Rocket Labが米国バージニア州の打ち上げ施設の5年間ライセンスをFAAから取得

ロケット打ち上げサービスのRocket Lab(ロケット・ラボ)は米国航空局(FAA)から重要なライセンスを取得(Twitter投稿)し、バージニア州ワロップス島にある米国拠点の施設から打ち上げが可能になった。同社はニュージーランドのLC-1発射台の時と同様に、バージニアのLC-2発射台の打ち上げ業者ライセンスを取得したことで、個々の打ち上げに際してFAAにミッション個別のライセンスを申請することなく複数の打ち上げを行えるようになる。

Rocket Labは2019年末にこのバージニア拠点のLC-2の正式な開所式を行ったが、いつ同社のElectron(エレクトロン)ロケットをそこで打ち上げるのかはわかっていない。おそらく新型コロナウイルス(COVID-19)および関連する障害によって発射台のデビュー計画が変わったのだろう。同社はLC-2に続き、ニュージーランドのLC-3発射台の最終調整を行っており、打ち上げ能力の強化をはかっている。3カ所の打ち上げ施設が完成し運用が始まれば、年間最大130回の打ち上げが可能になると同社はいう。

Rocket Labが米国拠点の施設を作ったそもそもの理由は、政府顧客に迅速なサービスを提供し、短期間に高頻度の打ち上げを可能にするためであり、FAAの複数発射ライセンスを得たことは同社の運用モデルにとって大きな恩恵となる。そのためにもワロップス施設の1日も早い実用化が望まれている。

関連記事:Rocket LabはCapella Spaceの衛星打ち上げに成功し通常の打ち上げ稼働状態に復帰

カテゴリー:宇宙

タグ:Rocket Lab 米国航空局(FAA)

画像クレジット:Rocket Lab

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXがフロリダからの初の極軌道ミッションの打ち上げに成功、同日2基打ち上げは次回に持ち越し

SpaceXは米国時8月30日、米国フロリダ州にあるケープカナベラルの東海岸打上げ施設から、画期的ともいえる初の極軌道への衛星打ち上げを実施した。今回のFalcon 9は、アルゼンチンの宇宙機関に代わって飛行したLバンド全偏光測定合成開口レーダーを搭載するSAOCOM-1B衛星と、クライアントであるTyvackとPlanetiQのための2つの小型衛星を含む3つのペイロードを運ぶミッションだ。

打ち上げはフロリダから米国東部標準時午後7時18分(日本時間8月31日午前9時18分)。今回の打ち上げには、SpaceXが以前に国際宇宙ステーションへ向けてNASAの代わりに2回の商用補給ミッションで飛行した第1段ブースターと、SpaceXが最近のインターネット衛星Starlink打ち上げに利用されたものだ。同社また、ケープカナベラルの着陸地点の制御された着陸でブースターの回収にも成功した。

今回の打ち上げは、SpaceXが米国時8月30日に実行する予定だった2つの打ち上げのうちの1つだ。発射台は異なるが同じ発射施設から打ち上げを計画していて、成功していれば歴史快挙だったが、その日の早い段階での悪天候のために予定されていた最初のミッションであるStarlink衛星の打ち上げはキャンセルされ、再調整されることになった。

SpaceXは最終的には1日に複数回のペースで打ち上げを進めたいと考えており、これはその野望を実現できるかどうかの大きな試金石となっただろう。しかし、同社がこれまでStarlinkの打ち上げにどれだけ積極的であったかを考えると、将来的にもダブルローンチの機会に遭遇する可能性が高いと思われる。

関連記事:SpaceXが2022年にMasten製の月面着陸機「XL-1」を初打ち上げへ、月の南極点へペイロード運ぶ

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Rocket LabはCapella Spaceの衛星打ち上げに成功し通常の打ち上げ稼働状態に復帰

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、ペイロードを失うという前回のミッション失敗を経て、正常な打ち上げ稼働状態に復帰した。わずか1カ月の間に、Rocket Labは前ミッションに使用されたElectron(エレクトロン)ロケットの欠陥を洗い出して問題点を修正。米国時間8月31日には、クライアントであるCapella Space(カペラ・スペース)のSequoia(セコイア)衛星を載せた打ち上げを、ニュージーランドの発射施設で成功させた。

Rocket Labの今回の「I Can’t Believe It’s Not Optical(光学画像じゃないなんて信じられない)」ミッションは、同社Electronロケットの14回目の打ち上げとして、日本時間8月31日12時5分に同社専用の発射台から打ち上げられた。Sequoia衛星は、スタートアップのCapella Spaceが開発した合成開口レーダー(SAR)衛星のコンステレーションで、一般の顧客が利用可能となる。展開が完了すると、このコンステレーションは1時間ごとに地球の高精細画像の提供を開始する。光学センサーではなくレーダーを使用することで、雲に覆われていたり、暗くなっている部分でも正確な画像が得られる。

関連記事:Rocket Lab clear to launch again after first mission failure attributed to electrical fault(未訳記事)

今回の打ち上げは、すべて計画通りに進んだように見える。ElectronはCapella Spaceの衛星を無事に打ち上げ、目標の軌道に放出できた。Capellaはこれまで、この衛星をSpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットの相乗りミッションで打ち上げるつもりでいたのだが、フライトの遅延を受けて、Rocket Labの独自ミッションとして打ち上げる方向に切り替えたのだ。

7月4日のRocket Labの事故の原因は、比較的小さな問題だった。電気的な故障が発生したため、安全対策としてロケットが停止したに過ぎない。調査の結果、システムの中の1つの部品が、本来行われるべき厳格なストレステストを経ていなかったことが判明した。Rocekt Labは、できるだけ短い時間で打ち上げ業務を通常の稼動状態に戻せるよう、将来そして現在ストックされているすべてのElectronロケットに速やかに修正を加えた。

Rocket Labでは、Electronのブースターを複数のミッションで再利用可能にする回収システムの開発にも取り組んでいるが、今回の打ち上げでは、このシステムに関連するテストは盛り込まれなかった。同社では、年内に予定されている残りの打ち上げのいずれかで、ブースター回収の実験を行いたいと考えている。

関連記事
Rocket Labが驚異的な回復力で早ければ8月27日に商用打ち上げを再開
Rocket Labの打ち上げは第2段ロケットの燃焼中に失敗、キヤノン電子開発の地球観測衛星などが消失

カテゴリー:宇宙

タグ:Rocket Lab ロケット

画像クレジット:Rocket Lab

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

目指せ、宇宙版ゴールドラッシュ

著者紹介:Mikhail Kokorich(ミハイル・ココリッチ)氏はMomentus(モメンタス)のCEO。同社は人工衛星向け宇宙輸送サービスを提供する最初の企業。

有人宇宙船Dragon(ドラゴン)の打ち上げに世界中が興奮した。この打ち上げ成功により、Falcon(ファルコン)ロケットの真っ赤な噴射炎が新しい時代―民間企業が宇宙産業に参入する時代―の到来を告げていることが、誰の目にも明らかになった。人類史上初めて、我々は単に「新大陸」を探索しようとしているのではなく、生物学的種として、新しい要素、つまり宇宙に進出しようとしている。

人類の歴史は、時間と空間をめぐる奮闘の歴史でもある。新たな領域を征服し、さらに遠くまで進んでいく。生活の向上や利益を求めて、あるいは、恐怖心や純粋な好奇心に突き動かされて、人間は、さらに速く簡単で、より安く安全に宇宙を征服する方法を見いだした。19世紀初頭にトーマス・ジェファーソンはナポレオンからルイジアナを買収した。これにより当時の米国の領土は実際に倍増したが、ジェファーソンは、大陸中央部の地域全体に入植者が住み着くまでに数千年かかると考えていた。

しかし、わずか数十年後にカリフォルニアで金が発見された。それにより、膨大な数の労働者が押し寄せ、資本的な動機が生まれ、新しい技術が必要になった。新しい入植者を乗せた数え切れないほどの幌馬車が往来し、鉄道が東海岸から西海岸まで糸のように張り巡らされ、町や定住地が生まれた。このようにして、200年以上前にジェファーソンが思い描いていたことが、わずか一世代の間に実現した。

私はモンゴルの小さな村で育った。最終的に史上最大の陸続きの帝国であるモンゴル帝国を築くことになるチンギス・ハーンが13世紀に諸部族統一を始めた場所の近くだ。そんなこともあって、私は早くから探検や探査の歴史に興味を持つようになった。シベリアの長い冬の間、薄明かりの中で、私はよく地理上の大発見に関する本を読んで過ごした。そして、あらゆる土地が発見され、あらゆるフロンティアが地図上に記録されてしまった退屈な時代を生きる自分の運命を嘆いた。

そのわずか数十年後に、人間による探索という面で、かつてなく心躍る時代を経験することになるとは想像もしなかった。

宇宙レースのこれから

近年、宇宙産業全体が、いわば宇宙版ゴールドラッシュとも言えるものを待ち望み続け、探し続けている。人間にとって宇宙がどれほど重要か、宇宙活動のために開発された技術が、衛星画像、気象情報、テレビ、通信といった地上の問題の解決にいかに貢献するかを語り尽くそうとすると、時間がいくらあっても足りない。しかし、いわゆる「宇宙フィーバー」、つまり、巨額の資金、エネルギーのある起業家、才能のあるエンジニアが一気に宇宙産業に流れ込むようなフィーバー状態が起こらないと、新しい「宇宙レース」を燃え上がらせることはできない。

現在、ロケット、通信、画像、人工衛星、有人飛行をはじめとする宇宙産業の市場規模は、全体で1000億ドル(約10兆7000億円)以下であり、世界経済の0.1%にも満たない。1990年代終わりのドットコムバブルの頃は、該当する産業に属する企業の総資本額が世界の合計GDPの5%を超えていた。1850年代のカリフォルニアで起こったゴールドラッシュの影響は非常に大きく、米国の経済全体を変え、西海岸は実質的に新たな経済圏の中心地となった。

現在の宇宙産業の市場規模は、世界経済に本当の地殻変動を起こすにはまだ不十分である。21世紀に変革を起こす可能性があるものは何だろうか。SpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)、Amazon(アマゾン)のKuiper(カイパー)、それよりも規模が小さいいくつかの企業が宇宙インターネットのメガコンステレーションを展開していることは広く知られている。しかし、現在の市場規模で、真の宇宙版ゴールドラッシュを引き起こせるのだろうか。ちなみに、世界の通信市場の規模は1.5兆ドル(約150兆円)という見事な大きさで、世界経済のほぼ1.5%を占めている。

無人自律運転車の乗客によるマルチメディアコンテンツ利用の急増、「モノのインターネット」分野の急成長など、複数の要因が同時に発生すれば、人工衛星を利用した通信サービスが中期的に1兆ドル(約100兆円)以上の規模に成長する可能性がある。そうなれば、このセグメントが宇宙産業の市場規模をさらに成長させる原動力になる可能性がある。もちろん5%(ドットコムバブル期の数字)には満たないが、世界経済の1%に達すれば見事な数字だ。

ただし、通信、衛星画像、ナビゲーションは重要ではあるが、これらは宇宙時代の創始期から何十年も使用されている伝統的な宇宙向け応用技術である。どれも付加価値の高い応用技術であり、多くの場合、地上での代替手段がない。地球の監視とグローバルな通信を宇宙以外の場所から行うことは難しい。

そのため、過去の宇宙向け応用技術では、宇宙資産のコストが高いことが大きな障壁となっていた。宇宙資産のコストが高いのは、主に打ち上げのコストが高いことと、それまでに積み上がった1キログラムあたり数万ドル(約数百万円)というコストが原因だ。宇宙の真の産業化と、宇宙向けの新しいサービスやプロダクト(その多くは現在地上で製造されているものを置き換えることになる)を実現するには、カーゴを打ち上げて宇宙で輸送するコストに革命を起こす必要がある。

宇宙輸送

新しい領域を征服するには輸送が不可欠だ。鉄道、飛行機、コンテナなど、人や物を移動させる新しい方法が発明され、広まったことで、我々が知っている現代の経済が作られた。宇宙の探査も例外ではない。しかし、宇宙の物理的性質に起因する非常に大きな課題がある。地上では、我々は巨大な重力の井戸の底にいる。

重力に打ち勝ってカーゴを軌道に投入するには、秒速8キロメートルという驚異的なスピードまで加速する必要がある。これは弾丸の10~20倍の速さだ。ロケットの初期質量のうち、軌道に到達するのは5%未満である。鍵は再利用性と大量生産にある。ロケット科学を支配しているツィオルコフスキーの公式も、ロケットのサイズを大型にする必要がある原因となっている。スペースXやBlue Origin(ブルーオリジン)などの企業が戦略的に、大きな(というか巨大な)再利用可能ロケットであるStarship(スターシップ)やNew Glenn(ニューグレン)などを開発しているのもそのためだ。宇宙への打ち上げコストはすぐに、1キログラムあたり数百ドル(約数万円)を切るようになるだろう。

しかし、ロケットが効果的なのは、巨大な質量を地球低軌道に打ち上げる場合のみだ。別の軌道にカーゴを投入する場合、または重力の井戸の最上部、つまり静止軌道、高軌道、ラグランジュ点、月の軌道などに投入する場合、デルタブイをさらに増やす必要がある。秒速3~6キロメートル以上の追加が必要だ。従来型のロケットをこの用途に使用すると、失われる質量の割合は5%から1%未満に削減される。多くの場合、軌道に投入される質量が、低コストの巨大ロケットの容量を大幅に下回ると、さらに高額な(輸送されるカーゴ1キログラムあたり)小規模および中規模の発射装置を使用する必要がある。

これにはマルチモーダル輸送が必要だ。その場合、カーゴを地球低軌道に投入する低コストの巨大ロケットと、カーゴを目標の軌道、より高い軌道、月、太陽系の他の惑星まで輸送するためのスペースタグなどを使用する。Momentus(モメンタス)が2020年12月に最初の商用ミッションをファルコン9のライドシェアで飛ばすのはそのためだ。モメンタスは私が2017年に設立した会社で、「ハブアンドスポーク」方式による宇宙へのマルチモーダル輸送で使用するスペースタグを開発している。

スペースタグでは、最初は地球から運ばれた推進剤を使用できる。だが、宇宙における輸送規模が拡大し、地球低軌道よりも大幅に遠くへカーゴを輸送する需要が生まれると、地球の表面からではなく、月や火星、小惑星(地球近傍小惑星を含む)から入手できる推進剤の使用が必要になる。幸い、太陽系の進化のプロセスがもたらした恵みがある。それは水だ。ロケットの燃料として考え得る選択肢の中で、水は太陽系内に最も広く分布している候補物質である。

水は月でも発見されており、極に近いクレーターには巨大な氷が存在する。火星の地中にも、水が凍った巨大な海がある。火星と木星の軌道の間には、広大な小惑星帯がある。太陽系形成の初期に、木星の重力の影響で1つの惑星が形成されず、その欠片が数十億の小惑星という形でばらばらになった。そのほとんどには水が含まれている。木星のその重力の力によって小惑星が定期的に内部太陽系に「投げ出され」、地球近傍小惑星のグループが形成された。数万の地球近傍小惑星が知られており、それらのうち1000個近くが直径1キロメートルを超えている。

天体力学の観点で、水は地球から運ぶよりも小惑星や月から運ぶ方がずっと簡単だ。地球には強力な重力場があるため、重力の井戸の最上部(静止軌道、ラグランジュ点、月の軌道)に運ばれるペイロードと初期質量の比率は1%未満である。一方、月の表面からは元の質量の70%、小惑星からは99%を運ぶことができる。

これが、モメンタスでスペースタグの推進剤として水を使う理由の1つだ。我々が開発した新型のプラズママイクロ波推進システムでは、太陽光発電を電源として、水を推進剤(単純に反応生成物として使用)として使用して、宇宙で乗り物を推進できる。水を使用することで、宇宙用の乗り物がさらにシンプルかつ費用対効果に優れたものになる。

大規模かつ再利用可能で低コストのロケットが急増し、宇宙での最終地点まで運べるようになったことで、旧型の輸送方法の価格帯では不可能だったチャンスが生まれる。地球低軌道から月低軌道までの、地球と月の間のほぼあらゆる地点にカーゴを運ぶ価格は、5~10年以内に1キログラムあたり1000ドル(約10万円)を大きく下回ると想定される。楽しみなのは、従来の通信、監視、ナビゲーション以外の、まったく新しい種類の宇宙応用技術を導入するチャンスが生まれることだ。それにより、宇宙の真の産業化が始まり、地球から宇宙への産業の移行プロセスが引き起こされるだろう。

ここで、宇宙の未来に思いをはせてみたい。そして、今後5~10年で宇宙版ゴールドラッシュを引き起こしそうなものを予測してみようと思う。低コストの宇宙輸送で実現できる、次のフロンティアとなる応用技術は何だろうか。1兆ドル(約100兆円)規模の宇宙産業ビジネスになりそうなものはいくつかある。

エネルギー生成

世界経済におけるエネルギーのシェアは約8.2%であるため、エネルギー生成は最初に挙げられる最大のゴールドラッシュ候補だ。宇宙での発電には複数の素晴らしいメリットがある。まず、継続的に発電できることだ。宇宙では、太陽が24時間年中無休の大きな核融合炉となる。夜間や天気の悪い日のために電気を蓄える必要がない。結果的に、同じ表面積で、24時間あたりで地上の10倍のエネルギーを集めることができる。

気づきにくいことだが、薄暮時や夜間がなく、雲、大気、堆積した塵がない宇宙では、独特の発電環境を作り出せるのだ。微少重力によって、宇宙発電所の構造は大幅に軽量化され、最終的には地上の発電所よりずっと低コストになる可能性がある。エネルギーはマイクロ波かレーザーを使用してビームで地上に送ることができる。ただし、宇宙発電所を建設する場合、解決すべき大きな課題が少なくとも2つある。1つ目は、宇宙への打ち上げコストと宇宙内での輸送コストだ。

巨大ロケットと再利用可能なスペースタグを組み合わせることで、地球から最適な軌道に物品を輸送するコストが、1キログラムあたり最大で数百ドル(約数万円)削減できる。これにより、輸送のシェアが1キロワット時あたり1セント未満になる。2つ目の問題は、太陽輻射圧によって押しのけられる巨大なパネルを安定させるために必要な推進剤の量である。発電能力1ギガワットあたり、年間で500~1000トンの推進剤が必要となる。そのため、米国と同じ発電能力(1200ギガワット)を持つには、年間で最大100万トンの推進剤が必要になる(1時間でファルコン9を8回、または1時間でスターシップを1回打ち上げる必要がある量)。

地球と月の間で、発電は最も多く推進剤を消費する要素であるが、地球から推進剤を運ぶのは経済的にあまりに非効率である。答えは月にある。月の北極近くには常に光が届かないクレーターが40か所あり、そこには推定6億トンの氷がある。それだけで、宇宙での電力を使ったオペレーションを数百年は十分に支えることができる。

データ処理

データの計算と処理を行うデータセンターは、地上においてエネルギー消費量が最大規模であり、使用量が急増している。この10年で効率性が改善されたが、大規模なクラウドベースのサーバーファームの需要が増加しただけだった。米国のデータセンターだけで、年間で約700億キロワット時の電力を消費している。データを処理および保存するシステムの運用に必要な電力以外に、それらのシステムを冷却するためのエネルギーと環境への影響に対応する巨額のコストがかかる。そして、そのコストは政府と民間企業が支払うことになる。

どんなに運用を効率化しても、データセンターが拡張し続け、電力需要が増加し続けることは、経済面でも環境面でも持続可能ではない。マイクロ波やレーザーを使用してエネルギーをビームで地上に送るのではなく、宇宙でのデータ処理にエネルギーを使用できる。テラバイト規模やペタバイト規模のデータを地上に向けてストリーミング送信する方が、電力を地上に送るよりもはるかに簡単だ。AIなど、電力を多く必要とするアプリケーションは、遅延に対する耐性があるため、簡単に宇宙に移行できる可能性がある。

宇宙鉱山

人類が宇宙で生きる場合、結局は小惑星と月が鉱物の主な採掘場所となる。新しい宇宙経済、宇宙の産業化、宇宙での居住場所を構築、実現するには、希少金属や貴金属、建設資材に加え、レゴリスも使用されるだろう。ただし、月や小惑星から最初に採掘する資源は水だ。水は将来、宇宙経済における「石油」となる。

水には、小惑星や他の天体に分布しているという事実に加え、分布場所からとても簡単に抽出できるという利点がある。熱して氷を溶かすか、水和物から水を抽出すればよい。水は低温システム(液体酸素や水素など)がなくても保存できる。さらに、高圧タンク(イオンエンジンの推進剤である貴ガスなど)も不要だ。

同時に、水は異なる推進技術で使用できる独自の推進剤だ。電熱式ロケットエンジン(モメンタスのマイクロ波電熱式エンジンなど)で水として使用したり、化学ロケットエンジンで水素と酸素に分離したりできる。

マニュファクチュアリング

宇宙での輸送コストに価格破壊が起こると、人類にとって宇宙は新しい工業地帯になる可能性がある。極小重力は、光ファイバーなどの地上で利用する新しい素材の作成に役立つ可能性がある。強力な重力場で作成する場合に必ず発生する微少な傷も、宇宙では発生しない。このような傷があると、信号損失が増え、送信された光が大幅に減退する原因となる。また、未来の宇宙経済では、微少重力を使用して発電用のメガストラクチャー、旅行者向けの宇宙ホテル、そして最終的には人間の居住場所を構築できる。宇宙では、地球上では実現不可能な真空を簡単に用意できる。この真空は、結晶、ウエハース、まったく新しい素材など、超高純度の素材を作るうえで極めて有用だ。原材料の主な産地が地球ではなく小惑星や月になり、製品が主に宇宙での産業で消費されるようになったら、すでに宇宙での製造が支配的になっていると言えるだろう。

宇宙輸送の価格破壊によって将来実現する市場がもたらすビジネスチャンスは巨大だ。宇宙旅行がなくても、10~15年で宇宙の居住市場はほぼ2兆ドル(約200兆円)の規模になる。今後数世代にわたる人類文明の発達を推進する宇宙版ゴールドラッシュにつながることは間違いない。

最後のフロンティア

ソビエト連邦の最後の数年間、私は高校で学んでいた。ソビエトの経済は崩壊しつつあった。家の中は不衛生で、電気が使えないことも多かった。そのような暗い夜に、私は石油ランプの光で物理学や数学の本を読んで勉強していた。地元にはよい図書館があり、ノボシビルスクやモスクワなどの大都市にある大きな図書館から書籍や雑誌を取り寄せることもできた。それは私にとって、世界を見るための窓だった。素晴らしい経験だったと思う。

私は、宇宙船ボイジャーの飛行や太陽系探索についての本を読み、自分の将来のことを考えていた。科学と数学が大好きで得意でもあることを自覚したのはその頃だ。そして宇宙工学エンジニアになることを決めた。1993年の地元紙のインタビューで、私は記者に次のように言った。「高度な推進技術を勉強したいと考えています。宇宙探査に参加して、火星へ飛ぶこともできるようになること、そんな未来を夢見ています」

その未来が今、すぐそこまで来ている。

関連記事:ボーイングとNASAは無人軌道飛行の再挑戦を2020年9月に設定

カテゴリー:宇宙

タグ:コラム

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

ボーイングとNASAは無人軌道飛行の再挑戦を2020年9月に設定

Boeing(ボーイング)とNASAは、Commercial Crew(商業乗員輸送開発)計画におけるボーイングのCST-100宇宙船の定期有人飛行用としての認可取得に向けた予定を更新した。CST-100とボーイングの商業乗員輸送開発にかける強い想いは、2019年に初めての無人軌道飛行テスト中の思わぬ障害に遭遇した。ソフトウェアのエラーのために飛行予定が狂い(未訳記事)、ミッションを早々に断念。国際宇宙ステーション(ISS)まで送るという目標を達成できなかったのだ。

米国時間8月28日のNASAのブログ記事には、NASAとパートナーであるボーイングは、無人飛行テストの再挑戦を2020年12月よりも前に実施することを目指していると書かれていた。これには、完全に再利用可能なStarliner(スターライナー)CST-100が使用され、人は乗らないものの、軌道上のISSとのランデブーとドッキング、帰還、着陸の操縦、カプセルの回収といった打ち上げの際の乗員の作業を、ライブかつ完全自動のシミュレーションで行うことにしている。

2019年12月に行われた最初の軌道飛行テスト(OFT)では、同宇宙船は、計画どおりUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)のAtlas V(アトラス・ファイブ)ロケットに載せられフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられた。ところが、ロケットから切り離された直後、宇宙船に搭載されたミッションタイマーに問題が発生した。それによりスラスターが誤作動し、燃料が浪費される事態に陥った。通信障害も発生したため、NASAはこの事故に対処できず、計画どおりにISSまで飛行するために必要な燃料を残せなかった。だが、カプセルは無事に地球に帰還し、飛行中の貴重なデータを提供してくれた。

NASAとボーイングは、その後、ボーイングのソフトウェア開発計画を包括的に見直し、さらにNASA自身も官民パートナーシップに付随する実務も再検討し、いくつもの是正処置を講じた。その審査が2020年7月に完了し、現在、NASAとボーイングは、2回目のテスト飛行に向けて活動を再開している。

ボーイングにとって、この出直しにかけるものは大きい。商業乗員輸送開発におけるNASAのもう1つのパートナーであるSpaceX(スペースエックス)には、認証プログラムに関して少なくとも1年は先を越されている。SpaceXは先日、Dragon(ドラゴン)宇宙船を使った初の有人試験ミッションを成功させ、早ければ10月には最初の有人運用ミッションを実施する予定だ。

OFT-2がボーイングの思惑どおりに進めば、Starlinerの最初の有人試験飛行は、早ければ2021年6月の打ち上げが可能となる。最初の運用ミッションは、現在は2021年12月に設定されている。もちろん、これらすべての予定は確定でない。

関連記事:Crew Dragonテスト成功でSpaceXはNASA初の有人民間宇宙飛行事業者へ

カテゴリー:宇宙

タグ:Boeing NASA

画像クレジット:Boeing

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが2022年にMasten製の月面着陸機「XL-1」を初打ち上げへ、月の南極点へペイロード運ぶ

SpaceXは、NASAの商業月面ペイロードサービス(CLPS)プログラムの下で、NASAの打ち上げ契約を獲得した企業の1つであるMasten Space Systems(マステン・スペース・システムズ)の打ち上げパートナーとしての契約に漕ぎ着けた。Mastenの最初の月面ミッションは、すべてが計画通りに進めば2022年に実施される予定で、同社の月面着陸機であるXL-1を月の南極点まで運び、科学実験機器を含むNASAのペイロードや民間の乗客からの貨物を搭載する予定だ。

NASAのCLPSプログラムとは、民間企業や民間ベンチャー企業の顧客とプロバイダーを共有することで、最終的なコストを削減しつつ、民間宇宙企業とのパートナーシップを拡大するための取り組み。2024年までに米国人初の女性と次の米国人男性を月面に立たせることを最終目標としているNASAのアルテミス計画のための重要な役割も担っている。

Mastenの月面着陸機に搭載される科学実験機器が、月の南極に関する重要なデータを収集することで、NASAが月の南極を研究するのに役立つだろう。NASAのアルテミスIIIミッションは、月面の同じ部分に着陸することを目指している。今回のCLPSの着陸船によって得られたデータや月面に設置される機材は、将来の宇宙船の着陸の手助けとなるはずだ。

現在決定しているCLPSの下で予定されている月面着陸機ミッションは4つある。2021年6月のAstroboticのPeregrine着陸機打ち上げ、2021年10月のIntuitive Machinesの直後に続くIntuitive Machines、そして2022年12月に設定されたMastenの打ち上げ、さらには2023年にAstroboticのより大きなGriffin着陸機のVIPER打ち上げだ。Intuitive MachinesとMastenの打ち上げはSpaceXが請け負っている。一方、ロッキード・マーティンとボーイング社の合弁事業であるULA(United Launch Alliance、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のVulcanロケットは、AstroboticのPeregrineロケットを月に運ぶことが決まっている。

画像クレジット:Masten Space Systems

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Rocket Labは驚異的な回復力で早ければ8月27日に商用打ち上げを再開

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、7月4日の打ち上げ失敗でペイロードを失ったものの、驚異的な復活を遂げ、わずか8週間で次なる商用専用ミッションの打ち上げウィンドウを設定した。ニュージーランド現地時間で8月27日午後3時5分から12日間となる。

7月末、Rocket Labは、1カ月にわたる内部調査と事故原因の特定を行った後、打ち上げ事業の再開に欠かせないFAA(米連邦航空局)の認可を得た(未訳記事)ことを明らかにした。原因は、それまで問題なく作動していたが、なぜか厳密かつ慎重なテストを受けていなかったひとつの部品にあった。Rocket Labの創設者でCEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、製造工程の比較的単純な変更によって問題は軽減でき、現在のElectron(エレクトロン)ロケットの部品の改良も可能になると話している。

Rocket Labがこの問題解決に迅速に対応し、打ち上げスケジュールを再開できた理由には、この問題の性質も関係している。エラーは早期に発生し、Electronロケットのエンジンを安全に停止させたことで、目標の軌道に到達できなかった。だが、ロケットは爆発を逃れ、いかなる危険な事態にも至らなかった。つまりそのことが、エンジン停止後も、失敗の原因となった問題のデータを楽に取り出せるようにしてくれたわけだ。

他社の場合、打ち上げ失敗から立ち直るまでには、もっと長い時間がかかる。SpaceX(スペースエックス)は、2016年、Facebook(フェイスブック)のインターネット衛星を搭載したのFalcon 9(ファルコン・ナイン)の打ち上げ直前の事故から、正常な打ち上げスケジュールに戻るまで4カ月を要した。ただし、先に説明したとおり、失敗の種類はまったく異なる。

とは言え今回の件は、お金を払ってくれた顧客に、苦い体験からわずか1カ月後にサービスを再開できるよう設定されたRocket Labのモデルの回復力と柔軟性を示した。この事故が、ブースター回収により部分的に再利用可能なロケットの開発を遅らせることにはならない。

画像クレジット:Rocket Lab

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

月着陸船開発のispaceが30億円調達、新着陸船プラットフォームを公開

数年以内に民間月着陸船の月面投入を目指しているスタートアップのひとつ、ispace(アイスペース)は、シリーズBラウンドで30億円を調達した。2022年と2023年に計画している打ち上げまでに商用着陸船の開発資金の継続にあてる。資金調達の報告に伴い、この日本のスタートアップは、新たなデータプラットフォーム事業も発表した。これは、同社が月面で収集するデータを活用し、他の企業、宇宙機関、研究機関などに、それらが計画する独自の月面ミッションや、ゆくゆくは月の商用開発に役立つ情報に基づく基盤を提供するものだ。

280万ドルのシリーズB投資は、IF SPV1号投資事業組合(Incubate Fund運営)主導によるもので、宇宙フロンティアファンド(トヨタ、みずほ銀行などを含む同リミテッドパートナーによるファンド)、高砂熱学工業、三井住友海上火災保険からの資金も含まれる。現在までに同スタートアップは135億5000万円を調達した。この資金はまた、HAKUTO-R着陸船の大型版の開発にも使われる。これは、同社の3番目以降のミッションで使用される予定だ。

ispaceが進める月面データ事業は、「Blueprint Moon」(ブループリント・ムーン)と呼ばれ、月面や月周辺での人類の活動への投資の拡大を見越している。これまで、宇宙の商用化は地球の周回軌道環境に集中してきたが、NASAによる連続的な月ミッションの計画を始め、月周回軌道を巡る宇宙ステーションや恒久的な月面での有人活動計画により、世界中の他の宇宙機関の関心や投資が拡大している。

ispaceは、すでにその月着陸船計画の支援に数多くの戦略的民間パートナーを集めている。高砂熱学工業は、将来のミッションで独自の電気分解技術の月面テストを行う予定だ。三井住友海上火災保険は、月保険製品を開発し、将来の民間月ミッションの保険を引き受けることにしている。Blueprint Moonでは、将来月面で独自に収集する情報の他に、すでに公開されている月のデータも利用し、他の企業や政府機関が、将来、同様の事業の立ち上げ、研究、探査が行えるよう手助けする。同時にこれは、より意欲的な打ち上げに今後も集中できるよう、短期的な収益を同スタートアップにもたらすことにもなる。

画像クレジット:ispace

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

軌道上のデブリを減らすパーデュー大学開発の宇宙版シーアンカーが11月にテスト打ち上げ

宇宙への打ち上げをサービスとして提供しているFireflyが11月に行う予定の軌道飛行では、米国インディアナ州にあるパーデュー大学のエンジニアが開発した実験的なペイロードを運ぶことになる。そのペイロードとは、ロケットがミッションを完遂して積荷を展開したあと、ロケットを地球に戻すために使う宇宙版シーアンカー(海錨)とも言えるものだ。使用済みの打ち上げ用ビークルを安全に軌道から外すことで、最近増加傾向にある軌道領域で地球を周回する巨大なガラクタを1つ減らせることになる。

ビークル(ペイロードを輸送するのに使用されるロケット)の多くは、最終的には自力で安全に軌道から外れる。しかし各段のロケットをすべてとなると、100年を要することもある。最近では衛星のような宇宙船でも、寿命が来たら自力で脱軌道するために推力系を備えているケースもあるが、宇宙で運用される航空機にはロケットという推進系もともとがあるのだから、推力系と推進系の両方を持てば打ち上げの費用も高騰する。そして、計器類やその他のミッションクリティカルなペイロードのための十分なスペースもなくなるだろう。

パーデュー大学のチームは「推進剤ベースの自律推進システムも、宇宙船が機能するためには稼働している必要がある。逆に、ドラグパラシュートは故障した宇宙船でも安全装置で軌道離脱できる受動的な手段だ」と指摘する。

ドラグセイルは、抗力を発生させることによって機能し、打ち上げ機または宇宙船の軌道速度を補助なしで発生するよりもはるかに速く減少させることができる。宇宙で地球の周りを回っている物体は、非常に高速で移動しているため、その軌道を維持することしかできないのだ。

その実験的なシーアンカーは「Spinnaker3」と呼ばれ、展開すると面積は194平方フィート(18平方m)ある。そしてこれをプロトタイプとして今後、パーデュー大学で航空宇宙専門の准教授を務めるDavid Spencer(デビッド・スペンサー)氏が創業したVestigo Airspaceが、一連のシーアンカー製品を商業生産していく。そして小型の衛星とシーアンカーを付けた打ち上げ機の組み合わせが、地球軌道への打ち上げが今後かなり増えても、軌道上宇宙空間のゴミの低減に寄与するかもしれない。

画像クレジット: Purdue University video/Erin Easterling

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Blue Origin主導の開発チームが有人月着陸船の原寸大エンジニアリングモックをNASAに納入

Blue Origin(ブルー・オリジン)とその「ナショナルチーム」のメンバーであるLockheed Martin(ロッキード・マーチン)、Northrop Grumma(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)が、有人月着陸船のフルスケールエンジニアリングプロトタイプ(Blue Originプレスリリース)をNASAに納入した。NASAはこのプロトタイプの検査とレビューを進め、Artemis(アルテミス)計画の月ミッションに、最終的に利用する最終機体を作製するための準備を整える。

これによりBlue Originの有人着陸船は、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターでテストを受ける準備が整った。このモックアップは実際に機能するわけではないものの、例えばBlue Originが製造予定の下降モジュールやロッキード・マーチンが製造予定の上昇モジュールなど、計画されている着陸船システムのフルサイズのコンポーネントも組み込まれている。モックアップ全体の高さは40フィート(約12.2m)弱だ。

このモックアップにより、乗務員と相互作用するテストとシミュレーションを可能になる。テストとシミュレーションを早期に開始することで、Blue Originとそのパートナーは最終的に使われる着陸船を開発する際に計器とコンポーネントのレイアウト、キャビンからの窓越しの視認性、座席や出入り口などを含む、設計上のさまざな観点に対する貴重な洞察を得ることができる。

モックアップの設計を活用できるのと同時に、シミュレーションによって宇宙船の多くの要素の設計に役立つ情報を得られる。どちらもBlue Originとナショナルチームが手掛けていることで、宇宙船をあたかも使用しているような状況を生み出すことでのみ収集できる情報はたくさんある。コンピューターによるシミュレーションや過去の教訓だけから得られない情報も多いのだ。

Blue Originとそのナショナルチームは、NASAから最初の有人着陸システム(HLS)の契約を勝ち取った3社のうちの1つだ。今後も同チームは、このエンジニアリングモックアップの具体化を続け、開発が進むにつれて、最終的な生産モデルにさらに近付けるための要素を追加していく。最終的には、次の米国人男性と初の米国人女性を2024年までに月面に着陸させるという野心的な目標のために、NASAをサポートする。

画像クレジット: Blue Origin

原文へ

(翻訳:sako)

スコットランドの宇宙港を規制当局と政府が完全承認、年間12回の打ち上げが可能に

The Northern Times(ザ・ノーザン・タイムズ)の記事によると、スコットランドで初めて計画されていた宇宙港が完全に承認され、建設と運用が進められることになった。この施設は、サザーランドの北部、北大西洋に突き出た半島の上に作られる。ここは、英国初の再利用可能軌道ロケットの開発を目指すOrbex(オーベックス)のロケット打ち上げ施設となる。

この承認には、大量の書類を提出する必要だった。それには、地元規制当局とスコットランド政府に向けた完璧な環境アセスメントも含まれている。完全な承認とは、建設が開始でき、今後数年のうちにここからロケットを打ち上げられる道筋が出来たことを示す。

英国内からロケットを打ち上げられるようになれば、この地域で急速に発展しつつある民間宇宙産業の大幅な拡大が見込まれる。Orbexなどの地元サプライヤーによる小型衛星の打ち上げ事業が始まれば、英政府はロケット打ち上げ能力を手に入れるだけではない。先日、米国の打ち上げ企業が英国の施設を使ったロケットの打ち上げを認可する協定(未訳記事)を両国は取り交わしている。つまり、このスコットランドの発射場には、国際ミッションや大規模なグローバルビジネスを確保する可能性があるというわけだ。

The Space Hub Sutherland(ザ・スペース・ハブ・サザーランド)と呼ばれるこの宇宙港は、英宇宙局からの経済支援を受けることになっているが、比較的小さな施設で、打ち上げ台は1基、制御センター、2.5キロほどの道路を含めても、全体の広さは4ヘクタールほどだ。それでも、次世代の小型軌道ロケットには十分なスペースがある。小型ロケットは小型衛星の運用を専門に設計されているため、SpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン9)などの既存の民間ロケットのための発射場とは異なり、ずっと小さな施設で事足りるのだ。
画像クレジット:HIE
[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

インド初の地球観測衛星スタートアップが5.3億円を調達、最初の打ち上げを2020年後半に予定

バンガロールを拠点とするPixxelが、2020年後半にインド初の地球観測衛星の打ち上げを目指している。ソユーズロケットが予定しているミッションに同乗する。創業後およそ1年半の同社の動きは速いが、インド時間8月19日に同社は、その動きをさらに加速するために500万ドル(約5億3000万円)のシードラウンドを発表した。ラウンドはBlume Ventures、Lightspeed India Partners、growX venturesが主導し、多数のエンジェル投資家が参加している。

これはPixxelの最初の外部資金調達ではない。2019年にはTechstarsやその他の投資家から、プレシード資金として70万ドル(約7400万円)を調達している。しかし、今回の調達はビジネスのためのかなり多額の資金を得ることになる。スタートアップはそれを使ってチームを成長させ、地球観測衛星群の開発に引き続き資金を投入することを計画している。

目標は、2022年までに30台の衛星で構成されるこの衛星群の配備を終えることだ。同社のすべての小型衛星が軌道に乗れば、Pixxelネットワークは世界中を相手にしたイメージング機能を、毎日提供できるようになるだろう。スタートアップは、自社のテクノロジーは既存の地球観測衛星と比較した場合、はるかに高い品質のデータを提供できること、そしてPIxxel独自のディープラーニングモデルによる分析を用いて、地球規模で起きる可能性のある大きな問題や現象の特定や、予測さえも可能になるように設計されていることを主張している。

Pixxelのテクノロジーは、非常に小さな衛星(基本的には大型冷蔵庫のサイズ)にも依存しているが、既存の大規模な画像衛星ネットワークでも配信が難しいような非常に高品質の画像を連続して提供する。スタートアップの創業者であるAwais Ahmed(アワイス・アーメド)氏とKshitij Khandelwal(シュディチ・カンデルワル)氏の2人は、学部最終年度の途中で会社を設立した。創業チームの2人は、2019年にロサンゼルスで、TechstarsのStarburst Space Accelerator(スターバースト・スペース・アクセラレーター)プログラムに参加している。

カテゴリー:宇宙

タグ:Pixxel インド

画像クレジット:Pixxel

原文へ
(翻訳:sako)

Skyroraがアイスランドの移動式発射場から小型デモロケットを打ち上げ

宇宙開発スタートアップのSkyrora(スカイローラ)は米国時間8月16日の日曜日、アイスランドからSkylark Microロケットのテスト打ち上げに成功し、ロケットは26.86kmの史上最高高度を達成した。約4メートルの準軌道ロケットは、数日前に設置されたアイスランドのランガネス半島の移動式発射場から離昇した。

Skylark Microは、2023年に打ち上げを開始する予定の軌道小型ペイロード打ち上げロケットであるSkyrora XLの準備のために利用されている。アイスランドにおける今回の打ち上げの目的は、同社の移動発射モデルの柔軟性を実証することに加えて、Skylark Microに搭載され最終的にはSkyrora XLにも搭載予定の電子機器や通信のテストを行うことだった。

Skyroraは2020年6月にも、スコットランド沖の小島からSkylark Microを打ち上げている。しかし、同ロケットは約6kmしか上昇しなかったため、今回の最高高度への挑戦は大きな成功だ。このミッションには2段式ロケットの両ステージの回収の試みも含まれており、分離してパラシュートを展開し海に落下したが、捜索中ではあるもののまだどちらのステージも見つけられていないと、同社は明かしている。

別の場所から迅速に打ち上げられる能力は、今回のテストのもう1つの重要なデモンストレーションである。これは多くの小型ペイロード打ち上げスタートアップ企業の需要に応える、大きなメリットとなる可能性がある。さらに政府や軍といった顧客が、即応性の高い打ち上げサービスプロバイダーに求めている重要な機能でもあるが、もちろんSkyroraが最終的に導入を望んでいるSkyrora XLのような大型ロケットを開発するためには、大幅にスケールアップする必要がある。

関連記事
ロケット打ち上げスタートアップのSkyroraは消毒液とマスクの生産に注力
3Dプリンタでロケットエンジンを作り廃プラ燃料で噴射に成功したSkyrora

カテゴリー:宇宙

タグ:Skyrora

原文へ
(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがこれまでで最大規模となる約2000億円を資金調達

米国時間8月18日に米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、SpaceX(スペースX)は新たに19億ドル(約2000億円)を調達した。最初にReutersが報じている。以前、SpaceXが資金調達中だとBloombergが報じており、今回の調達でSpaceXのポストマネーバリュエーションは460億ドル(約4兆8000億円)になると予想していた。

まだ未公開企業であるSpaceXにとって、今回のラウンドはさほど驚きに値するものではない。Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるこのロケット打ち上げ会社は2020年初めから資金調達を模索していた。しかし投資家たちからの強い需要を受けて資金調達の規模を拡大した、とBloombergは先週報じている。

今回、募集枠を上回る申し込みがあったようだが、ラウンド参加者については情報は明らかになっていない(Bloombergの報道ではFidelity Investmentsが最大の出資者とされているが未確認だ)。このところの一連の成功を考えると、SpaceXは投資家から巨額出資を引き出すのに絶好の状況にある。

一連の成功には、米国からの打ち上げとしては初となる民間企業による有人宇宙飛行ミッションが含まれる。宇宙飛行士が乗り込んだDemo-2が2020年5月にフロリダから打ち上げられ、国際宇宙ステーションに2カ月滞在したのち宇宙飛行士は今月初めに地球に帰還した。このミッションの成功は、SpaceXが地球と国際宇宙ステーションの間の輸送サービスを定期的に提供できることを意味する。そして民間ツーリストや研究者ら向けの商業宇宙フライトサービスの提供にもかなり近づいた。

また、同社の宇宙船開発も順調で、今月プロトタイプの短いテストフライトを成功させている。加えて、NASAと米政府から打ち上げサービスでいくつかの複数年契約を獲得している。

同社は現在多額の資金を必要とする時期にあり、今回のラウンドもそうした理由によるものだ。巨大な衛星コンステレーションStarlinkの展開にも取り組んでおり、Starlinkの運用が始まればインターネット接続が難しいエリアに住んでいる人々に商業・家庭用のブロードバンドインターネットサービスを提供する。ちょうど8月18日朝、SpaceXはStarlink衛星58基を打ち上げたが、世界中をカバーするという最終目標を達成するにはまだ多くの衛星を打ち上げる必要がある。

関連記事
SpaceXが民間企業で人類史上初の有人宇宙飛行に成功、歴史にその名を刻む
衛星通信サービスStarlinkがベータテスト参加希望者に住所提出を依頼、利用可能地域の正確な把握のため
NASAとSpaceXは公式有人宇宙飛行の初号機打ち上げを10月23日に定める
SpaceXがStarlink衛星の打ち上げに成功、Falcon 9ロケットの再利用記録も達成

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX イーロン・マスク Demo-2 NASA Starlink 資金調達

画像クレジット:NASA/Bill Ingalls / Getty Images

原文へ
(翻訳:Mizoguchi

SpaceXがStarlink衛星の打ち上げに成功、Falcon 9ロケットの再利用記録も達成


SpaceX(スペースX)は宇宙からのインターネット接続を目指すStarelink衛星の11回目の打ち上げに成功した。これにより58基のStarlink衛星を追加し、トータルの衛星数は600以上となっている。ペイロードには地球観測衛星Planet(プラネット)3基も含まれていた。またFalcon 9のブースターの再利用回数も6回目と新記録となった。

東部時間8月18日午前10時31時分にケープカナベラル空軍基地内のSpaceX発射施設から打ち上げられた。ブースターは洋上でSpaceXのドローン着陸船「Of Course I Still Love You」に無事着陸した(Twitter投稿)。回収の成功によりSpaceX は自らが持つ再利用記録を更新した。このブースターは今後さらに再利用回数を伸ばすかもしれない。

今回の打ち上げでは、4回目のStarlink衛星打ち上げで洋上回収されたフェアリングを整備して再利用している。全体としてSpaceは創設者でCEOである Elon Musk(イーロン・マスク)氏が目指す「ロケットシステム全体の再利用」という目標に大きく近づいたことになる。この目標が達成されれば衛星打ち上げコストは劇的に下がるはずだ。

Starlinkネットワークについても、2020年中に米国とカナダの一部地域でベータサービスを開始するという目標に向かって着実に前進している。最近のPCMagの記事によると、 インターネット接続速度テストサイトのOoklaがStarlinkサービスを計測したところ満足できる接続速度が出ていたという。これはおそらく既存の衛星を社内のみ利用モードでテストした結果だろう。

今回のミッションにはカーゴベイを覆うフェアリングの洋上回収も含まれ、SpaceXの回収船であるMs. ChiefとMs. Treeが用いられた。SpaceXのツイートによれば、Ms. Treeがフェアリングの一方をキャッチした(未訳記事)。2分割のフェアリングの他方は海中に沈んでしまったようだが、今後引き上げて再利用可能だ。

関連記事
SpaceXがStarlink衛星打ち上げでFalcon 9ロケットの再利用記録更新に挑戦
SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」のベータテストに関する詳細
SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX Starlink Falcon 9

原文へ
(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXがStarlink衛星打ち上げでFalcon 9ロケットの再利用記録更新に挑戦

SpaceX(スペースX)は、米国時間8月19日火曜日の米国東部夏時間午前10時31分(日本時間8月19日午後11時31分)に最新のStarlink衛星を打ち上げる予定だ。これはStarlinkにとって11回目のミッションで、同社のブロードバンドインターネット衛星58機と、SpaceXの顧客であるPlanet(プラネット)のSkySats衛星3機が含まれる。

Starlinkのミッションはインターネットサービスがほとんどない、または劣悪な地域の顧客に、低遅延で高速なインターネット接続を提供するというもので、スペースXが取り組んできた計画の中でも重要なものだ。さらに今回のミッションは、スペースXのロケット再利用プログラムを推し進めるという点でも意義がある。

現在のミッションで飛行するFalcon 9の第1段ブースターは2018年に1回、2019年に2回、そして2020年にすでに2回と計5回飛行している。そして今回は、同ブースターにとって6回目の打ち上げとなる。これはSpaceXにとって、そして再利用可能なロケットにとっての新記録となる。また、大西洋に浮かぶ「Of Course I Still Love You」と名付けられたドローン着陸船を使って、ロケットステージを再び着陸させようとしている。

このFalcon 9ブースターが以前に飛行したミッションのうち、3回はStarlinkのものであり、これはスペースXが独自ミッションを行う際に再利用かどうかがいかに重要であるかを示している。衛星画像解析サービスなどを行うPlanetとのペイロードの共有は運用コストをある程度相殺されると考えられるが、Starlinkが実際に顧客に向けた有料サービスを開始し、収益を上げ始めるまで、現時点では大部分がSpaceXが負わなければならないコストとなる。

今回のミッションでは、以前のミッション(4回目のStarlinkの打ち上げ)で使用されたFalcon 9のフェアリング(ロケットの上部にあるペイロードを保護するノーズコーン)の再利用も含まれる。フェアリングの再利用はSpaceXがミッションのコストを軽減するためのもう1つの方法であり、これまでもその回収プロセスを進めてきた。なお、フェアリングのコストは約600万ドル(約6億3000万円)である。

打ち上げのライブ配信は、実際の打ち上げウィンドウの約15分前となる米国東部夏時間午前10時16分(日本時間午後11時16分)に開始される。

関連記事
SpaceXは今週の打ち上げで「ロケット再利用6回」の記録更新を狙う
SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」のベータテストに関する詳細
SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX Starlink Falcon 9

原文へ
(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXは今週の打ち上げで「ロケット再利用6回」の記録更新を狙う

米国時間8月18日、SpaceX(スペースX)はStarlink(スターリンク)衛星の新たな打ち上げを行う。この通信衛星の量産バージョンにとって10回目の打ち上げだ。今回、Falcon 9(ファルコン9)のミッションには、58基のStarlink衛星に加え、地球観測衛星Planet(プラネット)3基を搭載する。これはこのブースターロケット自身6回目の飛行であり、SpaceXにとって従来の記録を破る歴史的な出来事だ。

今回のミッションに使用される第1段ブースターは、これまでにSpaceX Starlinkミッションを3回、およびSpaceXの顧客であるTelstar(テルスター)とIridioum(イリジウム)の衛星を運ぶ2回のミッションに使用された。さらにSpaceXは、今回もブースターを回収するために軟着陸させる予定であり、成功すればこれも同社にとって新記録となる実績だ。

SpaceXの目まぐるしいほどのStarlinkの打ち上げは、ロケット再利用を推進する素晴らしい機会を同社に与え、打ち上げコスト削減に役立つことが期待されている。StarlinkはSpaceX自身のプロジェクトであり、通信衛星の「星座」を作るための運用コストを下げるためにもコスト削減は特に重要だ。Starlinkが提供するブロードバンドインターネットサービスはベータテストが始まろうとしている段階であり、会社に収益をもたらすまでにはまだかなりの時間がかかる。

もう1つ、SpaceXが再利用の限界に挑戦しているのが「フェアリング」と呼ばれるロケット部品の回収だ。ロケットが搭載する貨物を保護する役目を果たすフェアリングの、2つに分裂した両方を船の甲板から伸びたネットを使って回収する。そして7月のStarlinkの打ち上げでは、初めて2つのフェアリングの回収に成功した。フェアリングを再利用することで、1回の打ち上げ当たり最大600万ドル(約6億3000万円)のコストを削減できる可能性がある。

このミッションでは、顧客であるPlanet社との貨物ライドシェアリングも行っており、これも自社衛星の打ち上げにかかる出費を軽減する手段の1つだ。Planetなどの顧客が、Starlink打ち上げの相乗りにどれだけの費用を負担しているのかSpaceXは明らかにしていないが、打ち上げにかかる費用全体のかなりの部分を削減できるに違いない。

今回のミッションは、SpaceXがStarlinkインターネットサービス開業というゴールに一歩近づき、ロケット再利用プログラムの新境地の開拓を継続するものであることに加え、同社にとって100回目の打ち上げ(Falcon 9は92回目)になる。これはそれ自体大きな節目であり、新記録ずくめで記念すべきSpaceXの1年を象徴している。

関連記事
SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」のベータテストに関する詳細
SpaceXが初めて2つのフェアリングの回収に成功、再利用で1回の打ち上げにつき約6.4億円節約に

カテゴリー:宇宙

タグ:SpaceX Starlink Falcon 9

画像クレジット:SpaceX

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAとSpaceXは公式有人宇宙飛行の初号機打ち上げを10月23日に定める

NASAとSpaceXは、SpaceXのCrew Dragon(クルー・ドラゴン)宇宙船を使った公式としては初の有人ミッションである「Crew-1」の具体的な日程を設定した。Crew-1は、Shannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏、Victor Glover(ビクター・グローバー)氏、Mike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏、野口聡一氏の4人の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ。これは、NASAによるCrew Dragon宇宙船の開発・試験プログラムが認証されたあとに、最初の定期的なミッションとなる。

Crew Dragonの最終テストは、5月30日にBob Behnken(ボブ・ベーケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の二人の宇宙飛行士を乗せて打ち上げられたミッション「Demo-2」だった。両氏は今月初めに地球への帰還に成功してそのミッションを完了したが, 技術的にはまだCrew DragonとSpaceXのFalcon 9ロケットのための認証プロセスの一部だった。今回は正式に有人宇宙飛行の認定を受け、Crew-1から始まる通常ミッションの運用が始まるわけだ。

NASAは、9月下旬の時間枠を議論していたが、結局のところ10月下旬に目標を定めることになった。10月下旬には、ロシアからISSへ向かうソユーズ宇宙船の接近と、現在ISSに滞在しているクルーのローテーション終了による帰還が許可されるという。なお、Crew DragonとDemo-2ミッションのデータと認定基準の完全なレビューはまだ実際されていない。実際にはかなり計画どおりに氏進んだと思われるが、本当にそうであったことを確認するために、NASAとSpaceXのスタッフによって子細にチェックされる。

このデータのレビューがうまく進んで10月にCrew-1が飛ぶなら、Crew-2は来春に打ち上げられ、さらに4人の宇宙飛行士がCrew-1の宇宙飛​​行士とともに、鼈の科学と宇宙ステーションの運用のプロジェクトに備えることが可能になる。

画像クレジット:NASA

[<a target="_blank" href="https://techcrunch.com/2020/08/14/nasa-and-spacex-target-october-23-for-first-operational-astronaut-launch/“>原文へ]

(翻訳:TechCrunch Japan)

GOCCO.が上空3万mの成層圏への往復便サービス「shuttleD」の募集を開始

GOCCO.が上空3万mの成層圏への往復便サービス「shuttleD」の募集を開始

GOCCO.は8月10日、徳島大学 佐原理准教授の監修のもと、成層圏への往復便サービス「shuttleD」(シャトルド)の募集開始を発表した。地上からバルーンを使って上空3万mの成層圏へ小型モジュールをリリースして回収を行う。問い合わせ・依頼は公式サイトから行える。

shuttleDは「shuttleDモジュール」に検体を搭載。それを気象観測用バルーンに連結させて成層圏までフライトさせ、パラシュートで安全に海洋上へ着水したものを回収する。ヘリウム気球を使った成層圏へのリーチと実験モジュールの海洋上での回収を数多く成功させてきたチームがオペレーションを主導し、上空3万mという環境における様々な科学実験をより安価に実現する(ちなみに、エベレスト山頂は標高8848m)。

GOCCO.が上空3万mの成層圏への往復便サービス「shuttleD」の募集を開始

回収したshuttleDモジュールに付随する基本的なデータは、以下の通り。

  • 検体モジュール映像データ: shuttleDモジュールの状態を複数側面より映像記録。基本的にはアクションカメラでの撮影となる。特殊オーダーとしてその他機材の取付けは応相談
  • フライトログ/航路・高度・時間: GPSのトラッキング情報、高度、ヘリウム積載量などより、フライトを立体的にアーカイブ
  • モジュール内温度・湿度・気圧ログ: shuttleDモジュール内での温度、湿度、気圧の変化状況を記録。特殊オーダーとして紫外線や宇宙線等の計測も応相談

huttleDモジュールは、特殊フィルム加工によって防水性を保ちながら室外との通気性確保を実現しており、検体シャーレ(直径90mm、高さ20mm)を最大10個搭載可能。

利用者はシャーレ1個分〜スペースを借りることができ、シャーレ内に自由に検体を配置して成層圏までフライトさせることが可能。

GOCCO.が上空3万mの成層圏への往復便サービス「shuttleD」の募集を開始

また海洋着水時は、外装フレームの浮力により本体を常に海面より上に露出する状態をキープできるようにしており、モジュールへの海水の浸水は全くないという。

shuttleDでは、成層圏までフライトさせる検体、また期待する実験結果について十分に把握しながら、フライトまでのスケジュールを立てると同時にshuttleDモジュールの準備を進行。そこからフライト候補日の天候、場所に関する精細なデータを常時収集して、地上~上空3万m~海洋着水までの成層圏往復フライトシミュレーションを綿密に行い、shuttleDモジュールの成層圏へのフライト日時を決定する。

フライトオペレーションについては、管轄航空事務所および海上保安庁の許可をはじめ各種法令の遵守のもと各種飛行許可を取得の上実施。バルーンをリリースする地上地点のチームと、成層圏まで到達し海洋着水したshuttleDモジュールを回収する海上地点の2チームに分かれて実行する(海上地点には漁船で移動)。

GOCCO.が上空3万mの成層圏への往復便サービス「shuttleD」の募集を開始

shuttleD進行プロジェクトの第1弾として、「新しい食」の開発を目指し、shuttleDモジュールを特殊グロッセリーラックとして成層圏へと運搬する「Stratospheric Food(成層圏食品開発) ~成層圏環境を生き抜いた酵母菌達 ~」などを展開しているという。成層圏から地上へ持ち帰った酵母菌から「宇宙パン」と「宇宙ビール」を開発している。

関連記事
NASAが誕生まもない星を研究、光の波長を観測するサッカー場サイズの高高度気球で浮かべた成層圏望遠鏡で
成層圏気球で宇宙クルーズを目指すSpace Perspectiveが2021年に試験飛行を予定
成層圏上の気球からインターネット接続を提供するLoon、初めての商用化をケニアで
AlphabetのLoonとソフトバンクのHAPSMobileによる成層圏ネットワーク構想に世界的大企業が続々参加

求人広告でSpaceXのテキサス宇宙港の構想が判明

SpaceX(スペースX)は、人や物を輸送できる次世代宇宙船Starship(スターシップ)の建造と試験を現在行っているテキサス州ボカチカで、大きな計画を立てている。CNBCの宇宙担当記者Micheal Sheetz(マイケル・シーツ)氏が発見(Twitter投稿)した新しい求人広告(SpaceXウェブサイト)では、SpaceXの宇宙船建造と打ち上げ試験の場となっている小さなボカチカ地区にもっとも近い隣町ブラウンズビルでの「拠点開発責任者」を募集している。

この求人広告では、「SpaceX初の拠点開発を、チームの組織作りから完了まで監督する」マネージャーを求めている。ゆくゆくはボカチカを「21世紀の宇宙港」にする構想だ。この仕事には、設計から建設に至る全行程を監督することと、さらに必要なあらゆる作業許可と規制当局の認可を取得し、最終的に施設の建物を完成させる責任を負う。

SpaceXは、理想的な宇宙港がどのような姿になるかを表したコンセプトデザインを提示している。またCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、6月に、惑星間飛行と、地球上の2地点間飛行のための浮遊港にしたいという意図を示していた。それが発表された当時は、海上作業エンジニアを募集していた。それも場所はブラウンズビルだ。

この新しい求人広告からは、SpaceXが宇宙飛行体験の最初から最後までを自分たちで作り上げたいとの意欲が伺い知れる。ここは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)がニューメキシコ州に建設中のSpaceport America(スペースポート・アメリカ)とよく似ている。Virginは、民間宇宙観光旅行で提供する、宇宙船の客室空間と、打ち上げ場の地上設備の両面で、顧客エクスペリエンスに大きな重点を置いている。

SpaceXは、Crew Dragon(クルー・ドラゴン)を使用した有料の民間軌道飛行の計画も発表し、民間宇宙飛行士を打ち上げるための独自の宇宙船の準備を進めているが、NASAの宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏を乗せた有人ミッションを無事成功させたことで、有人宇宙飛行の認可が以前よりもぐっと近づいた。あのデモミッションは、その認可プロセスの最終段階だった。現在SpaceXは、早くも来年の打ち上げウィンドウを目指した、民間宇宙飛行士の飛行計画を軌道に載せたところだ。

画像クレジット:SpaceX

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)