新型コロナ後のリモート採用をサポートするDeelが約168億円調達、2020年に20倍成長しユニコーンへ

世界の組織の多くが新型コロナウイルスパンデミックのためにリモートワークにシフトした。しかし人々がワクチンを接種し、オフィスが再開を計画していても、一部の組織ではリモートワークがしばらく続くのは明らかだ。

事業者がリモート雇用するのをサポートしようと、給料支払いやコンプライアンスのツール、その他のサービスを提供しているスタートアップDeel(ディール)はこのシフトの結果、需要増に直面した。

そして米国時間4月21日、サンフランシスコ拠点の同社はYC Continuity Fundと既存投資家のAndreessen Horowitz、Spark CapitalがリードしたシリーズCラウンドで1億5600万ドル(約168億円)を調達したと発表した。UberのCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏、Stripeの元決済リーダーLachy Groom(レイシー・グルーム)氏、Jeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏、Jeff Wilke(ジェフ・ウィルケ)氏、Anthony Schiller(アンソニー・シラー)氏も参加した。

この資金調達はいくつかの理由で注目に値する。まず、DeelがシリーズBで3000万ドル(約32億円)を調達してまだ7カ月しか経っていないことだ。シリーズCはシリーズBの5倍超だ。また、創業3年のDeelを12億5000万ドル(約1349億円)という評価額でユニコーン企業に押し上げた点でも大きなディールだ。同社が7カ月前にはポストマネーで2億2500万ドル(約243億円)という評価額だったことを考えるとなおさら意義がある。また今回の資金調達は、Deelが前年に大きく成長したことに続くものだ。現在1800超の顧客企業を抱え、2020年の売上高は20倍超となった、と同社は話す。前回資金調達した2020年9月時点の顧客企業は500社だった。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の卒業生であるAlex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wan(シュオ・ワン)氏が共同で創業したDeelは事業者が「規則などに沿った方法で誰でも、どこでも採用」できるようにすることを目指している。同社のサービスを使うと事業者は国外の社員あるいは契約社員を5分もせずに採用できる、という。現地企業を要することなく、そしてクリックするだけで120超の通貨で社員に給与を支払うこともできるという。

Deelは新たに調達した資金を海外展開の継続と、新規のDeel所有する事業体80社を世界中に設置するのに使う。同社はまた、自社の採用とプロダクトの拡大も計画している。Deelのチームは完全にリモートで、2020年1月以来、従業員は7人から26カ国にまたがる120人に増えた。CB Insightsは、Deelのようなテクノロジープラットフォームが事業者のリモート第一の働き方へのトランジッションをサポートするなかで、バーチャルHRソフトウェア産業は2026年までに430億ドル(約4兆6443億円)に成長すると予想している。

資金調達の一環としてDeelの役員メンバーに加わったYC ContinuityのAli Rowghani(アリ・ロウガニ)氏は、Deelがすでにパンデミック前にリモートワークの先頭に立っていたと考えている。

「人々の働き方は根本的に変わりつつあります。Deelのチームは企業が最も近いロケーションにいる人ではなく世界で最も優秀な人材を採用できるよう、リモートワークの障害を独自のやり方でなくします」と同氏は声明で述べた。

TechCrunchが以前報じたように、Deelはすでに給与支払いサービスや税務コンプライアンス情報、契約アシスト、インボイス発行サービス、健康や就業に関連する他のエリアをカバーする各種保険など、さまざまなツールを雇用主や組織に提供している。

そして今、労働者と雇用主向けにさらにサービスを拡大する計画だ。ここには、給料に基づく労働者のためのローン、保険や福利厚生のオプションなどが含まれる。

カテゴリー:HRテック
タグ:Deel資金調達ユニコーン

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

ビジョナル南壮一郎氏上場インタビュー、創業から12年の道のりとこれから目指す場所

転職サイトの「ビズリーチ」や人材活用プラットフォームの「ハーモス」などを展開するビジョナルが4月22日、東証マザーズに上場した。公開価格をもとに算出した時価総額は1779億円。スタートアップ業界の内外から注目を集める「ユニコーン上場」となった。ビジョナル代表取締役社長の南壮一郎氏に上場までの道のりと、同社がこれから目指す場所を聞いた。

自身の転職活動から生まれた創業アイデア

南氏がビズリーチを創業したのは2009年のことだ。南氏は米タフツ大学卒業後にモルガン・スタンレー証券に入社。その後、2004年に楽天イーグルスの創業メンバーとなった。楽天イーグルスを離れた後、自身の転職活動で感じた経験と、米国で開催されたビジネスセミナーで出会った「LinkedIn(リンクトイン)」に影響を受けた南氏は、企業と求職者を直接つなげるというアイデアでビズリーチを創業した。

2016年、TechCrunch Japanが主催するスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo」に登壇した南氏は、ビズリーチのアイデアが生まれた背景についてこう振り返る。

「プロ野球のドラフトでは、『僕、プロに行きたいです!』と誰かが宣言したら、全球団が手を挙げる権利がある。そのように(当時転職活動をしていた)私も、真っ白の状態からせっかく仕事を探すんだったら、『今、仕事を探しています!』と手を挙げたときに、なるべく多くの選択肢と可能性の中から選びたいなと思った。なぜそういう仕組みが転職活動にはないのかな、という自身の転職活動中の発想がビズリーチを創業するきっかけになった」とTechCrunch Tokyo 2016で南氏は話している。

しかし、2009年当時はリーマン・ショックの真っ最中だ。VCによるスタートアップへの出資も冷え込み、本記事執筆時である2021年のような活気はこの業界にはなかった。外部資金による資本の積み上げが期待できないなか、ビズリーチはある意味必要に迫られて「稼ぐ力」を身に着けてきた。それによりビズリーチは、創業から7年目で700名の従業員を抱えるまでに成長。創業から12年目の2021年第2四半期現在では117億円の現金を保有し、これまでの利益の積み上げを表す利益剰余金も61億円まで膨らんだ。直近会計年度(2020年度)の当期純利益は46億円だ。

南氏は2016年のTechCrunch Tokyoにも登壇した

上場を決めたのは2016年

自ら稼ぐ力を持つビズリーチがこのタイミングで新規上場に踏み切った理由はなんだろうか。

新規上場はスタートアップ業界では「エグジット」と呼ばれ、その言葉にはある意味で「目指すべきゴール」のような響きもある。しかし、もちろん上場企業ならではのデメリットもある。広く一般の投資家から資金を調達できる代わりに、投資家の意向によっては、非公開企業と比べ、腰を据えてビジネスの芽を育てにくくなるのも確かだ。南氏もこの点を認識していて、上場までに12年の歳月をかけた理由もそこにあると話す。

「上場を決めたのは、2016年に行ったシリーズAでの資金調達(11億5000万円)の時だ。当時、上場企業としてどうありたいのかを考えたとき、僕たちは『息を吸うように事業を作り、成長させ、社会の課題を解決するようなインパクトを与える』企業になりたいと思った。しかし、上場をすれば株主が増え、事業運営にあたり考慮しなければならない変数が増える。中長期的な視野をもって事業を成長させたいと思っていても、トラックレコードがなければ投資家は納得してくれない。だから、僕たちは2016年のシリーズAを行った際、2021年春に上場をすると決め、そこから逆算して組織や事業のトラックレコードを作りこんできた」と南氏は語る。

この「中長期」という言葉は、南氏へのインタビューのなかで何度も出てきた言葉だ。その姿勢は、今回の新規上場にともなう新株売出しの方法にも表れている。ビジョナルは新規上場にともない約1124万株を売り出すが、その約88.7%にあたる株式は海外投資家に向けて売り出す。これまでにこの「グローバル・オファリング(国内と海外への株式などの募集・売り出し)」で新規上場を果たしたスタートアップには2018年上場のメルカリ、2019年上場のフリー、2020年上場のプレイドなどがあるが、絶対数としてはまだ少ないのが現状だ。

その意図について南氏は「これまでビジョナルは中長期的な視野を持って事業の運営を行ってきたし、これからもその目線をもって経営することがとても大事になる。新規上場を決めたときから投資家についてのリサーチを行ってきたが、海外には中長期的な目線をもつ投資家が多いことがわかった。シンプルに、理由はそれだけだ」と話した。

ビズリーチとハーモス両方を持つからこそできること

では、ビジョナルが中長期的に達成したい事業成長とは何だろうか。同社は有価証券報告書の中で「HR Techセグメント」の中核として人材のマーケットプレイスであるビズリーチと人材管理クラウドのハーモスを挙げている。ビズリーチの導入企業者数は2016年の約5200社から、現在では1万5500社と約3倍に伸び、外部顧客に対する売上高は209億円で、2018年の121億円から70%以上伸びた。同じくハーモスでも、ARR(年間経常収益率)ベースでは2018年第1四半期比で約5倍、利用企業数ベースでは約4倍と急速に成長中だ。

「ハーモスは採用や人材管理などに関わる機能をモジュールとして提供し、人事が欲している機能を一気通貫で提供してきた。今後は人材管理に加え、労務や給与の分野にも広げていく」と南氏はいう。

ハーモスで提供中の機能例

人材管理のハーモスと、人材のマーケットプレイスのビズリーチの両方を企業に提供するビジョナルだからこそできることがある。例えば、人材管理のハーモス上でパフォーマンスがあまりよくない社員がいたとする。その理由はさまざまであるはずだが、採用後の人事政策(つまりハーモスのカバー範囲)にあるのではなく、そもそも採用のミスマッチが原因だということもあるだろう。その場合、導入企業がハーモスとビズリーチの両方を導入していれば、ハーモスのデータをもとに採用プロセスの見直しができるようになる。それだけでなく、ハーモスで、ある社員の「退職の可能性が高い」というデータが出れば、企業は先回りしてそのポジションにふさわしい人材の採用を行うこともできる。人材にまつわるさまざまなデータを、人材採用の川上と川下の間で相互に活用することで、よりデータドリブンな人材戦略を実行することができる。

ビジョナルは今後、今回の新規上場で新たに調達する約106億円と現在保有する117億円を合わせた220億円以上の資金を、主にこの2つの事業のさらなる成長や、領域拡大のためのM&Aに投下していくという。

変わり続ける組織へ

上場の先を見据える南氏の表情は明るい。南氏は、上場した後も「変わり続ける組織」でありたいと話す。

「上場がスタートラインです。ダーウィンの言葉に『生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである』という言葉がある。社会の変化のスピードが上がり、ビジネスモデルの賞味期限は短くなった。100年続く企業はすごいと思うが、ビジョナルは100年で100回変わる会社にする。その象徴が(2019年に行ったグループ経営体制への移行にともなう)社名の変更だった。どう考えても、知名度のあるビズリーチという社名のままにした方が良いに決まっている。でも、社員に対して、『社名ですら変えられるのだ』ということを示したかった。何かを捨ててでも、学び続けられる組織にするためだ。変わらないものは、企業ページにも載せている『ビジョナルウェイ』(企業理念)だけ。それ以外は、変わり続けていくだろう」と南氏は語った。

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タグ:ビジョナル新規上場ユニコーン
冒頭画像提供:ビジョナル

放課後クラスのマーケットプレイスOutschoolがEdTech界で最も新しいユニコーン企業に

子どもの仮想校外活動を行う小さなグループのためのマーケットプレイスOutschool(アウトスクール)は、CoatueとTiger Global Managementが主導する7500万ドル(約82億円)のシリーズC投資を調達した。TechCrunchでは、この取り引きに詳しい筋から初めてこのラウンドについて聞かされていたが、同社はTechCrunchに対して、米国時間4月14日遅く、その事実を認めた。

この新たな資金により、Outschoolの評価額は13億ドル(約1400億円)に達し、1年も経たない前に確定した評価額およそ3億2000万ドル(約350億円)のほぼ4倍に跳ね上がった。

現在までにOutschoolは、今回のものを含め、ベンチャー投資1億3000万ドル(約140億円)を調達した。

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同社の評価額の成長曲線は、パンデミックの間に大きな成長を遂げたEdTech企業であることを加味しても、どのスタートアップよりも急勾配になっている。しかしCEOで共同創設者のAmir Nathoo(アミール・ナテュー)氏は、同社の新しい評価額では、昨今の資金調達熱に影響された部分は小さいと話す。今回の資金調達は、収益の安定性がおもな要因だと彼は考えている。

新たにユニコーン企業となった同社の主力製品は、娯楽や補習のための放課後の校外活動だ。継続的なクラスもあれば、単独のクラスもある。会社が大きくなるにつれて、継続的なクラスが事業全体に占める割合は、10パーセントから50パーセントに伸びた。これは、時とともにより安定した収益が増えていることを示唆している。

単独のクラスから継続的な利用へ移行することは、同社にとっても生徒たちにとっても良いことだ。前者の場合、経常収益は投資家の耳に心地よく響く。後者の場合、その活動やグループとの親密性を高める上で、繰り返しの参加は重要だ。ディベートや毎週末のゾンビダンスといった活動を行う継続的なクラスは、子どもたちにまたやりたいという気持ちを起こさせる。

最も人気の高いクラスはどれかと聞かれることが多いナテュー氏は、常に変化していると答えるようにしている。常連客、つまり子どもたちの興味はどんどん移っていくからだ。ある週は算数であっても、別の週はマインクラフトや建築だったりもする。

収益プロファイルが変わったことで、Outschoolは2020年の予約で1億(約108億円)ドル以上を生み出した。2019年は600万ドル(約6億5000万円)、2017年にはわずか50万ドル(約5400万円)だった。2021年に関してナテュー氏は「積極的な成長を予測している」と答えるに留めた。

Outschoolは2020年、予約の大量増加により一時的に正のキャッシュフローを達成したが、ナテュー氏によれば、その後変化したという。

「私の目標は、収益に手の届く距離を常に保つことです」と彼はいう。「しかし、市場の変化は激しく、長期的に採算が取れると思われる機会に積極的に投資することは、理に適っています」

次は何か

ナテュー氏は、2021年末までにOutschoolのスタッフを110人から200人に増やしたいと考えている。特に国際的な成長を見据えてのことだ。2020年、Outschoolはカナダ、ニュージーランド、オーストラリア、英国でもローンチされた。そのため、それぞれの現地やその他の地域での人材募集は続く。

反対に、Outschoolの教師の数は、パンデミック最盛期と同じように伸びているわけではない。パンデミックが始まったころ、Outschoolのプラットフォームには1000人の教師がいた。数カ月のうちに1万人を抱えるまでになったが、採用審査の過程で大量のリソースを消費した。しかし、それが不可欠だったとナテュー氏は説明する。Outschoolは、フルタイムの教師が増えれば収益も上がる。教師は、クラスごとに自分で設定した料金の70パーセントを報酬として受け取り、残りの30パーセントがOutschoolの収入となる。だがナテュー氏は、同社のプラットフォームを従来型の教育を補完するものと見ている。教師を説得してフルタイムで雇い入れ収益を拡大するよりも、プラットフォームにパートタイムの教師を増やすことで成長したいと考えているのだ。

Airbnb(エアービーアンドビー)がプラットフォーム作りに貢献する人たちと収益を分かち合うホスト救済基金を立ち上げたのと同じように、Outschoolは調達した資金の2パーセントを同様のプログラムに割り当て、流動性リスクに備えることを決めた。

Outschoolの目標の中でも、最も野心的なものに、皮肉に聞こえるが学校に入り込むというものがある。一部のスタートアップは、パンデミックの最中に学校に販売を行って成功しているが、学区内での販売サイクルと限られた予算のため、拡大を目標にするならばかなり厳しい事業となる。それでもOutschoolは、学校とその職員と契約を交わすことで生徒の生活と関わり合う道筋を付けたいと考えている。そうすれば、低収入の家庭でも同社のプラットフォームが利用できるようになる。ナテュー氏によれば、企業向けの販売は事業のほんの一部分であり、新型コロナ対策として2020年に始めたばかりの戦略に過ぎないという。現在同社は、B2Bサービスのパイロット事業を、いくつもの学校を相手に開始している。

Outschoolは、国際市場で消費者向け学習に焦点を当てたアーリーステージのスタートアップを買収することも検討している。まだ1つも実行されていないが、EdTech分野では、今や広範囲にわたって企業統合が熱い。

ナテュー氏は、Outschoolの成長は続くと強調する。たとえ学校が再開しても、パンデミック後の不安に対処する方策がすでに固まっている。

「人と直接対面する活動には、大きなスパイクが起きるはずです。みんなが今すぐやりたいことだからです」と彼はいう。「しかしその後は、今よりも分散した形に落ち着くでしょう。教育の未来はハイブリッドですから」。

さらに彼は、Outschoolのオンライン学習に対する信念は、創設前の構想段階から変わっていないと話す。同社は、単位取得のための、専門分野のデジタル学習にはチャンスを求めたことがない。ずっと、放課後の補完的活動で子どもたちを援助することに集中してきた。

「これは、教育システムのなかでも、あまり手の届かなかった、見落とされがちだった部分です」と彼は話す。「オンライ学習の利点は、利便性、コスト、そして地域によっては機会が得られないような学習内容の豊富さという面で、今後も存続します」。

カテゴリー:EdTech
タグ:Outschool資金調達ユニコーン企業コラム

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:金井哲夫)

創業5カ月でユニコーン企業に、別荘の共同所有をサポートするPacasoが83億円調達

創業からまだ1年にも満たないPacasoが、10億ドル(約1100億円)の評価額で7500万ドル(約83億円)の成長資金を調達したことを発表した。

GreycroftとGlobal Founders Capitalが共同で主導したこの7500万ドルのエクイティファイナンスには、注目に値する要素がいくつかある。

1つはそのチームだ。CEO兼共同創業者のSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏は、Zillowの元幹部であるAustin Allison(オースティン・アリソン)氏とともに約18カ月前にZillow(時価総額は329億ドル、約3兆6300億円)を去った後、Pacasoのコンセプトを打ち立てた。同社は、人々がセカンドハウスを共同所有を支援するサービスを展開している。

「セカンドハウスを持つことは、私たち双方の生活に非常に大きな影響を与える贅沢であったことに気づきました。私たちは2人とも幸運にもセカンドハウスを手に入れ、それは自分たちや友人、家族に大きな変革をもたらしたのです」とラスコフ氏は述べている。「私たちが目指したのは、セカンドハウスへのアクセスを一般に普及させることでした。そうすることで、1%の人々だけが享受できる贅沢にとどまらず、願わくば世界中の何千万人もの人々がセカンドハウスを利用できるようになるのです」。

Crunchbaseのデータを使った本誌の社内分析によると、2020年10月にローンチしたばかりのPacasoがユニコーンになったのは、他のどの企業よりも早い。

「Pacasoは驚異的な速さで成長しており、これは私が経験したことのないものです」とラスコフ氏はTechCrunchに語った。「これほど急速に成長している理由は、消費者がこのコンセプトに魅せられ、はるかに安価な価格でセカンドハウスを所有できるというアイデアを喜んでいるからでしょう」 。

サンフランシスコに拠点を置くPacasoは、米国時間3月24日に発表した株式発行による資金調達に加えて10億ドル(約1100億円)の負債調達も行った。2020年秋のローンチ時点で、同スタートアップはMaveron率いるシリーズAで1700万(約19億円)ドルを調達し、同時に2億5000万ドル(約276億円)の融資も受けている。

Acrew Diversify Capital FundのSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・キャシディ)氏とTheresia Gouw(テレジア・グー)氏、First American Financial、Shea Ventures、Amazon Worldwide Consumerの元CEOであるJeff Wilke(ジェフ・ウィルケ)氏など、著名なエンジェル投資家たちも今回の資金調達に参加した。

不動産に特化したLLC(有限責任会社)を設立し、独自の共同所有モデルを可能にすることで、同社はセカンドハウスのコストと手間を削減することを目指している。また、セカンドハウス所有者は不動産を貸し出すという選択肢も得る事ができる。

Pacasoのモデルは、コンドミニアムやホテルで一定の期間使う権利を販売するタイムシェアの古いコンセプトとは一線を画している。Pacasoでは、小規模の共同所有者グループを集めて一戸建て住宅のシェアを購入し「年間を通して継続的なアクセスを楽しむ」事ができるのだ。

仕組みとしては、まずPacasoが家のシェア、またはすべてを購入する。その後同社は不動産を販売するために地元の不動産業者と提携する。そして同社が持ち家の8分の1程度、あるいはそれ以上の割合で持ち家のシェアを売却する。

Pacasoは、ナパ、レイクタホ、パームスプリングス、マリブ、パークシティなどの複数の人気セカンドハウス市場で仲介ライセンスを保有している。購入者は同スタートアップのウェブサイトで厳選されたリスティングを見ることができ、有効な物件や、購入希望を基に購入を検討する住宅のプレビューを見ることができる。

このリスティングのキュレーションに加えて、Pacasoは統合ファイナンス「高級路線の」インテリアデザイン、専門性の高い不動産管理、独自のスケジューリング技術も提供している。

画像クレジット:Pacaso

ローンチ以来50万人以上がサイトを訪れ、これまでに6万人もの「購入希望者」がセカンドハウスの共有について詳しく知るためPacasoに問い合わせてきたと同社は伝えている。これまでのところ同社は、約100世帯に向けてセカンドハウスの共同所有者になる支援を行ってきた。

アリソン氏の推定によると、世界には約1億戸のセカンドハウスが存在し、その大半は1年のうち10カ月から11カ月ほど空室になっているという。

「月ごとにその数は急増しています」と同氏は続けた。

同社は今回調達した資金の一部を、西海岸から東海岸への新規市場開拓に充てる計画だ。最終的にはヨーロッパ、さらにはメキシコやカリブ海にも進出する展望を持っている。同社の負債は、さらに多くの住宅の持ち分を取得する方向に向かっていくだろう。

「裁量所得があるほど十分な収入を得ている世帯は何千万もあり、そのうちの約75%はセカンドハウスを持つことを夢見ています」 と同氏はいう。「しかし、コストの問題、あるいはそのような購入を正当化できないといった理由で、彼らの行動は妨げられています。この大きな問題に直面して私たちが考え出したのは、真に革新的なソリューション、つまり共同所有でした」。

アリソン氏によると、同社は今後、低価格の住宅を含め、より幅広い価格帯の住宅を提供したいと考えているという。

Greycroftの共同創業者でパートナーのDana Settle(ダナ・セトル)氏は、Pacasoのビジネスの活力を「極めて意義深いもの」と表現している。

「Pacasoは、人々がセカンドハウスを購入し、所有する方法を劇的に変える新しいカテゴリーを作り出しています」と同氏は付け加えた。

多くのベンチャー企業がそうであるように、GreycroftもPacasoの創業チームの力量に魅力を感じている。

「このチームは市場を熟知しており、かつてともに働いた経験を有しています」とセトル氏はTechCrunchに語った。「彼らがいかに迅速に稼働し始めたかを見れば、まさにそのことが証明されています」。

同氏はまた、PacasoをUberやAirbnbになぞらえた。これらの企業もまた、十分に活用されていなかった資産を事業化している。

「テクノロジーを活用して市場でのアクセス性を向上させる、新たな機会です」とセトル氏はいう。

事業拡大を進めるにあたり、Pacasoは最高財務責任者としてNina Tran(ニナ・トラン)氏を迎え入れた。トラン氏は、Waypoint HomesをStarwood Waypointと合併して株式公開し、同社をInvitation Homesに売却してCFOを務めた人物だ。

ラスコフ氏は最近、多忙を極めている。同氏はSupernova Partners Acquisition Companyの責任者でもあり、同社は最近Offerpadと合併して上場することを発表した。ラスコフ氏はDoma(以前のStates Title)の投資家でもある。SPACの合併によって上場された別の専門技術企業だ。同氏はまた、多くのスタートアップを支援しており、その中には最近ローンチした、アジア系米国人コミュニティを主な対象とするデジタルバンキングプラットフォームCheeseも含まれている。

関連記事:不動産テックスタートアップのOfferpadがSPACとの合併により公開へ

カテゴリー:その他
タグ:Pacasoセカンドハウス資金調達ユニコーン企業不動産

画像クレジット:Cory Sherwood Photography / Pacaso

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

顧客との会話型エクスペリエンスを支えるメッセージプラットフォームGupshupが約109億円調達しユニコーンに

15年前にインドで起業し、事業者が顧客とテキストを通じてやり取りするのをサポートしているスタートアップが米国時間4月8日、ユニコーンのステータスを獲得し、また黒字であることを明らかにした。

サンフランシスコ拠点のGupshupはシリーズFラウンドでTiger Global Managementから1億ドル(約109億円)を調達し、評価額は14億ドル(約1529億円)になった。

Gupshupは会話型のメッセージプラットフォームを運営しており、10万超の事業者やデベロッパーがユーザーや顧客にサービスを提供するためのメッセージや会話のエクスペリエンスを構築するのにGupshupを使っている。

2011年にシリーズEを完了し、これまでに計1億5000万ドル(約163億円)を調達したGupshupは、同社の顧客が毎月60億件超のメッセージを送っていると話す。

「メッセージと会話型エクスペリエンスのビジネス使用の増加は、事実上、あらゆる顧客接点を変革しているエキサイティングな現代のトレンドです」とTiger Global Managementのパートナー、John Curtius(ジョン・カーティス)氏は声明で述べた。「Gupshupは異なるプロダクト、クリアで持続可能なモート(堀)、確かな実績を持つ経験豊かなチームでこの分野で勝利を収めるユニークな位置につけています。マーケットリーダーシップに加え、Gupshupのスケール、成長、収益性の組み合わせが我々を引きつけました」。

しかし、インドの数千万のユーザーが異なる理由でGupshupを記憶している。Gupshupの創業後6年は、インドのユーザーが友人にグループメッセージを送れることで最も知られていた(これらの安いテキストと他のスマートなテクニックによって、10年前に何千万というインド人が電話で互いに連絡を取り合っていた)。

そのモデルは結果的に維持できなかった、とGupshupの共同創業者でCEOのBeerud Sheth(ビールード・シェス)氏はインタビューでTechCrunchに語った。

「そのサービスを続けるために、Gupshupはメッセージ料金を負担していました。当社はモバイルオペレーターに費用を払っていました、一度スケールを拡大すれば、そうしたメッセージに広告を掲載するという考えでした。要するに、メッセージの量が増えるにつれ、オペレーターは価格を下げると思っていましたが、実際はそうではありませんでした。また、規制当局はメッセージに広告を掲載することができないと指摘しました」とシェス氏は回顧した。

そうしてGupshupは方向性を変えることにした。「当社はメッセージの費用を持つことも、ユーザーベースで収益化を図ることもできませんでした。しかし高パフォーマンスなメッセージのための高度な技術を持っていました。それで、当社は消費者モデルから法人モデルへと転換しました。高度なレベルのメッセージを送る必要があり、その費用を払える銀行やeコマース企業、航空会社などへのサービス提供を始めました」とシェス氏は話した。同氏はフリーランスワークプレイスElanceを1998年に共同で創業してもいる。

Gupshupは新しいメッセージチャンネルへと拡大してきた。ここには会話型のボットが含まれる。また、事業者が顧客に対応するのに自分たちのWhatsAppチャンネルを準備して運用するのをサポートしている。

シェス氏は、銀行、eコマース、旅行、ホスピタリティ、その他の部門の大手企業の多くがGupshupのクライアントだと話した。これらの企業は、顧客に決済情報や認証コードなどを送るのにGupshupを使っている。「これらは広告的なメッセージでもなければ販促のメッセージでもありません。コアなサービス情報です」と述べた。

年間ランレート1億5000万ドル(約163億円)だったGupshupは、提供するサービスを拡大し、さらに多くのマーケットで顧客を取り込むのに新たに調達した資金を使う。10年前にインドで目にした似たような事業者のユースケースが多くの新興マーケットで展開されていて、ビジネスメッセージプラットフォームにとって成長機会が広がっているとシェス氏は話した。

「Gupshupの使命は事業者がモバイルメッセージと会話型のエクスペリエンスを通じて顧客対応をさらに良いものにするのをサポートするツールを構築することです。使命を達成すべく取り組む中で、イノベーティブでカテゴリーを定義づけるような世界中の企業に多額かつ堅牢、成功的な支援をしてきた経歴を持つTiger Globalから出資を受けられることをうれしく思います」と述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Gupshupインドユニコーン資金調達メッセージ

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

新興市場の問題を解決するメキシコの中古車販売ユニコーンKavakが531.7億円を調達、評価額は4385億円

メキシコのスタートアップで、メキシコとアルゼンチンの中古車市場を破壊したKavak(カヴァック)は現地時間4月7日、シリーズDで4億8500万ドル(約531億円)調達したことを発表した。同社の企業価値は40億ドル(約4383億円)だった。わずか数カ月前の2020年10月に同社がユニコーンの地位を確立したラウンドの企業価値11億500万ドル(約1211億円)の3倍以上だ。Kavakはこれでラテンアメリカで企業価値トップ5のスタートアップになった。

ラウンドをリードしたのはD1 Capital Partners、Founders Fund、RibbitおよびBONDで、これでKavakの総調達金額は9億ドル(約986億円)を超えた。Kavakは最近ブラジルで限定公開を開始し、最新ラウンドの資金はブラジル市場への進出などに使用される、とKavakのCEOで共同ファウンダーのCarlos García Ottati(カルロス・ガルシア・オッタティ)氏はいう。同社は60日以内にブラジルで正式公開する、とガルシア氏は述べており、Kavakはラテンアメリカ以外の市場に2年以内に展開することも付け加えた。

「私たちは新興市場の問題を解決するためにあります」とガルシア氏はいう。

Kavakは2016年に設立された中古車市場に透明性と安心と融資をもたらすことを目的としたオンラインマーケットプレイスだ。同社はフィンテック子会社のKavak Capitalを通じて自らも融資を行っており、現在2500名以上の従業員を擁し、メキシコとアルゼンチンに20カ所の輸送・修理ハブがある。

「ラテンアメリカでは、中古車売買の90%が非公式に行われており、その結果40%が不正な価格で取引されています」とガルシア氏はいう。同氏は数年前にコロンビアからメキシコに移住してクルマを購入した際、身を持ってこの問題を経験した。

「私には中古車を買う予算がありましたが、買うための仕組みが近くにありませんでした。買うまでに6カ月かかった上、そのクルマには法律的にも機械的にも問題があり、ほとんどのお金を捨てる結果になりました」と彼は述べた。Kavakは個人からクルマを買い、修理調整して保証をつけて販売している。

「新車を買う代わりに、完全保証付きのもっと良いクルマを買えます。これは実に向上心に満ちたプロセスです」とガルシア氏はいう。会社は目的分野別に4つの会社から成り、市場のさまざまな違いに対応するために、包括的に作られている。

「ここ(ラテンアメリカ)で会社を作るためには、いくつかの会社を立ち上げる必要があります。それは多くの物事がうまくいかないからです」と彼は語った。例えば融資が成功の鍵になっているのはそれが理由だ。

融資はそもそもブラジルでは困難であり、ガルシア氏によると中古車市場にもその基盤がない。とはいえ、ブラジルはラテンアメリカのフィンテックハブであり、Nubank、PagSeguro、Creditas、PicPayなどが先陣を切ったこの分野は過去7~10年に大きく飛躍した。その結果クレジットカードやローンはこの地でも以前よりずっと手に入りやすくなり、Kavak Capitalのライバルとなっている。Kavakはブラジル市場向けにサービスの一部をローカライズしているが(アプリとウェブサイトのポルトガル版など)、市場はよく似ているとガルシア氏はいう。

「ブラジルではメキシコと同じ問題が今もありますが、ブラジルのほうがやや進んでいて、特にフィンテックはメキシコの何光年も先にいます」と同氏は述べた。

ブラジル向け製品の競合を踏まえ、ガルシア氏はすでに他の地域の計画を持っているといったが、名前は明らかにしなかった。

「新興国市場の80%の人たちがまだクルマを持っていません」とガルシア氏は世界市場の大きさを示唆した。「私たちは顧客が同じような問題に直面していて、Kavakがその人たちの生活を大きく変えられるような大きい市場に参入したいと考えています」と付け加えた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kavakメキシコブラジル中古車資金調達ユニコーン企業

画像クレジット:Kavak

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インドのミレニアル世代向け投資アプリのGrowwが91.2億円調達、新たなユニコーンに

インドでは2億人以上がデジタルでお金のやり取りをしているが、投資信託や株式に投資している人口は3000万人にも満たない。

この現状を変えようと、ミレニアル世代をターゲットにするインドのスタートアップ企業が、インド時間4月7日に新たな資金調達を発表し、世界第2位のインターネット市場のインドにおける、新たなユニコーンとなった。

バンガロールを拠点とするGroww(グロウ)が、シリーズDの資金調達ラウンドで8300万ドル(約91億2000万円)を調達し、これによってインドのスタートアップの評価額は10億ドル以上(約1097億4000万円)となった。なお2020年の9月に行った3000万ドル(約33億円)のシリーズC調達時には評価額は2億5000万ドル(約274億6000万円)だった。

Tiger Globalが新ラウンドを主導し、既存の投資家であるSequoia Capital India、Ribbit Capital、YC Continuity、Propel Venture Partnersが参加した。これで4年前に設立されたインドのスタートアップ企業は、計1億4200万ドル(約156億円)を調達したことになる。

なお、Growwはインドのスタートアップでユニコーンとなった8社目の企業だが、今週では4社目となる。ソーシャルコマースのMeesho(ミーショ)は4月5日(インド時間、以下同様)にユニコーンになり、フィンテック企業のCRED(クレド)は4月6日に、そして電子薬局のPharmEasy(ファームイージー)は4月8日朝に未明に新たな資金調達ラウンドを発表したが、同社の評価額は約15億ドル(約1647億8000万円)だった。

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Growwを使えばユーザーは、システマティックな投資計画(SIP)や株式連動型の貯蓄を含む投資信託、金そして米国の取引所に上場されているものを含む株式に投資することができる。このアプリは、現在インドで販売されているすべてのファンドを提供している。

Growwの共同創業者であり最高経営責任者であるLalit Keshre(ラリット・ケシュレ)氏は、TechCrunchのインタビューに答えて、彼のスタートアップが800万人以上の登録ユーザーを集めており、そのうちの3分の2は投資初心者であると語っている。

ケシュレ氏は、Flipkart(フリップカート)の元幹部だったHarsh Jain(ハーシュ・ジェイン)氏、Neeraj Singh(ニーラ・シン)氏、Ishan Bansal(イサン・バンサル)氏らと4人で創業したこのスタートアップが、この先新たな資金を使って成長を加速させ、より多くの人材を雇用すると述べている。「私たちは今、より長期的な思考とより速い成長のための燃料を手に入れたのです」と彼はいう。

Growwのユーザーの60%以上はインドの小さな市や町からのアクセスであり、そのうちのさらに60%は、これまでこのような投資をしたことがないとケシュレ氏はいう。スタートアップは、投資教育を目的として、いくつかの小都市でワークショップを行ったのだという。

仲介市場におけるフィンテックの市場シェア比較(BCG)

また、新型コロナウイルスの大流行により、若者が新しい趣味を探求するようになったおかげもあって、スタートアップの成長が加速した。このスタートアップは、Zerodha(ゼローダ)、Paytm Money(ペイトム・マネー)、Upstox(アプストックス)、ET Money(ETマネー)、Smallcase(スモールケース)、そして旧来の企業を含むひと握りの企業たちと競合している。

ケシュレ氏は「私たちは、インドに住むすべての人にとって、投資を身近で透明なものにするために、約5年前にGrowwを設立しました。順調に進んではいますが、まだ始まったばかりという気持ちです」と語った。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Groww資金調達ユニコーン企業インド

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:sako)

ウルグアイ初のユニコーン、クロスボーダー決済「dLocal」が166億円の調達で評価額は4倍の5535億円超に

クロスボーダー決済のスタートアップdLocalは、前回12億ドル(約1328億5000万円)の評価額で2億ドル(約221億4000万円)を確保してから7カ月も経たないうちに、このたび50億ドル(約5535億3000万円)の評価額で1億5000万ドル(約166億円)を調達した。

これは、設立5年目になるこのウルグアイの企業が、わずか数カ月の間に評価額を実質4倍にしたことを意味する。

今回のラウンドはAlkeon Capitalがリードし、BOND、D1 Capital Partners、そしてTiger Globalが参加した。前回のラウンドはGeneral Atlanticが主導し、2020年9月にクローズした。このラウンドによりdLocalはウルグアイ初のユニコーンとなり、ラテンアメリカで最も企業価値の高いスタートアップの1つとなった。

dLocalは、グローバル企業のマーチャントと、アジア太平洋、中東、ラテンアメリカ、アフリカの29カ国にいる「何十億もの」新興市場の消費者を結びつける。eコマース事業者、SaaS企業、オンライン旅行業者、マーケットプレイスなど、325社以上のグローバル企業がdLocalを利用して、600以上のローカルな支払い方法に対応している。またこれらの顧客は請負業者や代理店、販売者への支払いにも同社のプラットフォームを利用している。dLocalの顧客には、Amazon(アマゾン)、Booking.com(ブッキング・ドットコム)、Dropbox(ドロップボックス)、GoDaddy(ゴーダディ)、MailChimp(メールチンプ)、Microsoft(マイクロソフト)、Spotify(スポティファイ)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)、Uber(ウーバー)、Zara(ザラ)などが含まれる。

今回のラウンドの発表とあわせて、dLocalはSumita Pandit(スミタ・パンディット)氏をCOOに任命した。パンディット氏は元JP Morganのフィンテック担当グローバルヘッド兼マネージングディレクターで、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)にも在籍していた経験がある。

dLocalのCEOであるSebastián Kanovich(セバスチャン・カノビッチ)氏は、声明の中でこう述べた。「スミタ(・パンディット)は、フィンテック分野の投資銀行家として高い評価を得ており、彼女は、世界で最も成功しているフィンテック企業がグローバルリーダーになる過程でのアドバイスを行うという重要な役割を果たしてきました」。

一方、前COOのJacobo Singer(ヤコボ・シンガー)氏はdLocalの社長に昇格した。

同社は新たな資本を活用して技術を強化し、地理的な拡大を続けていく予定だ。

AlkeonのジェネラルパートナーであるDeepak Ravichandran(ディーパック・ラヴィチャンドラン)氏は、新興市場はデジタル決済分野で最も急速な成長が期待できる機会だと考えている。

「しかし、グローバル企業がこれらの市場にアクセスしようとすると、ローカルな支払い方法、国境を越えた規制、その他の運用上の障害など、複雑な問題に直面することが多くあります。dLocalのユニークなプラットフォームは、単一の統合された決済ソリューションにより、数十億人の顧客にリーチし、支払いを受け付け、送金を行い、グローバルに資金を決済できるようにすることで、マーチャントに力を与えます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:dLocal資金調達ユニコーンウルグアイクロスボーダー決済

画像クレジット:Cattallina / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)

自律型ドローンメーカーのSkydioが約181億円を調達、ユニコーンの仲間入り

SkydioはAndreessen HorowitzのGrowth Fundが主導するシリーズDで1億7000万ドル(約181億円)を調達した。これによりSkydioの調達金額の合計は3億4000万ドル(約362億円)となり、調達後のバリュエーションは10億ドル(約1065億円)を超えて、ユニコーンの仲間入りを果たす。同社は2020年にエンタープライズ市場に参入し、今回の資金調達はそれに続いて実施された。調達した巨額の資金はグローバルな事業拡大と製品開発の加速のために使われる予定だ。

2020年7月にSkydioはシリーズCで1億ドル(約106億5000万円)を調達したと発表し、初のエンタープライズ向けドローンであるX2も公開した。商用およびエンタープライズの顧客向けに一連のソフトウェアも公開し、2014年の創業以来取り組んできたコンシューマ向けドローン市場から初めてエンタープライズ市場に乗り出した。

関連記事:自律型ドローンのスタートアップSkydioが約107億円を調達、NTTドコモベンチャーズも出資

Skydioの最初のドローンであるR1はその自律機能が高く評価され、賞賛を浴びた。レジャー用ドローンメーカーのDJIなどその当時に他社から出ていたコンシューマ向けドローンとは異なり、R1は人間が操作をしなくても障害物を避けながら目標を追いかけて撮影することができる。その後Skydioは2019年に2つ目の製品であるSkyedio 2を発売し、自律的な追跡とビデオ機能を強化しつつ価格を2分の1以下にした。

2020年後半にSkydioはエンタープライズや政府機関の顧客に対応するために上級職の人材を迎えた。Teslaや3Dプリンティング企業のCarbonで経験を積んだソフトウェア開発責任者の他、製品とエンジニアリングに携わるSamsaraのエグゼクティブ2名を同時に雇用した。Samsaraは大企業がクラウドベースで業務用車両を管理するプラットフォームを提供する企業だ。

商用、公共事業、エンタープライズ向けに利用されるSkydioのテクノロジーは多岐にわたる。すでに同社は公益企業、消防、建築会社などの多くの組織と、遠隔調査や緊急対応、都市計画などの分野で連携している。また米国で実績を上げていることから、防衛分野への応用に対する関心の高まりを優位に利用できる立場にある。

Andreessen Horowitzは以前にSkydioのシリーズAラウンドを主導した。今回のシリーズDには、Lines Capital、Next47、IVP、UP.Partnersが参加した。

カテゴリー:ドローン
タグ:Skydio資金調達ユニコーン

画像クレジット:Skydio

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Kaori Koyama)

小規模メーカーと大手建設業者を結ぶInfra.Marketが106億円調達、インドの最新ユニコーンに

インドで最新のユニコーン企業になったのは、世界で2番目に人口の多い同国の建設・不動産会社が資材を調達し、プロジェクトの物流を管理するのを支援するスタートアップだ。

設立4年目のInfra.Marketはインド時間2月25日、Tiger Globalが主導するシリーズCラウンドで1億ドル(約106億円)を調達したと発表した。Foundamental、Accel Partners、Nexus Venture Partners、Evolvence India Fund、Sistema Asia Fundなどの既存投資家もこのラウンドに参加し、同社を10億ドル(約1063億円)と評価した。

この新しいラウンドは、Infra.Marketのこれまでの調達総額を約1億5000万ドル(約159億円)に引き上げるもので、ムンバイに本社を置く同スタートアップがシリーズBラウンドを終了してからわずか2カ月後のことだ。同社は2020年12月のラウンドではポストマネーで約2億ドル(約212億円)の評価を受けていたと、この件に詳しい人物がTechCrunchに語った。この新ラウンドについて、Avendus CapitalがInfra.Marketにアドバイスを提供したという。

Infra.Marketは、塗料やセメントメーカーなどの小規模事業者が生産品質を向上させ、さまざまなコンプライアンスに対応できるように支援している。同社は、品質の低下がないことを保証するために、これらの小規模企業の製造設備にロードセルを追加し、さらにより良い原料を提供し、価格設定のガイダンスを提供できる他の企業との連携を支援している。また同社は企業と緊密に連携して、納期どおりに納品が行われるように保証している。

共同設立者のSouvik Sengupta(ソヴィク・セングプタ)氏は、このような改善により小規模製造業者は、取引先に対する期待度が高いより大口の顧客を獲得することが可能になったと説明している。同氏によると、Infra.Marketは小規模メーカーがインド国外の顧客を獲得するのにも役立っているという。同社のクライアントはバングラデシュ、マレーシア、シンガポール、そしてドバイにも存在する。

12月のTechCrunchのインタビューに対しセングプタ氏はこう語った。「当社は、これらの小規模製造業者にサービスレイヤーを提供し、彼らのビジネスを成長させることを可能にしています。当社はアセットを所有していませんが、プライベートブランドを作っています」。Infra.Marketは170社以上の小規模メーカーと提携しており、Larsen & Toubro、Tata Projects、Ashoka Buildconのような大手建設・不動産会社の大半を顧客としている。セングプタ氏によると、同社は400社以上の大口顧客と3000社以上の小規模小売業者に販売しているという。

セングプタ氏は12月に、2020年の初めにパンデミックが発生する前、同社はARR(annual recurring revenue、年間経常収益)1億ドル(約106億円)を叩き出す軌道に乗っていたと語った。少なくともパンデミック初期の2カ月間は、同社のビジネスはほぼ半減したという。しかし、同社は再びペースを取り戻し、現在は1億8000万ドル(約191億円)のARRを達成する見込みだ。同社はさらに、この数字を3月までに3億ドル(約318億円)に成長させることを目指している。

Tiger Global ManagementのパートナーであるScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏は声明の中で、次のように述べた。「インドの建設資材サプライチェーンを再形成しつつあるInfra.Marketの成長の旅路において、ソヴィクとアーディータ(共同設立者Aaditya Sharda、アーディータ・シャルダ氏)と提携することができ光栄です。先駆的な技術革新とプライベートブランドを統合する能力を持つInfra.Marketは、力強い成長と健全な経済性、収益性を備えています」。

また、セングプタ氏は25日、次のように付け加えた。「インフラや不動産企業は、一貫した品質を確保し、遅延を最小限に抑えるために調達をシフトしようとしているため、需要は急速に加速しています」。

カテゴリー:その他
タグ:Infra.Marketインド建設ユニコーン

画像クレジット:Dibyangshu SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:TechCrunch Japan)

アプリ監視プラットフォームのSentryが約63億円調達、評価額は約1057億円を超えユニコーンに

アプリケーションパフォーマンスモニターを開発するスタートアップのSentryは米国時間2月18日、シリーズDで6000万ドル(約63億4000万円)を調達し、資金調達後の評価額が10億ドル(約1057億円)のユニコーンの地位に到達したと発表した。今回のラウンドをリードしたのはリターン投資家のAccelとNew Enterprise Associatesで、Bondも投資に参加した。

Accelは2015年にSentryのシード資金調達を主導し、それ以来各ラウンドに投資してきた。同社は6万8000の組織にサービスを提供し、これまでに合計1億2700万ドル(約134億2000万円)を調達している。クライアントにはDisney(ディズニー)、Cloudflare(クラウドフレア)、Peloton、Slack(スラック)、Eventbrite、Supercell(スーパーセル)、Rockstar Games(ロックスター・ゲームス)などがある。

Sentryのソフトウェアはアプリに潜在的な問題がないかどうかを監視し、サービス停止やダウンタイム、ユーザーの不満を招く前に開発者がバグを発見するのを助ける。シリーズDの資金はより多くの言語やフレームワークのサポートの追加、サンフランシスコ、トロント、ウィーンのオフィスでの雇用など、製品開発に使用される。

Sentryの製品は幅広い分野で使用されているが、ゲームやストリーミングメディアでは継続的な成長が見られ、金融、商業、ヘルスケアを含むインフラとサービスのデジタル化が進む業界で新たな需要が見込まれる。

2020年7月、SentryはPythonとJavascriptのフロントエンド監視ソフトウェアのローンチを発表した。当時、同社のMilin Desai(ミリン・デサイ)CEOはTechCrunchに対して、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行によって仕事、教育、eコマースアプリの利用が増加したため、あらゆる分野の顧客がプラットフォームに大きく依存していると語った。

AccelのパートナーであるDan Levine(ダン・レヴィン)氏はプレスリリースで、「ほぼすべての企業がデジタルファーストの働き方や顧客とのやり取りを行うようになったことで、アプリケーションの健全性はビジネスクリティカルなイニシアティブとなり、Sentryは爆発的な成長を遂げる準備が整っています」と述べた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Sentry資金調達ユニコーン

画像クレジット:Sentry

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

943.6億円と評価されたインドのQRコード決済サービスBharatPeが新たに113.1億円調達、新たなフィンテックユニコーン誕生か

インドでもうすぐ、また新しいフィンテックユニコーンが生まれるかも知れない。インド時間2月11日、ニューデリーに拠点を置く金融サービススタートアップのBharatPe(バラピ)は、9億ドル(約943億6000万円)の評価額の下に1億800万ドル(約113億1000万円)を調達した。なお2020年の評価額は4億2500万ドル(約444億9000万円)だった。

この創業3年のスタートアップのシリーズDラウンドを主導したのはCoatue Managementだ。Ribbit Capital、Insight Partners、Steadview Capital、Beenext、Amplo、Sequoia Capitalといった既存の機関投資家も、今回のラウンドに参加している。これによってBharatPeの株式による調達総額は2億3300万ドル(約243億9000万円)となり、負債額は3500万ドル(約36億6000万円)となった。

同スタートアップは、今回の新たな資金調達ラウンドの一環として、1717万ドル(約18億円)をエンジェル投資家と従業員にストックオプションとして還元したと述べている。

BharatPeの共同創業者であり最高経営責任者のAshneer Grover(アシュニー・グローバー)氏は「バランスシートに十分な資本(銀行に約209億4000万円以上の現金)を持つことになりました。この先着実に事業を進めて、2023年3月までに取引総額300億ドル(約3兆1000億円)を実現し、小規模加盟店相手の貸付残高を7億ドル(約732億8000万円)とする予定です」と語る。

BharatPeが運営しているのは、その会社名が表しているが、オフライン型加盟店がデジタル決済を受け入れ運転資金を確保できるようにするためのサービスだ。インドはすでに、6億人以上のユーザーを抱える世界第2位のインターネット市場として台頭しているが、国内の多くはオフラインのままだ。

関連記事:WhatsAppの世界最大のマーケットであるインドのユーザー数は4億人

インターネットの届かないところで、ロードサイドのティースタンドや近隣のお店が、小規模に営まれている。こうした商店がデジタル決済を簡単に受け入れられるようにするために、BharatPeは政府がバックアップするUPI決済インフラを利用する、QRコードとPOS機を利用している。

インドでは、多くの大手企業やスタートアップが、近隣の小規模店舗にサービスを提供しようとしている

BharatPeは、2020年11月までに5万台以上のPoSマシンを設置し、1億2300万ドル(約128億8000万円)以上相当の月次取引を可能にしたという。同社は通常のQRコードアクセスに対しては加盟店への請求を行わないが、一方貸付で収益を得ようとしている。グローバー氏は、スタートアップの貸付事業が2020年には10倍に成長したという。

「この成長は、小商いの方々や近隣店舗のオーナーのみなさんから寄せられている信頼を、改めて証明しているものです。これは私たちの旅の始まりにすぎません。私たちは小規模店舗のみなさまにワンストップサービスを提供できる、インド最大のB2B金融サービス会社を構築することを真剣に目指しています。BharatPeにとって、商店のみなさまは常に、構築するすべてのものの核となる存在なのです」と同氏は述べている。

BharatPeの成長は、特にそれが商人を支援する最初のスタートアップではなかったことを考えると、すばらしいものだ。Bank of America (バンク・オブ・アメリカ)のアナリストは、顧客に対する最近のレポートの中で、フィンテックは勝者がすべてを取る市場ではないことを、BharatPeの存在が証明したと述べている。

TechCrunchがレビューしたそのレポートの中には「おそらくBharatPeは、この分野では後発者としての優位性を持っている。同社はUPI上でのQRコード利用を最初にサポートした業者の1つであり、商店に1つのQRコードを持つ利便性を提供した(最終的にはPaytmのような他の企業もそれに追随した)。フィンテックの同業者たちとは異なり、BharatPeは商店を教育するのではなく、すでに商店を教育した大規模な同業者のやり方に従っている」と書かれている。

現在75の都市で事業を展開している同スタートアップは、新たな資金を得て、全国でのネットワークをさらに拡大することを計画している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:BharatPe資金調達QRコード決済インドユニコーン企業

画像クレジット:BharatPe

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(文:Manish Singh、翻訳:sako)

シリコンバレーはユニコーン企業ではなくゼブラ企業に報いるべきだ

シリコンバレーにはユニコーン問題がある。

高企業価値のスタートアップが消えていくのを望む人などいないが、本来ならもっと少なくあるべきだ。少なくとも若きファウンダーたちが10億ドル(1000億円)超えの非上場企業の努力と苦労を見たあとの結論はそうなる。

ユニコーンは神話上の動物なので、投資家は魔法のような結果を期待する。電光石火の成長、独占に近い市場そして100倍、1000倍のリターンを得られる記録的IPO。ゼブラ(シマウマ)は特定のニッチを埋めることで繁栄するべく進化してきた実在の動物だ。ユニコーン企業と異なり、ゼブラは細身で効率的で一貫している。

往々にして、実際の製品や現実的なビジネス展望ではなく、企業の名前や外見的な名声がユニコーンの売り物になっていく。ごく最近の、この傾向のおそらく最も顕著な事例といえば、WeWork(ウィワーク)だろう。

同社の2019年のIPO失敗は、10年に一度の大混乱だった。Enron(エンロン)以来、ここまで早く転落した企業はほとんどない。市場がこのユニコーンを試す機会を得た時、それが一芸しかもたないダンボールの角をはやしたポニーだったことに投資家たちは気がついた。Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏は、実際の価値ではなく、純資産のために自分の会社を造り、彼の社員や支援者たちが代償を払った。そしてもしこのIPOが成功していたら、2020年3月に新型コロナウイルス感染症が蔓延した時、どれほどの企業価値が霧散していたか、想像してほしい。

現在の経済では、ほとんどのテックイノベーションがベンチャー資金を必要としているが、時としてユニコーンは、度が過ぎた場合のケーススタディになることがある。ラウンドに次ぐラウンドによる資金調達は、WeWorkの場合のように、崩れそうな基盤とあやふやなビジネスプランを隠蔽する。

2020年12月、モバイルビデオのユニコーンであるQuibi(CNBC記事)が創業から1年経たずに廃業した。映画・テレビの評論家は驚かなかったし、この会社の名を聞いたことのあるわずかな消費者もそうだった。

4月初めのタイミングの悪いスタートのずっと前から、まずいアイデアであることをほとんどの傍観者はわかっていた。それならなぜ、Quibiはそんなに多くの資金を受け取ったのか?会社とつながりのあったビッグネーム、たとえばDreamworksの共同ファウンダーであるJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏やHPの元CEOのMeg Whitman(メグ・ホイットマン)氏に惹きつけられた投資家たちは、この製品が名前から値付けにいたるまであらゆる点で間違っていたことになぜか気づいていなかった。

ユニコーンが何を提供するかは、それがユニコーンであるという事実と比べて重要ではない。ユニコーン企業の対極にあるのが、ゼブラ企業だと私は考える。少々変わっていて、一面の見出しを飾ることも息を呑むニュースになることもないが、存続し、何かをするために作られた会社だ。

ユニコーンは、終わりのないベンチャーラウンドという魔法の森の中にいるかぎりは繁栄し続けるが、ゼブラは自由市場のサバンナを戦い抜く。ゼブラ企業は次のFacebook(フェイスブック)やAmazon(アマゾン)のような巨人にはならないが、次のQuibiやWeWorkになることもない。

ゼブラ企業、たとえばHandshake(ハンドシェイク)やTuro(トゥーロ)や、ある面ではBen and Jerry’s(ベン&ジェリーズ)やPatagonia(パタゴニア)などの出現は、私たちのビジネスと経済に対する理解の幅広い変化を物語っている。新型コロナウイルスが世界の大部分を封鎖する前から、終わりのない成長の魅力はどんどんなくなりつつあった。

経済からこれまで以上の価値を引きだすことに熱中するのではなく、Patreon(パトリオン)のような会社は、同じ1ドルが経済全体をめぐることによって何倍もの価値を生むことに気がついた。価値の一方向な抽出は、価値の循環的流れに取って代わられる。指数関数的な成長は、企業経営のベストな方法でも唯一の方法でもない。

ほとんどの人たちにとって新年は、2020年がようやく終わるという意味でやすらぎの時だ。しかし、過去を振り返り新たしい年がもたらす未来に向けて計画を立てるチャンスを逃してはならない。WeWorkとQuibiの失敗は、容易に繰り返される。現在もシリコンバレーのどこかで、運の尽きた会社に、ベンチャーキャピタルが大金を渡している可能性は高い。私たちはユニコーンに注意を向けすぎてきた。今こそゼブラに、彼らにふさわしい注意を向ける時だ。

【編集部注】著者のRebecca Honeyman(レベッカ・ハニーマン)氏は、SourceCode Communicationsの共同設立者であり、マネージングパートナーでもある。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ユニコーン企業

画像クレジット:Julien Fourniol/Baloulumix / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook