新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄み

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄み

Appleが毎年、この時期に新製品を発売することは周知である。それ故に数か月前から噂されてきたiPhone SEとiPad AirのプロセッサがそれぞれA15 BionicとM1に更新されたことに大きな驚きはなかった。iPhone 13とiPhone 13 Proに緑系の新色が加えられたことも過去の戦略を踏襲したもので、カラーそのものの好みを脇に置いても順当な発表だろう。

“すべてのユーザーに対するAppleの優位性”を体現したM1 Ultraの凄み

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄みしかし、Macの新製品にM1 Ultraと名付けられた新しいSoCを搭載したことには驚きがあった。Mac Studioと名付けられた新しい筐体デザインのMacが追加され、ここに2つのM1 Maxを連結してひとつのパッケージに封入したM1 Ultraが搭載されたのだ。

そのパフォーマンス強化の手法は王道とも言えるものだが、現実には使わないような手段である。M1 Maxの時も同様のやり方で驚かせたが、今回の驚きも背景はほとんど同じ。

“まさかここまでやるとは”と、想像を超えたやり方を採用したが、その根幹にあるのはAppleというメーカーの立ち位置。つまり半導体設計、OS開発、ソフトウェア開発ツール、アプリケーションソフト、ネットワークサービス、ハードウェア製品開発と生産、流通。その全てを垂直統合した他のメーカーにはない特徴を持っているからである。

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄みAppleは、PC産業の中におけるIntel、AMDであり、NVIDIAであり、Microsoftでもあり、Google的な要素も兼ね備え、LenovoやHP、Huaweiなどの役割も担える。そしてその品質や品質の基準管理は、クリエイター向けの一流ブランド製品に匹敵している。

このようなビジネスモデルをパーソナルコンピュータ産業で構築した企業は他にないだろうが、さらに言えば単一メーカーでは最も大きなスマートフォンメーカーでもあり、そのスケールメリットをMacというパーソナルコンピュータのジャンルで活かせるようになった。

今回発表されたMac Studioはクリエイターが欲するであろう高性能なデスクトップ製品だが、スマートフォンに比べれば決して大量に販売されるわけではない。そのジャンルへ完全にカスタマイズされたクリエイター向けの圧倒的性能の半導体を投入できることこそがAppleの強みなのだ。

“隠していた”チップ間インターコネクトI/F

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄みM1 Ultraは”凄み”を感じるSoCだが、一方でシンプルな作りでもある。驚きはあったが、そのやり方はM1ファミリーの中で一貫したものであり、変化球はない。そうした意味では実に理解しやすい新SoCだ。

AppleはMacBook Pro向けにM1 Pro/M1 Maxを投入。M1 ProはM1のCPUコア数を増やすとともに構成を見直し、GPUコア数を増やし、動画処理を大幅に向上させるMedia Engineを内蔵したものだ。同時に処理能力に見合うだけのメモリ帯域を追加するため、メモリチャネルが2倍になっている(それに伴い最大の接続DRAM量も2倍になった)。

一方のM1 Maxは概ね、2つのM1 Proを1つのSoCにまとめたものと言える。よってほとんどの場面において2倍の最大性能が得られる。共有メモリアーキテクチャで超広帯域のメモリアクセスが保証されてる上、メモリチャネルもさらに2倍になっているため、最大のDRAM容量はさらに2倍、帯域も3倍となるから内包する処理回路が2倍になってもプログラムがストールして性能を落とすことなく高性能を得られる。

M1 Ultraの登場に対して「Max(最大)ではなかったのか」という声もあるだろうが、ひとつのチップで言えばMaxである。予想外というよりも「ここまでやるのか」と嘆息したのは、このMaxなダイサイズのSoCを2個、同じパッケージの中で並べて接続したことだ。

これは接着剤で2つのパーツをくっつけるのとは訳が違う。Appleはこのためにあらかじめ、2つのSoCを近接で接続するための仕掛けをM1 Maxに”仕込んで”いた。もちろん秘密裏に。その秘密の仕掛けがUltra Fusionである。

2つの半導体が1つのSoCとして動作

ダイサイズはこれ以上を望めないため、まさにMaxなSoCである。M1 Ultraとは、2つのM1 Maxを接続し、同じパッケージに封入したチップだ。

M1 Maxには公開されていなかった機能があった。それはSoCダイを2個接続するためのインターコネクト(内部接続)で、広帯域、低遅延。接続のための微細な端子のようなものをダイの片辺に配置し、二つのM1 Maxを接続する。新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄み

ではどのように接続しているのかだが、Ultra Fusionで接続された2つのダイは、毎秒2.5TBの帯域で相互アクセスできるようになる。接続の仕組みは比較的シンプルで、インターポーザー(貫通電極)とマイクロボンディング(極近接の配線処理)を組み合わせ、極めて低い遅延を実現している。

その上で片方のM1 Maxに内蔵された命令スケジューラが、2倍に増える処理コアなどに命令を割り振り、まるでひとつのSoCのように動作する。メモリコントローラも統合されたように動作するため、まるまるメモリチャネルは2倍となり毎秒800GBのメモリ帯域まで増加している。

こうした相互接続のための仕掛けや、あらかじめ命令スケジューラなどが2つのM1 Maxを制御するため、M1 Proとは異なる設計がなされていた。

詳細な性能は実機で判断したいが、Appleの公開するベンチマークなどを見る限り、2倍のリソースを注ぎ込むことで、きちんと2倍近い結果を引き出せているようだ。共有メモリアーキテクチャだからこそのリニアな性能向上と言える。

Mac Studioの位置付けと”残された領域”

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄みAppleはM1 Ultraと、それを搭載するMac Studioによって、2年前から取り組んでいたIntelからAppleシリコンへの移行を”ほぼ”完了したと発表イベントで話した。

ベンチマークなどは実機で試すとして、少なくともMac同士の比較であれば、M1 Ultraは27インチiMac、Mac Proそれぞれの最上位よりもCPU、GPU共に圧倒的に速い。

動画処理に関してもMac ProにAfterburnerを搭載した時よりもM1 Maxの時点ですでに高性能だった。さらにM1 Ultraでその性能は2倍になっている。8KのProResデータを15ストリーム同時にハンドリングできるというのだから、圧倒的と言っていいだろう。

このSoCを搭載するMac Studioは、27インチiMacをはるかに超え、Mac Proをも上回る高性能をコンパクトかつ省電力な筐体で実現する。なお、Mac Studioは必要なパフォーマンスに合わせ、M1 Maxを選択することも可能だ。

新たなSoC「M1 Ultra」から垣間見えるApple製半導体の優位性と凄みMac Studioと27インチのStudio Displayの組み合わせは、27インチiMacの置き換えとなり得る選択肢となる。ディスプレイのスペック、表面仕上げの選択肢ともに27インチiMacをほぼ踏襲しており、ディスプレイ内にA13 Bionicを内蔵することでiPhone 11世代のカメラ画質や音声処理をデイスプレイ内蔵のカメラ、スピーカー、3アレイマイクから得られる(27インチiMacではA10 Fusion相当の機能を持つT2チップが処理していた)。

性能を大幅に高めながら、一体型ではないもののより柔軟なシステム構成が選べるようになったのは歓迎すべき点だろう。もちろん、PRO Display XDRを所有しているならば、Mac Studioを接続するだけでM1 Ultraの性能を活かせる。

元々Mac ProのPCI Expressスロットに使われる拡張ボードがAfterburnerなどのグラフィクス系処理ボードだったことを考えれば、M1 Max、M1 UItraが選べるMac Studioならばボート拡張性は不要であり、そもそもの性能が高いためMac Proの置き換えも可能だろう。

ただし、ひとつだけMac Studioではカバーできないのが、メモリ容量への依存性が高いアプリケーション領域だ。Mac Proでは最大1.5TBまでのDRAMを搭載可能だったが、Mac Studioは最大128GBが上限となる。

多くの場合はこれで十分だと思われるが、これ以上のメモリ容量は共有メモリアーキテクチャを採用する限り搭載が難しい。とはいえ、Appleは何らかの驚くような秘策を持っているに違いない。

年内には”自社製SoCへの移行を完了”するというApple。残された領域はあとわずかになった。

(本田雅一。Engadget日本版より転載)

Intel傘下のMobileyeが自動運転に特化したSoC「EyeQ Ultra」発表

Intel(インテル)の子会社Mobileye(モービルアイ)は、乗用車、トラック、SUVに自動運転の能力を与えるために設計された、新しいスーパーコンピュータを市場に投入する。

同社は米国時間1月4日、CES 2022で、自動運転に特化した「EyeQ Ultra」という新しいシステムオンチップ(SoC)を発表した。同社によると、毎秒176兆回の演算が可能なEyeQ Ultra SoCの最初のシリコン生産は2023年末、完全な自動車グレードの生産は2025年となる見通しだ。

また、Mobileyeは先進運転支援システム(ADAS)向けの次世代EyeQシステムオンチップ「EyeQ6L」「EyeQ6H」も発表した。EyeQ6Lは、いわゆるレベル2のADASに対応するもので、2023年半ばに生産を開始する。2024年まで生産が開始されないEyeQ6Hは、ADASまたは一部の自動運転機能に対応する。この高性能チップは、あらゆる高度運転支援機能やマルチカメラ処理(駐車カメラを含む)を提供することができ、駐車の可視化やドライバーモニタリングなどのサードパーティアプリケーションをホストする予定だ。

Mobileyeは、ADASを強化するコンピュータービジョン技術を自動車メーカーに供給していることで、よく知られている。2004年に発売された最初のEyeQチップは衝突防止のために自動車に使用された。Mobileyeのビジネスは好調で、2021年末時点でEyeQ SoCの出荷数は1億個に達した。

近年、同社は自動車メーカーに対し、高度運転支援システムに必要なチップを供給する一方で、自社の自動運転車技術を開発・テストするという、いわば二重の戦略を追求してきた。2018年には、単なるサプライヤーであることにとどまらず、ロボタクシー事業にも手を伸ばした。

その2本の道は今、1本に重なろうとしている。そして、消費者向け自動運転車を「この業界の終盤戦」と表現する同社のAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)社長兼CEOの長年の戦略を実現しようとしている。

Mobileyeは、数年前から自動運転車の技術開発を進めてきた。カメラ、レーダー、LiDAR技術に基づく冗長なセンシングサブシステムを含む同社のフル自動運転スタックを、REMマッピングシステムおよびルールベースの「責任感知型安全論(RSS、Responsibility-Sensitive Safety)」による運転方針と組み合わせる。

MobileyeのREMマッピングシステムは、EyeQ4(第4世代システムオンチップ)を搭載した一般車や商用車のデータをクラウドソースし、ADASや自動運転システムをサポートす高解像度の地図を作成する。このデータは、ビデオや画像ではなく、1キロメートルあたり約10kbの圧縮されたテキストだ。この新しいEyeQ Ultraチップの開発に貢献した地図技術にクラウド経由でアクセスし、走行可能な道路前方の最新情報をリアルタイムで提供する。

Mobileyeは、BMW、日産、Volkswagen(フォルクスワーゲン)など6社のOEMと契約し、先進運転支援システムに使用されるEyeQ4チップを搭載した車両からデータを収集する。商用車については、商業オペレーターに販売するアフターマーケット製品からデータを収集する。同社によると、現在、100万台以上の車両がREMデータを収集しており、1日あたり最大2500万キロメートルにのぼる。

EyeQ Ultraは、前世代のSoCアーキテクチャを踏襲している。Mobileyeによると、EyeQ Ultraは、EyeQ510個分の処理能力を1つのパッケージに詰め込んでいる。同社のソフトウェアで設計されたEyeQ Ultraは、追加のCPUコア、ISP、GPUと対になっており、カメラのみのシステムとレーダーとLiDARを組み合わせた2つのセンシングサブシステムからの入力と、車両の中央演算システム、高解像度REMマップ、RSS運転方針ソフトウェアからの入力を処理できるという。

自動運転可能な自動車、トラック、SUVを消費者に販売することを目指す自動車メーカーは、理論的には、このまだ販売されていないチップを使ってその目標を実行することになる。EyeQ UltraにはレーダーやLiDARなどのセンサーは搭載されていない。その代わり、入ってくる情報をすべて処理する。EyeQ Ultraチップをどのように使うかは、顧客である自動車メーカー次第だ。例えば、ある自動車メーカーは高速道路でのみ自動運転可能な新車を提供するかもしれないし、別の自動車メーカーは都市部での自動運転に焦点を絞るかもしれない。

画像クレジット:Mobileye

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Pixel 6のAI機能向けに設計されたTensor SoCで、グーグルは独自チップに賭ける

Google(グーグル)のPixel 6とPixel 6 Proほど、正式発表前に詳しい情報が得られたスマホは今までなかったのではないだろうか。しかし、同じようなAndroid携帯電話が多い中で、Googleは、特にそのすべてを動かすチップに関して、興味深い選択をした。Googleは今回、自社設計のSoCを搭載したスマートフォンを初めて提供する。

「Tensor」と名付けられたこのチップについて、Googleは2021年夏のはじめに初めて言及した。これはスマートフォンのすべてのオンデバイスAIを動かす。基本的には、Google独自のAI / MLアクセラレータに、比較的既製のArmのCPUコアとGPUコア、そしてGoogleの新しいセキュリティコアであるTitan 2を組み合わせたものだ。

画像クレジット:Google

Googleは、TensorがPixel 5に搭載されていたチップよりも最大80%高速なパフォーマンスを提供することを約束している。率直に言って、Pixel 5はよりミッドレンジのスマートフォンだったが、日常的な使用では完全にスムーズに感じられる。米国時間10月19日の発表に先立ってリークされたベンチマークでは、Qualcommの最新のSnapdragonモバイルチップと同等とされているが、これらのベンチマークにはGoogle独自のAI / MLコアは含まれておらず、Pixel 6のカメラとその複雑なコンピュテーショナルフォトグラフィーのキレを良くするためにこれらの専用コアが果たす役割は、標準的なベンチマークでは実際には捉えられない。

しかし、これらの初期のリーク情報からわかったことは、Tensorは、Armのパフォーマンス重視のモバイル設計のフラッグシップであるArm Cortex-X1チップを2つ搭載しているということだ。比較すると、Snapdragon 888は1つしか搭載していない。最近のSoCではほとんどがそうであるように、低パフォーマンスでバッテリーを節約するコアもある。噂によると、古いA76ベースのコアと最近の超高効率のA55コアが混在しているとのことだ(これらはすべて、Pixel 6が約束された24時間のバッテリー寿命を達成するのに役立っている)。Google自体は、これらの詳細については完全に沈黙を守っているが、これは、同社がこのシステムのAI機能に全面的に注力しようとしていることを考えると、理に適っている。

また、このチップには、低消費電力のAI「Context Hub」が搭載されており、デバイス上で常時稼働する機械学習機能の一部を支えている。

Googleのハードウエア部門責任者であるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏は、19日の発表の中で、ライブ翻訳から携帯電話の写真・動画機能まで、これらのAI体験を強調した。

Google SiliconのシニアディレクターであるMonika Gupta(モニカ・グプタ)氏は、発表の中で次のように述べた。「Google Tensorによって、Motion Mode(モーションモード)、Face Unblur(フェイス アンブラー)、動画の音声強調モード、動画へのHDRnetの適用など、最先端のMLを必要とする驚くべき新しい体験を実現しています。Google Tensorは、スマートフォンの利便性の限界を押し広げ、画一的なハードウェアから、私たちが携帯電話を使用するさまざまな方法を尊重し、それに対応するのに十分な知能を持つデバイスにしてくれます」。

19日のイベントで同氏は、このチップがここ数年の間に開発されたものであることにも言及した。チームが行った設計上の選択はすべて、それらのAI機能を最大限に生かすことに基づいていたという。


画像クレジット:Google

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがフラッグシッププロセッサ「M1 Pro」を発表

Apple(アップル)は、新しい「M1 Pro」と「M1 Max」チップで、PCに全面戦争を挑み、パフォーマンスを大幅に向上させると同時に、バッテリー消費量を大幅に削減した。M1 Maxは、グラフィックスのプロをターゲットにしていることは明らかだが、Macにさらなるゲーム機能をもたらすことになるかもしれない。

関連記事:アップルが新チップ「M1 Pro」発表、M1と比べ最大70%高速に

M1 Maxは、M1 Proのアーキテクチャをベースに、さらに強力な機能を追加している。このアーキテクチャでは、メモリ帯域幅を最大400GB/sへと大幅に向上させている。これは、すでに非常に高速なM1チップの約6倍、発表されたばかりのM1 Proチップの2倍に相当する。

新チップは570億個のトランジスタを搭載し、64GBのユニファイドメモリー(GPUとCPUの共有メモリー)をサポートしている。M1 Proと同じ10コアのCPUアーキテクチャを採用し、GPUを32コアに増強した他、ハードウェアアクセラレーションによるH.264やHEVCの映像処理のための新しいメディアエンジンを搭載している。また、2つの並列ビデオエンコーディングエンジンを搭載しており、ビデオエディターなどの重いグラフィックス処理を行うユーザーを喜ばせることだろう。

最も印象的な主張は、M1 Maxが1Wあたりの消費電力カーブを同じに保つとしていることだ。言い換えれば、数分でバッテリーを使い切ることなく、より重いグラフィックスを扱えるということだ。

Appleはイベントの中で「では、我々が見つけた最速のPCノートパソコンに搭載されているチップと比較してみましょう」とジョークを飛ばし、ライバルたちと比較しながら、そのパフォーマンス対消費電力スーパーパワーを見せつけた。

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが新チップ「M1 Pro」発表、M1と比べ最大70%高速に

Apple(アップル)は米国時間10月18日、予想どおり新しいチップを発表したが、その名前はほとんどの人が予想していなかったものだった。2020年11月に発表され、様々なApple製品に搭載されてきたM1チップをさらに強化した「M1 Pro」だ。Appleは、M1 ProがオリジナルのM1よりも最大70%高速であることを約束している。

これに加えて、同社はProのさらに強力なバージョンである「M1 Max」も発表した。その詳細はこちらでご覧いただける。

M1 Proは、M1の後継とまではいかないが、基本的には既存のチップをよりパワフルにしたものだ。AppleのTim Cook(ティム・クック)CEOは、この製品を「M1ファミリーの次のチップであり、ゲームチェンジャー」と呼んでいる。

同社によると、チップの再設計を行い、チップが利用できる帯域幅を200GB/sに大幅にアップしたという。そして最大32GBのユニファイドメモリーに対応している(一部のプロユーザーにはちょっと残念かもしれない)。

この5nmチップの特徴は、より多くの、合計10個のコアを備えていることだ。そのうち8つは高性能コア、2つは高効率コアで、さらに16個のGPUコアを搭載している(初代M1の8個から増加)。このSoCには、初代M1の2倍となる合計337億個のトランジスタが搭載されている。チップにはもちろん、AIアプリのためのAppleのNeural Engineも搭載されている。

このチップは、最大2台の外部ディスプレイに対応している。

画像クレジット:Apple

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

ソシオネクストが深層学習を用いたSLAM処理を大幅に高速化、画像認識による自律制御がエッジ機器でも可能に

ソシオネクストが深層学習を用いたSLAM処理を大幅に高速化、画像認識による自律制御がエッジ機器でも可能に

SoC(システム・オン・チップ)の設計開発を行うソシオネクストは10月12日、自動運転車やロボットなど自律制御を行う装置に欠かせないSLAM(自己位置推定と環境地図作成を同時に行う)処理に必要な時間を、従来技術の約1/60に短縮できる手法を開発したことを発表した。これは、東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻、岡谷貴之教授の研究ブループとの共同研究によるもの。

SLAMは、自動車などではLiDAR(ライダー:レーザーで画像検出と測距を行うシステム)を用いたものと、カメラ映像で行うVisual SLAMとに大別される。Visual SLAMは、安価なカメラで行えることと、画像処理技術が発達したことから応用が広がっている。さらに深層学習を使った画像認識技術の発展もこれを手伝っている。

しかし、深層学習による画像処理では、画像から抽出された3次元点群と観測データをすり合わせて画像の正確な3次元復元を行うバンドル調整(BA。Bundle Adjustment)という、膨大な計算処理が必要となる。そのため、エッジ機器のようなCPU処理能力に制約のある環境では、Visual SLAMは難しかった。

そこでソシオネクストの研究チームは、「グラフネットワーク(Graph Network。GN)を用いた推論による近似計算手法」を提案。これにより従来方式(g2o)と比較して「計算量を抑えた推論処理」が可能となり、処理時間は1/60となった。

ソシオネクストが深層学習を用いたSLAM処理を大幅に高速化、画像認識による自律制御がエッジ機器でも可能に

計算量が減ったことで、CPUの負担や、それにともなうシステムの消費電力も抑えられる。そのため小さなエッジ機器でも高度なVisual SLAM処理が可能となり、応用の範囲が大きく広がる。ソシオネクストでは、この新しい推論手法による処理効率の向上を、画像認識以外の新しい顧客アプリケーションへの応用も検討すると話している。

Google CloudがIntelのベテランをカスタムチップ開発チームに招く

近年、本来半導体企業ではない大企業が自社独自のチップを開発するトレンドがある。米国時間3月22日、はGoogleが同社のカスタムチップ事業部門を率いる人物として、長年Intelに役員として在籍したUri Frank(ウーリー・フランク)氏を副社長に迎えた。

Googleのフェローでシステムインフラストラクチャ担当の副社長Amin Vahdat(アミン・ヴァーダット)氏は、この新規雇用を発表するブログ記事で次のように述べている。「クラウドインフラストラクチャーの未来は明るく、そしてそれは急速に変化している。私たちが世界中からのコンピューティングの需要に応え続けようと日々努力している中で、ウーリー・フランク氏をサーバー用チップの設計を担うエンジニアリング担当副社長として迎えることができたのは、とても喜ばしいことだ」。

フランク氏の雇用でGoogleが得るのは、チップ業界の経験豊富な執行役員だ。彼は20年ほどをIntelで過ごし、技術者から副社長にまで昇進して、2021年3月に同社を去るまでDesign Engineering Group(設計工学集団)を率いてきた。

フランク氏はGoogleの一員として、イスラエルにあるカスタムチップ部門を率いる。彼はLinkedInに発表した声明で、これはカスタムシリコンの開発で長年の履歴を有する企業に加わるという大きな一歩だ、と述べている。

「Googleは、世界最大で最も効率の良いコンピューティングシステムを設計し構築してきました。長年、カスタムチップはこの戦略の重要な一部でした。ここイスラエルでチームを育てていくことと、コンピュートインフラストラクチャーにおけるGoogleクラウドのイノベーションを加速することが、今から楽しみです」とフランク氏はいう。

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Googleのチップ内製の歴史は2015年にさかのぼり、そのとき同社は最初のTensorFlowチップを立ち上げた。2018年には動画処理用チップに進出してOpenTitanを加え、セキュリティを重視するチップを2019年にローンチした。

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フランク氏の仕事は、これまでの同社の経験をベースとする開発の継続であり、顧客やパートナーと協力して新しいカスタムチップのアーキテクチャーを作っていくだろう。Googleは、さまざまなベンダーからマザーボードを手に入れていくやり方から卒業して、独自の「system on a chip」すなわちSoCを作る方向へ向かおうとしている。それにより効率が大幅に向上する、と同社はいう。

「マザーボードの上に部品を集積するこれまでのやり方では、各部品が数インチずつ離れることになる。そこで私たちは『Systems on Chip(SoC)』に目を向け、複数の機能が1つの同じチップの上にあり、複数のチップが1つのパッケージに収まっているアーキテクチャーを目指した。つまり、SoCは新しいマザーボードだ」とヴァーダット氏は語る。

Googleは早期から「Build Your Own Chip(自分のチップは自分で作ろう)」運動を推進してきた。現在では、AmazonやFacebook、Apple、Microsoftといったその他の大企業も自分たち独自のニーズを満たし、ハードウェアとソフトウェアの関係をより精密にコントロールするために、チップの内製を始めている。

フランク氏の仕事は、Googleのカスタムチップチームを率いて、それを次の高いレベルへと引き上げることだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleSoC半導体

画像クレジット:zf L/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

EdgeQが次世代5G・AIチップの詳細を明らかに

5Gはワイヤレス技術の現在進行形の革命だ。新旧のすべてのチップ会社がこの非常に競争の激しい、しかし非常に儲かる市場に参入しようとしている。この分野で最も興味深い新しいプレイヤーの1つがEdgeQ(エッジキュー)だ。同社は、Qualcomm(クアルコム)にルーツを持ち、強力な技術的血統を有するスタートアップで、2020年にシリーズAで約4000万ドル(約42億円)を調達した後にTechCrunchでも取り上げた

同社がデザインに取り組んでいる間、テクノロジーに関しては謎に包まれていたが(筆者がこの記事を書いているとき、同社のウェブサイトには文字通り「WordPressへようこそ。これは最初の投稿です。編集または削除してから書き始めてください!」と書かれていた)、同社は米国時間1月26日、初めてその詳細を明らかにした(そして会社のウェブサイトも更新した)。

システムオンチップ(SoC)設計の最も興味深い点は、RISC-Vに基づいていることだ。x86やArmのようなプロセッサアーキテクチャとは異なり、RISC-Vはオープンソースであり、あらゆる種類の永続的な人気とエコシステムに到達した最初のオープンアーキテクチャの1つだ。EdgeQやTechCrunchが2020年末に取り上げたSiFiveなど、多数の新しい企業がRISC-Vで開発している。

EdgeQの創業者でCEOを務めるVinay Ravuri(ビネイ・ラブリ)氏は、EdgeQがRISC-Vを利用することによりFPGAと呼ばれる再プログラム可能なプロセッサの柔軟性を備えたチップを提供できると同時に、より優れた省電力を備えた、よりまとまりのある統合製品を提供できると説明した。同氏の見解では、これは5Gの展開にともなう、これまでの無線通信市場における大きな課題の1つだった。

同氏は「クローズドシステムを使用すればコンパクトになり、すべてが上手くはまります」と述べ、垂直統合型の基地局を世界中に広く展開しているHuawei(ファーウェイ)やEricsson(エリクソン)などのマーケットリーダーを指した。問題は、すべての機器を特定のベンダーから調達すると、代わりがきかないため顧客が不安を感じることだ。一方、OpenRANのような標準に基づく純粋にオープンなシステムから得られるのは、既製の部品からつぎはぎで作った「不格好なソリューションです」。ボックス内のコンポーネントは一緒に使用する目的で設計されていないため、消費電力の増加につながってしまう。

ラブリ氏によると、EdgeQはオープンとクローズドの中間に位置する。統合され、場合によっては、無線基地局の電力需要を最大50%節約できる拡張可能なシステムを提供している。重要なのは、より優れたSoCを介して機械学習をワイヤレス通信に組み合わせ、すべての部分をシームレスに連携させることだ。「通信チップの独自性はアルゴリズムにあります」と同氏は言う。「砂を売っているわけではありませんし、ただゲートを繋げてこれがプロセッサだというわけでもありません。ゲートを繋げるとともに、物理的な通信レイヤー向けのアルゴリズムがあるわけです」。

EdgeQの創設者でCEOのビネイ・ラブリ氏(画像クレジット:EdgeQ)

EdgeQのVP兼製品責任者であるAdil Kidwai(アディル・キドワイ)氏は、次のように述べた。「内部でハードウェアへの命令をソフトウェアが制御します。これは消費電力が非常に少ない『ソフト』モデムです」。EdgeQはRISC-Vを基盤としているため、そのエコシステムで利用可能な既存のツールチェーンは会社の製品にも使われ、エンジニアはRISC-V用に開発されたコンパイラとデバッガが使える。ラブリ氏は、EdgeQがパフォーマンスを最適化するためにベースRISC-V実装に約50~100の独自のベクトル拡張を追加したと述べた。

製品の設計がしっかりと確立されたことで、同社は2021年前半に顧客と一緒にシステムを試してみる予定だとキドワイ氏は語った。「顧客の製品化サイクルに合わせてサンプルを取ります」と同氏は述べた。そして2022年までに収益を計上し始めたいとのことだ。EdgeQの基地局は、OpenRANオプション7.xおよびオプション6と互換性がある。

同社はまた、Qualcommの元CEOであるPaul Jacobs(ポール・ジェイコブズ)氏と同社の元CTOであるMatt Grob(マット・グロブ)氏の両方が公式の立場でEdgeQの諮問委員会に加わったことにも本日初めて言及した。2人はQualcommにいたときにラブリ氏に会い、EdgeQの開発を通じて連絡を取り合っていた。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:EdgeQ5GSoC

画像クレジット:PAU BARRENA/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi