テスラは強力なスーパーコンピューターを使ったビジョンオンリーの自動運転アプローチを追求中

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、少なくとも2019年頃から「Dojo」(ドージョー)という名のニューラルネットワークトレーニングコンピューターについて言及してきた。Dojoは、ビジョンオンリー(視覚のみ)の自動運転を実現するために、膨大な量の映像データを処理することができるコンピューターだとマスク氏はいう。Dojo自体はまだ開発中だが、米国時間6月22日、テスラは、Dojoが最終的に提供しようとしているものの開発プロトタイプ版となる、新しいスーパーコンピューターを公開した。

テスラのAI部門の責任者であるAndrej Karpathy(アンドレイ・カーパシー)氏が、米国時間6月21日に開催された「2021 Conference on Computer Vision and Pattern Recognition」(コンピュータービジョンとパターン認識会議2021)において、同社の新しいスーパーコンピューターを公開したのだ。このコンピューターを利用することで、自動運転車に搭載されているレーダーやライダーのセンサーを捨て去り、高品質の光学カメラを採用することが可能になる。自動運転に関するワークショップで、カーパシー氏は、人間と同じようにコンピューターが新しい環境に対応するためには、膨大なデータセットと、そのデータセットを使って同社のニューラルネットベースの自動運転技術を訓練できる、巨大なスーパーコンピューターが必要だと説明した。こうして、今回のような「Dojo」の前身が生まれたのだ。

テスラの最新世代スーパーコンピューターは、10ペタバイトの「ホットティア」NVMeストレージを搭載し、毎秒1.6テラバイトのスピードで動作するとカーパシー氏はいう。その1.8EFLOPS(エクサフロップス)に及ぶ性能は、世界で5番目に強力なスーパーコンピューターになるかもしれないと彼は語ったが、後に、スーパーコンピューティングのTOP500ランキングに入るために必要な特定のベンチマークはまだ実行していないことを認めた。

「とはいえFLOPSで考えれば、きっと5位あたりに入るでしょう」とカーパシー氏はTechCrunchに語っている。「実際に現在5位にいるのは、NVIDIA(エヌビディア)のSelene(セレーネ)クラスターで、私たちのマシンに類似したアーキテクチャを採用し、同程度の数のGPUを搭載しています(向こうは4480個で、こちらは5760個、つまりあちらがやや少ない)」。

マスク氏は、以前からビジョン(視覚)のみでの自動運転を提唱してきたが、その主な理由はレーダーやライダーよりもカメラの方が速いからだ。2021年5月現在、北米で販売されているテスラのModel YおよびModel 3は、レーダーを使用せず、カメラと機械学習を利用して、アドバンスト運転支援システムとオートパイロットをサポートしている。

レーダーとビジョンが一致しない場合、どちらを信じればよいでしょう?ビジョンの方がはるかに精度が高いのですから、センサーを混合して使うより、ビジョンを重視した方がいいでしょう。

自動運転を提供する企業の多くは、LiDARと高精細地図を使用している。つまり走行する場所の、道路の全車線とその接続方法、信号機などに関する非常に詳細な地図が必要になる。

カーパシー氏はワークショップの中で「主にニューラルネットワークを使用する、ビジョンベースの私たちのアプローチは、原理的には地球上のどこでも機能することができます」と語った。

いわば「生体コンピューター」である人間をシリコンコンピューターで置き換えることで、レイテンシーの低下(反応速度の向上)、360度の状況認識、Instagram(インスタグラム)をチェックしたりしない完璧な注意力を保ったドライバーが生まれる、とカーパシー氏はいう。

関連記事:テスラの北米向けModel 3とModel Yがレーダー非搭載に

カーパシー氏は、テスラのスーパーコンピューターがコンピュータービジョンを使ってドライバーの望ましくない行動を修正するシナリオをいくつか紹介した。例えばコンピューターの物体検知機能が働いて、歩行者を轢くことを防ぐ緊急ブレーキのシナリオや、遠くにある黄色の信号を識別して、まだ減速を始めていないドライバーに警告を送る交通制御状況に関する通知などだ。

また、テスラ車では、ペダル誤操作緩和機能と呼ばれる機能がすでに実証されている。これは、クルマが進路上の歩行者や、あるいは前方に走行できる道がないことを識別して、ドライバーが誤ってブレーキではなくアクセルを踏んだ場合に対応できる機能だ。このことによって、車の前の歩行者を救ったり、ドライバーが加速して川に飛び込んだりするのを防ぐことができる可能性が高まる。

テスラのスーパーコンピューターは、車両を取り囲む8台のカメラからの映像を毎秒36フレーム収集しており、それらは車両を取り巻く環境について非常に多くの情報を提供すると、カーパシー氏は説明する。

ビジョンオンリーのアプローチは、世界中で高精細な地図を収集、構築、維持することに比べれば拡張性が高い。しかしその一方で、物体の検出や運転を担当するニューラルネットワークが、人間の奥行きや速度への認識能力に匹敵するスピードで、膨大な量のデータを収集処理できなければならないため、課題が多いということができる。

カーパシー氏は、長年の研究の結果、この課題を教師付き学習の問題として扱うことで解決できると考えているという。カーパシー氏は、この技術をテストした結果、人口の少ない地域では人間の介入なしで運転できることがわかったが「サンフランシスコのような非常に障害物の多い環境では、間違いなくもっと苦労するでしょう」と述べている。高精細な地図や追加のセンサーなどの必要性を減らし、システムを真に機能させるためには、人口密集地への対応力を高めなければならない。

テスラのAIチームの持つ画期的技術の1つは、自動ラベル付けだ。これは、テスラのカメラでクルマから撮影された膨大な量の動画から、道路上の危険物などのラベルを自動的に付けることができるものだ。大規模なAIデータセットは、時間がかかる多くの手作業によるラベル付けを必要としてきた。特に、ニューラルネットワーク上の教師付き学習システムをうまく機能させるために必要な、きれいにラベル付けされたデータセットを手に入れようとしているときにはそれが顕著だった。

だがテスラは、この最新のスーパーコンピューターを使って、1本約10秒の動画を100万本集め、60億個の物体に奥行き、速度、加速度のラベルを付けた。これらは、1.5ペタバイトという膨大な量のストレージを占めている。確かにこれは膨大な量に思えるだろうが、テスラがビジョンシステムのみに依存した自動運転システムに求められる信頼性を実現するには、さらに多くのものが必要となる。そのため、より高度なAIを追求するために、テスラはこれまで以上に強力なスーパーコンピューターを開発し続ける必要があるのだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:TeslaElon Muskスーパーコンピュータ自動運転コンピュータービジョン機械学習

画像クレジット:Tesla

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

スマホカメラとAIを利用して自動車事故の損傷を査定するTractable、最大の市場は日本

保険業界も21世紀の生活に合わせて進化しているようだ。コンピュータビジョンを利用して遠隔地から損傷を鑑定できるツールを開発したAIスタートアップが、多額の成長資金を獲得したことを発表した。

Tractable(トラクタブル)は、自動車保険会社と提携し、ユーザーがぶつけたクルマの写真を撮影して送信すると、その損傷具合を「読み取って」査定するサービスを提供している。同社はシリーズDラウンドで6000万ドル(約66億1000万円)の資金を調達したと発表、その評価額は10億ドル(1102億円)に達したという。

Tractableは、世界の自動車保険会社トップ100のうち20社以上と提携しており、過去24カ月間で収益は600%増加したという。Alex Dalyac(アレックス・ダルヤック)CEOによると「年間売上高は8桁ドル(数十億円)に達する」とのこと。「新型コロナウイルス感染拡大がなかったら、もっと早く成長していただろう」と、同氏は語っている。人々が自宅から出なくなるということは、クルマで路上を走る人の数が格段に減り、事故も減るからだ。

現在のTractableのビジネスは、主に交通事故の損害請求に関わるものが中心となっている。ユーザーは事故で損傷したクルマの写真をスマートフォンのカメラで撮影し、(通常のアプリではなく)モバイルサイトを介して写真をアップロードする。

しかし、同社は今回の資金調達の一部を利用して、自然災害の復旧(特に物的損害の鑑定)や、中古車の査定といった、隣接する分野へのさらなる事業拡大も計画している。また、スマートフォンで撮影された(サイズの小さな)写真を処理・解析するためのAIベースの技術を、より優れたものにするためにも、この資金は使われる。

今回の投資ラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とGeorgian Partners(ジョージアン・パートナーズ)が共同で主導した。これにより、同社の累計調達額は1億1500万ドル(約127億円)に達した。

深層学習の研究者であり、Razvan Ranca(ラズバン・ランカ)氏やAdrien Cohen(エイドリアン・コーヘン)氏とともにTractableを設立したダルヤック氏によれば、同社が特定し解決する「機会」(「事故」と言い換えることもできるだろう)では、自分のクルマに起きた問題として対処する場合、保険会社とのやり取りには時間がかかりストレスになっているという。

最近では、そんな問題により近代的なプロセスを導入する新世代の「インシュアテック」スタートアップが登場しているものの、Tractableがターゲットとする既存の大手保険会社には、そのプロセスを改善する技術が不足していた。

それは、フィンテックを推進するネオバンクと、時代に追いつくためにさらなるテクノロジーへの投資に躍起になっている既存の銀行との間に見られる緊張関係と似ている。

「事故に遭うと、面倒なことからトラウマになることまでさまざまな負担を受けます」とダルヤック氏はいう。「壊滅的なダメージを受け、立ち直るまでにはかなりの時間がかかります。保険会社とのやりとりも多いし、多くの人がやって来て何度も確認しなければなりません。いつになったら本当に元通りになるのかを把握するのは困難です。私達は、画像分類の飛躍的な進歩により、そのプロセス全体が10倍速くなると確信しています」。

このプロセスは現在、保険金請求のための写真撮影に留まらず、Tractableのコンピュータビジョン技術を使って、車両が修理不能になった場合に、どの部品をリサイクルして他の場所で再利用できるかを判断するのにも役立っている。ダルヤック氏によれば、2020年はこのサービスが人気を博し「2019年にTesla(テスラ)が販売した新車台数」と同じ数のクルマのリサイクルを支援したという。

これまでTractableと契約を結んだ顧客企業には、米国のGeico(ガイコ)をはじめ、日本では東京海上日動、三井住友、あいおいニッセイ同和損保など、多くの保険会社が含まれている。また、フランス最大の自動車保険会社であるCovéa(コベア)、英国Admiral Group(アドミラル・グループ)のスペイン法人であるAdmiral Seguros(アドミラル・セグロス)、英国の大手保険会社であるAgeas(エイジアス)も同社の顧客となっている。

現在、日本は同社の最大の市場であるとダルヤック氏はいう。その理由は、高齢化が進んでいることと、その一方で携帯電話の利用率が非常に高いことという2つの条件が揃っているためだという。そのため「自動化は単なる付加価値ではなく、必要不可欠なものとなる」とダルヤック氏は述べている。だが、近い将来には米国が日本を抜いてTractableの最大の市場になるだろうと、同氏は付け加えた。

物的資産や中古車への応用などの新たな方向性は、保険会社との提携だけに留まらず、より幅広いユースケースへの扉を開くことになるだろう。それによってTractableが新たな競争環境に入る可能性もある。同じようなビジネスチャンスを狙っている企業は他にもあるからだ。

例えば、一般的なスマートフォンのカメラを使って住宅の3D画像を作成する方法を確立したHover(ホバー)は、元々は住宅の修理の見積もりをするために開発された技術を、保険会社に販売する方法を検討している。

しかし今のところ、このような商機は十分に大きく、競合他社に勝つことよりも、需要を満たすことの方が重要だと考えられる。

Insight PartnersのMDであり、Tractableの取締役でもあるLonne Jaffe(ロン・ジャフィ)氏は、声明の中で次のように述べている。「Tractableの大規模な加速度的成長は、同社の応用機械学習システムの力と差別化を証明するものであり、それはますます多くの企業に採用されることで改善を続けています。何億人もの生活に影響を与える事故や災害から、世界がより早く回復することを支援するために活動しているTractableとのパートナーシップを、二倍に強化できることを我々はうれしく思います」。

Georgian PartnersのパートナーであるEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は、次のように述べている。「Tractableの業界をリードするコンピュータビジョン機能は、顧客の投資利益率と同社の成長を驚異的なペースで促進し続けています。TractableがそのAI能力を、中古車業界や自然災害復旧という数十億ドル規模の新たな市場機会に適用するために、引き続きパートナーとして協力できることをうれしく思います」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Tractable資金調達自動車事故深層学習画像認識機械学習保険

画像クレジット:Tractable

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化1枚のイラストと1台のスマホで気軽にキャラ配信が行えるアプリ「IRIAM」(イリアム。Android版iOS版)を運営するIRIAMは6月18日、表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」のサービス提供(βテスト)を開始した。約10秒の生成速度(キャラクター生成に限る。同社調べ)・描画データ約1MBとしており、表情の生成も含める体裁でスマホ上での実用化を行ったという点で世界初の事例としている(2021年6月時点。同社調べ)。

同サービスは、Preferred Networks(PFN)による技術提供のもと、1枚のイラストを用意するだけでAIによりキャラクターを表情豊かに動かし、IRIAM上で配信できるようになったという。

手作業でのモデリングに関するコスト課題から、「AIによる自動キャラモデリング技術」の実現への注目度は高く、これまでにも数多くのアプローチが試みられてきたという。しかしその多くは生成に数時間がかかり、データ量の大きいキャラデータを扱うことになるため、スマホでのサービスの実用化水準には程遠い状態だったそうだ。

そこでIRIAMは、動画データではなくモーションデータを用いるIRIAMのキャラ配信システムの特徴を活かした独自アプローチを採用。PFNの深層学習技術によるキャラクターの自動パーツ分けと、IRIAM独自開発の表情表現用モデリング・表情表現エンジンを組み合わせることで、端末内でのシームレスなアニメーション描画が可能となった。

今回開発された手法と従来のアプローチとの違いは、「高速かつ軽量」にある。IRIAMによると、生成速度は約10秒、描画データ約1MBという(キャラクター生成に限る。同社調べ)。豊かな表情の生成も含めたかたちでスマホ上での実用化を行ったという点で、今回の取り組みは世界初の事例となる(2021年6月時点。同社調べ)。

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化

2020年5月設立のIRIAMは、より感情豊かなキャラ表現を実現するために、AIによる自動キャラモデリングの改善を続けていく。社内の50%以上が開発メンバーで構成された自社開発型の体制で、スタートアップならではのスピード感を重視しているという。

PFNが技術提供、キャラ配信の「IRIAM」が表情も含めた「AIによる自動キャラモデリング技術」をスマホで実用化

 

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:IRIAM(企業・サービス)AI / 人工知能(用語)Preferred Networks(企業)日本(国・地域)

AIの中心に人間を据える新しいアプローチのVianai SystemsをSoftBank Vision Fund 2が支援

インドのIT大手Infosysの元CEOであるVishal Sikka(ヴィシャール・シッカ)氏が立ち上げたAIスタートアップVianai Systemsは米国時間6月16日、SoftBank Vision Fund 2がリードするラウンドで1億4000万ドル(約154億円)のシリーズBを調達したことを発表した。

この創業2年のスタートアップによると、このラウンドには業界の名士たちが数多く参加し、これまでの調達総額は1億9000万ドル(約209億円)を超えた。同社はシードラウンドで5000万ドル(約55億円)を調達したが、同社のシリーズAに関しては数字の発表がない。

また、パロアルトに本社のある同社の業務についても、詳報はない。しかしプレスへの声明でヴィシャール・シッカ博士は、同社が開発しているのは「これまでよりもベターなAIプラットフォーム」であり、それは人間の判断を広範なAI能力を発揮するシステムの中心に置くことによって、むしろ人間の潜在能力を増幅する。現在54歳のシッカ氏は2017年にInfosysのトップの座を辞したが、そこに至る数カ月は取締役会や創業者集団との間で考え方の鋭い対立が続いた。

声明では次のように述べている。「VianaiはAIとMLの高度かつ多様なツールを駆使して顧客のデジタル変換(DX)のポテンシャルの増幅を支援しますが、それらのツールの使い方が他とはまったく異なり、人間とテクノロジーの能力を思慮深く結びつけていきます。この人間中心型のアプローチにより、Vianaiは他のプラットフォームやプロダクトの企業から差別化され、顧客がAIの本当の約束を得られるようにします」。

同社はすでに、保険大手Munich Reなど世界最大で高く評価されている企業の多くを顧客として惹きつけている。

主な投資家はJim Davidson(ジム・デビッドソン)氏(Silver Lakeの共同創業者)やHenry Kravis(ヘンリー・クラビス)氏とGeorge Roberts(ジョージ・ロバーツ)氏(KKRの共同創業者)、Jerry Yang(ジェリー・ヤン)氏(AMEの創業パートナーでYahooの共同創業者)である。そしてFei-Fei Li(フェイフェイ・リ)博士(スタンフォード大学の「人間中心型AI研究所」の共同ディレクター)が、Vianai Systemsの顧問団に加わった。

SoftBank Investment AdvisersのシニアマネージングパートナーであるDeep Nishar(ディープ・ニシャー)氏は声明で、次のように述べている「AI革命が進行している中で、Vianaiの人間中心型のAIプラットフォームとプロダクトはグローバル企業に、より良い経営意思決定ができるための、オペレーションと顧客の両面に亘るインテリジェンスを提供します。シッカ博士とVianaiのチームと協力して、AIの約束を満たし、より本質的なDXをサポートしていけることは、極めて喜ばしいことです」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Vianai SystemsSoftBank Vision Fund資金調達

画像クレジット:Dhiraj Singh/Bloomberg/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

いにしえのASCIIアドベンチャーゲーム「NetHack」への挑戦から見えるAIの未来

機械学習モデルはすでにチェスや囲碁Atari(アタリ)ゲームなどをマスターしているが、Facebookの研究者たちは、AIを世界で最も難しいといわれる、無限に複雑な「NetHack(ネットハック)」に挑戦させて、さらにレベルを押し上げようとしている。

Facebook AI ResearchのEdward Grefenstette(エドワード・グレフェンステット)氏は次のように話す。「私たちはこのゲームで、最も利用しやすい「グランドチャレンジ」を構築しようと考えました。AIを解き明かすことはできませんが、より優れたAIを実現するための道筋を示すことができます。ゲームは、機械を賢くする要素、機械をダメにする要素について仮定を導き出す良い方法です」。

NetHackを初めて耳にする読者も多いだろうが、これは古今東西最も影響力のあるゲームの1つだ。あなたはファンタジー世界の冒険者で、毎回異なるダンジョンでどんどん危険な深みにはまっていく。モンスターと戦い、罠や危険を回避しながら、神と良い関係を築く。これは(はるかにシンプルな元祖「ローグ」の後の)最初の「ローグライク」ゲームで、間違いなく今でも最高で、ほぼ間違いなく最も難しい作品だ。

(なお、NetHackは無料で、ほとんどのプラットフォームでダウンロードしてプレイすることができる)

ゴブリンは「g」、プレイヤーは「@」、ダンジョンの構造は線と点で表すなどの、シンプルなASCIIグラフィックとは裏腹に、NetHackは驚くべき複雑さを持つ。というのも、1987年に登場したNetHackでは、その後も開発チームが交代しながら、オブジェクトやクリーチャー、ルール、そしてそれらを取り巻く無数のインタラクションを増やし続け、活発な開発を続けているからだ。

これこそが、NetHackがAIにとって非常に困難で興味深いチャレンジとなる理由の1つである。オープンエンドなNetHackでは、世界が毎回変化するだけでなく、すべてのオブジェクトやクリーチャーとインタラクションすることができる。インタラクションはほとんどが何十年もかけて手作業でコーディングされ、プレイヤーのあらゆる選択肢を可能にしている。

タイルベースのグラフィックにアップデートされたNetHack。今まで同様、すべての情報がテキストベースだ

「Atari、『Dota 2』、『StarCraft 2』などのゲームを進化させるために必要とされたソリューションは非常に興味深いものですが、NetHackには、それとは異なる課題があります。人間としてゲームをプレイするためには、人間の知識が必要です」とグレフェンステット氏は話す。

NetHack以外のゲームでは、勝つための戦略が多かれ少なかれ明らかになっている。もちろん、Dota 2のようなゲームは、Atari 800よりも複雑だが、考え方は同じだ。プレイヤーが操作する駒、環境というゲームボード、目標となる勝利条件がある。NetHackでもそれは同じだが、もっと複雑怪奇だ。まず、ゲームが細部も含め、毎回異なる。

「新しいダンジョン、新しい世界、新しいモンスターやアイテム、セーブポイントがないなど。ミスをして死んでしまったら、生き返ることはできません。現実の世界に似ていますね。失敗から学び、その知識で武装して新しい状況に臨むのです」と、グレフェンステット氏。

腐食性のポーションはもちろん飲むべきではないが、それをモンスターに投げつけたらどうだろうか?武器に塗るのは?宝箱の錠前にかけるのは?水で薄めたらどうだろう?人間はこれらの行為を直感的に理解するが、ゲームをプレイするAIは人間のようには考えない。

NetHackのシステムの深さと複雑さを説明するのは難しいが、その多様性と難しさはAIのチャレンジに相応しいとグレフェンステット氏は話す。

ニューラルネットワークではなく、(ゲームと同じくらい)複雑な決定木を用いたゲームプレイ用のボットは、何年も前から設計されている。Facebook Researchチームは、機械学習を用いたゲームプレイのアルゴリズムをテストできる学習環境を構築することで、新しいアプローチを生み出したいと考えている。

AIが認識している内容がラベルで表示されたNetHack

NetHack学習環境(NetHack Learning Environment、NLE)は2020年完成したが、NetHackチャレンジはまだ始まったばかりである。NLEは専用のコンピューティング環境にゲームを組み込んだもので、AIはテキストコマンド(指示、攻撃やポーションを飲むなどのアクション)でNLEとやり取りする。

野心的なAIデザイナーにとっては魅力的なターゲットだ。StarCraft 2のようなゲームの方が知名度は高いかもしれないが、ゲーム界のレジェンドであるNetHackで、他のゲームに適用されたモデルとはまったく異なる方法でモデルを構築するというのは興味深いチャレンジである。

また、グレフェンステット氏の説明のように、NetHackは過去の多くのゲームと比較して、利用しやすいゲームだ。StarCraft 2用のAIを作ろうと思ったら、ゲーム内の画像で視覚認識エンジンを実行するために、大規模なマシンパワーが必要だろう。しかし、NetHackはゲーム全体がテキストで構成されているため、非常に効率的に作業を行うことができる。ベーシックなコンピューターでも人間の何千倍もの速さでプレイすることができるので、(他の機械学習の手法には欠かせない)高性能なデバイスを持たない個人やグループでも挑戦することが可能だ。

グレフェンステット氏は「私たちは、大規模な学術研究機関に限定せずに、AIコミュニティに多くのチャレンジを提供できる研究環境を構築したいと考えていました」と話す。

今後数カ月間はNLEが公開され、競技者は基本的に自分の好きな手段でボットやAIを作ってテストすることができる。2021年10月15日に本格的な競技が開始されると、特別なアクセスやRAMのテストなどはできず、制御された環境の中で標準的なコマンドを使ってゲームを操作するように制限される。

競技の目標はゲームをクリアすることで、Facebookチームは、一定時間内にエージェントがNetHackの「アセンション」を何回行ったかを記録する。しかし「どのエージェントでもアセンションがゼロになるだろうと想定している」とグレフェンステット氏は認めている。結局のところ、このゲームは史上最も難しいゲームの1つであり、何年もプレイしている人間でも、数回連続で勝利することはおろか、一生に一度でも勝利することが難しいのだ。その他にも、いくつかのカテゴリーで勝者を判定するための採点基準がある。

このチャレンジが、より本質的に人間の思考に近い、新しいAIへのアプローチの種になることを期待している。ショートカット、トライ&エラー、スコアハック、ザーグ戦術(量で圧倒する戦術)はここでは通用しない。エージェントは論理体系を学び、それを柔軟かつ知的に適用する……さもないと、怒り狂ったケンタウルスやオウルベアに殺されることになる。

NetHackチャレンジのルールやその他の詳細については、こちらを参照のこと。結果は年内に開催されるNeurIPS(Neural Information Processing Systems、ニューラル情報処理システム)カンファレンスで発表される予定だ。

関連記事:AI応用のMRIは4分の1の時間で従来と同等の結果を得られることが盲検法で判明

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Facebook AI Research機械学習ゲーム

画像クレジット:Facebook / Nethack

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

UsideUのアバター採用遠隔接客ツール「TimeRep」がNTTドコモの5Gソリューションとして採択

UsideU(ユーサイドユー)は6月16日、遠隔接客ツール「TimeRep」(タイムレップ)がNTTドコモの法人顧客向け5Gソリューションとして採択されたと発表した。5G環境においてTimeRepを利用することで、低遅延でのアバター対話や高精細な動画共有機能による円滑なコミュニケーションが実現できるという。オリジナルのアバターを作成可能で、顧客に覚えてもらいやすいブランドを構築することも可能。

TimeRepとは、リアルな店舗とウェブの垣根を超えて、ヒトとAIアバターの協働による非対面・非接触・リモート案内を可能にする事業者様向けクラウドサービスだ。店舗での接客に加えて、購買や会員登録などの促進のために必要なウェブサービスへの導入対応もしており、接客販売のオムニチャネル化を実現できる。

販売業務では、店舗スタッフが常時現場をモニタリング・遠隔操作することで、顧客の動きに合わせ適切なタイミングで声かけができ、対面接客と変わらない販促効果が期待できるという。これは、実店舗・ウェブ接客いずれでも利用可能だ。受付業務では、自動シナリオ機能による無人案内で受付業務を効率化できるほか、必要に応じてスタッフを呼び出しての有人案内も行えるため、臨機応変に質の高い接客を実現できるという。アバターと生顔モードの切り替えも行える。

どちらの業務についてもTimeRepのアバター機能を活用することによって、オペレーターの採用効率を上げ、遠隔地での労働環境に幅を広げられるとしている。

また在宅など接客現場以外の遠隔地から、1スタッフが複数拠点の接客を行ったり、あるいは販売業務を行ったりできるという。顧客の問い合わせ内容に応じ対応スタッフを事前に振り分けたり、サイネージの前に立ったユーザーを確認しオペレーターから声をかけたりすることも可能。

さらに、店舗・時間・スタッフごとに稼働率の可視化による最適な人員配置を可能にしており、従来見える化されていなかった対話データの可視化・分析により、接客の質および顧客の分析も行える。

UsideUは今後の展望として、NTTドコモの法人顧客を通じ、より多くの消費者にTimeRepによるまったく新しい、安心快適な接客体験を提供し、売上拡大・業務効率化に貢献したいとしている。

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NTTSportictがアマチュアスポーツの自動撮影・自動配信が可能な「Stadium Tube Lite」を発表

NTTSportictがアマチュアスポーツの自動撮影・自動配信が可能な「Stadium Tube Lite」を発表

「あなたの頑張る姿を、あなたの誰かに届ける」をミッションとするNTTSportict(エヌティーティー・スポルティクト)は6月16日、アマチュアスポーツの自動撮影と自動配信を行うAIソリューション「Stadium Tube Lite」(スタジアム・チューブ・ライト)を7月16日より提供開始すると発表した。

NTTSportictは、ローカルスポーツの映像化・事業化を目指して、NTT西日本と朝日放送グループホールディングスの共同出資により2020年に設立された企業。先に「Stadium Tube Pro」(スタジアム・チューブ・プロ)をリリースしており、一部体育館や競技場において、特に新型コロナ禍での無観客試合の中継などに活用されている。

「Lite」は、イスラエルのAIカメラメーカー「Pixellot」(ピクセロット)と、メディア向けソフトウェアソリューションを提供する米国「Twizted design」(トゥイステッド・デザイン)との包括契約によって共同開発された。「Pro」の廉価版であり、「世界トップクラスのスポーツチームで使われるAIアルゴリズム」により、誰にでもスポーツ試合の映像化、録画配信の事業化などが行える。試合中継のみならず、アマチュアスポーツや学校スポーツの資金不足やDXの遅れで滞っている、練習やチーム強化に関する映像・データ活用、オンライン化にも貢献する。対応するスポーツは、サッカー、バスケットボール、野球、バレーボール、フットサル、アイスホッケー、ビーチバレーボールの7種目。

利用料金は月額2万9678円(税込)。7月16日より提供開始予定。6月16日から事前予約を受け付けている。200台限定で最大3カ月間月額料金無料キャンペーンも実施される。

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タグ:NTTSportict(企業)AI / 人工知能(用語)スポーツ(用語)動画(ビデオ)撮影 / 動画編集 / 動画制作(用語)ライブ配信(用語)日本(国・地域)

街の「にぎわい」など任意エリアのKPIを可視化しSNSトレンドと組み合わせ変化要因を示唆する「clarea」提供開始

データサイエンスで企業と社会の課題を解決するDATAFLUCTは6月15日、エリアに関連するデータを活用し「にぎわい」などのエリアKPIを可視化・モニタリングし、SNSなどのトレンドを掛け合わせることでその変化の要因も示唆する「clarea」(クラリア)の提供開始を発表した。

現在、「魅力的な街づくり」は、生活者、街の運営を担う企業や自治体の双方にとって重要なテーマとなっている。そのため、ディベロッパーや鉄道会社、自治体などは、街の魅力を創出するためにエリアに対して独自のKPIを設定し、施設建設、テナント誘致・イベント開催、交通改善など様々なエリアマネジメント施策を展開している。

しかし、エリアマネジメントの領域においては、関連するデータの膨大さや煩雑さから、KPIの定量把握から施策の評価・検証まで、データ活用が進んでいないのが現状という。

そこで、データサイエンスで企業と社会の課題を解決することを目指すDATAFLUCTは、ビッグデータをもとに、エリア独自のKPIや施策の効果、課題を可視化し、街づくりに関わる企業や自治体がデータドリブンな意思決定をするためのツールとしてclareaを開発した。同サービスは、都市のサステナビリティをテーマに同社が開発を進めるサービス群『DATAFLUCT smartcity series.』(データフラクト スマートシティシリーズ)の1つとしている。

また同サービスは、デジタルガレージが運営するアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通し、ディベロッパー複数社との共創で開発を進めているという。現場担当者のニーズを基に、「15分単位での細やかな時系列比較が可能な人流分析」「人流の変化に影響を与えた要因の推定」など、施策を細かに分析する機能も搭載した。

clareaは、主な機能として人流分析・回遊分析・インサイト分析を搭載しており、ダッシュボード上の操作で、エリアマネジメント施策の評価・検証が可能だ。単一のデータによる分析ではなく、複数のデータを掛け合わせることで「いつ、どこに、どのような人が、なぜ増えたのか」という要因分析までカバーし、データドリブンな意思決定をサポートする。

エリアのにぎわいを把握するのに役立つデータは、人流データ(GPS)、IoTデータ(カメラなど)、購買データ、SNSデータ・POIデータなど多数あるものの、それらを自社で収集・蓄積することは難しく、異なる形式のデータを組み合わせて分析するには高度な技術が必要という。そこでclareaでは、データ分析サービスを幅広く展開するDATAFLUCTの知見をもとに、データ活用に関する知識のない場合でも直感的に操作でき、必要な情報を得られるようデザインしているという。

また、にぎわいの重要要素である人流・回遊の状況をマップに表示し、グラフを用いた時系列比較(エリア・時間帯)が可能。変化が気になるポイントについて、SNSデータを活用したインサイト分析機能により、人流の増減をSNSのトレンドワードと紐付け「なぜ人流が変化したのか」要因の推定や、施策の名称を指定して「その施策がどの程度/どのような文脈で話題になったか」を表示する「イベントの効果推定」が可能としている。

今後DATAFLUCTでは、自社データのインポート機能や社内共有機能、エリア内の決済情報の時系列分析など、エリアマネジメント施策のクオリティをさらに向上させる機能の追加を予定しているという。にぎわい以外のエリアに関する他のテーマもカバーし、観光・防犯/防災・モビリティ・サステナビリティ・エネルギーなど多面的にエリアのKPIを可視化するサービスとしての展開も計画しているそうだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:DATAFLUCT(企業)日本(国・地域)

より良い選択を学ぶオートコンプリートで誰でも文章を早くかけるようになるCompose.ai、企業独自の言葉遣いにも対応

今日のGPT-3の世界では、テキストを扱う新しいソフトウェアサービス話題になることも、珍しくなくなった。Compose.aiもそんな企業の1つで、同社は独自の言語モデルを開発し、多くの人が文章をもっと早く書けるようにしてくれる。初期のプロダクトが早くも投資家の関心を引き、Craft Venturesがリードするシードラウンドで210万ドル(約2億3000万円)を調達したことを同社は米国時間6月8日の朝に発表した。

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Compose.aiは、ウェブを閲覧しているときにどこでも使えるオートコンプリート機能を提供する。AIを搭載したバックエンドは、ユーザーの声を学習し、コンテキスト(文脈)を吸収してより良い回答を提供したり、やがては企業の大きな声を吸収して文章のアウトプットを整える機能も備えている。

共同創業者のLandon Sanford(ランドン・サンフォード)氏とMichael Shuffett(マイケル・シャフェット)氏によると、Compose.aiは、5年後に平均的な人たちは書くときにすべてのワードをタイプしていない、と信じている。同社は、Compose.aiのChromeエクステンションで今後はもっと多くの人たちがそうなって欲しい、と述べている。ブラウザーのエクステンションなら、会社の許可がなくても使えるはずだ、と。

サンフォード氏とシャフェット氏の説明によると、同社の言語アルゴリズムはマルチティアのプロダクトだ。最初の段階として、インターネットそのものを読んで学習(主に英語)し、第2段階として具体的なドメイン、たとえばeメールというドメインを扱う。第3段階にはユーザーの声を学習し、そして今後の第4段階では、企業内で一般化している言語へのアプローチ、すなわちその企業独自の言葉遣いのパターンなどを扱う。

企業が従業員に共有言語モデルを提供することで、彼らが文章を書く際に言語や単語選択の好みを提示できるというのは興味深いコンセプトだ。このように強力で中央集権的なトーンという考え方は、役に立つものと知的に厳格なものの中間に位置する。しかし、多くの人は書くことに自分なりの工夫をしたくない、もしくは書くことをまったく好まないものだ。したがって、中央集権的なサポートを増やすことは、ほとんどの人にとって面倒なことではなく、むしろ時間を節約するハックになるだろう。

いずれにしてもCompose.aiは、新たに得た資金でスタッフを増やそうとしている。現在、フルタイムが3名と若干の契約社員だけだ。サンフォード氏とシャフェット氏によると、今後も小さな会社を維持し、少数の経験豊富な技術者と機械学習のスタッフでプロダクトチームを充実させたいという。

Composeの今後、どのような展開を行うのだろうか?創業者たちはTechCrunchに対し、少しずつ企業との対話を始めており、第4四半期末には有料サービスを開始する予定だと語った。これは早期の収益を意味し、スタートアップのランウェイを大幅に延長することになるだろう。

Composeが構築しているものは技術的にシンプルなものではなく、経済性を適切に調整するための興味深い作業が待っている。同社の創業者はTechCrunchに対し、同社のプロダクトが顧客のために実行するパーソナライゼーションの作業は、間違ったやり方をすると高くつく可能性があると述べている。2人は、将来的に月額10ドル(約1100円)のプランを経済的に魅力的なものにすることは可能だが、「ナイーブ」な方法で行えば、Compose.aiは同じアカウントをサポートするために500ドル(約5万4800円)の計算コストを費やす可能性があるという。

それはまずい。

同社は、間近に迫った有料プランが経済的にうまくいくと確信している。TechCrunchでは、機会があればそのバージョンの同社プロダクトを試してみたいと思っている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GPT-3機械学習Compose.ai資金調達文章

画像クレジット:danijelala/Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働し伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行開始

レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働で伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行を開始

ITや情報デザインを手がける「総合ソリューション企業」TRIART(トライアート)とトヨタ自動車九州は6月9日、トヨタ九州宮田工場のレクサス製造ラインにおいて、「熟練工が感覚的に発見するような超微細な不良を、人とAIとの協働で未然に検出」する不良予兆感知システムの試行を開始すると発表した。

今回の取り組みは、鋼板のプレス加工によりパネルを作る際に、ごくわずかな形状のズレや鋼板の伸長度の差を、プレス機内部に設置したサーモカメラの画像から検出するというもの。成型後のヒビ割れやその他の不具合を招きかねないこうした不良の発見は、これまで熟練工の感覚と経験に依存してきた。

TRIARTは、同社が開発し実績を積んできた、画像データを基にした感性情報処理技術「コンポジットAI『4CAS』」を使い、サーモカメラの画像からパネルの基準形状となるマスター画像を生成して、生産されたパネルとマスター画像との差異を算出することで、5秒に1枚作り出されるすべてのパネルの評価を行えるようにした。これにより、「どのような事例が現れると次に不良が発生するか」という法則性が得られ、「熟練工の精度」での不良予兆感知が可能になるという。

このシステムの最大の特徴は、「画像を生成するタスクをAIの学習のみに依存せず、途中で作業員が大まかな形状指定を行い、再びAIの演算に戻す」というフローだ。AIで全自動化するのではなく、作業員の技能や人の判断のほうが優れている場面では、人の力を活用してAIが補完という考えだ。こうしたフローをデザインすることが「多くの課題解決を迅速化させる」と同社は信じている。

TRIARTのコンポジットAI「4CAS」は、前後の文脈から画像や音声などの情報の意図を読み取る人の脳と同じように、複数のAIの相互作用、相互制御によって対象データの中から意味や性質の「まとまり」を抽出し、高精度の結果を得るというユニークなシステム。コンポジットは「複合」を意味し、4CADSは「認識と知覚のための」という意味を持つ。

トヨタと共同開発した今回のシステムは、コンポジットAI「4CAS」のAIプロセスをブラックボックス化しない構成を活かし、「製造業というフィジカルな現場で人とAIが台頭に協働する好例」だという。

この試行は、トヨタ九州宮田工場で行われる。ここはレクサスの製造拠点であり、各工程に世界トップレベルの熟練工が揃っている(アメリカの調査会社J.D.パワーの2016年「日本自動車初期品質調査」で1位など)。「今回のような新しい生産技術が熟練工にさらなる技能とセンスを磨く余力を作り出し、より魅力的な製品をご提供する糧となることを期待しています」とTRIARTは話している。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)画像解析(用語)トヨタ自動車九州(企業)TRIART(企業)日本(国・地域)

服を着たまま全身採寸が可能なBodygram、スマホ写真2枚で体脂肪率や筋肉量の計測実現

体組成データの推定計測機能やUI向上など、アップデートを実施

Bodygram Japanは6月7日、自社開発のAI採寸テクノロジーでユーザーの身体サイズを計測する無料アプリ「Bodygram」(Android版iOS版)」の大幅なアップデートを完了したと発表した。独自開発したAI技術により、スマホ1つで体脂肪率と筋肉量の体組成データを推定計測できるようになった。さらに、UIの向上や目指す体型に合わせた目標設定ができる「ボディゴール」機能も追加している。

AIで全身採寸だけでなく体組成データも推定計測に

これまでのBodygramアプリでは、スマホで撮影した正面・側面の写真2枚と、身長・体重・性別・年齢を入力すれば、服を着たままボディラインを自動で検出し、腹囲・肩幅・手足の長さなど全身24カ所のサイズを推定採寸していた。

今回のアップデートによって、スマホ写真2枚と基礎情報の入力といった同様の手順で、身体のサイズに関するデータだけでなく、体脂肪率や筋肉量といった身体の内部に関するデータの計測を実現した。より踏み込んだ日々のヘルスケアマネジメントにチャレンジしやすくなっている。

Bodygramアプリの技術的な根幹を担うAIは、収集した学習用の人体データで構築した独自アルゴリズムによるものだ。採寸データ算出時に画像からボディラインの推定検出を行い、さらにそのデータから各部位のサイズを推定分析している。

また、従来の仕組みに加えて、アプリは体組成と相関関係にあることが判明している顔の構造分析を行うことで、スマホ写真2枚で体組成データまで推定計測できるようになった。機能実装に向けて数千人分のデータ学習を重ねたという。

6月4日に開かれたオンライン会見で、BodygramのJin Koh(ジン・コー)CEOは「現在、AIによる体組成データの測定精度は体脂肪率がプラスマイナス2.5%、筋肉量はプラスマイナス1kgとなっています。四半期に1度、ユーザー情報をアップデートしています。Bodygramのユーザーは増えているので、この精度はより高まっていきます」と説明した。

UI向上と「ボディゴール」機能も追加

利用傾向から、ユーザーは1度だけ自身の身体を計測するではなく、複数回に確認していることもわかったため、アップデートではUIも見直した。ウエストやヒップなど各ボディーパーツをイラスト付きで細かくわかるようにし、前回の計測時における数値との増減も表示するようにしている。

さらに、計測した体型データや体組成データを元に、自身が目指す体型に合わせてゴール設定を行える「ボディゴール」機能も追加している。目指す体型に合わせて、ボディーパーツごとにゴール設定が可能。設定した目標や過去の体型と、現在の体型を簡単に比較できる。自身の身体が3Dアバターとして表示されるため、数値だけで目標を追いかけるよりも、達成度をよりビジュアル的に理解できる。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bodygram Japan人工知能アップデート日本アプリ

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

2017年創業のASTINAは、作業現場の自動化のための装置開発・設置・運用・保守までを一貫してサポートする自動化パッケージ「OKIKAE」(オキカエ)を提供している。これまで同社は、中小工場向けDXサービス「自動バラ積みロボットOKIKAE」、工場のケーブルやコネクターの挿入を自動化する「OKIKAE for ケーブル挿入作業」をリリースしており、第3弾として「OKIKAE for AI外観検査」という外観検査の自動化を行うパッケージを用意した。

製造現場における製品の不良品を検出する外観検査は、作業時間がかかり、高度な知見が要求される作業だが、人員不足が問題になっている。画像認識による外観検査の自動化は以前から行われてきたが、ラベルの有無など、あらかじめ設定された対象物を判別するものがほとんどで、「傷、髪の毛、糸くずなどのランダム性があるもの」の検査は自動化が困難だった。また、「ランダムな模様に対応しきれず、正常な模様でも傷や異物と判断してしまう」問題もあったという。ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始

「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

「OKIKAE for AI外観検査」の特徴として、ASTINAは次の5つを揚げている。

  • 加工装置や組立て装置とともにAI外観検査を組み込める
  • AIで種別判定可能なので、種類別の排出が可能に
  • 多種多様な業界の顧客のワークに対応
  • 現状の設備にAI外観検査、NG機構を設けることが可能
  • 多品種少量生産に適したシステムの設定が可能

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ASTINA(企業)AI / 人工知能(用語)画像認識(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)ロボット(用語)日本(国・地域)

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

2017年創業のASTINAは、作業現場の自動化のための装置開発・設置・運用・保守までを一貫してサポートする自動化パッケージ「OKIKAE」(オキカエ)を提供している。これまで同社は、中小工場向けDXサービス「自動バラ積みロボットOKIKAE」、工場のケーブルやコネクターの挿入を自動化する「OKIKAE for ケーブル挿入作業」をリリースしており、第3弾として「OKIKAE for AI外観検査」という外観検査の自動化を行うパッケージを用意した。

製造現場における製品の不良品を検出する外観検査は、作業時間がかかり、高度な知見が要求される作業だが、人員不足が問題になっている。画像認識による外観検査の自動化は以前から行われてきたが、ラベルの有無など、あらかじめ設定された対象物を判別するものがほとんどで、「傷、髪の毛、糸くずなどのランダム性があるもの」の検査は自動化が困難だった。また、「ランダムな模様に対応しきれず、正常な模様でも傷や異物と判断してしまう」問題もあったという。ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始

「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

「OKIKAE for AI外観検査」の特徴として、ASTINAは次の5つを揚げている。

  • 加工装置や組立て装置とともにAI外観検査を組み込める
  • AIで種別判定可能なので、種類別の排出が可能に
  • 多種多様な業界の顧客のワークに対応
  • 現状の設備にAI外観検査、NG機構を設けることが可能
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カテゴリー:人工知能・AI
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新薬発見のために膨大な数の化学合成を機械学習でテストするMolecule.one

ポーランドの計算化学企業Molecule.oneは、理論的な薬剤分子を現実のものとするための活動を拡大するため460万ドル(約5億円)を調達した。同社の機械学習システムは、有益と思われる分子を合成する最良の方法を予測するもので、新薬や治療法を生み出す上で重要な役割を果たしている。

Molecule.oneはDisrupt SF 2019のStartup Battlefieldに登壇し、彼らは大量の理論的治療法を考え出すが、それらの分子すべてを実際に作ることはできないという創薬業界が直面している難題を説明した。

エキゾチックな化合物を発想しそれを実際に試験したいが、その作り方がわからないとき、同社のシステムの出番となる。それらの分子は科学にとってまったく新しいもので、過去に誰も作ったものがないため、その作り方もわからない。Molecule.oneが作ったワークフローは、まず普通のありふれた化学物質からスタートして、段階的に既知の方法を適用していく。AからBへ、そしてCへ、Dへ、というように。もちろん、実際にはこんな簡単な手順ではない。

同社は機械学習と、化学反応に関する大量の知識ベースを利用してこれらの工程を作っていくが、CEOのStanisław Jastrzębski(スタニスワフ・ヤストルツニェフスキ)氏の説明によると、同社はそれを逆方向で行っていく。

「合成計画はゲームに似ています。このゲームの1つ1つの動きにおいて、私たちはボード上のピースを移動するのではなく、1対の原子を結びつけている科学的なボンドを外します。そのゲームの目標は、ターゲットの分子を、市場で一般的に手に入れることができそれらからターゲットを合成できるような分子へと分解することだ。私たちが使っているアルゴリズムは、DeepMindが合成手筋を見つけて碁やチェスをマスターするために使ったものと似ています」とヤストルツニェフスキ氏はいう。

共同創業者のPiotr Byrski(ピオトル・ベルスキ)氏とPaweł Włodarczyk-Pruszyński(パヴェウ・ヴウォダルチク・プルシェンスキスキ)氏によると、有機反応を予測することは決して容易なことではなく、これまで彼らは、システムを効率的かつ検証可能なものにするために大量のリソースを投じてきた。Molecule.oneは良いアイデアだけではなく、実行可能なアイデアを提供していると企業から評価されるように、定期的に社内でテストを行っています。

ベルスキ氏によると、Disruptでデビューしてからは年契約の顧客も増え、同社プラットフォームの機能も多くなった。また、ヴウォダルチク・プルシェンスキスキ氏によると、仕事の効率も上がったという。

画像クレジット:Molecule.one

「システムは成熟し、プラットフォームの拡張により1時間に数千種の分子の合成を計画できるようになりました。大量の分子合成機能を、膨大な量の候補薬剤分子を生成する創薬用のAIシステムと組み合わせると、すごく便利になります。多くの改良によって業界の信頼度も上がり、有意義な企業などとのコラボレーションもできるようになりました」。

確かに、顧客がひと握りではなく何十万もの治療用分子の経路について尋ねるようになると、問題はスケーリングになる。彼らにとって、製造コストを負担するのであれば、検討している化合物の1つが、同様の効果を持つ他の化合物よりもかなり容易に製造できるかどうかを確認するために、最初に出費を行う価値がある。はっきりとは言えないプロセス全体をシミュレーションすることなく、Molecule.oneにリストを送って数日後にレポートを受け取ることができる。

画像クレジット:Molecule.one

成功事例もあると思われるが、企業秘密が関係するケースも多いため、同社は顧客の成功例を明らかにしていない。しかし同社によると、他のバイオテック企業と同じく、現在は新型コロナウイルス治療関連の研究開発が多いという。

「私たちは、新型コロナウイルス関連の創薬に取り組む対象となる研究者にプラットフォームの一部を無料で提供しました。これにより、Yoshua Bengio(ヨシュア・ベンジオ)教授が顧問を務めるMILAのLambdaZeroプロジェクトとの永続的な協力関係が生まれました」とベルスキ氏はいう。

そのようなプロジェクトでは候補分子を、効果だけでなく製造のしやすさでも評価しなければならないため、同社の新たなスケール拡大方法をテストする機会も生まれている。

ベルスキ氏によると「まだ合成されていない薬を探すという意味では、非常に有望な化学空間の新領域を横断することができるため、この分野には非常に期待しています」という。

今回の投資ラウンドをリードしたのはAtmos Venturesで、参加した投資家はAME Cloud Ventures、Cherubic Ventures、Firlej Kastory、Inventures、Luminous Ventures、Sunfish Partners、そしてBayerの役員であるSebastian Guth(セバスチャン・グス)氏などの個人だ。

同社は、資金をチームの拡大と今後の拡大の継続に充てる計画だという。また今後もポーランドの企業でありながら、米国や西ヨーロッパにもオフィスを開きたいとのことだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Molecule.one資金調達ポーランド機械学習創薬計算化学

画像クレジット:Molecule.one

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SMITH&LOGISTICSが運送業向けに荷物の大きさを自動計測する装置を提供開始

SMITH&LOGISTICSが運送業向けに「荷物の大きさを自動計測する装置」を提供開始運送業や製造業にAIおよび数理アルゴリズムの技術を活用したソリューションを提供するTRUST SMITH(トラスト・スミス)グループ傘下のSMITH&LOGISTICS(スミス・アンド・ロジスティクス)は、5月30日、おもに運送業者向けに「荷物の大きさを自動で計測するシステム」の提供を開始したことを発表した。

このシステムでは、3Dカメラが荷物の形状を点群データとして読み取る。それを「ドライブレコーダーの個人情報を取り除くAI」の開発で培った画像認識技術や自動運転の研究開発で培った物体認識技術を活用して処理することで、その大きさを計測する。

このシステムには大きく次の2つの特徴がある。

  • 同社の画像認識技術による高精度な計測と高速計算アルゴリズムにより画像データ解析の時間が大幅に短縮される。
  • 導入業者の基幹システムでのデータ管理が可能なため、ラベル読み取り自動化システムと組み合わせるなど広範な活用が期待できる。

具体的には、さまざまな形状の荷物を扱う、荷物の積載率を把握して最適な積荷計算を行う、短い手作業時間で多くの混載を行うといった状況を想定して、運送会社の他、ECセンターの運営業者、食品や機材のメーカー、フォワーダーを対象顧客としている。

取り扱う荷物の種類や量、現場の明るさや広さに応じてカメラの台数などの調整が可能。

労働人口の減少による人材不足が深刻化するなか、新型コロナの小口配送の需要が増加する運送業界では、労働者の負担が大変に大きくなっている。物流現場では、さまざまな形状の荷物を正確に採寸する必要があり、手作業での測定の効率と精度の低下が心配されている。そこで同社は、持てる技術を活用した本システムの開発を思い立った。

親会社のTRUST SMITHは、東京大学の研究室の研究結果を事業化することを目的に創設されたベチャー企業のひとつ。SMITH & LOGISTICSは、「無人倉庫設立コンサルティング」を事業内容とする子会社として2020年10月に創設された。

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タグ:AI / 人工知能(用語)東京大学(組織)TRUST SMITH(企業)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)日本(国・地域)

AIチャットボット「りんな」のrinnaとUneeQを日本展開するデジタルヒューマンが協業、顔・声・視聴覚を持つ雑談AI実現

AIチャットボット「りんな」のrinnaとUneeQを日本展開するデジタルヒューマンが協業、顔・声・視聴覚をもった雑談AIを実現rinnaデジタルヒューマンは5月31日、rinnaの自由に雑談するAIチャットエンジンと、デジタルヒューマンの顔と音声で感情を表現するAIアバターを統合し、感情的につながるデジタルコミュニケーションが可能なAIキャラクターの開発で協業すると発表した。

今回の協業により、rinnaのAIチャットボット開発プラットフォーム製品「Rinna Character Platform」のユーザーインタフェースとして、デジタルヒューマンのAIアバター「デジタルヒューマン」が利用できるようになった。自由に会話する能力、顔と表情、音声、視覚、聴覚を備えたAIキャラクターの開発が可能としている。

また両社は、Rinna Character Platformとデジタルヒューマンを組み合わせたAIキャラクターの開発で協力する。Rinna Character Platformとデジタルヒューマンの組み合わせを、自社タスク指向型チャットボット製品に組み込んで顧客に販売するパートナーやAIキャラクターを企画するパートナーの開拓でも協力するという。

AIチャットボット「りんな」のrinnaとUneeQを日本展開するデジタルヒューマンが協業、顔・声・視聴覚をもった雑談AIを実現

rinnaは、MicrosoftのAI&リサーチ部門でAIチャットボットの研究を行っていたチームがスピンアウトして2020年6月に設立したAI開発企業。ディープラーニング技術を活用し、AIが文脈に応じた会話文を自動生成して人間と自然に会話する「共感チャットモデル」、AIが話し声や歌声で豊かに感情を表現できるようにする「音声合成システム」などの技術を発表してきた。これら最新技術は、会話内容や音声表現をカスタマイズしてキャラクター性を持たせたAIキャラクターを開発できる法人向けプラットフォーム製品「Rinna Character Platform」に応用されている。

AIチャットボット「りんな」のrinnaとUneeQを日本展開するデジタルヒューマンが協業、顔・声・視聴覚をもった雑談AIを実現

「Rinna Character Platform」新版の概要

デジタルヒューマンは、UneeQ(ユニーク)が開発するリアルAIアバター「デジタルヒューマン」のディストリビューターで、UneeQに代わり日本における事業を展開。デジタルヒューマンは、会話の内容に合わせて、顔の表情、声のトーン、唇の動き(セリフと同期するリップシンク)、ヘッドモーション、ボディモーション、マイクロアイモーション(眼球運動)が変化するスピーチアニメーション画像をリアルタイムに生成するというもの。

日本語に対応した音声認識機能を備え、新たな機能としてグループ会話において適切な人に個別対応する話者認識機能、コンピュータービジョンAPIを用いて、相手の個人特定、感情分析、年齢や性別などの分析や、相手が手にした物体(薬のパッケージなど)認識をリリースする予定。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)コンピュータービジョン(用語)自然言語処理 / NLP(用語)GPT / Generative Pretrained Transformeチャットボット(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)UneeQ(企業)rinna(企業・サービス)
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人間が操り理解できる大型AIの条件を探るOpenAIメンバーが創設したAI研究機関「Anthropic」

AIが物珍しい見世物のような研究プロジェクトの域を脱して、GPT-3のような業界の原動力になるほどの巨大な範型がいくつか登場してくるにともない、この分野にも進化が必要になってきた。そう考える元Open AIの研究担当副社長Dario Amodei(ダリオ・アモディ)氏は、数カ月前に彼自身の企業を立ち上げた。Anthropicと名づけたその企業は、彼の妹のDaniela(ダニエラ)氏が創業者で、人間による操作と理解が可能、そして堅牢な大規模AIシステムの開発を目指している。

アモディ氏らが取り組む目下の問題は、そうした極めて強力なAIシステムが、よく理解されないまま使われていることだ。彼らが関わったGPT-3も、驚くほど多彩な言語システムで、ほぼどのような話題に関するどのような文体のテキストでも、本物そっくりに作り出す。

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シェイクスピアやアレクサンダー・ポープの作例を見せて、韻を踏む二行連句を作らせてみよう。AIはどうやってそれを作るのか?AIは何をどう「考えて」いるのか?もっと悲しくてあまりロマンチックでない詩を作らせるには、どのノブとダイヤルをどれだけ回せばよいのか?言葉遣いや使用する語彙を一定方向に制限するには、何をどうすればよいのか?確かに、人間が値を変えることができるパラメータは随所に用意されているだろう。でも実際には、この極めて本物っぽい言葉のソーセージがどのように作られているのか、誰もよく知らない。

AIがいつ詩を作れるようになるかはどうでもよいとしても、それが百貨店で怪しい行動をウォッチしたり、これから判決を言い渡そうとしている裁判官のために判例を見つける仕事ならどうか。今日の一般的なルールでは、システムが強力になればなるほど、その行動を説明するのは困難になる。しかしそれは、あまり良い傾向ではない。

同社の自社紹介文にはこう書かれている。「今日の大規模な汎用システムには有意義な利点もありますが、予測不可能で信頼性を欠き、不透明なこともあります。弊社の目標は、こういった問題に関して進歩を作り出すことです。当面の間、主にこの目標に向かう研究に力を入れますが、将来的には、私たちの仕事が商用的価値と公共的価値を作り出す多くの機会があると予見しています」。

2021年は、AIの安全性を研究する@AnthropicAIで仕事をしてきたことを発表できてうれしい。安全性の研究とMLモデルのスケーリングを、社会的影響も考えながら組み合わせることに関して、私たちを助けたいという方は、弊社の求人ページanthropic.com/#careersをチェックしてください。

同社の目標は、今日の効率と処理能力が優先されるAIの開発に、安全性の原則を統合することのようだ。どんな産業でも、何かが最初から一体化されている方が、後から端っこにネジで取り付けるよりも簡単だ。今、存在する巨大なAIシステムを分解して理解しようとする試みは、構造の細部が最初からわかっているものを構築することと比べて、仕事量が膨大になるだろう。Anthropicは、後者を選んだようだ。

CEOのダリオ・アモディ氏は、同社とその1億2400万ドル(約136億2000万円)の資金調達を発表する短いポストで次のように述べている。「Anthropicの目標は、今よりも有能で汎用的で信頼性の高いAIシステムを開発し、それらを人びとのために展開していくための基礎研究の高度化していくことにある」。

その資金調達は、読者も予想したかもしれないが、投資家たちの顔ぶれが豪華だ。ラウンドをリードしたのはSkypeの共同創業者Jaan Tallinn(ジャン・タリン)氏、他にはInfotechのJames McClave(ジェームズ・マクレーブ)氏、FacebookやAsanaの共同創業者Dustin Moskovitz(ダスティン・モスコビッツ)氏、Googleの元CEOであるEric Schmidt(エリック・シュミット)氏、そしてCenter for Emerging Risk Researchなどの団体となる。

同社は公益法人であり、同社サイトの限られた情報によればその事業プランは、大型AIシステムの操作性と理解性の向上のための基礎研究となる。2021年中には、ミッションとチームが具体化し、初期的な成果が出るかもしれないため、より詳しい情報が得られるだろう。

ちなみに同社の社名は「anthropocentric(人間中心の)」に隣接したもので、人間の経験や存在との関連性を意味している。おそらく「anthropic principle(人間原理)」に由来するもので、宇宙に知的生命体が存在するのは、人間が存在するからだという考え方だ。適切な条件の下で知性が必然的に生まれるのであれば、企業はその条件を設定するだけでいい。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:OpenAIAnthropic人工知能資金調達

画像クレジット:DKosig/Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ピクシブとPFNがAIによるマンガ自動着色サービス「Petalica Paint for Manga」を法人向け試験提供

ピクシブとPFNがAIによるマンガ自動着色サービス「Petalica Paint for Manga」を法人向け試験提供

ピクシブPreferred Networks(PFN)は5月28日、AI技術によるマンガの自動着色サービス「Petalica Paint for Manga」(ペタリカ・ペイント・フォー・マンガ)を法人向けに試験提供すると発表した。

ピクシブとPFNは2019年11月よりイラスト自動着色分野で業務提携し、AI技術の1つである深層学習(ディープラーニング)を用いた線画自動着色サービス「Petalica Paint」の共同運営を行ってきた。AI技術によるマンガの自動着色サービス「Petalica Paint for Manga」は、Petalica Paintの新モデルとして開発されたものだ。将来的には、正式版リリースを経た後、培った技術を生かして個人ユーザー向けの提供も目指しているという。

Petalica Paint for Mangaでは、色のついたキャラクター画像を参考に、自動でモノクロ原稿上のキャラクターの着色が行える。また「カラーヒント機能」を使うことで、自動着色の結果に細かく調整を加えることも可能だ。

自動着色後に「髪・服・肌・目・背景」などの要素をレイヤー分けし、Adobe Photoshop画像(PSD)形式データとして書き出しを行う機能も採用。下塗りに自動着色を導入し、仕上げに各クリエィティブの制作・編集ソフトでハイライトや影を入れるなどの処理も行える。

ピクシブ内での比較によると、手作業での着色と比べて50%以上の作業時間短縮ができるという。作業品質の均一化も促進できるため、クリエイターは作品の品質を上げる作業に集中して取り組めるようになるとしている。

現在、海外の新たなマンガ文化ではカラーマンガがスタンダードであり、デジタル化とともに、カラーリング市況が活発化しているという。日本のマンガ産業においても、国際化と海外展開が本格化しているものの、カラーリング作業に求められる専門スキルの高さ、費用などが課題となっているそうだ。

Petalica Paint for Mangaの導入により、作品の魅力向上や海外展開を含む新たなユーザー層の開拓を進める事業者は、カラーマンガの制作時間やコストを削減し、制作者が高付加価値業務に注力する時間を増やせるとしている。

Petalica Paintは、PFNが開発し、2017年1月に提供を開始したオンライン線画自動着色サービス。白黒で描かれた線画ファイルをアップロードするだけで、深層学習の技術を使って完全自動着色または色指定の自動着色が行える。ピクシブのお絵描きコミュニケーションアプリ「pixiv Sketch」(ピクシブスケッチ)に導入されており、国内外のユーザーに利用されている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)pixivPreferred Networks(企業)日本(国・地域)

AIを使って道路補修が必要な箇所を特定するパイロット事業を米ユタ州で実施

朝、職場への通勤運転中に道路に穴があるのに気づいたり薄くなった車線を目にした場合、そうした欠損は誰かが地元の交通当局に苦情を申し立てて問題を指摘するまでなくならない。ユタ州拠点のスタートアップBlyncsy(ブリンクシー)は当局がそうした苦情に先回りして問題に対応するのをサポートしようとしている。

運動とデータインテリジェンスの会社である同社はPayverというAIを活用したテクノロジーを展開する。Payverは交通当局に、どの道路がメンテナンス作業や補修を必要としているか、最新情報を提供するためにクラウドソースのビデオデータを活用する。Blyncsyはこのサービスをコスト削減の価格で、そして長期契約なしで提供している。

ユタ州のDOT(運輸局)がPayverを試験する最初の機関で、6月1日からソルトレイクシティ地域で開始し、長さ計563kmの道路をカバーする。Blyncsyは数週間以内に他の州で実施するパイロット事業を発表する。

行政当局は通常、新しいテクノロジーを受け入れるのが遅い。米運輸省はスマートシティと高度な運輸オプションのための公的資金と民間資金に2億5000万ドル(約275億円)超を使ってきた一方で、そうした取り組みの大半は都市の公共交通をより地球に優しく効率的なものにすることに偏りがちだ。Blyncsyの創業者でCEOのMark Pittman(マーク・ピットマン)氏は、非効率的な道路メンテナンスは安全でないばかりでなく、より多くの二酸化炭素排出を引き起こすと主張する。

「Payverのインスピレーションは、ユタ州DOTのエグゼクティブディレクターが米国で最初に道路に関する状況をリアルタイムに把握する能力を持つという目標を立てた2017年に得ました。そしてその問題を解決するために取り組んできました」とピットマン氏はTechCrunchに語った。「一般の人が問題の把握に関わる必要がないよう、DOTは何が起きているのか、いつ起きるのかを自動的に知りたいのです。道路脇に瓦礫があったり停止標識がなくなっていたり、あるいはラインを引き直す必要があるとき、運輸局は人々が電話をかけて苦情をいうことなく、あるいは事故を起こすことなくどうやってその事実を把握するでしょうか」。

BlyncsyのPayverテクノロジーはあらゆるHD画像とビデオをNexarダッシュカメラなどさまざまなソースから集め、顧客に結果を提供するために機械ビジョン使ってデータセットを分析する。交通当局はそうした洞察をダッシュボードフォーマットで利用できるが、Payverは補修作業の優先順位を決めるメンテナンス管理ソフトウェアも統合している。

ユタ州DOTのパイロット事業では、Payverはまず自動車走行環境の基本要件である塗装ラインにフォーカスするが、舗装の穴、建設バレル、張り倒された標識、日々擦り減るものなどへと対象を拡大する。ユタ州DOTの交通・安全担当ディレクターRob Miles(ロブ・マイルス)氏によると、ユタ州DOTはこのパイロット事業に約9万ドル(約990万円)の予算を充てている。

「現在、我々は2年ごとに道路のLiDARスキャンを行っています。つまり常にデータ集めでそこら中を駆け回っていますが、すべての問題に対応できていません」とマイルス氏はTechCrunchに語った。「我々はまだ市民からの苦情で問題を把握しています。苦情ベースのシステムから、意見ではなく測定可能なデータに支えられたものへと移行できる異なるデータ収集システムを望んでいます」。

ピットマン氏は、横断歩道や安全な自転車レーンの場所に必要な補修の予測によるアクティブなモビリティフォームの最適化は、テクノロジーが高度になるにつれPayverにとって優先事項となると話した。テクノロジーの進化はモビリティにおける平等とインクルージョンをを維持するために重要だ。Payverはまた道路状況での人種的、そして社会経済的ギャップの仲立ちするのもサポートでき、これはDOTが平等なサービスを社会全体に届けるのをサポートする、とピットマン氏は話す。

「(米運輸長官の)Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏はこのほど、運輸がかつていかに構造的な人種差別とコミュニティの棚上げを助長したかについて語りました。我々が道路を作る方法は往々にして低収入世帯が高速道路近くに住むことをともなうものだからです」とピットマン氏は指摘した。

「道路のメンテナンスでも同じことが言えます。低収入の人々はさほど苦情を言わず、高収入の人は苦情を声にしがちです。しかし低収入のコミュニティの道路の穴の影響は壊れた車軸を意味します。これはその家族が生き残ることができるかどうかを決めることにもなります。高所得者が住むところではそうではありません」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Blyncsyユタ道路

画像クレジット:Blyncsy

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブロッコリーの収穫期をドローン画像とAI解析で診断、スカイマティクスの葉色解析サービス「いろは」が生育診断提供開始

ドローンによるリモートセンシングサービスを提供しているスカイマティクスは5月26日、葉色解析サービス「いろは」にブロッコリーを対象とした解析機能を新たに実装し、提供を開始したと発表した。

これまでブロッコリーの生産現場では、生産者が農地を歩きながら花蕾の生育を確認し、収穫のタイミングを判断するという運用が行われてきた。しかし、農地が広ければ確認に時間を要し、また人の目による確認作業は体力的にも大きな負担となっていた。

そこで「いろは」において、生産者が収穫適期の見極めを正確かつ効率的に行える追加機能として「ブロッコリー花蕾診断」が開発・実装した。

同機能では、AIが画像内の10〜15cm程度の花蕾を認識し、サイズ別に集計を実施。そして集計結果を確認することで、撮影時点の農地においてどの規格のブロッコリーが何%存在するのかを把握可能となる。ユーザーはドローンで農地の画像を撮影して「いろは」にアップロードするだけで、たった数時間で花蕾サイズ分布データが入手できるという。

実はスカイマティクスは、ブロッコリー生産を手がけている大規模農業生産法人からの相談を受け、2019年よりドローン画像を用いたブロッコリーの花蕾抽出技術および花蕾のサイズ判定技術の開発に取り組んできたそうだ。以来同社が収集したブロッコリー画像データは数万点に上り、今日においても全国のブロッコリー畑においてデータ収集を継続、日々解析精度の向上に努めている。

スカイマティクスによると、今後ブロッコリーの生産現場においては一斉収穫を前提とした機械収穫体系の導入が進んでいくとされ、農地内の収穫適期の判断がより一層重要となるという。ドローン×画像解析技術により、ブロッコリー生産者の収穫適期の判断の支援を行うとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)スカイマティクス(企業)ドローン(用語)農業 / アグリテック(用語)リモートセンシング(用語)日本(国・地域)