TikTokを運営するByteDanceが電子書籍リーダーのZhangyueに約173億円を投資

ByteDanceはショートビデオのTikTokで売上を伸ばし中国のスタートアップを国際的に知らしめたが、テック大手が成長を加速させるために多くの新しい分野に進出しているのと同じことをByteDanceもしている。エンタープライズソフトウェアオンライン学習(未訳記事)に手を出してきたが、ここにきてByteDanceが中国最大の電子書籍サービスの1つであるZhangyue(掌阅)に投資するというニュースが届いた。

米国時間11月4日にZhangyueは、ByteDanceの完全子会社がZhangyueの株式の11%を11億元(約172億7000万円)で取得する計画を明らかにした。中国で上場しているZhangyueの現在の時価総額は120億元(約1884億円)で、上半期には同社のアプリで毎月1億7000万人のユーザー(Sina Finance記事)が小説や雑誌、漫画を読んだり、オーディオブックを聴いたりしている。

直接のライバルはTencentからスピンオフしたChina Literature(未訳記事)で、こちらは同期間の月間ユーザー数が2億1700万人であると主張している(China Literatureリリース)。

ZhangyueとByteDanceのパートナーシップは、中国でのスマートフォン普及により急成長しているオンライン書籍市場をターゲットにしている。市場調査会社のiResearchによると、2019年にユーザーは1日に1時間近く電子書籍アプリを利用していたという。サブスクリプションとライセンス料を含む電子書籍分野の売上は2020年に206億元(約3234億円)になると予測されている。これは2015年の66億元(約1036億円)からの増加だ。iResearchは、中国の電子書籍ユーザーは2020年中に5億1000万人に達すると予測している。

この株式取得で、Zhangyueと中国のデジタルエンターテインメントの巨人であるByteDanceが緊密に連携することになる。契約により、ByteDanceから1人がZhangyueの取締役となり、Zhangyueの知的財産のライセンスを受けられる。

一方のZhangyueは広告の購入、収益化、さまざまなテクノロジーなどの部分でByteDanceの支援を受ける。ByteDanceは、ショートフォームモバイルビデオアプリケーションのDouyin(抖音)やTikTok、ニュースリーダーのToutiao(今日头条)のユーザーが全体で数億人いるとしており、この成功により同社はブランドや広告主から人気を集める存在になった。

この提携により両社間の取引は株式取得の翌年に4億7000万元(約73億8000万円)相当になると見込まれ、これは株式取得前の年間2億7000万元(約42億4000万円)からの増加となる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ByteDanceZhangyue電子書籍中国投資

画像クレジット:Zhangyue

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(翻訳:Kaori Koyama)

人間味のあるロボアドバイザーを運営するシンガポールのSyfeが1860万ドルを調達、Valar Venturesが主導

シンガポールを拠点とし、アジアにおける投資をより身近にすることを目指すスタートアップのSyfeは今日、フィンテックに特化した投資会社Valar Venturesが主導するシリーズAを2520万シンガポールドル(約19億6000万円)でクローズしたと発表した。

今回のラウンドにはPresight Capitalの他、Syfeが昨年実施したシード資金調達ラウンドをリードしたUnboundも再び参加した。

2017年にCEOのDhruv Arora(ドルブ・アローラ)氏が設立したSyfeは、2019年7月に事業を開始した。RobinhoodやAcorns、Stashといった「ロボアドバイザー」たちと同じく、Syfeが目指すのは投資にもっとアクセスしやすくすることだ。投資を始める際の最低預入残高は必要なく、その手数料体系はすべての費用込みで年あたり0.4%から0.65%である。

Syfeは23か国で顧客サービスを提供するが、現在はシンガポールでのみ精力的なマーケティング活動を行っている。シンガポールにおいて同社はシンガポール金融庁の認可を受けている。新規調達資金の一部は、新たにアジアの国々へ進出するための投資に充てられる見通しだ。Syfeは正確なユーザー数を公表していないが、今年の初めから顧客数と預かり資産が10倍に増加しており、新規顧客のほぼ半分が既存ユーザーからの紹介で運用を開始したと述べている。

Valar Venturesのポートフォリオに含まれるその他の企業には、TransferWise、Xero、そしてデジタル銀行のN26がある。創業パートナーのAndrew McCormack(アンドリュー・マコーマック)氏は、Syfeに関する声明の中で「資産の拡大を目指す富裕層が急増しているアジア地域が持つ可能性と、チームの経歴と力強い牽引力が相まって、揺るぎない絶好の機会をSyfeにもたらしています」と述べている。

Syfeを起業する前、アローラ氏は香港のUBS Investment Bankで投資銀行業務に従事していた。後にインド最大のオンライン食料雑貨デリバリーサービス会社のひとつであるGrofersの副社長になる。UBS時代、アローラ氏は上場投資信託(ETF)を担当していた。

「銀行の顧客である多くの機関投資家と一部の超富裕層がETFを運用している様子を見ることができました。この商品は個人にとっても、すばらしいツールだと考えたのです。しかし、ETFの活用方法が実はそれほど良く知られていないということがわかりました」とアローラ氏はTechCrunchに語る。

アジアの多くの国々では資金を銀行に預金するか不動産に投資するほうが好まれる。とはいえ、預金利率と不動産価格は停滞し、消費者は投資を行うための別の方法を探しているところだ。Syfeは現在3種類の投資商品を提供している。1番目は株式、債券、ETFを組み合わせた国際分散ポートフォリオで、投資家が選んだリスクレベルに応じて自動的に資産運用されるものだ。2番目はシンガポール証券取引所のiEdge S-REIT Leaders Indexに基づくREITポートフォリオである。最後は全世界の1500社以上の株式を含むETFで構成されるSyfeのEquity100ポートフォリオだ。

この他のアジアに焦点を合わせた「ロボアドバイザー」サービスにはStashawayとKristal.aiがあり、Grab Financialも最近「マイクロインベストメント」商品を発表した。アローラ氏は今後、この分野への参入者が増える可能性があることを認識している。ただし現時点でのSyfeの主な競争相手は、それでも銀行に預けるのが一番、という考え方だと同氏は言及する。カスタマー教育もSyfeの業務の一部だ。「お金を銀行に預けるというのは、私自身も含めて多くの人の心に、文化的にしっかりと根付いていることだからです」というのがその理由だ。

Syfeでは財務アドバイザーのチームを編成して差別化を図っている。アドバイザーにはゴールドマンサックス、 Citibank、モルガンスタンレーの出身者がおり、ユーザーの相談を受けている。アローラ氏によれば、Syfeのユーザーのほとんどがプラットフォームへの加入時にアドバイザーと面談し、そのうち20%がこのサービスを継続的に利用している。投資にはクレジットカードを使うべきかという質問もあった。これについては、アローラ氏によれば金利が高いため止めるようアドバイザーが説得するという。

「当社はもちろんテックファーストのプラットフォームを目指していますが、そこには価値観というものが存在することを理解しています。50代や60代のお客様に対応するときは特にそうです。そういった皆さんはテクノロジーに適応している最中なのです。そこに人がいて、資産を運用してくれるということが分かる必要があるのです」と同氏は言う。

Syfeの平均的なユーザーは30才から45才だが、増加しているグループのひとつが退職に向けて、あるいは年金生活を補うために資産作りに意欲的な50代の人々である。ユーザーは大体、初回の投資を1万シンガポールドル(約76万7000円)で開始する。5人のユーザーのうち4人が定期的にこの残高に追加している。

一部のユーザーは投資連動型保険などの別の投資商品を試したことがあるが、多くの人にとって株式、債券、ETFに投資するのはSyfeが初めての経験だとアローラ氏は述べる。

「そこそこの人数のお客様が、それぞれの分野のプロフェッショナルで非常に裕福であり、30代後半で、多額の財産を築き上げたものの投資の機会がなかったか、投資の方法について適切なアドバイスを受けてこなかったことがわかりました。これは私たちには最大の新事実で、当社のプラットフォームに人間味を持たせるべきだと考えるきっかけになったのです」とアローラ氏は語る。

同社のプラットフォームは、投資チームとアルゴリズムの組み合わせで資産を運用する。このことが人間のバイアスを回避するのに役立つとアローラ氏は言う。Syfeのアルゴリズムは、グロース株かバリュー株か、株のマーケットキャップ、ボラティリティ、セクターのモメンタムを織り込んでいる。リスクのバランスを取るべく、個々の資産が同じポートフォリオの他の資産とどのように相関するかも分析する。

アローラ氏によれば、Syfeは現在いくつかの国の規制当局と協議を進めており、来年末までに少なくとも2か国の新しい市場に参入する見通しだ。また、チームの規模を倍に拡大し、さらなる消費者向け財務商品を開発する計画もある。

COVID-19の流行期間中、アローラ氏によればSyfeのポートフォリオはS&Pなどのインデックスに比べ大幅な下落局面が少なく、解約したユーザーはわずかだったという。むしろ、投資金額を増やしたユーザーも多かった。

「皆さんがファイナンスと将来について考え直し始めていると感じます」と同氏は述べ、さらに「世界中で銀行が金利を下げています。シンガポールもそうです。多くの人々が別の選択肢を検討し始めています」と語った。

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カテゴリー:人工知能・AI

タグ:ロボアドバイザー 投資 シンガポール

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(翻訳:Dragonfly)

投資テクノロジー:根強い富の格差を解消するための第一歩

著者紹介:Dean Sterrett(ディーン・ステレット)氏:LEX Markets(レックス・マーケッツ)の共同創業者兼COO、および製品部長。レックス・マーケッツでは、機関投資家や従来の投資家向けのマーケットプレイスで商用の不動産担保を扱う。

Philip Michael(フィリップ・マイケル)氏:NYCE Companies(NYCEカンパニー)のCEO。ニューヨーク州を拠点に、メディアやフィンテックの投資プラットフォームを展開。

Robinhood(ロビンフッド)の創業者Vlad Tenev(ウラジミール・テネフ)氏は最近、ニューヨークタイムズ紙のインタビューに答え、若年層の米国人が株式市場に参入しなくなったことが「つまるところ社会で今見られている圧倒的な格差につながっている」と指摘した

Thomas Piketty(トマ・ピケティ)氏は自著『The Economics of Inequality』(2015年)のなかで、投資資本の成長率がGDP(および1人当たりの平均収入)の成長率を上回ると収入の格差が広がると論じている。このことを考えると、テネフ氏の主張は的外れである。株式市場への参入は確かに富の形成には欠かせないが、そもそも資本を持っていなければ投資はできないからだ。

社会に根付いた格差に立ち向かうには、体系的な変化(手ごろな価格の医療サービス、職業訓練、賃金の引き上げ、インフラストラクチャの拡大、国政によるその他の取り組みなど)が必要だ。一方、フィンテック業界のイノベーションを活用すれば、ツールを提供して個人レベルの投資で富を築く機会を広げ、こうした政策を補うことができる。こうした進歩は、社会的な変化をもたらすだけの巨大勢力には取って代わらなくとも、個人が直面した障害を取り除く機会の1つにはなるだろう。

時代はフィンテック、そしてミレニアル世代の投資家へ

最近、仲介手数料無料の株式取引を巡って収益モデルの議論が起こっているが、フィンテックの投資アプリが登場したことにより、個人投資家が株式市場に参入する事例が大幅に増えてきた。特に多いのが、期待資産額の面で他の年齢層に後れを取っている若い投資家だ。

Acorns(エイコーンズ)、Public(パブリック)、ロビンフッドといった人気のフィンテックアプリのおかげで、株式市場への投資を検討し始めたミレニアル世代やZ世代の個人投資家にぴったりの隙間市場が生まれたのである。1月から4月にかけて、ロビンフッドの1社だけでも300万件の入金済み口座を獲得し、その平均年齢は31歳となっている

同様の傾向は、従来個人投資家の手に及ばなかったさまざまな資産クラスについても見られている。例えばEY(アーンスト・アンド・ヤング)によると、2016年以降、不動産のクラウドファンディング投資額は倍増し、現在80億ドル (約8500億円) を上回っている。2018年には、米国における商用不動産の価値が約16兆ドル (約1700兆円) に達した。これは、同時期の米国における株式市場のおよそ半分の規模に当たる。

不動産は、富を築くうえで不可欠な資産クラスだ。実に、億万長者の約90%が不動産投資から財産を形成している。この背景として、不動産市場が極めて寡占的であることがいくらか関係していると考えられる。歴史的に見て、不動産市場に参入する機会は裕福な投資家に限られていた。

そこで、いくつかのフィンテック企業が不動産の世界に進出し、資産クラスの獲得機会を広げようと試みたが、この市場を本当の意味で小口投資家に開いた企業は現在に至るまでゼロである。

参入コストを削減

これはつまりどういう意味だろうか。不動産投資の機会さえ得れば誰もが億万長者になれるかというと、そうではないだろう。ただ、経済的に安定するうえで必要なツールや教育リソースを誰もが入手できる環境が整えば、富を築くチャンスは大いに高まる。

経済的な地盤を固めるには、金融リテラシーと機会の獲得が主なカギとなるのである。もう1つ重要な点は、低所得層に付きものの多くのコスト(「貧困税」とも呼ばれる)を排除することだ。

現在、業界全体で仲介手数料無料の取引が推進されているのも、フィンテック業界がこうした参入コストをなくそうとしているためである。10万ドルの取引で10ドルの仲介手数料が発生してもコストは微々たるものだが、100ドルの株式取得で発生した仲介手数料が10ドルであれば、取引コストを相殺するだけでも20%の利益が必要となってしまう。しかし、仲介手数料無料の株式モデルや分割所有の株式モデルは、不動産投資の市場では浸透していない。

従来の資産クラス全体のなかで、不動産はいまだ参入コストが高いままなのである。株式市場の機会は、小口投資家にも広がりつつある。仲介手数料無料および低コストの株式モデルには、この変化を反映させる最大の可能性が秘められている。

今後の動き

不動産とフィンテックが融合するのは時間の問題だ。

この分野は、テクノロジーによって大きな違いを生むことのできる分野の1つである。カリフォルニア大学バークレー校の調査によると、アルゴリズムを使用した融資などのフィンテックソリューションにより、今まで家の購入を難しくしていたハードルを下げることができる。

この調査では、社会に深く根付いた問題がある影響で、世界有数のフィンテック製品でも問題を完全には解決できないことが分かっている。それでも、率の不均衡を3分の1以上解消できるのである。

こうした企業が新たな投資機会を広げ、買い付けコストを削減していくなかで、一般的な米国人に富が分配されていく様子が見られると期待したい。株式投資の根底にある価値を作るのは、彼らなのである。

投資機会が歴史的に限られてきたほか、現在もその機会が欠如していることを鑑みると、財産形成のための新たなツールや金融リテラシー(テクノロジー搭載のうえ、ミレニアル世代にも受け入れられやすいアプローチで)を浸透させることで、参入ハードルの問題を解決し、より安定した投資の機会を拡大できると考えられる。

Stash(スタッシュ)エイコーンズ、およびロビンフッドが全体で2400万人ものユーザー(その多くは重複)を抱えている今、テクノロジー対応の投資から人々の興味が離れることはない。例えば、エイコーンズの平均的な投資家は29歳で、年収は5万ドル (約530万円)だ。公認の投資家は最低年収が20万ドル(約2100万円)のため、従来の投資家像とはかけ離れている。

こうした新しい投資家が不動産やエネルギーといった代替資産の保有に乗り出したとしても、驚くべきではない。重要なのは、機会の獲得、サービス品質、教育、そしてユーザー体験である。

フィンテック業界の創業者は、自社製品で社会にどれほど好影響を与えられるか、過剰評価する傾向にある。我々は2人とも不動産フィンテック企業の創業者であるため、個人間のミクロなレベルで支援を行うことができると信じてはいるが、社会全体を本当の意味で豊かにするには、テクノロジー以外の分野で大規模な構造改革が必要だ。言うまでもなく、テクノロジーだけでは深く根付いた構造は変わらない。しかし、確実にさまざまな機会を広げることができるのが、テクノロジーの力である。

修正:この記事の修正前のバージョンでは、パンデミックの発生後、ロビンフッドで初心者の投資家が600万人増加したとの記載がありました。その後、広報担当者の方から連絡があり、「1月から4月にかけて、ロビンフッドの入金済み口座が300万件増加した」とご教示いただきました。

関連記事:Facebook共同創業者サベリン氏が語る「シリコンバレー後のイノベーション戦略」

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

中国アリババがインドスタートアップへの投資を最低6カ月凍結

中国のインターネット大企業であるAlibaba Group (アリババグループ)は、中国・インド間での地政学的緊張が続いている中、インドのスタートアップへの投資計画を凍結した。ロイターが8月26日、匿名2人の話として報じた

報道によると、インドのスタートアップに2015年以来20億ドル(約2120億円)超を投資してきたアリババグループは、新たな投資を少なくとも6カ月間凍結する計画だが、既存のポートフォリオ企業の持ち分を減らすつもりはないという。

アリババグループと、傘下のAnt(アント)はインドのいくつかのユニコーン企業の主要投資家だ。ここにはインドで最も価値の大きいスタートアップであるPaytm(ペイティーエム)が含まれ(未訳記事)、アリババの持ち分は約30%だ。また、フードデリバリースタートアップのZomato(ゾマト)、グローサリーデリバリースタートアップのBigBasket(ビッグバスケット)、eコマースのSnapdeal(スナップディール)などにも出資している。

投資凍結は、国境を接する2国間の関係が緊張していることを受けてのものだ。6月のヒマラヤでの軍事衝突でインド兵士20人超が死亡し、緊張が高まった。それ以来、多くの人が中国製のスマホやテレビ、その他の製品を破壊する様子を収めたビデオを投稿し、「ボイコット・チャイナ」やそれに近い言葉がインド国内のTwitter(ツイッター)でトレンドとなった。

報復措置と多くの人が受け止めている動きとして、インド政府はTikTokやその他58の中国のアプリを6月末に禁止し数週間後にさらに数十のアプリを禁止対象に加えた(未訳記事)。世界第2位のインターネットマーケットであるインドはまた、中国の投資家がインド企業に新たに投資しにくいようにするために、今年初めに海外直接投資規制に変更を加えた。

Zomatoは今年1月、Ant Financialが1億5000万ドル(約160億円)の投資を約束したことを発表した。ただ、グルガーオン拠点のZomatoがこれまでに受け取ったのは5000万ドル(約53億円)だけだ、と他の主要投資家の1人は先月話していた。

Ant Financialは8月25日、「インドの海外投資規制の変更により、Zomatoへの追加投資のタイミングを見極める必要が出てきた」とIPO目論見書で明らかにした。

画像クレジット: Alex Tai / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

特別目的買収会社について知っておくべきほぼすべてのこと

Special Purpose Acqusition Company(SPAC、特別目的買収会社)をもっとよく理解しておかねばと思っているだろうか。そう考えているのはあなた1人ではない。

見当もつかないというわけではないはずだ。Paul Ryan(ポール・ライアン)氏が現在SPACを保有していることはご存じだろう。野球界の経営者であるBilly Beane(ビリー・ビーン)氏やシリコンバレーの重鎮Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏も保有している。

SPACは他社の合併・買収を目的に設立される「白紙小切手会社」(blank-check companies)だ。SPACの大流行のきっかけを作ったのが物議を醸した起業家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏だということもご存知かもしれない。同氏は2017年に、Social Capital Hedosophia Holdings(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィア・ホールディングス)というSPACで6億ドル(約640億円)を調達した。その資金で最終的に英国の宇宙飛行会社Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)の49%の株を取得した。

だがSPACは最初にどう設立され、具体的にはどう機能するのか。あなたはSPACの設立を検討すべきなのか。TechCrunchは今週、目下ほぼSPACの仕事しかしていない何人かに我々の(そしておそらくあなたの)質問をぶつけてみた。

SPACが至る所で急に芽を出し始めたのはなぜか。

Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は、人気の原因は「サーベンス・オクスリー法と従来のルートで会社を公開することの難しさ」によるところもあると述べた。同氏は2億ドル(約210億円)の「白紙小切手会社」を8月18日に株式市場にデビューさせた。その後TechCrunchが話を聞いた。

新たに上場した会社でハーツ氏と提携し、事業を担当するTroy Steckenrider(トロイ・ステッケンライダー)氏は、SPACの人気の高まりが「スポンサーチームの質の変化」とも関連していると語る。ハーツ氏のような「これまでなら従来型ファンドの立ち上げは難しかったかもしれない」人がSPACのような投資ビークルの音頭を取り始めたというのだ。

忘れてはならないのは、数千万~数億ドル(数十億~数百億円)をベンチャーキャピタルから調達したが、新型コロナウイルスのパンデミックによりIPO計画が頓挫または遅延してしまった会社が実に多いということだ。その状況から脱け出すために比較的実行しやすい方法を必要としている会社もある。その方向に会社を動かしたいと考えている投資家も多数存在する。

SPACの設立手続きはどのように始めるのか。

「従来のIPOと手続面で違いは全くない」と投資銀行であるCowen(コーウェン)で資本市場グループのマネージングディレクターを務めるChris Weekes(クリス・ウィークズ)氏は説明する。募集への関心を高めるために「ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどの機関投資家とSPACの経営陣との1対1のミーティングを組み込んだロードショーが行われる」。

ロードショーが終わると、機関投資家(その中には現在多くのファミリーオフィスが含まれる)と割合としては少ない個人投資家が募集に応じることになる。

SPACを設立できるのは誰か。

株主に株を買うよう説得できる人なら誰でも設立できる。

SPACが資金を調達した後に何が起こるのか。

資金は経営陣が取得したい会社を決定するまでブラインドトラスト(受託者が運用に完全な裁量権を持つ信託)に移動される。どの投資家も対象会社がどこになるのかを知らない(少なくとも知るべきではない)ため、ユニットプライスはこの期間中実際にはあまり変動しない。

SPACの持ち分はすべて1ピース10ドルで売られているようだが、なぜか。

会計処理が簡単になるからなのか、従来そうしてきたからなのか。はっきりとはわからないが、ウィークズ氏によると、極めて少数の例外を除き、10ドル(約1060円)が常にSPACのユニットプライスだった(ユニットは通常株式とワラントの組み合わせ)。例外の1つはヘッジファンドの億万長者であるBill Ackman(ビル・アックマン)氏のPershing Square Capital Management(パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント)だ。同社は先月、40億ドル(約4200億円)のSPACを立ち上げ、1ユニット20ドル(約2120円)で募集した。

SPACのストラクチャーにここ数年で変化はあったのか。

あった。何年も前は、SPACがNDA(秘密保持契約)に基づき、機関投資家に交渉が決着した買収案件について伝える場合、投資家は資金をそのまま投資したままにしたいなら「イエス」、払い戻しを受けて退出したい場合は「ノー」に投票した。だが、「設立者株式」(投資家が保有する株式よりも権利内容が良い)を入手できない場合や、合併新会社に対して優遇措置が与えられない場合などに、結託して「買収取引を潰す」と脅迫することもあった。「市場ではいじめとも言えるようなこともあった」とウィークズ氏は言う。

その後、規制当局は議決権と出資払戻権を分離した。つまり、今日の投資家は「イエス」「ノー」のいずれに投票しても、資金を払い戻してもらうことができる。そのため投票プロセスはより表面的になり、ほとんどの買収取引が計画どおりに進むことになる。

ワラント(新株予約権)について聞いたことがある。

SPACのユニットを購入すると、機関投資家は通常、普通株とワラント、またはワラントの端数を受け取る。ワラントとは、その保有者に発行会社の株を後日固定価格で購入する権利を与える証券だ。基本的には、SPACへの投資意欲を高めるために加えられる「甘味料」だ。

SPACは以前よりも安全な投資になったのか。かつては最高に評判が良いというわけではなかった。

「どうしようもないフェーズはもう終わったと思う」と、国際法律事務所Orrick(オリック)のテクノロジー企業グループの弁護士であるAlbert Vanderlaan(アルバート・バンダーラーン)氏は言う。「90年代にはどうしようもない状況だと考えられていた。SPACは外国人投資家の食い物にされていた。2000年代初めになってもまだ毛嫌いされていた」。同氏は、「物事は急に元に戻る可能性もあるが、ここ数年間はプレーヤーが良い方向に変化しており、従来とは状況が大きく異なる」と指摘する。

ハーツ氏やステッケンライダー氏のような経営陣は集めた資金のうちいくらを会社で使うのか。

大まかな経験則はSPACの価値の2%に200万ドル(約2億1000万円)を加えた金額だ、とステッケンライダー氏は言う。2%で当初引受料(イニシャルアンダーライティングフィー)を概ねカバーする。200万ドル(約2億1000万円)はSPACの運営費用、すなわちSPAC設立にかかる初期費用から、法律面の準備、会計、NYSE(ニューヨーク証券取引所)またはNASDAQ(ナスダック)への申請費用までカバーする。「進行中のデューデリジェンスプロセスのための準備金にもなる」と同氏は言う。

この金額はVCが受け取るキャリーのようなものなのか。SPACのマネージャーはSPACのパフォーマンスに関係なくそれを受け取るのか。

両方イエスだ。

ハーツ氏はこう説明する。「2億ドル(約210億円)のSPACには、5000万ドル(約53億円)の『プロモート』(設立者持ち分またはそれに相当する価値)が含まれている」。しかし、「会社が業績を上げられず、たとえば1年または18カ月で半分に落ち込んだとしても、持ち分にはまだ2500万ドル(約26.5億円)の価値がある」

ハーツ氏はこれを「悪質」だと言うが、かと言って同氏とステッケンライダー氏がそれとは異なる方法でSPACのストラクチャーを決めたわけではなく、むしろまったくその通りのストラクチャーを採用した。

ステッケンライダー氏は次のように述べた。「当社は最終的に、初めてのSPACスポンサーとしてプレーンバニラ(最も単純な仕組み)のストラクチャーを採用することに決めた。投資コミュニティがSPACをできるだけ簡単に理解できるようにしたかった。パートナー企業(買収対象会社)との合併取引を行うと決めたり実際に行ったりする際に、ストラクチャーの経済性について再交渉すると思う」

2億ドルのSPACは、ほぼ同額の価値の企業を買収するつもりなのか。

違う。法律事務所のVinson&Elkins(ビンソンアンドエルキンズ)によると、対象会社の規模に上限はなく、下限があるのみだ。下限はSPACトラストに預けた資金の約8割だ。

実際、設立者が保有する株式とワラントへの希薄化の影響を減らすため、SPACがIPOで得た資金のの2〜4倍の規模の会社と合併するのが一般的だ。

ハーツ氏とステッケンライダー氏のSPAC(会社名は「one」)の場合、「2億ドル(約210億円)の投資ビークルの約4〜6倍の規模の会社を探している」とハーツ氏は説明する。「つまりだいたい10億ドル(約1060億円)前後ということになる」

パートナー企業がSPACより何倍も大きい場合、残りの資金はどこから調達するのか。

PIPEで調達する。SPAC同様、従前から存在する制度であり流行の波がある。これは文字通り「private investments in public equities」(上場会社による私募増資)であり、経営陣が合併したい会社を決定するとSPACに資金が注入される。

機関投資家が個人投資家とは異なる扱いを受けるのはここだ。そのため、業界を注視する者の中にはSPACを警戒する向きもある

具体的に言えば、SPACの機関投資家(おそらくSPACにまだ投資していない新しい機関投資家も同じ)は秘密保持契約に基づき、世間に知れ渡る前に買収対象を知ることができる。その情報に基づき、PIPE取引による追加出資を行うべきか判断することになる。

情報の非対称性は不公平に思える。ただ機関投資家は情報の取扱いについて制約を受けるだけでなく、最初の企業結合が公開されてから少なくとも4カ月間は株の取引も制限される。暗闇に放置された個人投資家は、いつでも自分の株を取引することができる。

SPACがこれらの全てを完了すべき期間の制約は。

場合によるが標準的には約2年間だ。

決められた期間内に完了しない場合はどうなるのか。

資金は株主に返還される。

パートナー企業が特定され、合併に合意した後、合併が実際に起こる前のフェーズを何と呼ぶか。

これは「De-SPAC」プロセスと呼ばれる。この段階で、SPACは株主の承認を得る必要があり、その後SECによるレビュー及びコメントの期間に入る。De-SPACプロセスは全体で12〜18週間かかる。

直線コースの最後を目指し、バンカーは従来のロードショーのスタイルで新しい営業チームを引き連れ、業界をカバーするアナリストらにストーリーを伝え始める。合併新会社のお披露目の後も市場で需要を引き付け、株主に会社への関心を持ち続けてもらうためだ。

パリハピティヤ氏やハーツ氏のようにベンチャー業界出身者がもっとSPACを始めるようになるだろうか。

インベストメントバンカーであるウィークズ氏は、SPACのスポンサーになることへのベンチャーキャピタリストの関心は低下しており、ポートフォリオ企業をSPACに売却することへの関心は高まっていると語る。「ほとんどのベンチャーキャピタルは通常、どちらかと言えばアーリーステージの投資家であり、非公開市場の投資家だ。一方、プライベートエクイティファンド、ヘッジファンド、ロングオンリーのミューチュアルファンドなどからの関心が全体的に高まっている」

ハーツ氏が関わればそれは変わるかもしれない。「我々は今シリコンバレーであらゆるファンドと話している。ベンチャーファンドを教育することだけを考えている」と同氏は語る。「多くの要望が寄せられた。著名なベンチャーキャピタリストであるBill Gurley(ビル・ガーリー)氏を直接上場の擁護者からSPACの擁護者に早急に転向させるつもりだ」

ところで、ハーツ氏のSPACがすでに念頭に置いている特定の買収対象(ターゲット)はあるのか尋ねると、ハーツ氏は「ない」と答えた。同氏は「ターゲット」という言葉にも問題があると考えている。

「我々は『パートナー企業』という言葉を好む」とハーツ氏は言う。ターゲットという言葉は「まるで誰かを暗殺しようとしているかのようだ」と付け加えた。

カテゴリー:ニュース

タグ:SPAC 買収 / 合併 / M&A 投資

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(翻訳:Mizoguchi

マイクロソフトやアマゾンが音声認識チップの新興メーカーSyntiantに出資

Microsoft(マイクロソフト)のベンチャーキャピタルであるM12が南カリフォルニアのアーバインに本拠を置く音声認識のチップメーカーであるSyntiantの資金調達ラウンドをリードした。参加した投資家には著名なベンチャーキャピタルが多数含まれている。Syntiantは音声認識の半導体の新興メーカーだ。

SyntiantのCEOであるKurt Busch(カート・ブッシュ)氏は「我々は機械学習を利用した専用プロセッサーを作っている。最初に出荷したのはバッテリー駆動で常時動作するデバイス向けの音声認識チップだ」と述べた。

ブッシュ氏によれば、こうしたチップのデザインには従来とは異なるアプローチが必要だという。伝統的なコンピューティングはロジック処理を中心とするが。深層学習ではメモリアクセスが重要となる。また伝統的なチップのデザインはメモリへの並列的アクセスにあまり向いていない。

またブッシュ氏によれば、Syntiantの新しいチップは従来の製品に比べて二桁以上効率性が高い。これは深層学習学習に特化したデータフローアーキテクチャを採用しているためだという。

この効率性の高さがマイクロソフトのM12を含む多数の有力ベンチャーファンドの関心を引くことになった。今回のラウンド参加したベンチャーキャピタルにはAmazonのAlexa Fund、Applied MaterialsのApplied Ventures、Intel Capital、Motorola Solutions Venture Capital、Robert Bosch Venture Capitalなどが含まれる。

今回の投資家には米国のテクノロジー産業を代表するチップメーカーやソフトウェアの開発企業が含まれている。これらの大企業が力を結集して南カリフォルニアの新興チップメーカーを支援することになったわけだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

AmazonのAlexa FundのディレクターであるPaul Bernard(ポール・バーナード)氏は次のように述べている。

Syntiantは音声テクノロジーを利用してイノベーションを推進していこうとする企業の努力に理想的にマッチする。同社のテクノロジーはAlexa、特にバッテリー駆動のデバイスでのAlexaのアプリケーションをさらに進化させるために膨大な可能性を秘めている。Amazonは音声認識テクノロジーのデバイスと環境を整備するために今後Syntiantとの提携を強化していく。

Syntiantがリリースした最初の製品は1.4×1.8ミリのマイクロチップで消費電力は140マイクロワットだ。このチップはアプリケーションによってはボタン電池1個で1年以上作動するという。

一方、Applied MaterialsのApplied VenturesのプリンシパルであるMichael Stewart(マイケル・スチュワート)氏は次のように述べている。

Syntiantのニューラルネットワークを利用したメモリー処理はApplied Materialsの中心的テクノロジーに極めて適合する。これはメモリー製品において根本的な飛躍をもたらし、デバイスのパフォーマンスを高め、新素材を利用したチップの可能性を広げる。またニューラル意思決定プロセスを利用したチップは非常に低消費電力であり、この種のチップのマーケットを大きく拡大する可能性がある。音声とビデオに対するニーズが大きく高まっている現在、同社の製品はソリューションは非常に有望だ。

現在Syntiantの製品をプロダクトに組み込もうとしている顧客は80社ある。十数社はすでに具体的なデザイン段階にありスマートフォン、スマートスピーカーのリモートコントロール、補聴器、スマートモニターなどのデバイスに音声認識チップを統合する計画だ。Syntiantは音声認識チップの最初のバージョンを既に100万個出荷している。

Syntiantのブッシュ氏は「今年中に会社の規模を10倍にする計画だ」と述べた。

Syntiantのチップセットはデバイスの起動、各種の命令の認識に対応している。ブッシュ氏によれば同社のチップセットはユーザーが自分の声に合わせて認識精度を改良したり独自のコマンドを設定したりすることができるという。

SyntiantはAtlantic Bridge、 Miramar aAlpha Edisonといった欧米のベンチャーキャピタルの支援を受けて2017年10月に資金調達ラウンドを成功させている。ブッシュ氏によれば同社は現在までに総額で6500万ドル(約68億7000万円)の資金を調達している。

Microsoft M12の投資を機に同社のSamir Kumar(サミル・クマル)氏がSyntiantの取締役に就任した。クマル氏は「Syntiantのアーキテクチャは現代のコンピューテーションを特徴づける並列処理と深層学習ネットワークによく適合しており、人工知能やIoT の分野でブレークスルーをもたらす可能性があると考えている」と述べている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

自社株を売れない創業者たちへ、分散化のすすめ

編集部注:本稿を執筆したPeyton Carr(ペイトン・カー)氏は、創業者や起業家およびその家族の財務アドバイザーとして、財務計画や投資に関するアドバイスを行っている。Keystone Global Partners(キーストーン・グローバル・パートナーズ)の代表取締役社長。

シリーズ前回の記事では、自社株集中型の投資を自分の投資計画全体の中でどのように位置づけるべきかを熟考する方法について考えた。今回は、自社株をなかなか売れない人がいるのはなぜなのか、その理由について詳しく見ていきたい。

初めて自社株集中型の投資をする人の多くが、「自社株に集中的に投資すれば、いずれ莫大な利益を手にできる」という神話のような思い込みをしている。本記事では、集中型投資の実情を紐解くとともに、ポートフォリオの分散化が堅実な選択肢である理由を説明する。

ポートフォリオ分散化にはどのようなメリットがあるのか、自社株をどの程度保有すると過剰集中になる得るのか、さらに、ポートフォリオを戦略的に分散させるためにどのような選択肢を検討できるのか、といった点について学べる記事になっているので、ぜひ最後までお読みいただきたい。

自社株集中型の危険性

自社株集中型のポジションを継続するか否かを検討する際に、いくつかの厳然たる事実を心に留めておく必要がある。

  1. 言うまでもなく、すべての株をアップルやアマゾンの株と同じように考えてはならない。Hendrik Bessembinder(ヘンドリック・ベッセンビンダー)氏が発表した研究によると、1926年以降の米株式市場全体の上昇のほとんどを、上場銘柄のうちパフォーマンス上位4%の企業が担っていたことが判明したという。残りの96%の銘柄の合計収益率は、米国短期国債の収益率とほぼ同じだ。1926年以降、上場全期間の利益率が米国1か月短期国債の利益率より低い銘柄は、米国株式市場の58%を占める。また、ラッセル3000指数(米国企業株のうち時価総額上位3000銘柄からなる株価指数)に登録されている全企業のうち40%の企業の時価総額が、1980年以降、各々の最高値から少なくとも70%は下落している。
  2. それでも、ブロードベースの銘柄では他の大半の資産クラスを上回る年間9%強のリターンを生み出しているのは、前述の上位4%企業の利益率が高いためだ。将来上位4%に入る企業を確実に言い当てることは誰にもできないが、分散化すれば上位4%の企業の株を必ず所有できる。
  3. 仮に、現在集中的に保有している特定の銘柄がアップルやアマゾンに匹敵する銘柄になるとしよう。しかし、どちらの株価もこれまでに90%を超える下落を経験しているという事実を忘れてはならない。それでも、大半の投資家はそのような下落が起こるという確信が持てず、同じ銘柄を保有し続ける。その銘柄がポートフォリオの運用益と純資産の大部分を占めている場合はなおさらだ。大暴落は、その企業自体とは関係のない業界または既存の脅威によって引き起こされることもあれば、その企業固有の事情によって引き起こされ、外部要因は一切無関係という場合もある。

新規IPOを達成した企業が上位4%に入る確率はルーレットで自分のラッキーナンバーに玉が入る確率よりもわずかに高い程度だ。あなたは、成功する投資ポートフォリオと、長期的な財政目標を達成する確率を、ルーレットを回すような方法で決めたいと思うだろうか。

分散化の利点

ボラティリティ(株価の変動率)が極度に高いと、運用益が低下することがある。以下の例は、ボラティリティの低い分散型ポートフォリオとボラティリティの高い集中型ポートフォリオを比較したものだ。単純平均利益率は同じであるにもかかわらず、低ボラティリティのポートフォリオの方が高ボラティリティのポートフォリオよりも実質的に高いリターンを生み出している。

Image Credits: Peyton Carr

単純に計算することはできないが、予期せぬ時にボラティリティが急上昇すると大幅な価格低下が起こることがある。価格が乱高下すると、投資家が感情的に反応して、賢明でない投資判断を下す可能性が高くなるためだ。このような「行動ファイナンス」の側面については記事の後半で説明する。ポートフォリオのボラティリティを低下させるのは簡単だ。ポートフォリオの分散化を進めるだけでよい。

米国の大手上場企業3000社で構成される株価指標であるラッセル3000指数は、95%強に属するどの単一銘柄よりもボラティリティが低い。では、ボラティリティを低く抑える代償としてあきらめるべき利益はどの程度のものなのだろうか。

Northern Trust Research(ノーザン・トラスト・リサーチ)によると、ラッセル3000株の利益率は年間平均5.96%で、中央値の利益率5.23%よりも0.73%高い。つまり、単一銘柄ではなくラッセル3000株を保有することで、壊滅的損失を被る可能性を排除できるということだ。ちなみに米国株式市場では、20%以上の銘柄が、20年間で年間平均10%を超える損失を出している。

この事実が過度の集中型ポートフォリオを避けることの重要性を証明しているとしたら、「過度の集中型」とは、特定銘柄をどの程度保有することを意味するのだろうか。また、そのような株はどの程度の価格で売るべきなのだろうか。

「自社株集中型」の定義とは

この記事では、保有している特定銘柄のポジションがポートフォリオの10%を超える場合に「集中型」のポジションとみなすことにする。厳密に定義する具体的な数字はない。集中度が適切なレベルかどうかは、必要な流動性の程度、全体的なポートフォリオ価値、リスク選好度、長期の資金管理計画など、いくつかの要因に左右される。ただし、10%を超えて、その単一ポジションのリターンとボラティリティがポートフォリオのパフォーマンスを左右し始めたら、ポートフォリオのボラティリティが高い状態と言ってよいだろう。

ポートフォリオを構成する自社株は、会社全体の財務リスクのわずかな部分にすぎない場合が多い。自社株以外のリスク源としては、制限付き株式、RSU(譲渡制限株式ユニット)、株式オプション、従業員株式購入制度、401k、その他の株式報奨制度、および会社の成功に応じた現在および将来の給与動向などが考えられる。大抵の場合、財務目標を達成するための賢明な方法は、ポートフォリオを適度に分散させることだ。

売りたくないと感じる理由

事実はどうあれ、より計画的なアプローチをとるよりも、自社株を集中的に持つことに魅力を感じるのは自然なことだ。現実を示す退屈な論拠よりも、ザッカーバーグやベゾスなどの数少ない成功例の方が輝かしく思えるし、実際、自分自身に賭けて莫大な利益を得る可能性がないわけではない。つまり、感情に負けてしまうわけだ。

しかし、ここで株に関する投資戦略と意思決定の根拠とすべきなのは、感情ではなく、自分の投資目標である。投資ポートフォリオとそれに含まれる自社株は、その目標を達成するためのツールとして使用するべきである。

そこでまず、意思決定に影響を与える行動心理学について詳しく見てみよう。

あらゆる証拠が「売り」を示しているにも関わらず、こんな心の声が聞こえることがある。

「この株は売りたくない」

こうした気持ちに抗いがたいのはなぜだろうか。これは人の自然な性である。筆者も同じ気持ちになることがある。人は、偏った見方を正当化し、そうした見方に影響を受けやすいことを信じまいとする、強い衝動を感じることがある。

自分が立ち上げた会社に執着するのは当然だ。何といっても、その株こそが今の自分に富を授けてくれたものであり、今後もそうしてくれる可能性があるのだ。確かに、集中的に保有している自社株を売って分散化するのはなかなか難しいものだが、大抵はその方が合理的な判断である場合が多い。

多くの研究によって、投資行動と心理学の間の相互関係について深い考察が行われてきた。データは自社株を集中的に保有すべきでないことを示しているのに、無意識のうちに発生している心理的障害と行動的バイアスに影響されて、集中的な保有を続けてしまうことがある。

このようなバイアスについて理解しておくと、株を売るかどうかを判断する際に役立つ。こうした行動的バイアスは気づくことさえ難しく、克服するのはなおさら困難だが、まずはその存在を認識することが克服への第一歩である。以下に、一般的な行動的バイアスをいくつか挙げてみる。自分に当てはまるかどうか、確認してみよう。

親密性バイアス:非常に多くの創業者たちが自社株を集中的に保有し続ける理由はおそらくこれだ。自分の知っているものは危険性が低いと考えるこのバイアスのゆえに、自社株は安全だと勘違いしてしまいがちだが、両者は別の問題だ。株式市場では、親密性と安全性は必ずしも連動しない。優良な(安全な)会社であっても株価が危険なレベルまで過大評価されることはあるし、ひどい会社でも株価が不当に過小評価されることもある。会社の質だけを見て、その会社の株が将来高い利益率を達成するかどうかを判断することはできない。重要なのは、その会社の質と株価との関係性である。

もう1つ、このバイアスが顕著に表れるのは、創業者が株式投資に疎く、所有している株は自社株のみ、というケースだ。このような創業者は、市場で取引するより自社株を自分で持っていた方が安全と考えるかもしれないが、実際は、自社株のみを保有するより市場で取引した方が安全であることが多い。

自信過剰:特定の個別銘柄を過度に集中的に保有する投資家は例外なく自信過剰になっていると言える。創業者たちは自分の会社を信じやすい。何といっても、IPOを達成するまでに成長してきた会社なのだから、自信を持つのも当然だ。しかし、この自信が株に関しては見当違いを生む。創業者は多くの場合、値が上がっている自社株を売るのを嫌がる。さらに上がると信じているからだ。自社株が売られている時でもやはり同じで、値が戻ると信じて疑わない。会社に対する強い愛着感が先に立って、客観的になるのが難しい創業者は多い。大抵の創業者は、自分は一般には知られていない独自の情報を持っており、自社株の「本当の」価値を知っている、と信じている。

アンカリング効果:一部の投資家は、過去に体験したことを固く信じ込む。集中的に保有している銘柄の株価が下がっても、その株には直近の高値が付くだけの価値があると信じて、売ろうとしない。しかし、この直近の高値というのは、本当の価値を示すものではない。本当の価値を示しているのは現在値である。買い手と売り手が現在入手可能なすべての情報を考慮した上で取引した結果として付いた値だからだ。

授かり効果:多くの投資家は、自分が所有している資産に対して、その資産を所有していない場合に付ける値よりも高い価値があると考える傾向がある。これが、売るのをさらに難しくする。授かり効果が発生しているかどうかをチェックするいい方法がある。「この株を今持っていなかったら、今日この価格で買うだろうか」と自問してみることだ。今日この価格では買わないとしたら、授かり効果が発生しているためにその株を保有し続けているだけ、という可能性が高い。

これを別の視点から見るには、IKEA効果の研究について調べてみると面白い。この研究では、自分が作ったものに対して、その価値を潜在的価値よりも高く評価することが証明されている。

このような背景を合わせて考えてみると、投資家は集中的に保有している銘柄を売るかどうかを判断する際に、かなり恣意的になる可能性があるということがわかる。こうしたバイアスはなかなか気づきにくいものだ。相談できる人、共同経営者、アドバイザーなどがいると有効なのはそのためだ。

大切なのは「流されない」こと

特定の銘柄を集中的に保有できている皆さんにはおめでとうと言いたい。簡単にできることではないし、将来大きな富につながる可能性があるからだ。ただ、集中型のポートフォリオを管理する方法にいわゆる「正解」はないと心得てほしい。人によって状況は異なるため、自分の状況に合った選択肢について専門家に相談することが絶対に必要だ。

まずは、達成したい具体的な投資目標を盛り込んだ財務計画を立てよう。何を達成したいのかを明確に理解できると、事実を新しい観点から見ることができるようになる。さらに、合理的な意思決定と投資行動がもたらすあらゆる影響と機会について考慮することにより、自社株を集中的に保有することの危険性とポートフォリオ分散化の利点に対する理解が深まるだろう。

戦略的に分散化するには

自分の株を普通の方法で単に売るだけなら誰にでもできる。しかし、分散化には他にもさまざまな戦略がある。最大限の節税に効果を発揮する戦略もあれば、望み通りのリスク・報酬バランスを達成するのに適した戦略もある。いつ売るのがベストかを知りたい人もいるだろう。シリーズ最終回となる次回の記事では、こうした点について説明する。

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タグ:投資 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

スタンフォードの大学院生はVCに頼らずクラスメートから投資を受ける

スタンフォード大学がスタートアップ創設者を多く輩出し成功していることは、シリコンバレーでも有名な語り草になっている。スタンフォード卒業生が創設した企業には、Google(グーグル)、Cisco(シスコ)、LinkedIn(リンクトイン)、YouTube(ユーチューブ)、Snapchat(スナップチャット)、Instagram(インスタグラム)、そしてそうこのTechCrunch(テッククランチ)もある。そのためベンチャー投資家は、スタンフォードのビジネススクールを卒業した企業創設者には、米国にある他の大学の出身者よりも多くの資金を日常的に投資(Crunchbase News記事)している。

そこで、自分たちが有利な立場であることをよく理解しているスタンフォードの大学院生のあるグループは、きちんとした投資会社や超大金持ちに頼らず、自分たちでクラスメートに資金提供ができるはずだと考えた。

彼らは、スタンフォードの学生だけで新しいファンドStanford 2020(スタンフォード・トゥエンティー・トゥエンティー)を設立し、学友のベンチャー事業への投資を行うことにした。

発案者は6人の学生。彼らは1年間、Fenwick & West(フェンウィック・アンド・ウェスト)法律事務所と連携して、投資クラブの設立に適した法的枠組みを探し出した。何らかの共有関係を維持している限り、複数の参加者が共同で投資できるというものだ。

Stanford 2020の創設メンバーであり、ベンチャー投資会社NEAの元アソシエイト、Steph Mui(ステフ・ムイ)氏は、シリコンバレーのステータスシンボルの中のエリートと彼女が呼ぶ、ほとんど接触が叶わないエンジェル投資家には頼るまいと、このクラブを立ち上げた。

「特にシリコンバレーでは、地位を確立した人や認められた人だけにそれが許されます。とても特権階級な感じです」と彼女はいう。「クラスの全員が参加できる形でできないか、仲間内で少額の資金を出し合うよりも、もっと利用しやすい形を作れないかと私たちは考えるようになったのです」。

Stanford 2020クラブに参加するためには、最低3000ドル(約31万7000円)の入会金を払う必要がある。利益が出た場合には、出資額に応じたリターンが必ず分配される。今のところ、175名の投資者から150万ドル(約1億5800万円)の資金が集められ、50万ドル(約5280万円)の出資を希望する50人が受け付けを待っている。クラブは「定員オーバー」の状態にあり、返金作業に追われている。

ムイ氏は、クラスの40パーセントがクラブに参加していると見ている。創設メンバーは「役員会メンバー」として定義される。彼らは情熱、多様な経歴、専門的な関心、過去におけるリーダー経験を考慮されて選考されている。

クラブは、ラウンドの規模と評価額に応じて、5万ドル(約530万円)から10万ドル(約1060万円)の投資をスタートアップに対して行う予定でいる。

Stanford 2020の強みは、投資先企業との人間関係によるところが大きいとムイ氏は考えている。つまり成功は、手の届く範囲内にあるということだろう。Cloudflare(クラウドフレア)もRent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)もThredUp(スレッドアップ)も、みな同じハーバードビジネススクールの教室で行った課題が発展して生まれた企業だと、CloudflareのCEOであるMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏はいう。

「私たちには、元々の強い人間関係があります。資金集めを始める前から、彼らが何に取り組んでいるかを、みんなが知っているのです」とムイ氏は話す。

クラブの参加者つまり仲間たちは、みな深い忠誠心を自覚しているが、その親密性が仲間の企業へ資金提供する際の十分な条件になり得るのかは、これからわかることだ。Stanford 2020は、手数料もキャリーも一切受け取らないが、エクイティは固定される。その点では、シリコンバレーの著名な投資会社のほうがクラスメートより使い勝手がいいかも知れない。

Stanford 2020の構成は、スタンフォード大学が緑豊かな学内の庭に投資するための事業で、2019年に廃止(Silicon Valley Business Journal記事)されたStartX(スタートエックス)と似ている。2013年に設立されたStartXは、大学付属のアクセラレーターを修了したスタートアップならどこでも、株式と交換で投資が受けられるというもので、プロの投資家から50万ドル(約5300万円)の資金を得ていた。

Stanford 2020の構成を見ると、ルールはほぼ同一だ。ムイ氏がTechCrunchに話したところによると、自動的な投資を受けるためにはスタートアップは2つの基準を満たす必要があるという。1つは、共同創設者は同級生であること。もう1つは、評判のよい機関投資家から投資ラウンドで75万ドル(約7900万円)以上を調達することだ。評判がよい会社とは、業界のアドバイザーから彼らに提供されたリストに掲載されている80社をいう。

ルールに基づく自動投資戦略というこのコンセプトには、心配な点もある。創設者の考えが間違っていても、または創設者が悪い人間であっても、基準を満たせば通るのか?

「投資すべきでない悪人や相当に不道徳な人は、私には誰一人思い浮かびません」とムイ氏。「それが、クラスメートだけを対象に投資するという方針のメリットでもあります」。

しかし、スタンフォードの教室から問題のある企業創設者が誕生した場合に備えて、Stanford 2020には拒否投票制度がある。

物事の大きな仕組みの中では、スタンフォード出身のスタートアップは資金調達の面で、他の大学出身者よも有利な立場にある。必死になってファンドを探し求める必要もない。ムイ氏がStanford 2020で抱いている願望に、他の大学でも彼らが1年間かけて(苦労の末に)作り上げた法的枠組みを、そのまま模倣して使えるようにすることだ。

すでにStanford 2020には、スタンフォードの次のクラスや、他スクールの大学院生、学部生からのインバウンドがあるという。現在はクローズしたが、彼女は他のビジネススクールからのニュースを待ち望んでいる。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

グーグルが世界最後の成長マーケットであるインドに1兆円超を投資

Google(グーグル)は米国時間7月13日、今後5〜7年でインドに100億ドル(約1兆700億円)を投資すると発表した。主要海外マーケットでデジタルサービスの浸透加速サポートを模索する中での動きだ。

グーグルのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は同日、新設するファンド「Google for India Digitization Fund」を通じてインドに投資すると明らかにした。「株式投資、提携、運用、インフラとエコシステムへの投資などの組み合わせで投資する。インドや同国のデジタル経済の将来に対する我々の確信を反映するものだ」とピチャイ氏はインドにフォーカスした同社の年次イベントでのビデオ会議で述べた。

投資は下記の4つのエリアに焦点を当てる。

  • 全インド国民がヒンディー語やタミル語、パンジャーブ語、その他の言語など自分の言語でアクセスし、情報を得られるようにする
  • インド特有のニーズに応える新たなプロダクトやサービスを構築する
  • デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業のサポート
  • 医療や教育、農業など公益性のある分野へのテクノロジーとAIの活用

インドはグーグルにとって鍵を握る海外マーケットだ。同社の検索、YouTube、Androidなどを含む一連のプロダクトやサービスは同国のネット使用者の多くを取り込んできた。インドの人口は13億人となり、おそらく米国や中国の大企業にとって手が付いていない最後の大きな成長マーケットだ。

現在ではインドの5億人以上がネットを、4億5000万台のスマホが使用されている。「インターネットを10億人ものインド人にとってリーズナブルな価格、そして使い勝手のいいものにするためには、すべきことがたくさんある。音声入力の改善、インドで使用されている全言語向けのコンピューティング、新世代の起業家の育成などだ」とインド生まれのピチャイ氏は述べた。

他の米国テック大企業と同様、世界最大のインターネットマーケットであるインドでのグーグルの売上高はわずかなものだ。しかし米国企業、そして中国企業にとってインドにおいては売上高が最優先事項ではないようだ。企業は発展中のマーケットで何億人もの新たなユーザーを探している。

インドでグーグルやAmazon(アマゾン)のライバルとなっているFacebook(フェイスブック)は2020年4月に、インドの6000万もの零細ストアをデジタル化するために、インド最大の通信会社Reliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォーム)に57億ドル(約6100億円)を投資した。

インドで最も価値の大きな会社Reliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)の子会社で創業4年のReliance Jio Platformsは4月以降、著名な12名もの投資家から157億ドル(約1兆7000億円)超を調達した。

アマゾンのCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は2020年初めにインドを訪問した際、同国に追加で10億ドル(約1100億円)を投資すると述べた。これにより同社のインドでの累計投資額は65億ドル(約7000億円)となる。

グーグルの13日の発表はまた、インドが中国企業を締め出す動きを見せている中でのものだ。インド政府は2020年6月に、中国企業が開発した59のアプリやサービスを禁止した。禁止されたものにはByteDance(バイトダンス)のTikTok、Alibaba Group(アリババグループ)のUC Browser、Tencent(テンセント)のWeChatなどが含まれる。一部の業界人は、この禁止措置で競合相手が減った米国のテック企業はインドでさらに触手を伸ばせる(未訳記事)と確信している。

2020年4月に、Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相率いるインド政府は、中国を含むインドと国境を接する国からの直接投資に政府の承認を義務付けるよう規則を変更した。

中国の投資家が最大の株主となっているZomato(ゾマト)、Swiggy(スウィギー)、Paytm(ペイティーエム)のようなインドのユニコーン企業数十社にとって、政府の対応は将来の資金調達難を招く可能性が高い。

インドでの足がかり構築は、中国でのビジネスから大方締め出されている米国のテック大企業にとって重要性を増している。2020年7月初めにグーグルは、中国で新たなクラウドサービスを提供する計画をキャンセルしたと述べた。

インドの電子情報技術相のRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)氏は、グーグルが「インドのデジタルトランスフォーメーションに相当な額を投資をしようと臨機応変に対応している」と述べた。「グーグルがインドのデジタルイノベーションとさらなる機会を創造する必要性を認識していることを嬉しく思う」とも話した。

グーグルはこれまでインドにおいてバンガロール拠点の超ローカル配達サービスのDunzo(ドゥンゾー)を含むひと握りのスタートアップを支援してきた。ファイナンシャル・タイムズ紙は2020年5月に、インド第2位の通信会社Vodafone Idea(ボーダフォン・アイデア)の株式5%取得でグーグルがVodafone Ideaと協議中(未訳記事)だと報じた。

インドグーグルのトップであるSanjay Gupta(サンジャイ・グプタ)氏は、グーグルの新たな100億ドルもの投資がインドにおける未来のプロダクトやサービスを形成する、と述べた。「真のデジタル国家になるという点においてインドと再び深く提携し、サポートする」と話した。

2004年からインドで事業を開始したグーグルが同国でリーチを広げてきた手法の1つが、地元のスマホベンダーとの提携を通じての低価格スマホの生産・販売だ。これらの低価格スマホはタイムリーかつ頻繁にソフトウェアがアップデートされる。

詳細は明らかにしなかったが、グーグルの決済とNext Billion Users構想を担当する副社長Caesar Sengupta(シーザー・セングプタ)氏は「より多くの人が学習し、成長・成功することができるよう、高クオリティ・低コストのスマホを提供する」ことにフォーカスすると述べている。

画像クレジット: Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

個人が非上場スタートアップに投資できる「CAMPFIRE Angels」、先行登録を受付開始

CAMPFIRE Angels 株式投資型クラウドファンディング

CAMPFIRE傘下のDANベンチャーキャピタルは7月9日、株式投資型クラウドファンディング運営サイト「CAMPFIRE Angels」(キャンプファイヤー エンジェルス)を発表した。従来運営サイトをリニューアルオープンしたもので、2020年8月17日から提供を開始する。

また、7月9日から資金調達を希望する事業会社の募集受付開始と同時に、スタートアップはじめ非上場会社への株式投資を検討されている投資希望者を対象にした、先行登録を開始する。資金調達を希望する事業会社の募集受付ページ、または投資希望者を対象とした先行登録ページにおいて登録が可能。

AMPFIRE Angelsは、非上場会社がサイト上で自社株式の募集を行うことで、個人支援者(エンジェル投資家)から少額ずつ資金調達できる株式投資型クラウドファンディングサービス。登録投資家は、プロによる厳正な審査を通過した未上場株式に投資でき、スマホからスタートアップの株主になれる。

CAMPFIRE Angels 株式投資型クラウドファンディング

日本では、2020年4月施行の改正税法で「エンジェル税制」を拡充。認定業者を通じた株式投資型クラウドファンディングによる投資について、一定の要件を満たす場合、投資家は投資金額の全額または一部を所得から控除できるようになった。なお、DANはエンジェル税制における認定業者として登録されている。

AMPFIRE Angelsは、DANが金融商品取引法に基づき運営を行うほか、CAMPFIREブランドの強みを活かし、アートやファッションなどのカルチャー領域、教育やシェアリングエコノミーなどのtoC領域におけるスタートアップの資金調達を中心にサービスを展開予定。

投資家とのコネクションを得ていないスタートアップにとっては、インターネット上で自社事業をアピールできること、スタートアップ投資に興味や経験のある登録済み個人投資家にアプローチできることが最大のメリットとなっている。

最短1ヵ月で募集を開始できるスピード感、面談から着金まで基本的にオンラインで完結する手軽さ、そして年間1億円までの調達が可能なシード期に最適な本格性を特徴。初めて資金調達に挑戦するスタートアップでも、経営経験者や金融業界出身のファイナンスのプロによるアドバイザリーサポートを活用し、安心して資金調達にのぞめる。

CAMPFIRE Angels 株式投資型クラウドファンディング

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