パナソニックがBrexitへの懸念からヨーロッパ本社をイギリスの外へ移す

Brexitがまた減点: 日本のエレクトロニクス企業Panasonicが10月にヨーロッパ本社をイギリスからアムステルダムに移す。理由は、イギリスにとどまった場合の税金の問題だ。Nikkei Asian Reviewが、そう報じている。

同社は、Brexitの結果イギリスが法人税の税制を変えた場合に生じる納税義務を懸念している。

Panasonic EuropeのCEO Laurent Abadieが上記NAR誌に語っているところによると、イギリスが法人税率を下げるなら、同国をタックスヘイブンと見なすことができる。実際に政府は、EUの通商圏の外に出たらイギリスを企業にとってもっと魅力的な場所にするよう努める、と示唆していた

2016年の11月にイギリスの首相は、同国の法人税率のレビューを発表して、税率を今の20%から大幅に下げることができる、と言った。

その前には、前財務大臣のGeorge Osborneが、税率を15%以下にする、と明言した

税率のレビューを発表したその同じときに首相は、企業政策のパッケージを披露した。それは、Brexitをめぐる不安を鎮めるためだった。しかし税率カットは明らかに、どの企業に対してもフレンドリーというわけではない。

Panasonicの場合同社は、日本がイギリスをタックスヘイブンと指定したら、本国で未納税が発生することを懸念している。そこで、EUの中に地域本社があるようにすれば、そのリスクはなくなる。

AbadieがNAR誌に語っているところでは、地域本社を大陸ヨーロッパへ移せば、人や物の流れに対してBrexitがもたらす障壁を避けることもできる。

それが一体どんな協定になるのか、あるいはそもそも、イギリスとEUの間に協定なんかありうるのか、どちらもイギリスがEUから抜ける日限である数か月後…2019年3月…になってみないと分からない。だから企業は、ありうる、あるいは起こりうる結果に備えて、重要な意思決定をしなければならない。

一方、この地域に対するイギリスの規制的影響力は、日増しに減衰している…。

[これまではロンドンでヨーロッパのことを決められたが、それができなくなる]
[貿易、人材へのアクセス、規制の及ぶ範囲などなどでロンドンは単なる‘支社’になってしまう]

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Brexitの悲劇はイギリスのフィンテックに必要な出来事だったのかもしれない

fintech-3

【編集部注】執筆者のDamian Kimmelman氏は、企業情報データベースサービスを提供するDueDilの共同設立者兼CEO。

誤解しないで欲しいが、Brexitは悲劇だ。ヨーロッパの同盟国と課題に取り組んでいく代わりに、イギリスは正に誤った道を辿ろうとしており、経済に対して不必要に不透明感や否定感をもたらしている。

テック業界は特にBrexitで苦しむことになるだろう。国際的に活動するベンチャーキャピタルや、イギリスへ移住したいと考える技術を持った労働者たちに支えられてきたイギリスのスタートアップシーンは、グローバル企業や膨大な数の高給職を生み出そうとしているところであった。スケールするのに必要な資金調達や社員の雇用の問題から、その発展は今後行き詰まるだろう。

間近に迫ったロンドンテック業界の低迷に関する憂鬱な予測は、既に掃いて捨てるほどなされている。そして、イギリスを捨ててダブリン、パリ、ストックホルムやフランクフルトなど受け皿となる都市への移転準備を整えようとしている銀行やスタートアップの動きを受け、フィンテックに関する予測はとりわけ厳しい。

しかしこういった不安は大げさなものだ。実際のところ、Brexitはイギリスのフィンテック業界に必要な出来事だったかもしれず、同時にいくつかのイギリス企業を世界のリーダーへと成長させるきっかけとなる可能性を秘めているのだ。

その理由は簡単だ。ロンドンは世界の金融業界の中心地で、その背景には、銀行業界におけるイギリスの覇権や、外国為替の世界的なハブとしての役割、そして国際的な金融機関がEU各国でオペレーションを行うことを可能にするパスポート制度がある。

そのポジションが危ぶまれるということから、金融機関は社員やオペレーションを欧州にある他の金融センターへ拡散させることになるだろう。しかし、バックオフィスのテクノロジーや手厚く保護されている社員の観点から、移転は簡単ではない。大手銀行に関して言えば、どの機能をロンドンから移転するにしても膨大な時間と労力とお金がかかる。

対照的に、フィンテック企業はとても機動的だ。最小限の埋没費用かつ小さなチームと共に、スタートアップはすぐに方向転換することができ、日々変化する関連法令への対応や、新たな顧客・サプライヤーの発掘、データ解析を基にした意思決定など、Brexitによって新たに生まれるであろう様々な企業の課題を解決することができる。

そして、パスポート制度終了の可能性は、イギリスの金融セクターにとって大きな重荷となるが、銀行に比べればフィンテックへの影響は極めて小さい。

フィンテック企業のほとんどが拡大にあたって、EU各国の規制に対応した法人を作るのではなく、自分たちの製品を販売、トレード、決済できるような各国の金融機関と協業しようとしている。この戦略をとれば、規制変更にも大きく影響されないですむ。

つまり、動きの遅い銀行が形式主義的な規制に縛られる中、フィンテック企業は銀行の利益の大半を奪いながら、そのそばを通り過ぎて行くことができるのだ。Funding Circleのようなスタートアップは、制度からくる遅滞によって発生しているレンディング・ギャップを埋めようとしており、今後フィンテック業界中で、迅速に動ける企業が既存のプレイヤーを打ち負かす同様の動きが繰り返し発生するだろう。

ロンドンから世界を見据える

一方でフィンテック企業にとっても全てが簡単にいくわけではない。国ごとや企業ごとのデータ保護の考え方のすり合わせや、送金会社にとって大問題となる、ロンドンでユーロ建て証券の決済ができなくなる可能性など、大きな課題が残っている。スタートアップの中には、利益を生み出す仕組みが機能しなくなり倒産に追いやられる企業も出てくるだろう。

しかし、代表的な金融機関の全てが拠点を置いており、先進的でビジネス寄りな規制団体の下にある一大市場であることから、ロンドンは依然フィンテックの首都だと言える。さらに、EU圏内の技術をもった労働者が、マーケットを牽引する企業で働き、世界でも指折りの都市であるロンドンに住みたいと今でも思っていると私は考えている。

フィンテック業界の投資家は状況を理解し、一時的な混乱に対処する準備ができている。フィンテックへの投資に対するリターンは巨額だが長期的な目で見る必要があるのだ。ベンチャーキャピタルは辛抱強く耐え、強力なビジネスアイディアと明解なマーケットへの進出計画を備えた企業を支えていくことだろう。そういう意味では、うまく経営されている企業はこれからもスケールに必要な資金を手にすることができる。

Brexitがフィンテックにもたらす本当の影響は2つある。まず、投資家がリスクの高いスタートアップを避けて、ある程度名前の売れた企業に集中することで、各企業の質が重要になってくる。これに伴い、フィンテックバブルがはじけはしなくとも、しぼむことになるだろう。

次に、各企業はロンドン中心の考え方をやめ、海外に成長機会を見出すことになる。もはやイギリス国内向けの金融サービスを開発して、除々にその他の国へ展開していくという戦略は通用しなくなり、もっと早い段階で外国を意識する必要がでてくるのだ。この戦略の転換は、情報やデータなど簡単に国境をまたいで動かすことのできる商品を扱うフィンテック企業にとってはむしろ追い風となる。

結局、Brexitは市場に不透明感をもたらし規制の泥沼を生み出すだろう。これはイギリスや経済にとっては残念なことであるが、同時にフィンテック企業が成長するのに適した環境を作り出すことになる。イギリスのスタートアップが、金融機関の手の届かない分野で活動を行い、新たに生まれる問題に対しての解決策を提示することで、企業や消費者がもっと賢くお金が使えるようなサポートをしていくだろう。

以上が、なぜBrexitがイギリスのフィンテックにとって欠かせない出来事であったか、そうでなくとも総合的に見てイギリスにとって良いことであったと私が信じる理由だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Brexit + fintech―英国のEU離脱でフィンテックはどうなるのか?

LONDON, UNITED KINGDOM - MARCH 17:  In this photo illustration, the European Union and the Union flag are pictured on a pin badge on March 17, 2016 in London, United Kingdom. The United Kingdom will hold a referendum on June 23, 2016 to decide whether or not to remain a member of the European Union (EU), an economic and political partnership involving 28 European countries which allows members to trade together in a single market and free movement across its borders for citizens.  (Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

この記事の筆者はCrunch Networkのメンバー、Shefali Roy。彼女はStripeの前ヨーロッパ担当コンプライアンス、マネーロンダリング監視責任者。Stripe以前はAppleで同様の職にあり、Christie’s Worldwideで最高コンプライアンス・倫理責任者を務めた。Goldman Sachsでも同様の役割を果たした。RMIT〔メルボルン工科大学〕、オックスフォード大学、LSE〔ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス〕で学び、学位を取得。現在はオックスフォードのサイード・ビジネス・スクールのEMBA〔エグゼクティブMBA〕課程で学んでいる。

最近、英国の有権者はEUからの離脱に賛成した。それが賢明な判断であったか否かは将来の歴史に待たねばならない。当面の問題は、これによって次になにが起きるのかだ。

この離脱にともなって多数の条約が白紙化され、さまざまな影響が生じる。金融およびテクノロジーのビジネス関係者はその詳細を把握する必要がある。最終的な結果を予測する前に、まずは当面何が起きるのかを知らねばならない。

英国.は離脱にあたって、 50条を発動することになる。EUの基本条約の修正条約であるリスボン条約の50条は過去に一度しか適用されたことがない。それはEUの前身であるEEAが加盟国の脱退の手続きを定めたもので、過去には1985年にグリーンランドが〔デンマークの自治州に昇格したのを機に〕脱退した際に一度適用されたのみだ。デビッド・キャメロン首相は、辞意を表明した演説中で10月に保守党大会で選出される次期首相がEUに対して50条に基づく通告を行うことになるだろうと述べている。

しかしEU官僚は英国が50条を発動すのはそれより早くなると観測しているという報道があった。欧州議会議長のマルティン・シュルツは6月28日までに50条通告が欲しいと述べた。欧州委員会委員長のジャン=クロード・ユンケルは離脱交渉はただちに始められるべきだと語った。50条の通告がなされると英国は2年以内にEU離脱手続きを完了しなければならない。

2年というのは長い時間に思われるかもしれないが、金融ビジネス関係者はEU指令(EU directives)がいかに長期間かけて準備されているかを知っている。通常の場合それは2年よりはるかに長い。たった2年で一国が(それも英国はEU経済で2番目に大きい)まるごとEUを脱退できるとは考えられない。

しかしEUが英国に対して即刻行動に移るよう要求するのには根拠がある。さまざまな不安定さが生じて市場が混乱することを最小限に止めるためには離脱プロセスを素早く、スムーズに実行する必要がある。

50条の通告後、離脱交渉が開始される。英国は離脱後も現在保持している特権を最大限維持したいと考えるはずだ。EUという単一市場に対するアクセス、労働力の自由な移動、金融サービス規制、輸出入規則、さらにはEU政策の決定に対する発言権などだ。英国の今後の地位に関しては3つのモデルが考えられる。

  • Tノルウェイ・モデル: 英国は貿易とEU単一市場に関してメンバーと同様の特権を保持する。ノルウェイはEUには参加していないがEFTA〔European Free Trade Agreement=欧州自由貿易連合〕のメンバーだ。英国はEUのさまざまな規則を順守する代わりにEU市場へのメンバーなみアクセスの権利を保持する。ただしEUがどのような政策を採用するかについては発言権がない。
  • スイス・モデル: スイスと同様、英国はEUの事実上のメンバーという地位にはとどまらない。英国はスイスのように独自の金融サービスの規則を制定し、実行する。EU諸国とは個別に二国間協定を結ぶ。
  • 非EU諸国モデル: 英国はEUに参加していない世界中の諸国と同様の地位となる。EU市場への参入に関してはゼロからの交渉となる。簡単にいえば、英国の地位はシンガポールやペルーと変わりなくなる。

現時点ではどれが英国にとってもっとも有利な選択であるかについては議論の余地がある。また交渉者の能力による部分も大きい。ボリス・ジョンソン(あるいはマイケル・ゴーヴ)、ナイジェル・ファラージ、ジェレミー・コービンのいずれかが交渉に当たるのが英国にとって有利だろうか? コンセンサスはノーのようだ。英国のテレビは明らかにノルウェイ・モデルが英国にとって有利だとしている。しかし離脱交渉の当事者からはこのオプションは選択肢に入っていないという情報が聞こえてくる。

それが賢明な判断であったか否かは将来の歴史に待たねばならない

そういった前提はあるものの、金融、フィンテックの関係者はおおまなかにいって以下のような側面を考え、対策を練る必要がある。ちなみにこの記事でいうフィンテックとはEUの定めた電子マネー機関(EMI、eMoney Institutions)や決済サービス機関(Payment Institution、PI) に属するとしてイギリスの金融行動監視機構( Financial Conduct Authority、FAC)の規制下にあるような組織を言う。具体的なビジネス内容としては決済手続き、ピア・ツー・ピア決済、電子マネーの発行、オンライン・ウォレット、クラウドファンディング、オンライン貸付、一般的送金、FX決済、等々だ(このリストは一例にすぎない)。

人材: ロンドンは金融サービスに関してEU中の優秀な人材を集めていることで知られている。EUが単一市場であり、人の移動も自由であることから、EU諸国の人材は誰であろうと最小限の雇用上の規則さえクリアすればロンドンで働くことができる。フィンテックの急成長に伴い。金融サービスの消長を決定するのは人材の質となった。もし英国が非EU諸国モデルを採用するなら、金融分野はEUとの競争上の不利益を被るおそれがある。英国金融機関の中には業務の一部を海外に移す動きが始まっている。当然、その業務に従事する人間も移ることになる。

スキル:フィンテック・ビジネスは エンジニア、デベロッパー、サイバーセキュリティー専門家、優れたソフトウェア・ビジョナリストを奪い合い、激しく競争している。. EU離脱は、英国が5億人に近い労働力の供給源から切り離され、これにより競争力を維持し、もっと重要なことだが、最新の状態を保つことが困難になる。

投資: 投資、ことにベンチャーキャピタリストのフィンテック・スタートアップへのアクセスが著しく阻害される。これに加えて、スタートアップのプレゼンや投資を受ける機会に税制の変化がもたらす悪影響が及ぶ。スタートアップは自らのベンチャーキャピタリストよりアメリカや中国のベンチャーキャピタリストから投資を受ける方が有利になるかもしれない。

単一市場とデジタル市場へのアクセス: これも離脱交渉のテーマだが、ノルウェイ・モデルないしスイス・モデルが採用されるのでないと、英国はEU市場へ従来のような自由なアクセスを失い、イノベーションを起こすような未来志向のデジタル市場へのアクセスにも悪影響が及ぶ。たとえばインターネットを通じた支払のセキュリティー・システムであるe-KYC、また住宅に関するe-residencyや企業に関するe-corporationsなどのプログラムといった市場へのアクセスだ。

プライバシー/データ保護/セキュリティー: EUで活動するアメリカ企業にとってEUからアメリカへ大西洋を移転するデータの保護のあり方を定めたセーフハーバー協定が2015年10月に欧州司法裁判所によって無効とされたのは大きな打撃だった。新たに合意されたプライバシー・シールド(EU-U.S.
Privacy Shield)はともかく正しい方向への一歩だった。しかし新たな協定は欧州人のデータ、セキュリティー、プライバシーを十分に守れるものとなっていないとする批判がEU内に強くあった。英国は個人データとプライバシーの保護に関して新たにEUと協定を結ぶ必要があるだけでなく、アメリカとも合意しなければならない。EUで活動しようとする英国企業はEU向けのデータ保護規則に従う必要が出てくるが、同時にアメリカで活動することを望むjならアメリカ独自の規則にも従わねばならない。

規制: 現在多数のEU指令案がEU諸国間で協議されている。こうした案は諸国レベルで合意を見たうえで、EU指令として採択され、各国を拘束する。EU各国はこの指令に応じた国内法を整備して強制力を持たせることになる。これらのEU指令には、PSD2〔改訂版支払サービス指令〕、2EMD〔改訂版電子通貨指令〕、 MLD4〔第4版マネー・ローンダリング指令〕などの重要な指令が含まれ、インターネットを通じた支払と電子通貨の処理の基本を定める根本的な規則となっている。英国の離脱に伴い、指令案に関する各国の協議は今後の新しい方向が定まるまで事実上棚上げされる可能性がある。

英国のフィンテックにとって非常に重要となるのは各種サービスを「パスポート」する地位を失うという問題だ〔EU加盟国内に営業拠点を持つ企業は他のEU諸国内に営業拠点をもたなくてもEU企業として扱われ、全域で活動できる。現在ロンドンがEU域外の多数の金融サービスに「パスポート」を提供している〕。「パスポート」の失効はEU全域に活動の場を広げようとする英国フィンテック企業にとって破壊的影響をもたらす可能性がある。そこで問題は最初にもどってどの国からライセンスを得ればいいのかが重要となる。

英国のフィンテック企業は従来、金融行動監視機構〔Financial Conduct Authorit=FAC〕の規制を受けてきた。FACは先進的かつイノベーション志向であり、ビジネスに理解のある規制者だった。断固とした姿勢であると同時に現実的でもあり、EU全域に影響を与える金融上の規制の方向を決める他の国家的規制組織に対して十分な影響力があった。#Brexit後はFCAのこうしたEU全域へ権威は失われる。英国のフィンテックにとって、当面もっとも重要となるのは、EUという単一市場で活動を続けるためにはいったいどの国の規則当局の監督に服せばよいのかを決めることだ。

英国の一部のフィンテック・スタートアップはスペイン、イタリー、アイルランド、オランダからライセンスを得ようと動いている。フィンテックがすでにこれらの国で活動している、その国の法制を熟知している、などによりライセンス取得のコストが低いことがそうした国を選ぶという「倍賭け」の理由になっている。しかし他の国にも有能な規則制定者は多い。以下に述べるようないくつかの理由により、はドイツという選択がもっとも常識にかなう。

  • ドイツのBaFin〔Bundesanstalt für Finanzdienstleistungsaufsicht、英語名はFederal Financial Supervisory Authority=連邦金融監督庁〕は未来志向であり、効率的かつ強力な規制機関だ。
  • BaFinは昨年、フィンテックに関する多数のレポートを公刊している。Bitcoin、支払、インターネット送金手法、クラウドファンディング、フィンテックの現状などが分析されている。
  • 優秀かつ効率的な規制当局の管轄下に入ることはスタートアップにとって長期的に大きな利益となる。つまりビジネスに理解がなく有能でもない監督機関の下にあるライバルに比べて大きな競争上の優位を得られる。またユーザーは信頼できる規制機関の下にあるサービスを好む。そうした要素を考え合わせるとBaFinという選択はますます動かないものになる。
  • EU各国の規制機関はEuropean Banking Authority〔欧州銀行監督庁〕を通じてEU全域の規制を形作ることを助ける。ここでもBaFinは強力な存在だ。BaFinはEU指令にもとづいて国内法を整備する際にも諸国のリーダーとなる。この点も英国のフィンテック・スタートアップにとって有利に働く。フィンテックはBaFinの制定した規制に従うことで〔他国も同様の国内法を整備する可能性が高いので〕迅速かつ低コストの運営が可能になるだろう。
  • またこれと並行して、ドイツはテクノロジーとしても先進的な成長中かつ強力なフィンテック・ビジネスを持っている。このコミュニティは英国のフィンテック・スタートアップの参加に対して友好的だ。

EU離脱には英国にとって破滅的な悪影響をもたらす可能性のある上記のような要素が多数あるが、最終的にそれらがどういう結果をもたらすかについてはまだ多くの不明点がある。圧倒的なコンセンサスは「まだ誰にも分からない」だ。さて、何が起きるのか?

本稿で示された見解は筆者個人のものであり、筆者の所属する組織、企業の立場を反映するものではない。本稿に述べられた意見、方針等を実際の行動にあたっては採用しようとするなら、事前に専門的な法律的、税制的な助言を受けることを強く勧める。

画像: Dan Kitwood/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

英国のEU離脱から生まれた、欧州スタートアップのための新しい語彙

24600489394_c8b9c405ca_k

【編集部注:本稿の執筆者、Adeo Ressiは、Adeo Ressi Founder Instituteのファウンダー。】

英国はヨーロッパのスタートアップ環境に強烈な一撃を与え、果たしてヨーロッパが復活できるのかどうか注目される。

問題は、離脱の投票結果がヨーロッパ全体に予期せぬ影響を与えることだ。しかし、あらゆる騒然とした変化において最も大きな被害を受けるのは弱者であり、ビジネスの世界で最も離脱の影響を受けるのは、もちろんスタートアップだ。

ここに、ヨーロッパのスタートアップが将来を検討するために知っておくべきBrexit[英国のEU離脱を表すBritainとexitから成る造語]風の用語をいくつか挙げてみた。

Eurogeddon:ヨーロッパのスタートアップ向け資金は今年末までに20%以上縮小される。ヨーロッパの資金の50%近くはロンドン発であり、後期ステージの調達ラウンドはロンドンが支配している。

規制の影響が正しく理解されるまで、ロンドンのVCらがどうやって「通常のビジネス」を続けられるのか私にはわからない。ロンドンからの出資が、特に後期ステージで減速すれば、早期ステージのヨーロッパVCも減速する。ヨーロッパでベンチャー資金を集めることは忘れた方がいい。

Eurogration:数百万人の難民がヨーロッパに集まるにつれ、トップ起業家たちは、もっと明るい資金調達環境を求めて逃避する。

ヨーロッパでも英国でも、全ステージにわたって資金提供が鈍化すれば、18~24箇月以内に資金調達が必要に経験ある起業家は、金のある場所を求めて出かけていく。シリコンバレー、ニューヨーク、シンガポール等々だ。私は、トップ5%の起業家の半数が2年以内にヨーロッパを離れると予想している。ヨーロッパで資金が必要なら、今すぐ出ていくべきだ。海外移転は外資も流出させるからだ。

Berlinifacation:もしロンドンでなければ、滅びゆくヨーロッパのスタートップシーンを誰が支配するのか。もちろん、ベルリンだ。

5年以内に、ベルリンは貧しくてクールな都市からヨーロッパのITハブへと変わる。かつて英国ベンチャーキャピタルに集まった数十億ドルは、ドイツの基金へとゆっくり移り、ドイツの効率性が力を発揮する。10年以内に、ドイツの傘の下でヨーロッパ初の本格的ユニコーンが登場するだろう。今すぐヨーロッパで資金を集める必要のない人は、ベルリンへ行こう。

Corpacolapse:英国の企業に対するアピールは一夜にして消滅する。市場がなくVC業界が停滞する雨の多い島で会社を設立しようとする、正気のスタートアップはいない。

27588055651_1a16a3952a_o

Photo courtesy of Flickr/muffinn

英国は、法規制、資金、市場へのアクセスのおかげで、会社設立のための世界三大スタートアップハブ(デラウェア、シンガポール、英国)の一つになった。3つの利点のうち2つが今やなく、法制も変わりつつある。今、英国で設立すべきスタートアップは存在しない。もし英国での設立を考えているなら今すぐやめるべきだ。ヨーロッパで会社を作る必要があるなら、ドイツへ行こう。

スタートアップはそもそも多くの問題を抱えている。経済レベルの構造的リスクがあるとき、優れた起業家はそれに応じて行動する必要がある。厳しい時代に生まれたことはスタートアップにとって良いことかもしれない。空腹で細身になるからだ。スタートアップの苦境に不必要な困難を加えることは、一般によい考えではない。ヨーロッパのファウンダーにとって、今は転換の時だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ビットコインはビットコインのままに、値上げ幅は1週間で30%、1年で200%と急騰中

giphy-1-dragged

ビットコインが話題に上がるのは、価格が暴落しているか急騰しているときだけのように感じないだろうか。ちょうど現在価格が急騰していることなので、ビットコインの話をしよう!

この記事が書かれている時点(米国時間6月16日)で、ビットコインには一枚あたり745ドル前後の値がついている。ビットコインの価格が現在のレベルに達したことは、過去に2回しかない。初回は、2013年のクリスマスに起きたバブルのときに、これ以上の高値に届く途中で。そしてその次は、そこから値が落ちる途中でだった。

 

一年前に230ドル前後の安値で取引されていたビットコインは、数週間前までじわじわと値を上げ、その後急騰した。 Screen Shot 2016-06-16 at 1.21.31 PM

もちろん誰もがなぜ価格が上がったのかを知りたがっている。しかし、他の公開市場のように、実際に何が価格上昇の原因となっているのかを知るすべはない。それでも、原因を推察することはできる。以下に、ビットコイン急騰の背景にあると考えられる事象のいくつかを挙げてみた。

半減期

半減期という言葉を聞いたことがあるだろうか?もしもビットコインのニュースを追っているのに聞いたことがないなら、今後すぐにでもビットコイン関連のニュースが、半減期という言葉で溢れることになるので覚えておいたほうがいい。半減期のことを聞いたことがない人のために、私がここで説明しよう。まず、ビットコインはデフレ通貨としてデザインされ、この世に2100万枚しか存在しないため、時間が経つにつれて、採掘されるビットコインの数も少なくなる。

これは、ビットコインのコアとなるコードによって、21万ブロック採掘されるごとに、採掘報酬が半減するよう決められているからだ。1ブロックあたり50BTCではじまった採掘報酬は、2012年終わりに1ブロックあたり25BTCへと減少し、あと3週間ほどでさらに12.5BTCへと半減することが予想されている。

原則上、採掘者たちの利益が近いうちに半分になるため、今回の価格上昇は、その埋め合わせとしてのビットコイン経済の自然な(そしてそのように設計された)半減期に対する反応と考えられる。

ビットコイン・コアのアップデート

ビットコイン・コアとは、ビットコインの原動力となるコードのことで、信頼できる開発チームによって整備されており、ビットコインの方向性を決定づけるものでもある。

先週の記事で触れた通り、開発チームは、現在いくつかのメジャーアップデートの準備に取り組んでいる。もっと早く、そして多くの決済を処理できるようにするための、ネットワークのスピードと許容量の向上がアップデートの主な内容となっている。詳しいところはかなり技術的な話なので省くが、そろそろリリースされる予定の新たなビットコイン・コアのテクノロジーに対する期待感が、価格上昇の原因の可能性がある。

広がる経済の不透明感

最後のオプションが、ビットコイン市場に不透明感を漂わせている、世界経済で起きている出来事だ。Brexit(イギリスのEU離脱)の可能性や、アメリカの大統領選、アジア経済低迷の可能性などが、機関・個人投資家の警戒心をあおっている。

人々は、経済が不安定なとき、現在過去半年で最高値をつけている金など、安全資産の購入に走る傾向にある。一般的に、ビットコインは安定的で安全な投資先とは考えられていないが、特に中国の投資家が、政府の厳しい規制網の届かないような資産の保管場所を探していることもあり、その様相は代わりつつあるのかもしれない。

あくまで冷静に

最後に、この記事との別れのアドバイスとして、どんな形であれ、現実の資産価値が急騰する様子を見るのは、ワクワクするし魅力的であるが、冷静さを保つことを忘れないでほしい。

これまでビットコインに関わったことのある人のほとんどが、一年前、いや一週間前にでも、なぜビットコインを買い集めておかなかったのだろうと、自分自信を蹴りつけたい衝動に現在かられていることだろう。もしくは、今後も価格が上がり続けると考え、今からビットコインを買い集めようという誘惑を感じている人もいるだろうが、恐らくそうしない方が良いだろう。これまでに学んだ通り、ビットコインは既存の金融商品とは全く別物であり、その価格は気ままに変動する。どんな公開市場であっても、買い時を見定めようとすると逆に大きな損失を生み出す可能性が高い。

ビットコインは値上がりすれば、値下がりもする。そして私たちの人生は、ただ前に進むだけだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter