現代のインターネット事情を語るとき、まず1番に頭をよぎるのはGoogleの圧倒的な市場シェアである。
最新のレポートによると、Googleは世界の検索市場の
87%近くを、Chromeは世界のブラウザ市場の
67%以上を占め、
全世界で26.5億人のユーザーを擁している。そのため、オンラインツールを開発するスタートアップは誰もが何らかの形でGoogleのパートナーであると考えなければならない。しかしGoogleがこのように市場を支配しているということは、ブラウザの優位性を活かして規制を好きなように変更できてしまうということでもある。
実際、Googleは過去10年間にわたり、オンラインスタートアップに対する一定の制限をChrome上に織り込んできた。数年前からGoogleは「単一目的の拡張機能」ポリシーを施行し、拡張機能を一焦点やブラウザ機能に限定するよう求めている。
近年、Googleはユーザーのセキュリティとプライバシーを向上させることを目的としたChrome拡張機能を構築するための新しい仕様であるManifest V3の計画を発表した。原則的にChromeウェブストアは、2022年1月以降従来のManifest V2ガイドラインで構築された新拡張機能を受け付けなくなり、またその翌年までにManifest V3の規制に準拠していない既存のプログラムはすべて停止されることになる。
これにより多くのスタートアップは生死を分けるシナリオに直面することになる。時間とリソースを費やして自社製品をManifest V3に適応させるか、あるいはChrome内で完全に存在しなくなるかのどちらかを迫られるということだ。実際、他の企業と同様にこの問題に直面しているのが、私の雇用主であるGhosteryである。
こういった課題に落胆している人々も多いかもしれないが、実際のところGoogleはこの障害がこの分野の個々のプレイヤーにどのような影響を与えるのか、真摯に耳を傾けてくれている。開発者らの見識を集めるため、ロールアウトのスケジュールを延長さえしてくれているのだ。スタートアップはこの延期期間を最大限に活用して、自社の移行に関する具体的な課題を伝えておくべきである。
Chromeの今回のアップデートは、オンラインでイノベーションを起こしているスタートアップが、いつ何時、不意打ちを受けてもおかしくないということを示す一例であり、これらのポリシーを常に把握し、このような細かな変更に対応できる適切なエンジニアを配置するためのリソースを常に確保する必要があるというリマインダーでもある。
何であれ、コアビジネスをインターネット上で行うというのは、自社のことを広く認知してもらうことができ、簡単にインストールでき、熱心なユーザーにアクセスできるなどの紛れもない利点がある。Googleのような大手企業がスタートアップと協力して、すべての関係者にとって最適なソリューションを見つけようとしているならば(実際にそうしているように感じられる)、このようなオープンなコミュニケーションチャネルを利用して、自社の製品をアピールできるか否かは中小企業次第なのではないだろうか。
ネットワークを活用する
幸いなことに、変化し続けるインターネットの世界でスタートアップが一社で立ち向かう必要はない。あらゆる企業が同じエコシステムの中で活動しているため、サポートやアドバイスを得るために関連企業の広大なネットワークを利用することが可能だ。オンライン分野のスタートアップは、自分たちの課題内で孤独に戦うのではなく、エコシステム内のすべての企業に影響を与える絶え間ない変化において団結すべきなのである。
例えば私たちはManifest V3に対応するため、ウェブ拡張のW3Cグループに参加した。このコミュニティで当社のユースケースを共有し、影響を受けた他の企業と協力することにより、最新のガイドラインに合わせて当社の技術を調整することができる。リソースを共有して共同作業を行うことで、適応プロセスの早い段階でトラブルシューティングを行うことができるのである。
同じようなグループを探したり、創業者やビジネスリーダーのネットワークに直接相談したりして製品や一般的なビジネスの方向性を決めるため、このような過渡期にはスタートアップコミュニティに寄り添うべきなのである。
さまざまな方法で適応できるようになる
オンラインでイノベーションを起こしているスタートアップ企業は、ヒーロー製品に適応するためのリソースを積極的に配分するだけでなく、製品のロードマップを常に見直し、提供する製品を多様化するためのユニークな機会を模索する必要がある。
インターネットの歴史において変化のない年はなく、安定しているのは、エコシステムの中で人々は常にカスタマイズのオプションを望んでいるということだけである。鋭敏なスタートアップはeコマースツールからパスワード保護システム、プライバシースイートなど、最新かつ最高のソリューションを提供する準備を整えている。
企業によっては、Chrome以外の製品開発にも時間を割き、FirefoxやSafariなどの代替ブラウザが提供する機能を研究する必要があるかもしれない。大手企業はブラウザのカスタマイズに関する独自のポリシーを持っているため、スタートアップはまったく新しいユーザー層に門戸を開き、異なるシステムに対応した独自の機能を構築することができるのである。
モバイル分野に進出し、オンライン上の革新的な技術をiOSやAndroidでどのように利用できるか試すこともできるだろう。最終的にはインブラウザからモバイルアプリケーションまで、私たちのオンライン生活を網羅する製品範囲を持つことで、企業はオンライン世界の絶え間ない変化に対応できるようになる。最初から多角化をビジネスプランの一部にしておけば、このようなレジリエンシーの構築はずっと簡単になる。
常に変化することを受け入れる
オンラインツールやプログラムを開発しているスタートアップは政策の変更、規制の変更、市場の要求などの課題に常に直面しているが、ビッグテックとのコラボレーションを恐れずに適応可能な製品戦略を追求する企業は、消費者に最高の製品と体験を提供するための道を歩み続けることができるだろう。
自社のミッションを堅持し、かつ途中でアプローチを変更することを厭わないということが、将来にわたってイノベーションを成功させることにつながるのである。
編集部注:本稿の執筆者Pete Knowlton(ピート・ノウルトン)氏は、デジタルプライバシー企業Ghosteryの運用およびコミュニティのシニアディレクター。
画像クレジット:alengo / Getty Images
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(文:Pete Knowlton、翻訳:Dragonfly)