シムシティを手本に新しい都市開発ツールを目指すUrbanFootprint

何十年間にもわたって、最高の都市計画シミュレーションは、都市計画の専門家にはまったくシミュレーションとして役に立たないものだった。しかし、幅広い人気を誇る街作りゲーム「シムシティ」は違うと、この分野の専門家でありUrbanFootprint(アーバンフットプリント)の共同創業者でもあるPeter Calthorpe(ピーター・カルソープ)氏は言う。

カルソープ氏は、都市プランナー、都市デザイナーとしてのキャリアを1970年代後半からスタートさせ、80年代中ごろには、著名な建築家でデザイナーのSim Van der Ryn(シム・バン・デル・リン)氏とともに持続可能なコミュニティーに関する本を著している。

ポートランド、ソルトレークシティー、ロサンゼルス、そして(私の故郷)ルイジアナ南部のデザインと開発計画に携わったカルソープ氏は、気候の影響からの回復力と持続性というレンズを通して都市デザインを考えてきた。その間ずっと、後にUrbanFootprintとなるツール群を開発していた。

「活動する中で、私たちはすべてのデータをひとまとめにでき、知的な質問ができるツールのことを考えるようになりました」。

【中略】

「質問ができてシナリオを構築できるものです」とカルソープ氏はインタビューの中で話している。

そのツールがUrbanFootprintのベースになった。これを使えば、特定の開発計画を視覚化でき、ひとつのデザイン上の決断を実行した場合に何が起きるかをソフトウェアでモデル化できると同氏は言う。

「都市は非常に複雑で、あらゆる次元で相互関係があるため、複数の結果を同時に見ることが、起こりうる結果を考えるうえで最も健全で最良の方法となるのです」と同氏。突き詰めれば、シムシティとそう変わらない。

このプロジェクトでカルソープ氏のパートナーを務めるのはJoe DiStefano(ジョー・ディステファーノ)氏。同社の最高責任者であり、自身の名前を冠した都市計画会社のCalthorpe(昨年5月にインフラ開発の大手 HDRに売却)でカルソープ氏とともに長年働いてきた同僚だ。

UrbanFootprintは、3年ほど前にCalthorpeから独立した会社であり、現在はベンチャー投資会社からの1150万ドル(約12億6000万円)という資金のおかげで拡大を計画している。この投資には、以前の投資会社Social Capitalと、新しくValo VenturesRadicle Impactが加わっている。

「すべての主要産業の企業は、都市で成功するためには都市を理解しなければならないと気づき始めています」とディステファーノ氏は声明の中で述べている。「基本計画のデータや分析結果の利用を簡便化することで、UrbanFootprintは、街や都市の市場に集中して効率性と持続性を高めたいと考えているすべての企業に、新しいソリューションを提供します」。

同社のソフトウェアは、行政機関の公開データや商業的に集められたデータセットなどを含むデータセットのクレンジングとキュレートを行い、アメリカ全体の土地活用のスーパー・スキーマを生成すると、ディステファーノ氏は言う。そして、UrbanFootprintがデータを持つすべての土地のあらゆる区画の現状を、クエリに基づいて提示する。

都市のインフラと、気候やその他の災害がインフラに与える潜在的リスクの分析結果を提示するUrbanFootprintのデータとツールセット

現在、都市には地球人口のおよそ半数が暮らしていて、その数は、数十年後には世界の男性、女性、子どもの70%に達すると言われている。「私たちは大きな問題にすべて対処しなければなりません」。

【中略】

「それらすべてが、私たちが都市を形作るときに関わってきますが、それをひとつにまとめて検討させてくれるツールがありません」とカルソープ氏。「私たちは、人々に都市そのものを理解してもらうためのプラットフォームなのです」。

都市を理解することは、都市計画や建築だけに留まらず、製造業から医療関係まで幅広い企業にとっても大きな価値がある。

米国結核予防会は、都市の密度と大気汚染が呼吸器系疾患と健康全般に与える影響を理解するために、UrbanFootprintのツールを利用している。

これはほんの一例に過ぎない。グローバル戦略と都市デザインのコンサルタント企業Gahlは、UrbanFootprintのソフトウェアを使って、マイクロモビリティー企業が街の中の自転車や電動キックボードの最適な配置場所と、それが通勤や地域の快適さにどう影響するかをを分析している。

また、北カリフォルニアに電気とガスを供給するパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)は、何かと評判を落としているが、熱波がそのインフラとガス電気の供給網にどのように影響を与えるかをUrbanFootprintで研究していると声明で述べている。

「PG&Eのクライメート・レジリエンス(気候変動による影響からの回復)チームは、気候変動のリスクが高まる中で、利用者への安全で安価で信頼性の高いエネルギーの供給を維持する回復システムが構築できるよう努力しています」と、PG&Eクライメート・レジリエンス責任者のHeather Rock(ヘザー・ロック)氏は話す。「その実現のために私たちは、どのように計画を立て、どのようにインフラ、従業員、顧客、私たちが奉仕するコミュニティーを守るかに関する適切な情報を、将来を見通したデータから得ています。UrbanFootprintは、そうしたリスクを慎重に見極め軽減するためのデータとツールを求める私たちにとって、大切なパートナーです」。

Social Capitalの長年のパートナーであるJay Zaveri(ジェイ・ザベリ)氏など投資家は、UrbanFootprintを、数を増しつつある、都市環境のための開発ツールに取り組む技術系企業のひとつと見ている。

「都市は、文化、ライフスタイル、願望、幸福の上部構造物であり、私たちの生活の中の現実版ソーシャルネットワークです」とザベリ氏は声明の中で述べている。「2018年以来、UrbanFootprintは民間と行政の都市計画立案者、交通とエネルギーの企業に協力して、米国の700都市超で4000近いプロジェクトを実施し、時間単位の複雑なシナリオへの答を提供してきました。都市住民が70億人に達すると言われる2050年に向けて、この10年のうちに都市システムの回復力と備えを緊急に整える必要がある中で、これは非常に重要な取り組みです」

画像クレジット:Ratnakorn Piyasirisorost / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

アルゴリズムによるゾーニングは、より安い住居と公平な都市への鍵となるか?

米国のゾーニングコード(都市の地区にコードを割り当て、そこに建築できる施設を規制する制度)の歴史は1世紀に及ぶ。そしてそれは、米国のすべての主要都市( おそらくヒューストンを除く )の生命線であり、何をどこに建築できるのか、近隣では何を行うことができるのかを決定するものだ。だが現在、研究者たちが、その複雑さが増してきたことを受けて、都市空間を合理化するための現在のルールベースのシステムを、ブロックチェーン、機械学習アルゴリズム、そして空間データにに基く動的システムで置き換えることができるかどうかの探究をさらに進めている最中だ。おそらくそれがこの先100年の都市計画と開発に革命を起こすだろう。

これらの未来のビジョンは、都市と都市ガバナンスの改善を現在のキャリアの中心に置く、2人の研究者であるKent LarsonとJohn Clippingerとの会話の途中で触発されたものだ。LarsonはMITメディアラボの主任研究者であり、シティサイエンスグループのディレクターである。そしてClippingerはヒューマンダイナミクスラボ (メディアラボの一部でもある)の客員研究員であり、非営利組織ID3の創設者でもある。

米国の主要都市が現在直面している最も困難な課題の1つは、過去数十年に渡って急騰してきた住宅価格である。このことによって、若年層や高齢者たち、単身者や普通の家族世帯の予算に信じられないような負担がかかっている。たとえばサンフランシスコエリアの1ベッドルームのアパートの平均は3400ドルであり、ニューヨークでは3350ドルである。こうした事情から、これらのイノベーションのメッカは徐々に、アーティストや教育者たちはもちろん、余裕のあるスタトートアップの創業者たちにとってさえ手の届かない場所になりつつある。

しかし、住宅だけでは、現代の知識経済労働者たちを十分に満足させることはできない。そこにはいつでも、素敵で安価なレストラン、広場、文化施設、そして食料品店、ドライクリーナー、ヘアサロンなどの重要な生活サービスに至る十分な近隣の環境アメニティが期待されているのだ。

現在のゾーニング委員会は、様々な開発案件の許可プロセスの一部として、必要な施設が単純に含まれるようにしているだけだ。このことは食糧砂漠や、興味深いいくつかの都市部における魂の喪失につながっている。しかし、LarsonとClippingerの思い描く世界では、ルールベースのモデルは、トークンと呼ばれるものを中心にした「動的な自律制御システム」にとって替わられることになるだろう。

すべての都市の近隣地域は、人生の目標が異なるさまざまなタイプの人たちで構成されている。Larsonは、「私たちは、どのような人たちがここで働きたいか、どのような施設が必要とされるかに関する様々なシナリオをモデル化することができます。そしてそれはアルゴリズムとして数学的に記述することが可能です、そのことでリアルタイムデータに基く人びとのインセンティブを、動的に計算することができるようになります」と説明した。

基本的アイデアは、まず移動時間、個別経済状況、各種施設スコア、そして健康状態、その他多くのデータセットを集め、機械学習に投入することで、近隣の住民の幸福度を最大化しようとするものだ。ここでトークンは、幸福度を改善するために、コミュニティに追加すべきものや、取り除くべきものを表すマーケットに対して、意味を与える通貨の役割を果す。

豪華なマンションの開発者は、建物が重要なアメニティ施設を提供していない場合は特に、トークンを支払う必要があるかもしれない。その一方、所有物件をオープンスペースに転用する他のデベロッパーは、既にシステムに対して支払われたトークンを全額補助として受け取ることになるだろう。「トークンの意味を単一の価格体系にまとめてしまう必要はありません」とClippingerは言う。その代わりに「フィードバックループを使用することで、維持しようとしているダイナミックレンジがあることがわかります」と語る。

このシステムベースのアプローチを、現在私たちが抱える複雑さと比較してみて欲しい。建築と都市計画に対する嗜好が変わり、デベロッパーたちが盲点を発見するたびに、市議会はゾーニングコードを更新し、更新の上に更新を重ねてきた。ニューヨーク市の公式ゾーニングブックは現在、4257ページの長さになっている(警告:83MBのPDFファイルだ)。これが目指しているポイントは、美しく機能的な都市の見え方を合理的に導くことだ。その複雑さは大きな影響を生み出しロビー業界を栄えさせた、そしてEnvelopeようなスタートアップがその複雑さを扱おうと努力を重ねている。

システムベースのアプローチはこれまでのルールは放棄するが、変わらず良い最終結果を求めている。しかしLarsonとClippingerはさらに一歩進んで、住居自体の購入も含め、地元の近隣経済のすべてにトークンを統合したいと考えている。そのようなモデルでは「あなたは参加権を持っているのです」とClippingerは言う。たとえば、地元の公立学校の教師や人気のあるパン屋は、隣人とはあまり交流のない銀行家とは、近隣のマンションに同じ金額を支払う必要はなく、アクセスすることができるだろう。

「財政的利益のために最適化する代わりに、社会的利益、文化的利益、環境的利益を最適化できる代替案を作ることは、素晴らしいことではないでしょうか」とLarsonは語る。社会性のある行動は、トークンシステムを通じて報酬を受けることができて、活気に満ちた近隣を生み出した人びとがその一部として残り続けることができるようになる。一方新しい人たちにも転入のチャンスが与えられる。これらのトークンは、都市間でも相互に利用できるようになる可能性がある、そうなれば、ニューヨーク市への参加トークンによって、ヨーロッパやアジア地域にアクセスできる可能性も出て来る。

もちろん、これらのシステムの実装は簡単ではない。数年前のTechCrunchで、Kim-Mai Cutlerは、これらの課題の複雑性を深く分析した記事を書いた、その中では、許可プロセス、環境レビュー、地域社会の支持や反対などと共に、自治体のリーダーたちにとって住宅の建築や開発を、最も扱いにくい政策問題にしている、基本的な経済性について述べている。

2人の研究者によれば、少なくとも複数の都市が、都市計画に対するこのアルゴリズムベースのモデルの試行に強い興味を示しているということだ。その中にはバルセロナや韓国の複数の都市が含まれている。これらのすべての実験の中心にあるのが、古いモデルは今日の市民のニーズにはもはや十分ではないという考えだ。「これは根本的に異なるビジョンです…ポストスマートシティですね」とClippingerは述べた。

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(翻訳:sako)

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スマートシティは道半ばだ、私たちが目指すのはダイナミックなレスポンシブシティなのだ

【編集部注】著者のColin O’DonnellはIntersectionの主任イノベーションオフィサーである。

都市テクノロジーの専門家として、私は実際に人びとが使っている魅力的なスマートシティアプリケーションの例を教えてくれ、と頼まれる機会が多い。しかし正直なところ、実際に指し示すことができるものは多くない ― 少なくとも今の段階では。都市はますます賢くなっている筈だが、利用者の眼から見ると目立って変化しているようには見えない。

これまでの都市のデジタル進化のほとんどは、人びとが見たり、触れたり、使ったりできる部分ではなく、むしろ目に見えないところで進み、市の運営そのものに焦点が当てられて来たのだ。もちろん、行政が水漏れをより良く検知できたり、建物検査の失敗予想の精度を向上させることはとても重要だ。しかし都市居住者たちに対する直接的で個人的な便益としては現れていない。従って、あまりこの分野には進展はないと考える人がいても、不思議ではない。

都市居住者としての私たちが、革新的スマートシティアプリケーションにまだ驚かされていないのは、スマートシティは退屈なものだからだ。これはデータウェアハウスの概念に対して、人びとが顔を輝かせないことと同様の理由だ(OK、そこの人たち落ち着くように)。スマートシティとはゴールへ向かうための手段に過ぎない。真のデジタルシティへの道の、途中の1ステップに過ぎないのだ。

都市が、その住民たちに実際に有形の利便性を提供し、インターネットの可能性完全に実現した都市へ進化していくためには、以下の3つのフェーズを通過することになる。1)まず環境に関するデータを収集する必要がある。2)次にそのデータを処理する必要がある。そして最後に、3)リアルタイムのアクションで反応する必要があるのだ。これを縮めて言うなら:See、Think、Do(見よ、考えよ、行動せよ)ということになる。

See ― インストゥルメンテッドシティ

ここ数十年というもの、私たちはずっとインストゥルメンテッドシティ(センサーなどの機器が行き渡った都市)に住んできた。センサー、センサー、そしてセンサー。今やセンサーはそこらじゅうに溢れている。オフィスのドアから自転車置場、そして街角の信号にもセンサーは埋まっている。全てが定量化されており、これが将来の都市開発の礎になる。何かを変えるためには、まずそれを測定することができるようにする必要がある。

Think ― スマートシティ

さて、そうして集めたデータをどうするのだろうか? ここが、GEやIBM、そしてAT&Tのような企業たちが、ここ数年注力してきた領域だ。スマートシティでは、センサーが行き渡った都市から発生するデータから洞察を得る。これはデータプラットホーム、アルゴリズム、そしてデータサイエンスを活用して行われる。私たちが測定したものを理解するだけではなく、なぜそれが重要なのかも理解できるようにできる。

私たちは、相関関係と因果関係の構築を行い、人間の行動を予測してテストするためのモデルを作り、なぜある出来事が起きたのか、そして変更がどのような影響を及ぼすのかに関する洞察を得る。AIは、膨大な量のデータを分析し、都市の状況を理解する上で、大きな役割を果たすようになって行くだろう。しかしそれらは皆、今のところ「舞台裏」の仕掛けだ。ちょうど誰もが電子メールやWeb1.0サイトを使い始める前の、インターネットのようなものだと考えてみれば良い。もちろん、それは重要で、世界の働きを変えつつあると思うが、どうして私がそれを気にしなければならないのか? 私には何ができるのか?

Do ― レスポンシブシティ

さて、ここから物事は面白くなる。何かが本当に起こり、人びとが違いに気付き、感じるようになる。開発と新製品のチャンスが最も多いステージだ。レスポンシブシティ(反応型都市)とは、その名前が表すように、市民の要求、願望、そして欲望に反応する都市である。この場合の「市民」は労働者でも居住者でも、単なる訪問客でも構わない。すべてがリアルタイムに実行され、アプリケーションを用いたアクティブでリッチな体験となる。

インストゥルメンテッドシティで発生したデータと、スマートシティで得られた洞察を用いて構築されるレスポンシブシティは、ハードウェア、データ、そして基礎サービスの上に載った、アプリケーションレイヤーのようなものだ。

都市では、これらのアプリはインフラストラクチャを操作したり、都市を動的に最適化する振る舞いに影響を与えたりすることに焦点を当てている。目標となる成果は、安全性、利便性、そして効率性はもちろんだが、発見、喜び、そしてコミュニティも対象となる。これらのすべてが、都市を魅力的にするものたちをサポートする。多様な背景を持ち、共通の時間を共有する市民たちにとって、魅力ある場所にするのだ。

これはすべて、デジタル化された制御可能なインフラストラクチャに依存している。そしてそれは急速に実現されつつある。UberとLyftは、予想される輸送ニーズに基づいて、自分たちを先行してデザインしたコネクテッドカーの例だ。

デジタルスクリーンとダイナミックな街頭施設も、レスポンシブなインフラストラクチャの初期の例だ。都市の中で拡張現実レイヤーのように振る舞う可能性と同時に、こうしたプロダクトは街頭の風景内にリアルタイムに情報を挿入し、人びとに情報と影響を与える。そして人びとを様々な方法で支援する:少し考えるだけでも、市民がよりよい移動を行えるようにしたり、市からのお知らせを表示したり、リアルタイムに緊急事態を知らせたり、といった例を挙げることが可能だ。

都市はこうしたトランスフォーメーションへの準備が整っている。デジタルインフラストラクチャー、オートメーション、そしてマシンラーニングによって、要求に対して予測とともに反応する能力が登場し、数百万人の人びとを相手にした結果を最適化することができるようになるだろう。

現代は、都市管理者、社会活動家、そして起業家たちに、大きなチャンスが与えられているのだ。それは新しい経済機会を創造し、行動を変革し、現代都市を真に再定義するために資源を再配分するためのチャンスだ。この革命に必要とされるインフラストラクチャーは、整備されつつあるが、どのようにすれば都市は最終的に、このレスポンシブな最終ステージに進むことができるのだろうか?

効率的なレスポンシブシティへの道を切り拓くためには、都市には以下のものが必要である:

リソース、アクセス、そして成果に対するパートナー

私たちは、都市で可能なことに対する私たちの先入観を捨てて、望ましい成果を考えるところから始めなければならない。都市の管理者たちは、改革の必要がある未使用のリソースやインスラストラクチャーをまず同定する必要があり、それらを民間部門と提携したり協力したりして、利用しやすいものにしなければならない。官民のパートナーシップは、相互の利便性に基いて整理されなけれなならない。例えば、どんな心身状態の人たちに対しても幅広いアクセスを許し、特定の解決方法や、事前に決められた調達手段に固定されないというようなことだ。

人びとのグループを理解し、その行動に影響を与えること

レスポンシブシティはその中に暮らす人びとを反映したものだ。インターネットは私たちに、ビデオや製品、あるいは友人たちを推薦することで、パーソナライゼーションで可能なことを垣間見せてきた。他でもない、あなたという個人 に対して。しかし、都市の体験は本質的に1対多だ。50人が1つの表示を見て、それらを一緒に体験する。しかし個々人は異なる背景を持ち、またおそらく個々人の目的は異なっている。これは興味深い研究分野を拓くものだ。すなわち人びとのグループを理解すること、そして環境の変化に対して彼らがリアルタイムにどのような反応を示すのかを理解するということだ。

環境の変化とは、例えば、オンデマンド歩行者天国のための動的な道路閉鎖のようなものだったり、異なる移動能力を持つ人びとをイベントに向けて最適な経路で案内したり、オープンしたばかりのお店を案内したりというものかもしれない。いずれにせよ、人びとの要求と都市側の要求の間のバランスを、リアルタイムで調整することは、探究すべき新しい刺激的な領域となるだろう。それは都市計画と、ユーザーエクスペリエンスと、行動科学の融合だ。

リアルタイムに行なうこと

レスポンシブシティになることは静的な目標ではなく、常に変化する目標だ。私たちは、過去の固定された単一目的のインフラストラクチャの概念を乗り越える必要がある。人間と都市の変化に合わせて動的にリアルタイムに変化するインフラストラクチャに焦点を当てる必要があるのだ。この焦点は何年もかけて都市が変化するマクロレベルなものだけに対応するのではなく、一瞬一瞬、例えば朝の通勤からランチまでの間という短い単位にも対応する必要がある。

クラウドネットワークサーバーのコンセプト

インターネットは、私たちがやっているすべてのことを変えて来た。すなわち私たちが生活する方法、働く方法、遊ぶ方法、情報へのアクセス方法、そしてお互いのコミュニケーションを変えたのだ。しかし、それは常に、その変革の可能性の期待に応え続けて来られたわけではない。私たちはインターネットが、不寛容さを育て、隔離され視野狭窄に陥ったグループを生み出すところを目撃してきた。

そして、現在の住民が生まれる遥か昔に死んでしまった人びとによってデザインされて、その変化が何十年も掛かる都市計画によって測られる都市は、淀んで柔軟性を失ったものになる可能性がある。都市は、それを実際に利用したり、働いたり、生活している人びとを代表するものではない。

しかし、インターネットが都市の中に進出す​​るにつれ、私たちはインターネットをより人間的に、そして都市をよりダイナミックにする機会を得た。

私たちは、異なる文化や背景や能力を持つ人々が、都市に対してだけでなく、人びと同士でもデジタルな相互作用を共有できる、真のコミュニティ体験を構築することができる。私たちは、環境を形作り、リアルタイムで情報を共有し、人びとやリソースをお互いにより良く繋ぎ合わせることができる。私たちには包括的なデジタル都市体験を作り上げる機会が与えられている。そしてそれは、レスポンシブシティから始まるのだ。

FEATURED IMAGE: PRASIT PHOTO/GETTY IMAGES

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(翻訳:sako)

UberがMovementを発表、所有する交通情報の公開を狙う

Uberはより閉鎖的なエリアの中で競争力を持つ分野に進出しようとしている:この乗車提供会社の新しいMovementウェブサイトは、同社が運行を行う場所での交通の流れを点数化し提供するものだ。都市の移動性を向上させようとしている都市計画者や研究者による利用が意図されている。

基本的なアイデアは、Uberは既に都市内での交通の仕組みに関する多くの洞察を所持していて、ほとんどの場合特定の個人に結び付けられないようにこうしたデータを匿名化することができるということだ。そこで可能な分野から始めて、Uberは前述のデータを、初めは早期アクセスを申請した特定の組織に対して、そして最終的には一般に向けて提供する予定だ。

Uberは、収集したすべてのデータを眺めるうちに、それらが公共の利益のために使用できることを認識し始めたので、それを実現する製品チームを立ち上げたのだと語った。この取り組みの成果がMovementである。Movementは、市の担当者や都市計画者が、実際の状態や原因に関するすべての情報、あるいは適切な情報にアクセスできないままに、重要なインフラストラクチャーの決定を下さなければならないという問題を解決することを狙っている。

Uberによれば、本質的には、都市の交通計画に影響を与える人びとが適切な意思決定を行うことを容易にし、正確なデータの後ろ盾を用いて、変更の理由、場所、そして時期を説明できるように助ける。また、同社は各組織が容易に利用できるようにしたいと考えているため、既存の都市計画と交通管理に役立つように合意された境界を用いた、都市内の交通解析ゾーンを意識してまとめたデータの形で公開する。
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ウェブサイトのユーザーは、時間、曜日、ゾーンのようなものを指定して、特定の地点または範囲のUberのデータを呼び出し、ダウンロードすることができる。時系列に沿ったチャートと、独自のモデルに入力するための生データの両者が用意されている。 Uberによると、APIを介してのデータへのアクセス公開も検討しているが、現段階では「パフォーマンスの良い方法でこれを行う方法を見つけようとしている」とのことだ。

もちろん、この種のデータをUberが公にすれば、プライバシー擁護者たちの眉をひそめさせることだろう、しかし同社は集計して匿名化が可能なデータだけを提供するので、ユーザーのプライバシーは確保できていると強調している。Uberによれば、ドライバーと乗客の身元を適切に保護できるだけの十分な量のデータがないと判断した市のエリアでは、クエリの結果が返されないということだ。

もう1つの疑問は、交通需要を正確にマッピングする能力が、ライドシェアリングビジネスの競争力の核となる需要予測能力の一部であることを考えると、Uberがなぜこのようなことを行う気になったのかということだ。Uberによれば、それが運営されている都市で何か良いことをしたいということが理由の1つだが、都市のインフラ整備の恩恵を受けることもできると述べている。

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「私たちはインフラを計画することはなく、都市を計画することもなく、将来それを行うつもりもありません」と、UberのプロダクトマネージャーのJordan Gilbertsonはブリーフィングで説明した。Uberのビジネスがそれらの側面に直接関与しないということは、それらの改善に間接的に影響を及ぼすための何かを可能な限り行わなければならないことを意味するが、Movementはもちろんそれを助けることができる。市街での輸送の効率化は一般に、より効率的なUberサービスの提供、顧客満足度の上昇、より多くの利用率に繋がる。

これはまた、Uberの事業が成熟するにつれて、Uberが運営される都市の地方自治体と間により緊密な関係を築くのに役立つ。とはいえ、第1には、現在制御されていない変数をモデルに取り込んで如何に制御するかというのが大きな目標のように思える。そしてそれは都市の中心部の道路を走る全ての人に恩恵をもたらす可能性のあるものだ。

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(翻訳:Sako)

Hyperloop Transportation Technologiesが1億ドル以上を調達したと発表

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Hyperloop Oneが、Elon Muskのアイディアを基にしたハイパーループシステムのプロトタイプの建設を進める中、彼らの競合にあたるHyperloop Transportation Technologies(HTT)が、この度サンフランシスコからロサンゼルスまでを30分以内で移動できるシステムを開発するために、1億800万ドル超の資金を調達したと発表した。

誤解のないように書くと、同社は3180万ドルを投資家から現金で調達し、残りの7700万ドルは、労働力やサービス、土地の使用権や将来的な現物支給などで構成されている。

アーリーステージのテック企業向けクラウドソーシングプラットフォームであるJumpStartFundのプロジェクトから誕生したHTTは、株式を対価とした労働力の現物出資を行うボランティアの手によって支えられてきた。

HTTによれば、いくつかの企業も同社へ現物出資で参加したようだ。その中には、素材メーカーのCarbures Europe SAやデザイン・エンジニアリング企業のAtkins、ブランド・マーケティング企業のAnomaly Communications LLCのほかにも、ヨーロッパを拠点とするAR・VR企業のReflekt GMBHが、ハイパーループシステム内に取り付けるAR窓に関する提案を行っており、ドイツのケルンを拠点とするLeybold GmbHも技術面でHTTを支援していく。同社は産業用真空ポンプのパーツを製造・販売しており、彼らの技術はハイパーループシステムにおいて極めて重要な部分を構成している。

まだプロトタイプはお披露目されておらず、最近計画されていたTechCrunchチームによるプロダクト見学も直前にキャンセルされてしまったが、前述のような企業がHTTのシステムに関わっているとすると、同社は本当にハイパーループシステムの建設を進めている可能性が高い。

また、これまでクラウドソーシング経由で、603人が同社のプロジェクトに対して自らの時間と才能をつぎ込んでおり、その中には「38ヶ国・44社から参加した200人以上の専門家」も含まれているとHTTは話す。

しかし、HTTの共同ファウンダーであるBibop Grestaの発言については、その信憑性が疑われるような事件が以前発生していた。あるオーストラリアのニュース記事の中に、ハイパーループの建設についてクイーンズランド州政府の代表者と会談を行ったというGrestaの発言が掲載されていた。しかし、このニュースを報じたRNが、その後同政府にコンタクトしたところ、彼らは「クイーンズランド州政府の役人とGresta氏もしくはHyperloop Transportation Technologies社との間で会談が催されたという記録はありません」と答えたため、RNは後ほどその記事を修正していたのだ。

HTTが私たちに送ってきた以下のツイートを見る限り、どうやらHTTは少なくともオーストラリアで行われたビジネスカンファレンスPause Festの中で、交通地域省の役人と共にステージに上がってはいたようだ。

さらにHTTはTechCrunchに対して、オーストラリア政府とシドニー・メルボルン間の線路建築の可能性についても議論し「反応はとても良かったのですが、その後に控えたオーストラリアの総選挙で繁忙期に入るため、彼らは落ち着いてから連絡すると言っていました。しかし、その後数ヶ月に渡って再度連絡を試みたところ、反応はありませんでした」と語っていた。

現在HTTはオーストラリア政府が引き続き興味を持っているのか確認中だという。

またGrestaは、今年のはじめにTechCrunchを含む複数のメディアに対して、カリフォルニア州クエイ・バレー(Quay Valley)に計画されている未来型都市の敷地内で、ハイパーループシステムの建設を開始したと発表したが、未だ完成予想図以外の進捗に関する情報は得られていない。

HTT

それからしばらくして、HTTはTechCrunchに、デモ車両のテストが2017年中に行われる予定との連絡と共に、追加の完成予想図を何枚か送ってきていた。

私たちの質問に対して、HTTの広報担当者は、同社が利用している米ローレンス・リバモア国立研究所が開発した磁気浮上システムのフルスケールでのテストもほとんど完了しており、「複数のエリアで、乗客を乗せられるフルスケールのハイパーループシステムを建築する準備を進めていると同時に、その他のいくつかの国とも交渉を行っている」と語っていた。

さらにHTTは、アメリカ政府とクエイ・バレーでのハイパーループ建設に向けて動いているが、彼らでは「コントロールできない」事項もいくつかあると話していた。

もちろん、新しいテクノロジーの導入には時間がかかり、スタートアップが当初予測していたよりも計画が長引くこともある。しかし、競争は既にはじまっており、少なくとも競合は既に線路の建設を進めている。

Grestaはそんな状況にもひるまず、HTTはあるべき「方向に向かって」おり、「構想に沿ってプロジェクトを進行している」と語る。

HTT CEOのDirks Ahlbornは「Hyperloop Transportation Technologiesは、単なる会社ではなく、社会的な活動のようなものです。設立当初には、多くの人が情熱に従って私たちの事業に参加し、HTTを何百万ドルもの価値がある企業にするため協力してくれています」と付け加えた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ニューヨーク州の新しい都市計画はディストピアへの第1歩か?

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今週の初め、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、21世紀半ばの完成を目指した橋(とトンネル)に関する記者会見を開催した。知事の野心的で論争の種ともなるその計画は、高速道路の渋滞を削減し、排気ガスの低減をするためにデザインされた、一連の構想である。

この構想はまた、洪水を阻止するトンネル内バリアのデザインと、地震に備えた橋の強化も含んでいる。エネルギー消費を抑えながら、素晴らしい照明のショーを提供するために、橋のLED照明化もリスト上に載せられている。ここではJay Zの音楽に乗せてイメージが示されているが、この壮大な照明はあなたのインスピレーションを促すことだろう:

当然のことながら、構想には数多くの対テロ規制が含まれている。橋やトンネルの「構造上重要な地点」の周りには、カメラとセンサーが配置される。このNew York Crossings Projectという名前のプロジェクトには、車のナンバープレートや人間の顔を認識できる先進的な画像認識テクノロジーが取り込まれるのだ。

そうした地点に展開されたあと、このテクノロジーは空港やその他の交通ハブにも適用されることになるだろう。

人権擁護団体からの反応は予想通り迅速だった。発表の翌日New York Civil Liberties Union(NYCLU)は、計画をマイノリティ・リポートと比較しつつ、知事のクオモをディストピアだと非難している。 以下はNYCLUのスタッフである弁護士のMariko Hiroseが、フィリップ・K・ディックの作品に言及しながら述べたものだ:

知事クオモの計画は、誰が何を知っているかを政府が調査するために使える、巨大なデータベースに、何百万人もの人びとのイメージとデータを格納してしまう可能性がある。罪のない人々、特に技術の不正確さによって誤認識されやすい有色人種が、テロリストとして誤って特定されてしまうという、巨大な危険性もある。私たちは、そのことが意味する深刻なプライバシー上の懸念について何の議論も経ぬまま、マイノリティ・リポートのディストピア世界に1歩近付いたのだ。

出典 The Verge

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(翻訳:Sako)