中国、ICOを全面禁止――「金融詐欺、ネズミ講」と強く非難

ICO(Initial Coin Offering)に対する風向きが変わった。少なくとも中国ではそうだ。アメリカでもSEC〔証券取引委員会〕がICOのリスクを公式に警告しているが、最近急増してきた暗号通貨によるクラドファンディングを中国の当局は法規を改正して全面的に排除すると決めたようだ。

今日(米国時間9/4)、中国人民銀行を筆頭とする省庁を横断する委員会は次のように公告した[中国語原文]。これによればICOによる資金調達は「経済および金融の秩序を著しく乱す活動」として直ちに禁止された。

中国における金融ニュースメディア、Caixin〔財新〕 [中国語版]の記事によれば、同委員会は60箇所の暗号通貨取引所のリストを作っており、これらの証券取引所に対して監督当局は調査を行うと同時にその報告の提出が求められているという。これと同時に中国では新規のICOは凍結された。

ICOは新たな暗号通貨トークンを生成し投資家に売却することにより資金調達を行う手法で、多くの場合Ethereumが利用されている。効果として現実の株式を発行することに類似するため、金融監督当局がこのような活動を規制するかどうかに注目が集まっていた。

中国の委員会はICOの大部分は「金融詐欺であり、ネズミ講(pyramid scheme)である」と警告していた。このような見解はシンガポールのMAS〔シンガポール金融管理局〕も取っていたところだ。

「ICOは匿名取引を本質とするため、資金洗浄、テロリストの資金調達に利用されるリスクが高い。これによって巨額の資金が短期間に調達されている」とシンガポールの国営銀行であるMASは8月1日の声明で述べている。

ICOに関与している点で調査の対象となるか暗号通貨取引所がどことどこになるか、正確にはまだ不明だが。 ICOageICO.infoという中国の2大ICOトークンの取引所はサービスを中止した。また新規のICOの受付も停止している。両取引所ともこの運営停止は「自発的なもの」としている。

今年に入ってICOは世界各地で飛躍的に増加した。ゴールドマン・サックスのレポートによれば、2017年上半期に暗号トークンの売却により調達された総額は伝統的なベンチャーキャピタルによるアーリーステージの投資額を上回ったという。

今年のICOによる資金調達は16億ドルを超えたとされる。2017年にはいって、2社のbitcoinによる時価総額が10億ドル以上となっている。ただしその両社とも現在市場になんらのプロダクトも提供していないため、時価総額の意義は不明だ。

中国は世界でもっとも活発なbitcoinコミュニティーを擁しており、ICOブームでも資金調達側、投資家側の双方で中心的な役割を果たしてきた。

国営通信の新華社は7月に「中国企業は2017年上半期に10万5000人の投資家から3億8300万ドルを調達した」と報じている。

SEC〔アメリカ証券取引委員会〕はICOに対して声明を発表しているものの、まだ決定的な行動を取っていない。そこで世界の関心は中国に集まることになる。ICOを規制、監督するメカニズムはどのようなものがあり得るか、そもそも多様なICOを規制下に置くことが可能なのかが注目される。また暗号通貨市場における中国の重要な位置に照らして、この取締によりICO対し、また暗号通貨市場全般に対してどんな影響が生まれるのかもも興味ある点だ。

ベテランの暗号通貨専門家は今回の取締を2013年に中国当局が暗号通貨取引を禁じた事件と比較している。これにより元を通貨として暗号通貨を売買することが不可能になり、暗号通貨は大幅に下落した。しかしその後、元による預け入れが復活し、bitcoinは新高値を記録した。一部の取引所では5000ドルにも達しているという。

画像: crystal51/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Mozilla前CEOが設立したBraveが30秒で3500万ドル調達――テック界に広がるICOの可能性

暗号通貨の売却を通じて資金を調達するイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関しては、さまざまなニュースを目にするが、昨日の出来事ほど衝撃的なものはなかった。Mozilla前CEOのBrendan Eichが立ち上げたブラウザ開発企業Braveが、ICOで3500万ドルを調達したのだ。しかも、30秒以内に。

ICOでは投資に対して暗号通貨が配布されるようになっており、投資家は従来の株式よりも多様な形で資産を保有することができる。Braveは資金調達にあたり、独自の通貨Basic Attention Token(BAT)を10億枚売却した。その総額は15万6250ETH(=3500万ドル強)。同社によれば、さらに5億万枚のBATがユーザー獲得や「BATの開発」のために発行されたが、将来的な追加販売は考えていないという。

BraveのICOは過去最高額にあたり、彼らのビジネスはブロックチェーン技術のユースケースとしてはかなり興味深い。JavaScriptの考案者で2014年の疑惑のあとにMozillaを去ったEichは、Founders Fundをはじめとする投資家からこれまで700万ドルをBraveのために調達してきた。現状のネット広告のシステムに本質的な問題があると考えている彼は、ブロックチェーン技術を使って広告システムを効率化し、広告主や出版社、ユーザーという全ての関係者がメリットを享受できるような仕組みを提唱している

北米の若者に人気のメッセージングサービスKikも、モノやサービスの購入に使える”Kin”と呼ばれる仮想通貨の構想を最近発表し、Braveの後に続こうとしている。BraveはBATを広告システム内で流通させようとしており、同社によればBATの導入によって、広告詐欺を抑制できるとともに、出版社や広告主の効率性も向上するという。さらに彼らは、将来的にマイクロペイメントや電子商品の購入にもBATが使えるよう研究を重ねている。

また、Braveは同社のブラウザのメリットとして、短い読み込み時間、強固なプライバシー管理機能を挙げているほか、ユーザーはBraveのブラウザ上でコンテンツを読むだけでお金を稼ぐことができるようになるかもしれない。

直近では、ICOで調達した資金を使って広告プラットフォームの開発を進める予定だ。

ところで、BraveのICOで気になったのは参加者の少なさだ。Coindeskによれば、実際にBATを購入した人は130人しかおらず、中にはひとりで460万ドル(=2万ETH)分のBATを購入した人もいた。全体で見ると、投資総額の約半分がたった5人の投資家によるもので、投資額上位20人が発行されたBATの3分の2を手にしたとCoindeskは報じている。

この状況は、暗号通貨を使った資金調達によって、日常的に使っているサービスの開発元や気になっている企業の所有権を誰でも得ることができるという、Ethereumの哲学に反しているように映る。もちろん、何億ドルという金額の仮想通貨を販売するためには、冒険心溢れる企業や先見性のあるVCのように、多額の資金を運用している投資家も必要だが、個人投資家が入り込める余地を残しておくというのは、ICOが一般化するにつれて重要な課題になってくるだろう。

ICOのスケジュールについては明かしていないKik以外にも、アジアのペイメント企業Omiseが2000万ドル弱規模のICOを今月行う予定で、暗号通貨を使った資金調達に規模の大きな(そしてVCからの投資を受けている)テック企業も興味を持ち始めているようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Bitcoin、初の2000ドル台に――流通総額329億ドル

世界最大の暗号通貨、bitcoinが単位あたり2000ドルを記録した。 これはCoinbaseやKrakenなどいくつかの大規模な交換所を通じての記録だ。この価格をベースに流通しているbitcoinの総額を計算すると、329.2億ドルとなる。

Coindeskのグラフでも明らかなように、今年に入ってbitcoinは強い上げ調子だった。

Bitcoinが1000ドル台を最初に付けたのははるか以前、2013年だった。しかしあれこれの事情――当時最大のbitcoin交換所だったMount Goxの破綻などなど―により価格は低迷した。しかし金融機関がbitcoinやブロックチェーン・テクノロジーを試験的に採用したこと、中国で電子通貨に対する規制が実施されて状況が安定したこと、などにより、bitcoin価格は昨年末に1000ドル台に復帰した。2017年に入ると価格はさらに一本調子に上がった。

われわれがbitcoinとethereumが史上最高値を付けたことを書いたのは4月末だったが、その時点では1343ドルだった。たった3週間でbitcoinの価格50%もアップしたわけだ。先週だけでも価格は12%アップした。

しかし価格を上げている暗号通貨はbitcoinだけではない。有力金融機関向け決済プロトコルとなることを目指している中央集権的通貨、Rippleも1ヶ月で10倍の値上がりで今やbitcoinに次いで市場価値(流通総額)2番目の暗号通貨となっている。

同様にデベロッパー向けブロックチェーン・ベースの通貨プラットフォーム、ethereumも1コインあたり130ドルで市場総額も120億ドルに近い。先月の値上がりは2倍以上だった。

このためbitcoinはもはや市場総額の大半を占めていない。現在のbitcoinは市場総額の47%を占めている。数ヶ月以前は常に80%前後だった。

では他の暗号通貨がbitcoin以上に好調であった理由は何だろうか? 。bitcoinにはスケール拡大に問題があったという意見もある。bitcoinは急速にスケールを拡大したため取引の確認に遅延が生じた。この問題を避けるため高額の手数料を支払って小規模な取引所を利用するユーザーも出た。SegWitやBitcoin Unlimitedが提唱するテクノロジーを用いればこの問題を避けられるはずだったが、bitcoinのコードベースを事実上支配している有力なマイナー(採掘者)間で新しいソリューションを採用することに関してコンセンサスが得られなかった。【略】

2000ドルという値をつけたbitcoinは海図のない海に入ったといえる。一部の専門家は真の価値は1万ドル(かそれ以上)だと主張している。この価格を実現するにはbitcoinコミュニティーはスケール拡張に伴う問題を解決する必要があるだろう。そうなれば投資家もbitcoinのインフラはスケール拡大に対応できると納得するに違いない。

画像: Mike Lewinski/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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〔日本版〕”bitcoin”の表記には諸説あるが、原文記事は文頭あるいは大文字表記の団体以外、一律小文字表記なので日本語版もこれに従った。

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

暗号通貨を一般に普及させる方法について考えてみた

【編集部注】執筆者のNeil Haranは、エンジェル投資家で暗号通貨の提唱者。

投機筋がBitcoin市場やその他の代替通貨市場に早くから参入し、大きなリターンを狙っている一方で、一般の消費者に関しては、まだ暗号通貨を受け入れる準備が整っていない。

その理由はさまざまだが、暗号通貨の普及を妨げている大きな壁のひとつがボラティリティだ。

そもそもなぜ暗号通貨の価格はあんなに大きく変動するのだろうか?その究極的な理由は需要と供給に関係している。ほとんどの暗号通貨では流通量の上限が決まっているものの、投機的な動きのせいで需要が常に大きく変化しているのだ。

もちろん問題について語るのは簡単だが、重要なのはその解決策を模索することだ。

価格を安定させることの大切さ

価格の安定は、暗号通貨以外でも重要なことだ。どんな通貨であっても、等価交換を行う手段としての信頼を勝ち取るためには、その価値が安定していなければならない。価格の上下が大きいほど、普通の人が日常生活でその通貨を使う頻度は下がるのだ。

値上がりを期待して持っておくにしろ、値下がりを不安視して使わないようにするにしろ、そもそもまだ一般の人は暗号通貨を本当のお金として見ていない。

さらに価格の不安定さが、送金や為替、ATMの利用など通常の金融サービスにも悪影響をおよぼすため、暗号通貨を扱う企業は法外な手数料をとってリスクをヘッジしなければいけないのだ。

BitcoinのATMの中には、現金化に最大15%の手数料をとっているものさえある。これは、従来の決済手段よりも低コストで柔軟性のある通貨を作ろうという、暗号通貨の理念と矛盾してしまっている。公式通貨よりもメリットがなければ、一般の人は暗号通貨を使おうとさえ思わないだろう。

忍耐は美徳

価格のボラティリティは、Bitcoinの誕生直後から大きな問題だった。既にBitcoinの誕生から10年弱が経過しているにもかかわらず、なぜボラティリティへの対策が講じられていないのだろうか?

これには、他の分野でも往往にしてそうであるように、人間の性質が関わっている。市場を操り、出来るだけ高い金額で手持ちの通貨を売り抜こうとしている人がいる限り、価格を安定させるのは難しいのだ。新しい暗号通貨をリリースする前から価格の安定化について入念に計画していないと、いざ投機筋に目をつけられたときにどうしようもなくなってしまう。

出典: JaaakWorks/iStock/Getty Images

フェーズ1;安定したエコシステムの構築

ゼロから暗号通貨をつくるときは、まずしっかりとした土台を築かなければいけない。そうすれば後から手を加えなくても、その通貨は自ら軌道修正しながら成長していく。

需要測定

大きなパズルの1ピース目となるのが、確実な需要の測定だ。価格変動の主な原因は、需要の不透明さにある。他人の思いとは推し量るのが難しいものなのだ。自分がつくろうとしている通貨の実質的な需要を計測する手段があれば、問題解決にグッと近づくことができる。

その一方で、需要を測定する上で問題になってくるのが、投機筋のつくりだす人工的な需要だ。これこそ価格変化の問題の根本なのだ。投機的な動きが増えてくると、暗号通貨の価格に実需が反映されなくなってしまう。その結果、いつ破裂するかわからないバブルが生まれ、誰も汗水垂らして稼いだお金を暗号通貨につぎ込もうとは思わなくなる。

既存の通貨では、各地の中央銀行が価値の安定化に関わってきた。彼らは通貨の供給量を変化させることで、価格をコントロールしているのだ。しかし、暗号通貨は非中央集権的な性質こそが売りであるため、ボラティリティの問題を解決するためには、中央銀行に取って代わる全く新しいアプローチを取らなければいけない。インフレに頼らず、ユーザーの自由を損なうこともないような方法だ。

競争よりも協力:非中央集権的なコミュニティ

「団結すれば立ち、分裂すれば倒れる」

人々が協力し合うのを促すような通貨が存在すればどうなるだろうか?私欲ではなく、コミュニティの成長がインセンティブの根源にあるとすればどうだろうか?理想的なモデルでは、協力的な事業やサービスのネットワークが、ひとつの共同体としてお互いに作用し合い、通貨はこの協力関係によって形作られることになる(コントロールされるのではなく形作られるのだ)。そうすれば、人々はネットワーク全体が成長することにインセンティブを見出すようになり、さらにブロックチェーン技術を使えばそのプロセスを公平なものにできる。

また、各ユーザーはオンライン上での投機的な動きをとる代わりに、地元の取引所を訪れて通貨を売買するようになるだろう。そして通貨の価値を上げるかどうかはコミュニティ全体で決める。そうすれば、民主的なプロセスをとりながら、同時に通貨価値が急激に上下するのを防ぐことができるのだ。

公式取引所

取引の段階で、実際に人と会わなければいけないとなると、人間の心理には大きな変化が起きる。公式な場所での直接取引が必要となれば、自然と売買のボリュームが制限されるだけでなく、実需の計測も楽になる。”前線”にいる人たちが取引の様子を見てから、価格の引き上げに関する投票を行えばいいのだ。さらに、すぐには潰れないであろう取引所があれば、ユーザーはどこであれば通貨を売買できるのかと考えあぐねる必要がなくなり、ネットワーク全体に一貫性が生まれる。

経済的な側面以外にも、取引所の設立にはメリットがある。暗号通貨の評判は、悪意を持った人たちのせいもあり、一般的にあまりよくない。しかし取引のほとんどが対面で行われているコミュニティであれば、非倫理的または非合法の企業が自然と追い出されることになるため、通貨の信頼性自体も高まっていく。もちろん悪徳企業を立ち上げることは不可能ではないが、そのような企業がコミュニティに参加できる可能性はないだろう。

オンラインよりもオフライン

このようなアプローチがうまく機能するためには、実在する取引所の数がオンライン取引所よりもずっと多くなければなれない。そういう意味では、取引所が通貨の価値を決めているといっても過言ではない。

早期のマーケティングは控える

マーケティングは強力なツールだが、それゆえに慎重に扱わなければいけない。もちろんファウンダーは出来るだけ早い段階でお金を集めたいと考えている。お金が集まれば、暗号通貨の価格が上昇し、インフラコストをカバーでき、コミュニティの成長も加速する。その一方で、これまでの様子を見る限り、誕生間もない暗号通貨に投資している人たちの質は極めて低い。投機筋である彼らは、通貨の未来を潰し、一般ユーザーをその通貨から遠ざけてしまう。

投機的な動きに対抗して通貨を安定させるには、資本注入という手があるが、これはかなり大掛かりなものになる可能性がある。例えば、Bitcoinの時価総額は約200億ドルと言われており、価格を安定させるには膨大な量のお金が必要になる。

「慎重かつ確実に」こそが勝利の法則

暗号通貨というものが誕生してからまだそれほど時間が経っていないこともあり、主要な暗号通貨がどのような方向に進もうとしているのかはハッキリしない。彼らが目指す”ゴールライン”とは何なのだろうか?その先には何があるのだろうか? ほとんどの暗号通貨について、市場の気まぐれな動き以外には特にこれといった指針がないため、それぞれがどこを目指しているのかは知る由もない。しかし中には、いくつかの戦略をもとに、ある一定の方向へ進もうとしている通貨も存在する。

セントラルアプリ戦略

この戦略は、通貨に関連したユニークなサービスや製品を使って価値を生み出そうというものだ。つまり、通貨の価値は人々が実際に欲しがるモノで支えられることになる。

例えばMaidSafeは、暗号通貨を使ってユーザーがネットワーク全体にとって有益なモノ(=ストレージスペース)を提供するインセンティブを与えているほか、さまざまなアプリやサービスをユーザーに提供している。この仕組みのもとでは、自然とユーザー同士が協力するようになる。というのも、通貨の価値をあげるため、各ユーザーは自分たちのリソースや労力を投入し、通貨の価値に直結するサービスの価値を高めようとするからだ。

土台構築戦略

これはセントラルアプリ戦略とも似ているが、まずユーザベースを確立し、その後に通貨を導入するというやり方だ。Bitsharesやその関連企業が、この手法をとっている組織の好例と言える。SteemitのSTEEMやPeerplaysのトークンなど、複数のネットワークがそれぞれの通貨を持ち、徐々にユーザーを獲得しながら等価交換のシステムをこれまで築いてきた。現在彼らは、Bisharesと共に全てのネットワークを通して使える中心的な通貨をつくろうと計画している。この戦略をとれば、個々のネットワークでそれぞれの土台を作ってから、全体のリソースを統合することができるのだ。

草の根戦略

最後に、暗号通貨にとって極めて重要な真摯なユーザーが集う基盤を築くためには、自己資金でネットワークを創り上げるのが1番だ。そして通常のスタートアップのように、これを実現するためには共通のミッションを信じているユーザーベースが必要になる。ネットワーク内の全員がその通貨に固有の価値を見出し、通貨の価値が時間と共に高まっていくと思えなければいけないのだ。

FairCoinはそんな草の根運動を通して自分たちのネットワークを築いてきた通貨のひとつだ。この通貨をつくったFairCoopは、ユーザーが最大限のメリットを受けられるように、参加企業が協力し合うようなエコシステムをつくろうと考えていた。FairCoinはユーザーが短期的な欲望よりも長期的な利益を優先するのを促すような仕組みを念頭につくられた通貨だ。つまり、ユーザーは正しいから長期的な利益を優先するのではなく、自分にとって利益があるからそうしているのだ。

またFairCoinは、設立当初から一般ユーザーを想定してインフラを構築してきた。コミュニティに属するメンバー間の繋がりがとても強いからこそ、FairCoopは何千台というATMを設置でき、デビットカードや両替サービスを揃えることができた。このようなサービスが揃っていれば、一般の消費者も暗号通貨を利用しやすくなる。

この戦略をとれば、暗号通貨は投機筋の集中砲火を浴びることなく、ゆっくりとユーザーベースを拡大していくことができ、はじめから通貨の価値を安定させることができるのだ。ただしFairCoinがそうであるように、自己資本でネットワークを運営していくとなると、他の通貨に比べて少ない資本で戦っていかなければならない。そのため、(投機的な動きの結果)人工的に吊り上げられた価格をもってCoinMarketCap上で名を上げることはできない。

つまり、FairCoinはボラティリティや欲望によって巻き起こる盛り上がりの代わりに、先を見据えた静かな成長戦略をとったのだ。この戦略の唯一の問題点は、なかなか人の目に入りづらいということ。結局のところ、ドラマが人の注目を集めるのだ。

ハードフォーク

近い将来起こると言われている、Bitcoinのハードフォークについて考えてみよう。まるで複雑な事情など関係していないかのように、現在Bitcoinは競合し合うふたつの暗号通貨に分裂しようとしている。既にBitcoinは、一般に普及する上での障壁となる技術的な問題を抱えているにも関わらず、ここに新たな問題が加わろうとしているのだ。ハードフォークが先に見えていることで、Bitcoinのボラティリティがさらに高まり、状況を悪化させている。どんな通貨にとってもボラティリティは毒のような存在だ。

その一方で、強固なブロックチェーンと大規模で協力的なコミュニティが存在すれば、ハードフォークが発生する可能性は低くなる(そもそもハードフォークの必要性もない)。MaidSafeやBitshares、FairCoinのようなコミュニティでは、一攫千金を狙った動きよりも協力的な動きが促進されているため、各通貨はそれぞれのネットワーク内で、市場価格よりも実質的に高い価値がつく可能性がある。

このような状態にある通貨であれば、ユーザーにはコミュニティから抜け出すインセンティブがほぼなくなる。というのも、ハードフォークが起きるとユーザーが他者と協力し合うことで享受できていたさまざまなメリットが無くなってしまうため、彼らはその通貨のもともとのビジョンに忠実にあろうとするのだ。つまり、欲望ではない深い気持ちで繋がっているコミュニティでは、ハードフォークが発生する可能性は低くなるということだ。

まとめ

安定した通貨価値とは、偶然の産物でもなければ、市場で起きる奇跡でもなく、綿密な基盤づくりがあってこそ生まれるものなのだ。そして安定的な通貨には、エコシステムの安定が欠かせない。

十分な資金があれば、通貨にとって重要な初期段階にその価値を引き上げるられるため、なるべく早く自分たちの通貨を世に知って欲しいという気持ちもわかるが、そこはぐっとこらえた方が良い。広告を打つというのは、パンドラの箱の中身を世界中に披露するようなものだ。中には純粋にその通貨に興味を持つ人もいるだろうが、ただそのシステムに寄生しようとしているだけの投機筋もいる。さらに通貨価値を安定させるためには、少数の投資家だけでなく、”ほぼ全員”がその通貨を利用するようにならなければいけない。

通貨は人の前を通り過ぎるのではなく、人と共に成長していかなければならない。Bitcoinの現状とその膨れ上がった価格について考えてみてほしい。一般消費者は自分たちでBitcoinを採掘することができなければ、高い手数料やリスクなしには日常的な取引で同通貨を使うことさえできない。Bitcoinは投機筋によって支えられているネットワークなのだ。

逆に本当に安定している通貨であれば、ユーザーは両替や送金、ATMでの引き出しといった金融サービスを従来の通貨よりも安い手数料で利用することができる。つまり、暗号通貨が狙い通り(お金として)の機能を果たすことができるのだ。これこそが一般大衆の支持を獲得し、彼らが従来の通貨から暗号通貨に切り替えるのを促進するカギとなる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スウェーデンの現金使用率は2%―、キャッシュレス社会への賛否

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

銀行取引や社会の電子化に関する話の中でも、キャッシュレス社会というアイディアは熱い議論を呼びがちだ。まず現金は、汚職や税金逃れ、マネーロンダリングといった違法行為と結びつけられることが多い。しかし、現金の匿名性が地下経済を支えている一方で、その匿名性が低下してしまうと、ジョージ・オーウェルの著書「1984年」のような監視管理社会が誕生し、個人の自由が制限されてしまうのでは、と懸念している人も多くいる。

キャッシュレス社会に向けた動きの最前線にいるスウェーデンでは、国家が電子決済に関する施策を推し進めるにつれて、国民の間には現金の利用頻度が減っていくことに対するネガティブな感情が広まっている。オーストリアやドイツといった国では、今でも現金が主要な決済手段として使われているものの、世界全体で見ると現金を使う機会は減ってきている。

消費者がモノやサービスを購入する際の決済手段として、現金が全体の3分の1を占めるアメリカでさえ、現金の使用頻度は減少傾向にある。しかし同時に、現金の発行額は増えてきている。40年前は約800億ドルだった現金の流通額が、今日ではおよそ20倍の約1兆5000億ドルにまで増えているのだ。また、1970年台半ばには25%だった全紙幣の発行額に占める100ドル紙幣の割合は、今では約80%に達している。

まずインフレの影響が頭に浮かぶが、発行額の増加率はインフレ率を大きく上回っている。経済学者のKenneth Rogoffは、世界中に現金が溢れているせいで貧困が広まり、生活上の安全も損なわれてしまっていると考えている。Rogoffは彼の著書「The Curse of Cash(邦題:現金の呪い)」の中で、先述の現象はアメリカだけでなく、世界で広く使われている通貨全てに関して言えることだと主張する。さらに彼は、現金が地下経済での決済手段として好まれているいることが、その主な原因だと説明しているのだ。それではどんな解決方法があるのかというと、彼は高額紙幣の廃止を提案している。

もしかしたらインドの首相は、Rogoffの提案内容を最後まで読まずに、高額紙幣の廃止は数年かけて行わなければいけないという箇所を飛ばしてしまったのかもしれない。昨年11月にインド政府は、500ルピーと1000ルピー紙幣を廃止すると発表し、その数時間後には両紙幣が使えなくなってしまったのだ。国内には混乱が広がったものの、この政策は「ショック療法」の一部として施行され、現金重視の地下経済を解体すると共に偽札をなくし、経済の電子化をさらに進めることで、もっと多くの国民を課税対象となる正規の経済に参加させることが目的だった。

突然かつ急速な高額紙幣の廃止のせいでインド国内には混乱が生じたが、他にも同じことを行おうとしている国は存在する。ECB(欧州中央銀行)は、2018年中に500ユーロ紙幣の発行を取りやめようとしており、スウェーデンもほぼ誰にも気付かれることなく段階的に高額紙幣を廃止した。そもそも、スカンディナビア半島の国々では、現金がほとんど使われていないのだ。スウェーデンの中央銀行によれば、2015年にスウェーデン国内で発生した全ての取引の決済手段に占める現金の割合(決済額ベース)は、2%しかなかった。さらにノルウェーでは、通貨の流通高における現金の割合は3%しかないと同国の中央銀行が発表している。さらにスカンディナビア半島の各国は、世界的にも汚職が少なく、透明性が高い社会だと評価されている。

彼らのような社会を目指すには、洗練されたデジタルインフラが不可欠だ。その証拠に、ノルウェーの決済インフラはGDP比で考えると世界でも指折りの費用対効果があり、消費者や商店、そして社会全体にとって利用金額の大小に関わらず、電子決済が最も経済的な支払方法となっている。

個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

電子決済にはさまざまな利点があるものの、現金を完全になくしてしまうには心配な点もある。今日の決済システムのまま現金が廃止されてしまうと、銀行や政府や決済業者が全ての取引内容を把握できるようになってしまうのだ。さらに現金には、マイナス金利に対抗して金融政策の効果を薄める力がある。中央銀行や政府の目からすれば、これは現金の短所として捉えられるが、逆に中央銀行や政府による支配への対抗手段として現金を見ている人も大勢いる。

現金がなくなったからといって、私たちの住む世界がジョージ・オーウェルの描くようなディストピア社会に一晩で変わってしまうことはないが、一旦完全なキャッシュレス社会に切り替わってしまうと、政府がこれまでにないほどの力で市民をコントロールできるようになる可能性がある、ということは心に留めておいた方が良いだろう。

個人の自由を脅かすことなくキャッシュレス社会を実現するため、各国の中央銀行の中には、ブロックチェーン・分散型台帳技術を電子マネーの発行に使えないか研究を進めているところもある。匿名性を保証する物理的な通貨を電子化する、というアイディアに反対する声も挙がっている一方で、ノルウェー中央銀行はこの可能性を模索している。

実際に物理的なお金を電子マネーに置き換えるとすれば、個人が必要に応じて自分のお金をコントロールできて匿名性も確保できるよう、ブロックチェーン技術を採用するのがベストな選択だろう。ブロックチェーンシステムの下では、ユーザーだけがアクセスできる口座にお金を保管することになるため、自分のお金を自分で管理できるようになる。

しかし実際にこれを実現するのはそう簡単なことではない。理論上ブロックチェーン技術には全体を管理する組織が必要ないとはいえ、実際には理想と現状の間くらいの制度に落ち着くことになるだろう。しかし市民が中央銀行の発行した電子マネーを受け入れるためには、ネットワークに参加している全員のプライバシーが保護されなければいけない。中には、ブロックチェーン技術を導入しても犯罪行為の解決にはつながらないと言う人もいるかもしれないが、ビットコインのような仮想通貨であっても、マネーロンダリングができる可能性は限られており、資金流に関する情報を完全に消すためには一旦現金を電子化して、さらにもう一度そこから現金化しなければならない。

物理的なお金を廃止するというのは、犯罪防止の観点からは名案のようにも見えるが、その先にある、まだハッキリとは見えていない可能性についてもしっかり考えていかなければならない。多数決の原則は守らなければいけないし、もはや「現金は王様」という言葉は通用しないのかもしれない。それでも、個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ビットコインはビットコインのままに、値上げ幅は1週間で30%、1年で200%と急騰中

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ビットコインが話題に上がるのは、価格が暴落しているか急騰しているときだけのように感じないだろうか。ちょうど現在価格が急騰していることなので、ビットコインの話をしよう!

この記事が書かれている時点(米国時間6月16日)で、ビットコインには一枚あたり745ドル前後の値がついている。ビットコインの価格が現在のレベルに達したことは、過去に2回しかない。初回は、2013年のクリスマスに起きたバブルのときに、これ以上の高値に届く途中で。そしてその次は、そこから値が落ちる途中でだった。

 

一年前に230ドル前後の安値で取引されていたビットコインは、数週間前までじわじわと値を上げ、その後急騰した。 Screen Shot 2016-06-16 at 1.21.31 PM

もちろん誰もがなぜ価格が上がったのかを知りたがっている。しかし、他の公開市場のように、実際に何が価格上昇の原因となっているのかを知るすべはない。それでも、原因を推察することはできる。以下に、ビットコイン急騰の背景にあると考えられる事象のいくつかを挙げてみた。

半減期

半減期という言葉を聞いたことがあるだろうか?もしもビットコインのニュースを追っているのに聞いたことがないなら、今後すぐにでもビットコイン関連のニュースが、半減期という言葉で溢れることになるので覚えておいたほうがいい。半減期のことを聞いたことがない人のために、私がここで説明しよう。まず、ビットコインはデフレ通貨としてデザインされ、この世に2100万枚しか存在しないため、時間が経つにつれて、採掘されるビットコインの数も少なくなる。

これは、ビットコインのコアとなるコードによって、21万ブロック採掘されるごとに、採掘報酬が半減するよう決められているからだ。1ブロックあたり50BTCではじまった採掘報酬は、2012年終わりに1ブロックあたり25BTCへと減少し、あと3週間ほどでさらに12.5BTCへと半減することが予想されている。

原則上、採掘者たちの利益が近いうちに半分になるため、今回の価格上昇は、その埋め合わせとしてのビットコイン経済の自然な(そしてそのように設計された)半減期に対する反応と考えられる。

ビットコイン・コアのアップデート

ビットコイン・コアとは、ビットコインの原動力となるコードのことで、信頼できる開発チームによって整備されており、ビットコインの方向性を決定づけるものでもある。

先週の記事で触れた通り、開発チームは、現在いくつかのメジャーアップデートの準備に取り組んでいる。もっと早く、そして多くの決済を処理できるようにするための、ネットワークのスピードと許容量の向上がアップデートの主な内容となっている。詳しいところはかなり技術的な話なので省くが、そろそろリリースされる予定の新たなビットコイン・コアのテクノロジーに対する期待感が、価格上昇の原因の可能性がある。

広がる経済の不透明感

最後のオプションが、ビットコイン市場に不透明感を漂わせている、世界経済で起きている出来事だ。Brexit(イギリスのEU離脱)の可能性や、アメリカの大統領選、アジア経済低迷の可能性などが、機関・個人投資家の警戒心をあおっている。

人々は、経済が不安定なとき、現在過去半年で最高値をつけている金など、安全資産の購入に走る傾向にある。一般的に、ビットコインは安定的で安全な投資先とは考えられていないが、特に中国の投資家が、政府の厳しい規制網の届かないような資産の保管場所を探していることもあり、その様相は代わりつつあるのかもしれない。

あくまで冷静に

最後に、この記事との別れのアドバイスとして、どんな形であれ、現実の資産価値が急騰する様子を見るのは、ワクワクするし魅力的であるが、冷静さを保つことを忘れないでほしい。

これまでビットコインに関わったことのある人のほとんどが、一年前、いや一週間前にでも、なぜビットコインを買い集めておかなかったのだろうと、自分自信を蹴りつけたい衝動に現在かられていることだろう。もしくは、今後も価格が上がり続けると考え、今からビットコインを買い集めようという誘惑を感じている人もいるだろうが、恐らくそうしない方が良いだろう。これまでに学んだ通り、ビットコインは既存の金融商品とは全く別物であり、その価格は気ままに変動する。どんな公開市場であっても、買い時を見定めようとすると逆に大きな損失を生み出す可能性が高い。

ビットコインは値上がりすれば、値下がりもする。そして私たちの人生は、ただ前に進むだけだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Bitcoin価格、4日間で21%のアップ―過去21ヶ月の高値を付ける

2016-05-31-bitcoin

今日(米国時間5/30)、ビットコインが再びポジティブな話題として戻ってきた。すでにすたれたという噂は明らかに早計だったようだ。ビットコインはBitfinexで現在547.40ドルで取引されている。このマーケットは米ドルとビットコインの交換を行う場所としてBitcoinityに次いで2位を占めている。この価格はこの4日間で21.4%の大幅な上げだ。

この価格は過去21ヶ月での高値でもある。意外なことに、今回の急騰以前の2ヶ月、ビットコイン価格は比較的安定していた。

今回の値上がりの原因を探るのは困難だ。ただ最近、HuobiOKCoinという中国で最大クラスの取引所の登録者が急増し、ビットコインの買い注文が大量に入っている。

最近、中国ではビットコイン価格がマクロ経済の状況に連動する傾向が強まっている。ビットコインへの殺到は、中国が依然デフレを恐れていることを示唆する。

多くの中国人はビットコインを有力な財産の保全手段と考えている。同様に、中国政府当局はピア・ツー・ピアの資金貸付サービスへの取り締まりを強化し、資金の出し手をビットコインコインへの投資に誘導しようとしている。

中国以外でもビットコインの先行きについて明るい情報が入っている。2015年末に、ビットコイン企業の多くがBitcoin_ClassicなどによりBitcoin Coreをフォークさせることで取引量を拡大することに積極的な姿勢を見せるようになった。これはオリジナルのBitcoin Coreプロジェクトにとって大きな挑戦となるかもしれない。

この数ヶ月のうちに、、ビットコインとそのブロックチェーンをさらに堅牢かつ将来性の高いものにするためBitcoin Coreは何度もアップデートされるはずだ。私はlightning networksに大きな期待をかけている。このネットワークはビットコインによる送金を秒の単位に高速化する。このことはビットコインを現行の送金手段を代替する存在に押し上げるものだ。

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画像: Antana/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

〔日本版〕Bitcoin Core(以前のBitcoin-QT)は過去の取引を完全に記録したブロックチェーンで、65GB以上のサイズがあるとされる。最初のダウンロードには長時間かかり、十分な帯域幅を必要とする。なおテクノロジーの名称としては大文字のBitcoin、通貨単位としては小文字のbitcoinが用いられる慣行があるが統一性のある規則ではない。英文では見出単語、文頭の単語は表現スタイルとして自動的に大文字になることがある。Wall Street Journal、OED等は「常に小文字を使う」よう提唱しているという。この記事本文の訳文ではBitcoin Coreのような固有名詞を除いて暫定的に「ビットコイン」とカタカナ表記している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Craig Wright、「証拠は公表したくない」―オーストラリア人起業家、Bitcoinを発明したとの主張から後退

2016-05-06-bitcointug

Bitcoinの発明者、Satoshi Nakamotoは結局のところオーストラリア人起業家ではなかったようだ。Craig Wrightは「自分こそSatoshiだ」と3種類のメディアに対して主張したものの、わずか数日後に「Satoshi Nakamotoである証拠を公表するつもりはない」という 記事をブログに掲載した。

Wrightの戦術はかなり巧妙だった。自分がBitcoinを発明したという主張はGQBBCEconomistのジャーナリストに対してなされた。これを額面どおりに受け取らないメディアもあったが、いずれも伝統的な記事発表の解禁日を守らねばならない立場にあった。Wrightの主張の真偽を判断できる暗号専門家はこの件に関して蚊帳の外だった。そこで記事の大見出しはWrightにたいへん都合のよいものとなった。

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しかし Wrightの主張に対する疑問は即座に積み上がっていった。WrightがSatoshiであることを証明する証拠は皆無だった。

多くの関係者がWrightに対して「決定的な証拠を提出せよ」と迫った。幸いなことにそういう証拠は簡単に提出できるはずだった。たとえば、Satoshiのアドレスは誰でも知っている。そのアドレスからbitcoinによる送金があれば、送金者はSatoshi以外にない。SatoshiのメーリングリストからBitcoinコミュニティーに対してメールが送信されればそれは本物のSatoshiだ。

しかしWrightはそういった証拠を提出するつもりがないという。「しかしながら、今週の状況の進展により、〔Bitcoinの作者であることを証明する〕私が発明した最初期のアクセス・キーを公開する準備を進めていたが、私には〔公表する〕勇気が欠けている。私にはできない」とWrightは書いている。

ご覧のとおり、WrightはSatoshiであるという主張を文字通り取り下げたわけではない。しかしSatoshiであることを証明したくはないという。現実を直視するなら、これはWrightがSatoshiではないと言っているのに等しい。

WrightはBitcoinコミュニティーの著名人でBitcoin FoundationのトップであるGavin AndresenとJon
Matonisに密かに会って主張を伝えている。これによってWrightがSatoshiだという主張を2人が公に支持するという非常に困った状況がもたらされた。

この点ではおそらくWrightを賞賛すべきなのだろう。たとえ数時間であれ、世界中にSatoshi Nakamotoであると信じこませたというのは大したものだ。

2014年のDorin Nakamotoのときのようにロサンゼルスを横断するカーチェイスが見られなかったのは残念だ。これまでにこの人物こそSatoshiであるという数多くの理論が唱えられてきたが、長くもちこたえたものは一つもない。次に現れるSatoshiの場合もおそらく同様だろう。

グッドバイ。

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画像: Russell Werges

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+