テスラの第2四半期は予想を超える約441億円の損失

Tesla(テスラ)は米国時間の7月24日、第2四半期として予想を上回る4億800万ドル(約441億円)の損失を公表した。これは1株あたりでは2.31ドル(約250円)の損失となる。収益は63億ドル(約6812億円)で、電気自動車の出荷台数としては過去最高を記録した。

今月初めにTeslaは、第2四半期に9万5200台の電気自動車を納車したと発表していた。期待外れだった第1四半期と比べれば劇的な回復だった。その数字は後になってより正確な9万5356台へと修正され、これまでの記録を更新した。特に第1四半期は、その前の四半期からほぼ3分の1の減少となる6万3000台だったので、それと比べると目立った増加となっている。

FactSetの調査に協力したアナリストの予想では、収益は64億7000万ドル(約7000億円)で、調整後の損失は1株当たり35セントになるということだった。第2四半期の純損失には、1億1700万ドル(約127億円)のリストラ費用やその他の支出が含まれているとTeslaの報告書には記されている。

第1四半期からの回復

収益についてはウォール街の予想に届かなかったものの、今年の第1四半期と比べれば、Teslaは回復したことになる。第1四半期には、7億2000万ドル(約779億円)、1株当たりでは4.10ドル(約443円)の損失を計上していた。これは、期待を下回る出荷台数だけでなく、自動車の製造費用と価格の修正が、収益を圧迫したからだ。一過性の損失を差し引いて考えれば、Teslaの第1四半期の損失は4億9400万ドル(約534億円)、1株当たりでは2.90ドル(約314円)となる。

収益は、第1四半期の45億ドル(約4866億円)から、第2四半期には63億ドル(約6812億円)へと40%増加した。これは、特にModel 3など、車の売れ行きが好調だったためだ。

またTeslaの資本は、大幅に増加している。第2四半期の終了時点で保有する現金および現金同等物の総額は50億ドル(約5406億円)となった。これはTeslaとして史上最高額だ。株式の発行、および転換社債の公募によって増加したもので、24億ドル(約2595億円)の増加となった。

Teslaの第2四半期の純現金収支(営業キャッシュフローから資本支出を差し引いたもの)は、6億1400万ドル(約664億円)だった。第1四半期には、9億2000万ドル(約995億円)の損失だった。

Teslaの財務状況は、2018年の同じ四半期と比べて改善している。2018年の同期には、40億ドル(約4325億円)の収益に対して損失は7億1800万ドル(約776億円)、1株当たりでは4.22ドル(約456円)を計上していた。

自動車の粗利益率

目立つのは、自動車の粗利益率が第2四半期には18.9%に縮小していること。前年の同期間は、20.6%だったもの。これは一般に認められている会計原則に基づいた数字だ。Teslaによれば、生産量の拡大、材料費の削減、1台あたりの労働時間の短縮、物流コストの削減などによって、生産コストの削減を引き続き推し進めるという。

Teslaは、Model SとModel Xに関する粗利益率は、旧式のパワートレインバージョンの値引きによって悪化したとしている。これらの車両の在庫は、第3四半期に向けて大幅に減少したと同社は付け加えている。

以前には、Model S、Model X、Model 3において、自動車の粗利益率として25%を目標に定めていると述べていた。しかし、その目標は第1四半期には達成できず、第2四半期にはさらに遠ざかってしまった。

Teslaの以前の利益率は、価格も高く1台あたりの利益率も高いModel SとModel Xの販売によって引き上げられていた。現在のTeslaは、難しい立場に立たされている。Model SとModel Xの販売の減少による利益率の縮小を食い止めるほどにはModel 3の需要も伸びていないのだ。Model 3は、Model SやModel Xに比べて、1台あたりの利益率は低い。

ガイダンスの維持

Teslaは、カリフォルニア州フレモントの工場では、「1週間に7000台のModel 3を製造できる能力があることを実証している」と胸を張る。同社によれば、さらに生産台数を増やすべく取り組んでいるという。2019年末までには、どのモデルについても1週間に1万台を生産できるようにすることを目指していると語っている。

Teslaは、今年の納車台数として、36万台から40万台という以前からのガイダンスを変更していない。

また同社は、四半期ごとの純現金収支がプラスになるものと期待している。とはいえ、新製品の発売とプロモーション活動によって、再び損失に転じる可能性があるという重大なただし書き付きでの話だ。Teslaは、2020年秋までに、Model Yの生産を開始する計画だ。さらに、新しいRoadsterやTesla Semiなど、その他の製品もすでに予定に組み込まれている。

Teslaは、資本支出に関するガイダンスを15億ドル(約1622億円)から20億ドル(約2163億円)の間へと引き下げた。

画像クレジット:Tesla

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

中国工場でのテスラModel 3生産の準備は順調,

Tesla(テスラ)は7月24日、今年末までに上海工場で生産を開始する予定のModel 3の準備が順調に進んでいることを発表した。今年の末という期限はテスラにとって、この先販売を伸ばし高額な輸送コストと関税を避けるためには重要なマイルストーンである。

ギガファクトリー上海(The Gigfactory Shanghai)は「順調に建築が進んでいます」と、テスラは株主に向けた第2四半期報告書の中で報告している。生産の第1段階に備えて、第2四半期には製造機械の工場内への搬入が開始された。

「ギガファクトリー上海の立ち上げのタイミングにもよりますが、2020年6月30日までの12カ月間に、世界で50万台を超える車両の生産をすることを目標として掲げ続けます」と同社は書いている。

テスラは4月24日に提出された第1四半期決算報告書の中では、今年第4四半期の始めまでに量産体制に達することで、世界で50万台の生産を「目指している」と記載していた。「とはいえ、現段階の状況をみると、2020年6月30日までの12カ月の間に、世界で50万台以上の生産を行えるようになる可能性の方が高いでしょう」とも書いていたのだ。

中国工場の生産ラインは、年間15万台の生産能力を持ち、カリフォルニア州フレモントにある工場のModel 3ラインよりも単純化され、より費用対効果の高いものになるだろう。以前テスラは、このModel 3の第2世代ラインは、フレモントのModel 3関連ラインならびにネバダ州スパークスのギガファクトリーに比べて、少なくとも単位あたり50%はコストが下がるだろうと語っていた。

テスラは、販売の勢いを継続するために中国でのセールスに期待している。

「昨年、中国の消費者が中型プレミアムセダンを50万台以上購入したことを考えると、この市場はテスラにとって強力な長期的チャンスをもたらしています」と、同社は水曜日に述べている。

Model 3を現地生産することで、輸送料と関税を削減できる。しかし、それがすべての障害を取り除いてくれるわけではない。

中国での自動車販売は昨年から打撃を受けてきた。回復の最初の兆候は、今月初めに中国乗用車協会が発表した暫定的な数字が、6月の自動車販売台数が、前年同期比で4.9%増の180万台に達したことである。これは、世界最大の市場における2018年5月以来の最初の増加だった。

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(翻訳:sako)

TezLabアプリはテスラ車のためのFitbitだ

Tesla(テスラ)とその世界中の電気自動車群に対する、最も優れたリアルタイムの洞察が、シリコンバレーのテスラ本社以外で得られるとすれば、それはブルックリンの小さなスタートアップ、TezLabのレンズを通してかもしれない。

創業から2年余りが経ったTezLabは、創業者たちがユーザーの転換点であると考えている地点、すなわちついに収益化へと向かうことができるマイルストーンにたどり着こうとしている。そして同社は、その計画を加速することを助けるために、多くの新機能を追加している。

テスラ車を所有していない人にとっては、TezLabという名前はおそらくなじみのないものだろう。だが特定のコミュニティでは、すなわち自分の電気自動車がどのように振る舞っているかを知ることに夢中なテスラ車のオーナーたちの間では、TezLabはおなじみのものだ。

TezLabはテスラ車用の、Fitbitのような無料アプリ。アプリをダウンロードしたテスラ車のオーナーは、自分の車の効率性や総移動距離を追跡することが可能であり、またアプリを使って車両のいくつかの機能を制御することが可能である。例えばドアの施錠や解錠、エアコンの動作などを制御できる。さらにユーザーがマイルストーンを達成したり、タスクを完了すると、バッジを獲得できるといった、ゲーミフィケーションの要素さえ備えている。

同社は、収益化を目的とした長期計画の一環として、新しい機能を追加し始めた

そうした機能の1つとして、Wazeのようにデータをクラウドソーシングを行い、地図上でテスラ・スーパーチャージャーステーション(テスラ車のための充電ステーション)の状況とレーティングを提供するサービスが提供され始めた。以下のビデオは、このスーパーチャージャー機能がどのように機能するかを示したものだ。

スーパーチャージャーのWaze的機能は、同社のより広いクラウドソーシングとソーシャルコミュニティの計画の中では「第1段階」とみなされているものだ。

創業物語

TezLabを開発する6人のチームはHappyFunCorp(HFC)から生まれた。HFCは、モバイル、ウェブ、ウェアラブル、そしてIoTデバイスのためのアプリケーションを顧客から委託されて開発するソフトウェアエンジニアリング企業である。顧客には一連のスタートアップと並んでAmazonやFacebook、そしてTwitterも含まれている。

共同創業者のベン・シッパース(Ben Schippers)氏とウィリアム・シェンク(William Schenk)氏を含むHFCのエンジニアたちは、テスラの技術中心のアプローチと、1つの重要な点に引きつけられた。それはテスラのAPIエンドポイントが外部からアクセス可能だったということだ。

テスラのAPIは技術的には公開されていない。しかしそれは存在していて、テスラ自身が直接提供するアプリケーションが、車と通信して、バッテリ残量を読み取ったり、ドアのロックを行ったりするために使われている。これをリバースエンジニアリングすることで、サードパーティのアプリがこのAPIと直接通信することが可能になる。最近テスラのCEO、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が、APIをサードパーティに公開する件に関して発言を行っている。

「基本的に、サーバーに接続するための配管は既に設置済なのです」とシッパース氏はTechCrunchに語っている。「これが私たちに行動を促すきっかけでした」。

テスラの購入ブームがHFC内で巻き起こった。シッパース氏、シェンク氏そしてたくさんのHFCのエンジニアたちや職員たちがModel 3のようなテスラ車を購入して、今でも所有している。そして最初のTezLabを開発するために35万ドル(約3800万円)の初期資金をHFCは用意した。

データリポジトリ

TezLabはすべてのテスラ車オーナーに使われているわけではない。だがシッパース氏は、アプリはユーザー数のクリティカルマスに近付いていると信じている。毎週200人以上のテスラ車オーナーがこのアプリをダウンロードしており、その割合は加速している、と彼は語った。

Sensor Towerによれば、TezLabはApple App StoreとGoogle Play上で、合計1万6000回インストールされている。この数字はユニークで新しいインストール数を示したものだ。同社は同じユーザーが再インストールした場合や、所有する複数のデバイスにインストールした場合には、重複したカウントは行わない。とは言えそのインストール数は1万8000に近い可能性がある。なぜならアプリのテストを行うオンラインサービスであるTestFlightでも多数登録されているからだ。

比較のために数字を挙げると、テスラは2018年に全世界で24万5506台の車両を出荷している。TezLabはすべてのテスラオーナーが彼らのアプリをダウンロードすることは期待していない。その代わりに、シッパース氏はまずオーナーの10%を狙っている(彼はそれが手の届く目標だと考えているのだ)。そして最終的にはより高いシェアを狙おうとしている。

現在の数でさえ、TezLabはテスラデータの大規模なリポジトリ(貯蔵所)となっている。同社は1日に85万から100万個のイベントを保存していて、その量は増え続けている。シッパース氏によれば、これは1日あたり1 GBを超えるデータに相当する。

「私たちは、車両群が何をしていて、何故それをしているのかに対する大規模な予想を始められる位に、十分なデータ量をシステム内に収集しています」と、HappyFunCorpのCEOであり、TezLabの製品責任者であるシッパース氏は語っている。

tezlab

データは集約され、匿名化されていて、そして公開されていない。また、それらのデータを販売する計画は存在しない。

「データを販売するというビジネスに参入することなく、本当に意味のあるものを開発できると考えています」とシッパース氏はTechCrunchに語った。

もちろん、理論的には、もしテスラがアクセス方法を変えてしまったら、シッパース氏と他のメンバーがTezLabで開発したものは、一夜にして使えなくなってしまう可能性がある。

「テスラは、FacebookZyngaに対して行った仕打ちを、私たちに対して行うことが可能です。もちろん私たちはそれを望んでいませんが」とシッパース氏は語った。

テスラはこの件に関するコメントは拒否している。

TezLabがそのウェブサイト上で公に提供しているのは、その処理データに基づく知見である。例えば、サイトにアクセスした人はだれでも、所有されているモデルの内訳や、平均走行時間、および充電間の平均時間などを知ることができる。

同社がアプリに機能を追加するにつれて、オーナーたちがどのように自分のテスラ車を使用しているかについての理解が深まるに違いない。

舞台裏ではもちろん、TezLabは自社のウェブサイトに表示されるもの以上のものを知っている。それはファントムドレイン問題(人間が使用していないのに充電残量が早く減っていく現象)や、テスラAPIがオフラインになっているかどうか、もしくは充電量が急増しているのかといった状況を素早く検出することができる。また例えばTezLabは、テスラのスーパーチャージャーステーションへの訪問が、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日。5月の最終月曜日)には、2019年の他の日の平均に比べて84%多かったということを発見することができる。

Stravaモデル

データを補足して保存することが、収益化を目指すTezLabの計画の中核だ。より多くの機能が追加されても、アプリは無料のまま提供される。

同社は、ソーシャルフィットネスネットワークであるStravaのビジネスモデルにならうことを計画している。それは機能ではなく容量に対して課金するモデルだ。新しい機能が追加されるにつれて、オーナーたちにとってデータは遥かに価値のあるものになる可能性がある。TezLabはオートパイロット走行の追跡を検討していて、その他にもテスラ車に現在搭載されているセキュリティ機能であるSentry mode(監視モード)で「面白いこと」を行うことも検討中だ。

この夏には、アプリはコミュニティを形成するためのクラブ(これはシッパース氏が特に望んでいる)機能を導入する予定だ。この機能を使うことで、テスラ車のオーナーたちは、例えばノルウェー、ブルックリン、あるいはサンフランシスコといった特定のクラブに参加することができる。それはオーナーが他のオーナーたちを簡単に見つけて会話を行うことができるようにデザインされる。ただしこのクラブに入ることができるのは、テスラ車を所有する人だけだ、とシッパース氏は付け加えた。

テスラに対しては、TezLabのスタッフは自らを「王国の守護者」と位置付けている。結局、彼らの活動すべてが、テスラの成功を助けることになるのだ、とシッパース氏は語っている。

「私たちが参考にしているのは、Fitbitがウォーキングとエクササイズとモチベーションのために行ったことなのです」と彼は言った。「私たちはそれを電気自動車の分野に持ち込みたいのです」。

画像クレジットBryce Durbin

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(翻訳:sako)

テスラはバッテリー用鉱物確保のため採掘業に参入か

テスラは、電気自動車のバッテリーに使用されている鉱物を採掘するビジネスに参入するかもしれない。製品のラインアップを拡大し、生産量を上げるために必要となるからだ。これは、同社CEOのイーロン・マスク氏が年次株主総会で述べたこと。

この話が出たのは、マスク氏が電動のピックアップトラックに関する計画について話し、全電動の大型(Class 8)セミトレーラートラックの製造を2020年末までに開始するつもりであることを明らかにした後だった。こうした計画は、テスラが大量のリチウムイオン電池セルを製造することができるかどうかにかかっていると、同氏は述べた。

「バッテリーを十分に確保できなければ、車種を増やしても意味がないですね」と彼は述べた。「種類だけ増やしても、何のメリットもない」。

ネバダ州Sparksにあるテスラの巨大な工場は、世界規模でバッテリーの供給量を拡大し、電気自動車のコストを低減することを目指して建設された。Gigafactory 1と呼ばれるこの工場では、Model 3の電動モーターとバッテリーパックを生産している。他にも、テスラの蓄電装置、PowerwallとPowerpackも作っている。パナソニックは、そのプロジェクトに関してテスラのもっとも重要なパートナーであり、サプライヤーだ。パナソニックがバッテリーセルを製造し、テスラがそのセルを使って電動車用のバッテリーパックを作る。

今のところ、テスラの計画では、製品の供給は、工場の生産量の拡大に合わせたものとなっている。テスラが生産量を「非常に高いレベル」に増やすとすれば、「サプライチェーンをずっと下の方まで見直して、採掘事業に参入するかもしれません。まだよく分かりませんが、その可能性がないわけではない」と、マスク氏は言い放った。

「私たちは、可能な限りの最速で拡大できるよう、やらなければならないことは何でもするつもりです」と彼は付け加えた。

ニッケル、銅、リチウム、その他、バッテリーに使用されている鉱物の供給についての懸念は新しいものではない。テスラの鉱物調達責任者は先月、業界の非公開会合の席で、近い将来、ニッケル、銅、リチウムが世界的に不足することを予測していると語った、とロイター通信は伝えている

リチウムの供給に多くの関心が集中しているが、銅とニッケルの供給にも不安があるというわけだ。長年の投資不足が、銅の供給を激減させた。その結果、Freeport-McMoRanのような企業が、米国とインドネシアで事業を拡大することになった。

テスラがニッケルの採掘に注力する可能性はあるだろう。マスク氏は、テスラがコバルトの代わりにニッケルをもっと多く使うよう、押し進めたという経緯がある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Tesla Model 3の組立ラインの自動化は間違っていなかった

2017年にTesla(テスラ)が、Model 3の驚くほど野心的な毎週5000台の生産目標と「生産地獄」の始まりを発表したときは、アナリストたちは慎重だった。しかしイーロン・マスク氏は、ハイパーオートメーション、すなわちロボット組立ラインが、製造スピードを上げコストを引き下げる秘密兵器だと言いながら、それを上手くやり遂げられると豪語した。そこから1年半経って、今やテスラは2018年第4四半期の時点で9万1000台を出荷している。しかし、その生産台数の増加は、無数の問題の解決や、マスクの当初の「高度に自動化された組立ライン構想」から離れることなしには達成できなかった。

何が起きたのだろう?

自動化への取り組みがうまくいかなかった理由を尋ねられたマスク氏の答えは、終始一つの大きな課題を巡っていた。それはロボットビジョンである、つまり組立ラインのロボットが行動を決めるための対象として何を「見る」のかをコントロールするソフトウェアのことだ。残念なことに、当時の組立ラインのロボットは、ナットやボルトのような物が予期しない方向を向いていることや向き、車のフレームの間での複雑な操作に対処することができなかった。そのような問題が発生するたびに、組立ラインが停止していたのだ。結局、多くの組み立て工程の中で、ロボットを人間に置き換えたことで、はるかに簡単に問題を解決できたのだ。

現在コンピュータビジョン(ロボットビジョンのより包括的な名称)は至るところに存在していて、さまざまな業界を横断するAIテクノロジと画期的なアプリケーションの、次のフロンティアを象徴している。この分野で、現在研究者や企業によって行われている進歩はとても印象的なものであり、イーロン・マスク氏の自動車組立ラインの自動化ビジョンの実現に必要だった要素も現れはじめている。その核となるのは、コンピューターやロボットが、現実の世界で発生する(ナットやボルトの間違いのような)予期せぬ厄介な出来事の大部分を、確実に処理することができるようになるという技術だ。

コンピュータビジョンの転機の瞬間

コンピュータビジョンが転機を迎えたのは、2012年に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用したときだった。それ以降、その勢いは本当に増している。2012年以前は、コンピュータビジョンのソリューションは主に手作りのものだった。基本的にアルゴリズムは、手作業で定義されたルールセットを持ち、画像の特徴を比較的効率的に数学を用いて記述することが可能だった。これらは人間によって選択され、そしてコンピュータビジョン研究者によって組み合わされて、自転車や、店頭、または顔のようなオブジェクトを画像の中で特定することに用いられた。

機械学習の台頭と人工ニューラルネットの進歩が、これらの全てを変えてしまった。画像の特徴を自動的に読み解き学習できる、大量のトレーニングデータを使用したアルゴリズムの開発が可能になったのだ。その実際の効果は2つに分けられる。

(1)ソリューションがはるかに堅牢になったこと(たとえば、顔の向きが多少違っていたり、影があっても、変わらず顔として識別できるなど)。

(2)優れたソリューションの作成は、大量の高品質のトレーニングデータに依存するようになったことだ(モデルはトレーニングデータに基づいて特徴を学習するため、トレーニングデータが正確かつ量が十分で、アルゴリズムが後で見る可能性のある、多様な状況を表していることが重要だ)。

現在研究されていることは、GANと教師なし学習、そして合成データ

GAN(Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク)、教師なし学習、および合成グランドトゥルースなどの新しいアプローチにより、高品質のコンピュータビジョンモデルの開発に必要なトレーニングデータの量と、収集に必要な時間と労力を、大幅に削減できる可能性が出てきた。これらのアプローチで、ネットワークは実際に自分自身の学習をブートストラップし、より高い忠実度ではるかに速く、例外的ケースと異常値を識別することができるようになる。その後、人間がそうした例外的ケースを評価して解決策を再考し、高品質のモデルによりすばやく到達することができるようになる。

これらの新しいアプローチは、適用性、堅牢性、および信頼性の観点から、コンピュータビジョンの範囲を急速に拡大している。それらは、マスク氏の生産課題を解決できるだけでなく、無数の重要なアプリケーションでその境界を劇的に広げることになるだろう。そのいくつかの例を以下に挙げてみる。

  • 製造オートメーション:ロボットは、中心から20度ずれた車の座席や左に1インチずれた位置にあるネジのように、ランダムな向きのオブジェクトを扱うことが、ますます得意になって行くだろう。さらに、ロボットは、柔らかくて、折り曲げ可能な透明な物体を確実に識別することができるようになるだろう(例えば、先週Amazonで注文したビニール袋に入った靴下について考えてみよう)。現在バークシャー・グレイのような新しいロボットメーカーたちが、こうした技術の最先端を走っている。
  • 顔面検出:以前は、側面からの顔や、部分的に影が落ちていたり、隠されていたりする顔、そして赤ん坊の顔といった例外的なケースに対しては、顔面検出は堅牢に動作しなかった。現在、研究者たちは、コンピュータビジョンが、顔写真から90%の正確さでまれな遺伝性疾患を識別するのに役立つことを発見している。ある種のアプリケーションは消費者の手に渡るようになっていいる。これは、さまざまな照明条件や、画像キャプチャのコントロールが十分に行えない状況に対して、アルゴリズムがますます堅牢になったために可能になったのだ。
  • 医療用画像処理:進歩により、MRIの評価、皮膚癌の検出、 その他多数の重要なユースケースでの自動化が可能になった。
  • 運転手の支援と自動化:霧のかかっている状況では自律運転システムは機能していなかった。なぜならこれまでは濃い霧と岩を区別することができなかったからだ。現在では、教師なしの学習と(Nvidiaなどが主導する)合成データ作成機能が、数十億マイルに及ぶ路上記録映像でもカバーすることのできない例外的ケースでシステムを訓練するために、利用され始めている。
  • 農業:ジョン・ディアが買収した ブルー・リバー・テクノロジーのような企業は、現在雑草と作物を確実に区別して、選択的に除草剤を自動散布することができる。このことで、商業農業で使用される有害化学物質の量を劇的に減らすことができる。
  • 不動産情報:地理空間画像にコンピュータビジョンを適用することで、企業は洪水、山火事、ハリケーンによる風が、特定の施設に危険を及ぼす可能性がある時期を自動的に特定できる。これにより家の所有者たちは災害が訪れる前により早く行動することができる。

こうした進歩をながめていると、1つのことがすぐに明らかになる:イーロン・マスク氏は間違っていなかったのだ。単に彼のビジョン(ロボットやそれ以外のもの)が、現実から1〜2年先行していただけのことだったのだ。AI、コンピュータビジョン、そしてロボットは皆、正確性、信頼性そして効率性の転換点に近づいている。テスラにとって、「生産地獄」への次の段階(おそらくModel Y)を迎えるフレモント工場と上海工場では、大幅に異なる組立ラインを目にすることになるだろう。それらは、より上手く、ロボットとコンピュータービジョンが組み合わされたものになるのだ。

画像クレジット: Guus Schoonewille/AFP / Getty Images

この著者によるほかの記事:シリコンバレーの企業たちが人工知能の可能性を損なっている

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(翻訳:sako)

Tesla Model Yが3月14日のイベントで発表

Tesla(テスラ)のCEO、Elon Musk(イーロン・マスク)氏のツイートによると、同社は3月14日にロサンゼルスで開催するイベントでModel Yを発表する。

テスラが2003年に設立されて以来、Model Yは5車種目となる。マスク氏は2015年からModel Yのリリースをほのめかしていて、株主にあてた1月の書簡では量産は2020年末までに始まるとしていた。

テスラは、今年後半にModel Y生産の機械の整備を始め、ネバダ州にある「ギガファクトリー」で生産する、としている。株主への書簡でマスク氏は、Model Y生産ラインのコストは、新低価格の車種と約75%同じ部品を使うことから、カリフォルニア州フリーモントで生産されているModel 3より実質上低くなるとの見方を示している。

今回のModel Yに関する発表に先立ち、テスラは先週、3万5000ドル(約390万円)という低価格のModel 3の発売を明らかにした。

テスラは、この低価格を実現するため、グローバルで販売をオンラインのみにする。これは今後数カ月以内に多くの販売店を閉鎖することを意味する。交通量の多い場所にあって今後も存続する販売店はインフォメーションセンターになる、とマスク氏は電話での記者会見でこう述べた。販売店閉鎖に伴い、いくらかの解雇があり、マスク氏はより多くのサービス系の技術者を雇用すると語った。

「オンライン販売への移行、そして現在進めている他のコスト削減と併せて、全車種の価格を平均6%下げることができるだろう。これにより3万5000ドルのModel 3を予想より早く達成できた」とテスラは投稿している。

こうした変化はテスラにとって良い結果に結びつくはず、と経営陣は期待している。「Model 3はグローバルな商品となるだろう。事業収支は黒字化するはずで、上海の新ギガファクトリーも生産を開始する。そしてModel Y生産のための機械の整備を間もなく始める」と1月の株主への書簡にはある。

まだはっきりとはわからないものの、最終的にModel Yの生産が始まったら古いモデルは漸次廃止となるかもしれない。

テスラにはまた、他にも2つのモデルの計画がある。RoadsterとTesla Semiだ。この2つはいま開発中だ。

Vergeの記事の中で書かれているように、マスク氏は今回の発表の前に「Ides of March(3月15日)というのが面白いから」とModel Yを3月15日に発表すると冗談を飛ばしていた(編集部注:「Beware the Ides of March」はシェークスピアのジュリアス・シーザーに出てくる、暗殺を予言した人が放った言葉)。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

Teslaの大株主、TeslaのライバルNioの株式11.4%を取得

Teslaの第2位の株主である英国資産運用会社Baillie Giffordは、最近公開会社となった中国電気自動車メーカーNioに関心を寄せていた。

そして今Baillie Giffordは、火曜日に公開された当局への提出文書によると、Nioの株式11.44%を保有している。Baillie Giffordは、8530万株を購入したことを明らかにした。これは月曜日の立会い終了時の価格で5億1500万ドルだ。

Baillie GiffordはTeslaの社外株主としては最大だ。CEOのイーロン・マスクが最大の株主で約20%を保有している。

この提出文書により、Nioの株価は今朝6.19ドルで始まり、7.39ドルで引けた。その後、時間外取引で株価はさらに7%上昇し、まだ上がり続けている。

Nioは先月、ニューヨーク証券取引所に上場したとき10億ドル調達した。

Nioは中国のTeslaにーそれ以上の存在になりたいと願っている。米国、英国、ドイツで事業を展開しているが、中国でのみES8を販売している。7人乗りのES8 SUVの価格は44万8000人民元、米国ドルにして約6万5000ドルだ。これはTeslaの車より安く、特に新たな追加関税によりモデルX SUVとモデル S セダンの価格は上昇している。

そうした関税の動き、そして海外からの輸送コストも加わって、Teslaは中国工場の建設計画を加速させている。

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(翻訳:Mizoguchi)

テスラの株主、Elon Musk氏を取締役会議長から外すよう提案

テスラの株主総会が6月に開かれるのを前に、株主のJing Zhao氏はCEOのElon Musk氏が2004年から務める取締役会議長の職を、社外取締役が担うよう提案書を提出した。

Zhao氏の主張はこうだ。議長とCEOを同じ人物が担うというのは、社の創成期であればリーダーシップとして有効だったかもしれない。しかし、競争は厳しく、変化の激しい時代にあって、議長とCEO職を兼ねるのでは、事業や首脳陣の監督をする(特に、起こりうる対立を最小限に抑える)のは難しくなるばかりだ−。

テスラの普通株を保有しているZhao氏はまた、SolarCityやSpaceXでのMusk氏の役職にも言及し、これら2社にMusk氏が関与することは、今後混乱を招くかもしれないとしている。しかし、実際、ここでいう混乱は起こることは考えにくい。

取締役会はこの提案に対しすでに反対の意を表明し、かつこの提案を採決にかけることを勧めている。取締役会が表明した声明では、テスラの成功はMusk氏の取締役会議長として、そして社の代表としての舵取りなしにはあり得なかった、としている。

また取締役会は「将来、会社が成長するため、それをなし得るために必要なことを実行するという観点においても、Musk氏が今後も議長を務めるのがベストだと信じている」と述べている。さらには「仮に、社外からではない取締役が議長を務めることに伴ってガバナンスで問題が生じたとしても、筆頭社外取締役が社を守ることになる。この役職は、社外取締役の意見を反映させ、また代表取締役と定期的に意思疎通を図るという幅広い権限を取締役会により付与されている。加えて、社内には現在、2017年7月に加わった2人を含め計7人の社外取締役がいる」としている。

この件に関しテスラにコメントを求めたところ、取締役会の声明が送られてきた。下記が全文だ。

Elon Musk氏は日々社のビジネスに全力を傾けているが、そうではない取締役が取締役会を率いていたら、社のこれまでの成功はなかった、と取締役会は確信している。また、将来、会社が成長するため、それをなし得るために必要なことを実行するという観点においても、マスク氏が今後も議長を務めるのがベストだと信じている。

仮に、社外からではない取締役が議長を務めることに伴ってガバナンスで問題が生じたとしても、筆頭社外取締役が社を守ることになる。この役職は、社外取締役の意見を反映させ、また代表取締役と定期的に意思疎通を図るという幅広い権限を取締役会により付与されている。加えて、社内には現在、2017年7月に加わった2人を含め計7人の社外取締役がいる。取締役会としては、筆頭社外取締役が幅広い権限を持ち、そして他に6人の社外取締役がいることから、取締役会の独立性は保証されていると考えている。このような取締役会の構造は他の大企業と同じものであり、2017年Spencer Stuart Board Indexによると、S&P500社の72%の取締役会議長は社外取締役ではない。

今回の提案者は、社が多大な競争やテクノロジーの急速な変化に直面するまでの創成期において、CEOが議長を兼ねていたのはリーダーシップをとるという点で効果的だったことを認識している。まさに今も、社はめまぐるしい変化や外部からのプレッシャーに素早く適応しなければならず、そのためには取締役会は社の運営で足並みをそろえる必要がある。社はこれまで大きな成果を上げてきたが、それでも長期的目標を達成するには、まだなすべきことは多く、我々はゴールに向けその途上にいる。そうした観点から、現時点でCEOと議長の役割を分けることは、社にとって、そして株主にとっても最善ではないと考えている。

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(翻訳:Mizoguchi)