中国デジタル人民元「e-CNY」ウォレットアプリの個人ユーザー数が2億6千万人超に、五輪に向け実証実験を加速

中国で今、インストール数が急増しているアプリの1つが、中央銀行のデジタル人民元ウォレットだ。中国人民銀行(中央銀行)の金融市場担当責任者であるZou Lan(ゾウ・ラン)氏は、中国時間1月18日のプレスイベントで、人口の約5分の1に相当する2億6100万人の個人ユーザーが「e-CNY」ウォレットをセットアップし、875億元(約1兆5780億円)相当の取引が行われていると述べた

中国では過去2年間にわたり、深圳を含む10の主要都市でデジタル人民元の実証実験を行ってきた。人々は当初、抽選に参加して初期ユーザーになるための申請をする必要があった。そして2022年1月4日、中銀は実証実験を加速させる明確なサインとして、e-CNYウォレットを中国国内のiOSおよびAndroidストアで利用できるようにした。

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デジタル人民元は、中国で禁止されている暗号資産の一種では決してない。中央銀行は、ビットコインなどは変動性が高く、投機的で本質的な価値を持たないと判断し、暗号資産がマネーロンダリング(資金洗浄)の道具になる可能性を指摘している。

e-CNYは、異なる結果を目指している。中央銀行が発行するe-CNYは、中国で流通している現金通貨(M0)の法定デジタル版であり、規制当局はNFC技術を用いてインターネットがなくてもデジタル人民元の決済ができるようにすることを意図している。

2021年、中央銀行のe-CNY研究開発ワーキンググループが発表した研究論文によると、デジタル人民元の目的は以下のとおりだ。

  • 中央銀行が国民に提供する現金の形態を多様化し、国民のデジタルキャッシュに対する需要を満たし、金融包摂を支援する。
  • リテール決済サービスの公正な競争、効率性、安全性を支援する。
  • 国際的なイニシアティブに足並みをそろえ、国境を越えた決済の改善を模索する。

e-CNYウォレットは現在、中国のアプリストアでダウンロード可能だが、実際に登録してアカウントを補充し、Alibaba(アリババ)での買い物やDidi(ディディ)の乗車料金の支払いなど、800万件の「試験シナリオ」でデジタル通貨を使うことができるのは、試験的に導入された都市と冬季オリンピックの会場にいるユーザーだけだ。

現金をe-CNYに交換するには、Tencent(テンセント)が出資するWeBankやAnt(アント)が出資するMyBankなどのデジタルバンクを含む、中銀がデジタル通貨の運用・流通を認可した商業銀行のいずれかから資金を移動させる必要がある。

中国の人気決済サービスとの関係について、中央銀行は報告書の中で、e-CNYはWeChat Pay(ウィーチャットペイ、微信支付)やAlipay(アリペイ、支付宝)に取って代わるものではなく「補完」するものであると述べている。例えば、小額の取引では、e-CNYは物理的な現金と同じように匿名性をサポートすることができる。また別の例では、地方政府から市町村に送られる多額の資金をe-CNYで支払うことで、デジタル通貨の追跡機能を利用して汚職を防止することもできるという。

しかし結局のところ、e-CNYが本格的なアクティブユーザー基盤を獲得するには、ユーザーエクスペリエンスの面で大手民間決済企業に対抗する必要がある。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

Coinbaseが暗号資産ウォレットBRDを人材獲得買収

暗号資産の推進者たちが新世代のユーザーを獲得しようとしている中、消費者を誘導する主要な入口となっているのが、洗練されたインターフェースを持つ消費者向けウォレットアプリの数々だ。

Coinbase(コインベース)は米国時間11月24日、2014年に初めてモバイルウォレットを発表した暗号資産ウォレットのスタートアップであるBRDのチームを迎え入れることを発表した。BRDのチームはCoinbaseに移るが、BRDのユーザーには当面何の変化もなく、ウォレットは通常通り運営され、ユーザーの「資金は安全でセキュア」だとBRDの共同創業者は話している。

BRDは、モバイル暗号資産ウォレットの分野では初期のプレイヤーで、ユーザーがビットコインを保管する場所としてスタートしたが、トークンの幅広いネットワークをサポートし、取引所とのパートナーシップのおかげで暗号資産の売買や交換ができるまでに成長した。同社のユーザー数は1000万人を超えているという。

Coinbase WalletのTwitterアカウントのツイートには「このチームは、暗号資産ウォレットの保護預かりに関する深い専門知識をWalletに持ち込み、より多くの人々が安全かつセキュアに分散型の暗号資産の世界にアクセスできるようWalletをサポートします」と書かれている。

BRDはこれまでに、SBI Crypto InvestmentやEast Venturesなどから約5500万ドル(約63億円)のベンチャーキャピタル資金を調達した。

CoinbaseとBRDは、今回の買収の条件は明らかにしなかった。

共同創業者のAdam Traidman(アダム・トライドマン)氏とAaron Voisine(アーロン・ヴォワザン)氏は、ユーザーがウォレットの中身をCoinbase Walletアプリに移すための「移行経路」を構築する予定だが、それはユーザーにとって完全に任意となる、と話している。

画像クレジット:BRD

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

将来、DiscordにNFTと暗号資産ウォレットが登場するかもしれない

Discord(ディスコード)はすでに、NFT(非代替性トークン)のコミュニティの事実上の拠点となっているが、さらにこれらのつながりを大幅に深めることを計画しているかもしれない。

米国時間11月8日、Discordの創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏が、Discordが人気の暗号資産ウォレットサービスのMetaMask(メタマスク)や、多くのモバイル暗号資産ウォレットが基盤としているオープンプロトコルであるWalletConnect(ウォレットコネクト)と統合されている様子を示すスクリーンショットをツイートした。シトロン氏は、本当は「これは大変なことになるだろう」を意味しているNFTのツイッター用語である「probably nothing(おそらく大したことじゃない)」を用いて、以下のようなツイートを行った。

現段階でのウォレットのサポートは、純粋に予備調査的なものに思える。シトロン氏は、この仮の暗号資産統合がどのように機能するのか、Discordが暗号資産統合の検討にどれほど真剣に取り組んでいるのかについては詳細を提示せず、同社もまた具体的な説明を拒んでいる。

Discordの広報担当者はTechCrunchに対して「私たちはいつでも、提供するコミュニティを改善できるものを探求し実験し続けています」と語った。そしてこのスクリーンショットは最近行われたハッカソンでのものだと付け加えた。

Discordがソーシャルチャットアプリに暗号資産機能を追加することに興味を持っているという想像はまだ仮説段階かもしれないが、もし同社がEthereum(イーサリウム)への対応を行うのであれば、その計画は単なる支払いにとどまらない可能性が出てくる。また、Discordは最近、NFTについての考えに関する調査をユーザーに対して行った。

2021年Discordは、何千ものNFTプロジェクトの自然発生的な拠点となった。それらのプロジェクトの多くは、専用のDiscordサーバーを通じて、フォロワーと連絡を取り合い、最新情報を送り、売上や市場の動きを追跡している。また、NFTの配布イベントをコーディネートする際にも、Discordが選ばれている。イベントでNFTが「鋳造」され、支援者たちに販売または配布された後、それらは最終的にOpenSea(オープンシー)などの取引プラットフォームに送られる。その際、多くの場合には、大幅な値上げが行われる(ご存知のように、通常はJPEGが対象だ)。

Discordは、Ethereumやその他のデジタル通貨での支払いを念頭に置いているだけかもしれないが、シトロン氏がMetaMaskのサポートをほのめかしたことは、NFTを中心としたより野心的な計画を示唆している可能性もある。Ethereumのようなコインは、基本的な支払いや取引に使用することができるが、この暗号資産は、Ethereumのブロックチェーン上のスマートコントラクトを通じて追跡・取引される、ほとんどのNFTの技術的バックボーンとしても機能している。

Discordは抜け目のない経験豊富な企業であり、人びとが自分のデジタルアイデンティティを表現するためにNFTをどのように利用しているかをよく理解していると思われる。Discordはテキストとボイスのチャットアプリで、ユーザーのアイデンティティは主にどんなアバターを選んだかで表現されている、これは現在NFTが注目していることだ。すでにTwitter(ツイッター)やDiscordでは、NFTに精通したユーザーたちが、最もレアな(そしてしばしば最も高価な)NFTを選んで、PFP(プロフィール画像)として使用している。MetaMaskがサポートされれば、Discordは、ユーザープロフィールにリンクされたギャラリーにNFTを展示したり、所有権がブロックチェーンによって担保された「認証済み」のアバター画像を選択したりする場所になるかもしれない。

特に、急成長を遂げているWeb3.0の分野で同社はその足場を活用できる立場にある。なおWeb3とは分散化、デジタルグッズ、所有権に基づく仮想IDなどで定義されると多くの人が予想しているインターネットの次の段階である、しかし、Discordは現状でも有利な材料を持っている。

ツイッターでは、シトロン氏のツイートと、同社が実施した「DiscordとWeb3.0」に関するアンケートが相まって、賛否両論が巻き起こった。多くのアカウントからDiscordユーザーに対して、DiscordがNFTに全面的に乗り出すのではないかという懸念を理由に、月額料金で機能特典を提供しているプレミアムNitro(ニトロ)サブスクリプションをキャンセルするよう呼びかけが行われた。「Nitroサブスクリプションを解約してやったぜ。@discordはクソ、NFTもクソ」とつぶやいたツイートには1万近くの「いいね!」がついた。

また、シトロン氏のツイートには、Discordの芽吹きつつある暗号資産計画が、詐欺やスパムでコミュニティサーバーを圧迫している結果になっていることを嘆く声も多数寄せられている。シトロン氏は、Discordが、NFTの交換や販売を中心とした多くのサーバーなどで横行するいい加減な行為に対処するために、新たなチームを設立したことを伝え、一部のTwitterユーザーを安心させようとした。「スパムとセキュリティは、この世界における当社の最優先事項です」とシトロン氏は書く。「最近、具体的な対処チームを立ち上げました。詳しくは追ってお知らせします」。

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画像クレジット:Discord/Eric Szwanek

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

中国のフィンテックWalletsClubは世界で使える「eウォレットのためのVisa」を目指す

WalletsClubの共同創業者:CEOのシュー・ジシャン氏、COOのZeng Xianru(ツェン・シェンルー)氏、CTOのLiu Hang(リュー・ハン)氏

デジタル決済が世界中で主流になりつつある。モバイルネットワーク事業者の業界団体であるGSMAが発表したレポートによると、2020年末までにアクティブユーザー10万人超を抱えるモバイルマネープロバイダーは300社超となった。合計で3億を超えるモバイルマネー口座が世界中で毎月使われている。

eウォレットとして広く知られるモバイルマネープロバイダーは、従来の銀行に頼ることなく携帯電話を通じての送金、支払い、支払い受け取りに使われている。広く浸透し、強固なネットワーク効果を享受している限り、使い勝手はいい。しかし年間ユーザーが10億人を超えるAnt GroupsのAlipayのような人気のサービスですら、大半の国ではさほど浸透していないために中国外では実際には使用できない。

そこでの問題は、従来の銀行が持つ相互運用性が大半のウォレット間ではないことだ、とWalletsClubを創業する前にAlibabaのクラウド部門とAlipayの基礎インフラ構築に携わったXue Zhixiang(シュー・ジシャン)氏は指摘した。

2019年に香港で登記し、中国本土にオペレーションチームを抱えるWalletsClubはデジタルウォレットのためのVisaになることを狙っている。世界の何百もの電子マネーサービス間での送金を可能にするというものだ。

「デジタルウォレットのための手形交換所のようなものです」とCEOのシュー氏は話した。

決済システムは金融取引に関わっている2者の仲介だ。資金の有効性を認証し、取引を行う2者間の送金を記録することで、送金の効率とセキュリティを確保するようデザインされている。WalletsClubを使ってリアルタイムに支払ったり、支払いを受けたりすることができる、とシュー氏は主張した。同社のテクノロジーは金融機関が世界中でデータを交換するのに使われている「ISO 20022」基準に基づいているとも話した。

言い換えると、WalletsClubは個人エンドユーザーではなく、世界中の何百ものeウォレットを追いかけている。同社のビジョンは、送金する側と送金を受け取る側のサービスプロバイダーあるいは金融機関がWalletsClubの会員である限り、あらゆるモバイルウォレットを使って人々がどこででも支払えるようにすることだ。これはVisaやMastercardがネットワーク内のさまざまな銀行が発行しているクレジットカードをいかに処理しているかに似ている。WalletsClubは取引ごとに定額手数料を課すことで収益をあげる計画だ。

電子ウォレットに相互運用性を加えることで、決済システムが動いているところであればどこでも互換性を獲得するため、特定の地域でサービスを提供する小規模事業者ですら成長できる。

従来の金融システムに挑む代わりに、WalletsClubは銀行サービスを利用できていない個人が簡単にデジタルウォレットを使ってお金を動かせるようにする手段を提供したいと考えている。この手段は銀行口座を開設するより簡単だ。何百万人という東南アジアの労働者のような、母国に送金する必要がある出稼ぎ労働者の中にそうした送金に対する大きな需要がある。

WalletsClubは潜在的には数社のテリトリーに侵入している。母国に送金する移民労働者は現在、長年にわたって展開されているWestern UnionやMoneyGramといった送金サービスに頼っている。いずれのサービスもユーザーが送金したり金を受け取ったりするのに足を運ぶ「エージェント」の大きなネットワークを持つ。2018年にAlipayは香港のユーザーがフィリピンのGCashアカウントに送金できるようにしたが「Ant Groupのフォーカスは送金というより決済だった」とXue氏は述べた。

世界銀行のデータによると、故郷を離れている労働者からの母国への送金は2019年に、中国を除く低中所得国における最大の海外からの資金調達源となった。送金額は5000億ドル(約54兆4625億円)超となり、そうした低中所得国の海外直接投資の水準を上回った。

モバイルウォレットの手形交換所が脅かすその他の業種としては、事業者がさまざまなデジタル決済手法を統合しなくてもいいようにしているクロスボーダー決済アグリゲーターがある。

初期段階にあるWalletsClubにとって最大の課題は顧客との信頼関係の構築であり、同社は香港、シンガポール、カナダにいる中国人起業家が興した電子マネーサービスと協議中だ。こうした創業者たちがここ10年の中国のフィンテックブームから学んだことのおかげで、中国で開発されたウォレットは特に新興マーケットで数多く展開されている。それらの多くはTencentやAntのような巨大企業と競合するのは難しいとわかっていて、中国のフィンテックをめぐる規制強化はいうまでもない。

「メンバーを20社集め、メンバー間の毎日の決済が数百件あれば、当社は基本的に利益をあげられます」とシュー氏は話し、目標は2021年中に参加企業12社を獲得することだと付け加えた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:WalletsClubデジタルウォレット中国送金

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

モバイル決算アプリVenmoは暗号資産、家計管理、貯蓄に進出、2021年中にHoneyを統合

モバイル決算アプリVenmo(ベンモ)の2021年は、これまでとはずいぶん違う展開になりそうだ。Venmoの親会社であるPayPal(ペイパル)は米国時間2月3日に行った第4四半期収支報告において、Venmoは家計、貯蓄、暗号資産へと範囲を広げ、ネオバンクの領域に少しずつ近づくと話した。さらに、40億ドル(約4210億円)でHoneyを買収し、商品価格の割引、特典、価格調査、ほしいものリストといった機能を含むその買い物ツールをVenmoアプリに統合する計画も発表した。

PayPalは、以前からVenmoに暗号資産を導入する意向を示していた。同社は2020年11月に暗号資産市場に参入し、特定暗号資産サービスプロバイダーPaxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)と提携して米国内での暗号資産の購入、保有、売却を可能にした。当時PayPalは、同様の機能一式を2021年中にVenmoにも導入すると表明している。

そのタイムスケジュールは今も変わりがないことを、PayPalは今回の収支報告で投資家たちに対して明言した。

同社は、Venmoのユーザーは数カ月以内に暗号資産の購入、保有、売却をVenmoアプリ内で行えるようになると話している。これにはその他の「投資選択」も含まれるという(これは、ブロックチェーンで独自の暗号資産を展開したいと考える中央銀行にPayPalが協力していることを示すものだ)。

その他Venmoで新しくなるものを見ると、同アプリがますますネオバンクのライバルになっていくように感じられる。

たとえばPayPalは、2021年に金融業界のパートナーと共同で家計管理や貯蓄のためのツールや、PayPal内での請求書の支払いを可能にするオプションなどを導入すると話している。これらは、現代のモバイルバンキングアプリで一般的に見られるものだ。

Venmoに導入される貯蓄機能は、PayPalですでに利用可能なCash Plusアカウントと似たようなものとなり、米連邦保険公社と提携してパススルー保険が提供される。現在、Cash Plusアカウントにある資金にパススルー保険が適用されるのは、利用者がPayPalのデビッドカードであるCash Cardを所有し、Direct Deposit(口座振り込み)を行ってるか、Cash PlusアカウントでGoal(目標)を設定している場合のみだ。Venmoでも、同じ保険が適用されるように準備を整えている。

もう1つの進化は、Honeyの統合だ。PayPalは、ことあるごとにそれを公言してきたが、その統合のかたちに関する詳細がようやく明らかにされた。PayPalの計画によれば、2021年前半に、Honeyの機能がPayPalとVenmoの両プラットフォームに導入される。これには、Honeyのほしいものリスト、価格調査ツール、おまけ、クーポン、特典なども含まれる。

関連記事:PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公表

この統合により、小売り業者はPayPalの両面マーケットプレイスを利用して、PayPalとVenmoの利用者の特定の顧客層を狙ってパーソナライズした商品の提示や割り引きができるようになる。言い換えれば、特定の商品の特典を探したり、価格を調べたりといった買い物の初期段階から消費者を囲い込もうという狙いだ。Honeyの買い物ツールによって、利用者を最適な取引に導いた上に、Venmoアプリで決済まで完了させることが可能になる。

パンデミックによる店舗の閉鎖や政府によるロックダウンのために実店舗や対面での販売が減少し、商取引がますますオンラインへと移行していく中、さらに、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保など基本的な安全対策が徹底されていない実店舗はもう怖くて行けないという人々が、オンラインショッピングのほうを好むようになってきたこの時期に、それらの新機能が登場することになる。

電子商取引と「非接触」決済が急速に増加したことも手伝って、PayPalにはこの第4四半期に140万件もの小売り業者が新たに加盟した現在、同プラットフォームには2900万件の業者が登録し、3億5000万人もの消費者に対応している。

その一方で、Venmoの総決済額は、前年比で60%増となる470億ドル(約5兆円)に達した。顧客ベースは32%増加し、最終的にアカウント数は7000万件弱にまでなった。同社は2021年の収益が9億ドル(約950億円)に達すると見込んでいる。

画像クレジット:Venmo

Venmoは、単なる決済アプリを超えて急速に成長を遂げている。この数カ月間で、同社は初めてのクレジットカードをローンチし、月末までには100%本格展開される。また、店舗でのQRコード決済、ビジネスプロフィール小切手の換金機能(景気刺激給付金小切手の支給に間に合った)もローンチされる。

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Venmoは、少なくとも今の時点では、完全なネオバンクになろうとしているわけではない。むしろ、いわゆる「デジタルウォレット」と目指している。

「今日のデジタル世界では決済、金融サービス、買い物を視野に入れたデジタルウォレットの必要性が急激に加速しています」とPayPalのCEOであるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は投資家たちに向けて述べた。「今年、私たちのデジタルウォレットは、これまでの進化にも増して大きく変化し、単一の、総合的で美しくデザインされたアプリの機能が劇的に増加します。これが、顧客エンゲージメントの大幅な増加を招くでしょう」と彼は話す。

Venmoの新機能が利用可能になれば、アプリの利用数や決済額は増大するとPayPalは期待している。

「今後、エンゲージメントは歴史的な比率で上向きになると思われます。それはすべて、単なる決済アプリから大きく飛躍したデジタルウォレット・アプリの卓越機能によるものです」とシュルマン氏は語った。

カテゴリー:フィンテック
タグ:VenmoPayPal暗号資産電子ウォレット

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

TikTokの中国国内版「Douyin」が電子ウォレットサービスを開始

中国ではTencentのWeChat PayとAlibaba系列のAlipayが長くデジタルペイメントを支配しているが、両社は常に新しいチャレンジャーの挑戦を受けている。オンラインペイメントに新たに参入したのは、TikTokの中国国内版であるDouyin(抖音)だ。

DouyinではこれまでAlipayとWeChat Payで支払いができたが、ここにDouyin Payが加わった。

Douyinの広報は「Douyin Pay(抖音支付)は既存の主要な支払い方法をに追加されるものであり、最終的にはDouyinのユーザーエクスペリエンスを高めるものです」と述べている。

ペイメントはeコマース事業の成長が見られるDouyinにとっては自然なステップだ。たとえばリップスティックをインフルエンサーが紹介している動画を見ながら、ユーザーは商品のリンク先に行くことができる。インセンティブが大きければ、おなじみのWeChat PayやAlipayではなく、いずれDouyin Payで支払うようになるかもしれない。

eコマース大手のJD.comやフードデリバリーサービスのMeituan(美団)など、他のインターネット大手も自社のペイメント手段をユーザーに使ってもらおうとしているが、市場の寡占状態を打ち破るのは難しい。全体で見ると、中国の電子ペイメントの約90%をWeChat PayとAlipayが扱っている。

他のインターネット関連企業にも見られることだが、Douyinの親会社であるByteDanceはペイメント企業を買収することで待望のペイメントのライセンスを取得した。2020年9月に、ByteDanceの創業者であるZhang Yiming(張一鳴)氏の指揮する企業がペイメントソリューション企業のWuhan Hezhong Yibao Technology Co(武漢合衆易宝科技)を買収した。結果として、DouyinやToutiao(今日頭条)などのByteDanceのサービスがペイメント機能を提供できるようになった。

たとえばユーザーはDouyinのキャンペーンで現金がチャージされた電子レッドパケットを受け取り、その現金を自分の銀行口座に預けることができる。

Douyin Pay

Douyin Payは2月の旧正月を前にして良いタイミングで登場したように思える。旧正月に家族や友人は互いにレッドパケット(赤い封筒)を贈り合う。過去10年間でWeChatはお金が入った縁起の良い封筒の電子版を身近なものにし、これが初期のWeChat Payの飛躍につながった。

中国ビジネスニュースメディアのLatePostによると、DouyinはCCTV(中国中央テレビジョン)と契約し、同局の毎年恒例の大型広告イベントであるカウントダウン番組、Spring Festival Gala(春節聯歓晩会)の赤い封筒テクノロジープロバイダーになるという。創業からほどなくしてAlibabaのライバルとなったPinduoduo(拼多多)は2020年にこの契約をして、自社のペイメント利用者を増やそうと試みた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:DouyinByteDance中国電子ウォレット

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)