大富豪による宇宙飛行レースも最終局面、ヴァージンのブランソン氏がアマゾンのベゾス氏より早く大気圏外へ

2人の大富豪がカーマン・ライン(高度約100キロメートル)へのラストスパートで先頭を争っているが、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏が7月11日にVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)の宇宙船で飛行し、現地時間7月20日にBlue Origin(ブルーオリジン)の New Shepard(ニューシェパード)カプセルでの飛行を予定しているJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)を僅差で抑えるかもしれない。誰が勝つにせよ、ここでの真の教訓は、十分な資金があれば、本当に何でもできるということだ。

このニュースは、Virgin Galacticからの発表という形をとった。次の試験飛行の打ち上げウィンドウが米太平洋時間の7月11日午前6時に始まること、このミッションが2人のパイロット、3人のスペシャリスト、そして1人の大富豪というフルクルーを乗せた初めてのミッションになることが述べられている。(ブルーオリジンは独自の発表を行った)。

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Dave Mackay(デイブ・マッケイ)氏とMichael Masucci(マイケル・マスッチ)氏がVSS Unity宇宙船を操縦、チーフ宇宙飛行士インストラクターのBeth Moses(ベス・モーゼス)氏が飛行を監督、リード・オペレーション・エンジニアのColin Bennett(コリン・ベネット)氏が機内の設備と手順を監視、政府業務・研究業務担当副社長のSirisha Bandla(シリシャ・バンドラ)氏がフロリダ大学の微小重力実験を担当、最後にリチャード・ブランソン卿が「民間宇宙飛行士としての経験を評価する」としている。つまり、ブランソン氏は初めての一般人の旅客となる。

「私は、宇宙が私たち全員のものだと心から信じています」と、宇宙旅行会社の大富豪の創業者で個人的な出資者でもあるであるブランソン氏は、同社のプレスリリースで述べた。「16年以上にわたる研究、エンジニアリング、試験を経て、Virgin Galacticは新たな商業宇宙産業の先陣を切っており、宇宙を人類に開放し、世界を良い方向に変えようとしています。誰もが宇宙にアクセスできるようにするという夢を持つことと、信じられないようなチームが一丸となってその夢を現実のものにすることは別のことです。すばらしいミッションスペシャリストの一員として、未来の宇宙飛行士の旅を検証し、Virginに期待されているユニークな顧客体験を提供する役割に貢献できることを光栄に思います」。

このミッションは、Virgin Galacticの他の分野におけるスタイルと同様に、通常の方法で高い高度まで飛行した後、ロケットエンジンを搭載したVSS Unityが飛行機から切り離され、一般的に(誰もがそうとは限らないが)宇宙との境界であると考えられている80キロ以上の高さまで迫る。ブランソン氏は、将来のVirgin Galacticの宇宙旅行者が受けるのと同じ訓練を受け、もちろん同じ青い特別スーツを着用する。

すべてが計画通りに進めば、ブランソン氏はベゾス氏よりも1週間強早く宇宙に到達し、おそらく長年の賭けに勝つことになる。

ベゾス氏は(遅れをとっているものの)7月20日に、より伝統的なロケットであるBlue OriginのNew Shepardで、同氏の弟と幸運なチケットホルダーとともに宇宙へ向かう予定だ。幸運でリッチな、ということだ。つまり、このチケットはオークションにかけられ、2800万ドル(約31億円)で未公表の人物が落札した。

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しかし、同社は7月1日、初の有人飛行の4人目の乗客が、1961年に女性宇宙飛行士を養成したNASAのマーキュリー13プログラムの最初の卒業生であるWally Funk(ウォーリー・ファンク)氏であると発表した。当時、ミッションはキャンセルされ、ファンク氏は宇宙に行くことはなかった。50年間待ち続けた同氏に、ようやくチャンスが巡ってきたようだ。

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タグ:Virgin GalacticBlue OriginJeff Bezos民間宇宙飛行

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

米連邦航空局がヴァージン・ギャラクティックの商業宇宙旅行を許可

米国連邦航空局(FAA)は、Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)に、同社の宇宙船「VSS」で民間人を宇宙へ運ぶ商業宇宙旅行を開始する許可を与えた。これは、プロフェッショナルのテストパイロットや宇宙飛行士を、同社のスペースプレーンで宇宙へ輸送することを許可していた既存のライセンスを拡大したものだ。このライセンス更新に先立ち、ヴァージン・ギャラクティックは2021年5月22日に、試験試験を成功させている。

今回の認可取得は、ヴァージン・ギャラクティックにとって、初の公式な「スペースライン」(宇宙のための航空会社)として事業運営を行う道が開かれたことを意味する。同社は旅行者や研究者のために、宇宙への準軌道飛行を定期的なサービスとして提供することを目指している。その約2時間の旅の間に、顧客は外から地球を眺めたり、数分間の無重力状態を体験することができる。

FAAの承認は大きな一歩だが、ヴァージン・ギャラクティックが実際に商業宇宙旅行の定期便を運行開始する前にクリアしなければならない最後の一歩というわけではない。その前に、同社は残りの3つの試験飛行を完了させる必要がある。それはヴァージン・ギャラクティックの宇宙船とその輸送用航空機が、初めて全定員を乗せて行う飛行だ。Michael Colglazier(マイケル・コルグラジエ)CEOによると「2021年の夏」に1回目のフライトを行うことを目標としているという。

2021年6月初めのParabolic Arc(パラボリック・アーク)の報道では、ヴァージン・ギャラクティックの創設者であるSir Richard Branson(リチャード・ブランソン卿)が次の試験飛行で搭乗する可能性があり、それが早ければ7月4日の週末に行われるかもしれないと伝えられていた。これは、ブランソン卿のロケット乗りとしてのライバルである億万長者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏よりも、早く宇宙へ行けるということを意味する。ベゾス氏は7月20日に、自信が創設したBlue Origin(ブルーオリジン)のNew Shepard(ニューシェパード)宇宙船に搭乗する予定だ。ヴァージン・ギャラクティックは、次の試験飛行の時期を公式には発表していないが、情報筋によれば、Parabolic Arcの報道は誤りであるとのこと。

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タグ:Virgin Galactic民間宇宙飛行米国連邦航空局(FAA)

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジェフ・ベゾス氏も同乗するBlue Origin初の有人宇宙飛行チケットは30億円、ライブオークションで落札者決定

オークションにかけられていたBlue Origin(ブルーオリジン)の初の有人宇宙飛行の1座席の落札者が決まった。民間人を乗せて飛ぶBlue Originの初のミッションに落札者は2800万ドル(約30億円)を払う。6月12日に行われたライブオークションで決定し、全オークション過程には159カ国から計7600人が参加した。

今回のオークション結果はBlue Originの3パートに分けて進められてきた宇宙飛行チケット入札の最終結論だ。まず非公開オークションがあり、次に最高の入札額が同社のウェブサイトに表示される公開かつ非同期のオークションがあった。そして最後のライブオークションで入札額はかなり跳ね上がった。それまでの提示額は500万ドル(約5億5000万円)以下だった。

売りに出た初の座席の額は、Blue OriginのNew Shepardカプセルでの商業フライトでかかると思われる価格をかなり上回った。初フライトは準軌道までで、そこで数分だけ過ごして地球に帰還する。通常、フライトの費用は100万ドル(約1億1000万円)以下、おそらく50万ドル(約5500万円)の方に近い額だと推測される。しかし今回のフライトは有人としては初であり、明らかに特別な意味を持つ。また、落札者はBlue Originの創業者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏と交流することができる。ベゾス氏も弟のマーク氏とともに初フライトに搭乗する。そして4番目の搭乗者は7月20日の打ち上げに向けて「数週間」以内に発表される、とBlue Originは話す。

誰がオークションで落札したのかについても、もうしばらく待たなければならない。落札者については今日のライブオークション終了から「数週間以内に発表される」見込みだ。有人宇宙飛行能力の開発に何年も費やしてきたBlue Originにとって2800万ドルは大きな臨時収入になるのではと思った人もいるかもしれないが、そうではない。同社はオークションの売上をClub for the Futureに寄付する。子どものSTEM教育を促進する非営利団体であり、長期的には人間が宇宙で暮らせるようにするというベゾス氏の大きな目標をサポートする。

オークションのライブ入札の様子は以下のストリームで見ることができる。

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画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASAが新たに2つの民間宇宙飛行士によるISS滞在ミッションの提案を募集

NASAは米国時間6月11日、民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に滞在させる新たな2件のミッションについて、民間企業から提案を求めていることを発表した。最初のミッションは2022年秋から2023年半ばの間に、2回目のミッションは2023年半ばから2023年末までの間に行われる可能性が高い。

民間宇宙飛行士によるミッションは、NASAの地球低軌道商業開発プログラムの一環として、比較的最近開始されたものだ。人類による宇宙開発の歴史のほとんどにおいて、ISSに滞在できるのは各国の宇宙機関に所属する宇宙飛行士に限られていた。

ヒューストンに拠点を置く宇宙スタートアップ企業のAxiom Space(アクシオム・スペース)は、2022年1月に予定されている史上初の民間宇宙飛行士のみによるISSへの宇宙飛行ミッションを受注している。このミッションでは、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられる4人の民間宇宙飛行士が、ISSに8日間滞在することになっている。このミッションに関連するサービスの対価として、NASAはAxiom Spaceに169万ドル(約1億8500万円)を支払う。

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新たに計画されている2つのミッションはそれぞれ最大14日間で、提案書の提出期限は7月9日。これらのミッションは米国の企業が仲介し、認定を受けた米国の輸送用宇宙船を使用しなければならないと、NASAは指定している。Axiom Spaceの民間宇宙飛行士ミッションでは、SpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルードラゴン)ロケットが使用される。

NASAは、今回のような民間の有人ミッションを可能にすることで「NASAは多くの顧客の1つとして、民間企業が主導する地球低軌道経済の活発な発展」に寄与できると述べている。

SpaceXが先導するロケットの再利用という革新などにより、打ち上げコストが大幅に低下したことに加え、この5年間で生まれた「新宇宙」企業のまったく新しいエコシステムのおかげで、宇宙はかつてないほど賑わいを見せている。

NASAはまた、ゆくゆくは今後のアルテミス計画(人類が待望する月面再着陸計画)や、太陽系のさらに遠い場所を目指すミッションのために、地球低軌道は「訓練と実験の場」として利用できるとも述べている。

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タグ:NASA民間宇宙飛行国際宇宙ステーション

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンのジェフ・ベゾス氏が宇宙へ、自ら設立したBlue Origin初の有人宇宙打ち上げに搭乗

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、7月20日に打ち上げられるBlue Originの初の有人宇宙フライトに搭乗する。Amazon(アマゾン)創業者である同氏が米国時間6月7日朝、自身の弟であるMark Bezos(マーク・ベゾス)氏も一緒に行くことをInstagramで明らかにした。ベゾス兄弟はBlue Originが現在行っているオンラインオークションの落札者とフライトをともにする。1座席がオークションにかけられていて、現在の最高入札額は280万ドル(約3億円)だ。

7月20日に行われる準軌道飛行の再利用可能なNew Shepardロケットの打ち上げは、有人としては初となる。最初の有人飛行ミッションに有料顧客を乗せるのは異例だ。そして今、世界最富裕の1人も搭乗することが明らかになり、初の有人飛行にもう1つ大胆な要素が加わった。対照的にVirgin Galacticは、今後Richard Branson(リチャード・ブランソン)卿の搭乗が予定されているが、すでにテストパイロットや宇宙飛行士を乗せて複数回打ち上げた。Elon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXのロケット搭乗もまだ実現していないが、どこかの時点で搭乗すると過去に述べている。

しかしBlue OriginのNew Shepardは無人で何回も飛んでおり、初回フライトでは再利用可能なブースターをなくしたが、ブースターのランディング(初回を除く)やカプセルの回収などミッション15回を成功させている。New Shepardロケットは軌道までは到達しないが、宇宙の「縁」を飛行し、そこで搭乗者は数分間、無重力を体験したりカプセルにたくさんある窓越しにとびきりの地球の眺めを味わったりする。そしてパラシュートを使ってBlue Originの打ち上げサイト近くのテキサスに帰還する。

Blue Originの初の有料座席のオークションでは、最高入札額は同社が5月19日に入札を公開したときの140万ドル(約1億5000万円)から上昇し、このところ280万ドルのままだ。オークション最終日は6月12日で、残っている参加者がさらに高い額を提示する様子はオンラインでライブ公開される。

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画像クレジット:Matthew Staver/Bloomberg / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースXが民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶミッションを2023年までに4回予定

SpaceX(スペースX)は、2020年1月に実施するとすでに発表済みのミッションに続いて、さらなる民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り込むための乗り物を提供することを発表した。計画されている4度のフライトは、すべて民間の商業宇宙飛行および宇宙ステーション企業であるAxiom Space(アクシアム・スペース)のためのもので、2022年はじめから2023年までの間に行われる予定だ。

SpaceXの宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」と「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」は、ISSへの人間の輸送を認可された最初の民間打ち上げシステムであり、すでに3組のNASA宇宙飛行士を軌道上の実験室に送り出している。そのうち1組目は最終的な認証取得試験のデモ飛行で、2組はISSに滞在し作業を行うための運用飛行だった。AxiomとNASAは5月に、初の民間人のみによるISSへの飛行となるAX-1ミッションの詳細を明らかにした。このミッションでは、4人の民間宇宙飛行士をCrew Dragonに乗せてISSに送り届ける。4人は合計8日間、宇宙に滞在しながら作業を行い、地球に帰還する予定だ。

NASAとSpaceXは、ステーションに向かうAxiomの4人のクルー全員にトレーニングを提供することになっている。SpaceXもAxiomも他の3つのミッションの内容や時期については、今のところ詳細を明らかにしていない。だが、2年間に4回のミッションを行うということは、これでNASAが2022年と2023年に年2回ずつ割り当てている民間宇宙飛行士ミッションがすべて埋まることになる。

民間宇宙飛行士によるISSへの飛行は、すでに2021年内に1度予定されている。日本の大富豪である前澤友作氏は、12月初旬にロシアのSoyuz(ソユーズ)ロケットでISSに向かうフライトを予約した。この宇宙旅行を手配したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)は、2000年代に何人もの大金持ちの民間人を宇宙へ送り出してきた。

一方でAxiomは、軌道上宇宙ステーションでの商業活動について、ニッチではなくより継続的に行う未来を思い描いている。同社は既存のISSに追加する商用モジュールの開発に取り組んでおり、将来的にはISSの後継となる完全に民間運用の宇宙ステーションの建設も視野に入れている。2年間に複数のクルーを乗せた4回の旅行の予約があるということは、物好きな富豪による気まぐれ以上の需要が、商用宇宙旅行にあることを示すのに大いに役立つだろう。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ターンキー宇宙サービスを目指すPhantom Spaceが衛星プログラムのStratSpaceを買収しさらに前進

2021年の打ち上げ回数は新記録になる勢いだが、需要は急速に伸びている。Phantom Space Corporation(ファントム・スペース・コーポレーション)のような会社は、これまで宇宙産業で見たことのない量産技術を使ってその需要を満たそうとしている。このほど同社は、衛星プログラムのデザインと管理を行うStratSpace(ストラトスペース)を買収したことを現地時間5月25日に発表した。これは、宇宙輸送・製造のターンキーサービスを構築するための重要な一歩である、とPhantom Spaceの共同ファウンダーであるMichal Prywata(マイケル・プライワタ)氏がTechCrunchに話した。

「StratSpaceは、宇宙船を運行するために必要なノウハウ、ツール、衛星構成、通信システムをすべてもっています」と同氏は説明した。「これは当社にとって極めて重要です。なぜなら私たちはスタートからフィニッシュまであらゆる宇宙サービスをカバーする最初の企業になろうとしているからです」。買収の条件について会社は公表を拒んだ。

Phantom Spaceの狙いは、ロケット量産戦略に買収を組み合わせることで「ワンストップショップ」となり、宇宙へのアクセスをコストダウンすることだ。同社は最大450kgの貨物を低地球軌道に運ぶ専用打ち上げを400万ドル(約4億4000万円)で提供することを目指している、とプライワタ氏は語った。

「私たちは年間何百、もしかした数千回という話をしています」、と会社の目標打ち上げ回数についてプライワタ氏は語った。「現時点で、市場は間違いなく年間数百回の打ち上げを支えています」。

まだロケットモデルの飛行テストすら始めていない会社としては壮大な願望だ。Phantom Spaceは、同社がエンジンや航空電子機器など開発に何年もかかるような部分を外部調達していると語った。その他の部分やサービスについては、買収戦略を利用するつもりだ。

「買収に非常に積極的なのはそれが理由です。今こそ必要なテクノロジーと企業を1つの傘の下に集め、アイデアを採用して宇宙へ持っていくことのできる会社の総合インフラストラクチャーを作り始めるチャンスだと思っています」と彼は言った。そこには衛星の開発、統合、打ち上げ、データ通信が含まれている。「私たちは全方位をカバーすることを目指しています。そうすることで宇宙に持ち込みたいと思っているアプリケーションをもつ他の会社を助けることができます。そのために必要な要素を私たちはすべて持っているからです」。

Phantom Spaceは、2023年第1四半期に、2段式ロケットDaytona(デイトナ)を最初に打ち上げることが目標で、ステージレベルのテストは2022年に開始予定だ。同社の「働き手」となる打ち上げ機であるDaytonaは、高さ18.6mで、8基のエンジンを使って450kgを低地球軌道に運ぶことができる。Daytonaは完全に使い捨てだが、同社の大型モデルのロケットLaguna(ラグナ)は再利用する計画だ。

会社はカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地の第5発射施設に入る権利を取得しており、ここが最初の打ち上げの場所になる可能性が高い。同社は最近アラスカ州のパシフィックスペースポートコンプレックスとの契約にも署名した。そこではAstra(アストラ、こちらもロケット量産を目指している企業)が打ち上げを行っており、最終的にフロリダ州のケープ・カナベラル宇宙基地と打ち上げ契約を結ぶ計画だ。

しかし、仮に飛行テストが順調に進んだとしても、年間数百、数千もの打ち上げを行うことは、この国の宇宙基地の数を考えると現状では不可能だ。

「打ち上げを米国内で行うだけでは十分ではありません、なぜならこれら3カ所だけで年間数百回に到達することは不可能だからです」とプライワタ氏はいう。そこでPhantom Spaceはスウェーデン北部、オーストラリア北部、およびブラジルで発射場所を探している。同社は米国の連邦航空局とも、水平打ち上げに限定されている宇宙基地で垂直打ち上げを可能にするライセンスについて交渉している。

Phantom SpaceによるStratSpaceの買収は、数多い買収の始まりにすぎない、とプライワタ氏は述べた。「私たちはまだ小さいので、成長するために貪欲になろうとしています」と彼はいう。「そのために、小さいけれども私たちの全体戦略を可能にする非常に重要な買収から始めています」、

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タグ:Phantom Space Corporation買収民間宇宙飛行

画像クレジット:Phantom Space Corporation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「宇宙旅行」が賞品のディスカバリーの新リアリティ番組「Who Wants to Be an Astronaut?」

Discovery(ディスカバリー)は、2022年に放送予定の新しいリアリティ番組を発注した。この新番組は、Axiom Space(アクシオム・スペース)の商用ミッションで国際宇宙ステーション(ISS)への旅行に参加するチャンスを競う。全8話のコンテストシリーズとなる。優勝者は、AxiomがAX-1に続いて完全に民間の宇宙旅行者グループをISSに輸送する2回目のミッションとなるAX-2のクルーに加わる。AX-1は早ければ2022年1月に実施される予定だ。

AxiomとNASAは、2021年5月初めに行われたプレスブリーフィングでAX-1について詳しい説明を行った。このミッションは8日間にわたり、4人の有料顧客を軌道上の科学ステーションに連れて行き、短期間滞在するという。この特典のためにNASAに支払われる価格は169万ドル(約1億8000万円、この中にAxiomが輸送サービスによって提供する現物支援は含まれていない)となっている。

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AxiomはAX-1では、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)とCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船を使用して、民間宇宙飛行士の顧客をISSに輸送する予定だ。「Who Wants to Be an Astronaut?」シリーズの最初のプレス資料では、優勝者を受け入れるAX-2ミッションに使用される宇宙船は明記されていないが、これまでに活動している唯一の完全な民間宇宙旅行会社であることから、このミッションにもSpaceXが採用されると考えるのが妥当だろう。

このリアリティ番組シリーズで行われる実際の選考プロセスについて、Discoveryは次のように説明している。

宇宙へ飛び立つ憧れの席を獲得するには何が必要なのか?そのプロセスは過酷であり、厳しい選考を通過するのは選ばれた数人だけです。このシリーズでは、宇宙飛行士に最も必要とされる資質を試すために、様々な過酷な課題に挑戦し、宇宙飛行や宇宙ステーションでの生活に必要な訓練を受ける候補者たちを追っていきます。

そして最終的には、専門家の審査員によって適性があると判断されたラッキーな候補者1名が、これまで経験したことのない冒険へのチケットを手にすることになります。このシリーズでは、離陸から再突入、そして帰還まで、重要な瞬間を記録していきます。

このコンテストは「ありふれた普通の人々」に公開されており、参加したい場合、応募フォームに30~60秒の短い動画を添付する必要がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Discovery国際宇宙ステーション民間宇宙飛行Axiom SpaceNASA

画像クレジット:NASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ブルーオリジンの初の商業宇宙フライトチケット入札は2.1億円超えで続行中

Blue Origin(ブルーオリジン)はNew Shepardロケットでの初の商業宇宙フライトの座席販売で斬新な方法を取っている。最も高い額で落札した人に座席を提供するというオークションだ。同社はコンテストの第1パートとして非公開の入札を行い、最高入札額を発表した。そして米国時間6月10日まで公開のオンライン入札を行う。

非公開入札には136カ国から5200人が参加し、誰もが欲しい座席のこれまでの最高入札額は140万ドル(約1億5200万円)だ。Blue Originは自社ウェブサイトでオークションを公開し、高額の札(記事執筆時点ですでに200万ドル[2億1800万円]となっている)は誰の目にも留まるよう表示される。

6月12日に最終のライブオンラインオークションが開催され、登録した最終参加者の中から喜んで高額を提示する人が参加する。そして落札者が7月20日に予定されている初フライトの座席を手に入れる。このフライトには、Blue Originによって選ばれ、今後名前が明らかになる他の乗客も含まれる。

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の会社であるBlue Originは長い間、この瞬間に向けて取り組んできた。しかしこの入札で得る座席代金は商業宇宙フライトを今後展開する同社の懐に入るわけではない。子どものSTEM教育促進に取り組んでいる非営利組織Club for the Futureに寄付する。

7月20日のフライトはBlue Originの初の有人宇宙フライトで、少なくとも1座席を一般人に提供するという事実は軌道周回しない再利用可能なNew Shepard打ち上げシステムの信頼性に極めて自信を持っていることを意味する。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue OriginNew Shepard民間宇宙飛行オークション有人宇宙飛行

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブルーオリジンが弾道飛行ロケットでの商業フライトチケットを5月5日に発売

直近のミッションで宇宙飛行士を乗せてリハーサルを行ったBlue Origin(ブルーオリジン)は、有料顧客を乗せての弾道飛行ロケットNew Shepard(ニューシェパード)打ち上げにかなり近づいているようだ。同社は米国時間4月29日、初の商用飛行の搭乗チケットを5月5日に発売すると明らかにした。

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の宇宙会社の初の商用有人飛行に関しては「いつ、いくら」という疑問が依然として残っている。Blue Originは過去数年、人間が乗り込んで使用する宇宙船のテスト、開発、フライト認証に取り組んできた。そして前述のリハーサルのような直近のミッションでは本質的に最後の仕上げにフォーカスし、2021年初めに行ったフライトでは客室の快適性や、通信・コントロール機能のテストにフォーカスした。

TechCrunchはBlue OriginのCEOであるBob Smith(ボブ・スミス)氏にこれまでに幾度となくフライトの価格について尋ねたが、スミス氏は「数十万」ドル(数千万円)のレンジになるだろう、とだけ述べて具体的な回答を断っていた。乗客が完全無重力の環境で数分過ごすことができる、再利用可能なNew Shepardカプセルによる宇宙への旅行が含まれることを考えると、そのチケット価格は驚くものではない。カプセルには宇宙からの地球の眺めを取り込めるだけの十分な数の窓もある。

Blue Originは最初の乗客のチケットを売り出す来週に何を発表するか、差し当たってはさほど情報を共有していないが、さらに詳細が明らかになると述べた。乞うご期待。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Origin民間宇宙飛行有人宇宙飛行New Shepard

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブルーオリジンがNew Shepardの打ち上げと着陸を実施、有人飛行のための重要な準備飛行

Blue Origin(ブルーオリジン)が2021年2回目となるNew Shepardロケットの打ち上げを実施した。今回のミッションでは、再使用可能な宇宙船がサブオービタルの宇宙空間まで飛行し、その後テキサス州西部にあるブルーオリジンの発射施設にパラシュートで着陸する様子が確認できた。

このフライトは通常のミッションとは少し異なり、ブルーオリジンが最終的には有償で提供する商業宇宙旅行の顧客の代わりとなる宇宙飛行士によるリハーサルの要素が含まれていた。つまり、彼らは飛行準備を行い、パッドへの移動やNew Shepardに乗り込んで着席するなど、あたかも自分が飛行に参加しているかのような体験をした。

実際の商業飛行との決定的な違いは、ブルーオリジンがカウントダウンを一時停止し、模擬クルーが下船した後にカウントダウンが再開され、予定どおりの打ち上げが行われたことだ。同社のテスト用ダミーである「Mannequin Skywalker(マネキン・スカイウォーカー)」はこの準備ミッションで飛行し、打ち上げと帰還時に重要な測定を行った。

ニューシェパードは問題なく帰還・着陸し、これまでで最もスムーズな着陸を披露した。これは、このブースターの2回目の打ち上げと着陸だった。カプセルも計画どおりに着陸し、宇宙船のパラシュート降下システムによって軟着陸を達成した。

画像クレジット:Blue Origin

ブルーオリジンは次に、実際の有人ミッションの最終段階を再現する予行演習を行い、リハーサルを行った宇宙飛行士をカプセルに戻して、商業飛行中に発生する宇宙飛行士の回収と出発のプロセスを完全にリハーサルすることになる。

今回のミッションはすべて、ブルーオリジンが2021年中に有人ミッションを達成したいと考えていることを示している。これは、民間宇宙飛行士が宇宙に行くための新たな手段であり、スペースXのDragon宇宙船の飛行や、願わくば近い将来に実現するかもしれないVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)による打ち上げなどの選択肢が増えている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue OriginNew Shepardロケット有人宇宙飛行民間宇宙飛行

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ブルーオリジンが4月14日の打ち上げで「宇宙飛行士リハーサル」を実施、有人宇宙飛行にまた一歩前進

Blue Originは、有人宇宙飛行の実現に向けて一歩前進している。米国時間4月14日に予定している打ち上げでは「宇宙飛行士リハーサル」を行う計画だ。Blue Originの再利用可能な準軌道ロケット「New Shepard」の打ち上げは、同社宇宙船に有料の旅客を乗せて飛ばせることを検証するための重要なステップとなる。

そのリハーサルは、何をするのか?それは、実際の大気圏外飛行を除く宇宙旅行のすべてで、まず乗船、そして飛行前の各種操作、着地したらカプセルへ戻る、そして、ポストミッションの操作となるカプセルから出るための段階的な操作だ。これらはBlue Originの打ち上げと並行して行われる操作で、本番では民間人の宇宙飛行士数名が乗る。ただし今回のリハーサルでは、実際のエンジン点火と打ち上げの前にそれら顧客の役を演じる職員がカプセルを出て、カプセル着地地点へ移送される。着陸地点でカプセルに戻されてからはずっと乗っていたかのように振る舞う。

しかし打ち上げ時にカプセルから出ずに、実際に打ち上げられる乗客が1名いる。それは「Mannequin Skywalker」と呼ばれるマネキン人形で、打ち上げが人間にとってどうであるかをテストし計測するためのダミーだ。このマネキンは以前にも飛んだことがあるが、地上部分のリハーサル操作をするクルーと一緒に、有人宇宙飛行のような役を演じるのはこれが初めてだ。

Blue Originは最初のNew Shepardロケットを2021年の1月にローンチし、そのミッションには、音響特性と温度管理システムの改良や、新しいディスプレイと実際には乗組員が使用する通信機器のテストといったカプセルの乗組員用機能改善テストも行われた。最近公表されたタイムラインによると、ロケットの有人飛行開始は2021年のいつかで、となっている。

今週の打ち上げは、予定時刻は米国中部標準時(夏時間)4月14日午前8時(日本標準時4月14日午後10時)で、場所はテキサス州西部にある同社の発射場だ。打ち上げ時刻の1時間前からライブ中継を開始する予定で、宇宙飛行士のリハーサル風景などの映像も予定している。Blue Originの観光打ち上げがどのようなものになるかを知ることができるだろう。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SpaceXが「最も宇宙にいると感じられる」展望ドームをDragon宇宙船の先端に設置すると発表

SpaceX(スペースエックス)は、現在9月15日に計画されている歴史的な民間人のみの宇宙飛行に向けて、宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」に変更を加える予定だ。この宇宙船は、国際宇宙ステーションのドッキング機構が透明なドームに置き換えられ、乗員は軌道上から宇宙と地球の壮大なパノラマを眺めることができるようになる。

このガラスドームは、Dragonカプセルの「鼻」の部分、つまり打ち上げ準備中のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットの先端に、このカプセルを直立状態で搭載した時の最上部にあたる部分に設置される。一度に1人の乗員が利用できるスペースが設けられ、宇宙船が安全に地球の大気圏外に出ると保護カバーが開く。帰還時に大気圏に再突入する際には再びカバーが閉じて、展望デッキを保護する。

SpaceXの Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この新装備のレンダリング画像をTwitter(ツイッター)に投稿し「最も『宇宙にいる』ことを感じられるだろう」とツイートした。億万長者のJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏が率いる、この「Inspiration4(インスピレーションフォー)」と名づけられた宇宙観光飛行の記者説明会では、国際宇宙ステーションのキューポラから脱出したような景色が楽しめると説明された。

国際宇宙ステーションのキューポラは、欧州宇宙機関(ESA)が製作し、2010年に設置された観測モジュールだ。SpaceXの予想画像によると、ISSのキューポラが支持構造によって区切られた複数のパネルで構成されているのに対し、Dragonのドームは切れ目のない透明な半球状になっているので、Dragonの方が見晴らしが良いということになりそうだ。

国際宇宙ステーションのキューポラ(画像クレジット:NASA)

この改造は、SpaceXが計画している商業宇宙旅行ミッションに適した、より恒久的なDragonの後継機につながる可能性がある。商業旅行ミッションでは、ほとんどの場合、ISSに実際にドッキングすることなく、軌道上を移動することを目的としていると思われるからだ。軌道上の科学ステーションへのクルー輸送が目的でない場合、SpaceXはさらにキャビンに改良を施す可能性もある。

SpaceXは米国時間3月30日、Inspiration4ミッションについて、打ち上げ予定日が9月15日であること、ミッションの飛行期間が3日間であることなど、新たな詳細を明らかにした。また、4名のクルーのうち、残りの2名の搭乗者も同日朝に公表された。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

初の完全民間有人宇宙飛行の1座席はSalesforceマーク・ベニオフ氏らの審査委員会が決める

SpaceX(スペース・エックス)による初の完全民間有人宇宙飛行ミッションは、計画どおりに進めば2021年中にCrew Dragon(クルー・ドラゴン)カプセルを使って4人のクルーを軌道へと運ぶ。クルーの1人は審査委員会によって応募した起業家の中から選ばれる。委員会のメンバーは、Salesforce(セールスフォース)CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、Fast Company(ファスト・カンパニー)編集長Stephanie Mehta(ステファニー・メータ)氏、ユーチューバーのMark Rober(マーク・ローバー)氏、およびBar Rescue TVのホストJon Taffer(ジョン・タッファー)氏だ。多岐にわたる人々だが、この狂乱ぶりには理由がある。

この席は乗船する4人のうちの1人分だ。1つ目はコンテストとミッションのスポンサーであり、Shift4 Payments(シフト4ペイメンツ)のファウンダーで、このフライトを支援するためにわずかとはいえない金額を費やすことを選んだJared Isaacman(ジャレド・アイザックマン)氏に渡る。2つ目は、先にアイザックマン氏が明かした通り、 セントジュード小児研究病院の従業員で元がん患者のHayley Arceneaux(ヘイリー・アルセノー)氏に決まった。

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残る2つの席は、それぞれ別のコンテストによって決定される。1つは現在進行中の慈善募金活動を通じてセントジュード小児研究病院に寄付した米国市民全員に与えられる。もう1つは、審査委員会によって決定され、勝者はShift4のeコマースプラットフォームShift4Shop(シフト4ショップ)に店を持っている応募者の中から選ばれる。

そのとおり。このとてつもなく高額で開拓精神あふれる宇宙ミッションは、アイザックマン氏率いるShopifyライバルのグロースマーケティングキャンペーンでもあるのだ。ただし公正を期すために言っておくと、当選者の店は新しくなくてもよい。既存のShift4ユーザーも応募可能で当選の権利がある。

勝者を決める条件として発表されているのは「創造力と革新性と決断力を有する事業主または起業家」つまり、まあ誰でもよい。私はベニオフ氏、メータ氏、ローバー氏(ユーチューバーであるとともに元NASA JPLのエンジニア)、タッファー氏の面々が、果たして誰を選ぶのか非常に関心がある。

このInspiration4(インスピレーション・フォー)ミッションは現在2021年第4四半期の打ち上げを予定している

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

骨肉腫サバイバーの女性がSpaceXの初の完全民間有人宇宙旅行のクルーに

SpaceX(スペースエックス)は今や人々を宇宙に運ぶ事業を展開している。計画どおりにいけば、乗り込む全員が民間宇宙旅行客という初の宇宙旅行を2021年後半に初めて実施する。そして今、億万長者でShift4Paymentsの創業者Jared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏の旅に加わる人物が明らかになった。St. Jude Children’s Research Hospital(セントジュード小児研究病院)の従業員で元患者のHayley Arceneaux(ヘイリー・アルセノー)氏だ。

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同氏はSpaceXのDragonに搭乗する4人のメンバーの1人としてアイザックマン氏によってすでに選ばれていた。打ち上げられれば、このミッションには詳細不明の軌道上を回りながら数日間過ごすフライトが含まれる。アイザックマン氏は2021年初めに宇宙旅行を発表した記者会見で、セントジュード小児研究病院から誰を選んだのか「すでに知っている」としていたが、披露するのは後に取っておくと話していた。

同氏は、自身が命名したフライト「Inspiration4」の数カ月におよぶキャンペーンを展開している。宇宙旅行の残る2席は現在進行中の2つのコンペティションで選ばれた人物に提供される。1人は打ち上げにともなう募金キャンペーンでセントジュード小児研究病院に募金した人の中から選ばれる。残りの1人はShift4が新たに立ち上げたeコマースプラットフォームでオンラインストアを開く起業家から選ばれる。

AP通信が報じたように、アルセノー氏は骨肉腫サバイバーで、医師助手として2020年にセントジュード小児研究病院へと加わった。予定されているフライトで宇宙に行くとなれば、同氏は数多くの「初」記録を打ち立てることになる。その1つが、わずか29歳で宇宙にいく最年少の米国人というものだ。また同氏は10歳のときにセントジュード小児研究病院で骨肉腫の治療を受け、人工膝と大腿骨にロッドを装着していて、人工装具をつけて宇宙に行くというのも初だ。

打ち上げにかかる費用はすべてアイザックマン氏がSpaceXに支払う。このミッションにともなうセントジュード小児研究病院から選ばれた人の納税義務もカバーする。同氏はまた、他のクルーを選ぶために使われる募金活動で集まった費用に加えて、自身の基金からセントジュード小児研究病院に1億ドル(約105億円)を寄付することも約束している。

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タグ:SpaceXFalcon 9Crew Dragon民間宇宙旅行

画像クレジット:Inspiration4

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

民間商業宇宙ステーションの実現を目指すAxiom Spaceが約138億円を調達

近い将来の目標を最も高く掲げている新しい宇宙スタートアップ企業の1つが、その野望に向けた自信をシリーズBラウンドで投資家に示し、1億3000万ドル(約138億円)を調達した。

NASAが民間開発の宇宙ステーションモジュールを国際宇宙ステーションに取りつけるために選んだAxiom Space(アクシオン・スペース)は、C5 Capital(C5キャピタル)が主導した新たな資金調達について発表した。

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションで専門的な仕事に携わった実績を持つ宇宙の専門家を含むチームによって2016年に設立された。以来、大きな注目を集める発表を次々と行っている。今回の資金調達はその最新のものだ。同社は、既存の宇宙ステーションに初の民間による商業モジュールを取りつけることで、将来的には完全に民間所有の軌道上プラットフォームを独自に作り上げ、研究や宇宙旅行などに活用することを目指している。

Axiomは2021年1月、2022年1月にSpaceX(スペースX)のDragon宇宙船とFalcon 9ロケットを使って国際宇宙ステーション(ISS)に飛び立つことが予定されている人類初の民間宇宙飛行士について発表した

Axiomはこのミッションのサービスプロバイダーであり、民間宇宙飛行士の契約を仲介し、訓練とミッションのプロファイルを設定する。民間の個人で構成されたクルー(つまり、各国の政府によって選ばれ、訓練を受け、雇用された宇宙飛行士ではない)が宇宙ステーションに飛び立つのは、これが人類史上初めてのことになる。

同社はまた、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏と、ISSに乗り込む映画の一部を宇宙で撮影することについて話し合っている。さらに、宇宙ステーションへの旅を掛けて競い合うリアリティ番組も制作会社と企画中だ。

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Axiomは、民間の有人宇宙飛行と既存のインフラストラクチャや産業を結ぶ主要企業として注目を浴びており、NASAのような公共機関のパートナーと、急成長しつつある民間宇宙産業の「レール」、つまりSpaceXや同種の企業の両方をカバーしている。同社は他の民間企業のどこよりも長い間、この独自のチャンスに力を入れてきた。それを実現するために必要なすべての関係と社内の専門家を備えている。

今回の新たな多額の資本注入は、同社の雇用を支援するだけでなく、今後の民間宇宙ステーションモジュールや、最終的には宇宙ステーションそのものを建造する力を高めることにもつながる。ヒューストンを拠点とする同社は、2024年までにその宇宙ステーションモジュールをISSに接続することを目指しており、これまでに1億5000万ドル(約159億円)を調達している。

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画像クレジット:Axiom Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXが初の完全民間有人宇宙飛行を2021年中に実施、Shift4 Paymentsのジャレド・アイザックマン氏ら4人が乗船

SpaceX(スペースX)は、初の完全民間有人宇宙飛行ミッションの計画を発表した。高価な銀河系旅行の打ち上げは、2021年第4四半期の実施を予定している。このミッションには、SpaceXの宇宙船Crew Dragonと打ち上げロケットFalcon 9が使用され、決済プラットフォームShift4 Payments(シフトフォー・ペイメンツ)のCEOであるJared Isaacman(ジャレド・アイザックマン)氏が選ばれた3名のメンバーとともに乗船し、アイザックマン氏と彼の会社およびSt. Jude Children’s Research Hospital(セントジュード小児研究病院)がスポンサーを務める。これも製品の採用を推進する方法の1つだ。

ミッションはInspiration4と呼ばれ、すでにデジタルの世界では大きく注目されており、カウントダウンタイマー付きのウェブサイトもある。4人乗りの座席のうち2つはセントジュード病院に贈られ、その1つは小児病院の前線で働くヘルスケアワーカー(すでに決まっているが、アイザックマン氏が彼女は多様な選択肢の1人であると言った以上は明かされていない)に、もう1つはセントジュードに寄付した人たちによるオンラインコンテストの参加者から選ばれる。最後の1席はShift4のeコマース向けオンラインプラットフォームでビジネスを構築した起業家に渡る。

アイザックマン氏はセントジュード病院に1億ドル(約105億円)を寄付することをInspiration4キャンペーンの一環として約束しているほか、キャンペーンを通じた寄付でさらに1億ドルを集める見込みだ。アイザックマン氏は16歳の時にShift4 Paymentsを開業し、現在、年間2000億ドル(約20兆9800億円)以上の取引が行われているが、同氏は他に民間空軍を創設、指揮していたこともあり、後に大手国際民間軍事企業のBlackstoneに売却した。アイザックマン氏の会社は米国空軍のためにパイロットの訓練を行い、彼自身も商用および軍用飛行機の訓練済みパイロットとして認定されている。

Shift4 Paymnentの創業者でCEOのジャレド・アイザックマン氏。SpaceX初の完全民間有人飛行の最初のメンバーに選ばれた(画像クレジット:SpaceX)

アイザックマン氏は、宇宙船Dragonの指揮官を務める。宇宙船は完全自動で飛行するが、緊急時にはある程度の専門知識を持つ者が船内にいる必要があるので、理に適った選択だ。アイザックマン氏のパイロットとしての経歴と大富豪であることを考え合わせると、この役割の有力候補である。

ミッションの性質上、事前の民間宇宙飛行士訓練があり、軌道メカニズムや無重力操作などの指導も受ける。フロリダ州のケネディ宇宙センターから飛び立ち、地球軌道を複数(約90分間に1回)周回し、宇宙船は複数日間、宇宙に留まる。SpaceX創業者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、最終的にはジャレド(・アイザックマン)の判断になるが、会社は2~4日間を想定していると語った。その後、地球の大気圏に突入し大西洋に着水してSpaceXクルーに回収される。当ミッションではこのフライトのために現在国際宇宙ステーションにドッキングしているSpaceXのDragonカプセルを使用するつもりで、打ち上げに関するNASAの承認と協力を取り付けてある、とマスク氏は語った。

以前SpaceXは、宇宙船DragonがNASAから有人飛行の認定を受けたあかつきには、民間ミッションを実施したいという意向を明らかにしていた。今私たちは最初の専用民間ミッションの打ち上げが迫っていることを知ったわけだが、それはVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)の準軌道宇宙循環機による日帰りツアーをはじめとする他の民間宇宙旅行計画を追い抜くかもしれないということでもある。

フライトはどの軌道を目指すのかを尋ねられたマスク氏は、「強調したいのは、どこへ行きたいかを決めるのは、本人次第だということだ。私たちはそこへ連れていく」とはぐらかし、アイザックマン氏が近日中に決定して発表するとつけ加えた。別の質問で、乗組員はどんな装備を持ち込めるのかと尋ねられると、マスク氏は再び船長に委ね「過ごす時間に安らぎをあたえるものがあれば、ちょっとすてきですね」とアイザックマン氏は語った。

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画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブルーオリジンが2021年初ミッションで乗員カプセルの打ち上げと着陸に成功

民間宇宙航空企業のBlue Origin(ブルーオリジン)は、2021年の最初のミッションを開始し、西テキサスで「New Shepard(ニューシェパード)」ロケットを35万フィート(約106km)強の中高度まで打ち上げた。今回使用したブースターはこれが初飛行であり、ロケットに搭載されたカプセルに装備されている新しい乗員の安全性や制御、そして快適性のための各システムも、初めて飛行中にテストされた。また、「Mannequin Skywalker(マネキン・スカイウォーカー)」と呼ばれる実際の人間と同サイズのテスト用ダミーも搭乗しており、飛行中と着陸中の情報を記録していた。

ストリーミング動画と同社からのコメントによると、今回のテストは、打ち上げからブースター分離、着陸燃焼の制御、着陸、そして乗員カプセルがパラシュートを使って地球の大地に帰還するまで、すべて上手くいったようだ。このミッションでは実際に人間が搭乗していたわけではないが、代わりに世界中の子供たちから寄せられた5万枚の絵葉書が積まれていた。公式に(カーマン・ラインを超えて)宇宙に行ったこれらの絵葉書は、ブルーオリジンの非営利団体「Club for the Future(未来のためのクラブ)」を通じて子供たちに返却される。

今回のミッションは、実際にブルーオリジンが民間人を乗せた準軌道宇宙飛行の商用化を開始した際にどうなるかを示すためのものであり、それがいつ実現するかというタイムラインはまだ決まっていない。今回の打ち上げでは、乗員に重要なミッション中の情報を伝える警報システムや、無重力空間を飛行中に乗員を保護する新しい壁の内張、乗船中の快適性を高める騒音や振動の減衰などがテストされた。また、このカプセルには、飛行中にカプセル内の空気を乗員にとって安全に保つための、二酸化炭素吸収装置も搭載されていた。

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画像クレジット:Blue Origin

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(翻訳:TechCrunch Japan)

民間による商用有人宇宙活動は思いのほか早く実現する

「宇宙で働く」という話を聞いたとき、SFの話をしているのだと感じたとしても無理はない。だが、地球の大気圏外で実際に働く人の数は、また人生の多くの時間を宇宙で過ごす人の数も、加速度的な割合で増え始めている。今はまだ人数がとても少ないので増加速度はゆっくりに感じられるが、間もなく目に見えてくるはずだ。人数を急速に増やすための計画も準備が整っている。

近々、これを中心的に牽引することになる企業は、宇宙ステーションでの民間向けサービスを提供し、ゆくゆくはステーションの運営も行おうというAxiom Space(アクシオム・スペース)だ。Axiomは、国際宇宙ステーション(ISS)での経験や専門知識を持つ人たちによって設立され、経営されている。同社はすでに、民間クライアントのためにISS上でNASAの宇宙飛行士の手を借りた研究開発ミッションを実施している。2021年からは、民間宇宙飛行士のISSへの送り迎え全般を取り仕切る計画を立てており、新しい商用宇宙ステーションの建造計画もある。これは、いずれISSが引退した後に、その役割を引き継ぐことになっている。

Axiomの最高ビジネス責任者Amir Blachman(アミア・ブラックマン)氏は、先週開催されたTC Sessions:Spaceのパネルディスカッションに登壇した。このディスカッションには、他にもNASAの探査およびミッション計画責任者のNujoud Merancy(ニュジャウド・メランシー)氏、Sierra Nevada Corporation(シエラネバダ・コーポレーション)上級副社長であり元宇宙飛行士のJanet Kavandi(ジャネット・カバンディ)氏、Space Exploration Architecture(スペース・エクスプロレーション・アーキテクチャー、SEArch+)共同創設者Melodie Yashar(メロディー・ヤシャー)氏も登場した。ここでは、公共と民間の団体が、地球の外で、または遠く離れて、過ごす時間が長くなる(比較的近い)将来の準備がどれだけ進んでいるかが集中的に議論された。

「今です。もう数年前から今です」とブラックマン氏は、実際に宇宙で暮らす人の数がNASAの宇宙飛行士を超えるのはいつかという質問に答えた。「Axiomは、独自のミッションでISSにクルーを送り込みます。同時に新しい商用宇宙ステーションを建造し、ISSが引退した後にその役割を引き継ぐ予定です。私たちの最初の有人ミッションは、今から12カ月後に予定している4人の宇宙飛行士の打ち上げです。この4人はすでに身体検査を行い、宇宙服の採寸を済ませています。またすでに、打ち上げを行う企業との医療とトレーニングのチームを統合を行いました。この4人は2021年に、別のクルーを2022年に、2023年に2人、2024年には4人を打ち上げ、その後は数を増やしていきます」。

バックマン氏とメランシー氏は、Axiomの将来の商用ステーションにも、NASAの将来の月面基地や月の軌道を巡り月ミッションの足場となるルナゲートウェイにも、自動化とロボットシステムが重要になると話していた。

「ISSは、人が常駐することを基本としています」とメランシー氏。「無人ステーションになることは想定していません。地上の管制官たちが実際にたくさんのオペレーションを行っていますが、ステーションの維持管理は人間が行う仕組みになっています。月の構造物やゲートウェイを計画する際には、そのような贅沢はいえません。ゲートウェイは、人がいるときだけ稼働します。月面基地に人が滞在するのも、次第に長くなりますが、最初は1週間程度です。しかしながら、人がいない間も、有用な科学調査や有用な探索が行える状態を維持しておかなければなりません。そこで、テレロボティクスや地上からのコマンドによる維持管理能力を持たせ、クルーが到着したときに、ハッチを開けて中に入ればすぐに仕事にかかれる環境になっているというのが理想です」。

「火星での、またそれ以前に月面での、そうした住居や重要インフラの建設においては、できる限り自立的に行うべきであり、またそのように考えで進めるべきだという想定の下で、私たちは作業を進めてきました」とヤシャー氏は続けた。「そのため私たちは基本的に、人を送り込む前の予備的ミッションの段階から、建設、材料、採掘、原料加工に至るほぼすべてのシステムと、私たちが目指している他のすべてのシステムが、多かれ少なかれ、できる限り自律的に行われることを期待してデザインしています」。

カバンディ氏も、現代の有人宇宙システムには大幅な自動化を導入すべきという点で、他のパネリストの考えに共鳴していた。それによって複雑性が増さないかとの私の質問に、彼女はむしろ反対の結果をもたらすと答えた。皮肉なようだが、宇宙の有人活動への道を拓くには、人の手をできるだけ減らすことが重要になるということだ。宇宙のインフラの運用と管理においてはなおさらだ。

「技術の進歩は、物事をより単純化する場合もあります」とカバンディ氏。「長年かけて私たちが能力を高めてきた過程で、たとえばコンピューターは、どんどん難しくなるのではなく、より簡単に使えるようになりました。目標は、クルーの拘束時間やクルーの維持管理の手間を削減して、どのようなミッションにおいても、研究やその他宇宙で本来行うべき仕事に専念できるようにすることです。インターフェイスを単純化するほど、自動化率は高まります。クルーは何か問題が起きたときだけ介入すればよくなります。しかし通常は物事が滞りなく進行し、クルーは何もしないで済むというのが理想のかたちです。そうなれば、本来宇宙で行うべき仕事に集中できる自由な時間が増えるのです」。

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(翻訳:金井哲夫)