AIによる不正ユーザ検知システム「Stena」開発のChillStackがディープコアから3000万円を調達

ChillStackは3月31日、同社初となる資金調達を発表した。ディープコアを引受先とする第三者割当増資で約3000万円を調達。調達した資金は、AIを用いたセキュリティシステムの開発・提供を加速させるほか、AI自身を守るセキュリティ事業の展開を開始する。

ディープコアは、AI関連事業への投資を中心進めるソフトバンクグループのベンチャーキャピタル。代表取締役社長は仁木勝雅氏、ファウンディングパートナー(共同設立者)は東京大学大学院教授の松尾 豊氏、起業顧問を孫 泰蔵氏が務めている。

ChillStackは、AIを利用した不正ユーザ検知システム「Stena」の開発・提供している、2018年11月創業のスタートアップ。研究者4名が創業した企業だ。Stenaは2019年7月にリリースされ、ゲームやウェブアプリなどの不正を検知するツールとして使われている。具体的には、ユーザーの通信ログや行動ログなどを基に、不正行為を行っているユーザを機械学習技術を用いて自動検知する。

2020年3月19日には、三井物産セキュアディレクションとAIの開発・提供・利用を安全に行うためのAIを守る技術に関する共同研究を開始している。

自治医大発スタートアップが眼科向けAI診断支援ソリューションを提供開始

自治医科大学発のAIスタートアップであるDeepEyeVisionは2月5日、眼科医の診断速度・精度の向上を目的とした、クラウド型AI診断支援ソリューション「DeepEyeVision」の提供を開始した。

「DeepEyeVision」ソリューションイメージ

クラウド型AI診断支援ソリューションのDeepEyeVisionは、医療機関が診察時に撮影した「眼底画像」をクラウドシステムにアップロードすると、画像診断AIが一次解析を実行。その後、提携している大学眼科所属の読影医がAIの解析結果をチェックした診断結果を、医療機関に回答するという流れになる。なお同ソリューションには、自治医科大学と共同開発した画像診断AIが利用されているとのこと。

健康診断センターや総合病院、眼科クリニックはDeepEyeVisionを導入することで、読影医を確保する手間が省けるため、大幅なコスト削減と業務量の低減を見込めるという。患者にとっては、DeepEyeVisionが普及することで、大病院に通わずとも高度な眼科医療を地元のクリニックで受けられるというメリットにもつながる。

画像診断AIによる解析イメージ。画像はプライバシーに配慮して所定の手続を経たものが使われる

なお2020年1月現在、DeepEyeVisionは自治医科大学附属病院の健診センターや地域健診センター、個人クリニックなど複数の医療機関で先行利用されている。

また同社は、AI系スタートアップを中心に投資しているソフトバンク系のベンチャーキャピタルであるディープコアが運営する「DEEPCORE TOKYO 1号投資事業有限責任組合」、シードに特化したベンチャーキャピタルのINDEE Japanからの資金調達も明らかにした。調達額は非公開。

AIスタートアップのピッチコンテストHONGO AI 2019の最優秀賞はMI-6、材料開発に革新と効率をもたらす

AIスタートアップと本郷近辺の活性化を目指すHONGO AIは10月2日、アーリーステージのAIスタートアップを集めたピッチコンテスト「HONGO AI 2019」を東京・文京区本郷にある伊藤謝恩ホールにて開催した。

HONGO AIは、アーリーステージを中心としたAIスタートアップを支援するために2019年に結成された組織。 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主催し、代表幹事として、経営共創基盤(IGPI)、ディープコア、Deep30投資事業有限責任組合、東京大学エッジキャピタル(UTEC)、TomyK、東京大学協創プラットフォーム開発(UTokyoIPC)、ANRIの7社が名を連ねている。

最終審査に残ったのは以下の14社(登壇順)で、最優秀賞(HONGO AI BEST AWARD)は素材産業向けに実験計画を効率化するサービスを提供するMI-6、経済産業省産業技術環境局長賞は3Dプリンターによる義足開発のインスタリムが獲得した。各社の詳細は追って記載する。

ソシウム

「薬のない人に薬を、薬の効かない人に薬を」をミッションに掲げ、AIによる創薬の効率化を目指すスタートアップ。

estie

オフィス探しをAIによって効率化するスタートアップ。

シンカー

ウェブサイトのアクセスログ分析に機械学習を組み合わせることで、ユーザーの行動を解析するためのツール「CACICA」を開発。

Mantra(NSG Group賞、ソフトバンク賞、博報堂賞)

マンガを高精度で自動翻訳するサービスを開発。AIによる画像認識より、マンガ内の吹き出しの位置やテキストを自動認識して該当部分を抽出する。

MI-6(HONGO AI BEST AWARD、SIBAZIBA賞)

素材産業向けに、実験計画を効率化するサービスを提供する。

Xamenis

カプセル内視鏡の読影支援AIを開発。

スペースシフト

地球観測衛星のデータをAIで解析する事業を展開。

AIQ(ベネッセ賞)

AIによるプロファイリング技術を活用したデジタルマーケティングツールを開発・販売。

ACES(フジタ賞)

人をデジタル定量化するツールを開発。人間の行動や感情の認識、物の検知などを行う画像認識のAIアルゴリズムを提供している。

Revcomm

AI搭載型クラウドIP電話サービス「Miitel」を開発。

日本データサイエンス研究所

不在配達の削減や書籍の返本率の改善などを独自のAIアルゴリズムを活用して実現。

インスタリム(経済産業省産業技術環境局長賞)

AIを活用した画像解析と独自の3Dプリンターを組み合わせた低価格義足の開発・販売をフィリピンで展開。

本郷発のAIを世界へ、AIスタートアップを支援する「HONGO AI 2019」が始動

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は7月4日、アーリーもしくはシードステージのAIスタートアップ企業を表彰するコンテスト「HONGO AI 2019」の募集を開始した。最終選考会および授賞式は、10月2日に東京都文京区にある東京大学の伊藤謝恩ホールで開催する予定だ。

市場の成長性や技術の模倣困難性、チームの質などの観点から産官学の有識者が選考に加わり、事前選考を通過した企業は「HONGO AI Award」に出場できる。HONGO AI Awardの受賞企業は、ベンチャーキャピタル(VC)からの投資機会や、本事業委託先であるアドライトによる大手企業とのマッチングなどの事業支援を受けられるとのこと。

主催者のNEDOはこれまで、ロボットと人工知能の基礎的な研究と社会実装を5年前から、3年前からは社会のニーズ応じた応用研究を進めていた。また2年前にAIコンテストを開催した実績もある。今回HONGO AI事務局の協力を得てこのAIコンテストを復活させた。インターネットが普及し始めたことに渋谷近辺がビットバレーと呼ばれたように、AIが普及するこれからの時代に本郷近辺がHONGO AIと呼ばれるように、存在感を高めるのが狙いの1つだ。

HONGO AI事務局とは、東京大学がある東京・本郷地域でのAIスタートアップ企業を盛り上げるために、2019年に結成されたばかりの有志の任意団体。現在は代表幹事を、経営共創基盤(IGPI)、Deep30投資事業有限責任組合、ディープコアが務めている。

応募要件は、株式価値が20億円未満、累計の資金調達額が5億円の、シードもしくはアーリーステージのスタートアップ。選考には、HONGO AI事務局のディープコアやDeep30だけでなく、さまざまなVCやCVCへの参加を募る。

東京大学の松尾 豊教授

選考委員の1人である東京大学大学院工学系研究科で人工知能を専門分野とする松尾 豊教授は、「東大だけでなく、東工大、早稲田、筑波、京大、阪大などポテンシャルの高い大学はたくさんあり、AIスタートアップが生まれる環境は整っている。HONGO AIのような取り組みが全国に波及することに期待している」とコメント。

HONGO AIの一番の強みといえるのが、東大から供給される人材。松尾教授は「現在、東京大学で100人ぐらいがAIやディープラーニングを研究しているが、これが10倍ぐらいの数になれば、シリコンバレーや深圳と肩を並べるレベルになるのではないか」とも語る。ちなみに松尾研究室の昨年の卒業生は、進学もしくは起業の道に進んでおり、企業に就職した学生はいなかったそうだ。大学卒業後は、就職せずに起業という流れは今後も強くなっていくだろう。

日本のAI技術が今後どのように進化するのかも含め「HONGO AI Award」に期待したい。

インスタリムが3Dプリント義足事業をフィリピンで開始、総額8400万円の調達も

インスタリムは、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)およびディープコアへの第三者割当増資により、総額8400万円の資金調達を実施したことを発表した。今回の資金調達により、フィリピンのマニラ首都圏で設立した現地法人を通じ、3Dプリントによる膝下義足事業を本格開始する。また、3Dプリントによる大腿義足などの新製品の研究開発も進めるという。

3Dプリント義足「Instalimb」

インスタリムは、義肢装具の製作に最適化された3Dプリンタや独自のアルゴリズムによる形状レコメンド機能などを備えた3Dモデリングソフトなどを活用して、義肢装具の低コスト・短期間での量産を可能にするソリューションを開発している、2015年12月設立のスタートアップ。

同社のソリューションにより、従来の約10分の1となるコストダウンや納期短縮を実現できるという。大幅なコストダウンによって、新興国や開発途上国を含む多くのユーザーに義足を提供することが可能となる。なお、アルゴリズムについてはAIを用いた全自動モデリング機能を開発中で、これが完成すればさらななるコストダウンと納期の短縮も目指せるという。

今回のフィリピンでの事業開始は、フィリピン大学総合病病院と共同で3Dプリント膝下義足の実証実験進めてきた成果。被験者50名に対する実生活試用などの各種テストや製造プロセスの検証を完了し、製品化準備を完了させた。

AIファンド「DEEPCORE TOKYO」にみずほ銀、電通、Mistletoeなどが出資

AI特化型インキュベーターでVCのディープコアは12月17日、同社が運営するファンド「DEEPCORE TOKYO1号 投資事業有限責任組合」(以下、DEEPCORE TOKYO1号)に、新たにみずほ銀行、電通、Mistletou Venture Partners、みずほ証券、日本政策投資銀行、日本ビジネスシステムズ、本田圭佑氏の個人ファンドKSK Angel Fund、その他の法人、個人投資家から出資を受けたことを明らかにした。

ディープコアはソフトバンクの100%子会社。学生・起業家を対象にしたAI分野に特化したインキュベーション事業開始を2018年1月に発表し、拠点となるインキュベーション施設「KERNEL HONGO」をWeWorkとの協力で運営する。

5月には、シード/アーリーステージのAIスタートアップに投資・支援を行うことを目的として、DEEPCORE TOKYO1号ファンド設立を発表。立ち上げ時点でソフトバンクグループ、ソフトバンク、ヤフーが出資者として決まっていたが、60億円規模を目指し、さらにLPを募っていた。

DEEPCORE TOKYO1号はこれまでに、合計11社への出資を既に行っている。出資を受けたスタートアップには、万引き防止AIが容疑者逮捕に一役買ったことで先日話題になったVAAKや、接客アバター「コラボロイド」を開発するUsideU、ウェアラブル端末なしで人のモーション解析ができるツールを開発しているUplift Labs、病理画像診断ソフト開発のメドメイン、アパレル業界向けにAIソリューションを提供するLiaroなどが含まれる。

DEEPCOREは、11月にはAI・機械学習に特化した香港のアクセラレーターZerothとの提携により、アジアのAIスタートアップ育成において、リソースやディールの共有などで密接に協力していくことを明らかにしている。

DEEPCOREでは、ファンドを通じて「有望なAIスタートアップの成長を支援し、日本から世界に向けて破壊的イノベーションを起こすことを目指す」としている。

AI特化型インキュベーターのディープコアが60億円ファンドを設立へ、LPには親会社のソフトバンクも

写真左より、ディープコア代表取締役の仁木勝雅氏と、新ファンドの第1号案件となったVAAK代表取締役の田中遼氏

AI特化型インキュベーターであるディープコアは5月31日、シード・アーリー期のスタートアップ投資を目的としたファンド「DEEPCORE TOKYO」を設立したと発表した。同社が目標とするファンド規模は総額60億円だ。

設立時にも紹介したディープコアは、主にディープラーニングを中心とするAI領域でビジネスを行うスタートアップを対象としたインキュベーターだ。同社は2018年夏に東京の本郷にコワーキングスペース「KERNEL HONGO」をオープンする予定となっている。

ディープコアが今回立ち上げたファンドは、シードラウンドやシリーズAラウンドでの投資を目的としたもので、今年12月のファイナルクローズまでに約60億円の出資金を集めることを目指しているという。現時点で、LPにはディープコアの親会社であるソフトバンクグループのほか、ソフトバンク、ヤフーが参加することが決定している。

ディープラーニングを活用するスタートアップがまず必要とするのは、計算資源を整えるためのまとまった資金だ。ディープコアはその資金を直接スタートアップに供給するとともに、ソフトバンクグループが出資するNVIDIAの計算資源と技術コンサルティングを提供するとしている。これは、ディープラーニングを活用してビジネスを立ち上げたい起業家にとって大きなメリットとなるだろう。

ファンド運営を担当する渡邊拓氏は、「当社の調べでは、ディープラーニングを活用したビジネスを行う日本のスタートアップは、米国と比べて10分の1程度の数しかない。コワーキングスペースの運営から出資まで一貫して行うことで、その数を増やしていくことが目的だ」と語る。

ところで、ディープコアはソフトバンク子会社であるものの、彼らはその事実を積極的にアピールはしていない。その理由として、同社CFOの雨宮かすみ氏は「ディープコアのミッションは、ソフトバンクグループとシナジーを生み出すスタートアップを発掘することではなく、日本におけるAIスタートアップのエコシステムを活性化すること」だと語り、“ソフトバンクグループ色”を前面に出さずによりオープンな支援を行なっていくためだと説明する。

ディープコアによれば、同社はすでに防犯カメラの映像解析を手がけるVAAK(約5000万円)と、名称非公開のスタートアップ1社への出資を実施済みだ。同社は今後も1社あたり数千万円程度の出資を続け、最終的には100社近くのAIスタートアップに出資を行っていくという。

ソフトバンク子会社がAI特化のインキュベーション事業を開始、学生も対象で創業支援

ディープコアのメンバー。写真中央が代表取締役の仁木勝雅氏。

ソフトバンクグループの100%子会社であるディープコアは1月29日、学生や起業家が対象となるAI分野に特化したインキュベーション事業を開始すると発表した。

ディープコアはもともと、「汐留事業4号株式会社」という変わった法人名がつけられていた企業で、ソフトバンクがいつ新規事業を立ち上げてもいいように用意したペーパーカンパニーだった。同社は2017年9月に法人名を現在のディープコアに変更。今回発表したインキュベーション事業が現在の主要事業だ。

そんなディープコアのインキュベーション事業が特に注力する分野がディープラーニングだ。ディープラーニングといえば、Preferred Networksがトヨタ自動車から約105億円の資金調達を実施するなど、日本でも大企業とスタートアップとの協業が活発的に進みつつある分野である。ディープコアは東京大学松尾研究室と共同研究契約を締結し、企業との共同プロジェクトの実施や起業家育成を進めていく。

また、同社は東京大学に近い本郷にコワーキングスペースを開設し、NVIDIA(ソフトバンクが約1兆円を出資したとされる)の協力の下で用意したコンピューティング・リソースを提供する。起業意欲がある優れたメンバーについては創業支援も行うという。

ソフトバンクグループでは投資部門を担当してきたディープコア代表取締役の仁木勝雅氏は、“求める人材像”についてこう語る。

「一定のAIスキルを持っている理系学生、大学院生、エンジニアなどで、『現在は特にビジネスに係わっていないが、経験してみたい』だとか、『AIの技術を使って、面白いことをやってみたい』という人だ。既に起業意欲を持っている人は大歓迎だが、現時点で、必ずしも具体的なテーマやアイデア、起業意欲を持っている必要はない。企業との実証実験などへ参加してもらうことで、社会における実課題に取り組む機会を提供する」(仁木氏)

ディープコアは50人のプログラムメンバーを2018年2月1日より募集開始する。インキュベーション施設は2018年春に開設予定だ。その他の詳細は同社のWebページに随時アップデートされる。