衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネットは8月19日、衛星データとAI画像認識技術を活用して駐車場として利用できそうな場所を検出するツール「Tellus VPL」のα版を、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)の公式ツールとして、無料提供を開始した。

同ツールは、さくらインターネットのほか、ディープラーニングをはじめとするAI技術で課題を解決するRidge-i(リッジアイ)、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(アキッパ)の3社で研究開発した。

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

「Tellus VPL」の新規駐車場用スペース解析結果イメージ画像

衛星データから駐車場として活用できそうな空き地などを見つけ出す同ツールは、空いている月極や個人の駐車場、空き地などを駐車場として一時利用するシェアリングサービスを展開するakippaの提案から生まれた。通常は、そうしたスペースを足で探さなければならず、大変な労力とコストがかかる。そこで、さくらインターネットがプロジェクトの取りまとめと衛星データの提供を、Ridge-iが機械学習とディープラーニング技術を使った候補地検出プログラムの開発を担当し、開発を進めた。akippaは、このツールの本格活用に向けて駐車場開拓パートナーとの連携を進めることにしている。

このツールが利用できるTellusは、さくらインターネットが経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発・運用を行う日本初の衛星データプラットフォーム。衛星データの提供のほか、衛星データを活用するためのツールや関連コンテンツなども提供している。実際にこれを使って駐車場候補地が検出されているかを検証した記事が、Tellus公式メディア「宙畑」(そらばたけ)に掲載されている。衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネット、Ridge-i、akippaは、「Tellus VPL」の改良を重ね、衛星データの実用化に向けて取り組んでゆくと話している。

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タグ:akippa(企業・サービス)画像解析(用語)さくらインターネット(企業・サービス)人工衛星(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ(企業)日本(国・地域)

衛星通信のPlanet LabsとGoogle Cloudがデータ分析契約で提携強化

衛星通信事業者のPlanet Labsは、Google Cloudとの既存のパートナーシップを強化する。新たな契約により、Planet Labsの顧客は、データの保存や処理にGoogle Cloudを利用できるほか、データ分析倉庫BigQueryといったGoogle以外のプロダクトにもアクセスできるようになる。

両社によるコラボレーションの始まりは2017年にさかのぼる。そのときGoogleは、同社の衛星画像事業Terra BellaをPlanetに売却した。その売却協定の一環としてGoogleは、Google Earthの画像の利用をPlanetにライセンスする複数年の契約に署名した。Planetはまた、同社の内部的なデータ処理とホスティングにGoogle Cloudを利用している。

今回の最新合意でPlanetの顧客は、BigQueryを利用して膨大な量の衛星画像データを分析でき「需要が増加している全惑星規模の衛星データの分析を、クラウドの力を利用して行いたい」とPlanetのニューズリリースでは述べられている。

Planetのプロダクトとビジネスを担当するKevin Weil(ケビン・ウェイル)社長は「Planetの顧客はスケーラブルな計算機能力とストレージを求めています。またGoogle Cloudの顧客は衛星データとその分析にもっと広範なアクセスをしたいと願っています。このパートナーシップは両者にとってWin-Winであり、顧客の事業運用のDXを助け、Planetのユニークなデータセットにより、デジタルファーストの世界で競争できるようにします」という。

Planetはおよそ200の衛星のネットワークを運用しており、それはどの国の政府よりも大きい。また集めたデータに対する分析も提供している。2021年7月、同社はSPACのdMY Technology Group IVとの28億ドル(約3085億円)の合併による上場を発表して、その他の多くの宇宙企業の仲間入りをすることになった。この取引でPlanetには5億4500万ドル(約600億円)のキャッシュが入ると思われるが、それにはBlackRockが管理するファンドであるKoch Strategic Platforms、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、そしてGoogleからの公開株へのプライベート投資2億ドル(約220億円)が含まれる。

関連記事:約200機からなる地球観測衛星コンステレーションのPlanetが約3097億円のSPAC合併で上場へ

カテゴリー:宇宙
タグ:Planet LabsGoogle CloudGoogle人工衛星衛星コンステレーション

画像クレジット:Planet Labs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Aurora Propulsion Technologiesの宇宙ゴミ除去技術が2021年第4四半期に宇宙へ

小型衛星用のスラスターや軌道離脱モジュールを開発しているフィンランドの企業Aurora Propulsion Technologies(オーロラ・プロパルション・テクノロジーズ)が、自社の技術を初めて宇宙に送り出す。同社はRocket Lab(ロケット・ラボ)と契約し、2021年第4四半期に、初の「AuroraSat-1(オーロラサット1)」と呼ばれるキューブサットを、Electron(エレクトロン)ロケットのライドシェアミッションに載せて、地球低軌道に送り出す予定だ。

Auroraは2018年に創設されたスタートアップ企業で、その他にあまり類を見ない技術は、私たちの多くにとって「見えないところにある、気に留めないもの」である宇宙ごみという厄介な問題の解決に役立つと考えられている。

宇宙ごみ(軌道上デブリ)とは、宇宙空間に存在する不要になった人工物のことだ。米国防総省は、Space Surveillance Network(宇宙監視ネットワーク)を通じて、約2万7000個の宇宙ごみを追跡し続けているが、地球低軌道上には数百万個のごみが漂っていると推定されている。

打ち上げやその他の技術コストが低下し続けているため、地球低軌道上は今後ますます混雑する傾向にあり、長期的には私たちの周囲に浮遊する不要なごみが増える可能性があるということだ。

2021年末に予定されているRocket Labによる打ち上げは、Auroraが宇宙でその技術を実証する好機である。AuroraSat-1は2つのモジュールを備える予定で、1つ目のモジュールには、6基の「レジストジェット」スラスタが搭載されており、キューブサットの迅速な離脱と姿勢制御(衛星の向き)の調整を行う。また、同社は電荷を帯びたマイクロテザーを用いて衛星の離脱時に抵抗力を発生させる「Plasma Brakes(プラズマ・ブレーキ)」のテストも予定している。

AuroraSat-1は当初、宇宙輸送事業者であるMomentus(モメンタス)によって、2021年初めにSpace X (スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットを使ったライドシェア・ミッションで飛ぶ予定だった。しかし、Momentusが米連邦航空局の承認を得られなかったため、その飛行は中止された。

今回の変更について、AuroraのRoope Takala(ルーペ・タカラ)CEOは「Momentusが難しい状況になったことを踏まえて、私たちは今回発表したRocket Labのフライトに衛星を載せ替えなければなりませんでした」と、TechCrunchに語った。Auroraは2021年3月、2022年6月にMomentusと衛星を打ち上げる契約を結んだと発表していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Aurora Propulsion TechnologiesRocket Lab宇宙ごみ人工衛星

画像クレジット:Aurora Propulsion Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXが初の買収、衛星ネット接続のSwarm Technologiesを全額出資子会社に

SpaceX(スペースエックス)は衛星接続のスタートアップSwarm Technologies(スワームテクノロジーズ)を買収する。Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いる創業19年のSpaceXにとって初の買収となる。

Swarmはサンドイッチサイズの衛星120基から成るコンステレーション​​ならびに地上ステーションネットワークを運用している。買収により、Swarmの保留中のライセンスに加えて地上と宇宙のライセンスの管理はSpaceXに移る。買収が承認されれば、SwarmはSpaceXの「直接の全額出資子会社」となる。

米連邦通信委員会(FCC)への書類提出で明らかになった今回の買収は、SpaceXの確立された社内技術開発戦略からの急な逸脱となる。

買収取引は米国時間7月16日に2社間で合意に達したと報道されている。取り上げられなかったFCCへの提出書類では買収金額や取引条件などの詳細は明らかにされなかった。SpaceX、Swarmどちらにもコメントを求めることはできなかった。

「Swarmのサービスは豊富な資本金と、SpaceXが利用するリソースへのアクセス、そして衛星のデザイン、製造、打ち上げサービスを手がけるSpaceXによる買収に関連する相乗効果の恩恵を受けます」と両社は提出書類の中で述べている。逆にSpaceXは「Swarmのチームによって開発された知的財産と専門性へアクセスでき、またリソース豊富で有能なチームをSpaceXに加えることで同様に恩恵を受ける」ことになる。

SpaceXのオペレーション、特に同社のStarlink衛星ネットワークにとって意味するところは不明瞭だ。というのも、これらの衛星はSwarmの衛星とは異なる周波数帯域で運用されているからだ。短期的には、Swarmは衛星150基のコンステレーションの展開という目標に向けて「まだ歩んでいる」と同社CEO、Sara Spangelo(サラ・スパンゲロ)氏は7月にTechCrunchに語った。

SpaceXと比較すると、Swarmは新しい会社だ。ほぼ3年前になる2018年8月にシリーズAで2500万ドル(約28億円)を調達したが、主要製品で商業展開を開始したのは2021年初めのことだ。Tileというその製品は、ユーザーがIoTデバイスを低コストで動かすことができるよう、さまざままな接続デバイスに埋め込んで衛星ネットワークにつなげられる小型のモデムだ。

SwarmのEvaluationキット(画像クレジット:Swarm)

Swarmはまた、2つめの製品となる499ドル(約5万5000円)のEvaluationキットを7月に立ち上げた。このキットは、Tile、ソーラーパネル、その他いくつかの部品を使って誰でもIoTデバイスを作れるようにするオールインワンのパッケージとなっている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXSwarm Technologies買収衛星コンステレーション人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Swarmが初心者でも扱えるIoT用衛星通信デバイスのキットを発売、約5.5万円

衛星通信事業会社Swarm(スワーム)の新製品は、誰でもメッセージングやモノのインターネット(IoT)のためのデバイスを作ることができるというもので、通信網から離れても接続を維持したいハイカーや、天気を把握したいホビーストなどに最適だ。

このSwarm Eval Kit(スワーム・エヴァル・キット)は、同社の主力モデムデバイスであるSwarm Tile(スワーム・タイル)、VHFアンテナ、小型ソーラーパネル、三脚、FeatherS2(フェザーS2)開発ボード、Adafruit(エイダフルーツ)製OLEDなどがセットになったオールインワン製品だ。キット全体の重さは2.6キログラムで、価格は499ドル(約5万4700円)。このパッケージを見ると、技術的な知識がないと扱いが難しいように感じるかもしれない。しかし、SwarmのCEOであるSara Spangelo(サラ・スパンジェロ)氏は「まったくの初心者から、より知識を持った上級者まで、ユーザーフレンドリーな設計になっています」と、TechCrunchの取材に語っている。

この製品を「評価キット(evaluation kit)と名付けたたのは、完成品ではないからという非常に意図的なものです」と、スパンジェロ氏は説明する。「この製品は、2種類の異なるグループに向けたものです。1つ目のグループは、地球上のどこにいても、低コストでメッセージングを行いたい人たち。第2のグループは、機械いじりが好きな人や趣味を楽しむ人、そして教育分野に携わる人々です」。

CEOで共同創業者のサラ・スパンジェロ氏(画像クレジット:Swarm)

Swarmにとっては、2021年初めに主力製品であるSwarm Tileの商業化を開始して以来、これが2番目のコンシューマー向け製品となる。Swarm Tileは、いくつかの異なるコンポーネントで構成されたSwarmのエコシステムの重要な一部である。Tileはさまざまなものに組み込むことができるモデムのようなもので、顧客はこれを使って、同社の衛星ネットワークおよび地上局ネットワークに接続する。Tileは最大限の互換性を持つように設計されているため、Swarmは海運、物流、農業などさまざまな分野の顧客にサービスを提供している。

「Swarmのすばらしさの1つは、私たちがインフラであるということです」と、スパンジェロ氏はいう。「私たちが携帯電話の電波塔のようなものなので、誰もがあらゆる分野で利用することができます」と語ったスパンジェロ氏は、土壌水分センサーやトラック運送業界で貴重な荷物の追跡にTileを使用している顧客などの事例を挙げた。

Swarmのビジネスモデルの大きな特徴は、低価格であることだ。Swarm Tileの価格は119ドル(約1万3000円)、接続サービスは機器1台につき月額5ドル(約550円)で利用できる。スパンジェロ氏によれば、それは小型デバイスや衛星の技術革新のお陰だけでなく、特にSwarmのような小規模な衛星開発企業にとっては、打ち上げ費用の経済性が向上したことも大きいという。また、同社は直販も行っているため、それが間接経費の削減にもつながっている。

Swarmの創設者であるスパンジェロ氏は、NASAのジェット推進研究所やGoogle(グーグル)のドローン配送プロジェクト「Wing(ウイング)」に参加していたパイロットで、航空宇宙工学の博士号を持つ。彼女がTechCrunchに語った話によると、Swarmはスパンジェロ氏と、高高度気球のプラットフォームを製造するAether Industries(エーテル・インダストリー)という会社を設立した経歴を持つ共同創業者のBen Longmier(ベン・ロングマイヤー)氏との間で、趣味的なプロジェクトとして始まったそうだ。

「そこで(私たちは)旧来の通信業者が現在行っているのと同じような速度で通信できることがわかったのです」と、スパンジェロ氏はいう。そして彼女は「コネクティビティは多くの注目を集めていました」と付け加え、Project Loon(プロジェクト・ルーン)のような取り組みが多くの資金を集めていたことに言及した。しかし、このような複数年にわたるプロジェクトの規模と張り合おうとするのではなく、彼女たちは小規模に取り組むことに決めたのだ。

設立から4年半で、Swarmは120基のサンドイッチサイズの衛星によるネットワークを地球低軌道に投入し、従業員も32人に増えた。同社はTileを使用する顧客の開拓にも力を注いできた。Eval Kitは、Swarmのサービスに顧客を呼び込むための新たな手段になると期待されている。

スパンジェロ氏は、このキットについて「色々なことをして遊ぶのが好きな、初心者と専門家の間にいるすべての人たちのためのものです。そして、ただ遊ぶだけではなく、遊ぶことでイノベーションやアイデアが生まれ、それが世界に展開されていくのです」と語った。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:SwarmIoT人工衛星通信

画像クレジット:Swarm

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【インタビュー】人工流れ星の2023年に商用運用開始へ、10年の節目を迎える日本の宇宙スタートアップ「ALE」

人工の流れ星で夜空を彩る。岡島礼奈代表が2011年9月に立ち上げ、2021年で10年の節目を迎える民間宇宙スタートアップのALE(エール)は、人工衛星から人工流れ星の素となる流星源を放出し、時刻・場所を指定して大気圏に再突入させ流れ星を発生させる「Sky Canvas」事業を進めている。

ALEは「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げ、人工流れ星などにより宇宙の美しさやおもしろさを届け、人々の好奇心を刺激し、宇宙開発のきっかけを創出していく。また、宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指し、宇宙デブリ防止装置開発事業で軌道上環境の維持に貢献し、宇宙産業の持続的発展をはかる。これらのアプローチで、ALEは科学と人類の持続的な発展に貢献していく考えだ。

岡島氏は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻で、博士号(理学)を取得している。学生のころ、友人らとしし座流星群を見たことがきっかけで「流れ星を人工で作れるのでは」と思い立ったという。その後、基礎科学の発展の為に何かできないかと考え、人工流れ星のアイデアで民間宇宙スタートアップとして挑戦を始めた。岡島代表に事業内容や現在までの歩みを聞いた。

夜空に好きな時に流れ星を生む「Sky Canvas」

人工流れ星の実現を目指す「Sky Canvas」事業は現在開発中の人工衛星3号機を2023年に打ち上げ、同年に人工流れ星のサービス開始を予定している。

天然の流れ星は宇宙空間に漂うチリが大気圏に突入した時に、チリ前方の空気が強く圧縮されて発光するもの。この現象を人工的に再現するため「アーク風洞」と呼ばれる装置を内製し、グリーンやオレンジ、ブルーなどさまざまな色に光る流星源の材料設計も進めている。

流星源は1粒1cmほど。人工流れ星は、流星源を人工衛星の格納庫から放出機構に送り出し、円筒内で加速して放出させる仕組みだ。実験では秒速最大400mの放出速度と、速度誤差1%未満の精度をクリア。人工流れ星は高度約60~80kmで消滅するため、宇宙デブリとはならないという。

流星源1粒は地上200km圏内で見ることができ、広さで例えればほぼ関東全域をカバーする。人々がオーロラを見に行くように「この国、この地域に行けば流れ星を見ることができる」と、ALEは人工流れ星を観光誘客のキラーコンテンツにしていく考えだ。すでに海外からも引き合いが多くあるという。

別の仕事で得た収入を研究費につぎ込む日々

岡島氏は2009年から人工流れ星の研究を始め、2011年にALEを設立後、大学研究室などとともに、人工流れ星に必要な要素技術の研究を進めていった。14年には流星源の実験により、相当の輝度が得られたことで初めて事業化が見えてきた。

ただ、岡島氏はそれまで、ALEの事業にフルコミットしていなかった。岡島氏は外資系大手金融企業に勤めていた経験を活かしたコンサルティングや調査など、別の仕事を個人で受け、その収入を研究費につぎ込んでいたのだ。

人工流れ星の事業化が視野に入ったのち、岡島氏は2016年にエンジェル投資家を中心に約7億円の資金調達を実施。ALEとしてメンバーの増員も行った。ここから人工流れ星事業は勢いを増す。

2017年に宇宙関連の新たな要素技術に関する実証などを行うJAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」採択され、18年に初号機となる人工衛星ALE‐1が完成し、19年にはALE‐1の打ち上げに成功した。

勢いに乗っていた「Sky Canvas」事業だったが、壁が立ちはだかる。2019年末に打上げた2号機で世界初の人工流れ星を実現させる計画だったが、宇宙空間特有の影響が予測よりも大きく、流星源を放出装置に送り込む部品が正常に動作せず、失敗に終わった。他の機器はすべて正常に動いていた。

「とても悔しかった」と岡島氏。その後、社内の開発体制を強化し、宇宙業界出身のマネージャーや外部レビュアーらも増員。2021年2月には、シリーズAの追加ラウンドとして総額約22億円の資金調達を行い(シリーズAを含むALEの累計調達金額は約49億円に上る)、現在は同資金を基に2023年に人工流れ星の実現を目指している状況だ。

また、ALEの人工流れ星事業を不安視する声もあった。岡島氏は「我われの事業は安全性に特に配慮していますが、このことをさまざまな人々に説明し、理解してもらうまでにも長い道のりがありました」と振り返る。

他の人工衛星と同様に、ALEの人工衛星には必要最低限ではなく余裕を持たせて装置を搭載し、障害時にも対応できるよう冗長性を持たせている。例えば、星の位置から人工衛星の位置や角度を把握し姿勢制御を行うセンサー「スタートラッカー」は1つだけではなく3つあり、GPSやCPUも3つずつある。

岡島氏は「いずれかの機器に誤作動が起きたときには、流星源の放出はできないシステムになっています。この辺りの安全性の担保をJAXAとともに進めてきました」と説明する。

さらにALEでは現在の宇宙空間にある人工衛星などのデータをNASAや18SPCS(米国空軍)のデータベースで確認。それを元に衝突確率を算出すシステムを作り上げている。流星源を放出する時間帯に、他の人工衛星が現れないかといったことをすべて計算し、クリアにしてから稼働させるようにしているのだ。

また、世界各国の宇宙関連機関で構成される国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)に対しても、ALEの事業ミッションについて説明していく中で「国際的なデブリの権威の方々にも安全性を認めてもらえるようになりました」と岡島氏は語った。

ALEが展開する3つの事業

ALEが進めている事業は、人工流れ星だけではない。この他に「大気データ取得」とデブリ防止装置を開発する「小型人工衛星技術研究開発」事業がある。事業としてはそれぞれ独立しているものの、根幹にある要素技術はつながっているという。

岡島氏は「人工衛星を小型化し、小さなスペースに高密度で技術を搭載して、宇宙空間であっても精緻な動作を実現することが、我われの強みでもあります。この技術はデブリ化防止装置にも、大気データ取得にも必要なモノです」と語った。

大気取得データ事業は2020年代半ばから宇宙実証および商用化を始める予定だ。人工流れ星で培った衛星技術を活用し、大気データを取得し、解析することで、気象予測の精度向上や異常気象のメカニズム解明へ活用していく。将来的には、人工流れ星の衛星に大気データ取得のセンサーを取り付けることで、気象観測により貢献していくことなども検討している。

一方、小型人工衛星技術研究開発は、宇宙デブリ防止装置をJAXAと事業協同実証を通じて開発中だ。同装置を打ち上げ前の人工衛星に搭載し、人工衛星のミッション終了後に長い紐(EDT)を宇宙空間で展開。地球磁場や大気抵抗を使って軌道高度をより短期間で降下させることで、人工衛星を地球大気に再突入・焼却廃棄させることができるという。

すでに2020年8月26日付で、宇宙産業における総合的なサービスを展開するSpace BDとデブリ化防止装置の全世界を対象とする販売代理店契約締結に向けた基本合意書を締結している。

なお、岡島氏は人工流れ星とは別に、新たな宇宙エンタメ事業の構想も進んでいると話した。「まずは人工流れ星を成功させることが先決ですが、新たな要素技術の開発も細々と進めています。結構おもしろいことができるのでないかと、考えています。楽しみにしていてください」と笑顔で語った。

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タグ:ALEインタビュー日本人工衛星

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

国際宇宙ステーション(ISS)に代わる日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する東北大学発スタートアップElevationSpaceは7月13日、プレシードラウンドにおいて、第三者割当増資による約3000万円の資金調達を発表した。引受先は、MAKOTOキャピタル、事業会社、個人エンジェル投資家の計8者。補助金なども含めた累計調達額は創業半年で約4000万円となった。

ElevationSpaceは、東北大学吉田・桒原研究室でこれまで開発してきた10機以上の小型人工衛星の技術を基に、2021年2月に設立された東北大学発宇宙スタートアップ。調達した資金により、2023年の打上を目指し開発中の技術実証機「ELS-R100」の開発を加速し、大気圏で燃え尽きず地球に帰還させる技術「大気圏再突入技術」の獲得を目指す。

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達
同社は、小型人工衛星内での宇宙実験・製造を可能とする小型宇宙利用・回収プラットフォーム「ELS-R」を開発しており、微小重力環境でのサイエンス研究や地球では不可能な高品質材料の製造を実現、その成果物を地上まで持ち帰ることができるという。

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

基礎科学的な実験から創薬などの産業利用まで、すでにISSが利用されているものの、構造寿命などの関係から2024年以降のISSの運用は未定という。その運用終了後は、宇宙環境利用を行う場所がなくなると考えられているそうだ。ISSは有人宇宙ステーションであり、国が管理しているプラットフォームであるため、安全管理の複雑さやリードタイムに課題がある。一方ElevationSpaceのサービスでは、小型かつ無人の人工衛星を用いるため、簡単に素早く利用でき、他の手段と比べて優れたユーザビリティを有するとしている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)ElevationSpace(企業)人工衛星(用語)東北大学(組織)資金調達(用語)日本(国・地域)

約200機からなる地球観測衛星コンステレーションのPlanetが約3097億円のSPAC合併で上場へ

約200機の衛星ネットワークを運用し、地球イメージングとその観測から得られたデータのアナリティクスを提供しているPlanet(プラネット)は、特別目的買収会社(SPAC)であるdMY Technology Group IVとの合併により株式を公開すると発表した。買収後の株式価値は28億ドル(約3097億円)で、Planetは、dMY IVの出資による3億4500万ドル(約382億円)、BlackRockが運用するファンド、Koch Strategic Platforms、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、およびGoogle(グーグル)から提供される2億ドル(約221億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含め、クローズ時に5億4500万ドル(約603億円)の現金残高を得ることになる。

少しの途切れの後、Planetは、今週SPACルートで公開市場に参入する2社目の重要な民間宇宙企業となった。両社とも地球観測事業を行っているが、7月6日にSPACによる合併を発表したSatellogicは、現在のところはるかに小さな規模で事業を展開している。2010年に設立されたPlanetは、これまでに約3億7400万ドル(約413億円)を調達し、現在稼働している中で最大の地球観測衛星コンステレーションを運営している。

同社のミッションは、地球イメージングデータが収集され、地球上の商業的利益に提供される方法を変革することだ。Planetの衛星ネットワークは、地球上のすべての陸地を毎日完全にスキャンすることができ、同社の創業者兼CEOであるWiill Marshall(ウィル・マーシャル)氏の言葉を借りるならば「地球データのBloombergのようなターミナルを介して」顧客に提供できるという。このサービスはサブスクリプションで提供されており、Planetによると、2021年1月に終了した直近の会計年度で1億ドル(約110億円)以上の収益を上げているとのこと。

Planetは、合併によって得られた資金を、既存の負債の返済に加え、既存事業の運営資金および「新規および既存の成長イニシアティブの支援」に使用する予定。同社は2021年後半に合併を完了させることを目指しており、その時点で、合併後の企業はニューヨーク証券取引所(NYSE)でティッカー「PL」で取引されることになる。

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タグ:Planet衛星コンステレーションSPAC人工衛星

画像クレジット:Planet under a CC BY-NC 2.0 license.

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

SpaceXが88機の衛星を軌道に乗せ、2021年初めて1段目の地上着陸に成功

SpaceX(スペースエックス)は、米国時間6月30日外部顧客向けの衛星85基とStarlink(スターリンク)衛星3基を軌道に打ち上げ、同社のライドシェアミッション(相乗りミッション)で2回目の成功を収めた。このTransporter-2(トランスポーター2)ミッションは、1回目のライドシェアミッションよりも宇宙に送り出す物体の数は少なかったものの(Transporter-1では143個の衛星を打ち上げ、新記録を達成した)、全部を合わせた質量はより大きなものになった。

このTransporterの打ち上げは、同社のライドシェアビジネスモデルの一環である。2019年に発表されたこれらのミッションは、ロケットのペイロード容量を複数の顧客に分配することで、それぞれの顧客のコストを低減させる。多くの顧客は、こうした手段を使うことなしには、軌道に乗せるための費用を支払うことが不可能な中小企業だ。それでも今回SpaceXは、ロケットを満載にし、運用をまかなうための収入を手にすることができた。

今回のFalcon 9(ファルコン9)ロケットは、米国東部時間6月30日午後3時31分(日本時間7月1日午前5時31分)頃、フロリダ州のケープ・カナベラルから離陸した。これは2021年における、20回目のFalcon 9の打ち上げで、ロケットの1段目を海上の無人船ではなく陸上に戻すことを狙った2021年最初の打ち上げだった。1段目のブースターは米国東部時間6月30日午後3時34分(日本時間7月1日午前5時34分)頃に分離してケープカナベラルに戻り、発射から約8分後には着地に成功した。今回は同ブースターにとって8回目の飛行となる。

画像クレジット:SpaceX

このミッションには10社近くの顧客が参加しており、その中には14社の顧客に代わって36機の小型衛星を打ち上げるSpaceflight(スペースフライト)のような顧客のペイロードを編成する打上げサービス事業者や、同社のSherpa-LTEという名の電気推進機なども含まれている。また、宇宙情報企業Umbra(アンブラ)の初の打ち上げ衛星や、Loft Orbital(ロフト・オービタル)の「ライドシェア」衛星であるYAM-2とYAM-3も搭載されている(それぞれの衛星には、別々の顧客のための5つの独立したセンサーが搭載されている)。

今回の打ち上げはSpaceXにとって2021年20回目にあたるものだったので(これまでの総ミッション数としては127回目)、2021年の打ち上げ回数は2020年の記録である26回をはるかに上回ると考えても良いだろう。

今回のTransporter-2の打ち上げは、当初米国時間6月29日に予定されていたものが延期された2回目の試行だった。1回目の打ち上げは、プロペラ機がフライトゾーンに侵入してきたために、発射11秒前に中止された。このことを受けて、SpaceX CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、規制システムが壊れていると発言した。

残念ながら、無闇に巨大な「立入禁止ゾーン」に他の航空機が侵入してしまったため、本日の打ち上げは中止となりました。

大規模な規制改革なしに、人類が宇宙飛行文明を手に入れることはできません。現在の規制システムは壊れています。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXFalcon 9Starlink人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

新宇宙経済ブームの到来で小型衛星用プラズマスラスター製造のOrbionは絶好調

人工衛星用の電気推進機構を開発しているOrbion Space Technology(オービオン・スペース・テクノロジー)は、シリーズBラウンドで2000万ドル(約22億1000万円)を調達した。同社はこの資金で「Aurora(オーロラ)」推進システムの生産能力を拡大すると述べている。

ミシガン州を拠点とするOrbion Space Technologyは、小型・中型衛星用のホール効果プラズマスラスラスターを製造している。スラスターは、人工衛星(または宇宙ステーションのように軌道を維持する必要のある宇宙物体)の寿命が尽きるまで、軌道高度の調整、衝突の回避、軌道離脱のために使用される。ホールスラスターは、磁界を利用して推進剤を電離させ、プラズマを生成する。

このタイプのスラスターは、宇宙では昔から使用されているものの、小型衛星の運用者にとっては高価すぎる場合がほとんどだった。Orbionでは、地球低軌道に向けて打ち上げを行うスタートアップ企業や開発者の高まる需要に応えるため、コスト効率の高い生産能力を構築したと述べている。Brad King(ブラッド・キング)CEOによれば、同社は製造委託先を検討していたが、最終的には垂直統合型の製造モデルを選択したという。現在は既存の製造スペースが手狭になっているとのこと。

同社はAuroraシステムに対する「かつてないほどの市場需要」に直面していると、キング氏はいう。いわゆるニュー・スペース・エコノミー(新宇宙経済)のブームは、プロセッサーや部品、さらには打ち上げコストの低下によってもたらされたものであり、効率的な宇宙推進システムの需要が同時に高まるのは当然のことだ。

画像クレジット:Orbion Space Technology

Orbion Space Technologyは2019年8月に、920万ドル(約10億2000万円)のシリーズA資金を調達した。その時以来、同社は米国の宇宙システムの回復力をテストしている米国防総省との研究パートナーシップを確保している。2020年9月には、小型衛星の製造を手がけるBlue Canyon Technologies(ブルー・キャニオン・テクノロジーズ)との契約も獲得した。

今回の資金調達は、米国とインドのベンチャーキャピタルであるInventus Capital Partners(インベンタス・キャピタル・パートナーズ)が主導し、Material Impact(マテリアル・インパクト)、Beringea(ベリンジア)、Wakestream Ventures(ウェイクストリーム・ベンチャーズ)が加わった。

「宇宙開発は変化しています」と、Inventus Capital Partnersの投資家であるKanwal Rekhi(カンワル・レキ)氏は声明の中で述べている。「PCがメインフレームに取って代わったように、大型衛星は多数の超小型衛星に取って代わられようとしています。Orbionはこれらの超小型衛星に、より正確な軌道に入り、より長く留まるための機動性を提供しています」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Orbion Space Technology人工衛星資金調達

画像クレジット:Orbion Space Technology

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

商業赤外線衛星で政府機関より細かい地表温度データを収集・分析するHydrosat、地球の危機に関するデータ提供を目指す

地表温度データをモニタリングするだけで、その地表エリアに関する多くの情報を学ぶことができる。Hydrosatの共同創業者兼CEOであるPieter Fossel(ピーテル・フォッセル)氏は、TechCrunchにこう説明してくれた。「例えば、作物畑にストレスがかかっている場合、植物自体のストレスの徴候より前に、地面の温度が上昇しているはずです」。今回、新たに500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を獲得したことで、同氏はHydrosat初の地表面温度アナリティクス製品を顧客に提供したいと考えている。

今回のシードラウンドは、Cultivation Capitalが新たに立ち上げたGeospatial Technologies Fundが主導し、Freeflow Ventures、Yield Lab、Expon Capital、Techstars、Industrious Ventures、Synovia Capital、そしてミシガン大学が参加した。

2017年末に設立されたこの地理空間データ分析スタートアップは、熱赤外センサーを搭載した衛星を使って地表温度データを収集する予定だ。地表温度は農業データ以外にも、山火事のリスクや水ストレス、干ばつなどの情報を提供できる。フォッセル氏のように、気候変動がすでに地球に力を及ぼし始めていると考えるなら、これらはすべて重要な変数だ。

地上温度のデータはNASAや欧州宇宙機関(ESA)などのレガシー機関で収集されているが、あまり高い頻度では収集されておらず、時には特定の場所の地表温度が16日に1回程度しか読み取られないこともあり、高い解像度でもない。Hydrosatは、このような既存のデータギャップを埋めたいと考えている。同社はマルチスペクトル赤外線カメラを使って他の帯域のデータも収集しているが、主なバリュープロポジションはサーマルデータだ。

最初の衛星は、2022年後半にSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでLoft Orbitalと組み地球低軌道に向かう予定だ。このミッションは、約1年前に心臓発作で他界したHydrosatの前CEOであるJakob van Zyl(ヤコブ・ファン・ジル)氏にちなんで名付けられた。衛星打ち上げというと華やかさが増すようだが、フォッセル氏は同社が「コンテンツ企業であり、データ企業であることが第一」と強調している。

「当社はまた、地表面温度製品の上に、作物の収穫量予測、干ばつ検知、灌漑管理などを目的としたアプリケーションを開発しています。なぜなら、これらはすべて基本的に水ストレスが原因であり、ここで挙げたアプリケーションはすべて、基本的に当社のコア製品である地表面温度データによって実現されるからです」と同氏は語った。

Hydrosatの最初の顧客は、ESAとの契約や、米国空軍および国防総省との3つのSBIR(中小企業技術革新研究プログラム)契約など政府機関だった。しかし今回の資金調達により、同社は製品を商業顧客に提供することが可能になる。商業顧客には、農業関連企業や保険会社、さらには地表データの収集に加えて分析を行いたいと検討している企業などが考えられる。

「(Hydrosatは)おそらく、我々が注力している農業分野からスタートしますが、業界を超えて広がっていく可能性があります。というのも、気温は、環境、水、ストレス、食糧など、当社が対象としている分野以外でもさまざまな活動のシグナルだからです」とフォッセル氏は説明する。「気温は経済活動のシグナルでもあります。防衛やセキュリティの観点からも、温度には多くの優れた使用例があります」とも。

将来的には、Hydrosat社はグローバルなモニタリングを可能にするために、16機の衛星を打ち上げる予定だ。しかし、これはあくまでも中期的な計画だとフォッセル氏はいう。長期的な計画としては、さらに衛星を打ち上げたり、データを充実させるためにバンドを追加したり、分析レイヤーを構築することが考えられる。「その先にあるのは、干ばつ、食糧安全保障、水ストレス、山火事、防衛・安全保障などへの応用を可能にする基盤データを提供することです」と同氏は付け加えた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Hydrosat人工衛星地表温度資金調達農業自然災害SpaceX

画像クレジット:Hydrosat

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ヴァージン・ オービットがYouTubeで6月末の衛星打ち上げをストリーミング配信

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)が2021年6月末に予定している次の宇宙への打ち上げミッションに向けて着々と準備を整えている。2021年1月に初めて軌道上への打ち上げを成功させて以来のミッションで、クライアントの米国防総省やオランダ空軍などに代わって小型衛星7基を打ち上げる。そして今回の打ち上げではミッションをYouTubeでストリーミングし、Virgin Galacticが宇宙へ旅する様子を誰もが視聴できる初の機会となる。

Virgin Orbitはこれまでフライトのライブ動画は提供せず、その代わりソーシャルメディアチャンネルでテキストによるアップデートを行っていた。YouTubeストリームでは、改造されたボーイング747旅客機の翼の下から高高度で空中打ち上げする小型ロケットLauncher Oneの輸送を含め、Virginの打ち上げプロセスのこれまでにない映像が提供されるはずだ。

打ち上げの様子のライブストリーミングは現時点で宇宙産業においてはかなり必要不可欠なものだ。特にSpaceX、Rocket Lab、Blue Originを含む、いわゆる「新宇宙」企業においてはそうだ。SpaceXはStarship開発のプロセス全体でもストリーミングした。成功に加えてかなりの失敗を広く流すことになるため、これは異例だ。

Virgin Orbitの打ち上げは飛行機を使うという斬新なものであり、垂直に打ち上げるものに比べてストリームは幾分ユニークな光景を提供するはずだ。なので今回の打ち上げは注目に値するだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Orbit人工衛星ロケット

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

わずか2cmの宇宙ごみを位相配列レーダーで検知し衛星との衝突をモニターするLeoLabs

低軌道は混雑している。破片やゴミだけでなく、衛星もある。衛星の数は打ち上げ費用の低下とともに急速に増えつつある。これは衛星プロバイダーにとって時として問題となる。価値あるスペースクラフトが他の衛星や軌道上にごまんとある物体と衝突するリスクを負う。

破片追跡はこれまでほとんど、わずかな軍や政府の機関によって行われていたが、完全に網羅していない。LeoLabs(レオラブス)は2016年の創業以来、同社がいう軌道物体追跡における「データ不足」を埋めることを目指してきた。そしていま、同社はInsight PartnersとVelvet Sea VenturesがリードしたシリーズBラウンドで6500万ドル(約71億7000万円)を調達し、オペレーションを拡大しようとしている。この最新ラウンドでLeoLabsの累計調達額は1億ドル(約110億円)を超えた。

LeoLabsは観測地域を飛ぶあらゆる物体を追跡して観測するために地上ベースのフェーズドアレイレーダー(位相配列レーダー)を使っている。レーダーはアラスカとテキサスに1基ずつ、ニュージーランドとコスタリカに2基ずつ配備している。LeoLabsの追跡システムの大きな優位点は検知できる物体のサイズだ。同社は2cm程度のものをとらえることができるが、これに対し従来の検知システムでは10cm程度だ。

検知可能なサイズの違いは大きい。大きさ10cm以上の物体は軌道上に約1万7000個超あるが、2cm以上のものになるとその数は25万個に跳ね上がる。衝突する可能性は高く、2cmというのは小さいように思えるかもしれないが、そうした小さなものでも軌道速度で動くことで壊滅的な被害をもたらすことができる。LeoLabsの顧客はサブスクサービスでこうした情報にアクセスでき、衝突のリスクは自動的に警告される。

「何が起きているのか、あまり情報はありません」とLeoLabsのCEOで共同創業者のDan Ceperley(ダン・チェパリー)氏はTechCrunchに語った。「ですので、当社は多くのデータを生み出すためにグローバルのレーダーネットワークを展開し、ソフトウェアインフラでそのデータを有用なものにしています」。

LeoLabsは週に3つから5つの大きな物体を含む近距離接近を目にしている、とチェパリー氏は話す。それらは注目に値する。というのも、衝突は何千もの小さな断片物、つまりはさらなる宇宙ごみを生み出す可能性があるからだ。さらに小な物体を追跡すると、衝突のリスクは20倍以上高まる。幸いなことに、多くの衛星は衝突を回避したり軌道を維持したりするためにアクティベートできる電動スラスターを搭載している。事前告知があれば企業は予想される衝突の数日前に操作できる。

新たに調達した資金でLeoLabsは世界中に設置するレーダーサイトの数を増やし、ソフトウェア・アズ・ア・サービス事業を拡大する、とチェパリー氏は語る。LeoLabsはすでに軌道を完全にカバーしているが、レーダーを増やすことで物体を追跡する周波数を広げることができると同氏は説明した。LeoLabsはまた、ソフトウェアとデータサイエンスのチームの規模(すでに社内では最大)を拡大し、米国外にもオフィスを置き、新しいプロダクトとサービスを加える計画だ。

「一生に1度という革命が宇宙産業で起きています。新たな投資が衛星打ち上げや衛星の製造、そして衛星運用の費用を抑制したため、多くの衛星が低軌道に向かっています」とチェパリー氏は話した。「これらを実際にすべて追跡する新世代のサービスが必要とされています。ですので我々は新しい時代のために次世代の追跡サービスとマッピングサービスを構築しています」。

カテゴリー:宇宙
タグ:宇宙ごみ人工衛星LeoLabs資金調達

画像クレジット:LeoLabs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星データで耕作放棄地の把握や土壌解析を行い農業課題解決に取り組むサグリが約1.55億円調達

衛星データで農業分野における課題解決に挑むサグリが、 リアルテックファンドをリード投資家として、みなとキャピタル池田泉州キャピタル広島ベンチャーキャピタルひょうご神戸スタートアップファンド、他エンジェル投資家等を引受先として総額約1億5500万円を調達した。今回の調達で、投資家である地域金融機関とも連携しながら、全国における市町村のユーザー獲得・導入を目指す。

耕作放棄地をデジタル地図で確認できる「ACTABA」

耕作放置地である可能性が赤色の濃淡で確認できるACTABA

同社は、自治体や農業委員会向けに「ACTABA(アクタバ)」という耕作放棄地把握アプリを提供。日本では農業従事者の高齢化等にともない耕作されなくなった農地が増えているが、その把握は、自治体職員が行わねばならない。ACTABAでは、Planetの衛星データを使用し、農地の荒れ具合を人工知能(AI)が判断、耕作放棄地とみられる土地を、可能性の強弱に応じて赤色の濃淡で表示し、職員の作業を軽減する。耕作放棄地の判定精度は現状でも9割を超える正答率であり、また全国の自治体で広く使われることでACTABA自身が学習し、アプリの精度が高まっていくという。

区画形成の自動化でデジタル地図の作成を容易にするAIポリゴン

区画形成データは、より高解像度なMaxer Technologiesの衛星データを用い、独自のAIポリゴン技術によって加工し、提供しているという。料金は農地面積に応じる。

東南アジアにプレシジョンファーミング(精密農業)を

同社は、衛星データによる土壌解析技術を使って、施肥量適正化による肥料コスト削減や植生解析による収量増加、土壌より生じる「温室効果ガスの把握と削減」など「地球環境改善」と「農家の収益改善」の二軸を求めていく考え。対象は東南アジアとしており、タイ、インドにはすでに進出している。

代表の坪井俊輔氏は横浜国立大学理工学部在学中に、子どもたちが未来に夢を感じられていない状況を危惧し、教育事業の「うちゅう」を創業。日本のみならず海外の子どもたちの様子も知るため、2016年にルワンダへ行くが、若年労働がほぼ義務化されている状況にあり、同じく子どもたちが夢を追いかけられない現状があることを知った。子ども達を労働から解放するため、まず途上地域の農業DXを進めようと、サグリを設立。坪井氏は「当初は営農アプリ開発をはじめ、途中でメディア事業へピボットするなど、試行錯誤して今があります。資金調達を経て、改めてパートナーのみなさまと事業を大きくしていきたいと感じています」と語った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:サグリACTABA資金調達農業東南アジアタイインド人工衛星日本画像解析

10cmの高解像度衛星画像提供を目指すAlbedoが10.8億円調達

今では、大半のスタートアップがソフトウェアを開発しているが、すべての新興企業が事業を構築するのにコード専門のアプローチを取っているわけではない。現代で最も野心的なスタートアップの一部はそれ以上のものを目指している。

Albedo(アルベド)はそうした企業の1社だ。最近のY Combinator卒業生である同社は、今日入手できるものよりも高解像度の地球画像を提供できる低軌道衛星コンステレーションの構築を目指している。そして同社は1000万ドル(約10億8000万円)のシードラウンドをクローズしたばかりだ。

同ラウンドはInitialized Capitalがリードし、JetstreamLiquid2 VenturesSoma Capitalが参加した。

TechCrunchはY CombinatorのときからAlbedoに目をつけ、同社が「空中品質」の画像と表現するものの提供で取っているアプローチを取り上げた。同社はドローンや航空機の代わりに宇宙から撮影する。より専門的にいうと、Albedoは10cmの視覚画像と2mの赤外線画像を提供しようとしている。

共同創業者でCEOのTopher Haddad(トファー・ハダッド)氏によると、同社は初の衛星を2024年に打ち上げ、2027年までに全コンステレーションを軌道に乗せることを目指している。衛星8基で毎日画像を2回提供でき、24基で3回提供できるが、衛星8基が初期の目標となるとのことだ。

Albedoが取り組んでいるものに、なぜこれまで誰も挑戦していなかったのか。部分的には大きな宇宙産業経済における進歩のおかげで、そして大手クラウドプロバイダーのAWSとAzureが衛星データを扱うためのサービス「AWS Ground Station」と「Azure Orbital」を構築したという事実によってAlbedoは可能になっているとハダッド氏はレターの中で説明した。つまり、より安価な打ち上げとより多くのモジュラー衛星建設が組み合わさり、Albedoが手がけたいものが可能になりつつある。

AlbedoのCEOで共同創業者のトファー・ハダッド氏(画像クレジット:Albedo)

しかしAlbedoがしようとしていることにはテック面でリスクもいくらかある。衛星が長く漂っていられるよう、衛星の電気推進装置にどのように軌道上で給電しようとしているかについてハダド氏は説明した。もし給電の取り組みが失敗すれば、あるいは予想よりも風の巻き上がりが悪ければ、Albedoの衛星はわずかに高い軌道と12〜15cmの範囲の低解像度の写真を選択しなければならないかもしれない。

蛇足だが、実際問題として解像度は何を意味するのだろうか。衛星からの10cmの解像度の画像は各ピクセルがそれぞれの面で10cmのものだ。なので、15cmの解像度の画像は10cmの画像の表面の2倍超のピクセルを持つことになる。

解像度は重要で、新しい画像が規則的に撮られることもそうだ。後者に関しては、今後展開される同社の衛星が写真を次々と撮るはずだ。

Albedoはあらゆる規模の企業を顧客としてターゲットにしたい意向だ。画像の世界は大きなマーケットだ。不動産保険会社、地図作成会社、電力会社、その他大企業が顧客になるとハダッド氏は見込んでいる。そして現在、同社は目標に向かって進むためにこれまで以上に多くの資金を手にしている。

ラウンド

初期のソフトウェアプロダクトを繰り返すよりも、宇宙スタートアップとしてスタートさせることに金がかかる。調達したばかりの1000万ドルでAlbedoは何をするのか。まず最初はスタッフだ。TechCrunchが最後にハダッド氏と話したとき、Albedoはまだ3人のチームだった。しかしそれは変わろうとしている。最近多くの新規採用を行い、すでに同社に入社する予定の人以外にも4、5人加わる見込みだ。

2021年末までに10〜12人になると予想している、と同社は話した。

調達した資金によって同社はロケット会社への頭金を払い、Albedoが衛星デザインを完了させられることにつながるはずのサプライヤーへの支払いを行うことができる。ハダッド氏によると、同社は初の衛星を軌道に乗せる資金をまなうためにおおよそ1年以内に大型のシリーズAを実施する予定だ。その際は自社のテクノロジーを証明することになりそうだ。そしてすべてが順調にいけば、打ち上げスケジュールを予定通り進めるためにさらに多くの資金調達にもつながる。

新たに調達した資金で何をできるのか見ることにしよう。資金が十分であれば、次の資金調達のマイルストーン達成へと進む。そうであれば、初の衛星打ち上げをTechCrunchが紹介できる。楽しみだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:Albedo人工衛星資金調達

画像クレジット:Albedo

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ

地球観測の分野はますます競争が激しくなっているが、Satellite Vu(サテライトヴ)は産業や気候変動モニタリングにとって重要なものである赤外線と熱放射にフォーカスするという異なるアプローチを取っている。TechCrunchのStartup Battlefieldを経て、同社はシードラウンドで360万ポンド(約5億4000万円)を調達し、2022年に初の衛星を打ち上げる予定だ。

Satellite Vuのテックとマスタープランの基本はTechCrunchのSatellite Vu紹介記事にあるが、要旨はこうだ。Planetのような企業が地球の表面のほぼリアルタイムの画像を儲かる商売にした一方で、熱画像のようなニッチな部分は比較的開拓されていない。

建物や地上の特徴的なもの、あるいは人々の集まりから放射される熱は非常に興味深いデータポイントだ。オフィスビルや倉庫が使用されているのかどうか、温められているのか冷やされているのか、そのプロセスがどれくらい効率的かを示すことができる。地下水や送電線、熱影響を受ける他の物体の存在をうかがわせる温かい、あるいは冷たいエリアを見つけ出すことも可能だ。また、何人がコンサートあるいは就任式に参加しているかを推量することもできる。もちろん、夜でも使える。

たとえば発電所のどの部分がいつ稼働しているかを確認できる(画像クレジット:Satellite Vu)

汚染や他の物質の排出も簡単に特定して追跡でき、地球の赤外線観測を気候変動という観点から産業を監視するのに重要な役割を果たす。これこそがSatellite Vuが初の調達で現金を、それから英国政府からの140万ポンド(約2億円)の助成金、5億ポンド(約748億円)のインフラ基金の一部を引きつけたものだ。

「やはり我々の考えは正しかったのです」。創業者でCEOのAnthony Baker (アンソニー・ベイカー)氏は、同社がこの資金で初の衛星の製造を開始し、追加の資金のクロージング手続きを開始したと話した。

宇宙を専門とするVCファームのSeraphim Capitalは同社への助成金基金をマッチングし、その後の助成金と合わせて調達総額は目標の500万ドル(約5億4000万円)を超えた。Seraphim Capitalの最重要のベンチャーはおそらく合成開口衛星スタートアップICEYEだろう。

「Satellite Vuの魅力はいくつかあります。これについて我々は2020年いくつかの調査を発表しました。小型衛星コンステレーションを打ち上げる計画を持っている企業は180社以上です」とSeraphimのマネージングパートナーJames Bruegger(ジェームズ・ブルガー)氏は話した。しかし、赤外線あるいはサーマルの分野に目を向けている企業はかなり少数だと指摘した。「それで我々の好奇心がかき立てられました。なぜなら、赤外線はかなりのポテンシャルを持っていると常々考えていたからです。そして当社の2019年の宇宙アクセラレーターを通じてアンソニーとSatellite Vuを知っていました」。

Satellite Vuは資金を必要とする。衛星そのものはかなり安いように思える。衛星は合計1400万〜1500万ドル(約15億〜16億円)で、全体をカバーするのに衛星7基が必要となり、それだけで今後数年で1億ドル(約108億円)超はかかる。

画像クレジット:Satellite Vu

しかしSeraphimはひるんでいない。「宇宙を専門とする投資家として、当社は忍耐の価値を理解しています」とブルガー氏は話した。そしてSatellite Vuが同社のアプローチで「広告塔」になっていて、これによりSeraphimのアクセラレーターを通じてアーリステージの企業を導き、エグジットするまでサポートする、と付け加えた。

Seraphimはベイカー氏が関心のある企業から得られそうな収入について計算するのを手伝っている。あらゆるもののための資金を工面する必要があるからだ。「商業的なトラクションは最後に話したときから改善しました」とTechCrunchのDisrupt 2020 Startup Battlefieldでプレゼンする前にベイカー氏は話した。

同社は現在、26件の仮契約を抱えており、ベイカー氏の推定では1億ドルの事業になる。もちろん求められているサービスを提供できればの話だ。そのために同社は未来の軌道カメラを普通の飛行機に設置して飛ばし、衛星ネットワークから送られてくると予想するものに似せるために出力を修正してきた。

衛星からの画像に関心のある企業は現在、事前に撮影された画像を購入でき「本当の」プロダクトへの移行は比較的大変ではないはずだ。Satellite Vuのサイドでパイプラインを構築するのにも役立ち、テスト衛星やサービスは必要ない。

模擬の衛星画像の別例。同じカメラが軌道に設置されることになるが、遠くからの画像に似せるために質を低下させた(画像クレジット:Satellite Vu)

「我々はそれを疑似衛星データと呼んでいます。ほぼ実用最小限の製品です。顧客企業が必要とするフォーマットやスタッフについてともに取り組んでいます」とベイカー氏は話した。「次のステージとして、当社はグラスゴーのような都市全体をとらえてサーマルでマッピングする計画です。これに関心のある組織は多いのではないかと考えています」。

Satellite Vuのオペレーションや打ち上げはPlanetやStarlink、そして AmazonのKuiperのものに比べると小さいが、調達した資金、仮の収入、そして抱えている見込み客からするにSatellite Vuは注目を引く準備ができているようだ。2022年に仮予定されている初の打ち上げ後、残る6基の衛星を軌道に乗せるのに必要な打ち上げは2回で、ライドシェアの打ち上げロケットに1度に3基を載せる、とベイカー氏は話した。

しかし打ち上げ前にさらなる資金調達が行われ、おそらく早ければ数カ月内だろう。結局のところ、Satellite Vuが倹約的であっても、本格的に事業を展開するには巨額の現金が必要となる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Satellite Vu気候変動赤外線人工衛星資金調達

画像クレジット:Satellite Vu

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

ノースロップ・グラマンが軌道上の古い衛星の再生に成功、衛星の寿命を5年延ばす

宇宙防衛産業大手のNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が新しい衛星テクノロジーを開発した。同社のミッション延長のための衛星、MEV-2をインテルサットのIS-10-02衛星にドッキングさせ、同衛星の寿命を5年延長することに成功した。これによりオービタルサービスと呼ばれる衛星サービス業務がビジネスとして極めて大きな可能性を持つことを証明した。

2020年8月に打ち上げられたMEV-2はインテルサットの通信衛星の軌道に同期した。インテルサット衛星は打ち上げ後18年で当初の運用予定期間をすでに5年も超過しており、まもなく退役が予定されていた。しかしOSAM(軌道上サービス・組立・製造)ビジネスが指すのは、まさにこのような状況で衛星を再生することだった。成功すれば運用者には数百万ドル(数億円)の効果がある。

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米国時間4月13日の軌道上作業でMEV-2衛星はIS-10-02に慎重に接近、ドッキングに成功した。MEV-2はそれ自身が燃料をフルに搭載した新しいエンジンとなり、インテルサット衛星の寿命を5年間延長した。ノースロップ・グラマンの広報担当者は「MEV-2は、10-02衛星の新しい動力原と考えてください」と語った。同社のプレスリリースによればドッキングの仕組みは次のようなものだ。

MEV-2のドッキングシステムはインテルサット衛星の後端にある位置制御用液体アポジモーターの噴射ノゾルに挿入するプローブを備えています。軌道上にある衛星の8割近くがこうしたノズルを備えているのでMEVは多様な衛星にサービスを提供することができます。液体アポジモーターの噴射ノズルはドッキングシステムのプローブを捕獲するための誘導コーンの役割を果たします。ドッキングプローブはモーター内部に入ったところで拡張されてカスタマー衛星を捕獲します。続いてプローブは3本の支柱を備えたドッキングリングによって両衛星を確実に結合します。

MEV-2に先行するMEV-1は2020年インテルサットのIS-901衛星とドッキングし軌道変更に成功している。

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しかし、その場合、衛星は活動を停止しており、復帰に適した軌道に軌道に入っていなかった。そのためMEV-1には、ミッションの最初の部分でのアプローチに少しだけ余裕があった。

MEV-2の場合、IS-10-02衛星は通常の軌道上で運用されていたため、サービスを提供する宇宙船は対象となる衛星の運用を妨げないようにアプローチを調整する必要があった。もちろん、稼働中の衛星にサービスを提供できるようになることは、死んだ衛星にしか対応できない状況から大きなステップアップになる。

そして当然のことながら、目標は、数年も衛星にしがみつくことなく別の衛星をドッキングして燃料を補給できる宇宙船を作ること、そして故障した部品を修理して、99%機能する衛星を燃え尽きることなく軌道上に留めておくことだ。Orbit Fabのような新興企業は、これを実現するために必要な部品やポートの製造と標準化を目指しており、Northrop Grummanは2024年に打ち上げ予定の次のトリックでロボットによるサービスミッションを計画している。

カテゴリー:宇宙
タグ:Northrop Grumman人工衛星

画像クレジット:Northrop Grumman

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

低コストの小型静止通信衛星スタートアップAstranisが約272億円調達

宇宙スタートアップのAstranis(アストラニス)が、同社のユニークなMicroGEO衛星の製造を拡大する原資にしようと、シリーズCで2億5000万ドル(約272億円)を調達した。MicroGEO衛星は、地球上の特定の場所に通信と接続を提供するための軌道バンドで使われる、巨大で高価なことが多い通常のものよりもずっと小型の静止通信衛星だ。

AstranisのシリーズCはBlackRockが管理するファンドがリードし、Baillie Gifford、Fidelity、Koch Strategic Platformsなど多くの新規投資家が参加した。既存投資家からはAndreessen HorowitzやVenrockが参加し、Astranisの評価額はポストマネーで14億ドル(約1524億円)となった。

今回のラウンドにより、株と借入による調達も含めAstranisの累計調達額は3億5000万ドル(約381億円)超となる。Astranisは2016年に創業され、YCの2016年冬季プログラムに参加した1社だった。他社の多くが低コストのブロードバンドを地上で提供するために低軌道(LEO)に衛星コンステレーションを築こうとしているが、共同創業者でCEOのJohn Gedmark(ジョン・ゲドマルク)氏が率いるAstranisはGEO(静止軌道)バンドにフォーカスしている。GEOバンドでは大型で古い通信衛星が現在稼働していて、固定されたポジションで地球を周回しながら地上の設定されたエリアに接続を提供している。

ゲドマルク氏は以前筆者に、同社のサービスはSpaceXなどの企業が打ち上げて運用しているLEOコンステレーションとかなり異なる、と話した。というのも、それらは本質的にはかなりターゲットを絞っていて、既存の地上インフラを利用する手軽なソリューションだからだ。特定の地域に絞って接続を確保したい顧客は、Astranisを使って従来のGEO通信衛星よりもかなり安いコストで衛星を打ち上げることができる。たとえば老朽化した既存の衛星ネットワークインフラを交換したりアップグレードしたりするために打ち上げる。

今回のラウンドをリードしたBlackRockはロケット打ち上げ会社Astraが合併した有名宇宙スタートアップSPAC(特別買収目的会社)のPIPE(上場企業の私募増資)の主要参加者だったことは注目に値する。今回のラウンドではAstranisがエグジット計画を準備しているとはいわないが、何か検討していることは確かだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astranis人工衛星資金調達衛星コンステレーション

画像クレジット:Astranis

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXが新たにStarlink衛星60機打ち上げ、Starshipロケットは一度に最大400機まで打ち上げ可能に

SpaceX(スペースエックス)が、Starlink(スターリンク)衛星の新しいバッチを打ち上げた。いつものように地球低軌道向けの60機の衛星で構成されており、打ち上げ済みの1000機の衛星コンステレーションに加わることになった。今回の打ち上げは、SpaceXにとって2021年5回目のStarlink衛星の打ち上げであり、トータルでは20回目の打ち上げとなる。

2021年の初めにSpaceXは、払い戻し可能な前払いの予約システムを介して、現在または計画されているStarlinkのサービスエリアへ、誰でもアクセスできるようにした。同社は、このような打ち上げを2021年を通して続け、世界のはるか広い範囲で顧客にサービスを提供できる、衛星コンステレーションを構成することを目指している。以前SpaceXのCOOで社長であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、同社は約1200個の衛星で世界の多くの地域をカバーできると予想していると語っていたが、現在同社はネットワークの容量と速度を完全に作り上げるために3万個以上の衛星打ち上げを計画している。

SpaceXは、Falcon 9ロケットを使ったStarlinkの打ち上げを順調に進めているが、その一方で衛星コンステレーション成長のキードライバーとしてStarshipにも目を向けている。南テキサスで開発中のSpaceXの次世代ロケット「Starship」は、一度に400個のStarlink衛星を軌道に投入することが可能で、完全な再利用性と迅速なターンアラウンドを考慮して設計されている。

1回のミッションで6倍以上の衛星を打ち上げることができるようになれば、Starlinkネットワークの展開速度や計画の全体的なコストの面で、SpaceX社にとって大きな助けになるだろう(なおここでは、Starshipが量産ロケットとなった際には、Starlinkが一般的に手頃な価格になるとしている彼らのコスト予測が正確であると仮定している)。少なくともそれは間違いなく数年先のことだが、SpaceXは米国時間3月3日に新しいマイルストーンを達成し、それが実現する可能性があることを十分に示している。

関連記事:SpaceXの大型宇宙船Starshipが3度目の試験飛行で高度10kmまで上昇〜着陸に成功

同社の最新のStarship試作機は、米国時間3月3日にこれまでで最も成功したテスト打ち上げを行った。同機はSpaceX社のテキサス州ボカチカ開発サイトから離陸し、高度約3万2000フィート(約9728m)まで飛行した後「フロップ」操作を実行して、垂直方向の軟着陸のために自身の向きを変えた。今回のテストロケットも、着陸後10分以内に爆発を起こしたが、その派手な結末にもかかわらず、今回のテストでは、SpaceXがStarshipを現実のものにするために必要な基本的なエンジニアリング作業の多くが証明された。

Starlinkは数年に渡る巨大な取り組みであり、Starshipの大量生産や飛行が数年先になったとしても、プロジェクト全体にまだ大きな影響を与えられるはずだ。そして、Starlinkが完全に展開され運用が始まった後は、定期的な保守作業が発生する。ネットワーク内の個々の衛星は、実際には最大で5年までの運用ができるように設計されているに過ぎない。そのため運用をスムースに行い続けるためには、定期的な交換が必要となるのだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarshipロケット衛星コンステレーション人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

日本の民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げるALE(エール)は2月26日、2019年9月5日に公表したシリーズAの追加ラウンドとして、第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は、宇宙フロンティアファンド(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー)、Horizons Ventures、THVP-2号投資事業有限責任組合(東北大学ベンチャーパートナーズ)、個人投資家など。

引き続き同追加ラウンドにおいて、既存投資家および新規投資家を引受先とする追加調達を検討しており、2022年4月までを目処に総額約22億円(今回の資金調達金額を含む)の調達を完了する予定。シリーズAを含む累計調達金額は総額約49億円となる。

ALEは、同追加ラウンドで調達する資金を基に、2023年に技術実証を予定している人工流れ星衛星3号機の開発、同年のサービス開始に向けた事業開発、2021年度に技術実証を予定しているEDT(導電性テザー)を利用したデブリ化防止装置の開発、さらには大気データ取得活動の要素技術開発およびその体制構築を着実に実行していく。

2011年9月設立のALEは、「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる民間宇宙スタートアップ企業。人工流れ星を始めとした宇宙エンターテインメント事業で宇宙の美しさや面白さを届け、人々の好奇心を刺激することで、さらなる宇宙開発のきっかけを作るとしている。

また宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指す。両者を有効利用し、人類の持続的な発展に貢献するとしている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:宇宙(用語)ALE(企業)資金調達(用語)人工衛星(用語)日本(国・地域)