米国拠点の超音速旅客機スタートアップのBoomがロールスロイスと提携、NY〜ロンドン片道3.5時間目指す

米国コロラドに拠点を置く航空機製作のスタートアップであるBoom Supersonicはコンコルドの遺産を継承して大きく進歩させた超音速旅客機の開発に長年取り組んでいる。BoomはOverture超音速旅客のエンジンを入手するためにロールスロイスと契約を結んだ(PR NewsWire記事)。BoomはテストモデルのXB-1を実際に飛行にさせる寸前まで来ている。XB-1はOvertureで使用を予定しているさまざまなテクノロジーを実験、実証するための縮小モデル機だ。

ロールスロイスがBoomに協力するのはこれが初めてではない。Boomの発表によれば、両社はこれまでにもさまざまな面で共同作業を行ってきたという。ロールスロイスは第二次世界大戦以前にさかのぼる航空機用エンジン開発の歴史を持ち、現在も世界で二番目に大きい航空機エンジンメーカーだ。

これに対してBooomは航空機メーカーとしては新しいスタートアップだ。長い伝統のあるロールスロイスが推進システムを受け持つことになったのは大きなメリットだろう。コンコルドの推進システムに採用されたOlymppus 593ターボジェットエンジンはロールスロイスが開発・製作したものだ。

Boomが開発しているOvertureは世界最高速の旅客機を目指している。飛行時間はニューヨークからロンドンまでが3時間半など、現在のジェット旅客機の機の半分となるはずだ。Boomは、頻繁に空路で出張する旅行者を対象にビジネスクラス専用機としてOvertureをデザインしており、今後5年から10年の間に実用化することを計画している。

XB-1デモンストレーターのロールアウトは今年の10月7日に設定された。Boomが飛行に必要な機能をすべて備えた実機を公開するのはこれが初めてとなる。

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滑川海彦@Facebook

Boomの超音速旅客機のテスト機XB-1はカーボンニュートラルの実現を目指す

航空機産業は通常、低炭素排出を志向していると見なされていない。ジェット燃料はグリーンとはいえないし、航空機は空を飛ぶ際、大量にそれを燃焼する。しかし超音速飛行のスタートアップBoomは、その超音速デモ機XB-1の試験開発事業で商業航空のそんなイメージを変えたいと願っている。同社の旅客機Overtureの開発のためにも、低炭素というイメージを持たれるが望ましい。

Boomの主張によれば、超音速デモ機XB-1のフライトは試験と認可の過程の冒頭から、持続可能性を達成できる初の商用OEM飛行となる。XB-1もOvertureもハイブリッドや全電動とは無縁だが、同社としては持続可能なジェット燃料とカーボンオフセットを併用して炭酸ガス排出量をゼロ、すなわちカーボンニュートラルにしたいと考えている。

Boomが使う燃料はパートナーのPrometheus Fuel製だ。同社は電力をソーラーや風力などの再生可能エネルギーから得て、二酸化炭素を減らそうとしている。Boomはすでに、地上テストでも同社の燃料を使っており、今後の地上テストと飛行計画でも使用できると判断している。

カーボンオフセットの意義については異論もあるが、しかしその事業から得たお金が適正な低炭素排出計画を支えるのなら、エコロジーに貢献すると言える。それにBoomのような、航空事業の経済的なインパクトをオフセットする試みが、商用の実機にも適用されるなら、一般的な航空業界がこれまで何もしなかったことと比べて環境に良いと言える。今後はすべての航空機開発事業で、このような風潮になるだろう。

現在、Boomが製造しているXB-1は、今夏にもFlight Researchとのパートナーシップのもとモハーベ砂漠のMojave Air and Space Port(モハーベ航空宇宙飛行場)でテストが行われる。その、パイロットはいるが旅客のいないテストから得られた情報は、将来超音速飛行の商用機となるOvertureの開発のベースになる。そのOvertureはすでにJALやVirginなど複数の航空会社から予約がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

超音速旅客機開発のBoom SupersonicがFlight Researchと提携、XB-1実現に前進

超音速旅客機を開発しているスタートアップ、BoomについてはTechCrunchでもファウンダーへのインタビューを含め、詳しく紹介している。超音速旅客機の開発計画はいくつもあるがもっとも影響が大きいのはJALとバージン航空が出資するBoomだろう。デンバーを本拠とするこのスタートアップはこのほど試験飛行、型式取得、パイロットの訓練などを専門とする企業、Flight Research, Inc.と提携したことを発表した。

Flight Research, Inc.はBoomが開発中のXB-1超音速デモンストレーターの試験飛行をモハーベ砂漠の上空での実施を計画しており、提携の一環として、Boomはモハーヴェ空港および宇宙港(Mojave Air and Space Port)に所在するFlight Researchの格納庫が利用できる。テスト飛行の発着にはこの空港が用いられる。また、ノースロップT-38超音速練習機も利用可能。T-38はパイロットの訓練とXB-1のテスト飛行を追尾してモニターするために用いられる。

Boomが開発中のXB-1は、最終目的である商用旅客機Overtureの設計の前段階にあたる。BoomによればXB-1はこの商用機のスケールダウン版であり、テスト飛行によって得た情報をフィードバックしてOvertureの開発に生かすのだという。XB-1の操縦系とエンジンは開発を完了しており、現在はコクピットの細部を詰めているとのことだ。胴体の半分と翼の3分の1は今後開発される。最初のテスト飛行は2020年後半の予定だ。

動画は2017年4月取材のものとなる。

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滑川海彦@Facebook

JALとVirginが出資するBoomが超音速旅客機開発計画の詳細を明かす

今のところテクノロジー業界の注目は自動走行車に集まっているが、別の分野のレースも激しさを増している。超音速旅客機の開発だ。高度1万mにおける音速は時速1027km程度だが、Boomが開発する旅客機は時速1230kmを目指している。

現在航空会社が運航させているジェット旅客機のスピードは時速650kmから800kmぐらいだ。燃料の消費は速度とともに急激に増えていくため、この速度に落ち着いている。つまり理由は主として経済的なものだ。

最近多くのスタートアップが超音速機計画を推進している。もっとも先進的なのは昨年誕生したアトランタのスタートアップであるHermeusだ。同社はニューヨーク、ロンドン間を90分で飛ぶ旅客機を計画中だ。先週、金額は不明だが、Khosla Venturesから資金を調達することに成功している。アドバイザーにはジェフ・ベゾス氏の宇宙企業、Blue Originの元プレジデントも加わっているという

Aerion SupersonicSpike Aerospaceのプランはもっと現実的で、12座席、時速1600km程度を目指している。これらは富豪や企業向け自家用機マーケットがターゲットだ。

しかし最も野心的でもっとも影響が大きい計画はBoomのものだろう。デンバーに本拠を置き、社員は150人のこのスタートアップは1億4100万ドルの出資を受けており、 これはマッハ2で飛行する55座席の旅客機の初期設計を開始するのに足る資金だ。画期的なのは料金が現在のビジネスクラス程度になるという点だ。Boomでは航空会社に多数の機体を販売することができれば、最終的にはエコノミークラス程度の料金に引き下げることができるとしている。

ニューヨークとロンドン、サンフランシスコと東京、シアトルと上海といった大部分が洋上の区間ならこれが可能になるかもしれない。実は超音速機の就航を妨げている大きな理由は超音速飛行にともなう衝撃波の存在だ。多くの国が人口密集地の上空を超音速で飛ぶことを禁じている。

今月16日に開催されたTechchCrunchのStrictlyVCイベントにBoomのファウンダー、CEOのブレイク・ショル(Blake Scholl)氏を招き、同社の超音速機開発計画についてインタビューすることができた。ショル氏は私の質問に詳しく答え てくれた。以下はインタビューの主要部分の要約だが、やり取りを直かに見たい読者のために記事末にビデオをエンベッドしておいた。

TC:ブレイク(・ショル)の経歴を振り返ると、元Amazonでその後モバイル支払システムのKima Labsを共同創業した。これはGrouponに買収され、Grouponに加わった。航空産業のバックグラウンドはないようだが、超音速機を開発する会社を創業しようと考えた理由は?

BS:実はKima Labs売却以前にさかのぼる話になる。(会社を売るか、売らないかは)常に難しい問題だ。私はGrouponのオファーを受けて売却した。スタートアップというのは常に困難な仕事だ。スタートアップの仕事に楽な部分などない。目を覚ましたときに、果たしてこんな苦労をする価値があるのだろうかと考える日が来る。

Grouponを去ったとき、自動車レンタルからヘルスケアまでありとあらゆるスタートアップのアイディアを抱えていた。しかしはるか昔から私自身が情熱を向けてきたのは飛行機だった。それならこの機会にフィージビリティだけでも調査すれば長年の固執をさっぱり忘れることができるのではないかと思ったわけだ。

TC:それがマッハ2で飛行する旅客機を開発するという具体的な計画に変わったのはどういう経緯?

BS:最初に調べたのは「なぜまだ実現していないのか?」だった。常識的だが不正確な説明がいろいろあった。巨大な資本が必要だ、規制が厳しい、長距離を飛べる旅客機を作っているのは世界で2社(ボーイング、エアバス)しかない、等々。つまり起業家などの入り込む余地はないというのだ。

そこで私は第一原理、つまり出発的に戻って考えてみた。コンコルドは50年も前、計算尺と風洞実験で設計された。では(テクノロジーが圧倒的な進歩を遂げた)今なぜできないのか?Wikipediaを調べただけでも最大のハードルは燃料コストだと判明した。超音速で飛ぶと莫大な燃料を消費する。誰もそんなコストを支払えない。利用者が少なければ飛行機も売れず、1機あたりの価格も高価になる。

しかし50年前の燃料消費率を30%改善すれば経済的に成立するとわかった。 その程度の改良なら不可能とは思えない。そこでさらに航空関係の教科書を呼んだり、教科を受講したりした。またできるかぎり大勢の業界の人間に会って私のアイディアに穴がないか尋ねてまわった。ディスカッションを重ねていくうちに皆が「これはうまく行くかもしれないな」と言い出した。そこでBoomを起業したというわけだ。

TC:Boomが計画している機体はどのくらいがレガシーでどのくらいが独自に開発したものなのか?

BS:コンコルドは50年前に設計されたと言ったが、われわれは文字通り先人の業績の上に立っている。しかし当時の機体は主としてアルミだったが今はカーボンファイバーの複合素材が利用できる。風洞しかなかったが、今はクラウド経由でスーパーコンピュータによる精密なシミュレーションが可能だ。50年前のジェットエンジンは騒音がひどく燃費も悪かった。これも圧倒的に改善されている。

エンジンや機体のメーカーといった大企業は1960年以後、航空機テクノロジーを着実に改善し続けてきた。しかし大手航空機メーカーはひたすら効率化を優先してきた。しかしスピードを優先すればまったく新しい機体が開発できるはずだ。要するに航空機テクノロジーというのは非常に保守的な分野だが、同時にデザインの根本的な方向転換も可能なのだ。

TC:エンジンは何基搭載?

BS:両翼下に1基ずつ、胴体後部上面に1基、合計3基だ。

TC:エンジンのメーカーは?

BS:まだ決定していないが、ジェットエンジン・メーカー3社(GE、P&W、ロールスロイス)のうち2社と協力している。最終決定は入札となるだろう。

TC:Boomはまず3分の1のスケールモデルで試作を開始し、続いて実機の製作に移るというが、実機の55座席というサイズはどのようにして決定したのか?

BS:コンコルドの経験を考えてみよう。クールな機体を作るだけでは充分ではない。多くの人々が支払えるような金額で座席が販売できなければビジネスは成り立たない。座席数が増えれば料金を下げることができるから機体のサイズはビジネス面で重要となってくる。だが航空機ビジネスでいちばん重要なのは数字はロードファクターだ。これは全座席数に対する有償座席の比率だ。想定される金額に対して座席数が多すぎると空席が増え、ロードファクターが下がる。何百もの路線でビジネスクラス料金で満席にしてビジネスを成立させることができるのが55座席だとわれわれは考えている。

TC:コンコルドの室内は非常に狭く、乗客にはあまり居心地のいい空間ではなかったと聞く。居住性というのは他の要素にくらべて優先順位はさほど高くないかもしれないが、Boomではこの点はどうなのだろう?

BS::実は共同ファウンダーのガレージで一番最初に作ったモックアップはキャビンだった。超音速機でもキャビンの快適さの重要性は非常に高い。現在の旅客機のように7時間から9時間もかからないにしても、数時間は機内に座っていなければならない。居住性は重要だ。現在のビジネスクラスで標準的な広さの快適なシートが必要だろう。窓も大きくなければならないし、リラックスして必要なら仕事もできるスペースがいる。しかしせいぜい4時間程度のフライトであれば現在のビジネスクラスほどフラットに倒せるシートでなくてもよい。


TC:ジェットエンジンのメーカーはまだ決まっていないということだが、このプロジェクトは非常に野心的なものだ。エンジン・メーカー以外の提携というと(会社への投資家でもある)日本航空だろうか?

BS:航空機を開発、製造するのはハードルの高い事業だが、中でも投資家が注目するのが航空会社との関係だ。そのアエライン企業はまずエンジンをどうするのか知りたがる。逆にエンジン会社はエアラインとの関係を尋ねる。われわれ、投資家、エンジン・メーカー、航空会社というのは「ニワトリとタマゴ」の複雑な四角関係となる。チームのメンバーにわれわれはタマゴを割らないと仕事が始まらないオムレツ製造業なのだと冗談を言うことがある。【略】

エンジンなどのコンポネント・メーカーとの提携にせよ、エアラインとの提携にせよ、最初はかなりゆるい関係から始めざるを得ない。企画書、目論見書、仮発注といったあたりだ。そこから徐々に信頼関係を築いていくい現在のところ我々は(JALとVirginから)1機2億ドルで30機を仮受注(pre-sold)している。

TC:仮受注(pre-sold)の意味は?

BS:これは予約意向確認書(letter of intent)よりは一歩進んだ段階だが、ここではあまり詳しく内容を説明できない。簡単に言えば、来年われわれがプロトタイプの製造で一定の段階に達することができるかどうかで本発注かキャンセルかが決まる。この段階をクリアできれば、Boomの前途は非常に明るくなる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASA、「静かな超音速旅客機」の開発プロジェクトをスタートへ

NASAは国際線の飛行時間を大きく減らせるような超音速旅客機の実用化に乗り出す計画だ。騒音レベルでコンコルドを下回ることもNASAが提示した超音速旅客機が実現を狙う目標のひとつだ。

Bloombergの記事によれば、NASAはこの8月から超音速旅客機のフルスケールモデル製作のため競争入札を開始するという。採用された場合、向こう5年間で4億ドルの予算が予定されるプロジェクトだ。

ビジネスがグローバル化し、仕事が世界に分散化する中、 航空旅客運輸の高速化のニーズが高まっている。NASAは新しい商用超音速機の開発によってにこれに応えたいとしている。NASAでは開発された航空機デザインを利用してロッキード・マーチン、ゼネラル・ダイナミクス、ボーイングのような巨大企業からコロラドのBoom Supersonicのようなスタートアップまでが広く製造に参加することを期待している。

私は今年に入って、コロラド州のBoom Supersonicを取材し、CEOのBlake Schollにインタビューしたことがある。Schollは現在開発中の機体の目標の一つは騒音の大幅低下であることを認めた。現在アメリカ合衆国の陸上を超音速旅客機が飛行することが規則で禁止されている理由の大きなものが騒音問題だ。Boomでは当初の空路をすべて洋上に設定し、この問題を避けようとしている(コンコルドの場合もアメリカについてはニューヨークの空港を利用する大西洋横断ルートのみが設けられていた)。

Bloombergの記事によれば、NASAではロッキードで開発されたデザイン(トップ画像)をベースとして高級車が高速道路を走行する程度の騒音レベルを達成しようとしている。これは60dBから65dB程度であり、Concordeの90dBよりはるかに静かだ。

NASAでは2022年までに人口密集地帯の上空飛行を含む本番テストを実施したい考えだ。アメリカにおける超音速旅客機の飛行を制限する規則を変えるためにこの結果を使う計画だという。Boomでは実証機の飛行を来年にも開始する。この10年ほど休眠状態だった超音速旅客機の実現に向けていよいよ競争が始まることになりそうだ。

画像: Lockheed Martin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Boomの超音速旅客機に注文76機――パリ航空ショーで新デザインも発表

Boomはパリ航空ショーでXB-1 Supersonic Demonstratorの新デザインを発表した。これは商用超音速旅客機を製造する前段階の実証試験機だ。同時にBoomは航空会社6社から実機76機の注文を受けたことを明らかにした。小さなスタートアップのまだ存在しない新型機に対する注文としては驚くべき数だ。

航空会社が超音速機の実現にいかに強く期待しているかわかる。Boomの計画によれば、この新型機は大陸間の人気路線の所要時間を著しく減少させると同時に、料金を現在のビジネスクラス程度に抑えて、航空会社に維持可能な利益をもたらすことができるという。

技術実証機XB-1の新デザインには推進システムの安定性、全般的な安全性の改良が含まれる。このデモンストレーター機の部品に対するストレス試験が進行中であり、おそらくはその結果が新モデルのデザインに組み込まれたのだろう。

すぐにそれと見てとれる変更は胴体後部、尾翼の直前に新しく設けられた第3の空気取り入れ口だ。同時に主翼や胴体の形状も微妙に修正されている。

〔上のビデオはEtherington記者が今年4月にBoom本社を取材した際のもの〕

Boomの説明によれば商用機の予約には払い戻し不可の頭金が含まれる。これはBoomの当面の経営を助けるだろう。また同社は商用モデルのキャビンについても水平に倒せるシートなど豪華な装備をイラストで発表した。

BoomではXB-1 Demonstratorを来年に飛行させる計画だ。最初はコロラド州デンバーの本社付近で亜音速のテストとなる。その後カリフォルニア南部のエドワーズ空軍基地を利用して超音速の飛行試験に移る予定だ。

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Boomは超音速旅客機の復活を目指すスタートアップ――コロラドの本社をビデオ取材

Boomはスタートアップとしてきわけて野心的な目標を持っている。超音速旅客機の復活だ。Boomが開発しているのはコンコルドに似た機体だが、もっと大型で性能も優れており、何より経済性が高くなるはずだ。TechCrunchではコロラドの空港に位置するBoomの本社を訪れ、社員がまだ50人に満たない会社がどうやって超音速旅客機を実現しようとしているのか詳しく見てきた。

訪問した小さな空港には航空機関連の会社が散在していたが、Boomの本社は格納庫の一つを占領していた。一歩足を踏み込むと、Boomが開発中の XB-1デモンストレーター機のフルスケールのモックアップが目立った。この機体は有人操縦で、Boomが世界の航空会社に販売しようと計画している商用機の小型のプロトタイプだ。

Boomのファウンダー、 CEO、Blake Scholl.

CEO、ファウンダーのBlake SchollはBoomのビジョンについて熱意を込めて語った。またBlakeは巨大なモックアップやそれよりは小さいが空力特性が精密に再現された風洞試験モデルを見せてくれた。Blakeは開発チームが仕事をしている混雑した部屋(近くもっと大きいスペースに移らねばならないだろうという)も案内してくれたが、エンジニアのチームにも強い誇りを抱いているようだった。われわれはBoomの航空機テクノロジーやデザインについてあらゆる側面を知ることができた。Blake Schollが航空機産業の出身ではなく、ネットワーク・テクノロジー、広告自動化、eコマースなどの会社の起業家、幹部という経歴だったのは意外だった。

しかしSchollは自家用パイロットのライセンスを持つ熱心な飛行家であり、航空工学を自らも熱心に学んでいると同時に、才能あるエンジニアを選ぶ力も高いようだ。私はBoomの開発チームと話をした。その1人、ノートルダム大学を卒業してNASAでインターンをした経験もあるフライト・コントロール・システム開発の責任者、Erin Fisherによると、航空機、航空旅客運送ビジネスに強いインパクトを与える可能性がある点でBoomは非常に魅力的な職場だという。Fisherによれば、航空エンジニアがこれほど革命的な機体の開発にこれほど早い段階で関われるチャンスはきわめて稀だという。

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きわめて革命的なBoomnだが、今のところ事業は質素なスタートだ。実際、われわれが訪問したときも、 開発チームはXB-1デモンストレーターのフルスケール・モデルの耐久テストを実施しているところだったが、カーボンファイバーのテスト用素材を作るオーブンはアルミフォイルを巻いた手作りの箱だった。カーボンファイバーの素材が「焼きあがる」と強度をテストする装置にかけられ、破壊するまで力を加えられる。これによって機体が十分に安全な強度を得るために必要な素材の量が決定されるという。シミュレーションにより予測された強度に達していることが確かめられるとXB-1実機に用いる素材の製造が開始される。デモンストレーターのテスト飛行は来年予定されている。

Boomの目標は遠大なので当然ハードルも高い。有人機機を飛行させるのはどんな規準からしても野心的なミッションだ。また開発チームが作業するのに適したスペースを見つけるのも大変だという。しかしSchollによれば、最近のラウンドの成功も含めて、XB-1を飛行させるための資金は十分確保しているという。

クライアントからの問い合わせも来ており、Boomはいくつも航空会社と話し合いを行っている。もちろんアメリカの上空を超音速で飛行することも含め、Boomが実際に飛ぶためには今後さまざまな法規の調整が必要となる。しかしどこからか始めるのでなければ何も始まらない。Boomの目標は現在のビジネスクラス程度の料金で世界の大都市間を超音速で結ぶというものだ。

画像: Darrell Etherington

〔日本版〕ビデオによれば、XB-1デモンストレーターに利用するエンジンはGE J85。1950年代に空中発射ミサイル用エンジンとして開発されたが、後にノースロプF-5などの軽戦闘機に採用された。近年ではバート・ルタンの宇宙往還機の母機、White Knight Iのエンジンとしても用いられた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スマホのイヤフォンで聴く音楽をゴージャスな3Dサラウンドサウンドに変えてしまうBoom

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Boom for iOSは音楽を変える。たぶん、良い方へ。このアプリは一種のイコライザーで、通常のMP3の音に低音と奥行きを加える。ベースがよく鳴る3Dサウンド的な音になるから、超安物のイヤーバッドでも音楽を楽しめる。スピーカーからの音には、臨場感‘らしさ’が加わる。

しかし、万人向き、ではないかもしれない。Peter Schickeleの後期のアルバムを昔のVictrolaで聴きたい、という純粋派には、たぶんだめだ。

そのほかの人は、このアプリを自分の音楽系アプリの一員に加えるとよいだろう。使い方はとても簡単で、このアプリを通して音楽を聴き、さまざまなエフェクトを選ぶ。3Dのサラウンドもどきもあれば、いろんなブースターもある。5日間無料で試用して気に入ったらお金を払う。DRMで保護されていたり、ストリーミングの音楽には使えない。

いろんな曲で試してみたが、音の分離が良くなるし、相当極端なリバーブもかけられる。

OS X上には5年前からあるアプリケーションで、これを作っているGlobal Delight社によると、月間アクティブユーザーは250万人以上いる。同社は、Camera PlusやVizmatoも作っている。

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ソフトウェアアーキテクトのSandhya Prabhuは、こう説明する: “市場における重要な差別化要因は、独自のオーディオ処理ロジックを使っていることだ。それによりこのアプリは、ヘッドフォンから聴こえるふつうのステレオ音に、リアルなサラウンドの空間感覚を加える。高価なハードウェアがなくても、いつでもどこでも、サラウンドサウンドを楽しめる”。

同社はこの技術を、ストリーミングサービスや各種メーカー企業にライセンスしている。だからそのうち、SchickeleのP.D.Q. Bachを昔のJVCのヘッドフォンで聴いても、すごい音になるだろう。18世紀のフリューゲルホーン奏者たちも、本当はそんな音を出したかった、…のではないだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VirginグループがBoomと大型プション契約―超音速旅客機プロジェクトに強力な支援者

2016-03-24-boom

読者の多くはすでにBoomについていろいろ聞いていると思う。

Boomは比較的新しいスタートアップで、かなりクレージーな目標を立てている。このチームが作ろうとしているのはアプリでもソーシャルネットワークでもなく、Kickstarterで投資を募れるようなガジェットでもない。

Boomが作ろうとしているのは非常に高速の旅客機だ。

正確に言えば、マッハ2.2以上で飛ぶ超音速旅客機の設計と製造を目的としている。計画どおりに進めば、乗客はニューヨーク・ロンドン間を3.5時間、サンフランシスコ・東京間を4.5時間で移動できる。

クレージーなアイディアには違いない。 しかしプロジェクトはまだきわめて初期の段階にある。新しい旅客機を作るというのはとてつもなく複雑であり、高度なエンジニアと巨額の資金を必要とする。チームはプロトタイプの製造に取り組んでおり、来年後半に飛行できるようになると期待としている。

Boomのチームはこの分野で大きな実績を挙げた強力な人材で構成されていることは指摘しておく必要があるだろう。現在の11人の社員は、トータルすると30機以上の設計、製造に携わっている。これには787のオートパイロットシステム、ジェット戦闘機のエンジン、Spaceship Twoの航空力学などが含まれる。社員の一部は元NASA、元ロッキード、元ボーイングなどのエンジニアだ。

今日(米国時間3/23)、Boomプロジェクトは強力な後援者を得たことが判明した。Virginだ。

Boomの発表によれば、リチャード・ブランソン会長率いるVirginグループと10機のオプション契約を結んだ。実機の引き渡しができれば20億ドルに相当する金額となる。またBoomはヨーロッパの航空会社からさらに15機のオプションを得ていると発表した。ただしどの会社かは明らかにされていない。現在までのオプションの総額は50億ドルだという。

ただしVirginグループはまだこの機体を買ったわけではない。まだその段階ではない。Virginは購入の意思があることを示す趣意書( letter of intent)に署名した。これは事業が計画どおりに進み、詳細な仕様が明らかになり、会社がさらに意思決定をしたうえで、10機を購入するという意図を表明したものだ。

同時に、この契約はVirginが事業の実現を助ける意思があることを意味する。Boomのファウンダー、ブレイク・ショルは私の取材に対し、Virginグループの宇宙部門Virgin Galactic傘下の宇宙往還機製造会社、The Spaceship CompanyがBoomのデザインとテストに協力することを約束したと述べた。これには、その時期が来たら超音速テストを実行することも含まれるという。

アップデート: Virginグループ側からも正式発表があった。広報担当者はGuardianに対して次のように述べた。

Boomのエンジニアリング、デザイン、製造、試験飛行、さらに運行業務に関してThe Spaceship Companyが助力することを約束したことを確認する。われわれは10機分の機体についてオプションを得た。現在プロジェクトは初期段階にあり、VirginとBoomの共同の野心、努力の詳細は今後明らかにされることになるだろう。

このプロジェクトは要注目だ。物理的実体のあるブロダクトを製造するのはなんによらず難しい。しかし史上最速の―悲運のコンコルドよりさらに速い―旅客機を設計、製造するとなると、その困難さはまったく違うレベルになる。

Boomに対する投資家にはY Combinator、Sam Altman、Seraph Group、Eight Partnersと匿名のエンジェル投資家が含まれる。Virginグループが資金提供の面でも協力するのかどうかについてBoomはコメントを避けた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+