最優秀賞はAI事業のアラヤ、KDDI∞Laboのデモデイに7社のスタートアップが登壇

KDDIが2011年から運営してきた、スタートアップ界隈ではお馴染みのアクセラレータプログラム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」。3月26日には「MUGENLABO DAY 2019」として生まれ変わったデモデイが開催され、7社の採択チームがピッチを行ったほか、新企画として大企業×スタートアップのリアルマッチングイベントなどが実施された。

スタートアップのピッチではAIを活用した事業を展開するアラヤが最優秀賞、オーガニック農作物のマーケットプレイス「食べチョク」を運営するビビッドガーデンがオーディエンス賞を獲得。本稿では両社を含め、プレゼンテーションを披露した7社を紹介する。

アラヤ : 深層学習・機械学習のアルゴリズムを応用したシステム

アラヤはディープラーニングを含む機械学習アルゴリズムを応用した事業を展開しているAIスタートアップ。現在は「(ディープラーニングの)産業界への応用」「エッジデバイス開発」「デバイス自立化開発」という3つを軸としている。

KDDIとは特にエッジデバイス開発とデバイス自立化開発の領域でプロジェクトを進めてきたそう。前者についてはアラヤのコア技術である「ディープラーニングを圧縮する技術」を活用して、スマホから誰でもVTuberになれるアプリケーションを開発。通常だと動きがカクカクしてしまうような所も、リアルタイムでスムーズに動作する点が特徴だ。

また後者のデバイス自立化開発についてはドローンの自律飛行システムを手がける。こちらは高い所から俯瞰ドローンが不審者を探し、その情報を巡回ドローンに伝えて追跡するというもの。この仕組みを実現するにはドローンがリアルタイムで画像認識できる必要があるが、ここでも演算量を圧縮するコア技術が活かされているという。

アラヤとしては最終的にいろいろなデバイスにディープラーニングが入り込み、デバイス自らが人間のように考えて行動していくような未来に向けて、研究開発に取り組んでいるようだ。

Momo : IoTの敷居を下げる汎用プラットフォーム「Palette IoT」

Momoが開発する「Palette IoT」は、IoTを民主化するようなプラットフォームだ。専門知識がなくとも、開発費や時間を抑えながら簡単にIoTシステムを構築できるのが特徴。これまでIoTを始めたいと思ったユーザーが直面していた「何から始めたらいいのかわからない」「どこに頼めばいいのかわからない」などの課題を解決する。

具体的には自社でセンサーと通信機器を開発。センサーを通信に繋いでデータを解析し、可視化する行程までを一気通貫でサポートする。「量産まで含めて」1社でカバーしている点がウリだ。

実際にJAと共同で農業用のシステムに取り組んだ際には、1ヶ月でソリューションの開発に成功。コストに関しても、これまでJAが使っていたIoTシステムを10分の1の価格で置き換えられる目処が立ったという。

JAとはセンサーから取得したデータを活用して保険や融資関連のサービスまで手を広げていく計画。進行中のプロジェクトは20を超えていて、KDDIとは国際物流領域で事業を進めている。

TAAS : タダで機密文書を処理できる「e-Pod Digital」

e-Pod Digital」は企業内の機密文書をタダで処理できるサービスだ。機密回収ボックス自体にデジタルサイネージを2枚内蔵させることで“広告メディア”に変え、従来はコストのかかっていた機密文書の処理を無料化する。

TAAS代表取締役の大越隆行氏によると、社員2000名を超える規模の大手上場会社ではこの作業で月間36万円、年間で432万円のコストが発生しているそう。e-Pod Digitalではこのコストをなくすだけでなく、ボックスに社内で共有したい情報を自由に流せるモニターを設置して「捨てる場所だった機密回収ボックスを、人が集まる空間に変える」ことを目指している。

複数企業と連携しているが、直近ではブランディングやマーケティング面において電通と、広告の空き枠へのデジタルコンテンツの配給などにおいてアマノと協力。2ヶ月間で121社から申込みがあったそうで、この1年で利用企業を1000社まで拡大するのが目標だ。

ビビッドガーデン : オーガニック農作物の販売所「食べチョク」

TechCrunchでも何度か紹介している「食べチョク」は、オーガニック農作物のマーケットプレイスだ。

従来の流通方法では「多くの中間業者が存在することで粗利が低くなる」「価格が一律で決まってしまうため、農作物をこだわって作ってもそれが価格に一切反映されない」といった点が農家にとって悩みのタネになっていた。食べチョクでは農家と消費者を直接つなぐことで、農家が自分で料金決定できる仕組みを提供する。

ユーザーとしても、オンライン上で集荷場を介さずに農家と直接繋がることができるため、鮮度の高い野菜を手頃な価格で購入できるのがメリットだ。

サービスローンチから1年半で300以上の農家が登録。∞ Laboではこの農家データベースを活用して大丸松坂屋との連携、企業内でのマルシェの連携、ライブコマース「CHECK」との連携を進めてきた。

同社では消費者向け以外にもサービスを拡大していて、昨年11月には飲食店向けの「食べチョクPro」もスタートしている。

ヤマップ : 登山者向けの地図アプリ「YAMAP」

YAMAP」はその名の通り、山登り用の地図アプリを軸にした登山コミュニティサービスだ。携帯電波が届かない山の中でもスマホから現在地がわかるのが特徴。現在は登山のほかスキーや釣りなどアウトドア全般で利用が広がっていて、アプリのダウンロード数は120万件を超える。

KDDIとは安全登山の推進を目指して2つの取り組みを実施した。1つ目は「KDDI IoT通信サービス LPWA」を活用した登山者の見守りサービス。LPWAがカバーするエリア内であれば、山の中にいても家族や友人に位置情報をリアルタイムに共有できるというものだ。

2つ目はKDDI、ウェザーニュース、御殿場市と共同で取り組むドローンを使った山岳救助サービス。こちらについては昨年10月に富士山で実証実験を実施済みで、今年の夏から運用がスタートできるように進めているという。

なおヤマップについては同社が昨年4月に12億円の資金調達を実施した際にも詳しく紹介している。

Telexistence : 遠隔地にいるロボットを直感的に操作できる技術

Telexistenceはテレイグジスタンス(遠隔存在)技術を用いて、人間の身体能力や存在感を拡張するロボットを開発しているスタートアップだ。

具体的には利用者がVRのヘッドマウンドゴーグルや体をトラックするモーションセンサーをつけると、インターネットで繋がっている遠隔地のロボットを直感的に、かつほぼリアルタイムで操作できるというもの。視覚や聴覚に加えて触覚までフィードバックされる点が面白いポイントだ。

同社ではこの技術を「遠距離で移動コストが高い分野」と「労働集約的で不定形な作業を代替する分野」から展開する計画。前者は旅行や宇宙空間での単純作業などが該当し、昨夏にはKDDI、JTBと共同で小笠原諸島の遠隔旅行体験イベントを実施している。

また後者に関しては「コンビニでものを陳列する作業」など、ものを掴む労働作業が典型例。ロボットの手の関節の動きや位置情報、触感の情報を正確に収集して機械学習にかけることで、人の動きをロボットに教えこみ自動化するという。

Telexistenceについても昨年11月の資金調達時に紹介しているので、気になる方はこちらもチェックしてみて欲しい。

Synamon : VRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」

Synamonが開発する「NEUTRANS BIZ」は会議などビジネスシーンで使えるVRコミュニケーションサービスだ。

VR空間の中でアバターを介して対話をする仕組みになっていて、3Dデータを共有したり過去の体験を持ち込んだりといった形で、リアルを超えた体験を実現できるのが特徴。同社代表取締役の武樋恒氏いわく「対面の会議やテレビ会議などをなくすものではなく、VRでしかできないコミュニケーションを実現することで新しい価値を提供することが目標」だ。

KDDIを含むのべ29社327名から実際に体験した感想を集めたところ、9割以上の人からポジティブな反応があったそう。協議を重ねた結果、グループインタビューや社内研修、コワーキングスペースなどでも使いたいという声があがり、新しい取り組みもスタートしている。

なおピッチ内でKDDIや三井不動産が展開するファンドから出資を受けたことを発表。こちらについては別記事で詳しく紹介している。

KDDI∞Labo第11期デモデイ開催――ハイテク聴診器のAMIが優勝

KDDIが手がけるスタートアップ・エンジニア向けアクセラレータプログラム「KDDI∞Labo」。通算第11期を数えるこのプログラムのデモデイが、5月18日に開催された。

本デモデイでは、第11期プログラムに採択された4チーム、第10期から継続して活動中の4チーム、そしてKDDIが全国で展開するピッチ大会「KDDI MeetUP!」から選抜された3チームの合計11社がプレゼンテーションを行った。その様子をお伝えしよう。

第11期チーム
1.AMI

AMI代表の小川晋平氏

AMIが開発する医療デバイスの「超聴診器」は、従来の聴診器に自動診断アシスト機能などを加えたハイスペック聴診器だ。AMI代表の小川晋平氏は「200年前にフランスで開発された聴診器は、その後ほとんど進歩していない」と話す。

超聴診器の特徴は大きく3つある。1つ目は、音の解析に心筋活動電位の発生タイミングと聴診音を合成して精度の高い解析を可能にした”自動診断アシスト機能”。震災地などでの利用も可能なように小型化された”携帯性”。そして、遠隔地の医師も接触を感知できる機能などを追加した”遠隔医療への対応”だ。

2.TeNKYU

TeNKYU代表の管英規氏

TeNKYUは、インターネットから得た情報をユーザーに光で伝える電球型IoTデバイス。本体には人感センサーとカラーLED、WiFiが搭載され、ユーザーがデバイスに近づくだけで欲しい情報を教えてくれる。例えば、玄関などに置いておき、その日の天気を自動で知ることなどが可能だ。

TeNKYUが伝える情報はアプリで切り替え可能。天気だけでなく、花粉量、気温、その日のラッキカラーなどの情報が用意されている。TeNKYU代表の管英規氏は「誰もがTeNKYUのアプリを作れるような環境を整える」と話し、今後はサードパーティーが利用できるアプリストアを展開するとした。プラットフォーム型デバイスとなることを目指す。

3.VRize

VRize代表の正田英之氏

VRスタートアップのVRizeが展開するサービスは2つある。

1つ目が、高機能・マルチデバイス対応のVR動画アプリを洗練されたUI/UXで製作できるCMSサービスの「VRize Video」だ。同サービスの特徴は、Oculus、Steam、PlayStation VRなどすべてのVRプラットフォームに対応している点だ。VRize代表の正田英之氏は「VR動画製作にかかるほとんどの工程を自動化しているため、時間と費用をそれぞれ10分の1にまで削減可能」と話す。

2つ目のサービスは、VRアプリ内に広告を挿入できるアドネットワークの「VRize Ad」だ。本サービスでは、例えば、仮想現実に置かれた大画面のテレビに既存のCMを流したりすることができる。また、正田氏は「この技術はVRだけでなくARにも活用可能だ」と主張する。

VRizeは2017年6月から代理店販売を開始。同年12月からはグローバル展開を始めるとしている。

4.WATCHA

WATCHAのイ・ジュオク氏

韓国発のスタートアップが手がける「WATCHA」は、人工知能による動画リコメンドサービスだ。ユーザーがつけた1〜5段階のレーティング、そして映画のあらすじから抽出したタグを分析することにより、ユーザーの好みにあった作品をオススメしてくれる。

同社はプレゼンテーションの中で、「WATCHAの強みは独自のパーソナライズ・レコメンド技術」だと話し、平均二乗誤差(RMSE, Root Mean Squared Error)を測定基準とすると、「あの世界最高の動画ストリーミング企業であるN社よりも高い精度を誇る」と主張している。まあ、N社はおそらくNetflixを指しているんだろう。

韓国発のWATCHAはすでに本国で260万人のユーザを獲得。それらのユーザーから既に3億件の映画評価データを集め、2015年9月から正式サービスを開始した日本でも約800万件のデータを収集済みだという。

同社は今後、映画から書籍や音楽へとレコメンドの領域を拡大し、グローバル展開を目指すとしている。

10期継続チーム

1. アクセルスペース

アクセルスペースのプレゼンテーター

アクセルスペースが展開する「AxelGlobe」は、小型衛生を利用した衛星画像データサービスだ。地球の軌道上に打ち出された50機の小型衛星が、世界中を毎日観測する。そのため、顧客から撮影リクエストを受けることなく、画像データやそれに基づく分析データを提供可能だ。

アクセルスペースはすでに他企業との実証実験を開始している。その例として、三井物産との実証実験では衛星画像データから駐車場建設の候補地を選定したり、その周辺環境から駐車場の料金設定を行うなどしている。

2.XSHELL

XSHELL代表の瀬戸山七海氏

XSHELLが手がける「isaax」は、LinuxベースのIoTデバイス開発を簡易化するためのIoT SaaSだ。開発、検証、そしてローンチ後のアップデートを3ステップで完結することができる。

XSHELL代表の瀬戸山七海氏は、「isaaxを利用したロボットアームがドイツの展示会に出展した際、バグが発生した。しかし、isaaxの遠隔アップデート機能を利用することで日本からバグを即座に修正することができた」と語る。

XSHELLはTechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトル参加企業。TechCrunch Japanでは以前にもisaaxを取り上げたことがあるので、そちらの記事も参考にしていただきたい。

3.笑農和

笑農和代表の下村豪徳氏

笑農和が展開する「paditch」は、水田で課題といわれる水管理をITを活用して簡易化するスマート水田サービスだ。同社はプログラム期間中にIoT水門デバイス「PaditchGate 01」を開発。これにより、田植え後の水管理をスマートフォンを通して遠隔から行うことができる。水位や時間などでの開閉指示も可能だ。

同社はJA三井リースと共同で、農家専用リースを活用したデバイス販売も開始している。これにより、デバイスに動産保険が適用されたり、収穫期の一括払いに対応するなどしている。

4.MAMORIO

MAMORIO代表の増木大己氏

MAMORIO」は財布などの貴重品に取り付けて使用する紛失防止IoTデバイス。縦35.5mm、横19mm、厚さ3.4mmの超小型デバイスだ。

事前にペアリングしたスマートフォンと、MAMORIOを取り付けた財布などの貴重品が一定距離以上離れると、スマートフォンに通知が送られる仕組みだ。万が一、貴重品を紛失してしまった場合も、それがある場所を地図で確認することができる。

MAMORIOの最大の特徴が「クラウドトラッキング」と呼ばれる機能。これは、MAMORIOを利用する他のユーザーが紛失物の近くを通ったとき、その所有者に場所を通知するという機能だ。

同社はこれまでに、au損保と共同で年1000円の損害保険の提供を開始。また、他のアプリにMAMORIOの機能を追加できる開発ツール「MAMORIO SDK」の提供を開始している。

MeetUp!選抜チーム

本デモデイでは、アクセラレータプログラム参加企業の他にも、KDDI MeetUp!から選抜された3チームがプレゼンを発表した。

1.KidsCodeClub:子供が遊びながら学べるSTEAM教育プラットフォームの開発

2.Warrantee:スマホなどの保証書を電子化し、一括管理ができるアプリの開発

3.Portable:水産業者間の水産物マーケットプレイスの提供

以上の計11社がプレゼンテーションを行った結果、「超聴診器」のAMIがKDDI∞Labo賞を獲得した。また、聴衆が選ぶオーディエンス賞は保証書電子管理のWarranteeが獲得した。

現在、「KDDI∞Labo」アクセラーレータプログラムは第12期プログラムの参加企業を募集中だ。応募は同プログラムのエントリーページから行うことが可能。募集期間は一次募集が2017年5月18日〜6月20日まで。それ以降も、プログラムに途中参加する企業を通年で募集している。

第12期の活動テーマは、IoT、BIGDATA、ドローン、AR/VR、ヘルスケアの5分野だという。

ちなみに、第12期プログラムの実施期間は2017年8月〜2018年7月末の約1年間を予定していて、これまでは3ヶ月間だったプログラム期間が延長されている。その理由は、KDDI∞Laboは今後、単なるインキュベーションプログラムではなく、パートナー企業との実証実験なども含めた「事業共創プラットフォーム」を目指しており、それには従来の3ヶ月間という期間では足りないという判断がされたそう。

実際、第11期プログラム期間中には11件の実証実験と、同じく11件の事業連携が生まれている。

KDDI 代表取締役執行役員副社長の髙橋誠氏

XSHELL、及びTelexistenceへの出資を発表

KDDIは本デモデイのなかで、同社のCVCであるKDDI Open Innovation Fundを通してプログラム参加中のXSHELLへ出資することを発表した。アクセラレータプログラムの期間中に同社が参加チームに出資するのはこれが初めてだ。金額などの詳細は明らかにされていない。

また、KDDIはロボティクスおよびクラウド・データサービスを開発・販売するTelexistenceへの出資も同時に発表している。Telexistenceは、遠隔地にあるロボットを、自分の分身のように扱う”テレイグジスタンス技術”を活用したロボティクス開発ベンチャーだ。

「インキュベーションからアクセラレーションへ」KDDIが今後の支援プログラムを説明

2月22日に開催されたKDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」第9期のデモデイ。最優秀賞はIoTスタートアップの「uusia」、オーディエンス賞はIoTけん玉の「電玉」が選ばれた。ここでは次回、第10期に関する内容をお伝えしたい。

第10期の募集は本日2月22日から3月22日まで(エントリーページ)。募集対象は「社会にインパクトを与える、または世の中の課題を解決するITサービス」。条件の詳細はエントリーページを確認頂きたい。第9期に続き、サービスを軸にしたオリジナルプログラムとIoTを軸にしたハードウェアプログラムを用意する。なお採用予定数を超えた場合には早期に募集を締め切る可能性があるという。3月1日以降は東京で相談会も開催。遠方のスタートアップに向けてはSkypeでの面談も予定する。

KDDI代表取締役執行役員専務 バリュー事業本部長の高橋誠氏いわく、∞ Laboはこれから「インキュベーションからアクセラレーション」を目指すのだそう。これまで外部公表前のアイデアに限定して応募者を募っていたが、今後は採択条件を拡大。すでにサービス・プロダクトを公表している企業やチームを含めて幅広く募集を行うという。「これまではサービスリリースがゴールだったがそれを再設定する。今後は事業成長がゴール」(高橋氏)

KDDIの支援範囲

KDDIの支援範囲

第7期以降進めてきた外部企業との連携施策「パートナー連合プログラム」も拡大。これまでのテレビ朝日に加えてNHKメディアテクノロジー、日本テレビ放送網、TBSホールディングス、フジテレビジョンなど在京テレビ局を始め、合計31社(KDDI含む)が参加する。

パートナーの拡大の背景にはスタートアップのニーズの変化があるようだ。KDDIが実施したヒアリング結果を見ると、2014年にはプロダクトや経営に対するアドバイスを求める声が大きかったのに対して、2016年になると事業パートナーや出資者との接触ニーズが高まっているという。

ひと昔前の∞ LaboはBtoCのサービスが中心だった。そうなるとau スマートパスなりKDDIのサービスといかに繋がるかということを期待するスタートアップも多かったという。だが今ではBtoBtoC、BtoBのサービスも増えてきた。直接的な集客以上の連携が求められるわけだ。さらにパートナー企業も、これまであったような「新規事業部門がスタートアップとの連携を目指す」という動きから「既存事業部門もスタートアップとの連携を目指す」と変化してきているのだという。

パートナー連合プログラム

パートナー連合プログラム

KDDI ∞ Labo第9期デモデイ、最優秀賞はアート共有IoT製品を開発するuusiaに

KDDI ∞ Labo 9期メンバー

KDDIが2011年から足かけ5年続けているインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」。2月22日には第9期のデモデイが開催され、参加チームがプレゼンテーションを披露した。今回はオリジナルプログラムとしてサービスを提供するスタートアップ4社、新設のハードウェアプログラムとしてIoTスタートアップ2社が登壇。最優秀賞チームには、イラストや写真の売買プラットフォームや連動するIoT製品を提供する「uusia」(CAMELORS)が選ばれた。また会場の投票によるオーディエンス賞には、IoTけん玉を提供する電玉が選ばれた。いずれもハードウェアプログラムの採択企業だった。2社を含む登壇スタートアップは以下の通り(カッコ内は社名、プレゼン順に紹介)。

HRDatabankHRDatabank
新興国の求職者と先進国の求人企業をマッチングするダイレクトリクルーティングプラットフォーム。ハングリーで学生時代から実務経験があり、さらに外国語も話せるという新興国の若者をプラットフォーム上で検索(24種の絞り込みフィルターで1億パターンを検索できるのだそう)、マッチングした人材とテキストチャットやビデオ通話で面接を行うことができる。検索は無料。月額8万円にチャット機能で課金をする。当初はエンジニア人材に限定してサービスを提供する。2016年中に英語版をリリース。2017年からは職種も拡大していく

AppMotor(Revode)
エンジニアの課題をリアルタイムに解決する、プログラミング共有・コミュニケーションプラットフォーム。AppMotor上でコードを書き(サービスはブラウザで動く)、URLを共有すれば、入力した文字などをリアルタイムで同期。音声や動画による通話を通じて、バグに悩むエンジニアと、それを解決できるエンジニアを支援する。本日よりクローズドベータをスタートしている。

VIC(AG
動画に埋め込まれた情報をクリックすることで引き出す技術を提供する。これによって、動画の再生中に表示された商品をタッチするだけで買い物かごに入れたり、詳細なスペック(アパレルであればサイズなど)を表示したりできる。すでにパルコの「MEETCALストア」で導入されているので、具体的なサービスはまずこちらで体験して欲しい。今後は映画やドラマ、料理番組、旅番組など幅広い用途を検討する。

Buildyクロードテック
ショップのスマートフォンアプリを「たった3分」で作成できるサービス。利用は無料で、アプリ作成と同時にスマホサイトも作成できる。作成したアプリでは、ニュース配信やクーポン機能、ショップと顧客のコミュニケーション機能などを提供。現在は美容院、アパレル、飲食店で導入を進めている。本日ベータ版をリリース。今後はポイントのほか、予約や決済機能などを提供していく。

uusia(CAMELORS)
アート作品を手軽に楽しめる、売買できるサービス(プラットフォーム)と、そのプラットフォームと連携するIoT製品「uusia pitcure」を提供する。uusia pitcureは電子ペーパーを使った額縁。スマートフォンで操作して、気分に合わせたアート作品を表示できる。電子ペーパーのため30日以上電池が持ち、電源が切れても表示が消えない。額縁も自由に設定できる。3月末にベータ版サービスを開始。5月にも米国のクラウドファンディングサービスでuusia pitcureをリリースする。

電玉(電玉)
現在国内300万人のユーザーがいるというけん玉。そのけん玉をIoT化したのが電玉だ。電玉は内部にセンシング、通信、アクチュエーターを備えたけん玉で、プレーヤー同士で技を決めて対戦をして遊ぶ。大技を決めると相手に振動が伝わり「攻撃」ができる。もちろん対戦だけでなく、1人でも遊べる。専用アプリで自身のスキルやステータスを見ながら練習を積み重ねることが可能だ。けん玉市場は20億円、これに体感ゲームの127億円市場を狙う。2月29日にクラウドファンディングサービス「makuake」でプロジェクトをローンチ。今後はB2Cに加えて、ダーツバーや遊技機施設など、B2B2C市場も狙っていく。

足の写真から最適な靴を提案する「シンデレラシューズ」、KDDI ∞ labo第8期の最優秀賞に

mugen-labo

KDDIが手がけるインキュベーションプログラム「KDDI ∞ labo」。2015年3月〜6月に開催された第8期となるプログラムも終了し、7月14日にその成果発表会が開催された。最優秀チームとなったのは、足の写真を送るとそのデータを計測、自分にピッタリなサイズの靴をECサイトから探せる「シンデレラシューズ」(本日、1000人に限定してサービスをローンチ)を手がけるシンデレラだった。発表会でのプレゼンテーションをもとに参加者が投票する「オーディエンス賞」にもシンデレラが選ばれた。

KDDI ∞ laboは2011年から続くインキュベーションプログラム。第8期に採択されたチームはシンデレラシューズのほか、照明をヒントにしたIoTデバイスを手がける「LYNCUE(リンキュー)」、美容室予約サービスの「Oshareca(オシャレカ)」、IoTで養蜂業を支援する「Bee Sensing」ものづくりに関するハウツー動画を集めた「PU」の5チーム。サービスの概要は以下の通り。なお8期メンバー採択時の記事はこちら

OSHARECA「Oshareca」

いつも通う美容師に対してヘアケアなどの相談ができるコミュニケーションアプリ。相談した記録が蓄積されることで、ユーザー独自のヘアカルテになる。クローズドベータ版を同日リリースした。

Bee Sensing「Bee Sensing」

3万匹の中に1匹しかいない女王蜂の体調管理をはじめとして、実は重労働が伴う養蜂業。その養蜂のための巣箱にセンサーを付けることで、スマホでの蜂の健康管理を行う。データは遠隔地で閲覧できるほか、緊急時にはアラートを出すことが可能。さらにユーザーには、どこで取れた蜂蜜であるかを伝える、つまりトレーサビリティを確保できる。チーム代表の松原秀樹氏はIMBの出身。市場規模180万円の養蜂業をDisruptすべく2015年に起業した。現在クラウドファンディングサービス「READYFOR?」にてプロジェクトを掲載中だ。

SUPERSTUDIO「PU

ものづくりのハウツーを動画で学習できるサービス。サイトは本日オープンした。ただ動画で学習するだけでなく、同社では都内数カ所の倉庫でものづくりに関するリアルイベントを企画。今後は自らが作成した商品の売買ができるECプラットフォームも展開する予定。

TEAM LYNCUE「LYNCUE

照明を軸にしたIoTデバイス。照明にプロジェクターとカメラを組み込んでおり、
スイッチ1つで電源がつき、遠隔地に置いたLYNCUEのビデオやプロジェクターが起動。リアルタイムに映像を共有する。現在クラウドファンディングサービス「MAKUAKE」にもプロジェクトを掲載する。

シンデレラ代表の松本久美氏

シンデレラ代表の松本久美氏

シンデレラ「シンデレラシューズ

靴を買うときに相談できる専門家はシューフィッターや靴職人などがいるが、フィッティングとプライスが相反するのが靴の業界。それを画像解析によって最適化するのがこのサービス。本日先着1000人限定でサービスを提供開始した。具体的には足の写真を上から、横からの2枚、左右で計4枚撮影してサイトにアップロード。すると画像認識の結果と靴のデータベースによるマッチングを実施。ユーザー向けに診断書を発行するほか、シンデレラシューズのサイト上でさまざまな靴を「ピッタリ度」をとともに紹介する。

大企業連携、地方連携も強化

∞ laboでは第7期以降、KDDI以外の大手企業が採択チームへの支援を行う「パートナー連合プログラム」を展開。第8期では15社がプログラムに採択された各チームを支援した。

例えばOsharecaはクレディセゾンがガード会社へのリサーチで支援する、シンデレラシューズは三井不動産が足データの測定で支援するといった具合だ。第9期では、新たにグーグル、住友不動産、三菱UFJニコスがプログラムに参加する。「同業、異業の枠を超えてスタートアップを支援していく」(KDDI代表取締役執行役員専務の高橋誠氏)

地方と連携する「MeetUP!プログラム」

地方と連携する「MeetUP!プログラム」

また第8期から実施している地方創生の取り組みを強化する。第8期より実施している大阪市との連携に加えて、石巻市や広島県、福岡市と連携。各地スタートアップ向けに地方ピッチやDemoDayへの参加を促す「MeetUP!プログラム」を展開する。

6カ月の「ハードウェアプログラム」も開催

さらにハードウェアに特化したプログラムも実施。通常のプログラムは3カ月だが、こちらのプログラムは6カ月。応募条件としては試作品が外部公表前のプロダクトに限定されるが、事業化計画の支援から専門家によるメンタリングや講義の開催、さらに開発環境やツールを提供することで、クラウドファンディングによる試作から量産化の支援、販路の提供やビジネスマッチングまでをサポートする。

ハードウェアプログラムについて

ハードウェアプログラムについて

プログラムでは、ザクティやソフトフロント、ユカイ工学などのハードウェア企業やIoTコンサルタント、スマートデバイスメーカー社長などの専門家が支援を行う。「IoTはたくさん取り組んでいるが本当にマネタイズする仕組みが必要。持続的に回らないと『はやりワード』で終わってしまう。何とか支援していきたい」(高橋氏)。第9期の募集は本日から8月17日まで。応募および条件の詳細ついては∞ laboのサイトにて。

KDDI ∞ Labo第8期メンバーお披露目、IoT関連スタートアップは2チーム

KDDIが2011年から続けているインキュベーションプログラム「KDDI ∞ labo」。その第8期プログラムの採択チームが発表された。

通信キャリア発のインキュベーションプログラムとして、これまでも多くのスタートアップを輩出してきたこのプログラム(直近にあった第7期のデモデイの様子はこちら)だが、KDDI新規ビジネス推進本部 KDDI ∞ Labo長の江幡智広氏によると、今回は応募数で前期比2倍、しかもIoT応募は全体の約1割に拡大(以前は1〜2%だったそう)。平均年齢は30.4歳、女性代表の応募は全体の5%(前期と同率)だという。

また、これまでの応募傾向を振り返ると、3期ころまでは特化型SNSなどのソーシャル要素の強いサービスやツール系のサービスが中心だったが、その後4〜6期はジャンルが多様化。BtoBのサービスも増えてきた。そして最近ではIoT領域が増加している。

今回選ばれたチームは以下の5つ。

シンデレラシューズ
「バーチャルなシューフィッター」を目指すサービス。ウェブサイトで足のサイズ、形といった情報をアップロード。足と靴の情報を解析して、サイズだけにとどまらない「ぴったりの靴」を選び出す。欲しい靴は各ECサイトから直接購入できる。三井不動産がサポートを担当。

LYNCUE(リンキュー)
「照明」を世界中どこにいても同じ体験や空間を共有するためのプロダクトとして定義。ペアリングした端末(カメラとプロジェクタを備えた照明機器)を使って、遠隔地とのコミュニケーションを行う。日立製作所がサポートを担当。

Oshareca(オシャレカ)
美容室の予約サービスを開発する。こう聞くとありきたりに聞こえるが、実は現在のネット予約は、新規顧客の集客に特化しているものがほとんどなのだそう。Osharecaでは、既存客に特化した予約サービスを提供する。クレディセゾンがサポートを担当。

Bee Sensing
代表の松原秀樹氏はIBMで営業を経験したのち、養蜂業で起業した人物。蜂の巣箱にIoTを導入して巣箱を管理。養蜂業の効率化を進める。凸版印刷がサポートを担当。

PICK UP!
DIYにまつわるハウツー動画を企画・制作する動画メディア。テレビ朝日がサポートを担当。

∞ Laboでは第7期から「パートナー連合プログラム」と称して、企業が採択チームの支援を行う取り組みを進めている。今日江幡氏に聞いたところだと、パートナー企業は採択チームの選考からコミットしているそうだ。ただ前回の第7期のメンバーにしても、小さい規模での連携は進んでいるが、大規模な事例についてはこれからとのこと。


KDDI ∞ Labo第7期の最優秀賞は医療機関向けソーシャル基盤の「Dr.JOY」に

第7期のメンバーら。一番左がKDDIの高橋誠氏、左から5人目がDr.JOYの石松宏章氏

KDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」。1月27日には第7期のデモデイ「KDDI ∞ Labo 7th DemoDay」が開催され、参加5チームによるプレゼンと最優秀チームの発表が行われた。

花屋が手がける花のオーダーサービス「Sakaseru(サカセル)」

プレゼンのトップバッターを務めたのは「Sakaseru(サカセル)」を手がけるgoalだ。goal代表取締役の西山祐介氏は花屋歴13年のキャリアを持つ人物。以前から「ただなんとなく」という気持ちで花をプレゼントするのはもったいないと考えていたそうで、それがSakaseru開発のきっかけになったのだそうだ。

Sakaseruでは、サービスに登録する約20人のフラワーデザイナーと直接チャットしながら好みの花をオーダーできる。都内であればスタッフが指定の場所、時間に届けてくれる。1月27日午後10時にサービスを公開。プレゼンでは料金について触れていなかったが、サイトを見てみると、8000円から5万円の予算でオーダーできるようだ。

見つけられなかった情報を見つける画像検索サービス「Ingram」

次に登場したのは独自開発の人工知能をベースにした画像検索エンジン「Ingram」。雑誌で見たオシャレなバッグ、あるいはテレビで芸能人が来ていたジャケットなどの写真をアプリで撮影すると、それに類似した商品の画像を表示してくれるという。

また単なる画像検索に留まらず、蓄積した情報をもとにして「黒い靴を買っている人が好む青色のジャケット」といった具合でリコメンドもできるそうだ。

アプリはまだ公開されておらずその精度は不明だが、どれだけ情報を蓄積して精度を高められるかが成否の分かれ目になる。サービスを開発するアドクオリティ代表取締役 CEOの松田総一氏によると、「人工知能の精度、賢さは学習データに比例する。データを逐一覚えさせるのは大変だが、Ingramではユーザーの使ったデータを蓄積し、その集合知を元に人工知能が自律学習をしてシステムにフィードバックする」のだそうだ。

ARを使った次世代スポーツを提唱する「HADO(ハドー)」

3番目に登場したのはmeleapの「HADO(ハドー)」。スマートフォンを挿入してモニターとして使うヘッドマウントディスプレイと、スマートウォッチのモーションセンサーを活用したARゲームだ。実際に体を動かして攻撃を繰り出し、モニター内に表示されたクリスタルを壊していく3対3のチーム競技となっており、meleap代表取締役CEOの福田浩士氏は「単なるゲームで終わらせず、『テクノスポーツ』という名の新たなスポーツジャンルとして普及させたい」と語る。2020年には東京オリンピックと同時開催でテクノスポーツ五輪の開催を目指す、のだとか。以下はイメージ動画。

VR、AR関連の技術はFacebookのOculus VR買収やMicrosoftのHoloLens、Googleなどが5億4000万ドルを投資して話題となったMagic Leapの参入で注目を集める領域だ。

なお会場で流れた動画のクオリティが非常に高かったのだが、こちらはメンターであるテレビ朝日が制作に協力したとのこと。テレビ朝日ではサービスと連動する番組の制作も検討中とのことで、続報を楽しみにしたい。

完全無料で出版業界のブログを目指す「∞books(ムゲンブックス)」

続くプレゼンターは「∞books」の佐田幸宏氏。佐田氏は、プリントオンデマンドで一冊から書籍を作れるサービス「MyISBN」の開発者。MyISBNではリリースから1年半で250タイトルを出版したそう。コアでニッチなコンテンツの需要を実感するも、技術的、心理的なハードルの高さゆえ出版の機会がまだまだ損なわれていると感じ、∞booksを立ち上げた。

∞booksでは、ブラウザ上でテキストを作成し、レイアウトをするというブログ感覚での出版が可能。もちろん紙の本だけでなく、電子書籍も作成可能。作成した電子書籍はAmazon Kindle ダイレクト・パブリッシング、紙の本はAmazon.co.jpで販売できる。ISBN(国際標準図書番号)が付与されるため、全国の書店で注文し購入することも可能。サービスは2月下旬にリリースする予定。

医療機関専用ソーシャルプラットフォームで医療の効率化を目指す「Dr.JOY」

最後のプレゼンは医師、そして患者の家族向けのコミュニケーションプラットフォームである「Dr.JOY(ドクタージョイ)」を手がけるDr.JOY。代表取締役であり現役の医師でもある石松宏章氏は、自身の経験から「医師が診療以外の事務作業やスケジュール管理などの雑務に忙殺されている」という現状を憂い、業務フローの改善を目的としたDr.JOYの開発に着手した。

Dr.JOYは院内タイムライン、院内カレンダー、院内タスク管理、院内チャットといった機能を提供し、医療業務の効率化を図る。また医療スタッフ間のみならず、患者やその家族に向けての情報共有機能も提供する。3カ月間に及ぶ試験運用を終えており、医師の反響も好評とのこと。すでに東京医科大学、東京女子医科大学、旭川医科大学で導入が内定していて、私達がその恩恵に預かる日は意外と近いかも知れない。ベータ版のiPhoneアプリは1月27日にリリースされている。Dr.JOYは第7期プログラムの最優秀賞、ならびにDemoDay参加者の投票によるオーディエンス賞の両方を受賞した。

第8期は地方連携がキーワードに

∞ Laboの第7期はデモデイをもって終了となるが、すでに第8期のメンバー募集が始まっている。

KDDI代表取締役執行役員専務で新規事業統括本部長の高橋誠氏によると、第7期からスタートした、企業メンターである「パートナー連合プログラム」にクレディセゾンと日立製作所が参画。総勢15社の支援体制を作るという。高橋氏はクレディセゾンには決済系サービス、日立製作所にはIoT関連領域のサポートを期待したいと語る。

また第8期では「地方連携」を新たな取り組みとして開始。地方のスタートアップにもKDDI ∞ Laboのアセットを提供するほか、人材交流などを図る。第1弾として大阪市のグローバルイノベーション支援拠点「Osaka Innovation Hub」との提携を発表。今後もその範囲を拡大していくという。


KDDI ∞ Labo第6期最優秀賞はブラウザー間コンテンツ配信「MistCDN」

KDDIが2014年3月にスタートしたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(KDDI無限ラボ)」の第6期プログラムが終了した。7月14日には第6期参加チームが東京・ヒカリエでプレゼンを実施し、最優秀チームにはブラウザー間でコンテンツ交換を行うP2P型コンテンツ配信プラットフォーム「MistCDN」を運営するMist Technogiesが選ばれた。第6期プログラムは一般に公表されていないサービスアイデアを持つ5チームが参加し、KDDIが「独自性」「市場性」「完成度」の観点で最優秀チームを選定した。

アクセスが集中するほどパフォーマンスが向上

MistCDNはユーザーのPCにコンテンツをキャッシュし、同じコンテンツを視聴するユーザーのPC間でコンテンツを交換するコンテンツデリバリネットワーク(CDN)。アクセスが集中するほど配信元となるPCが増え、転送速度が向上する仕組み。PC間の通信は、Web標準技術の「WebRTC」を採用している。MistCDNを導入するウェブサービス運営者は、コードを数行挿入するだけで利用できる。

アカマイに代表される従来のCDNは、アクセスが集中するほどサービス品質が低下する傾向にあるが、「MistCDNはアクセス集中を味方にするのが強み」とMist Technologiesの田中晋太郎氏は話す。逆に言えば、アクセスが集中していない状況は従来のCDNに分があるとも言える。田中氏によれば、従来のCDNをディスラプト(破壊)するのではなく、お互いの強みをウェブサービス運営者が使い分けられる環境を提供したいのだという。

現在はHTML5コンテンツ配信やライブストリーミング配信を行っていて、14日には無料トライアルキャンペーンを開始した。正式サービスの時期や料金は未定だが、コスト面では従来のCDNと比べて平均60〜80%削減できるとしている。

子どもの日常のベストシーンを集めた成長シネマを自動作成できる「filme」

14日に行われたプレゼンでは、来場者の投票により決定する 「オーディエンス賞」も発表され、スマホで撮影した動画を選んでコメントを添えるだけで動画日記が作れるアプリ「filme(フィルミー)」を開発するコトコトが選ばれた。日々の動画が20日分たまると、その期間の成長を振り返れる「成長シネマ」を自動的に作成できるのが特徴。成長シネマは独自の動画編集エンジンにより、子どもの表情や動き、声を自動検出し、日々の動画の中からベストシーンを集める。

動画の保存容量に制限がある無料プランに加え、容量無制限で成長シネマを毎月1枚無料でDVD化できる有料プランを用意する。コトコトの門松信吾氏は「動画版のフォトブックのポジションを目指す」と言い、将来的にはDVDの送付先となる祖父母をターゲットとしたシニア市場や、動画編集技術を転用することで旅行を含めた「思い出市場」も視野に入れているという。8月に正式サービス開始予定で、14日には事前登録を開始した。

第6期プログラムのチームはこのほか、ユーザー投票や審査に通過したクリエイターのみが出店できるハンドメイドジュエリーのECサイト「QuaQua(クアクア)」を運営するダックリングス、独自のクローラーと女子大生キュレーターによって厳選した女性向け媒体の記事を配信する「macaron(マカロン)」を手がけるSPWTECH、ネイティブアプリのユーザー行動を動画として記録して解析するツール「Repro(レプロ)」を開発するReproが参加した。

第7期はセブン&アイやテレビ朝日などのパートナー企業が支援

第7期プログラムは、7月14日より参加チームの募集を開始した。第7期の特徴は「パートナー連合プログラム」として、セブン&アイ・ホールディングスやテレビ朝日など13社が参加すること。これによってスタートアップは、セブン&アイに流通チャネルとの連携をサポートしてもらうことなどが可能となる。

KDDI ∞ Laboのラボ長を務める江幡智広氏は、「各社のアセットをスタートアップに提供して新規事業創出のきっかけが作れれば」と話す。KDDI ∞ LaboのようなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は一般的に自社の事業との相乗効果を求めて運営されるが、江端氏は「すぐにシナジーは求めず、スタートアップの成長をひたすら願う」としている。

パートナー連合プログラムに参加する各社は、スタートアップとの協業を通じて新事業シーズの発掘、経営資源の活用やスピード感の不足を補うのが狙いだ。13社のうちセブン&アイ、テレビ朝日、三井物産、コクヨ、プラスの5社はメンタリング企業としてスタートアップをバックアップする。このほか、近畿日本ツーリスト、ソフトフロント、大日本印刷、東京急行電鉄、凸版印刷、パルコ、バンダイナムコゲームスがサポート企業として名を連ねている。

KDDIは14日、新たに約50億円規模の「KDDI新規事業育成2号ファンド」を設立することも発表している。


KDDI∞Labo第5期参加チーム5社を発表 – オークションアプリ、駐輪場貸借サービス等が採択

本日、KDDIが運営するインキュベーション事業である∞Laboの第5期採択チームが発表された。今回で5度目となるこのプログラムには毎回100社近い応募があり、その中から数社が選ばれる。

採択されたチームはKDDIが用意したオフィス・スペース(渋谷ヒカリエ内)や開発環境、デバイスの貸与、社内・社外メンターからのメンタリングなどを3カ月間受けられる。

それではKDDI∞Labo第5期参加チームを紹介しよう。

スマオク — ザワット株式会社

スマオクは女の子のためのブランド古着オークションアプリだ。最近ではFrilやメルカリといったフリマアプリが成長しているが、こちらはオークションのアプリになるようだ。

ターゲットとなるユーザー層は売り手が20代後半から30代前半、買い手が20代前半から20代後半としている。ユーザーはスマートフォンからオークションストアを簡単に開設でき、手軽に売りたい商品を出品できる。

このスマオクを運営するザワットはちょっとしたお願いごとなどを売買したり、仲間を募集するためのWishScopeを運営していることでも知られている。このサービスでCtoCのマーケットプレイスを運営するノウハウを培っているため、スマオクでも経験が活かされてくるのだろう。

Dr.Wallet — 株式会社Bear Tail(学生枠)

レシートを撮影して送るだけで、家計簿を作成してくれるサービスがDr.Walletだ。こちらのサービスについては本誌でもローンチ時に取り上げている

家計簿サービスは日本でもいくつか存在するが、このサービスが特徴的な点は全て人が入力している点だ。だからミスが少なく、99%以上の精度で家計簿が作成できているそうだ。ただ、人力で全てをデータ化することは非効率な面もある。そのため、∞Laboのプログラム期間中にレシートをOCR処理(自動の文字認識)できるようにして効率化を図るようだ。

その他、より経理申請用のCSVエクスポートなどの機能を加えた有料プランやレシートと連動するクーポン配信などの仕組みを構築することで収益化も考えている。

Bear Tail代表の黒崎賢一氏によると、家計簿をつけている人のうち半分程度はまだ家計簿ノートなど紙媒体で管理をしているそうで、これからはさらにデジタル化が進むだろうから、ニーズのある市場だとのこと。

なお、Dr.Walletは8月のローンチ以降、登録者は2万人ほどでDAU(デイリーアクティブユーザー)は25%ほどに成長している。

PEDALRest — チームPEDALRest

駅前やオフィス街に自転車を止めておいて撤去されてしまった経験のある方はいるだろう(ちなみにこの日、KDDIの会見場にいた記者たちの約3割が経験ありと挙手していた)。駐輪場があれば良いのだが、特に都内では止めるスペースが少なく、移動手段として自転車を選択することは好ましくない場合が多い。

PEDALRest代表の中島大氏は自身がそのような経験をよくしたことから、この問題を解決するために遊休スペースを転用し、駐輪場として貸すためのサービスを開発している。

仕組みはシンプルで余っているスペースを持っている人達がその場所を駐輪場として提供する。自転車利用者はオフィスなどの目的地を入力すると、その付近で提供されているスペースを選びそこに自転車を止める。中島氏によると駐車場などの端に自動販売機などがよく置かれているように、遊休スペースは多く存在するのだとか。

PEDALRestは最初は東京を中心に展開し、徐々に対応エリアを拡大していく予定だ。

アオイゼミ — 株式会社葵

アオイゼミは「ゼミ」という名前からわかるように学習系で教室をWeb上に再現しようというサービスだ。すでにサービスは提供されており、月曜日から木曜日にライブストリーミングで授業を行っている。

中学生を対象にしたこの授業ではリアルタイムにユーザー(生徒)がコメントを残し、コミュニケーションを取ることができる。また、このコメントは他のユーザーにも見えるため、互いに競争意識が湧いたり、わかりにくい点などの共有ができるといったメリットがある。

葵代表の石井貴基氏によると、このコメントでの交流により授業がより楽しいと感じてもらえているそうだ。しかし、現在は授業中のみしかユーザー同士のコミュニケーションの場を提供できていない。この点を解決すべく、∞Laboのプログラム期間内によりコミュニケーションを活性化させ、学習が楽しく継続するように学習SNSをサービス内に構築するという。

なお、リアルタイムでの授業は全て無料だが、収録した分の授業を見るためには有料会員になる必要がある。

ズカンドットコム — 株式会社ズカンドットコム

Wikipediaが世界中の皆で作り上げる百科事典であるのと同様に、ズカンドットコムはあらゆる分野の図鑑を構築しようとするサービスだ。

Wikipediaは文字ベースで様々な情報が網羅されているが、ズカンドットコムは画像ベースで図鑑を作る。ユーザーは自分が撮影した写真を投稿し、写真はテーマごとに分類される。

ズカンドットコム代表の山出潤一郎氏はスマートフォンで高品質な写真が撮れるようになり生き物や食べ物、風景といった写真が多くアップロードされているが、そのアップロード先はユーザー個々のFacebookやFlickrアルバムになっている。これらの写真をテーマごとに分類して収集できればネット図鑑ができるのではないかという。

図鑑にニーズがあるのか疑問に思う方がいるかもしれないが、現在すでに公開されている魚図鑑は月に100万PVを稼ぐまでに成長しているそうだ。

また、ユーザーへのインセンティブも用意されており、将来的には図鑑内の画像を第三者が有料で利用できるようにして、使用料の70%をユーザーに還元する予定だという。一般的な画像マーケットに比べてズカンドットコムはテーマに合った写真を見つけることができるだろうと山出氏は語る。

以上がKDDI∞Labo第5期に採択された5チームだ。これから各チームは∞Laboのプログラムを受け、3カ月後のデモデーでプロダクトを発表する。


KDDI∞Labo 4th Demo Day 100社から選ばれた全5社を紹介

 

本日、渋谷ヒカリエにて、KDDIが運営するインキュベーションであるKDDI∞Laboの4th Demo Dayが開催された。∞Laboの第4期は今年3月末からプログラムを開始し、各々のサービスを作り上げてきた。今期からは新たにHTML5の特徴を活かしたサービスを支援するための「HTML5枠」設けている。

それでは、100社以上の応募の中から選ばれたKDDI∞Labo第4期採択チーム5社をご紹介しよう。

リディラバ — TRAPRO(学生枠):ソーシャルアントレプレナー賞

社会問題は常に存在する。ホームレス、少子化、地球温暖化など様々な問題が身の回りにはあるはずだ。しかし、これらの問題が解決されることは少ない。なぜ解決されないのかというと、「問題が可視化されておらず、身近に感じることができないからだ。」とリディラバ代表の安倍敏樹氏はいう。

そこで、TRAPROは問題だと感じたことをユーザーが投稿し、それに関連する「スタディツアー」と呼ばれる社会問題が発生している現場へ行き、見学するためのサービスを提供する。ツアーに行ったユーザーは感想や現場の写真などをTRAPROへ投稿し、次のツアーに繋げていく。

TRAPROはこうして問題を身近に感じさせることだけではなく、問題解決までを目標としていて、ツアーからの売上のうち70パーセントを現場へ還元することで資金を送りこんでいる。

すでにTRAPROは利用可能で、いくつものツアーが成立している。

ヒトクセ — Smart Canvas(HTML5枠):ベストエンジニア賞

スマートフォンが一般化し、市場が大きくなるにつれ、アプリ開発者は増えてきた。プログラミングは無料のWebサービスを使ったり、勉強会に行けば習得できるようになっているから、アプリをリリースするまでの障壁は低くなったように感じる。

しかし、Smart Canvasはそれでもプログラミングは障壁が高いと感じ、もっと簡単にアプリを作れるようにした。こうしたサービスはすでにいくつか存在するし、∞Labo第1期の採択チームであるReargeもAndoridアプリを簡単に開発できるサービスを提供している。だが、Smart Canvasが特徴的なのはHTML5にこだわっている点だ。

HTML5のCanvas機能を活用し、多様なデバイスで利用可能な(Web)アプリを数分で作ることができる。画像やテキスト、アニメーションを設定できる他、if(もし◯したら△)、for(繰り返し)といった簡単なロジックも組める。

Smart Canvasで公開されたアプリには広告が挿入され、ここからの売上はアプリ作成者とSmart Canvasで分け合うことになっている。

現在はβ版として提供されており、9月中旬に正式版をリリース予定だ。なお、サンプルのアプリはこちらから確認できる。

ライフイズテック — mygrow:Create the Future賞

ライフイズテックは中高生向けのITキャンプを開催しているスタートアップで、開催回数を重ねるごとに参加者は倍々的に増えている。今年開催されたキャンプには総勢1,100名が参加したそうだ。

このキャンプを運営してきた経験などから、同社代表取締役社長の水野雄介氏は「学ぶことで一番難しいのは継続」であると感じたことからmygrowを開発したという。

mygrowは一緒に学ぶ仲間を作り、仲間と励まし合い、学んだ記録を残しながら個人の成長を手助けする。例えば、プログラミングを頑張っている人ならば、その様子や学んだことをmygrow内に記録する。その記録に対して仲間や友達が励ましのアクションを行う。

学習記録を残し、共有するという点ではミクシィから7,200万円を調達したクラウドスタディが運営するStudyplusに似ている。

水野氏によると、頑張ったことに対しての褒めてもらえ、それが記録として残り、さらに一緒に頑張る仲間が居ることが学びの継続にとって重要なのだそうだ。

mygrowはiOSアプリで提供される予定で、今年秋以降にリリースされる。

Euno–Kawaii Museum:Japanese pop culture賞

Tokyo Otaku Modeのように日本のポップカルチャーを紹介するFacebookページを運用し、現在390万いいね!を獲得しているのがKawaii Museum JPNだ。これまではFacebookページ上で”Kawaii”写真などを中心に投稿し、人気を得てきたが、独自のサービス「Kawaii Museum」を開始した。

Facebookでは写真を見るだけで、趣味の合う友達を見つけたり、そこでコミュニケーションを取ることが難しかった。そのため、新たにキャラクターコンテンツに特化したソーシャルサービスを作ったとEuno代表取締役社長の田中丈登氏はいう。

このサービスではキャラクターごとにコンテンツを閲覧・共有したり、そのコンテンツを連携しているECサイトで購入する機能などが備わっている。

6月21日のリリース後、約1カ月でユーザー数は3万人とのこと。とにかく、”Kawaii”キャラクター好きな人々が満足できる場所を今後も作り上げていくそうだ。

we-b — Class:Cool デザイン賞

名前の通り、Classは学生時代のクラスを体験するサービスだ。社会人になると、仕事で会う人は多くても、仲良くなる友達との出会いは学生時代に比べると減ってしまう人が多いという(ファウンダーの2人はサービスのアイデアを出している時に、自分たちに友達が居ないことに気付き、同サービスを思いついたそうだ)。

we-b代表取締役社長の真子就有氏はこの悩みを解決すべく、簡単にクラスを体験するためのClassを開発した。サービスに登録し、生年月日などの基本情報を入力すると居住地が近く、同い年のユーザーが集められたクラスが作られる。

このクラスにはバーチャルの担任の先生が付き、話題の提供をしてくれる。1日目は新学期の始まりと題して自己紹介から始まり、2日目は朝の挨拶やランチ時間に食べたものの写真をアップロードするなどしてコミュニケーションを取る。このようにして、ネット上ではあるが、学生時代のような感覚を味わえるSNSとなっている。

クラスは2週間限定で、最終日には卒業しなければいけないのだが、Classの目標は「リアルで仲の良い友達を作る」なので、この期間の間に気が合う友達を見つけてもらいたちとのこと。

テストユーザーの中には実際に皆で飲み会に行くこともあるそうで、クラスの全員が同い年という点が他のSNSとの差別化になっているようだ。

Classは9月初旬にまずはiOSアプリをリリース予定。

なお、Classは会場のオーディエンスがリアルタイムにお気に入りのサービスに投票し、No.1を決める「オーディエンス賞」にも選ばれている。

以上がKDDI∞Labo第4期採択チームだ。

今期を含め、これで19社が∞Laboのプログラムを卒業したことになるが、その内訳を見ると第1期のソーシャルランチ、giftee、animetalk、Qlippyを始め、スキコレ、Close、LogTown他、今期の5社中4社がソーシャル系のサービスであるのは興味深い。

今後もそのようなサービスを中心に採択するかは不明だが、第5期に興味のある方は一度採択チームをチェックしてみると良いだろう。∞Labo第5期の募集はすでに開始されており、応募期間は8月14日までとなっている。


オンタイム学習プラットフォームのマナボがサイバーエージェント・ベンチャーズなどから3,800万円の資金を調達

主に中高生を対象としたオンタイム学習プラットフォームmana.boを運営するマナボがサイバーエージェント・ベンチャーズ(以下、CAV)などから3,800万円の資金調達を実施した。mana.boは昨年、KDDI∞Laboの第3期採択チームとしてインキュベーション・プログラムに参加、Infinity Ventures Summit 2012 FallのLaunch Padに出場したため、すでにご存知の方も多いかもしれない。

このサービスは生徒がわからない問題に直面した際に「いま聞けて、すぐに理解る」ことを目指している学習プラットフォームである。マナボのCEO三橋克二氏は予備校で7年間ほど講師を務めていたそうだが、その時に生徒から数式や図の写真がメールで送られてきて、答えを教えて欲しいと頼まれることが多かったそうだ。だが、英語などの科目は電話やメールで回答できるものの、数学や物理の問題は複雑な計算式、図を多く用いることがあり、解説が困難だったという。

mana.boでは講師がタブレット端末などを使い、画面に数式や図を書き込むと、生徒が保持している端末にもリアルタイムで反映され、上記のような問題を解決できるそうだ(記事下部にムービーを埋め込んでおいた)。

実際にデモを見せてもらったが、書き込んだ数字を認識する精度は高く、生徒・講師間でのタイムラグもあまり無くスムーズに講義が進められるように感じた。

生徒と講師がやり取りした共有画面はデジタルデータとして保存、エクスポートもできるため、復習も簡単だ。さらには、自分の復習用としてではなく、他のユーザーにも共有することで授業を使い回すことも可能となる。

収益化に関しては、mana.bo上で生徒と講師を集め、指導料の数十パーセントを手数料として取る他に、塾や予備校に導入してもらいアカウント数に応じて利用料金を徴収するそうだ。現在mana.boはクローズドβとして運用されているが、すでに「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」で有名なベネッセがトライアルを行っている。

一般公開に関してはプラットフォーム上に十分な講師を留保できた段階でするそうだ。

なお、今回マナボに出資したサイバーエージェント・ベンチャーズは子供向けアプリのキンダーパンを提供するファンタムスティックや、本誌でも取り上げたオンライン英会話のBest Teacherといった教育系スタートアップにも出資している。