花王の衣類用洗浄シートと洗髪シートが国際宇宙ステーション・ISSに搭載決定、水を使わず清潔に

花王は11月22日、衣類の汚れや匂いを取る衣類用洗浄シート「Space Laundry Sheet」(スペースランドリーシート)と、簡単に頭皮や髪の汚れを拭き取れる洗髪シート「3D Space Shampoo Sheet」(スリーディースペースシャンプーシート)が、JAXAの「宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集」に採用され、2022年頃に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されることになったと発表した。

水が貴重な宇宙ステーションでは、衣類の洗濯ができず、宇宙飛行士は同じ服を何日も着ることになる。汚れがひどい衣類は廃棄するしかない。また洗髪も、ごくわずかな水と特別なシャンプーを使い、シャンプーが飛散しないよう注意しながら行う必要がある。こうした状況を改善しようと、花王はこれらの製品を開発した。

Space Laundry Sheetは、衣類用の洗浄液を染み込ませた不織布シート。水を使わず、汚れや匂いのある場所を拭き取ることができる。部分的ながら、洗濯機で洗ったときと同等の洗浄力があるという。抗菌、消臭成分も含まれている。

3D Space Shampoo Sheetは、洗髪用の洗浄液を染み込ませた、凹凸のある不織布シート。凸部で頭皮をマッサージしながら、頭皮と毛根部分の汚れを拭き取ることができる。水を使わないため、飛散の心配がない。「さわやかなみずみずしい香り」が付いている。

試作段階に宇宙飛行士に使ってもらいアンケートをとったところ、「地上より期待度を下げて適応していたISSでのやや不便な生活を、本品は快適にしてくれる可能性が高い」「運動後、短時間でリフレッシュするには効果的」などといった良好な反応が得られた。

この開発から得られた知見は、宇宙空間のみならず、「被災時や入院時、さらには水不足の国や地域への応用も期待されます」と花王では話している。

WHOが初のマラリアワクチンを承認、アフリカやその他感染地域の子どもたちへの接種を推奨

WHOが初のマラリアワクチンを承認、アフリカやその他感染地域の子どもたちへの接種を推奨

panom via Getty Images

世界保健機関(WHO)が、サハラ以南のアフリカおよびマラリア感染率が中程度から高い地域の子どもたちを対象に、マラリアワクチンRTS,Sの広範な接種を推奨する声明を発表しました。

WHOのテドロス事務局長は「マラリアワクチンは長い間実現できない夢だった。30年以上かけて作られたRTS,Sワクチンが公衆衛生の歴史を変えることになる」とコメントしています。

WHOはガーナ、ケニア、マラウイで2019年以降、80万人を超える子供たちを対象に実施した先行調査プログラムの結果に基づき、このワクチンをサハラ以南のアフリカや、マラリアの感染率が中程度以上の地域で展開すべきだとしています。

RTS,S/AS01 (RTS,S)と呼ばれるこのワクチンは”Mosquirix”という名称で知られています。テドロス氏は「待望の子ども用マラリアワクチンは、科学、子どもの健康、マラリア対策にとって画期的なものだ」と述べ「このワクチンを既存のマラリア予防法に加えて使用することで、毎年何万人もの若者の命を救うことができるでしょう」とコメントしています。

上記のアフリカでの先行調査の結果によると、このワクチンはマラリアの発症を39%、重症化を29%防ぐことができるとのこと。

数字だけならこれはそれほど高い効果とは思えませんが、これに虫を寄せ付けないコーティングの蚊帳などその他のマラリア対策を組み合わせることで、WHOは毎年26万人以上とされるマラリアの犠牲になる子供たちから数万人を助けられると述べています。

The Guardianによれば、ワクチンを開発したグラクソ・スミスクライン(GSK)は、最大で年間1500万回分を、製造にかかる費用の5%以下で供給するとしています。そのかわりとしてWHOとGSKは、パートナー企業や各国政府からの追加資金の提供を求めています。

WHOのアフリカ地域ディレクターのMatshidiso Moeti氏は「マラリアはサハラ以南のアフリカで何世紀も猛威を振るい、甚大な苦痛を感染者に与えてきました。今回のWHO勧告によって、この病気に負担を強いられている大陸に希望の光を提供し、より多くのアフリカの子供たちがこの病気から護られ、健康に成長できることを期待します」と述べています。

ちなみにこのワクチンは、今後のマラリア用ワクチン対応強化の始まりにすぎないとされます。

英オックスフォード大学が開発した、R21/Matrix-Mと称するマラリアワクチンはまだ試験段階ですが、今年4月に発表された研究でブルキナファソの子どもたち450人を対象とした1年間の研究で、最大77%の有効性を示したとされます。このワクチンはRTS,Sとは異なり、新型コロナワクチンと同じmRNAベースの新しい技術を用いています。

(Source:WHO。Coverage:University of OxfordEngadget日本版より転載)

ボールウェーブ・東北大学・豊田合成が空気中の新型コロナウイルスを1分以内に検出成功、高速ウイルスセンサー実現へ

ボールウェーブ・東北大学・豊田合成が空気中の新型コロナウイルスを1分以内に検出することに成功 、高速ウイルスセンサー実現へ

ボールSAWセンサー」の開発・製造を行う東北大学発スタートアップ「ボールウェーブ」は9月24日、東北大学東北大学大学院医学系研究科)、トヨタグループの電気機器メーカー豊田合成と共に、空気中のエアロゾルに含まれるウイルスを、抗体やアプタマー(特定の異物と結合してその機能を阻害する核酸分子)を使って捕捉し、「秒オーダー」でウイルス濃度を測定する新原理の確立を目指す「ボールSAWウイルスセンサの原理検証に関する研究」を進めている。その中で、エアロゾル中の新型コロナウイルス由来のタンパク質を、1分以内に捉えることに成功した。これにより、患者の呼気からウイルスが検出できる機器や、環境の空気中に浮遊するウイルスのモニターの開発の道筋が見えてきた。

将来的には、「情報通信機器に搭載して、ウイルスの拡散状況を実時間で可視化するシステム」の開発にもつなげたいとのこと。また豊田合成は、将来的には、新型コロナウイルスの除菌に有効な同社UV-C(深紫外線)LED技術との連携も視野に開発を進めるとしている。

2015年11月設立のボールウェーブは、その独自技術である「ボールSAWセンサー」の表面に抗体やアプタマーを固定しておくことで、水に覆われた状態のウイルスが付着すると、ウイルスのスパイク蛋白と反応してウイルスが補足されるというセンサーを考案した。この技術を核に、自動車部品の開発で培った表面処理技術を持つ豊田合成と、呼気中のウイルスや炎症蛋白を質量分析で検出する高精度診察法「呼気オミックス」の技術を持つ東北大学が協力して、このセンサーの開発を行っている。これを使えば、人からエアロゾルが放出されてから、1m以内であれば20秒以内(到達まで10秒、センサー応答時間が10秒以内)にウイルスを検出できるという。

ボールSAWセンサーとは、球の表面を繰り返し周回する弾性表面波(Surface Acoustic Wave)を利用したセンサーのこと。東北大学大学院工学科山中一司名誉教授らが開発した。現在、空気中のウイルス濃度をリアルタイムで検出できる方法は存在していない。また現在もっとも簡便な新規患者の検査方法であるイムノクロマト法抗原検査キットでも、検査に15分以上かかる。このボールSAWセンサーを使ったウイルス検出技術が確立されたなら、新型コロナウイルスの検査や予防が大きく進化するはずだ。

マイクロソフトが米国内オフィス再開の無期限延期を発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

マイクロソフトが米国内オフィス再開を無期限延期と発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

Stephen Brashear via Getty Images

米Microsoftは9月9日(現地時間)、従業員の米国内オフィスへの出社再開を無期限に延期すると発表しました。もともとは10月4日からの再開を予定していましたが、感染力の強いデルタ株の出現など、新型コロナウイルスの不確実性が増しているため、新しい日付は設定せず、公衆衛生上の指針に基づき安全に再開できるようになった時点で再開するとのこと。

再開を決定した際は、30日間の移行期間を設け、従業員が準備できるようにするとともに、データを確認しつつ、引き続き機敏で柔軟な対応ができるようするとしています。The New York Timesによると、米Microsoftはすべての従業員、ベンダー、ゲストがオフィスに入る際には、ワクチン接種証明書の提示が必要になります。

Microsoftによると、今年は世界中でMicrosoft社員16万人が自宅で仕事をし、2万5000人の新入社員がリモートで入社しましたが、Microsoftに仲間がいると感じるとアンケートに答えた人は過去最高の90%を記録。一緒にいると感じるために、物理的に一緒にいる必要はないことを示していると、リモートワークやハイブリッドワークの可能性を感じている様子。ただし、この前向きな傾向が継続するという保証はないともしています。従業員アンケートによると、ワークライフバランスやチームのつながりに対する満足度は、引き続き課題となっているとのことです。

なお、オフィス再開を延期したのはMicrosoftだけではなく、GoogleAmazonは2022年1月まで延期、Twitterは再開時期を未定としています。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけ

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけアップルは製品のお手入れ方法に関するサポートドキュメントを更新し、iPhoneやiPad、MacやApple Watch、HomePodやAirPodsを含む自社製品を消毒するために過酸化水素水(オキシドール)は使わないように注意を追加しました。その一方で、75%エチルアルコール含有ワイプを使って消毒しても問題ないことを確認しています。

以下、サポートドキュメントに追加された箇所の抜粋です。

70%イソプロピルアルコール含有ワイプ、75%エチルアルコール含有ワイプ、クロロックス除菌ワイプ (Clorox Disinfecting Wipes) を使い、Apple製品の通気性のない硬い表面、たとえばディスプレイやキーボードなどの外表面を優しく拭き取る分にはかまいません。漂白剤 (ブリーチ) や過酸化水素を含む製品は使わないでください。開口部に湿気や水分が入り込まないようにご注意ください。また、洗剤類の中に Apple製品を浸さないでください。布製や革製の表面には使わないでください。

これ以前にも漂白剤を使わないようにとの注意はありましたが、過酸化水素水への言及は今回が初めてのことです。

ほかiPhoneやiPad、iPodやMacおよびアクセサリー類など製品カテゴリ毎に注意書きが細々と書かれていますが、共通しているのは製品を消毒する際には開口部に水分が入らないようにすること、いかなる洗剤にも浸さないこと、スプレー式の液体クリーナーなどは使わない、といったところです。また拭き掃除するときは糸くずの出ない柔らかい布を使い、研磨布やタオル、ペーパータオルを使わないことも以前から呼びかけられていました。

いまだに新型コロナ禍が収束しないなかでは、ふだん使っているアップル製品を消毒する習慣は普及していると思われます。が、一般的な家庭用消毒剤の多くには過酸化水素水が含まれているため、含有成分を書いたラベルを読むように心がけたいところです。

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけ

(Source:Apple。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

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P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&G

NASAをはじめとする世界の宇宙機関はいま、月や火星の有人探査や基地建設を目指し競争しています。しかし、人々が地球から遠く離れた別の星で生活していくためには様々な問題をクリアしなければなりません。酸素はどうするのか、食料は……といったことは誰でも考えるものですが、意外と想像が行き渡らないのが、おそらく毎日発生する作業のひとつでもある”洗濯”です。

現状、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士たちは、洗濯機も洗濯に使えるだけの水もない軌道上では、何日間かは同じ服を着て過ごし、補給船が来たときに新しい衣服と引き換えに廃棄物として出す、というルーチンを行っています。

しかし、何日も同じパンツをはいていれば、密閉されたISS空間内では微妙に香ばしいかほりが漂ってしまうこともあるかもしれません。P&Gの洗濯洗剤ブランドTideは、この問題を解決すべく宇宙で使うための初めての洗濯洗剤を開発しました。この洗剤はISSのように水を繰り返し浄化して使うシステム内できちんと機能を発揮し、衣類から汚れや香ばしいかほりを分離してくれます。

NASAは”Mission PGTide”と題し、2022年にはISSでこの洗剤をテストすることを計画しており、Tideのペン形汚れ落とし商品”Pen”や拭き取りペーパー形の”Wipe”の成分が無重力空間でどのような効果を示すかをはかります。また洗剤だけでなく、月または火星のやや重力の弱い場所で使える洗濯機と乾燥機の可能性についても研究していくとのこと。

月や火星には、ISSのようには補給船はやってきません。そのため彼の地では洗濯は避けて通れない日常作業になるはずです。もしTideの宇宙用洗剤が使えるとなれば、貴重な水の消費を抑えることができ、それはまた補給船に乗せる物資重量を節約しその分をほかに回すことも可能になります。少なくともNASAが月面で替えのパンツを待つ飛行士の心配をする機会は減るはずです。

そして、宇宙で役立つ技術は地球上でももちろん役に立つはず。すすぎなどを繰り返さずとも完全に分解する洗剤などは、水の節約だけでなく排水を綺麗にし、廃棄物も減らす、環境に優しい洗剤になるかもしれません。

ちなみに、宇宙空間で洗濯を試みた事例としては、2002年から2003年にかけてISSに滞在した第6次長期滞在チームのケネス・バウアーソックス(Kenneth Bowersox)飛行士が、無重力環境下での洗濯デモンストレーションを行っていました。ただこのとき、バウアーソックス氏が洗濯したのがソックスだったかどうかは知りません。2009年には、ESAの宇宙飛行士がISSでの洗濯について述べており「靴下は1週間はき続ける」と説明しています。

(Source:BusinesswireEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
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DARPAがより軽く快適な生物・化学向け防護服の開発プログラム開始、感染症予防や治療提供など公衆衛生領域でも期待

DARPAがより軽く快適な生物・化学向け防護服の開発プログラム開始、感染症予防や治療提供など公衆衛生領域でも期待

DARPA

米国防高等研究計画局(DARPA)は、FLIR Systems、Leidos、Charles River Analyticsとの契約で化学・生物系の脅威から兵士やその状況に対応する人々を守るための、新しい個人用防護服の開発プログラムを立ち上げました。

パーソナライズド・プロテクティブ・バイオシステム(PPB)と称する個人用防護服は、既存の核・生物・化学物質向け防護服に比べより軽く快適で多様な危険に対応できることを目指しています。通常、このような防護服は結露防止用の通気孔を備えた不浸透性のゴムのような素材か、活性炭を含んだ通気性のある素材で作られています。この防護服は兵士の制服の上から着用し、さらにガスマスクなど保護具を装着して数日間にわたり戦闘や作業をこなせるよう作られています。

とはいえ、このような防護服は着心地が悪いうえに重く、新しく出てきた化学・生物系の兵器に対応できなくなりつつあります。そのためDARPAは広範な脅威に長時間対応可能な、軽量素材と分子技術の開発とそれを使った新しい防護服の開発を求めているわけです。

PPBプログラムマネージャーのEric Van Gieson氏は、今回のPPB開発プログラムは「脅威特有の脆弱性、熱的・物流的な負担、潜在的な被ばくリスクなど、PPEの限界を解決することを目的としています」と述べ「兵士への負担の少ない防護を提供する新スーツがあれば、脅威の有無にかかわらず、ミッション達成までの時間を短縮し、作戦の柔軟性を高め、任務に就ける期間を延長し、厳しい環境でも作戦を実行可能にする、非常に貴重な戦力になるでしょう」としました。

またPPB技術は、その開発に成功すれば軍用途だけでなく、公衆衛生の分野でも予測不可能な環境下での活動をしやすくする可能性があります。既知の感染症だけでなく新たな感染症に対する予防や、治療手段をその場に提供できるようになるかもしれません。

(Source:DARPA、Via:New AtlasEngadget日本版より転載)

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