アマゾンとの入札競争に勝ったマイクロソフトは米国防総省の1兆円相当のクラウドを作る

米国防総省は米国時間10月25日、Joint Enterprise Defense Infrastructure(JEDI、防衛基盤統合事業)クラウドの入札競争でMicrosoft(マイクロソフト)が契約を勝ち取ったと発表した。それは10年間で最大100億ドルにもなる事業契約だ。これに関しマイクロソフトは、ペンタゴンの事業とミッションの実施の双方でインフラとプラットホームサービスを提供する。

国防総省のCIO(情報担当最高責任者)を務めるDana Deasy(ダナ・ディジー)氏は、関連する発表で「(2018年の)国家防衛戦略は、我が国の制服を着た女性と男性に現代的な技術能力を開発装備する速度と実効性を向上すべきことを命じている。国防総省の(2019年の)デジタル近代化戦略は、この至上命令を支持するために作成された。今回の契約裁定は、デジタル近代化戦略の執行における重要段階である」と述べている。

マイクロソフトはこの巨額な入札競争の最終ラウンドでAmazon(アマゾン)を破った。それより前のラウンドではIBMやOracle(オラクル)のような競合企業が2社に敗退した。多くの識者は、アマゾン有利と見ていた。

アマゾンのスポークスパーソンは「この結果は意外である。AWSは明確にクラウドコンピューティングのリーダーであり、互いに競合する分野の詳細比較では、これとは異なる結果に導いていた。弊社は今後も、このまだ新しいデジタルの戦場のためのイノベーションに深く関わっていくつもりであり、そこではセキュリティと効率と自己回復力とリソースのスケーラビリティが成功と失敗を分かつであろう」とコメントしている。

ここに至るまでの過程は「複雑でない」とはとうてい言えない。さまざまな訴訟があり、土壇場の棄権あり、 そのほかの論争や議論もあった。ある時点では大統領の介入もあった。

まだ残っている問題は、マイクロソフトの社員がこれにどう反応するかだ。昨年は、何人かの社員が、会社がこの入札に参加しないことを求める公開書簡を発表した。さらに最近では、GitHubの総額20万ドルと比較的小額な、合衆国移民関税執行局との契約に同社の社員が抗議した。こんな背景がある以上、同社がペンタゴンの契約を勝ち取ったことも同様の抗議に遭うだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

壁の向こうに閉じ込められている人を見つける軽量レーダーデバイス

災害時などのファーストレスポンダー(第一応答者)は、状況を知ることが何より重要だ。家庭内暴力の解決でも、人質の救出でも、人身売買の現場でも、ファーストレスポンダーは何よりもまず、閉まったドアの向こうに人がいることを素早く判断しなければならない。そのための有効なツールはないだろうか。

そこでMegan Lacy(メーガン・レース)氏、Corbin Hennen(コービン・ヘネン)氏、Rob Kleffner(ロブ・クレフナー)氏の3名は、Lumineye(ルーミナイ、照らす目)を開発した。この3Dプリントで作ったレーダーデバイスは、信号分析のソフトウェアを使って壁の向こうで人が動いていたり呼吸していることを検知する。

Lumineyeはパルスレーダーの技術を利用して、コウモリやイルカのようなエコロケーション(反響定位)を行う。信号を送り、そのパルスが返ってくる時間を計測するのだ。行きと帰りのパルスをソフトウェアが分析して、信号の運動特性、その大きさや範囲を判定する。

Lumineyeのソフトウェアは、壁の向こうで動いたり呼吸したりしている人までの距離も判定する。信号は一次元なので、壁の向こうのどこにいるかは特定できないが、野外では15メートル先までの人を検出できる。ただし、煉瓦やコンクリートなどの障害物が間にあれば、検出可能距離は短くなる。

チームは人質救出の例で、Lumineyeのアドバンテージを説明している。そのような状況では、ファーストレスポンダーは何よりもまず、部屋に閉じ込められている人質の数とその広がり(各人間の距離)を知る必要がある。どうするか? 複数のLumineyeを使って三角測量の計算をするのだ。それによって救出チームは、より効果的に行動できる。

このような検出のための今ある機械装置は、どれも重くて大きくて運びづらく使いづらい。そこでLumineyeのチームは、軽くてポータブルな器具を作るべきと考えた。救出チームの仕事は、12時間とか24時間続く場合もある。機器は軽い方が良い。プロトタイプは検出用のハードウェアにふつうのスマートフォンを組み合わせたもので、大きさは25×12cm、重さは600gぐらいだ。

チームは、Lumineyeをもっと世の中の至るところにあるデバイスにしたいと考えている。設計に改良を加え、消費者にも直接売りたい。

Lumineye Device BreathingMode

Lumineyeのデバイスは電波を使って壁の向こうの人間を見つける

Lumineyeはまだ、最初のパイロット事業を始めたばかりで、8月10日にFEMA(米国合衆国連邦緊急事態管理庁)のイベントに出て、瓦礫の下に埋まった人を見つけるデモをした。チームは全員アイダホ州ボイシの生まれだが、スタンフォード大学と国防総省の共同事業であるHacking4DefenseにもLumineyeを出展した。それは、米国の国防や諜報活動にシリコンバレーのイノベーションを結びつけようとするイベントだ。そしてこのアイダホのチームは目下、Y Combinatorの2019夏季クラスを受講中だ。

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写真に向かって左から、Megan Lacy氏、Corbin Hennen氏、Rob Kleffner氏

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国防総省、バグ探し懸賞プログラム “Hack the Pentagon” を拡大

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軍隊をハックしたいって? 国防総省(DoD)は、自らのシステムをハッカーが(訴えらることなく)テストする機会を増やそうとしている。

同省は今日(米国時間6/12)Hack the Pentagon[ペンタゴンをハックせよ]プログラムを拡大して、さらに多くの国防総省システムとネットワークを対象に加えることを発表した。Hack the Pentagonは、システムの脆弱性を見つけて報告したハッカーに現金報奨を与えるもので、既に効果を発揮している ― 最初にバグが報告されたのは、プログラムが始まった13分後だった。

当初はパイロットプログラムとして今年の4/18~5/12の期間限定で実施され、わずか5箇所のDoDウェブサイトが対象だったが、同省はさらに多くのウェブサイトやシステムの脆弱性を見つけるべく、プログラムを恒久化する計画だ。Hack the Pentagonは、米国政府にとって初めての、脆弱性を発見したハッカーに報酬を支払うバグ探し懸賞プログラムだ。

「パイロットプログラムは成功したが、あれは公開ウェブサイトに対するクラウドソースによるセキュリティーの概念をテストしただけだった。DoDの他のあらゆるセキュリティー問題についても、この方式が成功するものど信じている」とDoDの広報担当者が声明で語った。

Hack the Pentagonは、バグ探し懸賞プラットフォームのHackerOneが運用しており、パイロットプログラムでは、138種類のバグが報告され、計7万1200ドルの賞金がハッカーに支払われた。

プログラム参加者の一人、David Dworkenは高校を卒業したばかりだ。彼は22件のバグをDoDに報告し、学校の休み時間に見つけたものだと言っている。

DoDは、プログラム強化に向けて3つの点に力を入れている:脆弱性公開プロセスの開発、バグ懸賞プログラムの拡大、およびDoD契約者がシステム上でテストすることを推進するインセンティブの導入だ。

「こうした取り組みを通じて、Hack the Pentagonの成果を生かし、DoDのネットワーク、システム、および情報の安全を守る方法を進化させていく」とDoDの広報担当者は言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

合衆国国防総省は兵士のバイオメトリックス(身体情報収集)に消費者向けスマホを利用

aoptix

スマートフォンは世界中のポケットや財布を侵略しているが、しかしAOptixはもうすぐ、それらのモバイルデバイスを遠方の交戦地帯に持ち込むかもしれない。カリフォルニア州Campbellの同社が、政府系ITパートナーCACIと共同で今朝(米国時間2/13)発表したところによると、同社は“スマートモバイルアイデンティティ”なるものを実現するための研究開発を、合衆国国防総省から300万ドルで受託した。

同社のプレスリリースは技術の詳細を明らかにしていないが、Wired誌に詳しい記事がある。その大きな目標は、市販のスマートフォンを利用した一種のアクセサリで、それが高精度なバイオメトリックデータを捕捉する。たとえば親指の指紋、顔や目のスキャン、録音された声、など。

ちょっと話を聞いただけでは、それほど画期的な研究開発テーマとは思えない。スマートフォン自身が数年前に比べて格段に強力になっているし、その傾向はこれからもますます続くだろう。だから近い将来は、スマートフォンと外部センサー群の組み合わせから継続的に大量のデータを送れる、と考えても無理ではない。しかも同社がWired誌に語っているところによると、今のスマートフォンを自分でも持って使っている兵士なら誰でもすぐに使えるような、“直感的なインタフェイス”をそのバイオメトリックシステムは備えるという。

AOptix社はモバイルのプラットホームを特定していないが、おそらくセンサーデバイスとAndroidデバイスを一体化したような最終製品になるのだろう。合衆国国防総省とGoogleのモバイルOSは、互いに他人の関係ではない。2011年の終わりごろには、DellのAndroidタブレットStreak 5 を、政府は公式に採用した。最近国防総省は、iPhoneがペンタゴンで広く使われていることを率直に認めたが、軍用の大量調達品ではコストの点からいっても、iPhoneは無理、Androidで行く、と考えるのが自然だ。コストだけでなく、Androidは開発面でもきわめてオープンなアーキテクチャだから、その点でも有利だ。

しかし、Androidスマートフォンという消費者製品を利用する兵士用バイオメトリックアクセサリ、という考え自体は、ちょっとおどろきだ。しばらく前から‘ITの消費者化’が流行語になっているが、その流れで、これからは‘軍用情報技術の消費者化’が進むのかもしれない。今年のCTIA MobileConカンファレンスでCIO副官Robert Wheeler少佐が、国防総省のモバイル戦略には、既存の問題に革新的なマスマーケット向け技術を利用することも含まれる、と言った。だから今回のAOptixのお話は、今後の長期的な傾向の端緒、にすぎないのだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

合衆国国防総省は兵士のバイオメトリックス(身体情報収集)に消費者向けスマホを利用

スマートフォンは世界中のポケットや財布を侵略しているが、しかしAOptixはもうすぐ、それらのモバイルデバイスを遠方の交戦地帯に持ち込むかもしれない。カリフォルニア州Campbellの同社が、政府系ITパートナーCACIと共同で今朝(米国時間2/13)発表したところによると、同社は“スマートモバイルアイデンティティ”なるものを実現するための研究開発を、合衆国国防総省から300万ドルで受託した。

同社のプレスリリースは技術の詳細を明らかにしていないが、Wired誌に詳しい記事がある。その大きな目標は、市販のスマートフォンを利用した一種のアクセサリで、それが高精度なバイオメトリックデータを捕捉する。たとえば親指の指紋、顔や目のスキャン、録音された声、など。

ちょっと話を聞いただけでは、それほど画期的な研究開発テーマとは思えない。スマートフォン自身が数年前に比べて格段に強力になっているし、その傾向はこれからもますます続くだろう。だから近い将来は、スマートフォンと外部センサー群の組み合わせから継続的に大量のデータを送れる、と考えても無理ではない。しかも同社がWired誌に語っているところによると、今のスマートフォンを自分でも持って使っている兵士なら誰でもすぐに使えるような、“直感的なインタフェイス”をそのバイオメトリックシステムは備えるという。

AOptix社はモバイルのプラットホームを特定していないが、おそらくセンサーデバイスとAndroidデバイスを一体化したような最終製品になるのだろう。合衆国国防総省とGoogleのモバイルOSは、互いに他人の関係ではない。2011年の終わりごろには、DellのAndroidタブレットStreak 5 を、政府は公式に採用した。最近国防総省は、iPhoneがペンタゴンで広く使われていることを率直に認めたが、軍用の大量調達品ではコストの点からいっても、iPhoneは無理、Androidで行く、と考えるのが自然だ。コストだけでなく、Androidは開発面でもきわめてオープンなアーキテクチャだから、その点でも有利だ。

しかし、Androidスマートフォンという消費者製品を利用する兵士用バイオメトリックアクセサリ、という考え自体は、ちょっとおどろきだ。しばらく前から‘ITの消費者化’が流行語になっているが、その流れで、これからは‘軍用情報技術の消費者化’が進むのかもしれない。今年のCTIA MobileConカンファレンスでCIO副官Robert Wheeler少佐が、国防総省のモバイル戦略には、既存の問題に革新的なマスマーケット向け技術を利用することも含まれる、と言った。だから今回のAOptixのお話は、今後の長期的な傾向の端緒、にすぎないのだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))