ロボットアームを使った高層ビル窓ガラス掃除のSkylineが7.9億円調達

自動化する意義がある仕事のリストで、筆者は窓掃除をかなり上位に入れたい。実際、この仕事は汚くて危険なものだ。そして驚くことに、危険手当がそれほど支払われない。何百フィートもの高さで空中にぶら下がるような仕事には、当然支払われるべきものだと思うのだが。

Skyline(スカイライン)は2021年に、高層ビルの側面にある手の届きにくい場所を清掃する(ファサードメンテナンスと呼ばれる)ロボットシステムOzmo(オズモ)を納入して話題になった。このシステムでは、Kukaの産業用ロボットアーム2本が吊り下げられたプラットフォームに据えられている。

清掃するガラスの位置を確認するのにLiDARを使い、作業中はガラスを割らないよう力センサーに頼っている。また、アルゴリズムが組み込まれているため、風が強い状況でも安定したロボットハンドを実現し、最適な清掃経路を1分間に数百回再計算することが可能だという。

ニューヨークを拠点とするSkylineは3月23日「プレシリーズA」と称するラウンドで650万ドル(約7億9000万円)の調達を発表した(正直なところ、こうした資金調達ラウンドのラベルは、これまで持っていた意味を失いつつある)。Skyline Standard Holdingsがこのラウンドをリードし、Skylineの資金調達総額は900万ドル(約10億9000万円)に達した。

「このラウンドと初のOzmo展開の成功は、我々の製品とサービスに対する需要が目に見えて投資家に伝わっているだけでなく、Skylineの前に大きなビジネスチャンスがあることを示しています」とCEOのMichael Brown(マイケル・ブラウン)氏は話した。「私たちのチームの信念は、投資家のみなさんのものと一致しています」。

確かに、ニューヨーク市だけでも数千万枚の窓ガラスが清掃を必要としており、そこにはチャンスがたっぷりある。

画像クレジット:Skyline Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが人の助けなしにロボットだけで3Dプリンターを操作することに成功、生産ラインのボトルネックを解決

Ford(フォード)のAdvanced Manufacturing Center(先端技術製造センター)は、異なるサプライヤーの機械同士が同じ言語で会話し、生産ラインの一部を自律的に操作できるようにするインターフェースを開発した。

自動車メーカーは何十年も前から、コスト削減と効率化のために製造工程にロボティクスを取り入れてきた。しかし、フォードの特許出願中のシステムは、ロボットが夜通し人手を介さずに3Dプリンターを操作することで、生産ラインの重要なボトルネックを解決するものだ。

この自律システムは、Carbonの3DプリンターとKUKA製ロボットが初めて同じ言語で会話できるようになり、生産工程に関わる他の機械とのコラボレーションの可能性を限りなく広げる。

これまでこの試みは、パフォーマンスパッケージを装着したMustang Shelby GT500(マスタング シェルビーGT500)スポーツカー用のブレーキラインブラケットなど、少量生産のカスタムカー部品の生産に役立っている。

「この新しいプロセスは、当社の製造施設におけるロボティクスの使い方を変える力を秘めています」と、グローバル製造技術開発ディレクターのJason Ryska(ジェイソン・リスカ)氏は述べている。

サプライヤーであるKUKAの車輪付きロボット「Javier」は、従業員が夜間に帰宅した後も、人間の介入なしに3Dプリンターを継続的に稼働させることができる。Fordによると、ロボットはプリンターのデータから常に学習し続け、自動車メーカーがより高い精度を達成し、誤差を減らすのに役立っているという。

「Fordの先端技術製造センターでは、Javierは完全に1人で3Dプリンターを操作する任務を負っています」とFordは声明の中で述べている。「彼は常に時間を守り、非常に正確な動作をし、充電のために短い休憩を取るだけで、ほぼ1日中働いています」。

通常、異なるサプライヤーの機器は、別々の通信インターフェースを使用しているため、相互作用することができない。Fordのシステムでは、異なるサプライヤーの機器同士が会話し、リアルタイムでコマンドやフィードバックを送ることが可能になる。

Carbon 3DプリンターがJavierに印刷物の準備ができたことを伝えると、Javierはそれを回収し、後で人間のオペレーターが回収できるように置いておく。

Fordは、通信インターフェースとロボットの正確な位置決めを支える技術について、複数の特許を申請している。このプロセスは自律的に行われるが、人間のオペレーターが3Dデザインをプリンターにアップロードし、機械のメンテナンスを行う必要がある。

画像クレジット:Ford

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Den Nakano)

1カ月ほどで家を建てる住宅建築ロボットのDiamond Ageが58.6億円を調達

ほんの数カ月前に800万ドル(約9億4000万円)の資金調達行ったばかりのDiamond Age(ダイアモンド・エイジ)が、シリーズAで5000万ドル(約58億6000万円)を追加調達した。3Dプリントとロボット技術を利用して住宅建設を大幅に安くすることで、住宅購入をより手頃なものにするというのが同社のミッションだ。

自らを「フルスタックロボットスタートアップ」と称する同社は、新しい家を建てる際の半分以上の手作業を置き換えるためのツール群を開発している。ロボットという要素を加えることで、これまで9カ月かかっていた住宅建築が、1カ月ほどで可能になるという副次的な効果もある。同社は現在、外装、内装、屋根構造のコンクリートをプリントできる3Dプリントシステムに加えて、26種類のエンドオブアーム型ロボットツール(ロボットアームの末端に装着してさまざまな仕事をこなすアタッチメント)を開発している。

今回の資金調達ラウンドは、科学駆動型イノベーションに注力するPrime Movers Labが主導した。Prime Movers Labは特にエネルギー、交通、インフラ、製造、人間能力拡大、アグテック(アグリテック)などを革新するスタートアップに注目している。シード投資家のAlpaca VC、Dolby Family Ventures、Timber Grove Ventures、Gaingelsは予定以上の投資を行い、Signia Venture Partnersも加わった。創業者たちにとって最も心強いのは、このラウンドの20%が住宅建設業者や土地開発業者であったことだろう。潜在顧客がスタートアップに投資するのは、常に良い兆候だ。

前回の資金調達以来、 Diamond Age は技術を大幅に進歩させ、今では2000平方フィート(約190平方メートル、約56.2坪)の平屋をプリントして建てることができるようになった。それが投資家たちを感心させ、評価額の火種に油を注いだことは間違いない。同社は最初のスケールアップ版システムと、フルスケールの3ベッドルーム+2バスルームの住宅を、予定より4カ月早く11カ月で納入した。このことによって、同社はとある全国規模の住宅メーカーと初めて契約を結んだ。この契約について、創業者たちは今のところ詳細を明らかにしていないが、この発表も近いうちに行われることだろう。

Diamond Ageの共同創業者Jack Oslan(ジャック・オスラン)CEOは次のように語る。「手頃な価格の住宅建設は、世界規模で人々に影響を与えています。初めて家を購入する人の平均年齢が20歳代半ばから30歳代半ばに移行したことで、賃貸物件に対する需要が高まりました。このため『質の高い住宅』を求めて賃貸市場の競争がますます激化しています。次世代の住宅購入者が最初の家に早く住めるようにすることは、住宅のエコシステム全体に貢献することができます」。

Diamond Ageは、ロボットプラットフォームの拡張を継続し、住宅建設に関する初の商業契約を締結するために調達した資金を使用する。同社はすでに規模を2倍に拡大し、さらにエンジニアリングと製作の人材を加える予定だ。これにより、Diamond Ageは住宅メーカーやデベロッパーと提携し、住宅建築をオンデマンド商品化し、住宅購入者が住宅を設計する際に、より多くの選択肢を提供することができるようになる。

Prime Movers LabのジェネラルパートナーであるSuzanne Fletcher(スザンヌ・フレッチャー)氏は「Diamond AgeのFactory in the Field(ファクトリー・イン・ザ・フィールド、現場の工場)システムは、建設現場に自動化をもたらし、住宅建設業界における大規模な労働力不足を補うものです」と述べている。「ジャックと彼のチームは、予定より早く重要なマイルストーンを達成し、分譲住宅の建設方法を変革していましたので、Prime Movers Labが同社のシリーズAを主導することは容易に決断できました」。

画像クレジット:Diamond Age

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

Automataがラボオートメーションの野望を拡大、ラウンドBで57.5億円を調達

現在世界中のラボ(実験施設)は、新型コロナウイルス感染症(COVID)のためだけではなく、成長するバイオテクノロジーや医薬品開発の分野から、より多くのテストや材料の処理を行う必要に迫られている。自動化はそのために必要となる道筋だ。Automata(オートマタ)は、個々の作業を扱うロボットアームの製造からスタートした企業だが、研究室のプロセス全体を最初から最後まで自動化するために、新たに5000万ドル(約57億5000万円)を調達した。

前回Automataと話したのは2019年だったが、当時同社は740万ドル(約8億5000万円)のラウンドAを実施したばかりで、ガラス容器を移動させたり、簡単なサンプリングを実行したりといった、さまざまな一般的なタスクに使用できるEva(エバ)ロボットアームの開発と展開に注力していた。しかし彼らはすぐに、独自性の高い小規模なプロジェクトや研究室向けにロボットを提供するという事業が、ビジネスモデルとして成り立たないことに気づいた。

共同創業者でCEOのMostafa ElSayed(ムスタファ・エルセイード)氏は「ある段階で顧客と関わるだけでは十分ではありません。例えば『市場で最も手頃な価格のロボットアームがあります。あとは幸運を祈ります!』と売り込んで、お客さんが1〜2台のロボットを購入しても、ある程度のプロセスの最適化は行われますが、その企業の動きに革命を起こすことはありません。そこでここ数年は、当社の技術を大規模に採用してもらうにはどうすればよいかを検討してきました」と語っている。

彼らは、ほどなく自動化ブームが到来すると考えられる3つの大きな市場を特定した。それは、診断、創薬、そして合成生物学(特定の目的のための微生物の発見や合成培養)だった。

同社が最初の数百台のEvaアームを設置して発見したことは、これらの分野の企業には「部分的な自動化」が多いということだった。エルセイード氏は、これをキッチンにある食洗機にたとえた。たしかに食器を手で洗う必要はなくなったが、食器の出し入れ、洗剤の追加、設定操作などの作業が相変わらず必要なのだ。もちろん食洗機は便利だが、動作するためには完全に人間の作業に依存していることには変わりがない。

こうした部分的な自動化の限界は、パンデミックによって浮き彫りになった。特にPCRテストを行うラボは、最大の能力で稼働していたものの、それでも需要を満たすことはできなかった。同様に、医薬品開発や合成生物学の分野では、1つのプロセスの実行頻度に制限があるため、実行スパンが5〜7年に及ぶこともある。部分的な自動化から完全な自動化へと移行することで、大幅な時間短縮とスループットの向上を実現することができる。しかし、それは数少ないロボットアームだけでは実現できなかった。

Automata Labsの操作コンテナならびに、その横に並ぶEvaロボットアーム

「このような自動化を可能にするために、まったく新しいハードウェア群を開発しなければなりませんでした」とエルセイード氏は述べている。2021年末、彼らは新しいハードウェアプラットフォームAutomata Labs(オートマタラボ)を発表した。これは、内部の機械を連続的に動作させ、その結果を次のステップに渡すことができるように作られた、一種のモジュラーコンテナだ。「この作業台は、実際にあらゆるラボにある標準的なユニットですので、基本的には、自動化に対応した総合ラボ作業台なのです」。

同社の最も顕著な成功例は、NHS(英国国民保健サービス)の検査施設だ、現在は可能な限り自動化され(つまり、人間はまだそこにいるものの、膨大な量の作業がロボットによって行われている)、現在では100万以上のサンプルが処理されている。エルセイード氏は、この数字が大きいということも指摘しつつ、より重要なのは、自動化によって結果が出るまでの時間が半分に短縮されたことだという。ご想像の通り、これは時間的成約の厳しい検査には重要だ。それは、臨床医がロボットを一晩中働くように設定し、朝には結果が出るようにできるレベルまで自動化されていることに大きく依っている。

実験的な環境では、タイムラインを25〜40%削減することができた。これは大きな成果だが、製造業などの分野で生産性が大幅に向上したことを知っている人には控えめな数字に聞こえるかもしれない。エルセイード氏によれば、特定の数値をさらに向上させるためには、NHSの迅速ラボを可能にした「lights out laboratories(完全自動ラボ)」のような道が他にもあるという。

ムスタファ・エルセイードCEO

しかし、同時にエルセイード氏は、多くの研究者にとっては精度や再現性も重要な課題だと語る。

「そうしたユーザーの間には、明確なニーズがありました」と彼はいう。「基本は、ラボでの単純な作業を減らしながらスループットを向上させることが目標です……が、私たちは気が付いていなかったのですが、ラボには再現性の問題もあったのです。研究チームは研究論文を発表しますが、その結果を再現しようとしても失敗します。なぜなら、研究室でのプロセスは複雑な手作業であり、変動するからです」。

そのため、自動化によって得られる大きな利点は、体系的な追跡と実行、そしてエラーが少ないことだ。その目的のために、Automataはラボ装置やロボットを管理・運用するためのソフトウェアに投資してきた。

「これらの組織の科学者、特に将来大切になる自動化を担当する科学者の方は、単に私たちを呼んで自動化作業を依頼なさるのではなく、自分たちでシステムをプログラムし、自分たちでスクリーニングを設計できる能力を本当に求めていられるのです」とエルセイード氏は語る。科学者と交渉したことのある人ならわかると思うが、科学者の多くは、外部機関に主導権を奪われるくらいなら、従来のやり方を続けたいと考えている。そのため、現場のスタッフが展開・調整することを前提としたシステムを開発することに重点が置かれてきた。

彼は続ける「当社のハードウェアを採用なさっているラボの中には、ご自身でコンフィグレーションやデプロイメントを行ったり、エコシステムをご自身のデータシステムに接続したりすための、デジタルソリューションを求められるところが増えています」。

新世代のハードウェアが、パートナー企業との限定的なテストを経て、年内に公開される予定だ。また、Automataは、米国やヨーロッパの広い市場への進出の準備も進めている。この拡大のために必要となる膨大な雇用、製造、販売、サポートなどが、今回の5000万ドル(約57億5000万円)のラウンドBの理由だ。このラウンドは、Octopus Venturesが主導し、Hummingbird、Latitude Ventures、ABB Technology Ventures、Isomer Capital、In-Q-Telなどが参加した。

画像クレジット:Perchpeek app

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

Elephant RoboticsとM5Stackが共同開発したコンパクトな4軸ロボットアームmyPalletizerをスイッチサイエンスが発売

Elephant RoboticsとM5Stackが共同開発したコンパクトな4軸ロボットアームmyPalletizerをスイッチサイエンスが発売

スイッチサイエンスは2月8日、中国深センの産業用ロボットメーカーElephant RoboticsM5Stackが共同開発したロボットアーム「myPalletizer」と、そのエンドエフェクター2種の販売を同日開始した。myPalletizerの価格は6万9454円(税込)。すでにスイッチサイエンスから発売されているElephant Roboticsの6軸ロボットアーム「myCobot 280」をさらにコンパクトにしたもので、エンドエフェクターには、一部myCobotと互換性がある。

myPalletizerは重量960g、作業半径260mmという大変にコンパクトなロボットアーム。制御システムとして開発モジュール「M5Stack Basic」を搭載し、アーム部にはM5Stackシリーズの最小ユニット「ATOM Matrix」が装備されている。開発環境としては、Python、ROS、Arduino、Roboflowなどに対応。アーム先端と本体底部には著名ブロック玩具互換のコネクターも装備されている。

アームの先端に取り付けるエンドエフェクターは、今回、「myPalletizer用グリッパー」と「myCobot 280/myPalletizer用カメラフランジ」が同時発売されたが、myCobot 280の「myCobot 280用Gベース(クランプ)」や「myCobot 280用吸引ポンプ」も使える。

エンドエフェクターのmyPalletizer用グリッパーは、小さな箱やボールを掴むことができる。ROS、Arduino、UIFlow、RoboFlowなど、あらゆる開発環境で使用可能。myPalletizer専用。

myCobot 280/myPalletizer用カメラフランジは、顔認証、スマートディスプレイ、スマートデリバリー、自動販売機、コードのスキャン、アクセス管理などの用途に使えるカメラパーツ。「myCobot 280」でも使用可能。

myPalletizer」概要

  • 型番:MYCOBOT-MYPALLETIZER-PSE
  • 軸数:4軸
  • ペイロード:300g
  • 作業半径:260mm
  • 精度:±0.5mm
  • 重量:900g
  • モーター:高精度磁気エンコーダー式サーボモーター
  • 作動速度:120°/s
  • 電源:8~12 V 5A(12VのACアダプターを同封)
  • コネクター:USB Type-C(M5Stack Basic本体)
  • 価格:6万9454円(税込)

myPalletizer用グリッパー」概要

  • 型番:MYCOBOT-MP-GRIPPER-AG-WH
  • サイズ:110×90×60mm
  • 重量:88g
  • クランプ幅:20~45 mm
  • 最大クランプ重量:150g
  • 価格:1万6445円(税込)

myCobot 280/myPalletizer用カメラフランジ」概要

  • 型番:MYCOBOT-CAMERAFLANGE
  • USBレンズ(歪みなし)
    ・サイズ:18×18×20 mm
    ・最大ピクセル:100万(1280×720)
    ・対応画像フォーマット:YUV、MJPEG
    ・ピクセルサイズ:3.4um×3.4um
    ・最大フレームレート:1280×720@25fps
    ・USBプロトコル:USB 2.0 HS/FS
    ・対応解像度:1280×720、640×480、320×240
    ・電源:DC5 V 90mA
    ・レンズ焦点距離:標準1.7mm
    ・FOV角:≈60°
    ・対応OS:Windows、Linux、MacOS
  • エンドフランジ
    ・材質:感光性レジン
    ・仕上げ:塗装
    ・サイズ:80×40×20 mm
    ・重量:60g
  • 価格:1万4465円(税込)

東京の宇宙ベンチャーGITAIが国際宇宙ステーション内で自律型ロボットアームの技術実証に成功

東京の宇宙ベンチャー企業であるGITAI Japan(ギタイジャパン)は、日本時間の2021年10月13日から10月17日にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)内で行われた自律型ロボットアームの技術実証に成功した。これは、同社が宇宙でサービスとしてのロボット技術を提供する準備に向けた重要なマイルストーンとなる。

「GITAI宇宙用自律ロボットS1」と呼ばれるこのロボットアームは今回、ケーブルやスイッチの操作と、構造物やパネルの組み立てという2つの作業を行った。これらの作業は、一般的にクルーが行う作業だが、宇宙におけるさまざまな活動で汎用的に使用することができる。今回の実証が成功したことで、NASAはGITAIロボットの「技術成熟度(Technology readiness levels、TRL)」をTRL7に引き上げた。TRLは全部で9段階まであり、GITAIがロボットを商業化するには、すべてのTRLを満たすことが重要になる。

この技術実証は、宇宙企業であるNanoracks(ナノラックス)の「Bishop(ビショップ)」エアロック内で行われた。Bishopエアロックは、ステーションの外装に取り付けられた世界初(かつ唯一)の商用エアロック・モジュールだ。Nanoracksは今回、打ち上げ機会の提供、軌道上での運用管理、データのダウンリンクも担当。同社は先週、Voyager Space(ボイジャー・スペース)およびLockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で完全民間の商業宇宙ステーションを起ち上げる計画を発表している。

関連記事:民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

GITAI宇宙用自律ロボットS1は、8月末に実施された23回目の商業補給サービスミッションで、SpaceX(スペースX)の「Cargo Dragon(カーゴ・ドラゴン)」カプセルに搭載されて軌道へ輸送された。日本のスタートアップ企業であるGITAIは、軌道上での宇宙船の整備や建設・製造作業など、宇宙における一般的な作業を行うためのロボットを開発している。次のステップは、ISSの外で、GITAIロボットの試験を行うことだ。

「今回の実証の成功は、GITAIロボットが、汎用性があり、器用で、比較的安全(人間の生命を脅かすリスクが少ない)で、安価な労働力を求める宇宙機関や商業宇宙企業のソリューションになり得ることを証明するものです」と、NASAは技術実証の最新情報を更新し「このオプションの提供は、宇宙の商業化という目標達成を促進させることになります」と述べている。

しかし、GITAIは単にロボットアームを作ることだけを目指しているわけではない。同社の長期的なビジョンでは、ロボットは月や火星の表面にスペースコロニーを建設するための重要なツールになると考えている。このようなロボットによる労働力は、地球外の環境で人間が生存できるようになるのを加速させるために役立つ可能性が高い。2021年3月、同社は総額18億円のシリーズB資金調達を完了し、2023年に予定されている軌道上船外技術実証に向け、人件費と開発費に投じている。

先週行われた技術実証の映像はこちら

画像クレジット:Gitai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)