おこづかいアプリに中華ブースト、アプリストアのランキングはどこまで信頼できるのか

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「App Storeにランキングがある以上、事業者はその上位を目指す。そしてそのためにはアプリの面白さも大事だが、広告にだってお金をかける。これはi-modeの時代から何も変わっていない」——あるネット広告代理店関係者はそう語る。リワード広告によるブーストみたいなものは「昔からよくある話」なのだと。

アプリストアにあるランキングは、ダウンロード数をはじめとした指標に基づいて作成されている。そのランキングの上位に入るのは、面白くて話題になっているアプリばかりとは限らない。アプリ開発者が広告で露出を増やし、ダウンロードを促したアプリだったりもするわけだ。もちろん広告で知ったアプリが面白くて話題になるというのもよくある話だ。

だがそんな広告手法の中でも、リワード広告を使った「ブースト」と呼ばれる行為について、その是非が問われている。アプリを開発するスタートアップや広告を提供する代理店ならもちろんのこと、アプリストアを利用するユーザーもその実態は知っておいたほうがいいだろう。なぜなら人気だと思ってダウンロードしたアプリは、極端に言えばランキングを「買って」いるかも知れないからだ。そんなアプリストアを取り巻く環境について紹介していこう。

アプリランキングに影響を及ぼす「ブースト」

まずはリワード、ブーストといった言葉について説明する。リワード広告とはユーザーが広告を通じてサービスの会員になったり商品を購入したりすると、その広告収入の一部が還元される広告のこと。この広告の仕組み自体は何も新しいモノではない。「会員になれば○○ポイント」なんて案件が並ぶポイントサイトなどは、読者のみんなもこれまでに見たことがあるのではないだろうか。

そしてブーストというのは、このリワード広告の仕組みを使って、アプリストアのランキングを意図的に急上昇させる行為のを指す。一番多いケースは「おこづかいアプリ」や「懸賞アプリ」(ここからはおこづかいアプリで統一する)と呼ばれるアプリを使って、短時間に特定アプリのダウンロード数を増やすことでアプリのランキングを操作するわけだが、これがアプリストアのランキングに与える影響は決して小さいモノではない。

僕は2013年に、「App Storeランキング騒動の実態–「懸賞アプリ」に対する業界の懸念」という記事で当時のブーストの状況について伝えた。それから2年ほどたった今、過激化するブーストの実態について指摘する報道エントリーが増えている。これらの影響もあってか、昨日今日というタイミングでもアプリストア上からおこづかいアプリが削除されている状態だ。

「おこづかいアプリ」によるブーストはいまだ健在

おこづかいアプリを使ったブーストの方法を詳しく説明すると次の通りだ。ユーザーがおこづかいアプリ上で紹介されるアプリをダウンロードしたり、そのアプリについてアプリストア上でレビューをしたりすると、その引き替えとしてポイントを得られる。ユーザーはこのポイントを貯めることで、Amazonギフト券などを得ることができる。

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おこづかいアプリに並ぶリワード広告

そんなおこづかいアプリ上で「ダウンロードすると○○ポイント提供」なんて紹介されているアプリの枠、それこそがリワード広告なのだ。広告主が広告代理店の提供するリワード広告ネットワークに出稿すると、そのネットワークを利用するおこづかいアプリにその広告が掲載されるのだ。

ポイントを得たいユーザーは当然おこづかいアプリの広告を経由してアプリをダウンロードするので、そのタイミングでダウンロードが集中し、結果としてそのアプリのランキングが上昇することになる。

おこづかいアプリへの広告掲載時間は、実は夕方17〜19時前後に集中している。その理由は何なのか? App Storeでは3時間ごとにランキングが更新されているが、その中でも最もダウンロードが活発になる“ゴールデンタイム”が19時以降だからだ。

Appleはランキングのロジックを公開していないし、ロジック自体も日々変化していると聞くが、「直近数時間で大幅にダウンロード数が増加することがランキング上昇に繋がる」というのはアプリ業界関係者の一致した意見。これを見越して17時にブーストが始まるのだ。

ランキング操作を意図するアプリは「規約違反」

ではこのブースト、つまるところ何が問題なのだろうか。

ユーザー目線で言えばまず、アプリストアのランキングが信用できないものになるということだろう。当たり前だが、アプリストアのランキングは本来「人気のアプリ」が並ぶべき場所だ。そこにCPI(Cost Per Install:1インストールごとの課金)100円程度のいわば“実弾”広告を使ったアプリが入るのだ。ランキングの信頼感は低下しかねないし、極論を言えばアプリビジネスの市場自体にも影響があるという声も聞こえる。

また、ダウンロード数を水増しできるのが問題だと指摘する人もいる。最近ではどんなアプリでも、ダウンロード数よりもアクティブユーザー数が重視される風潮がある。実際取材でもMAUやDAUといった数字を聞くことが多い。だが一方でテレビCMを見れば、「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリはまだまだ多い。アクティブユーザーなんかよりもダウンロード数は何より分かりやすい数字だ。ブーストでは、このダウンロード数も急激に増やすことができてしまう。

関係者へのヒアリングや僕が実際におこづかいアプリを見て調査したところ、ゲームアプリを除いては、SNSの「Twitter」、ニュースアプリの「Gunosy」、月額定額制の音楽アプリ「AWA」、ECの「Amazon」などなど、TechCrunchの読者になじみの深いアプリもブーストを行っている、もしくは過去にブーストを行っていたことが分かる。ここで名前を挙げたサービスはあくまで直近に確認できたものの一部で、全体の数は正直把握しきれない。テレビCMなどで「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリも少なくないのだ。

また、プラットフォーマーの規約を見れば、そもそもブースト事態が違反行為ではないのかという話もある。Appleの開発者向けの規約には次のような項目がある(もちろんGoogle Playにも同様の規約がある)。

2.25 Apps that display Apps other than your own for purchase or promotion in a manner similar to or confusing with the App Store will be rejected
(App Storeと類似、もしくは紛らわしい表示をして、他のアプリの購入やプロモーションするアプリをリジェクトする)

3.10 Developers who attempt to manipulate or cheat the user reviews or chart ranking in the App Store with fake or paid reviews, or any other inappropriate methods will be removed from the iOS Developer Program
(偽物のレビューや金銭を支払って書いたレビュー、その他不適切な方法でApp Storeのユーザーレビューやランキングを不正に操作しようと試みる開発者はデベロッパープログラムから削除する)

ブーストが「ランキングを操作しようと意図しているもの」だと考えれば、それは明確な規約違反だ。ただし、リワード広告に関わる代理店やお小遣いアプリ開発の関係者としては、「あくまでダウンロード支援の施策であり、ランキングが変動するのはその結果でしかない」という説明をすることが少なくない。言い分としては分かるのだけれど、実際におこづかいアプリがストアから消えつつある今、はたしてその言葉をそのまま受けられるかというと、正直難しい。

Apple Japanは回答せず、一方で米Appleは「不正」と認識

ではアプリストアを提供するプラットフォーマーはブーストの実情をどう考えているのか? 実は先週Apple Japanの広報部に電話で問い合わせたところ、「メールで質問を送るように」と指示されたため、メールで質問を送付している。しかし1週間近く経っても回答がないままだ。僕が確認した限りでは、別の媒体の記者なども同様の状況らしい。

回答のないApple Japanに対して「プラットフォーマーとしておごりがあるのではないか」と考えるべきか、はたまた「米国本社との関係上、日本法人では回答できない歯がゆい状況にあるのではないか」と考えるべきかはさておき、僕はちょっと面白いメールを入手することになった。以下にあるのは、あるアプリ開発者が、米Appleのアプリレビューチームに対して、「あるアプリがブーストを行ってランキングを不正に操作している疑いがある」と指摘した際の回答メールだ。

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概要を訳すと次のとおり。

We take ratings fraud very seriously and investigate each claim. Someone from this team will investigate and follow up as needed. Because we can only share communications about an app with its developer, you will not receive updates about this matter.
(レーティングの不正を非常に深刻にとらえており、調査を行う。ただし我々は開発者とのみアプリに関するコミュニケーションをしているので、今後あなたには更新情報をお知らせしない)

あくまで個別のアプリに対する説明ではあるが、アップルでもブーストについて状況を理解しており、不正だととらえているのだというわけだ。実際これまでもアップルは「広告を閲覧することでアイテムをもらえる」なんて広告も規約で禁止するなどしてきた。プラットフォーマーとその上でサービスを展開する事業者の狙いは異なる。自分たちの管理下で健全にサービスを運営したいプラットフォーマーと、その裏をかいて少しでも自分たちの価値を高めたい事業者たち。その行動は結局いたちごっこになってしまう。

アプリ開発者「ブーストは“危ないモノ”ではない」

これまではユーザーやプラットフォーマーの視点での話をしてきた。では実際にブーストを行うアプリ開発者やリワード広告を取り扱う代理店、お小遣いアプリの開発者はどう考えているのだろうか。

リワード広告を買う側である、あるアプリの開発者はこう語る。「サイバーエージェントやアドウェイズといった上場企業が広告商品として推奨、販売してくる以上は“危ないモノ”ではないと思っている」「結局のところその善悪を判断するのはプラットフォーマー。彼らの横暴さも知っている」「広告を売っている代理店の思いはいろいろあるのだろうが、買っている我々はあくまで提案された商品を買っているだけ。その存在を問うこともない」——結局のところ、ブーストはマーケティングのツールの1つだし、当たり前のように提案される商品だ。そこまで問題視することはなかったという。

前述の開発者が語るとおりで、リワード広告のネットワークを提供しているのはサイバーエージェント傘下のCAリワードやアドウェイズ、VOYAGE GROUP傘下のZucks、ユナイテッドなど上場企業(の子会社含む)も多い。リワード広告によるブーストが完全に禁止となると、その影響範囲は決して小さくないのは分かる。そんな背景もあってか、あるアプリ会社の代表は「リワード広告自体は数えきれないほど多くのアプリが使っている。これをとやかく言うことは、拡大するアプリ産業にマイナスの影響を与えかねない」と語っていた。

リワード広告のネットワークを展開する広告代理店などに話を聞くと、前述のとおり「規約的にはグレーだが、問題はない」という回答が大半だった。冒頭の代理店関係者の発言にもある話なのだが、i-mode全盛期の時代にだってランキングを操作するような広告手法は存在していたと聞く。当時、公式サイト(キャリア、つまりここではNTTドコモが認めたサイトのこと。i-mode公式メニューからアクセスできる)のランキングはMAUをベースにしていたため、勝手サイト(キャリア非公認のサイト。ブラウザで直接URLを叩いてアクセスする必要があった)に公式サイトの隠しタグを仕込み、MAUを水増ししていたなんてこともあったそうだ。

代理店サイドの回答とは異なり、お小遣いアプリ開発者は、前述の規約によってアプリがリジェクトされたり、開発者プログラムからアカウントが削除されたりする可能性があることは認識していたようだ。自社のアカウントでお小遣いアプリを提供している会社などは誠実なほうで、事実上休眠している法人や開発者個人の名義で開発者登録をし、実質的な運営者を隠しているケースも少なくない。ひどい話では、アップル側から再三の警告があったにもかかわらずにそれを無視し、「稼げるうちに稼げ」という姿勢で小遣いアプリを提供して、最後にはアカウントを削除された事業者もいたという。

「中華ブースト」で制裁を受けたスタートアップ

ところで代理店の話を聞いていく中で「中華ブースト」という聞き慣れない言葉を聞くことになった。これは今まで語られてきたブーストとは全く異なるものだ。一体どういうモノなのか。

これまで紹介してきたブーストは、実際にユーザー1人1人が端末にアプリをダウンロードすることで、短時間でアプリの大量ダウンロードを促すというものだった。一方の中華ブーストというのは、中国で日本のApple IDを割り振ったiPhoneを複数台用意し、機械的にアプリの大量ダウンロードを行うのだという。そんなものが本当にあるのだろうか。

ある代理店関係者が「過去の話」として語った仕組みはこうだ。数年前の中国では、複数台のiPhoneをPCと接続し、機械的にIPアドレスを変更して、当該アプリを何度もダウンロードするという手法があったのだそう。こういったことを行う事業者はネットワーク化され、アプリストアのランキングを大きく動かすことができたという。「中国では『CPI○○円』というような売り方でなく、『1週間ランキング1位キープで○○円』といった大胆な価格設定が行われていた。つまりそれを実現できるような(ブーストの)仕組みがあった」(関係者)のだそうだ。

だがさすがにこれはAppleの知るところとなり、対策がなされた。しかし手を変え品を変え、安価なリソースと機械的な仕組みを組み合わせたブースト手法が編み出されているという。

この中華ブーストの仕組みを日本に持ち込んで販売する広告代理店が存在する。実はこのブースト、金額面でも安価に効果があると一部では話題なのだそう。通常国内でゲームアプリなどをブーストする場合、CPIは80〜100円程度が一般的。だがこの代理店の提供する中華ブーストは、CPI50円程度と通常の約半額で実施できるのだという(これとは別に国内でもCPI十数円の非ゲーム専門ブーストがあるようだ。ここでは割愛する)。

だがこの代理店の仕組みが、機械的なものであれば「規約上グレー」なんてレベルの話ではない。僕は複数人から名前の挙がったその代理店に問い合わせたが、金額については「実際に国内の一般的な価格の半額程度」と回答を得たものの、その手法については聞くことができなかった。

しかしこの中華ブースト、プラットフォーマーからすればたまったもんじゃないし、危険な手法だ。実際、数カ月前にさかのぼるが、このサービスを利用したスタートアップにある事件が起きている。

前述の代理店経由でブーストを行っていたあるスタートアップのアプリが、ある日突然App Storeのランキングから除外されたのだ。アプリ名を直接検索すればそのアプリは出てくるのに、ランキングには一切表示されないのである。アプリ解析サービスに「App Annie」でもそのランキングを探ってみたが、数カ月の間、ランキングの数字自体がつかない状態になっていた。

その原因は何か? この事件を知っていた関係者は一様に「中華ブーストだ」と答える。その手法に気付いたアップルが制裁を行っていたのだと。そのスタートアップの“中の人”も「プラットフォーマーとの関係を考えて利用をやめた。(ブーストは)もう懲りている」として利用を認めた。代理店側はその因果関係については明言せず、「プラットフォームの上でのビジネスなので、(ブーストには)ある程度のリスクはある」とだけ語った。同社への今も問い合わせは、今も増えているのだそうだ。

「規約上グレー」な手法がアプリビジネスの価値を生み続けるのか

取材を通して分かったのは、アプリ開発者や代理店からすれば、規約を唐突に変更するプラットフォーマーだって褒められたモノではないということだ。こんな状況にコメント1つ出さないAppleの対応にも疑問が残る。だがそういったプラットフォーマーの行動の裏には、正攻法から中華ブーストのような危険な手法までを駆使して、ランキングの上位を取ろうとするプレーヤーの活動があるのも事実。プラットフォームでビジネスをする以上、守らなくてはならないルールはある。でもそういった両者の関係について、それこそ普段ランキングを見て、アプリをダウンロードしている読者にも知って欲しいと思っっている。

ただブーストを肯定する人たちにはちょっと考えて欲しい。「規約上グレーだ」なんて言っていたが、今プラットフォーマーが規制を強めている商品を売り続けることが本当にアプリビジネスの価値を生み続けるのだろうか?

今回話を聞いた代理店関係者のうち数人は、「本音を言えば、リワードによるブーストはそう長く続くビジネスではない」といったことを語っていた。ある人物は「PCとアプリを連動させるターゲティング広告を企画している代理店もいる。リワード広告の『次』をすでに探している会社も少なくない」なんて具体的な話もしていた。アプリ広告のビジネスにはまだまだ先があるんじゃないだろうか。

リワードにブースト、これが今日明日ですべてなくなるなんて思わないが、そろそろ別の方向に目を向けたほうがいい時期が来ているんじゃないだろうか。App Storeで「このアプリはなんでこんなに急に上位表示されるのか?」なんてランキングを疑ってかかるのはそろそろやめにしたい。

photo by
Blake Patterson

“日本発東南アジア”でリワード広告を展開するYOYOが資金調達、インド進出も視野に

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東南アジアではプリペイド携帯電話が人気で、「AitTime」と呼ぶポイントをチャージして通話や通信を行っている。このAitTimeをリワード広告の報酬として提供するプラットフォームを提供するのがフィリピンを拠点にサービスを展開するYOYO Holdings(YOYO)だ。CEOの深田洋輔氏は、新卒でディー・エヌ・エーに入社。その後独立しYOYOを創業した。

そんなYOYOが5月29日、KLab Global(シンガポールに拠点を置き、KLabのグローバルマーケティングを担う子会社)、グリーベンチャーズおよび個人投資家を引受先とする第三者割当を実施した。金額は非公開だが、数億円程度とみられる。また今回の資金調達にあわせてKLab のフィリピン現地子会社であるKLab Cyscorpions代表取締役社長の野口太郎氏が取締役として参画。KLab CyscorpionsはYOYOに対して技術支援をするほか、オフィススペースも提供する。

東南アジアでロックスクリーン広告を展開

YOYOでは、広告閲覧者に対してAirtimeをリワードとして提供するロックスクリーン広告アプリ「PopSlide」を提供している。

PopSlideは、Android端末のロックスクリーン上にニュースやエンタメ情報、天気予報や広告を配信。これらを閲覧し、ロックスクリーンを解除すればAirtimeが提供される仕組みだ。

2014年にフィリピンでサービスを開始し、2015年2月にインドネシア、5月にベトナムと提供地域を拡大してきた。ユーザー数は、PopSlideのリリース以前から提供しているリワードプラットフォーム「Candy」とあわせて100万人超。国別で見るとインドネシアでの利用が圧倒的に多いそう。PopSlideはインドネシアとフィリピンにおいて、Google Playのライフスタイルカテゴリで長期間ランキング1位を獲得しているという。

調達を契機にインドほか複数地域に進出

YOYOでは今回の資金調達をもとに、エンジニア採用、展開中のサービス強化、他地域への展開を進める。「新興国マーケットのモバイルに適応するためにはかなり技術的な課題もあるため。まずはエンジニア採用に注力していく」(深田氏)。他地域展開で特に注力するのはインドだそう。

マネタイズについては、「売上は出ている」とする一方、「ロックスクリーン広告事業はWinner takes Allの事業。ユーザーが持っている画面を押さえることが最優先なので、現時点では利益を出すフェースではないと考えている」(深田氏)とのこと。

Amazonのプライム会員サービスが出店者にも適用へ、個別契約なので一挙には無理だが

Amazonは、有料会員制Prime(プライム)の利用価値を上げることに、このところ非常に熱心に取り組んでいる。今回は、これまでAmazon本体だけからだった各種サービスが、Amazonを利用している商業者、いわゆる出店(出品)サービスからも受けられるようになり、プライムの利用価値がいよいよ本格的になってきた。これからはプライム会員は、例えばイギリスでは、送料無料、当日・翌日配達などのサービスを、AllSaintsのオンラインストアからも受けられるようになる(Re/codeの記事より)。またAmazon.comで検索したとき、結果にAllSaintsの商品も含まれるようになる。ただしそれらをクリックすると、Amazon上でなくAllSaints本来のWebサイトに連れて行かれる。

不思議なことに、Amazonがそうやって顧客をAllSaints.comへリダイレクトするにあたっては、アフィリエイト料金を取るだけだ。9月からのパートナーシップにより顧客は、Amazonへのログインと決済情報を使って買い物を完結するのだが、そのぶんの料金はない。でもなにしろ、プライムはAmazonにとって上客だ。Amazonの、オンライン小売企業としての売上と利益を引っ張っているのは、今やプライム会員であり、最近の調査によると、Amazon本体からのプライム会員のお買い上げ額は、非会員の倍近い。

このほか今日(米国時間11/4)Amazonは、プライム会員だけが利用できる容量無制限の写真保存ストレージのクラウドサービスを開始した。タブレットやスマートフォンのおかげで、今や世の中の全員がフォトグラファだから、このサービスは誰にとっても便利だ。プライムの料金は今年値上げされたが(合衆国)、合わせて音楽のストリーミングが加わり、ビデオのカタログも増加、オリジナルコンテンツの制作もできるようになり、そして今回の、プライムサービスの出店者への拡大が加わる。

この、プライムサービスの出店者への適用は、Amazonと店側との個別の契約になるから、どれぐらい早く、どこまで広がるかは未定だ。Re/codeの記事によると、Abercrombie & FitchやNeiman MarcusはAmazonへの出店にうんと言わなかった。Amazonが自分の店の顧客のデータにアクセスすることと、安物も含めてなんでもかんでも売ってるAmazonで自己のブランドイメージが希釈されることを、これら高級店はおそれたらしい。

しかし、はっきりしているのは、Amazonは顧客に、会費を払うプライム会員になってほしい、と願っている。でも、その気をそそるだけのメリットは、まだ十分に揃っていない。プライムがAmazon本体だけでなく出店者もほぼすべてカバーできたら、航空会社のマイレージみたいに用途の広い特典になる。しかも、Webのほぼ全域にわたって。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))