パブリックベータ版が届いた
Apple(アップル)が提供するオペレーティングシステムの中では、watchOSは最も影の薄い存在だ。 macOSが近年で最大の改修を受けるこの1年は、その傾向がますます強くなるだろう。概して、スマートウォッチのユーザーは新しいハードウェアセンサーの追加などに着目する傾向があるため、Apple Watchのソフトウェアは見過ごされがちだ。そんな中で、米国時間8月10日、数多くの重要な新機能と共にwatchOS 7のパプリックベータ版が公開された。どうやらAppleはスマートウォッチメーカーのリストの頂上に君臨していることに、安心しきってはいないようだ。
実際、Appleは特にHuawei(ファーウェイ)やSamsung(サムスン)といった海外勢による競争の激化を目の当たりにしている。おそらく、ソフトウェアの更新だけでは、スマートウォッチへの懐疑論者を引き込むには十分ではないだろう、しかしそれに加えてハードウェアのアップデートや低価格モデルに焦点を合わせる戦略を組み合わせれば、同社の優位な地位を保持する役には立つ。
今回のアップデートには、新しい手洗い支援機能、サイクリングナビ機能、新しいトレーニング機能などが含まれているが、中でも重要なのは数々の睡眠追跡機能が取り込まれたことだ。この最後の機能は、間違いなくWatchへの追加が最も要求されていたものだ。また同時に、Appleが競合他社に比べて遅れをとっていたカテゴリだったという意味で、それは同社にとって譲れない線だった。しかし、必要なハードウェア技術が不足していたからではない。今回提供される睡眠追跡機能は、既存のデバイスにすでに搭載されているセンサーとも連動し、多くのサードパーティソリューションとも組み合わせることができるものだ。
それは、Appleが今年後半に投入予定のWatch 6に、追加の睡眠追跡ハードウェアを導入しないという意味ではなく(実際追加される可能性は高いようだ)、これまでもっとも要求が多かった機能が、過去のシリーズ5,4,そして(2017年後半に発表され市場で200ドル(約2万1200円)ほどで取引されている)3のWatchで使えるようになるということだ。
睡眠追跡機能は多面的なものだ。もちろん、その中心となるのは標準的な追跡機能で、加速度計を使用してユーザーが眠りに落ちたタイミングを判断する、この中にはノンレム睡眠に入ったときに遅くなる呼吸の変化などの、微妙な手がかりも含まれている。得られる情報はまだそれほど詳細なものではないが、睡眠時間や心拍数などの重要な情報が含まれていて、それらはすべてAppleのHealthアプリに保存される。
パズルの最も目立つピースの1つはSleep Mode(スリープモード)だ。このモードに切り替えると、WatchがDo Not Disturb(起こさないでください)モードに入って、すべての通知がオフになり、手首が持ち上げられてもWatchのスリープが解除されなくなる。デジタルクラウンを回すことで一時的にモードは解除されるが、ユーザーが眠りに落ちると再びSleep Modeに切り替わる。
なんといっても、この機能はバッテリーを節約するのに役立つはずだ、それはAppleが睡眠に対して真剣になるにつれて、一層重要な課題になるだろう。Appleの説明によれば、現在Watchのバッテリーは18時間もつということだが、昼と夜の両方の追跡に使用したい場合には、これは問題となる。シリーズ6の注目点の1つはバッテリー容量の拡張だが、その一方で起床時には充電リマインダーがポップアップして、外出する前に充電するように促すようになる。また、就寝前に充電レベルが30%を下回った場合にも警告が行われる。
もう1つの大きな要素は、睡眠目標と、就寝時刻ならびに起床時刻を設定できるSleep Schedule(スリープスケジュール)機能だ。デフォルトでは、これは8時間に設定されている。これは、私自身の経験では少々長過ぎるように感じられるが、それが目標点なのだろう。Wind Down(ワインドダウン、鎮静)機能は、瞑想アプリやサウンドスケープなどを使って他のデバイスから離れて眠る準備をするようにデザインされた、就寝前活動の時間枠を設定できる。一方、Wake Up(ウェイクアップ、起床)機能は、iOSのベッドタイムアプリからサウンドを借用し、触覚フィードバックをアラームとして使用する。もしユーザーが設定した起床時刻の30分前に既に活動を始めていた場合には、Watchは目覚ましをキャンセルして一日の活動を始めるのかどうかを尋ねる。
手洗い機能の追加は、全くの偶然だ。以前の記事でも述べたように、この機能はAppleが長年取り組んできたものであり、たまたま誰もが手を清潔に保つべきこのタイミングに登場することになっただけだ。この機能はデフォルトではオフになっており、ユーザーが有効にする必要がある。オンにすることで、アニメーション化された泡の数で20秒のカウントが行われ、その時間中ずっと洗い続けることで、ちょっとしたお祝いの音が鳴る。
加速度計が感知する手の動きと、流水と石鹸の音を聞き取る内蔵マイクの組み合わせによって、手洗い動作が検出されて、自動的に機能がトリガーされるようになっている。どうやら手洗いの検出は驚くほど複雑のようだが、この機能は今回のベータバージョンでは、とても良くできている(まあ皿を洗っている時にときどき「偽陽性」で手洗いとして検出することもあったが)。
もう1つの重要な追加機能は、家に着いたときにポップアップするように設定できる手洗いリマインダーだ。これもまた、現在世界中で猛威を振るっている伝染性が高い感染ウイルスの時代に嬉しい追加機能だ。現段階では、独立した手洗いアプリは存在していないが、記録機能がヘルスアプリに直接組み込まれているため、履歴を後から参照することが可能だ。
新しくOSによって追跡されるようになったワークアウトのタイプは4種類存在している。それらはダンス、コアトレーニング、筋力トレーニング、そしてストレッチやその他のワークアウト後のアクティビティを含んだクールダウンの4種類だ。Appleは、Watchをより完全なフィットネストラッカーとして位置付けようとしているので、これらの追加機能は以前のものよりも多少詳細なものになっている。対応するiOSアプリも再設計され、すべてのアクティビティが1つのビューに統合されている。
また今回もいつも通り、新しいウォッチフェイスが追加されている。たとえばChronograph Pro(トップ画像)は、距離測定タキメーターから着想を得たデザインを採用している。私の好みからすると少々ごちゃごちゃしているが、決して見栄えの悪いデザインではない。またX-Largeはこれとは逆方向のものだ。画面の中央に大きくデジタルの時間表示があるだけだ。また、SMSを介して友人とウォッチフェイスを共有できる機能も加わった。
ところで最もクールな追加は、あまり時間をかけずに行われた以下の機能かもしれない。他のオペレーティングシステムと同様に、watchOSには翻訳機能が備わっている。Siriを呼び出して翻訳を依頼し、アラビア語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、日本語、韓国語、ブラジルポルトガル語、ロシア語、中国語(北京語)から言語を選択する。単語を話すと、Watchが翻訳結果を音声で読み上げ、画面に表示する。そして、全く異なる文字体系を持つ中国語のような場合には、テキストは中国語とアルファベット表記の両方で表示される。
このプロセスには多少追加の操作が必要だが、昨年のアジア旅行中に携帯電話を相手に手渡したり戻したりを何度も繰り返した誰かさんには、間違いなく役立つ機能だ。特に、自分の電話を本当に誰にも手渡したくないときには役立つ。
その他の機能も名前だけでも挙げておこう。
- Apple Mapsのサイクリングナビ
- ヒアリングヘルス/ノイズ指標の改善とヘッドフォンの最大音量を制御する機能
- iPhoneからインポートされるSiriショートカット
watchOS 7の最終バージョンは今秋にリリースされる予定だ。
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(翻訳:sako)