今年2月にアナウンスされたNTTドコモの新しいベンチャー支援の取り組みであるインキュベーション事業「ドコモ・イノベーションビレッジ」が初のデモデイを開催した。イノベーションビレッジについては本誌で何度か取り上げているが、この取り組みは国内のインキュベーションと同じく、応募者の中から数社を選び、オフィスや開発環境、メンターによるメンタリングなどを提供する。
イノベーションビレッジの特徴はKDDI∞LaboやOpen Network Laboが3カ月間のプログラムを提供しているのに対し、やや長めの5カ月間としていることやドコモの様々なAPIの解放(音声認識、翻訳等)、200万円の開発助成金(コンバーチブルノートによる資金を提供)とった点である。
今日デモデイに登壇した6社のスタートアップはイノベーションビレッジの1期生にあたる。それでは、ドコモがどのようなスタートアップを採択したのかを見てみよう。
DecoAlbum(デコアルバム)、DrawChat — プライムアゲイン
プライムアゲインは2つのアプリを開発している。DecoAlbumは昨年6月にリリースされ、すでに200万ダウンロードを突破している。このアプリは女の子向けで撮影した写真を可愛く、キレイにデコレーションし、オリジナルのアルバムに保存できる。
写真を加工するアプリとアルバムアプリは個々にたくさんあるが、DecoAlbumではその一連の動作を1つのアプリ上で行える。このアプリは日本でもある程度のDL数は記録しているが、海外のユーザーが70%を占めており、タイや台湾といったアジア圏で人気のようだ。
また、DecoAlbumを運営している中で「ユーザーは他人と写真を使ってコミュニケーションを取りたいのではないか」と思ったとプライムアゲイン代表取締役の阿部伸弘はいう。というのも、このアプリの写真は外部のSNSでシェアされることが多かったからだそうだ。
そこで写真や絵を使ったコミュニケーションツールであるDrawChatを開発した。DrawChatはFacebookのサードパーティーメッセンジャー的な位置づけで、Facebookのメッセージ内で写真やキャンバスに手書き文字を加えて送信できる。
DrawChatはスタンドアローンのアプリだが、まだダウンロードしていない相手にこのアプリからメッセージが送られると画像のリンクが送信される。このような仕組みもあって、リリースから20日間で1万ダウンロードを突破しているとのこと。
今後はこの写真とチャットという2つの市場で大きき成長を目指し、2014年中に1000万ダウンロードを目標としている。
FUNPICTYはある共通の言語で人々を元気にしたいというビジョンから始まった。その共通の言語とは「笑い」である。笑いは世界共通の癒しであると語るSODA代表取締役の本名 耕氏はオモシロ系(ギャグやネタ等)アプリを昨年リリースした際には大きな反響を呼び300万ダウンロードを達成したが、継続率は著しく低かったという。
そこで、このようなアプリでも継続して使ってもらえるプラットフォームを構築している。FUNPICTYはちょっと変わったアプリで、複数のカメラアプリをまたいで利用できるオモシロ写真のプラットフォームとなっている。
漫画風の写真、ホラー写真、ギャグの合成写真などを撮れる個々のアプリと連携し、それらで撮影された写真を1つのプラットフォームにまとめて、ギャラリー化を試みている。
現在はAndroidとデスクトップのみでの利用だが、累計ダウンロード数が500万、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は30万人の規模にまで成長しているそうだ。
現在は自社で提供しているカメラアプリからの投稿にのみ対応しているが、今後はSDKを提供し、サードパーティーのアプリからもFUNPICTYに写真を投稿できるようにする予定とのこと。
coromoはAndroid向けのサービスで、これを使うと簡単にホーム画面をカスタマイズ、切り替えることができる。ホーム画面をカスタマイズすると言えば、CocoPPaが最近では人気だが、coromoは少し違ったアプローチをしている。
先に収益源について述べると、イベントやブランドなどのオリジナルテーマによる集客や販促、ブランディングといったB向けの側面、デザイナーによるテーマの販売といったC向けの2つの側面がある。
coromoはテーマをアプリ内からダウンロードして利用することはもちろんできるのだが、カードに端末をかざしたり、QRコードを読み取ってテーマをインストールすることもできるのだ。だから、例えばサッカーの試合のチケットにあるQRコードを読み込んでリアルタイムに情報が流れてくるサッカー専用のテーマをすぐにインストールすることなんかも出来るようだ。
すでに11月末から開催される東京モーターショーでの導入が決まっているそうで、そのテーマでは常時情報を配信し、メーカーのブースへの誘導や、テーマ内に広告を挿入する予定なんだとか。
また、外部のデザイナー達がテーマを作りやすいようにcoromoはHTML5でテーマを作成しているという。こうすることで、開発の負担が減りより多くのテーマが提供されることだろう。
クミタスは食物アレルギーを持つ人のためのECサービスである。食物アレルギーを持つ人が家庭内に居る世帯は14.2%にもなり、小中学校などでアレルギーのため、食べれないものを省いてもらう除去給食者は7%もいるという。
食物アレルギーを持っていると食品を選ぶ際に成分などをチェックするわけだが、その情報量は少ないとウィルモアの石川麻由氏は語る。例えば、ハム1つを取ってもその中に卵が含まれていることもあるそうで、そういった情報は記載されていないこともあり、ネットで購入の判断がつかずに困っている人が多いという。
そこでクミタスでは1年をかけて構築した食品データベース(現在約4万点)を基に、サービス内で「〇〇を含まない△△」といった検索を可能にしている。検索結果には該当商品が販売されているオンラインショップが表示され、ユーザーはそのショップで実際に買物をする。
マネタイズ方法としてはECサイトのアフィリエイトや、データの販売、レシピやレストランの情報を含めた有料会員機能を予定している。
クミタスは本日ブラウザ版がリリースされ、年内にはアプリでも提供される。
Pairyは名前から想像できるかもしれないが、カップル向けのアプリだ。このカテゴリーにはBetweenやhugg、Pairなどが存在している。
Timers代表取締役高橋 才将
によると友人同士の繋がりを重視するFacebookなどの場合は近況の共有がベースとなっているが、恋人同士では思い出の共有が大事なんだとか。カップルの本質は「思い出の共有」であり、デートなどで思い出を作って、それを振り返るというのが関係を深めることになるという。
Pariy内には2人だけのニュースフィードがあり、そこに思い出が蓄積されていく。カップル向けだから、写真には付き合ってから何日目に撮ったのか表示されたり、デートの回数が記録されたりする。
また、デート機能もあり、見たい映画や行きたいレストランなんかを登録しておいて、そこでデートの日にちなどを決めることもできるようだ。
昨年6月にリリースされてから、現在は12万のユーザーが利用しており、アプリ利用開始から30日後の継続率は46%だという。他に面白いデータとしては行きたいスポットが登録されたのは約5万箇所で、そのうち20%は実際にユーザーが訪れているんだとか。
高橋氏によるとフジテレビとPairyが連動して恋愛バラエティ番組も放映される予定とのこと。
掲載される作品は全て2,000文字以内という短篇小説よりもさらに短い小説だけを集めたレーベルがnanovelである。「2,000文字以内、5分程度で読めるが面白い」小説だけを取り扱うという。
GADGET代表取締役の浅見敬氏は以前、映画のプロデューサーをしており、その時の体験がnanovelの起源となっている。プロデューサー時代に10分間で人を泣かせることができる作品を考える企画があったそうだ。浅見氏の企画自体は映像化されることはなかったのだが、一緒に仕事をしていた、他のプロデューサーが企画終了後も諦めずに考えたシナリオを映像化した。
その作品がアカデミー短篇アニメ賞を初めて受賞した邦画「つみきのいえ」だったという。この作品には浅見氏は関わってはいなかったが、これで短篇でも人の心を動かせることがわかり、nanovelの発想に至ったわけである。
また、日本には昔から短歌や俳句といった短い作品の文化がある。だから、日本人は短いけど面白い作品を書くことは得意なのではないかと考えている。
nanovelにはプロの脚本家や放送作家、コピーライターなど50人が参加しており、クオリティーの高い作品が揃っているという。ユーザーは彼らの作品を月に16本まで無料で読むことができる。
今後はバックナンバーの有料販売や個別に有料作品などを提供予定だ。