愛の男女向け人気デートアプリRela(レラ)は、パスワードも設置しない危険な状態でサーバーを放置していたため、性的指向や住所など500万人以上のユーザーの個人情報に、誰もが自由にアクセスできるようになっていた。数カ月後、ユダヤ人向けのデートアプリJCrush(ジェイクラッシュ)は、およそ20万件のユーザー情報を公開してしまっている

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Manhuntデータ漏洩ハッキングデートアプリジェンダー

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:金井哲夫)

Match Groupが素性調査を行う非営利団体Garboに数億円の資金を投資

Tinder(ティンダー)、Match(マッチ)、OkCupid(オーケーキューピッド)、Hinge(ヒンジ)など、人気出会い系アプリの親会社であるMatch Group(マッチ・グループ)は、素性調査プラットフォームGarbo(ガーボ)に7桁ドル(数億円)の投資を行ったと、米国時間3月15日発表した。Match Groupのユーザーがオンラインで相手を選ぶときに、適切な情報を元に判断できるようにするのが狙いだ。この取り引きにより、MatchはGarboと親密に協力し合い、2021年後半にはTinderに素性調査技術を組み込み、その後、Match Groupが米国で展開している他の出会い系アプリにも導入していく予定だ。

ニューヨークを拠点とするGarboは、2018年、Kathryn Kosmides(キャサリン・コズミズ)氏によって設立された。コズミズ氏はジェンダーに基づく暴力の被害から立ち直った人物であり、暴力事件を起こした経歴が疑われる人物に関する重大な情報を、誰もが簡単に調べられるようにしたいと考えた。

画像クレジット:キャサリン・コズミズ氏(Match Group)

通常、非営利団体によって提供される素性調査サービスは、麻薬犯罪や軽い交通違反など、広範にわたる個人情報を表面化させてはくれるが、必ずしも暴力や虐待に関連するものとは限らない。しかも、料金は立場が弱い側のコミュニティに課せられることが多く、ジェンダーに基づく暴力には対応していないとGarboは指摘する

Garboは逮捕、有罪判決、接近禁止命令、迷惑行為、その他の暴力犯罪などに関連する公共の記録と、暴力や虐待に関する報告のみを収集し、低価格で素性調査サービスを提供している。このサービスは、相手の氏名、またはファーストネームと電話番号を入力するだけで利用できる。出会い系アプリに登録される個人情報は、大抵はこの程度しかないからだ。

するとこのサービスは「公正素性」チェックを行う。つまり、調査結果から麻薬所持容疑や飲酒または麻薬を使用しての運転、危険運転致死罪などを除外した内容が示される。

2020年、Garboはニューヨーク市エリアの500人を対象に、この技術のベータテストを実施した。するとたちまち、口コミだけで予約希望者が6000人にまで膨れ上がった。後にGarboは、この技術が全国規模で展開できる可能性を感じてテストを中止した。一般公開する前に、その準備を整えたかったからだ。

金銭的な支援をほとんど受けていない小さな非営利団体であったGarboは、そのためには大規模なパートナーが必要だと気がついた。その後、コズミズ氏はMatch Groupの安全関連の新責任者Tracey Breeden(トレイシー・ブリーデン)氏と知り合い、両者は、その技術を米国中のもっと多くのオーディエンスへ届けるために協力し合うことで合意した。

「あまりにも長い期間、世界中の女性や社会から阻害された人々は、数々の障壁に阻まれ、資源と安全から遠ざけられてきました」と、Match Groupの安全および社会的擁護責任者のブリーデン氏は、本日のニュースに関する声明の中で述べている。「企業は、そうした障壁を、テクノロジーと行動に根ざした真の協働によって取り除く役割を果たせるものと、私たちは認識しています。Match Groupとの提携により、Garboの思慮深く画期的な消費者向け素性調査は、情報による力と権利を利用者に提供し、テック界全体における安全な人間関係とオンラインコミュニティに通じる公平な道作りの一助となります」と彼女は話す。

Match Groupによる出会い系アプリの機能強化を目的とした外部の安全技術提供者への投資は、これで2回目になる。2020年初め、同社は、Tinderとその他の出会い系アプリに新たな安全機能を組み込む目的で、Noonlight(ヌーンライト)に投資を行っている。これは、ProPublica(プロパブリカ)とColumbia Journalism Investigations(コロンビア・ジャーナリズム・インベスティゲイションズ)が2019年12月に共同執筆した記事で激しく非難されたことを受けての対応だ。この記事では、Match Groupが既知の性犯罪者たちにアプリの使用を認めていたと伝えている。さらにMatch Groupには同社の出会い系アプリ利用者の素性調査に一環した指針がなく、利用者の安全は、利用者自身に責任を押しつけていたとも指摘している。

それに対して、Tinderの最大のライバルであるBumble(バンブル)は、Tinderのような旧来の出会い系アプリよりも女性に優しいことを売り言葉にし、悪質な人間から利用者を守るためにデザインされた機能を数多く展開した。最も新しいものとしては、悪質な人間が「Unmatch」(マッチ解除)を利用して自分の素性を隠す行為を阻止する手段がある。

「安全ではない」アプリという評判は、Tinderのみならず、オンライン出会い系アプリ業界全体に重大なダメージを及ぼすため、Match Groupがその問題に対処するための直接投資を決めたことは納得できる。例えばNoonlightへの投資では、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)が採り入れているものと似た、Tinderアプリの中で目立たない形で緊急通報できる機能や不正防止対策などの導入をMatch Groupは約束した。

Match Groupによれば、Garboはこの新しい資金を使って、製品、エンジニアリング、管理を担当する人材を雇用する予定だ。これには、エンジニアリングの責任者や中心的チームとなるエンジニア5人なども含まれる。このチームは、自然言語処理やAIなどのテクノロジーを駆使して、Garboの数々の能力を構築することになっている。

Garboはまた、Match Groupからの時間と資源の多大な貢献に力を得て製品を完成させ、それをTinderを手始めに、Match Groupの各製品に展開していく。一方Match Groupは、Garboの技術を、配車サービスなどの他のプラットフォームでも利用できるようにする同非営利団体の取り組みを後押しする。

ただし、Tinderで展開される場合は素性調査は有料になる。

とはいえMatch Groupでは、利用者の反応、どれだけの人が使いたがるか、どれほどの調査を利用者が求めるかなど、さまざまな要素に基づいて価格を設定すると話している。また、どれだけ深く統合するか、つまり、アプリからGarboへの外部リンクにするのか、アプリ内の一機能のようになるのかなど、そのかたちも未定だ。

Match Groupでは、この機能を展開する時期をTinderは「2021年後半」、他の出会い系アプリはそれ以降と述べるだけで、具体的には示していない。同社では、今後数カ月内に、米国以外の利用者に向けたサービスのための同類の投資を行うことも検討しているようだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Match GroupGarbo投資マッチングアプリジェンダー

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)