かわいそうなQualcomm。いつも参考技術ばっかりで、完成した小売商品がない。舞台の黒子のように、ステージを引き立たせるけど、自分は小売店頭のスター製品のようにカメラのフラッシュを浴びたり、記者の集団に取り囲まれることもない。
このサンディエゴの企業はIFAの数日前に、自社だけの発表イベントを行ったが、SamsungでもSonyでもない同社の新技術は、ほとんど報道されなかった。それは新しくてとてもおもしろいVR技術だよ、と言ったら、みんなはこっちを見るかもしれない。でも、それは絶対に市販されない、と言ったら、誰もがそっぽを向くだろう。
でもそれが、参考技術というものの宿命だ。サードパーティのメーカーたちは今ごろ、応用製品を作ってみたくてうずうずしているかもしれない。だから彼らのヘッドセット製品が来年あたり消費者市場に出回るかもしれない。でもその前に、問題はたくさんある。、まず、こんな独特の技術に対する、消費者のニーズはどうか?
VR製品はすでにいろいろ・たくさんある、それなのに市場はまだ小さい。それだけでも問題なのに、そんな市場において、PCもスマートフォンも要らないスタンドアロンのデバイスはどうだろう? 魅力的なコンセプトだけど、PCと比べて処理能力はどうか? Gear VRやGoogle Cardboardなどと比べてお値段は?
Alcatelの新しいヘッドセットにも同じような疑問符が付くけど、そのVisionという製品は違う市場をねらっている。発売時期は、他とぶつかると思うが。一方Qualcommの設計は、機能的にとても独特でおもしろい。最大の特徴は、4つのカメラを使う追跡システムだ。二つはユーザーの目線の動きを追跡し、他の二つはユーザーが動き回る位置を追跡する。
同社が作ったデモは、社内手作りデモによくある、かなり内容の浅いやつ。しかし、システムの全貌を見せてはいないけど、概念実証としては十分に強力だ。一匹の蛸が青い海に浮いていて、その目がユーザーの動きを追う。ユーザーは部屋中を動きまわりながら、あらゆる角度から蛸を見る。真下からでも(蛸の肛門か?)。
一方、好奇心の強いドラゴンのデモでは、グラフィックがよくできている。片目1440×1440で、最大70fpsだ。目標とする処理能力はSnapdragon 820搭載のスマホなみ、というから、これぐらいの性能は欲しい。
同社によると、お値段は“ハイエンドのタブレットなみ”を目指している。Samsungのヘッドセットよりは高くなりそうだが、ただし別途スマートフォンを買う必要はない。しかしこの製品の成功は、消費者製品のメーカーの商品開発能力にかかっている。もちろん、コンテンツの出来栄えも。いずれにしても、消費者製品ではなく、たくさんのチップを売らなければならないQualcommにとって、参考技術の目的は自明だ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))