フリマアプリFril運営のFablicがクックパッド、コロプラ、ジャフコから10億円調達–まもなくテレビCMも

フリマアプリ「Fril(フリル)」を手がけるFablicは9月25日、クックパッド、コロプラ、ジャフコを割当先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。出資比率やバリュエーションは開示していないが、関係者などの話を総合すると、金額的には3社がおおよそ3分の1ずつ出資しており、バリュエーションは100億円程度になるという。

Frilは2012年7月にサービスを開始したフリマアプリ。ユーザーを女性に限定しているのが特徴で、ファッションアイテムやハンドメイドの小物などが個人間で売買されている。現在のダウンロード数は200万件弱。ユーザーは都市部に住む10代後半から20代の女性が中心となっている。売買される商品の平均単価は2000〜3000円程度だという。月間の物流総額(実際に売買されている金額)は7月時点で5億円と発表されていたが、現在は「5億〜10億円のあいだ」(Fablic代表取締役社長の堀井翔太氏)だそうだ。

割当先に事業会社が2社いるが、この理由について堀井氏は、「特にクックパッドなどはユーザー属性も近いためシナジーもある。だがそれ以上にいい応援をしてくれる人、熱い思いを持った経営陣が居るから」と説明する。

フリマアプリのプレーヤーを見てみると、メルカリの手がける「メルカリ」が500万ダウンロードを達成。これまでの資金調達ではグローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、GMOベンチャーパートナーズ、ユナイテッド、イーストベンチャーズなど、ベンチャーキャピタルを中心に広く資本を受け入れて“応援団”を作っている状況だ。またテレビCMを展開して大きくユーザー数を伸ばした。

こういった状況を踏まえて、堀井氏は「今はプロダクトを磨くだけでなく空中戦(マーケティングなど周辺領域での勝負)になっている。いかに周囲が応援してくれるかが重要。そんな中で『燃料はどんどん投下するから戦え』と言われることも増えたが、それとは違ったアドバイスをもらえる会社に出資してもらっている。優秀な経営者に気軽に相談できるし、IRやマーケティングにも強いチームがいる」と語る。

今後Frilは、CtoCをビジネスの中心にしつつ、BtoCの事業も強化する。8月からは「公式ショップ」という形でアパレルブランドが出店し、商品を販売できる仕組みを開始している。「現在は検証もかねてサービスを始めたところ。将来的には会員への課金や広告など、マネタイズの方法はあると思っている」(堀井氏)

前述のメルカリやLINEの手がけるLINE MALL、さらにはヤフオク!まで、(広義で)競合が多いスマホ向けのフリマ市場。Frilでは、今後も女性に特化したサービスを展開していく。「彼ら(競合)はオールジャンル、オールカテゴリ。そこはポジショニングを分けて差別化していきたい。お金(手数料のこと。ちなみにメルカリはこれまで手数料無料でサービスを展開してきたが、10月からFrilと同様に商品価格の10%の手数料を取得する)がかかっても使ってもらえるのはそこがあるから。これからも独自の世界を作っていきたい」(堀井氏)。サービスを支える約30人のカスタマーサポートは全員がFrilのユーザーで、きめ細かい対応を実施。さらにはバックグラウンドでのスパム検知、本人確認の仕組みにも注力しているという。

Fablicでは2015年度の物流総額200億円を直近の目標とする。また将来的には海外展開も検討しているようだが、「やるのであれば台湾などアジア圏。法律や物流の違いもあって翻訳だけして展開できるとは思っていない。場所によって戦略やアプリそのもののチューニングが必要だと思う」(堀井氏)とのことだった。


“スーパーサイヤ人的経営者”が手がけるメルカリ、ダウンロード数は400万件に

先週福岡で開催された招待制イベント「B Dash Camp 2014 in Fukuoka」にて、スマートフォン向けフリマサービスの元祖「Fril」を手がけるFablicが月間物流総額4億円、アプリダウンロード数150万件という数字を発表していた。これだけでもわずか2年で大きな市場を築いたと思うのだけれども、後発の競合サービス「メルカリ」を展開するメルカリがダウンロード数でその2倍を超える数字を発表している。

メルカリは7月22日、フリマアプリメルカリが400万ダウンロードを突破したことを発表した。これに合わせるかたちでデザインのリニューアルも実施している。リニューアルはiOS版から進めており、Android版についても近日中にリニューアルする予定だという。

メルカリのリリースは2013年7月2日。1年を経過した7月時点での月間流通金額は10億円を「大幅に超える」(同社)とのこと。1日の出品数は10万点以上になっている。5月にはテレビCMも放映しており、こちらも奏功したそうだ。同社の発表によると、ダウンロード数は400万件に上るという。

Frilがユーザーを基本女性に限定している一方で、メルカリはユーザーを限定していない。実際のところメインユーザーとなっているのは地方在住の20代〜30代女性だそうで、流通しているのは女性向けのファッションアイテムが中心。そのほかにも男性向けのファッションアイテムからスマートフォンゲームのデータ(運営ポリシー上は問題ないそうだ)まで幅広いアイテムを扱っている。僕も2カ月ほど前にとあるブランドのブーツを出品したのだけれど、数秒で「いいね」が複数つき、10分以内には購入のやりとりをするに至ったので、そのスピードには正直驚いた。同社は現在仙台にカスタマーサポート部隊も設置しているそうだ。

今回のリニューアルでは、アイコン、レイアウト、色調等の全面を刷新している。ユーザーの個人ページについても、より商品の魅力を引き出せるデザインに変更したとのことだ。

「スーパーサイヤ人」な起業家の戦い方

さて、冒頭で紹介したB Dash Campのセッションの中で、登壇者らがメルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏に言及したところがあったので、少しご紹介したい。

メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏

モデレーターを務めたモブキャスト執行役員CCOの福元健之氏が、登壇したアクティブソナー 代表取締役社長の青木康時氏、Fablic 代表取締役社長の堀井翔太氏、BASE 代表取締役鶴岡裕太氏に対して「大手が競合として攻めてくる中で、こういうことされると嫌なことは何か、脅威となるのは何か」と質問した際のことだ。

当初登壇者の3人は、共通して「上場企業や大きいプレーヤーは脅威だが、その隙間を狙っている、その会社ではできないことをやっている」と回答していたのだが、そこから鶴岡氏が「上場企業より、進太郎さん(山田進太郎)や木村さん(Gunosy代表取締役の木村新司氏)のようなスーパーサイヤ人がいることが脅威。そういう人は一気に来る(事業を展開する)」と語った。堀井氏もこれにうなずき、「強くてニューゲーム(ゲームクリア後に、レベルなどを引き継いだ状態でゲームを1から始めるという意味)な起業家」という表現をしていた。

山田氏は、大学在学中に楽天に参画。「楽オク」の立上げなどを経験。さらには卒業後にウノウを設立し、「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」といったサービスを開発。同社をZyngaに売却した経験がある。また木村氏も、ドリームインキュベーターにてコンサルやベンチャー投資を手がけた後にシリウステクノロジーズの取締役に就任。ヤフーによる買収の前に同社を離れてアトランティスを設立。2011年にグリーに売却した経験を持つ。

いずれにしてもイグジットの経験もある起業家だ。彼らは若いスタートアップがプロダクトを少しずつブラッシュアップし、口コミでユーザーを集めつつ徐々に市場を作っていく中で、大規模な調達をしてテレビCMを展開するなど、ダイナミックな資金調達、そしてその資金の投下を実行している。マンガ「ドラゴンボール」で言うならスーパーサイヤ人になって一気に戦闘力を高めて勝負に出ているといったところだろうか。

実際Frilのほうがメルカリよりも1年早い2012年にサービスを開始していたし、Gunosyにしても、同社のニュースリーダーアプリ「Gunosy」に競合するスマートニュースの「SmartNews」よりも100万件以上ダウンロード数が少なかった時期があるが、テレビCM放映後の現在はほぼ同じ程度ではないかと木村氏は話していた(ちなみにSmartNewsのテレビCMに関しては、同イベントの別セッションで登壇したスマートニュース取締役の鈴木健氏に質問が飛んだが、明言されなかった)。スーパーサイヤ人的経営者の山田氏はスマートフォン向けフリマのマーケットをどこまで拡大できるのだろうか。同社は現在手数料無料でサービスを提供しているが、いつからマネタイズに向かうのかも含めてその動向に注目したい。


Frilの月間物流総額は5億円–「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

スマホ向けフリマアプリの元祖であるFablicの「Fril」。若い女性に特化したこのアプリだが、現在の月間物流総額は5億円以上、アプリのダウンロード数は150万件以上になっているという。

福岡で7月17〜18日に開催されている招待制イベント「B Dash Camp 2014 in Fukuoka」の2日目のセッション「新興eコマース〜新たなトレンドを作り出せるか?」に登壇したFablic 代表取締役社長の堀井翔太氏が明らかにした。

このセッションでは堀井氏のほかにアクティブソナー 代表取締役社長の青木康時氏、BASE 代表取締役鶴岡裕太氏が登壇。それぞれのビジネスについて語った。

「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

Fablicは、これまでほとんどメディアでビジネスの話をしたことがなかったし、アプリのダウンロード数をはじめとした情報を発信してこなかった。しかしここに来て数字を公開した堀井氏は、「今は競合も十数個ある。そういう(情報を非公開にする)フェーズではない」と語る。

競合とされる後発の「メルカリ」は、14億円超の大型調達、テレビCMなども奏功して大きくユーザーを拡大。1周年を迎えた2014年7月時点で、月間流通総額は10億円、ダウンロード数350万件という数字を発表している。

こういった状況に対して堀井氏は、「メルカリやGunosyなどは大きな資本を調達して勝負している。今まではプロダクトを磨いて、リテンション伸ばして…としてきたが、最近の戦い方はテレビCMなども含めて『空中戦』もするような状況にシフトしている」と語る。

Open Network Labのインキュベーションプログラム出身のスタートアップということで、デジタルガレージグループからシードマネーを調達しているFablic。1期目から黒字化して資金調達の必要もなかったとのことだが、今後は資金調達してテレビCMを放送することも検討しているという。さらに、ユーザーのニーズも多いことから、一部のユーザーに限定してフルフィルメントサービスを試験的に提供していることも明かされた。

BASEは「カート」ではなく「決済」

手軽にウェブショップを構築できる「BASE」を提供するBASE。個人だけでなく、中小企業を中心とした法人もサービスを利用している。最近では芸能人やニコニコ生放送の“生主”のような売り手も登場しており、数千万円から億単位の売上を実現しているショップもあるそうだ。

サイバーエージェントやグローバルブレインなどから資金を調達し、現在はユーザーの拡大フェーズにあるという。クレジットカードの決済手数料などは徴収しているものの、サービスの利用手数料は無料。「売上はゼロと言っていい」(鶴岡氏)状況だそうだ。「(調達によって)うちのようなところがどんどん攻めていけるのはありがたいし、EC(領域)自体を評価して頂いていると思っている」(鶴岡氏)

鶴岡氏はBASEについて、「本質は決済を提供するサービス」と語っている。カート機能でのマネタイズはあまり考えていないそうで、将来的には、決済、金融といった領域でのマネタイズをやっていくそうだ。

サービス開始当初は、ブラケットの「STORES.jp」と比較されることが多かったBASE。「初期はSTORES.jpもあったことで認知度が上がった」(鶴岡氏)とも語るが、スタートトゥデイがブラケットを買収したこともあって状況は変わったという。「最近は自社でどれだけがんばれるか。突き抜けないといけない」(鶴岡氏)将来的には世界展開で100万店舗を目指す。さらには日本から海外に商品を売るための支援もしていくそうだ。

プラットフォームを目指すアクティブソナー

CtoBtoC型のブランド商品委託販売サービス「RECLO」を提供するアクティブソナー。

こちらの記事にもあるように、米国ではCtoBtoC型のECサイトが複数登場しており、ユーザーのニーズも見えている状況だという。日本では(米国でも先行する)「RealReal」などのプレーヤーはいるが、まだデファクトスタンダードたる位置にあるサービスはない。そこで自らこの領域に挑戦したそうだ。

今後は海外向けに商品を販売していくほか、家具や中古車の販売なども視野に入れるという。また、CtoBtoCは言ってしまえば「小売り」だが、1つ1つの商品を売るということではなく、あくまでプラットフォームとして成長していきたいと語った。

この領域に大手企業が参入することについて尋ねられたところ、「大きいプレーヤーが来るのは脅威だが、狙っているのは(大きいプレーヤーがチャレンジできない)隙間でのおもてなし。ネットサービスでは実現できないフルフィルメントを全部やるというところ」(青木氏)とした。


不要なブランド品を売って社会貢献、CtoC古参のwajaが新サービス

メルカリやLINEモール、FrilなどでCtoCコマースに注目が集まっているが、実は2003年からその領域に挑戦しているのがwajaだ。同社はこれまで、海外の個人バイヤーが現地で仕入れたファッションアイテムを、国内ユーザー向けに販売するマーケットプレイス「waja」を展開してきた。

この領域ではエニグモの「BUYMA」が一歩先を行っているが、wajaの特徴は、自社でフルフィルメントセンターを持っていることにある。東京・麻布のオフィス地下と埼玉県・入間にも倉庫を構えており、商品撮影から販売、配送までを手がけている。また最近では、このフルフィルメントを使ったアウトレットEC「REASON」も展開している。

そんなwajaが7月2日から開始したサービスが「FASHION CHARITY PROJECT(FCP)」だ。

FCPは、アパレルメーカーや個人が出品者となって不要になったファッションアイテムなどをwajaに送付するだけで、FCP上で商品を販売し、その売上を寄付できるサービス。販売はフラッシュマーケティングの手法で行われる予定で、5日間で50〜100点の商品が販売されるという。

出品者が販売代金を得られる訳ではないが、販売代金から手数料40%を差し引いた額がNPOに寄付される。寄付金の受領証明書も発行されるため、出品者は販売額の最大50%の寄付金控除を受けることができる。支援先のNPOはCivic Forceとピースウィンズ・ジャパンの2団体だが、今後は拡大していく予定だという。

waja代表取締役会長兼CEOの小安光司氏は、「チャリティを継続的かつスケールできるようにしたい。ファッションを通じて、売る人は不要品でチャリティができる、買う人は欲しいものを得られる。さらにNPOには支援ができる」とサービスについて語る。確かに自分自身を振り返ってみても、善意だけのチャリティでは災害や大きな事件があったときだけになりがちだ。この仕組みであれば、ユーザーだってあくまで商品を買うだけで支援できるのだから、継続性も生まれる。

またハイブランドやラグジュアリーブランドの場合、そのブランドイメージもあって、一部を除いてアウトレットなどに出店、出品するようなケースはほとんどない。だが在庫は在庫、売れないものは処分するしかないわけだ。中古品として流通させることだっていい印象がないとも聞く。そんなときに、チャリティーやCSRという名目で商品を売れるのであれば、ブランドイメージを壊すことがないどころか向上させることだってできるわけだ。

そんなこともあって、7月1日の夜に都内で開催されたFCPのお披露目イベントでは、LOUIS VUITTONをはじめ、PRADAやJIMMY CHOOといったブランドの出品が発表されていたそうだ。このほかにも、すでに約560のブランドが出品を決定しているという。そしてFCPでの取り組みをきっかけに、wajaが手がけるアウトレットECのREASONにも興味を持つブランドが増えているとのことで、「社会貢献+手数料モデルのビジネス」という枠にとどまらない商機を生み出しそうだ。


CtoCサービスが成長する”カギ”は何か? Baixing、メルカリ、Stores、ジモティーが語る

冒頭の画像を見てほしい。この写真は何か?これは米国のクラシファイドサービス(「売ります」「買います」をはじめとした個人広告を掲載するサービス)「craigslist」の1ページである。craigslistでは様々な分野の個人広告が掲載されているが、その1つ1つが、実は今、スタータップが提供する特化型のCtoCサービスに置き換えられつつある、ということを示している。

北海道・札幌で5月22日から23日にかけて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」の第3セッションAでは、そんなCtoCサービスの事業者4社——Baixing.com CEOのJianshuo Wang氏、ジモティー 代表取締役社長の加藤貴博氏、メルカリ 代表取締役社長の山田 進太郎氏、ブラケット 代表取締役の光本勇介氏が登壇。インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナーの田中章雄氏がモデレーターを務める中で、それぞれのビジネスについて語った。セッションの前半は各社のサービスが紹介されたが、ここではセッションの後半のディスカッションについて紹介していきたい。

CtoCサービスはどうやって集客するのか

メルカリが手がけるのは、スマートフォン向けフリマサービス「メルカリ」だ。先日14.5億円の資金を調達し、現在テレビCMも開始している。山田氏は、CMでユーザーが増加したこと自体は否定しないが(CM効果について他社の事例を挙げると、先日調達を終えたアカツキなどは、2週間のテレビCMで70万ユーザーが増加したという話だった)、「プロダクトこそが非常に重要」と断言した。当然と言えば当然かもしれないが、やはりプロダクトが命となる。メルカリではスマートフォンに特化し、素早く手軽な操作で出品、購入できるフリマサービスを目指しているという。誰もが迷わず操作できるプロダクトを作ることこそが重要だと語る。

オンラインショップ構築サービス「STORES.jp」を提供するブラケットの光本氏は、「まだ自分たちでも答えが見つけられていない」と語る。STORES.jpの出展数は10万店舗。単純に店舗数だけを比較すれば4万店舗超の楽天を超えている数字だ。しかし店舗の性質も違うし、SEOやリスティング広告などを含めて、コストをかけたマーケティングを展開している。なので同じことをしてもどこまで成果が出るかというと難しい。そのためStores.jpでは、店頭販売できるパッケージ商品を作るということから、さまざまな集客の施策を作っているそうだ。

craigslistのようなクラシファイドサービス「ジモティー」を展開するジモティーの加藤氏は、そもそも「クラシファイド」という言葉自体が日本で一般的ではないため、言葉としては「(売ります買いますを投稿できる)掲示板」としてアピールしていった方がユーザーとの親和性が高いと判断したという(ちなみにジモティーのユーザーは40代以上が62%となっており、ITリテラシーも比較的低いそうだ)。サービス開始当初は,「社員の友人に声をかけてサービスを紹介する」といった人海戦術で集客を始めた時もティーだが、結局重要なのは「リピーターをどれだけ作るか」ということだと思い、ユーザーがどうやって成功体験を得られるかに注力しているそうだ。

中国でクラシファイドサービス「Baixing.com」を展開するWang氏も、口コミの重要性を語る。広告経由のサイト流入は実は全体の5%程度で、ほとんどはオーガニックなサイト流入なのだという。ちなみにBaixing.comで最も人気のある商品は中古車で、実に中国で流通する中古車の30%が同サービスを通じてやりとりされているそうだが、中国の中古車市場では安価な部類に入る1万ドル以下のものを取り扱っているそうだ。こういった商品は安価すぎて中古車ディーラーだと扱いたがらないそうだ。

リリース時期、ユーザーヒアリング、機能——カギになる施策は?

セッション後半、会場から「どういった施策が成功のカギになったのか」という質問が4社に投げられた。

アプリを4月に提供したメルカリ。先行するサービスとしては、女性に特化したFabricのフリマアプリ「Fril」などもあったが、「競合も出てきたが、タイミング的にも早く動けたことがよかった」(山田氏)と語る。

ユーザーインタビューの重要性を語るのは加藤氏だ。「社内の意見とユーザーの声は実は合っていなかったりする。例えばサービスのリッチ化は、実はユーザーのニーズと乖離していることもある」(加藤氏)。この話はなにもCtoC領域に限ったことではないだろう。

光本氏は、1つに絞れないとしながら、これまでの常識を超えるようなサービスの付加がポイントだったと語る。Stores.jpでは、ユーザーが複数店舗で商品を購入する場合でも、一括での決済ができるようにしたし、商品撮影や倉庫利用も基本無料で提供を開始した。こういった施策も、集客のフックになっているそうだ。

「シンプル」こそが大事だとするはWang氏だ。加藤氏の話にも近いが、サービスが複雑になりそうなとこには、まず原点に戻ってシンプルにするのだという。Baixing.com自体も、ユーザーに4つのテンプレートを作るだけで個人広告を出せる仕組みを導入しているのだという。


Instagramの「タグ」を利用にしたフリマサービスを米国で展開する10sec、藤田ファンドから1.6億円を調達

サイバーエージェントが3月に開催した「スタートアップ版あした会議」。これは、サイバーエージェント内で開催されているビジネスプランコンテストである「あした会議」のスタートアップ版となる。

書類と面接による事前審査を通過した創業2年以内のスタートアップに対して、サイバーエージェントの経営陣や子会社の経営者がアドバイザーとなり、2日間でサービスのブラッシュアップに取り組むというものだ。優秀プランには最大3億円の投資がなされるとされていたが、最終的に5社が投資検討の対象となり、うち2社への投資が発表されている。

1社目はファッションECアプリ「melo」運営のGorooに

まず1社目は、スマホアプリ「melo」を5月2日に公開したGorooだ。同社はサイバーエージェントから2000万円の資金を調達したことを4月25日に発表している。

Gorooの手がけるmeloは、大手通販サイトからネット展開のみの小規模ブランドまで、200以上のウェブサイトに掲載されている商品を横断して閲覧したり、お気に入りの商品を投稿したりできるというもの。興味を持った商品は、直接当該サイトにアクセスして購入することができる。10代から20代の女性にターゲットを絞ってサービスを提供する。

Goroo代表取締役の花房弘也氏は、「ネットで服を買うのが楽しくないのは『チャネルが限られている』という理由から。BASEやStore.jpのようなプラットフォームが登場し、個人で運営するような規模のファッションサイトは今後増えると思うが、そういったサイトが食っていけるような世界を作りたい」とサービスへの思いを語る。今後は各ECサイトへの送客トラフィックを拡大し、ツール提供などでのマネタイズを検討する。

10secは「Instagram」をプラットフォームにコマースを展開

そして5月8日、スタートアップ版あした会議発のスタートアップとして2社目の投資先として発表されたのが、10sec(旧Instamall)だ。同社はサイバーエージェントから1億6000万円の資金を調達した。ちなみに、今回の出資はサイバーエージェント代表取締役である藤田晋氏の名を冠した投資案件を指す「藤田ファンド」としての出資になるそうだ。実は藤田ファンドというのは、サイバーエージェント投資事業本部の投資案件の中でも、グロースステージのスタートアップへの大規模な投資に限定されているそうだ。これまでの実績で言えば、BASEやクラウドワークス、スマートエデュケーションなどへの投資がそれにあたる。

話を戻そう。10secの手がける「10sec」(現在米国からのみ利用可能)は、画像共有サービスの「Instagram」を利用してCtoCコマースを実現するプラットフォームだ。ユーザー登録をすれば、「#10sec」というハッシュタグを付与してInstagramに投稿した写真の商品を10sec上に出品して販売できる。投稿時に「○○$」とコメントを入力していれば、それがそのまま商品の販売価格として表示される。商品の購入には、出品者の指定の金額で購入する「Buy」と、値引きの交渉をして出品者がそれを受け入れた場合に購入できる「Offer」の2つの手段を用意する。出品者が価格を設定せずに出品した場合は、「Best Offer」と呼ぶ入札制度も導入する。サービスは現在手数料無料で提供しているが、将来的には出品者から10%の手数料を徴収する予定だそうだ。

安全な取引に向けて、エスクローサービスも導入。購入者が決済(stripeを採用)をしたのち、出品者が商品を送付し、出品者が受け取り完了の処理をする、もしくは送付から10日が経過した時点ではじめて出品者に入金がなされる仕組み。物流などは現在出品者に手段をゆだねるが、今後は自社、もしくはパートナーとともに提供する考えもあるという。

10secは、インキュベイトファンドが主催するインキュベーションプログラム「インキュベイトキャンプ 5th」の卒業生。インキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏を通じて、同社から合計2300万円の出資を受け、米国に限定して2013年11月よりほぼノンプロモーションでサービスを提供してきた。10sec「1年半ほど前から、Instagramで『#forsale』『#buy』といったハッシュタグを使ってフリマアプリのように商品を販売しているユーザーが居るのに気付いた。だがInstagramで写真を撮って出品しても、売買をサポートするツールもなかった」——代表取締役CEOの正田英之氏はサービス提供のきっかけについてこう語る。僕も確認したが、#forsaleタグがついた写真は270万件以上も存在している。

10secでは、今回調達した資金をもとにマーケティングと人材採用を進める。すでに設立済みの米国子会社にマーケティング担当者を置くほか、サービスを開発する日本法人のエンジニア採用を進める。また、5月にはiOSアプリをクローズドベータ版として公開。6月から7月頃の正式リリースを目指すという。同社では当面米国でサービスを提供するとのことで、日本でのサービス展開については「すでにメルカリやLINE MALLもいるレッドオーシャン、そのまま勝負をすることはない」(正田氏)とのことだ。

ところで、サイバーエージェントとしては、日本でサービスを展開せず米国でのみサービスを展開するスタートアップに投資する意義はあるのだろうか? サイバーエージェント投資事業本部 本部長の宮崎聡氏は「どこで事業を展開するかは意識しておらず、グローバルでやった方が伸ばせる座組みなのであれば、そんな会社に出資する。資金を用意してアクセルを踏めばユーザーを取れるのであれば、そこに資金とノウハウを注入したい。また、米国であれば、我々が子会社設立の時にぶち当たった壁も理解しているのでアドバイスできるし、ネットワークもある」と、語ってくれた。

同社が将来的に考えるのは、Instagramだけではなく、さまざまなソーシャルメディアと連携したCtoCプラットフォームの構築だという。たとえばFacebookもPinterestもタグを付与して写真をアップロードできるので、これをすべて10secの出品のプラットフォームにする。また逆に、10secに出品した写真をさまざまなソーシャルメディアに掲載して、10secへの集客を図るというものだ。もしこの構想が実現すれば、全世界のソーシャルメディアユーザーが、CtoCの出品者、購入者たりえる世界がやってくることになる。もちろんそのためには、クロスボーダーでの物流や決済など、課題もたくさんあるのだけれども。

正田氏(左)と宮崎氏(右)


LIGが新会社を立ち上げて挑戦するのはアクティビティのCtoCプラットフォーム「TRIP」

Twitterで1万件以上シェアされた2012年の人材募集「伝説のウェブデザイナーをさがして…」をはじめとした自社メディアの運用や、数多くのウェブサイト制作やコンテンツマーケティングで知られるウェブ制作会社LIG。いつも世間を驚かせたり、笑わせたりしてくれる仕掛け作りを企んでいる同社だが、今度はCtoCのプラットフォーム作りに挑戦する。

LIGの100%出資子会社であるTRIPは4月8日、アクティビティの提供会社や個人と旅行者をマッチングするプラットフォーム「TRIP」を公開した。

TRIPでは、アクティビティ(観光地での遊び、観光商品)を販売したい事業者や個人向けにストアの立ち上げから商品の登録、決済までの機能をワンストップで提供する。事業者からは10%の手数料と3%の補償料を、購入者からは5%の利用料を徴収する。アクティビティ体験中の購入者の事故などには、最大1億円までの対人、対物補償をするという。今後は任意で入院や携行品の補償なども用意する。

アクティビティの予約サービスとしては、すでに最近資金調達を発表したばかりのカタリズムが提供する「あそびゅー!」などがある。そんな中でTRIPでは、「アクティビティの提供者がストーリーを伝えられる作り」にこだわったという。

商品登録や決済といったCtoCコマース(TRIPでは個人よりもまずは中小企業をターゲットにするとのことだが)に必要な基本機能だけでなく、写真とブログライクなテキストエディタで実際に商品を体験した様子などを手軽に公開できるようにした。TRIPの代表で、LIGの取締役副社長である吉原ゴウ氏は「旅行のパンフレットを見たところでワクワクしないこともある。金額や工程表だけでは伝えられなかった、作り手の熱意のある観光商品を紹介して欲しい」と語る。

また、総合旅行業や旅行関連のコンサルティングを手がける観光販売システムズ(KHS)と提携。リーガルチェックで協力するほか、KHSがネットワークする15県2府道計60以上の自治体に対してTRIPの活用を訴求するという。

吉原氏は、冒頭の人材募集をはじめとして、LIGの“おもしろ系”コンテンツの仕掛けを作ってきた人物。そんな同氏の実家は、長野県の野尻湖周辺でアクティビティを提供しているのだという。「僕らが生まれ育ったのは野尻湖。でもどんどん寂れてきている。田舎出身だからこそ、観光を軸にして地域活性ができないかと考えた」(吉原氏)。そこで同氏の幼なじみが勤めるKHSと連携。2014年3月にTRIPを設立し、サービスを提供するに至った。

KHSではこれまでも地方自治体の観光課と連携して「VISIT」というサイトを立ち上げ、アクティビティの商品企画や在庫管理を手がけてきている。今後はそのネットワークを使い、地方自治体を経由してTRIPへの商品登録を促していく。

5月をめどにTRIPと連携するメディアも公開する予定だ。TRIPに掲載されているアクティビティを体験したライターらが記事を掲載することで、商品購入を促す。「自社ブログや(FOXと共同運営の)エンタメウス温泉JAPANなど、自社で手がけてきたメディアのノウハウを投下していく」(吉原氏)
同社では、2014年度内に47都道府県をカバーし、登録商品1万件、登録者10万人までの拡大を目指す。