NASAが月への荷物運搬業務の入札企業リストにSpace XやBlue Originを追加

NASAはCommercial Lunar Payload Services (商業月ペイロードサービス、CLPS)プログラムの契約の入札に参加できる企業のリストに新たに5社を追加した。リストには以前の選定プロセスで選ばれた9社がすでに掲載されていて、ここに今回SpaceX、Blue Origin、Ceres Robotics、Sierra Nevada Corporation 、Tyvak Nano-Satellite Systemsを加えた。これら企業はすべて、月面へペイロードを運ぶNASAの案件に応札できる。

これは基本的に、Astrobotic Technology、Deep Space Systems、Draper Laboratory、Firefly Aerospace、Intuitive Machines、Lockheed Martin Space、Masten Space Systems、Moon Express、OrbitBeyondに加わった5社がNASAのミッションで月着陸船を建造して飛ばせることを意味する。NASAとの契約を受注するためにリストにある企業は競うことになる。契約には、NASAのアルテミス計画を支援するためのリソースや物資の月への運搬が含まれる。アルテミス計画では2024年までに人間を月に送ることを主要目標に掲げている。

「ローバーやパワーソース、そしてNASAが月で水を探すのに使うVIPER (Volatiles Investigating Polar Exploration Rover)のような化学実験のためのもの」を含む重いペイロードの運搬を行える企業が選ばれている。こうした機材は宇宙飛行士が月面で暮らしたり働いたりしながら月面に永久的に存在できる環境を確立したり、月居住を現実のものにする主要研究のために使用される。

Blue OriginのBlue Moonランダーのコンセプト

NASAは、コストを抑制し、また計画をスピーディーに実行に移すために自前で行うのではなく、企業と契約することを選んだ。そしてこうした企業がトータルコストを下げるためにNASAの機材と共に商業ペイロードを同時に運搬することを期待している。企業は2028年11月までの契約総額が26億ドル(約2800億円)となるこの案件に入札し、NASAはコストやテクニカル面での実行能力、いつ実現できるかといった点に基づいて1社を選ぶ。

Blue Originの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は今年の国際宇宙会議で、エンド・ツー・エンドの着陸システムのためにDraperやLockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)と提携する、と発表している。一方のSpaceXは、アルテミス計画の2024年月着陸をサポートするため、次の宇宙船Starshipを早ければ2022年にも月に着陸させる目標を掲げている。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

毒針を持つアカエイにヒントを得た航空機が金星の大気を調べる

NASAの次の金星探査では、バッファロー大学(University of Buffalo、UB)が設計した、アカエイのように後尾に針のあるロボットが大気のサンプリングを行う。宇宙観測のための新しい革新的な設計コンセプトを追究しているNASAはその活動の一環として、ニューヨーク州立大学バッファロー校で航空宇宙機器の衝撃耐性を調べている研究所CRASH Lab(Crashworthinesss for Aerospace Structures and Hybrids laboratory)に、初期的な研究助成金を交付した。

そのアカエイの形をした宇宙船には、金星の上空の大気中の強風の中を飛べるための羽ばたく「翼」がある。UBによると、それによって飛行のコントロールが可能になり、効率的に飛行できる。その設計はBREEZEと呼ばれ、4日〜6日で金星を1周でき、2〜3日おきにその惑星の日照面にあるときには充電できる。

なお、金星は太陽のまわりを回る軌道が独特なため、その1日は地球の1年よりも長い。そこで探査用宇宙船は、他の自転周期の短い惑星の場合のように、推力を使って惑星の大気中に静止する設計にする必要がない(Wikipediaによると、金星の公転周期は224.7地球日、自転周期は243地球日)。

BREEZEが実際に金星の雲の中に出没するまでには、まだ長い時間がかかる。しかし、NASAから認められて補助金ももらったのだから大きな一歩前進だろう。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ボーイングのStarliner宇宙船の発射台緊急脱出テストが成功

NASAの商業乗員輸送計画のパートナーであるBoeing(ボーイング)は、CST-100 Starlinerに実際に宇宙飛行士を搭乗させるための、重要なマイルストーンを達成した。発射台からの緊急脱出装置のテストは、宇宙飛行士をStarlinerに搭乗させる前に設置しておく必要がある、NASAが要求する重要な安全システムだ。

Starlinerのデモミッションでは、実際の有人打ち上げ時にULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のAtlas Vロケットの上に、どのように設置するかをシミュレートすることから始まった。そして緊急脱出用のエンジンを点火すると、Starlinerとそのサービスモジュールはロケットから安全な距離まで飛行した。問題は3つあるパラシュートのうち2つしか展開されなかったことだが、NASAが定義する安全性設計はこのような可能性も範囲内として想定している。

このシステムの必要性は、ボーイングとNASAによって非常に「ありそうにもない」シナリオとして記述されているが、ボーイングとNASAは、ボーイングとSpaceX(スペースX)の新しい宇宙船における安全性を強調している。

宇宙船にはセンサーが設置されたテスト用のダミー人形が搭載されており、アクシデント時に緊急脱出装置によってStarlinerに搭乗した宇宙飛行士が、どのような衝撃を体験するのかについての、詳細なデータを両社に提供する。これは、第3のパラシュートが展開されなかった理由を調査することと同じく重要な情報である。

ボーイングは12月に、有人飛行の前段階として無人のStarlinerを初めてISS(国際宇宙ステーション)に打ち上げる予定だ。今後の予定は、テスト結果の調査にもとづいて決定される。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAとボーイングがStarliner宇宙船の発射台からの緊急脱出システムテストをライブ配信

NASAの商業乗員輸送プログラムに参加するBoeing(ボーイング)社は、早ければ来年にも米国の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へと輸送するために開発した新しい宇宙船「CST-100 Starliner」の重要なテストを、米国時間11月4日に実施する予定だ。

Starlinerは発射台からのアボート(緊急脱出)試験を実施予定で、打ち上げ前の万が一に備えて搭載したエンジンを使い、宇宙船をロケットから迅速に避難させるシステムを実証する。テストは米国東部標準時で午前9時(太平洋標準時で午前6時、日本時間午後11時)に開始され、テストのウィンドウ(実施予定時間)は3時間が設定されている。

予定では、ニューメキシコ州のホワイト・サンズ・ミサイル発射場の小型テスト発射台に設置されたStarlinerは、高度4500フィート(約1400m)に到達したのち、発射地点から約7000フィート(約2100m)離れた地点に着陸する。宇宙船のサービスモジュールとベース部分の熱シールドが宇宙船から分離し、カプセルはパラシュートで地上に降下し、エアバッグを展開して衝撃をさらに緩和する。下のアニメーションでは、テストの概要が確認できる。

このテストで重要なのは、完全に静止した状態から宇宙船がロケットを離れ、パラシュートを展開するのに十分な高度に到達する能力を実証することだ。NASAはBoeingとSpaceX(スペースX)に、宇宙飛行士が搭乗するミッションを開始する前に、発射台からの緊急脱出テストを成功させることを要求している。

民間乗員輸送計画のパートナーであるBoeingとSpaceXは、早ければ来年前半にも宇宙飛行士を搭乗させた宇宙船の打ち上げを予定している。NASAは2011年にスペースシャトル計画が終了して以来、宇宙飛行士の輸送をロシアのソユーズロケットに頼ってきたため、アメリカから打ち上げられるロケットで宇宙飛行士をISSに打ち上げる能力を再び得るために、両社と協力している。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹Twitter

SpaceXが有人宇宙船「クルードラゴン」のパラシュート試験に13回連続成功

SpaceXは、13回に渡るパラシュート試験に成功した。同社の宇宙船であるCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で利用予定の第3世代パラシュートシステムだ。直近のテストでSpaceXは、短く編集ビデオをTwitterで公開し、パラシュートの一つを意図的に作動させないシステムの実験を見せ、仮に部分的に不具合が起きた場合にも飛行士がが安全に着地できることを示した。

NASAの宇宙飛行士を乗せたCrew Dragonを打ち上げる計画のSpaceXにとってこれは大きな一歩だ。先月NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官はカリフォルニア州ホーソンのSpaceX本社を訪れ、SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOとこの商用クルー計画の進捗状況について話あった。その時Musk氏は、改善したMark 3パラシュートシステムのテストを最低10回成功させてから飛行士を乗せると話していた。

「宇宙飛行士を飛ばす前に、最低でも10回連続でテストに成功させるつもりだ」と当時Musk氏は話した。「パラシュートの動作が安定していることを10回のテストで確実にするためだ」

当時Musk氏は、年内に少なくとも10回テストする予定であることも言っていたので、13回という数字は十分計画を満たしており、これはMusk氏が概して楽観的な目標日程を設定するSpaceXにとって、予定より早い進捗という珍しい事態だと言える。

Crew Dragonに使われているこの第3世代のパラシュートは、ナイロンの代わりにザイロンを使用している。SRI(スタンフォード研究所)で開発されたポリマー材料で、パラシュートで使用する糸の強度をナイロンの約3倍にできる。SpaceXは縫製パターンも変更し、新しいパラシュートの負荷バランスを最適化している。

SpaceXの次のステップは打ち上げテストで早ければ今週水曜日にも行われる。地上で行われCrew Dragonの脱出用エンジンをテストする。その後は空中での脱出用エンジンテストを年内に実施することを期待しており、非常時に離陸後のFalcon 9ロケットからCrew Dragonが脱出するところを見せる。

NASAとSpaceXは両者とも、今後のテストが順調に行われれば来年早くに有人飛行が実施できると楽観的な見方をしている。

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国空軍の宇宙試験機「X-37B」が780日間の軌道滞在から帰還

米国空軍が運用する試験宇宙機X-37Bが軌道を離れ、NASAのケネディー宇宙センターに無事着陸した。SpaceXのロケットで打ち上げられてから2年以上を経ての帰還となった。

かつてはX-37B Orbital Test Vehicle(軌道試験機)と呼ばれた同機はこれが5回目のミッションだったが、何が行われていたのかはよくわからない。X-37Bの本質はそのミッションのほとんど秘密なので、この軌道小旅行で何が起きていたかの詳細を知ることは今後もないだろう。それでもこれが米国空軍の使用しているテクノロジーを誇示するものであり、中でも「高信頼性、再利用可能、無人宇宙試験プラットフォーム」の開発に役立てようとしていることはわかっている。

空軍の情報から、航空電子工学、誘導システム、熱遮蔽、推進システム、大気圏再突入システムなど一連のテストが行われていることがわかっている。さらに、機体の長さが約9メートルで、スペースシャトルの縮小版とも言えること、空軍から請け負ったボーイング社が作ったこともわかっている。そしてなにしろこれは空軍の話なので、この宇宙飛行機で行われるあらゆる実験が最終的に防衛ないしは軍事に使われることもわかっている。米国にとってそれは、宇宙が急速に新興都市となりつつあり、他の多くの国々が宇宙の防衛と軍事に予算を投入していることを踏まえると当然の行動だ。

X-37Bは、新記録となった780日間の飛行を終えしばらく地上に滞在したあと、2020年のいつか再びケープカナベラル空軍基地から飛び立つ予定だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAの火星探査車「Mars 2020」が6輪ホイールで初接地

NASAの火星探査車であるMars 2020は、地球から何億マイルも離れた過酷な環境の中で、自律的に活動しなければならない。現在はまだNASAのジェット推進研究所で開発中だが、どのマイルストーンも重要なものだ。そして今週、Mars 2020は完全に組み立てられ、自身の6輪のホイールで自重を支えながら接地した。

この接地テストは、原子力エンジンやホイールの移動能力、センサーアレイ、ナビゲーションシステムなど、探査車で進められている多くのテストのうちの1つだ。この6輪のロボット探査プラットフォームは、2020年7月に予定されている打ち上げの準備を進めており、火星探査機のCuriosityのミッションを引き継ぐために火星へとに送られる予定だ。

Curiosityは2011年に打ち上げられ、2012年8月に火星に着陸した。この探査機は2年間のミッション用に設計されていたが、2012年12月に無期限のミッション延長が決定された。そして着陸から7年たった今も、今年にはコンピューターを切り替えつつ稼働を続けている。

Mars 2020の探査車はCuriosityから多くのアップグレードが実施されているが、これは新しい探査車の開発チームによる、何年にも及ぶCuriosityの火星表面での経験の恩恵であることは想像に難くない。Mars 2020では環境に対する耐久性の向上などの改良が施されており、Curiosityを補完するさまざまな科学・研究装置も搭載される。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが月の南極の地表下で結氷水を探すVIPER探査車を2022年に打ち上げ

NASAは月に、黄金のように貴重な液体を探している。それは石油ではなく、ごく普通の水だ。水が恒久的にあれば我々にとっても必要だから、それを知ることはきわめて重要だ。そこでNASAは、VIPER(バイパー)と呼ばれる探査車を月の南極へ送り込もうとしている。それは1972年以来最も長期の月面ミッションになる。

VIPERは、Volatiles Investigating Polar Exploration Rover(揮発性物質調査用極地探検探査車)の頭字語で、計画では2022年12月に月面へタッチダウンする。そのミッションは、極地域の恒久的に影の部分に水の存在を直接目撃して、その量を求めること、だ。

月のその年中暗い部分は、何百万年もかけて氷結水を集めてきた。陽が当たらないので、溶けないし蒸発もしない。NASAはすでにこれまで、一般的な領域で探針を地表下に差し込み、結氷水の存在を確認したが調査としての精度は低い。ロボットを送って正確な測定をすべきだ。

VIPERはゴルフカートぐらいの大きさで、探査用の機器を積んでいる。その中のNeutron Spectrometer System(中性子スペクトル分析システム)が、地表下の水を見つける。それに関してはNASAのアドミニストレーターであるJim Bridenstine(ジム・ブリデンスティン)氏が昨日、少し言及している

関連記事:NASA Administrator Jim Bridenstine explains how startups can help with Artemis Moon missions(人間の月滞在事業にスタートアップも貢献できる、未訳)

VIPERが水の上に来ると、TRIDENT(The Regolith and Ice Drill for Exploring New Terrain、新たな地質構造を探求するための表土と氷用ドリル)が展開される。それは文字どおりTrident(三叉鉾)のようだが今週出会った最高の頭字語だ。そのドリルは長さが1mで、スペクトロメーター(分光器)が月の土壌を分析するための試料を掘り取る。

試料採掘とスペクトル分析を大面積にわたって行うと、地表下の水の所在を地図に落とし、大きなパターンを掴めるだろう。月の上の、人間が大好きな物質の存在をもっと体系的に理解できるかもしれない。

waterhunt

探査車VIPERがマップした月の表面下の結氷の視覚化

トップの画像でおわかりのように、この探査車は目下開発途上だ。まだ、その動き回る部分をテストしているにすぎない。それは探査車本体の一番肝心な部分だけど。

月の南極の陽が射さない部分でのミッションだから、ソーラーパネルなどはなく今回積む電池で100日しか仕事できない。しかしそれでも、米国が月面で過ごした日数の記録を更新する。最近の数年間で大量の探査車を月面の至るところに展開した中国の場合はどうだろうか。

おもしろいことに、この探査車の展開は外部契約プロジェクトであるCommercial Lunar Payload Services(月面商用荷重サービス)の一環だ。つまりこのペイロードサービスに参加するどこかの企業がたぶん、VIPERを軌道から月面へ着地させる着陸船を作るのだ。打ち上げが近くなれば、もっと詳しい記事を書けるだろう。

関連記事:NASA calls for more companies to join its commercial lunar lander program(商用月面着陸船に多くの企業の参加をNASAは求む、未訳)

画像クレジット: NASA

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アルテミス有人月飛行計画にはもっと多くのスタートアップを呼び込みたいとNASA長官が呼びかけ

世界の宇宙産業、宇宙機関、研究者が一堂に集まり宇宙技術と宇宙ビジネスについて話し合う国際宇宙会議が今週開かれたが、私はNASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスティン)長官に、NASAが意欲的に推進するアルテミス計画におけるスタートアップの役割をどう考えるかを尋ねた。アルテミス(ギリシャ神話に登場するアポロの双子の姉妹から命名した)計画とは、月に再び人類を送り(今回は滞在も予定している)、そこを拠点に火星などのさらに遠くの宇宙探査につなげようというものだ。

ブライデンスティン長官は、報道向けの質疑応答で、この質問に見事に答えてくれた。それによると、この計画では、大小さまざまなスタートアップによる貢献が非常に期待されており、若い宇宙企業が大きなインパクトを与える形で貢献できる分野が数多くあるという。

「企業には、大企業もあれば中小企業もありますが、知っておいて欲しいのは、この(ルナ)ゲートウェイで私たちが構築しているものはオープンアーキテクチャーであり、民間のパートナーと進めてゆきたいと考えていることです」とブライデンスティン長官。「そのため実際に、この国際宇宙会議には数多くの企業が参加しています。月に行くと公言している大企業です。彼らは持続性を求めており、アルテミス計画に加わりたいと考えています。ゲートウェイは、そんな企業に開放されています」。

NASAルナ・ゲートウェイの想像図。オライオン・カプセルがドックに接近しているところ

ルナ・ゲートウェイは、NASAが月の周回軌道に載せて、宇宙船の拠点にしようと計画している宇宙ステーションだ。物資をいったん月の軌道に集めておくことで、月面に下ろす作業を確実に、簡単にする重要なステップとなる。だがブライデンスティン長官は、NASAがアルテミス計画のために最初に提示した公募告示(BAA)では、ゲートウェイを利用せず、直接、月面に降りる民間企業の提案も歓迎していると指摘していた。

これまで月探査は、SpaceX(スペースエックス)のような潤沢な資金力と強固な基盤を持つニュースペース企業と呼ばれる一部の革新的企業が受け継いでいた。しかし、アルテミス計画が求める企業の役割は、地球から月の軌道まで移動できる宇宙船の建造のような膨大な資金を要する仕事に限らないとブライデンスティン長官は言う。

「月面に物資を届けておく必要があります」と彼は話す。アルテミス計画では2024年に人を月面着陸させる予定だが、そこで使用されるスペース・ローンチ・システム(SLS)とオライオン有人カプセルがミッションを確実に達成できるように、前もって物資を送り込んでおく必要があるという。「ゲートウェイで着陸船を準備する際にも、おそらくバイパー中性子分光計や赤外線分光計など、地表や氷や、月面上に何がどこに、どれくらいの量で存在するかを調査するためのハードウェアを月面に設置する際にも【中略】そうした科学機材を月に送り届けなければいけません」。

ブルー・オリジンのブルー・ムーン着陸船

実際、NASAが予定している2024年の月面有人着陸に先駆け、または同時期に月着陸船で物資を運び込む準備を進めている企業がある。Peregrine(ペレグリン)月着陸船を2021年に打ち上げる予定のAstrobotic(アストロボティック)と、Blue Moon(ブルー・ムーン)着陸船のBlue Origin(ブルー・オリジン)だ。どちらの着陸船も、そしてその着陸船が運ぶ物資も、月での人類の持続可能な活動を円滑化するために、スタートアップが開発した機材やシステムを利用する可能性がある。事実、ブライデンスティン長官は、計画中の機材の中には、高度なデータ収集ハードウェアよりもずっとワイルドなものがあると話していた。

「たぶん、これも予算によりますが、また今から2024年の間に実現できるとは確約できませんが、月面に空気で膨らむ住居を建て、そこを月面に降り立った宇宙飛行士たちの拠点とし、長期間の滞在を可能にするといったことも考えられます」と彼は言う。「実現可能な範囲なのかって?もちろんです」。

さらにブライデンスティン長官は、NASAがすでに数多くの小規模ながら革新的な企業と協力していること、そしてさらに多くのパートナーを探し続けたい旨を話していた。NASAから発注される月への物資輸送の需要は確実なものであり、発展性があり量も増えていくと長官は指摘していた。

「SLSとオライオンに加えて、さらなる可能性を私たちは必要としています。そこでは、あらゆる種類の民間事業者にチャンスがあります」と彼は言う。「また私たちは、NASAが関わるスモールビジネスへの投資や調査も行っており、常にスモールビジネスを支援しています。事実、私たちは商業月運搬サービス(CLPS)プログラムを進めています。契約した企業は現在9社。【中略】そのうち2社は、2021年に月に物資を輸送するという依頼に取り組んでいます。【中略】この9社に留まらず、さらなる企業を引き込みたいと考えています。もっと大規模な月着陸の可能性を提供してくれる大きな企業の参加も期待しています。なぜなら前にも述べましたが、月面への物資輸送の需要は今後さらに高まるからです」

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

NASA長官が人類は2035年までに火星に行けると発言、ただし予算が付けば

NASAのジム・ブライデンスタイン長官は米国時間10月21日月曜日に開始された年次国際宇宙会議で、複数の国際宇宙機関の代表者と共同で講演した。最後に講演者全員にある質問が投げかけられた。人類はいつ火星に行けるのか?

ESAのヨハン・ヴェルナー長官が(翌日の)「火曜日」と冗談を言ったあと、ブライデンスタイン長官は自身の信じる本気の答えでフォローした。誰もが政府の援助と必要なサポートが得られるという前提で、早ければ2035年に宇宙飛行士が火星に着陸することが可能だと語った。

「我々は月面着陸計画を加速しているのと同様、火星着陸も加速している。それが現状だ」とブライデンスタイン氏は語り、2024年までに初めて女性を月に送り、初めて米国人を火星に送るアルテミス計画の加速された時間軸に言及した。

「予算が十分にあれば」と、ブライデンスタイン氏は各国のNASAに相当する機関の仲間たちに向かって言った。「2035年までに実現できるだろう」。「目標は5年以内に月に着陸し、2028年までに持続可能にすること」と、ブライデンスタイン氏は代表者講演の後の記者会見で語り、持続可能とは「別の世界で長い期間居住して働ける」という意味だと付け加えた。

ブライデンスタイン氏の挙げた前提は、小さなことではない。NASAは、2024年までに月へ行く計画の議会小委員会の予算聴聞会で、強い懐疑心を持たれたばかりだからだ。2035年を目標とする火星計画の実現性に関するNASAの科学的および技術的評価によると同局は2015年時点ですでにこの時期を検討していた。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

日本がアルテミスプログラムに向け、NASAのLunar Gateway計画に参加

NHKによると、日本は月を周回する軌道上に宇宙基地を建設する、NASAのLunar Gateway(ルナ/ゲートウェイ)プロジェクトに参加することを正式に発表した。Lunar Gatewayは2024年までに初の米国人女性、そして米国人男性の宇宙飛行士を月面に着陸させることを目指す、NASAのアルテミス計画の重要な要素だ。

この発表は、安倍首相が出席した宇宙開発戦略本部の会議で確認された。日本がNASAの取り組みに参加すべきかどうかを検討するために設置された委員会の勧告を政府が受け入れた。

委員会はLunar GatewayでNASAと協力すれば、日本の利益になると判断した。その中には、宇宙を平和的なベンチャーや研究に関する国際協力の場にするという点で、技術リーダーとしての地位を高め日米関係を強化することも含まれる。

日本がどのようにLunar Gatewayへと参加するかについての詳細は、まだ明らかにされていない。日本の月面探査スタートアップのispaceはこのニュースを歓迎しており、今年発表したDraperとの提携により、何らかのかたちで貢献することを期待している。

「今後の月探査と日米関係を大きな期待とともに歓迎したい」と、ispaceの創設者兼CEOの袴田武史氏は電子メールで伝えている。「Draperとispaceとのパートナーシップは、商業レベルでの持続可能な月開発へと向けた、日米の取り組みを補完するものと確信している」。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

初となる女性だけの宇宙遊泳、NASAがライブ配信

NASAの宇宙飛行士のChristina H Koch(クリスティーナ・H・コーク)氏とJessica Meir(ジェシカ・メイア)氏は米国時間10月18日の朝から、史上初の女性だけによる宇宙遊泳を実施している。2人は国際宇宙ステーション(ISS)の故障した電源制御装置の修理を予定しており、現地時間午前6時30分(日本時間23時30分)からライブ配信が始まり、7時50分(日本時間0時50分)にISSのエアロックを離れる。

この歴史的なミッションは、当初の予定から7カ月後に実施される。当時、ISSには2人の女性のうちの1人が必要とする中サイズの宇宙服がなかったため、宇宙遊泳が実施できなかったのだ。Anne McClain(アン・マクレイン)宇宙飛行士は当時、koch宇宙飛行士と一緒に宇宙遊泳を行う予定だったが、McClain宇宙飛行士の任務は6月に終わった。McClain宇宙飛行士は大きなサイズの宇宙服も試みたが、動きの制限が大きすぎた。

NASAは10月に2つ目の中サイズの宇宙服を送って、同じ問題が二度と起こらないようにしたが、複数の男性宇宙飛行士による宇宙遊泳が可能なのに、女性にはできるなかったという差別への批判に直面した。しかし、NASAは宇宙服に関する差別に真摯な関心を持っていたようで、アルテミス計画のために設計された宇宙服は、あらゆる体型と大きさの宇宙飛行士に最大限の機動性を提供するように設計されていることを強調した。

女性だけによる宇宙遊泳という今回のミッションは、NASAだけでなく、人類の宇宙探査史上においても重要な一歩だ。このエキサイティングかつ重大なイベントは、YouTubeでのライブ配信で閲覧できる。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAアルテミス計画用の宇宙服は体格に関係なく月面歩行が楽になる

NASAは、Artemis(アルテミス)世代のミッションのための新しい宇宙服を公開した。アルテミス計画は、2024年までに最初の米国人女性と次の米国人男性を月面に送ることを目指している。この新しいデザインの最大の特徴は、基本的にあらゆる点における動きやすさと柔軟性にある。NASAは、月面での船外活動用のフルスーツと、月の軌道上を移動する際のフライトスーツの両方を披露した。

NASAのジム・ブライデンスタイン長官に導かれ、NASAは初めて宇宙飛行士が月面で使用する(この改良型が火星でも使用される)宇宙服のデモンストレーションを行った。xEMU変形型と呼ばれるこの宇宙服は、宇宙服と聞いてみんなが頭に思い浮かべるであろう形とそっくりそのままだ。しかし、アポロ計画で宇宙飛行士たちが月面を訪れたときに着ていたものとは、いろいろな面で大きく違っている。

これは本当のムーンウォークを可能にするものだ。月面活動のために作られた最初の宇宙服は体の動きの制約が大きく「ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面で基本的にカンガルージャンプで移動するしかなかった」というのはブライデンスタイン長官の言葉だ。この新しい宇宙服なら、より活動的に体を動かせる。普通に歩いたり、腕もさまざまに動かせる。新しいグローブでは指も自由に動かせるようになり、地面の石も比較的楽にを拾える。

「新しい宇宙服は、1パーセンタイル順位の女性から、99パーセンタイルの男性まで実質的に宇宙飛行士になりたいすべての人の体に合わせられるようにデザインされている」とNASA先進宇宙服エンジニアKristine Davis(クリスティン・デイビス)氏は話していた。彼女は米国時間10月15日に開催されたイベントのステージ上で、xEMU異形型を来てデモンストレーションを披露した。

「宇宙に行きたいという夢を持つすべての人が、こう言えるようにしたいのです。そう、みんなにチャンスがあるよってね」とブライデンスタイン長官は、この宇宙服のインクルーシブデザインに触れて、そう言い加えた。

NASAでは、再び月を訪れたときに、持続可能性を確認したいと考えている(実際に作業場を建設して滞在する計画を立てている)ため、宇宙服は北極と南極、さらには赤道付近の温度変化に対応できるように耐熱性能に大きな幅を持たせてある。このxEMUの場合、マイナス156.6度からプラス121.1度まで耐えられる。

NASAはまた、国際宇宙ステーション(ISS)で現在使われている宇宙服からも、大きく進歩していると話していた。ひとつには、この宇宙服には実際に使える脚が付いている。ISS用の宇宙服は、無重力や微小重力の環境で使用するために脚には保護の役割しかない。新しい宇宙風の腕の接続部分にはベアリング使われているため、前述のとおり手を伸ばしたり物を掴んだりと可動域がずっと大きくなっている。

もうひとつの宇宙服はOrion Crew Survival Suit(オライオン乗員救命スーツ)と呼ばれ、打ち上げと着陸のときに着用する軽量な宇宙服だ。通常の使用中は減圧されているが、事故による減圧が起きた際には体を守るように作られている。これをデモンストレーションしたのは、オライオン・スーツのプロジェクト・マネージャーであるDustin Gohmert(ダスティン・ゴーマート)氏だ。彼によると、xEMUほどで強力ではないが、熱と宇宙放射線を防御できるという。

大きなxEMUスーツは、アップグレードが可能なようにも作られている。ちょうどPCのマザーボードのように、新しい改良されたテクノロジーが使えるようになったとき、わざわざ地球に戻って作り直さなくても宇宙空間でアップグレードして使うことができる。

ブライデンスタイン長官は、今月の初めにNASAが発表したとおり、アルテミス計画用宇宙服の製造で民間のパートナーと提携していることを繰り返し伝えていた。また、それらの企業からは、この宇宙服に使われているテクノロジーの今後の発展やアップグレードをどうすべきかに関する助言やアイデアの提供も求めてゆくことを検討していると話していた。

全体としてブライデンスタイン長官は、商業化について、またNASAがアルテミス計画や宇宙全般で民間のパートナーの協力を求めていることについて、熱っぽく語っていた。

「これまでにNASAは、国際宇宙ステーションの補給の権限を民間企業に与えました。【中略】今は民間のクルーを受け入れています。来年の初めには、2011年にスペースシャトルが退役して以来初めて、米国人宇宙飛行士を、米国の土地から、米国製のロケットで打ち上げる予定です」と彼は言った。「これは我が国にとって、非常に建設的な進歩になりますが、それは民間企業によって行われます。【中略】そしてもちろん、地球の低軌道にたくさんの確固とした商業拠点が生まれることを期待しています。最終的に、私たちの活動を可能にしているものは、次に納税者から預かった資産を活用して、月を、火星を目指すことになりますが、そこでも常に商業化を見据えてゆきます。私たちの目標は、これまで以上に、人類の活動を宇宙に広げることにあります」。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

NASAが月面用新型宇宙服を開発、人体3Dスキャンでジャストフィット、HDカメラ搭載で高速通信も可能に

次に月面に足を下ろす米国人は、まったく新しい宇宙服を着て行くことになる。それは1970年代に最後に月面を歩いたオリジナルのアポロスーツをベースにしながらも、大幅に改良されたものだ。簡単に装着でき、楽に動けて、コミュニケーション能力も向上する。体が自由に動かせない制約の大きかった過去のものとは雲泥の差があるが、それでも家の中を着て歩けるような代物ではない。

Exploration Extravehicular Mobility Unit(xEMU、探査船外活動移動ユニット)と呼ばれるこの新型宇宙服は、まだ開発初期段階だが仕様はほぼ固まっている。すでに水中でのテストが行われ、2023年には軌道上でテストされる予定だ。

一からまったく新しいものを作る代わりに、NASAのエンジニアは、従来の実績あるデザインで苦痛だった部分(文字どおり本当に痛いところも含め)を改良する方式を採用した。そのため、外見は私たちがよく知っている、宇宙飛行士たちが月面を飛び跳ねていたときのあの宇宙服によく似ている。元のデザインなら、高真空と宇宙放射線から体を守ることが比較的簡単だからだ。

NASAでは、宇宙服は「過酷な環境からの保護と、地球とその大気がもたらす基本的な資源のすべてを模倣するパーソナルな宇宙船」だと言われている。そのために必要な空間しか確保されていない。

しかし、昔からほとんど変わらない部分もあるものの、大きく改良される部分もある。最初にして最大の改良点は、安全性とミッションの目的を両立させるための、動きやすさが大幅に改良される。

NASAの新しい改良型xEMU宇宙服の図解

上図の左上から左下へ、高速データ通信、HDビデオと照明、情報ディスプレイと制御装置、統合コミュニケーション(スヌーピーキャップは廃止)、自動スーツ点検、強化された上半身の可動性、環境保護下着(EPG)防塵機能付き、歩きやすい。右上から右下へ、29647.5から56537パスカルの気圧変動に対応、緊急帰還1時間、真空再生二酸化炭素除去システム、薄膜蒸発冷却、モジュレーター/ORU PLSSデザイン、後方脱着。xEMUは、月面を歩く最初の女性、そして第二の男性が着用する宇宙服です。新世代のテクノロジーと能力がこの宇宙服に投入され、新宇宙での宇宙遊泳(EVA)、月面、さらに火星表面の探査を可能にする

ひとつには、既存の宇宙服に新しい関節が導入されて可動域が広がった。よく言われる宇宙飛行士の立ち方はアポロスーツの動き辛さを示唆した言葉だが、自由度が高い新しいxEMUのユーザーにはもう縁のないものになる。通常の範囲の動きが楽になるばかりでなく、自分の胴体の反対側に手を伸ばしたり、頭上に何かを持ち上げることも可能になる。

柔軟になった膝と、靴底が柔らかいハイキングスタイルのブーツにより、しゃがんだり、立ち上がったりも楽にできる。そんな基本的な動作もできないまま、よくもここまで来たものだ。

xEMUのデジタル・フィッティング・チェック。体を3Dスキャンして(点で表示)、スーツの各部分や部品がどのようにフィットするかを確認する

xEMUのデジタルフィッティングチェック。体を3Dスキャンして(点で表示)、スーツの各部分や部品がどのようにフィットするかを確認する。

宇宙服の体へのフィット感も向上する。NASAは人体計測、つまり体を3Dスキャンして、それぞれの宇宙飛行士ごとに、各部分がぴったり体に合うようにするのだ。

フィットと言えば、宇宙服の各部分はモジュラー式になっていて、簡単に交換ができる。例えば下半身は、宇宙遊泳と地表探査のときで、それぞれに適したものに交換できるようになる。ヘルメットのバイザーは“犠牲”防護式なので、ダメージを受けたら新しいものと簡単に交換できる仕組みになっている。

ヘルメットの中は、マイクなどを内蔵した、馴染み深いが明らかにみんなが嫌っているスヌーピーキャップが廃止され、現代的な音声起動式マイクとヘッドホンが組み込まれた。これで音質がずっと良くなり、汗をかくことも少なくなった。

さらに、通信スタック全体が新しいHDカメラと照明に置き換えられた。これは高速無線データリンクで接続される。月面からのライブ映像などはもう古臭い感があるが、1969年の荒いモノクロ映像とはちょっと趣が違って見えるはずだ。

最も重要な改良点に、背後からの着脱方式がある。昔のEVA宇宙服の着脱はかなり厄介な作業で、広い空間と人の手が必要だった。新しい宇宙服は、背後のハッチから中に入る仕組みになっているため、肘の位置決めなどが自然に行えるようになる。これはおそらく、宇宙服の着方を変えるものだ。宇宙服がエアーロックのような役目を果たすことは、誰でも簡単に想像がつく。背中から中に入ると、密閉されて、そのまま宇宙に出ることができるという感じだ。実際はそれほど単純ではないのだが、背後の着脱用ハッチは、その工程をずっと楽にしてくれるはずだ。

関連記事:NASAは月面用の宇宙服を将来的には民間企業にアウトソーシングへ

NASAはこの宇宙服のデザインと認定を行うが実際の製造は手がけない。NASAは先週、民間宇宙産業に宇宙服の製造を委託するもっともいい方法について意見を求めた。

これは、2024年の有人月面着陸に向けて、請負業者や民間企業の依存度を高めていくというNASAの決定の一環だ。もちろん、アポロ計画でも請負業者は重要な役割を担ったが、現在のNASAはさらに自由度を高め、民間の打ち上げサービスの利用も考えている。

今後ももちろん、宇宙服に関する最新の情報をお届けする。NASASuitUpタグも要チェックだ。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

イーロン・マスクが「NASAはSpaceXの知財権を自由に配布OK」と発言

SpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間10月10日間、米国カリフォルニア州ホーソンの本社でNASAのジム・ブライデンスタイン長官と共同会見を行い、同局と提携している商業有人宇宙飛行プログラムの最新状況を報告した。 現状と次のステップの詳細に関する所見の中でマスク氏は、同社がNASAと共同開発している知的財産権は誰とでも共有していいと繰り返し発言した。

マスク氏は質疑応答の開始当初、SpaceXが宇宙船Crew Dragon(クルー・ドラゴン)用パラシュート開発プログラムで得た知識は、誰に提供してもいいと語った。SpaceXは、Crew Dragonカプセルが地球に無事生還するために使用するパラシュートの第3世代を現在開発している。

「私はジム(ブライデンスタイン長官)にSpaceXのデータは独占されるべきではないと繰り返し明言してきた」とマスク氏は語った。「どのライバルも使っていい。無料で」。

その後マスク氏は、NASAのテーブルにあるSpaceXの知的財産は事実上すべて、同局が適切とみなせば自由に配布できると語った。

「はっきりしておきたい。NASAは、当社の全知的財産権をNASAの望む誰とでも共有できる」と同氏は言った。それに対してブライデンスタイン長官は、同局としてこの自由を心から感謝しているが、配布には一定の制限を設ける必要があると答えた。

「知的財産権の中には一般人あるいは我が国のことを思っていない国とは共有できないものがある」と語り、パートナーが情報技術を厳重に管理し保護手段を設けていることが大切なのはこれが理由であると付け加えた。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAが月面の3DデータをCGアーティストとクリエイター向けに公開

映画やゲームの舞台を月面に設定したいと思えば、見栄えのする画像を探すのは、それほど難しくない。しかしNASAは、単に美しいだけでなく、さまざまな用途に使えるデータをクリエーター向けにリリースした。画像だけでなくデプスデータを含んでいるので、非常に詳細な月面の3Dマップも簡単に作成できる。

これは「CGI Moon Kit」と呼ばれるもので、NASAのゴダード宇宙飛行センターが公開した。科学的なデータの視覚化の専門家、アーニー・ライト(Ernie Wright)氏が、元は別の目的で構成したものだが、3Dアーティストの注目を集めることが分かったため、公開することにした。

元のデータは、ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter=LRO)に取り付けられた2つの測定器から得れたもの。このオービターは、すでに10年以上にわたって月の軌道を回りながら、ずっと写真を撮り続け、測定を継続している。

月面をクローズアップ撮影した画像の例。実際に得られるデータの解像度はこんなものではない

LROが搭載するカメラは、写真を撮影するという点では、高品質の「伝統的」なカメラだが、実際には精密なマルチスペクトルの撮像装置だ。それを使用して、驚くほど高品質な月面のマップを作成してきた。一度にキャプチャできるのは、ほんの小さな領域だけだが、LROの軌道がシフトしていくので、月の明るい部分については、ほぼ全域を撮影することができた。しかし、影の領域については、その上空を何千回通過しても、撮影できない部分が残っている。

とはいえ、素晴らしい写真はマップデータの一部にすぎない。月面を忠実に再現するには、表面のトポロジー情報も必要となる。そしてそのデータこそ、LROのレーザー高度計が収集しているものなのだ。

このレーザー高度計は、一般的に使われているレーザー距離測定器と原理的には同じもの。軌道上からレーザーのパルスを月面に向けて照射し、それが戻ってくるまでの時間と強度を同時に計測する。それによって、月面とどれだけ離れているか、つまりそのときの高度を、2分の1メートルの精度で測ることができる。それと同時に、月面の状態についても、たとえば硬い岩なのか、あるいは柔らかい粉のような表土なのか、といったことが分かる。

そうしたデータを組み合わせて、いわゆる変位マップとして組み立てる。一種の地形図のようなものだが、高さが実際に変化する代わりに、色の違いで高さが分かる。このマップには、いくつかのバリエーションがあるが、基本的なユースケースは同じ。変位マップを写真のマップに重ね、それによって球体を包み込むようにすれば、地形学的な仮想の月球儀ができる。

上のGIFアニメの遅いバージョンをムービーで見てみよう。

 

こうしたデータ使って、一人称ゲームで月面を探検して月面コロニーを建設したり、宇宙船で月面スレスレを飛びながら空中戦を展開する、というのは本当に楽しいだろう。あるいはアーティストなら、月の精巧なモデルを作成することもできるはずだ。

この「CGI Moon Kit」は無料でダウンロードできる。どのリソースにも、いろいろなオプションがあるが、3Dアーティストなら問題なく理解できるだろう。詳しい情報とダウンロードは、ここから

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAは月面用の宇宙服を将来的には民間企業にアウトソーシングへ

NASAは、特に宇宙服に関して、業界からの情報を求めるという正式なリクエストを発行した。宇宙服の生産と付随するサービスを、外部の業者に委託するための将来の道筋を探ろうと考えている。

これは、宇宙服の設計と生産を、ただちにアウトソーシングするという意味ではない。NASAは、最初のArtemis(アルテミス)ミッションで使う宇宙服を自ら開発し、検証するつもりでいる。実際にArtemis IIIでは、引き続きアメリカ人男性と、最初のアメリカ人女性を月面に送り込む予定となっている。その後のArtemis計画としては、さらにAltemis 4から8まで、5つのミッションが提案されている。そのうちの4つでは、乗組員を月まで運ぶことになっている。

もちろん、すでにNASAは、民間企業だけでなく、学術機関や研究者とも協力して、自らの宇宙服に組み込むべき技術について検討してきた。現在の探査用宇宙服が、将来の設計の基礎となること前提とした上での話だ。しかしその一方で、宇宙服の製造と検査を、その業界のパートナー企業に完全に移管することも視野に入れている。さらに、そうしたパートナーが「宇宙服の進化を促進させる」ことにも期待している。また、現状の宇宙服の設計の改良も持ちかけたいと考えている。

NASAは、宇宙服だけではなく、船外活動の際に宇宙服と組み合わせて使うツールやサポート用のハードウェアに関する情報も求めている。飛行士を運ぶ輸送船の内部や、地球と月面の中継基地となるゲートウェイでも、そうした宇宙服がうまく機能する必要があるからだ。

それからNASAは、宇宙服や宇宙遊泳を、うまく事業化するにはどうすればよいか、といったことについても、多くの企業から話を聞きたがっている。NASAの外部の顧客にも、そうした技術を提供するためだ。

最近のNASAは、Artemisだけでなく、将来の火星探査、現在のISSに関して、さらにISSを事業として企業に引き継いでもらう可能性などについて、より深く業界と提携することに強い関心を示していることが見て取れる。それを考えると、宇宙服についての動きも、まったく驚きではない。NASAが発行した完全なRFI(情報依頼書)は、ここから入手できる。宇宙服のスタートアップを始めたいと考えている人は、見てみるといいだろう

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAの惑星探査用の新望遠鏡は気球に乗って大気圏の外縁に浮かぶ

最新の望遠鏡は星からの光を適切に濾過することによって、約4万メートル上空から地球に似た星を見つけることができる。その、マサチューセッツ大学 ローウェル校が作った望遠鏡は米国時間10月1日の朝、ヘリウムガスを積めたフットボール場ほどの大きさの巨大な気球に乗せられてニューメキシコ州フォートサムナーから飛び立った。

「PICTURE-C」と呼ばれるその望遠鏡は重さが800kg近くあり、長さは約4m、幅は1m近い。それを視界が澄明な地球の大気の外縁に定置するためには、それぐらい大きな気球が必要だ。それでも空中に定位できるのはほんの数時間で、その後は分解されてパラシュートで降下する。従って装置そのものは再利用性がある。

NASAが大学に560万ドルを助成した5年におよぶこのプロジェクトは、来年再び望遠鏡を気球に乗せて飛び立ち、研究者のための画像をさらにたくさん撮る予定だ。このプロジェクトで、地球に似た惑星以外のほかのものが発見されるかもしれない。環境光や他の星からの光に邪魔されない、初めてのとてもクリアな観測だから、これまでの観測では見えなかったものが初めて見える可能性がある。

2d39ecea 6bb4 4beb ab30 8e686a287bb5

画像クレジット: NASA

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが月ミッションに向けOrion宇宙船最大12機をロッキード・マーチンに発注

NASAは少なくとも6機、最大で12機のOrion宇宙船をLockheed Martin(ロッキード・マーティン)に発注した。Orionは同社が有人宇宙飛行ミッションのために特別に設計/製造した宇宙船で、最初のOrionは来年に予定されている初の月ミッションの準備に先立ち最近完成した。

今回の契約は、NASAが2024年の目標として掲げている月への有人飛行を実現する最初のミッションと、2030年9月30日までの期間におよぶ追加ミッションを対象としたものだ。当面の具体的なミッションはArtemis III〜Artemis Vで、契約額は27億ドル(約2900億円)となる。NASAは2022年に、Orion発注の第2弾となるArtemis VI〜Artemis VIIIの注文を予定しており、19億ドル(約2000億円)で発注する予定だ。NASAによると、これは意図的に3機のOrionを注文することで「後のサプライチェーンの効率化の恩恵が得られる」としており、これがおそらく8億ドル(約860億円)の価格差の原因だろう。

NASAはまた、宇宙船の再使用によってコスト効率を高めたいと考えている。同宇宙局は、Artemis計画の最初の有人ミッションであるArtemis II(これは月の周囲を飛行するのみで、着陸は実施しない)から、少なくとも1機につき1回はOrionを再使用したいと考えている。NASAはまた、このOrionの契約はLunar Gatewayプロジェクトにも役立つだろうと述べており、宇宙船の部品の再使用は将来の月ミッションをサポートする月周辺の宇宙ステーション計画や、火星やさらに遠い領域へのステージミッションに貢献するとしている。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

地球から110光年先のスーパーアースに液状の水

氷やガス状の水は私たちの銀河系宇宙でそんなに珍しくはないが、液体の水は極めまれだ。そして、地球に似た太陽系外惑星上の液状およびガス状の水どうだろう?それはまだ、見つかっていなかった、これまでは。天文学者たちはこの、天空の珍獣とも言うべき系外惑星K2-18bを、今や古色蒼然たるハッブル宇宙望遠鏡を使って発見した。

K2-18bは、質量と大きさが地球に近いので「スーパーアース」と呼ばれる。それだけでなく、太陽系の「可住ゾーン、ハビタブルゾーン」に存在し、水を液状に維持できる。それは、110光年先の獅子座の中にある。

スーパーアースや可住域の惑星、それに水のある惑星の数はとても多いけど、この3つの条件が揃った惑星はこれまでなかった。3連勝は今回が初めてだ。

研究者たちはハッブルの過去のデータを使って、K2-18bの太陽の光がその大気を通過するときのスペクトル特性を調べた。彼らは液状ガス状両方の水の証拠を見つけ、それは地球上のような水循環を示唆していた。蒸発、凝縮、などなどの。

関連記事:There is liquid water on Mars(火星に液状の水がある、未訳)

しかしそれは、そこに小さな宇宙人がいるかも云々という話ではない。K2-18bの太陽は赤色矮星で、惑星はその放射を浴び続けている。宇宙望遠鏡科学研究所のHannah Wakeford(ハンナ・ウェイクフォード)はNature誌に「生命や生物が私たちが日頃知ってるようなものだとすると、この世界が生存可能であることはほとんどありえない」とコメントしている。

残念だが、そもそも科学者たちはそれを見つけようとしていたのではない。しかし、地球に似た惑星がハビタブルゾーンにあって地球に似た水循環があることを見つけたのは、本当にすごい。これまで調べた系外惑星の数の少なさから見れば、奇跡に近いのかもしれない。銀河系宇宙だけでも系外惑星はものすごく多いから、K2-18bののような星もまた、意外と多いのかもしれない。

この発見は、別の意味でも興味深い。最近の天文学の研究の多くがそうであるように、これもまた、一般公開されている(2016年から2017年までの)過去データの分析により発見された。そして分析にはオープンソースのアルゴリズムが使われた。つまり、データも研究方法もどちらも、そこらにオープンに存在している。でもそれを使いこなせるためには、本格的な科学的努力を要する。

K2-18bに関しては2つの資料が公開されている。1つはモントリオール大学、もうひとつはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンからだ。前者は原本が昨日Arxivに掲載され、後者は本日、Nature Astronomy誌に載った。

画像クレジット: ESA/Hubble, M. Kornmesser

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa