Intuition Roboticsの高齢者ケアコンパニオンロボット「ElliQ」がいよいよ発売開始

鋭いTechCrunch読者なら、我々がIntuition Robotics(イントゥイション・ロボティクス)を5年前から取材していることにすぐに気がつくだろう。遡ること2017年2月の、高齢者ケアロボットのクラウドファンディングキャンペーンからである。それ以来の取材のほとんどは、イスラエルを拠点とする同社がさまざまなラウンドでさらに多くの資金を調達していることについてで、最も重要な質問である「いつ」に答えることはなかった。具体的には、ElliQ(エリキュー)ロボットはいつ販売されるのだろうか?

ようやくプライムタイムの準備が整ったようだ。ロボットを作るのは時間がかかるもので、同社は数年かけてベータテストを行ってきた。Intuitionは、ElliQを米国時間3月15日より正式に販売することを、製品サイトを通じて発表した。2022年のロボット業界がたいていそうであるように、このデバイスはサブスクリプションプラン、いわばRaaS(Robotics as a Service)を通じて提供される。年間契約の場合、初期費用250ドル(約2万9570円)、月額30ドル(約3550円)で利用できる。

高齢者ケアは、日本では長い間ロボティクスの中心的存在だったが、他の地域ではなかなか足場を固めることができなかった。米国では、Labrador Systems(ラブラドールシステムズ)をはじめとするスタートアップが参入しており、Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)といったスマートホーム機器メーカーも関連機能を自社システムに組み込み始めている。

画像クレジット:Intuition Robotics

ElliQは、惜しまれつつも生産終了したKuri(クリ)やJibo(ジーボ)のような、高齢者ユーザー向けに特化した製品だ。Labradorのように実際に雑用を手伝うのとは異なり、シニア層の参加を持続させるように設計されている。同社によると、平均的なユーザーは1日に20回、合わせて20分ほどこの製品と関わりを持つそうだ。つまり、テレビのようなエンゲージメントレベルではなく、もっと頻繁に、短い時間でチェックインできるように設計されているといえる。

共同設立者でありCEOのDor Skuler(ドール・スクーラー)氏はリリースでこう述べている。「長年の努力の末、ついにこの日がやってきました。パンデミックの間中、私たちは孤独が高齢者層にもたらす破壊的な影響を目の当たりにしました。同時に、ElliQがベータ版ユーザーに信じられないほど役立ち、笑顔をもたらすのも目の当たりにしてきました」。

エクササイズ、Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)からの健康情報、家族とのチェックイン、Uber Healthによる交通手段の提供など、デバイスを通じて利用できるコンテンツは多岐にわたる。つまり、普段は1人暮らしでも大丈夫なくらい自立しているが、もう少し手助け・サポートが必要な人のために、サポートとエンゲージメントという2つの要素が用意されているのだ。

画像クレジット:Intuition Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

高齢者などの見守りロボ「BOCCO emo LTEモデル Powered by ネコリコ」に離れた家族の見守りを支援する4つの新機能

高齢者などの見守りロボ「BOCCO emo LTEモデル Powered by ネコリコ」に離れた家族の見守りを支援する4つの新機能

家庭向けIoTサービス事業などを展開するネコリコは、コミュニケーションロボット「BOCCO emo LTEモデル Powered by ネコリコ」(emo。エモ)に4つの新機能を追加し、サービスの提供を開始した。新機能は、すでにemoを利用している人も無料で利用できる。

emoは、ユカイ工学による共感型コミュニケーションロボット「BOCCO emo」(ボッコエモ)のバリエーションモデルとして、家族と離れて暮らす高齢者の見守り機能&LTE通信機能を搭載した製品。2021年5月に提供を開始した。

専用アプリを使った家族同士の遠隔コミュニケーション機能の他にも、センサー情報から熱中症やインフルエンザの危険性を注意したり換気を促す「おせっかい通知」のような能動的な機能も備えている。LTE内蔵のため、WiFi環境への接続などの手間がかからず、簡単に利用できる。

ネコリコでは、これまでにユーザーから寄せられた要望をもとに、次の4つの新機能を開発した。

おかえり機能

おかえり機能は、内蔵の人感センサーで同居人を見守る機能。しばらく見かけないとき、何をしていたのか、体調に変化はないか、声かけをする。メッセージを録音すれば、アプリに音声メッセージが届く。

長期不在通知機能

長期不在通知機能は、12時間、24時間、48時間以上同居人を見かけなかったときにアプリに通知する。

おへんじ機能

おへんじ機能では、emoに「おはよう」「おやすみ」などとあいさつをすると返事をしてくれる。あいさつをすると、それがアプリに通知される。

記念日でおしゃべり機能

記念日でおしゃべり機能は、記念日を設定しておくことで、その日になるとemoがメッセージを話してくれるというもの。

「おかえり機能」と「長期不在通知機能」には、同居人の起床や帰宅を検知したときにemoが声かけすることで、emoと見守られる人とのコミュニケーションの頻度を高めるという狙いもある。スマートフォンのアプリで見守っている人たちは、相手の生活リズムをより細かく感じられるようになり、声かけを必要とするタイミングを把握しやすくなるということだ。「おへんじ機能」と「記念日でおしゃべり機能」には、emoへの愛着を高めてもらい、関わりを増やしてもらう目的がある。

米アマゾンが月額約2200円の家族向け高齢者介護サブスク「Alexa Together」を提供開始

Amazonは米国時間12月7日、まだ自立した生活をしているものの、さらなるサポートを必要とする高齢者を介護する家族を対象としたサブスクリプションサービスAlexa Togetherの正式な開始を発表した。この機能は、同社の2021年秋のイベントで初めて紹介されたもので、Amazonの既存製品Alexa Care Hubを拡張し、月額19.99ドル(約2200円)または年額199ドル(約2万2000円)のサブスクリプションサービスとしてパッケージ化したものだ。

関連記事:アマゾンが高齢者介護のサブスクサービス「Alexa Together」を開始

Alexa Care Hubは、家庭内のAlexaデバイスを高齢の家族を介護するためのツールにするという、同社の最初の試みだった。そのサービスには、家族が年老いた両親やその他の大切な人を(本人の許可を得て)見守り、例えば家族が助けを求めた場合などに、特定の行動に反応するような機能が含まれていた。

Alexa Togetherは、Care Hubの機能を拡張したもので、緊急時のヘルプラインへのアクセス、転倒検知対応機能、家族が高齢者のデバイスの設定を管理できるリモートアシストオプション、愛する人がAlexaや他のスマートホームデバイスを使っているときに通知したり、普段の活動が滞っているときに通知したりすることができる家族向けのアクティビティフィードなどを備えている。

これらの機能は、有効にするには、双方が一緒にサインアッププロセスを完了する必要があるオプトイン・コンセント型の環境で使用されるように設計されている。

一度設定すれば、高齢者の方が緊急時の助けが必要な時に「Alexa、助けを呼んで」と声をかけることができる。すると訓練を受けたエージェントが、警察や消防、救急車などを、他のホームセキュリティシステムと同じように、その場所に派遣することができる。しかし、Alexa Togetherシステムは、カスタマーが緊急支援を必要としているかどうかを検知するために、Assistive Technology Service(アシスタント・テクノロジー・サービス)やVayyar(ヴァイヤ)のサードパーティ製デバイスと連携することができる。

Vayyar Care(ヴァイヤ・ケア)は、転倒を検知することができる壁に取りつけるセンサーで、ATSのSkyAngelCare(スカイ・エンジェル・ケア)は、高齢のカスタマーが首から下げる転倒検知ペンダントだ。SkyAngelCareはペンダントのボタンを押すと検知できるように、どちらも転倒を検知する。Amazonによると、Alexa Togetherには今後さらに多くのデバイスメーカーが追加される予定だ。

リモートアシスト機能は、家族が高齢者のデヴァイスのさまざまな設定を管理できる機能だ。これには、リマインダーの設定、電話やメッセージの連絡先の追加、買い物リストの追加とチェック、音楽サービスのリンクなどが含まれる。これにより、高齢者の方がAmazonに助けを求める電話をしなくても、家族がITのサポートを行うことができる。

画像クレジット:Amazon

アクティビティフィードは、高齢の家族が1日を過ごし、Alexaやその他の接続されたスマートホームデバイスと初めて対話したことを知らせるために、家族にアラートを送信する。これは、家族が定期的にAlexaと関わることを前提としているため、家族が問題なく過ごしているかどうかを知るための代理として機能するという点では、不完全なシステムだ。しかし、何のアクティビティもない場合にアラートが送信されることは、家族が愛する人に連絡を取り、問題がないかどうかを確認することを思い出させることができる。

このサブスクリプションサービスは、このソリューションが適しているかどうかを判断するために、6カ月間の無料トライアルを提供している。また、Alexa Care Hubの既存顧客は、本日から2022年12月7日まで、Alexa Togetherを1年間無料で利用できるようになる。

将来的には、Alexa Togetherが家族や友人、さらには隣人など複数の介護者をサポートする機能などを展開していくと、Amazonは述べている。

Amazonは、Alexaを使った高齢者や病弱な人々の介護への投資を増やしている。Care HubやAlexa Togetherに加えて、2021年の秋には、Atria(アトリア)やEskaton(エスカトン)のリビングセンターや、Cedars-Sinai(シダーズサイナイ)、BayCare(ベイケア)、Houston Methodist(ヒューストン・メソジスト)などの病院にAlexaを導入することを発表した。また、K4Connect(K4コネクト)、Lifeline Senior Living(ライフライン・シニア・リビング)、Aiva(アイヴァ)、Vocera(ヴォケラ)など、高齢者介護市場に特化したソリューションを開発できるAlexa Smart Properties(アレクサ・スマート・プロパティ)のツールやAPIを活用できるパートナーと協力していくとしています。これらのソリューションを実現するために、AmazonはAlexaの医療スキルをHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)に準拠させることに取り組み、その他のHIPAA規制をナビゲートするヘルスケアチームを構築した。

関連記事:アマゾンがAlexaを病院や高齢者施設に導入、Alexaで家族の呼び出しやニュースの確認などが可能に

しかし、これらの既存の高齢者ケアソリューションの多くは、企業間取引(B2B)での販売を想定しているが、Alexa Care Hubと今回のAlexa Togetherのサービスは、消費者市場を対象としたサブスクリプション型のサービスとなっている。

Alexa Togetherは、Echo、Echo Dot、Echo Showなどの対応するAlexaデバイスで動作し、アドオンサービスまたはデバイスバンドルのいずれかで利用できる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

約950兆円の50歳以上の市場をターゲットにするコミュニティをAARPが設立

高齢者を対象としたテクノロジーは、ヘルスケア、フィンテック、エンターテインメントなどの分野で、目新しいものではないが、スタートアップ企業、投資家、国際的な産業界リーダーからなる新しいコミュニティが、この年間8兆3000億ドル(約950兆円)と言われる市場に注目している。

AARPが起ち上げたAgeTech Collaborative(エイジテック・コラボレーティブ)は、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)、Walgreens(ウォルグリーン)、Cooley(クーリー)、QED Investors(QEDインベスターズ)などの組織を集め、スタートアップ企業の製品やツールをスケールアップして、それらをAARPの3800万人の会員の目に触れるようにしようという取り組みだ。

このコラボレーションには、Voiceitt(ボイスイット)、Rendever(レンデバー)、Trust & Will(トラスト&ウィル)、Mighty Health(マイティ・ヘルス)など、50社のスタートアップ企業が参加している。これらの企業は、製品を試用するための6つのテストベッドを利用できる他、10を超える投資家やベンチャーキャピタリスト、50歳以上のコミュニティに関わる大手企業やサービスプロバイダーとアイデアを交換することができる。

AARPでイノベーション・製品開発担当シニアバイスプレジデントを務めるAndy Miller(アンディ・ミラー)氏がTechCrunchに語った話によると、50歳以上の人々の消費力はすでに8兆3000億ドルに達しているが、30年後には3倍になると予想されるという。

ミラー氏は、自身が率いるアクセラレーターのAARP Innovation Labs(AARPイノベーション・ラボ)には、30社ほどの企業が集まったものの、AARPの会員にはアクセスを提供できなかったことが、このアイデアの発端になったと語っている。そこでAARPは、スタートアップ企業に規模拡大の道筋をつける方法を考え始めた。その中には、スタートアップ企業が試験的に製品を試す機会を見つけたり、製品を試してくれる企業と提携できるようにすることが含まれる。

また、AARPには、50歳以上の市場をターゲットにしたスタートアップ企業や他のアクセラレータプログラムについて、AARPの見解を聞きたいというベンチャーキャピタル企業からの問い合わせも受けているという。

「私たちは、このようなエコシステムを構築する必要性を強く感じていました」と、ミラー氏はいう。「この年代層では毎日1万人が65歳になり、ミレニアル世代の最高齢者はあと10年で50歳になります。経済的な誘引もありますが、しかし我々の取り組みによって人々がより幸せな年齢の重ね方をできるようにすることで、社会の利益にもなります。私たちは、AARPという究極のコネクターの力を、VCや企業、スタートアップに活用することができます。老いに打ち勝つことができるものがあるとすれば、それはAARPであるはずです。私たちは、すべての人に成功して欲しいと思っています」。

Aging 2.0をはじめとする他の組織もまた、エイジテック分野に参入し、次の最も優れたイノベーションを模索している。一方、スタートアップ企業はさまざまな製品やサービスのために資金調達を続けている。例えば、高齢者向けフィットネスプログラムをてがけるBold(ボールド)は、2021年初めに700万ドル(約8億円)を調達している。

新型コロナウイルスが世界的に大流行する以前には、高齢者向けのテクノロジーは「あればいいもの」だった。しかし今では「最高の人生を送るためには絶対的な必要なもの」となっていると、ミラー氏は付け加えた。QRコードをスキャンしてレストランのメニューを注文することから、医師との遠隔医療の予約まで、高齢者にとってテクノロジーに慣れ親しむことが必要になっている。

これら2つの分野に加えて、Voiceitt(ボイスイット)が取り組んでいるような、うなり声や音を認識して照明を点灯させる技術などの音声認識分野や、世代を超えたファイナンシャルプランニングなどのフィンテック(金融テクノロジー)分野でもイノベーションが起こると、ミラー氏は考えている。

フィンテックは、QED InvestorsのマネージングパートナーであるNigel Morris(ナイジェル・モリス)氏が注目している分野の1つでもある。

退職後の選択肢を理解し、子どもに貯金を渡すかどうかを考えたいというニーズや、60歳で退職したら海辺に隠居するのではなく、むしろギグ・エコノミーを活用したいというニーズもあると、モリス氏はいう。

QEDは、贈与管理のためのソフトウェアであるFreewill(フリーウィル)や、介護者の財務管理を支援するTrue Link(トゥルー・リンク)など、4社のエイジテック企業に投資している。

「いくつもの企業がこの問題を考えており、それは時宜にかなっています」と、モリス氏は続けた。「この層は伝統的に格好良いものとは見做されておらず、多くの投資家がこの層を理解していないため、これまで見過ごされてきました。そこにチャンスはたくさんあり、AARPがこのような活動を行うのはすばらしいことです。その創設メンバーになれることを、私たちは大変誇りに思います」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

⾻折予防床材「ころやわ」開発・販売のMagic Shieldsが約4000万円を調達、量産性向上と事業拡⼤を目指す

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大


医療機関や介護施設において、高齢者の転倒による大腿骨の骨折リスクを軽減させる「転んだ時だけ柔らかい床『ころやわ』」を製造するMagic Shieldsは、第三者割当増資による1億4000万円の調達を発表した。引受先は、リード投資家のインクルージョン・ジャパン、またMonozukuri Ventures、信金キャピタル、グロービス。累計調達額は約1億8000万円となった。調達した資金により「ころやわ」の量産体制を拡大し、全国の病院・高齢者施設での普及と、転倒骨折ゼロを目指す。

2019年設立のMagic Shieldsは、自動車工学と医学をベースに新素材と構造「メカニカル・メタマテリアル」の研究開発、および製造・販売を行うスタートアップ。高齢者の転倒による骨折を減らすため、転んだときだけ柔らかい「可変剛性構造体」を使った「ころやわ」を開発。床やマットとして病院や高齢者向け施設へ提供している。高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

同社の「ころやわ」は、従来両立が困難とされていた「歩行安定性」と「衝撃吸収性」という2つの性質をあわせ持つ新素材・構造を採用。120施設を超える医療機関・介護施設で導入されており、「ころやわ」上での骨折は確認されていないという(2021年11月1日時点)。

また「ころやわ」は、歩行時の踵やつま先、杖・車いす使用時の沈み込みが少なく、へこまない硬さであり、「歩行時/車いす移動時の安定性」を実現しているとした。

椅子やベッドからの転落、車いすへの移乗や歩行からの転倒時には、大きく沈み込み、大腿骨の骨折リスクを軽減する「衝撃吸収性」を実現。転倒時には、フローリングに対して約半分に衝撃を抑え、骨粗鬆症の大腿骨骨折の目安荷重(221kgf)を下回るという。

アマゾンがAlexaを病院や高齢者施設に導入、Alexaで家族の呼び出しやニュースの確認などが可能に

Amazon(アマゾン)はすでにホテル集合住宅などの分野をターゲットに含めていたが、米国時間10月25日、医療機関や高齢者施設向けに新しいソリューションを展開すると発表した。このソリューションは、Alexa Smart Properties(アレクサ・スマート・プロパティーズ)の一部だ。Alexaデバイスを大規模に導入するニーズに応えるために特別に設計されており、施設の管理者は、患者や入居者のためにカスタマイズされた体験を作り出すことができる。

高齢者施設の入居者は、Alexaデバイスを使って家族など大切な人を呼び出したり、コミュニティでの出来事などのニュースを把握したりすることができる。Alexaデバイスは、お知らせ、音声メッセージによる入居者同士のコミュニケーション、音声通話やビデオ通話、チェックインやメンテナンスの依頼、さまざまな管理業務など、施設での活動の効率化にも利用できる。Amazonは、これが施設の効率化と生産性の向上に資すると考えている。

Amazonによると、Atria(アトリア)やEskaton(エスカトン)などの高齢者施設が、この新しいソリューションを導入するという。

高齢者施設でAlexaを利用する市場は、K4Connectのようなサードパーティプロバイダーがすでに開拓している。K4Connectは2020年、Alexaの音声アシストを含む新しいテクノロジーを高齢者や障害者に提供するため、シリーズBで2100万ドル(約24億円)を調達した。K4Connectをはじめ、Lifeline Senior Living、Aiva、Voceraなどの企業も、Alexa Smart PropertiesのツールやAPIを利用し、独自にカスタマイズしたソリューションやソフトウェアを展開しようとしている。

画像クレジット:Amazon

一方、AmazonはすでにCedars-Sinai(シダーズ・サイナイ)と共同で、試験的にAlexaを病室に置いている。患者は音声コマンドを使って、テレビのチャンネル変更などの基本的なタスクを実行したり、介護スタッフとコミュニケーションを取ったりすることができる。日常的な作業の一部をAlexaに任せ、看護師を医療に専念させる構想だ。

Amazonの病院向け新ソリューションにより、患者はAlexaを使って介護スタッフとコミュニケーションをとったり、自室の機器を操作したり、ニュースや音楽を楽しんだりすることができる。また、医療従事者は、Alexaの通話やDrop-In(ドロップイン)などの機能を使い、病室に入らなくても患者とコミュニケーションをとることができる。これが病院の生産性を向上させ、医療用品や手袋、マスク、ガウンなどの保護具を節約することもできるとAmazonは指摘する。パンデミックで新型コロナウイルスの症例が急増し、個人防護具の不足が複数の現場で継続的に問題となっていた。

Amazonによると、Cedars-SinaiはAlexa Smart Propertiesソリューションを正式に展開する企業の1つであり、上記のパイロットプログラムに続き、BayCareやHouston Methodistもその動きに名を連ねている。

「音声は、年齢や技術的な知識に関係なく、患者にとって直感的に使えるものです」とCedars-Sinaiの医療・外科サービス部門のエグゼクティブ・ディレクターであるPeachy Hain(ピーチー・ヘイン)氏は声明で述べた。「患者は、部屋に入ってすぐに、Alexaを使ってケアチームと連絡を取り合い、いろいろ楽しむことができます。ケア提供者は作業を効率化して患者さんのケアに時間を割くことができます。これは、私たちの病院での体験を向上させる完全なゲームチェンジャーです」と同氏は付け加えた。

Amazonはこれまで、音声の録音や書き起こしに関連したプライバシーの問題に悩まされてきた。医療機関や高齢者施設向けのソリューションでは、音声の録音は保存されず、ユーザーがデバイスを使用する際にAlexaと個人情報を共有する必要もないと説明する。また、ユーザーは上部のボタンでいつでもEchoのマイクをミュートすることができる。加えて、Amazonは、HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)適格のAlexaの技術に基づく通信により、保護の対象となる健康情報を守るとしている。

Amazonは以前から、Alexaを医療機関に導入しようと取り組んできた。CNBCの2018年の報道では、音声アシスタントを医療の分野で役立てるために、Alexaを使ったヘルスケアチームを構築中だと伝えていた。そのために必要となる複雑なHIPAA規制をクリアすることも目指していた。翌年、HIPAAに準拠した最初の医療用技術を発表し、デバイスの病院での試験運用を開始した。Amazonは、他にもヘルスケアソリューションに投資しており、医師の診断書や患者の健康記録などから情報を収集する機械学習ツール「Amazon Comprehend Medical」のようなソリューションや、オンライン薬局PillPackのような買収などが投資の対象だ。

新しいAlexa Smart Propertiesソリューションは、いずれも11月から米国で展開されるとAmazonは話している。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi