イノベーションのサプライチェーン:アイデアは大陸を横断し経済を変革させる

[著者:Alex Lazarow]
公共、民間、社会分野の投資とイノベーションと経済発展の交差点で活動している。Cathay Innovationのベンチャー投資家であり、ミドルベリー国際大学院MBAプログラムの非常勤教授を務める。

西欧では、微積分を発明したのはアイザック・ニュートンとゴットフリート・ライプニッツなどの17世紀の天才学者だとする考えが一般的だが、理論的な基礎はその数千年前に遡る。基礎的定理は、紀元前1820年の古代エジプトで登場し、その後、その影響がバビロニア、古代ギリシャ、中国、中東の文献に見られるようになる。

世界最大級のアイデアとは、こうした性質を持つ。つまり、世界の片隅で生まれたコンセプトが、未来の発展の足場となるのだ。そのアイデアの本当の価値がわかるまでには時間がかかる。また、さまざまな文化や視点からのインプットも必要になる。

技術革新も例外ではない。

今日のテクノロジー界では、それを次の3つの基本方針にまとめることができる。

  • アイデアはグローバルになったときに改善される。
  • よいアイデアは次第に国際的になる。
  • グローバルに試すことが差別化戦略となる。

グローバルに拡大されたときにアイデアは磨かれる

微積分と同じく技術革新も国際的な切磋琢磨によって磨かれる

たとえばライドシェアは、サンフランシスコのUberとLyftによって先導された発明としてスタートしたが、これらのスタートアップは、すぐさまそのビジネスモデルをグローバルに展開した。そしてそれは、地方のニーズに応える形で進化した。今やインドネシアで独占的な地位を誇るライドシェアアプリ「Go-Jek」の場合を見てみよう。Go-JekはUberとLyftのビジネスモデルをそのままコピーしたのだが、そのコンセプトをジャカルタに昔からある未認可のバイクタクシー「オジェック」に適用させる高度なローカライズを行った。

Go-Jekは、オジェックのドライバーには人を運ぶだけでなく、それ以上の可能性があることに気がついた。同社はドライバーの1日の稼働率を最大限に高めるために、人の移動だけでなく、食事の出前、荷物、サービスの配送もできるマルチサービス・アプリを立ち上げた。Go-JekのCEO、Nadiem Makarimはこう話している。「朝は人を家から職場に送り、昼時にはオフィスに食事を配達し、夕方には人を家に送り、夜には食材や料理を配達します。その合間には、電子商取引や金融商品や、その他のサービスを行っています」

ひとつのライドシェア・プラットフォームで幅広いサービスを提供するというモデルは、明らかにシリコンバレーのオリジナルとは異なる。シリコンバレーでは、「Uber for X」(訳注:人以外のものを運ぶUberのようなサービスの総称)を提供する企業が次々と現れているが、UberEatsのようなUberの最新カテゴリーは、東南アジアのモデルに近い。

シリコンバレーは
イノベーションのアイデアと
製造と流通を独占してきた
しかし
その時代は終わった

さらに言えば、Go-Jekのビジョンは、他の地域のアイデアも採り入れている。中国だ。中国では、TencentのWeChatのようなプラットフォームが、相乗りサービス、買い物、食事の出前、そしてもちろん決済など、自社またはサードパーティーのさまざまなサービスを提供している。WeChatの決済機能(Antに相当する)は、中国の主要都市なら、ほぼどこでも使える。

Go-Jekは、競合相手のGrabと同様に、アプリの一部として決済プラットフォームを組み入れることで、そのモデルを進化させた。Uberが金融サービスに参入したときは驚いた。最近開始したUberクレジットカードがそのひとつだ。

これらのモデルは、他の地域の教訓を学び、採り入れて進化してゆく。

種は次第にグローバルになる

歴史的に、シリコンバレー以外の起業家は物真似だと批判されてきた。サンフランシスコやパロアルトで成功したモデルをコピーして流用しているだけだと。

時代は変わっている。

影響力の強い技術革新は、その多くがシリコンバレーの外で生まれている。アメリカ産ですらない。2018年でもっとも成功した新規公開株の一部を見ただけでも、スウェーデンのSpotify、ブラジルのStone、Cathay Innovationの投資先企業である中国のPinDuoDuoなどとなっている。

起業家は、世界各地のイノベーションを真似ることに務めている。モバイル決済を例にとれば、ケニアのM-Pesaがある。今やケニアのGDPの50パーセントに及ぶ決済額を誇る、ケニア中で使える決済プラットフォームだが、これがグローバルに展開された。現在、世界の275以上の国々に普及している。

何かに特化した地域がある。トロントとモントリオールは人工知能のハブとして成長している。ロンドンとシンガポールはフィンテックのハブとして健在だ。イスラエルは、サイバーセキュリティーと分析技術で知られている。また、地域に根ざす活動が、触媒となってそれをさらに発展させている。たとえば、Rise of the Restは、アメリカの起業家を支援している。Endeavorなどの団体は、世界の起業家のハブの発展に尽力している。

黎明期のイノベーションのサプライチェーンでは、新しいアイデアの発生は、次第にグローバル化されてゆく。

エコシステムが理想的な実験場となる

ブロードウェイは、小さな劇場でショーの人気を試し、それから大きな劇場にかけるという方式で知られている。同じようにイノベーターも、新しく生まれた市場でモデルをテストし、やがてスケールアップしてゆく。

地震の早期警戒システム「SkyAlert」は、その好例だ。地震の揺れ自体で亡くなる人は少ない。倒壊した建物に閉じ込められたり押しつぶされたりする事故が、死因の大半を占めている。理論的に地震は、震源地付近で最初に発生した揺れが外に伝搬する段階を捕らえて、早期警報を出すことが可能だ。SkyAlertは、分散された地震センサーのネットワークを使って、建物から外に避難するよう警報を出す。また、企業と協力することで、安全確保のための手順(ガスの遮断など)を自動化することもできる。

SkyAlertは、サンフランシスコ生まれではない。創設者のAlejandro Cantuは、彼がイノベーションの研究所と呼ぶメキシコシティーで起業した。初期バージョンは、商品化よりもむしろ研究開発を目的としたものだ。メキシコシティーで開発することで、製品のイノベーションのコストがずっと抑えられる。人件費は安いし、企業買収も安い。現在のメインターゲットはアメリカだが、メキシコは事業の初期段階の本拠地であり、実験場となっている。

イノベーターのコミュニティーとして
私たちはそうした流れを
活用する好機に恵まれている

シリコンバレーの技術者が、Amazonの家庭向けドローン配送の話を聞き慣れているが、それと同じように、遠くの新興市場で面白いドローン関連のイノベーションが起きていることは、あまり知られていない。インフラが未整備な開発途上国では、ドローンが人々の命を支える可能性を持っている。Ziplineなどのスタートアップは、インフラが破壊されたり、まったく整備されていない地域で、ドローンを使って一足飛びに問題を解決しようとしている。彼らはルワンダにおいて、保健省と協力しながら、日持ちのしない薬剤や血液を配送している。すでに、彼らのドローンは60万キロメートルをカバーし、1万4000ユニットの血液を運んでいる(これは緊急時の必要量の3分の1に相当する)。

起業家たちは、こうしたイノベーションを、より低コストで、需要が逼迫している市場でテストを行っている。やがて、これらのモデルはスケールを拡大して、先進国に戻ってくる。こうして、イノベーションのサプライチェーンは進化する。

この先にあるもの

Economist誌は、「Techodus」(テクオダス)を予測している。シリコンバレーからのイノベーションの大移動が続くということだ。この話には、深い意味がある。

シリコンバレーは、イノベーションのアイデアと製造と流通を独占してきた。しかし、その時代は終わった。クリエイティブは火花は世界各地で発生し、イノベーターたちは低コストで需要が逼迫した市場でアイデアを試す。そうして、そのモデルは、世界中の体験によって磨かれ完成される。

イノベーターのコミュニティーとして、私たちは、そうした流れを活用する好機に恵まれている。根底から変革に対応できる新製品のアイデアを持っているかだろうか? よろしい。それをグローバルに行える人が他にいるか? 新しいアイデアを試してみたいか? それぞれの土地での利点と欠点は何か? 海外でのイノベーションの体験を、その土地に合わせて導入するにはどうしたらよいか?

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(翻訳:金井哲夫)

オーストラリアの顧客に対する門前払いをAmazonが撤回、税制への抗議よりも年末商戦が重要

Amazonは、同社が6か月前に行った、オーストラリアのユーザーにアメリカのamazon.comサイトで買い物させないという決定を、覆(くつがえ)した。ロイターはこのUターンを、顧客の反発によるもの、と報じている。

7月以降オーストラリアの買い物客は、amazon.comで買い物をしようとすると地元のサイトAmazon.com.auへリダイレクトされた。

同じ時期に、amazon.comからオーストラリアへの配送も停止された。そこで買い物客は、地元の店からしか商品を買えなくなった。

でも今日(米国時間11/22)から、そのブロックはない。

amazon.comの、特定地域に対するこのブロックは、オーストラリアの税制の変更への対抗策だ。その新しい税制では、年商75000オーストラリアドルを超える企業は消費者が輸入する低価格商品に対し10%の商品サービス税(Goods and Services Tax, GST)が課せられる。

このいわゆる‘Amazon税’は、すべての販売品目に対しGSTを払わなくてはならない地元の小売企業にとってAmazonなど海外の大きなeコマース企業が大打撃になる、という懸念に対応したものだ。

この新税制の前までは、海外のリテイラーに関しては1000オーストラリアドル〔11月下旬現在約82000円〕以上の買い物に対してのみGSTが課せられていたので、地元商業者は、それはAmazonやeBayなど海外のコンペティターに対する不当な優遇策だ、主張していた。

GSTの一般化という新税制に対してAmazonは、amazon.comの海外買い物客の締め出しで応じた。でも2017年12月にローンチされたばかりのAmazonオーストラリアのサイトは、品揃えが希薄なので顧客から敬遠された。そのことは、地元企業にとっても打撃になった。顧客はほかのリテールサイトを探すようになり、あるいは、わずかしか買い物をしなくなった。

Guardianによると、Amazonオーストラリアの品目数約8000万に対して、アメリカのサイトには5億種類の品目がある。

6か月後にAmazonは方針を変えた。10%の税金を払うことに決めたようだ。

本誌は今、同社にコメントを求めている。

Amazonのスポークスパーソンはロイターに、顧客からのフィードバックに対応して方針を変えた、と述べている。そして、同社は“低価格商品をオーストラリアに輸出できてなおかつ、地元の法律にも従えるだけの、複雑なインフラストラクチャ”を構築した、とも言っている。

今のところオーストラリアの人がamazon.comから買えるのはAmazon自身が売っている品目だけで、サードパーティの販売者は未対応だ。

このUターンのタイミングに注目しよう。明日(米国時間11/23)はブラックフライデーなのだ。

その日リテイラーたちは、その年のホリデーシーズンの買い物フィーバーに点火するために大規模な安売りを開始する。そして今ではネット上でも、派手なバーゲンが展開される。Amazonも、この爆発的な売上の機会をみすみす見逃すわけにはいかない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

オーストラリアの人たちは7月からAmazonのアメリカのサイトで買い物できなくなる

7月からは、オーストラリアの人はAmazonのアメリカのサイトで買い物ができなくなる。今日(米国時間5/30)の同社の発表によると、オーストラリアからの買い物客は自国のサイトAmazon.com.auへリダイレクトされ、同社の国際的なサイトであるAmazon.comはオーストラリアの住所に発送をしない。この変更は7月1日に施行される新しい税制への対応で、それによると年商75000AUD(オーストラリアドル)以上の企業から消費者が少額品目を輸入すると、それに対し10%のGoods and Services Tax(商品およびサービス税, GST)がかかる。

“Amazon税”と呼ばれるこの新しい施策は、Amazonなどの大きな海外eコマース企業が、すでにすべての販売品目でGSTを払っているオーストラリアの小売企業に与える、影響への懸念により導入された。これまでは、海外小売企業から買った品目が1000ドル以上だった場合に限りGSTが適用されていたが、それに対し地元企業は、それではAmazonやeBayなど海外の競合他社にとって不公平に有利だ、と主張していた。

Amazonのオーストラリアサイトは昨年12月に開設され、今では6000万品目を扱っているという。それはAmazonのアメリカサイトの推定5億品目の足元にも及ばない。その埋め合わせとしてオーストラリアの顧客は、Amazon.comが新たに設けたGlobal Storeで400万品目にアクセスできていた。

本誌TechCrunchに宛てたメールでAmazonのスポークスパーソンは次のように述べている:

“7月1日に施行されるオーストラリアのGST法の改正により、オーストラリアの顧客のための国際的ショッピングオプションが変わる。

これによって顧客にご不便が生ずるとしたらそれは残念だが、われわれは複数の国際的サイトのあるグローバル企業として、その税制への有効な対応策を検討せざるをえない。そしてその検討に基づき、われわれはオーストラリアの顧客を弊社の国際的サイトからamazon.com.auへリダイレクトし、今日からそこで、従来Amazon USのGlobal Storeで売られていた製品をお買い上げいただくことになる。これによってわれわれは、われわれの顧客に、国際的な特選製品へのアクセスを提供し続けることができ、そしてまた、Amazonのサイトで売られ海外から発送される製品に対してはGSTが課税されるという、新しい税制へのコンプライアンスを維持できる。”

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

新興市場でのパートナーシップのチャンスを掴み取れ

【編集部注】著者のChen AmitはTipalti共同創業者兼CEOである。

シュリニヴァーサ・ラマヌジャンは1887年にインドのクンバコナムで生まれた。父親は店員で、母親は主婦だった。彼の初期の数学は明らかに非凡さを見せているが、彼は正式な数学教育を受けたことはなかった。ある時点で、彼は学校を退学になっている。彼がケンブリッジ大学に、定理を書き付けたノートを送ったことで、G.H.ハーディ教授が返信を行い、5年間の共同研究が始まった。

ラマヌジャンは学士号を取得し、最終的に王立協会のフェローとなった。彼は32歳で死亡したが、現代に至っても今だに数学者たちは彼の仕事の解読を続けている。その内容にはひも理論や宇宙の誕生の側面に関わるものもある。

ここでのポイントはこうだ:人間の可能性と天才は確かに存在しているが、その大部分は現在でも発見されないままだ。その原因は、政治的、地理的、そして経済的境界によるものである。地球上には70億人以上の人びとがいる。世界中の才能を結びつけるためのより良い方法があるはずだ。

国境を越えたパートナーシップ(世界の主要な多面的なビジネスとオンラインマーケットプレイスの多くが、既に関わっている)は、発展途上国の人びとが、世界経済に対して自分たちの価値を提供する際の障壁を下げる役割を果たしている。

国境を越えて拡大するかどうかを決定する際には、経済性とビジネスの成熟度は確かに考慮する必要があるものの、新しいチャンスも同様に考慮されるべきなのだ。マーケットにとっては、特定の国がユニークで多様な商品やサービスを提供できる可能性がある。メディア企業にとっては、地元の視点や特定の視聴者へのアクセスが得られる可能性がある。B2Bの分野では、24時間体制の、費用対効果の高い従業員たちの可能性が、魅力的に見えるかもしれない。

究極的には、グローバルなサプライヤーベースを活用することで、ビジネスの革新、サービスの差別化、競争力の強化、成長の拡大を支えることができる。これらの理由から、ビジネスリーダーたちにとっては、単純に無視するには重要過ぎるチャンスなのだ。

ということで、何が新興市場と良いパートナーシップを結ぶことを邪魔しているのだろうか?そしてそれらの問題を克服するにはどうすればよいのだろうか?

失敗に対処する武器としての効率性

新興市場に対するパートナーシップの試みには、リーンで効率的なオペレーションが必要とされる。それは何故か?理由は2つある。

リーンでない企業は効果的に拡大することができない。リーンな運営を伴わない成長は、身動きを鈍くして、ギャップと失敗の発生につながる。それはメリットの見出せない拡大であり、下手をすればコストや複雑さが増すだけのことだ。

もう一つの理由は、より感情的で、ビジネスの士気に根ざしているものだ。関係するすべての人たちの平静さを維持しながら、複数の国にまたがって仕事を進めるためには、それぞれに対応した現実的なプロセスを必要とする。コミュニケーション、関係、取引、税金、契約、詐欺、および期待に関してのルールがそれぞれ異なるからだ。国際的なパートナーとの作業に伴う夥しい違いに、スタッフたちがその場その場で正しく適応していくことを期待するのは現実的ではなく、グローバルな活動が失敗へと向かってしまう。

地球上には70億人以上の人びとがいる。世界中の才能を結びつけるためのより良い方法があるはずだ。

会社の成熟の早い段階で、こうしたルールたちを可能な限り成文化し(理想的には自動化し)て、フレームワークやプロセスという形で取り込むことで、ニューヨークのチームがフランクフルト、スリランカ、そして香港のパートナーとシームレスに連携できるようになる。そうすれば、それぞれが価値の低いタスクを場当たり的に処理することが無くなり、ストレスが軽減され、チームが重要な事柄――関係と成果――に集中することが可能となる。

効率的なプロセスはまた、遠隔パートナーと連携する際に生じる、内部リスクと規制リスクを軽減するためにも重要だ。エラー、詐欺、税リスクに晒される傾向は、国境を越えることで大きくなる。例えば、パートナーがテロリスト監視リスト(OFACなど)に載っているかどうかを意識しているだろうか?FATCAを満たすために、IRSは何を報告することを求めているだろうか?これらは偶然に任せておけば良い事柄ではなく、同様にプロセスを遅くさせるものであってはならない。これらのチェックに関わる摩擦を取り除くことで、ビジネスの全体的な実行効率が改善される。

リモートオペレーションと可視性の構造化

特定の国に対して何らかの進出をする必要があると仮定してみよう。臨時の開発チームを雇うか、ビジネスモデルにとって役に立つサプライチェーンを作るところまでは簡単だ。次に企業は決定する必要に迫られる:現地オフィスを設立するのか、それともリモートに運営するのか?

開発途上国ではさらに、現地のビジネスリソースや人材の不足、しばしば不安定な政治環境やインフラストラクチャー、そしてもちろん適切な銀行やデジタルコマースなどの不足が困難に輪をかけている。多くの場合、物理的な設置を行わずに運営できるなら、その方がより良いビジネスとなる、特に複数の地域にまたがって、規模を拡大することが望まれている場合には。

遠隔地を上手く管理するためには、海外業務の可視性を確保することが重要だ。地域毎にエンティティ構造が異なる場合に重要なことは、その情報を吸い上げて中央で管理する方法を確保することだ。例えば、子会社がある場合は、プロセスを標準化するために、それぞれに同じプラットフォームを導入しよう。確かにローカライゼーションの要素も組み込まれる筈だが、共通のアプローチを取ることで、レポートやコントロールの統一が容易になる。

最高のパートナーたちが離れていくことを防ぐ

パートナーたちがある程度離れていくことは仕方がない。運によるものもある。新興市場では、そうしたパートナーたちはしばしば複雑な状況に対処しなければならず、その状況が突然変化する可能性があるからだ。その場合は、彼らの離脱はあなたの運営のせいではない。だがそれ以外の場合は、あなたは一緒に働くことが困難なパートナーであるという評判を育んでいるということだ。

グローバルなサプライヤーベースを活用することで、ビジネスの革新、サービスの差別化、競争力の強化、成長の拡大を支援することができる。

一部のパートナーは、卓越したパフォーマーに成長し、優れたサービスや望ましい製品を確実に提供するようになる。彼らにとって、自分たちの努力に価値を感じ、あなたのビジネスで働くことに不満を感じることがない、という両方の意味で満足することが不可欠なのだ。疑う余地なく、違いを生み出すことに飢えたスーパースターたちを見出すことは可能だ。彼らは期待以上に働いてくれるだろう。それがまだ磨かれていない「あなたの数学者」の原石なのだ。

パートナーの離脱はまた、間断なく募集を続けなければならないことを意味する。パートナーネットワークの強みは数の多さにもあるので、迅速かつ積極的にそれらを増やして行く必要がある。そのことによってスーパースターたちを発見する可能性が増えるのだ。これが、Uber、Lyft、そしてAirbnbが消費者たちにとって信頼できる対象であり続ける理由だ。サプライヤーたちは常にそこにいて準備が整っている、たとえそれが国際的なものであっても。そして一部の者は離れて行くかもしれないが、より多数の新しいパートナーが参加し続けている限りは大丈夫だ。

より良いものに向けてのイノベーション

グローバルな人材を自分のサプライヤーのエコシステムに招き入れることは、最終的にはあなたのビジネスを、競合相手から差別化し、長期的にあなたの会社を成功に導くことに繋がる。そして、それがまさに世界の最も革新的なビジネスの多くが、グローバルな労働力と提携するために 大規模な取り組みを進めている理由なのだ。

そうすることで、世界はより楽観的な方向と導かれる。発展途上国の人びとに世界経済へのアクセス手段を与えることは、病気から政治的不安定に至るまでのすべてを緩和することに役立つ。私たち自身をより大きな人類への貢献へと向かわせ、繁栄の分かち合いを促進する技術と意志によって、ビジネス界は世界に大きな違いを生み出す絶好の機会を得ているのだ。

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(翻訳:Sako)

テクノロジーの拡散速度が加速している

date: 2007/03/24 | release status: NR | time of day: Dawn | photographic technique: Digital capture

【編集部注】著者のSebastiaan Vaessen氏はNaspersグループの戦略責任者である。

模倣者(コピーキャット)は実は絶滅危惧種だ。米国で新たに登場するデジタルサービスとそれが他の市場にコピーされる時間のギャップは毎月のように縮小している。この傾向は、グローバルビジネスに大きな影響を及ぼし、投資やイノベーション戦略を再考させている。

インドは、技術の拡散がいかに加速しているかの良い例だ。たとえば、1994年の米国でのAmazonの開始と、インドにおける同等のサービスFlipkartの開始の間には13年以上の年月が横たわっていた。それが2013年には、DoorDashがシリーズAの資金調達をアナウンスしてわずか3ヶ月後には、インドで類似サービスであるSwiggyがローンチした。

ビジネスモデルの拡散のこうした急速な加速には、3つの主要な要因がある:

  • 地域ごとの例外があるにもかかわらず、人間のニーズはしばしば普遍的なので、技術は世界中に適用される。
  • インターネットは新しい技術の動向についての情報の配布を簡単にした — TechCrunchは起業家たちから広くアクセスが可能だ。
  • モバイルデバイスの急速な普及が、グローバル展開のための強力なプラットフォームである。

成長著しい市場に参入している企業にとって、この傾向の意味は明らかだ:チャンスは大きいが、早急に行動する必要がある。

スタートアップがこの課題を解決するために役立つ5つの要素がある。

  • まず大規模な市場に焦点を当てること。これにより、規模を迅速に拡大する機会が提供される。大市場のリーダーは世界的な成功を収める可能性が高まる。
  • 国際化のために慎重かつ再現可能なモデルを開発する。
  • グローバルな勝者となるべく資本を調達し、ある市場で概念実証から国際的な展開に迅速に移行する。
  • 国際化に伴う特定の課題を克服するのに役立つ投資家とのパートナーシップ。
  • 国際的な考え方を身に着けた才能を雇用する。

成長著しい市場の起業家にとっては、明らかなことだが、他の場所で見られている実績のあるビジネスモデルを立ち上げることはこれまでは利点の多い戦略だったが、そのゲームはほぼ終了している。世界中のハイテクプレーヤーがこれまで以上に大きくなって迅速に成長する中で、クリティカルスケールを達成するための時間が不足している。

しかし、それはローカル起業の機会がないということではない。グローバルモデルは、最終的にはローカルの好みや文脈の限界に突き当るので、そのようなローカルな「堀の中」こそが地元のスタートアップが勝負できる場所なのだ。

ローカルな堀は、その成り立ちから自然に、地域的、政治的、文化的、あるいは経済的な影響を受けたものになり得る。しかし、彼らは1つの共通点を持っている:差別化を可能にするのだ。例えば、中国の壁はBaiduGoogleに抵抗することを可能にした。また、言語と文化の壁により、アフリカのShowMaxなどのローカルコンテンツプロバイダはNetflixと競合することが可能になった。

さらに、国内市場の起業家は、地元の問題を解決して強力なビジネスを構築することが可能だ。これらの地元の問題は、シリコンバレーの中心で働いている人たちが拾うことのできない機会を表しており、したがって収穫の対象として熟しているのだ。

テクノロジー拡散の加速のペースは、世界的なスタートアップエコシステムの大きな変化を引き起こしている。この結果、将来的には「模倣」サービスの数は減っていくが、新興成長市場では、スタートアップに大きなチャンスをもたらす独自のイノベーションの波を期待することができるのだ。

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(翻訳:Sako)

AmazonのPrime Videoがついにグローバル化でNetflixも本格的な競合へ

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Netflixは1月にグローバルな拡張を行い、世界のほとんどの国で視聴できる唯一のビデオストリーミングサイトになった。でもAmazonがその競合サービスの大規模な国際展開をほのめかしてからは、Netflixの一人舞台は短期間で終わりそうになってきた。

Amazon Prime Videoを今利用できる国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリア、日本の5か国だ。もうすぐインドが加わる。しかしAmazonがこぼした重量級のヒントによると、12月からは一挙に世界の200のマーケットに拡張するらしい。

ただしそれには、いろんな‘ただし’が付く。

まず、今のところグローバルな展開が確認されているのは、イギリスの人気モーターショーTop GearのリメイクThe Grand Tourだけだ。しかし現状では未確認だが、それと同時または直後に、全世界のピーク時オーディエンス3億5000万というTop Gearの人気に乗った、ほかの番組もローンチするかもしれない。

それは現時点での計画だが、Wall Street Journalの記事はAmazon筋の説として、同社のビデオサービスは今、“大規模なグローバル展開の瀬戸際にある”、と書いている。

Amazonが2億5000万ドルを払ったとされるThe Grand Tourそのものは、昨日(米国時間11/16)からPrime Videoで見られるし、またAmazonのCEO Jeff Bezosのツイートと、この番組のスターが出てくるYouTubeビデオによると、12月からグローバルになる。

しかも、一部の国ではすでに今週から見られるらしい。ある記事によると、オーストラリアのユーザーは今Web上でそのサービスにアクセスできている。ただしモバイルアプリはまだない。それに、ほかの国でも、秘(ひそ)かに静かに、すでにそんな状態になってる可能性もある。今でなければ近未来に。

Netflixは、インディー映画のMubiや、東南アジアのiFlixなどニッチな競合相手が多いが、Amazonは待望のグローバルな競争を持ち込むだろう。

そして次の拡張は、Amazonの音楽サービスかもしれない。それは先週初めてアメリカの外でローンチし、イギリスに上陸した。ほかには、インドでは苦戦Primeを中国に持ち込む、そして東南アジアの将来性に色気を示す、といったところ。AmazonはPrime Videoなどのメディアサービスのあるところが、各地地元のeコマースより有利かもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

情報化時代に適応できる国とできない国の運命

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【編集部注】執筆者のKaspar Korjus氏は、e-Residencyプログラムのディレクター

36年前、アメリカ人の作家でフューチャリストでもあるAlvin Toffler氏は、工業社会によって象徴される「第二の波」から、Toffler氏が「情報化時代」と呼ぶ現象に象徴される「第三の波」への避けられない移行について、有名な著作「第三の波」を残した。Toffler氏の言う情報化時代とは、産業革命による工業化でもたらされた伝統的な産業から、電子化・デジタル革命に基づく経済へのシフトを意味する。

何年も前に書かれた本ではあるが、私たちの生活の至る所で起きているデジタル化や、ビジネスのグローバル化から、Toffler氏の予言が現実になっていく様子を今ハッキリと見てとれる。しかしそんな中でも、個人の識別や経済取引、企業の登記に関しては、未だに古めかしい「工業社会」のシステムが、各国政府や国民にとってのチャンスを厳しく制限してしまっている。

今日のデジタル社会では、国境や参加者の国籍に左右されてしまうようなグローバル経済はもはや機能しない。多くのスモールビジネスが大陸を超えて自分たちの製品やサービスを販売したいと考えており、小国はより大きな消費者人口を求め、デジタルノマドは世界中を自由に移動していることから、あるひとつの取引に関する契約書上に複数の国にいる人たちの署名が並ぶこともある。

このようなグローバル経済に参加したい、もしくは参加する必要がある人々にとって、オンライン上で安全に自分の身元を明らかにし、世界中のどこからでも事業を運営でき、複数のマーケットで自由に取引を行えるというのは欠かすことの出来ない要素である。そして各国政府はこのような個人に対して、デジタル化されたサービスを提供するという課題に取り組む姿勢を持っていなければならない。さもなければ、Toffler氏の言葉を借りれば「次第に時代の流れに取り残され、今日の複雑さについていけなくなって」時代遅れの国家とみなされてしまう。

今こそ、世界中の政府が社会の進歩に対抗しようとするのを辞めて、その思い腰を上げるタイミングなのだ。

エストニアが1991年にソ連から再度独立を果たしたとき、その少ない人口と広い領土(エストニアの国土はオランダやスイスよりも大きい)から、物理的に種々のサービスを全ての国民に届けることの難しさがすぐに明らかになった。小さな町のひとつひとつに銀行の支店を置くことや、全ての村に包括的な公共サービスを提供する役所を設置することは、現時的ではなかったのだ。結果的に、民間・公共どちらのセクターも、デジタル化やeサービスのその後の発展に将来をゆだねることとした。

エストニアはさらに、新しいデジタル社会の中で小さな国家が経済競争力を保つため、革新的なテクノロジーを作り出すことができるような経済環境を育て、国としての競争優位性を高めなければならないと認識していた。エストニアがこのゴールを達成し、Skypeのような企業を生み出すに至った理由のひとつとして、政府が民間セクターでのイノベーションを促進するために、テクノロジーを利用した公共サービスを提供したことが挙げられる。独立から25年を迎えた今日、エストニアは世界中でもトップレベルのデジタルインフラを保有している。

エストニア政府は、在住者へのデジタルIDカードの発行や、オンライン投票、平均2分間で完了するオンラインでの税申告などに見られるように、デジタル化を公共サービスの中心に置いている。2015年には、エストニアの800以上の機関が、1,500種類におよぶ電子公共サービス提供している。エストニア国民として、私自身もデジタルIDを使って政府が提供するサービスにログインし、契約書に電子署名を使っているため、エストニアに物理的にはいないときでも、国民として国と密接に繋がっていると感じることができる。

さらにエストニアは2015年に、国籍の制限なしで世界中の人々へデジタルIDプログラムを開放し、これまでのGovernment as a Serviceのアプローチを、さらに上のレベルへと昇華させた。電子公共サービスが国民国家の国境を超え、環境もしくは経済的にグローバル経済から隔離されてしまっている海外の人々へもそのアクセスを与えるというこの実験的な動きが、エストニアのe-Residencyプログラムの設立に繋がった。

ベータ版の公開から一年で、世界中の人々がエストニア籍の会社を一日で登記し、現地の銀行口座を開設し、決済サービスへのアクセスや、契約書などの書類へのデジタル署名ができるようになり、e-Residencyプログラムは移民政策では成し得なかったほど同国の経済成長に貢献している。

一国のアプリストアにすぎないようなものを作ることが、世界各国政府と市民の関わり方を再定義する可能性を秘めている。

2016年5月の時点で、558社がe-Residencyのサービスを利用して設立され、1,150人のe-Residentsがe-Residencyを使って自分たちの会社の運営を行っている。エストニアのビジネス界に関わる人や企業の数が増えるほど、エストニアの企業にとっての顧客が増えることとなる。例えば、e-Residencyを使って設立された会社は、銀行や決済サービス、会計サポートや、法律相談、資産運用、投資顧問などエストニア企業が提供するサービスを利用する可能性が高いのだ。

エストニアの例に見られるように、一国のアプリストアにすぎないようなものを作ることが、世界各国政府と市民の関わり方を再定義する可能性を秘めている。Robert Atkinson氏が代表を勤めるアメリカのシンクタンク、情報技術イノベーション財団(Information Technology & Innovation Foundation)が最近公開したレポートでは、デジタルインフラを構築し、それに伴う経済的なチャンスを利用することの、メリットと障壁が強調されている。Atkinson氏と彼のチームは、そのような動きの効果について以下の通りまとめている。

  • 容量の拡大:既存・新規デジタルインフラの利用率の向上
  • 時間削減と利便性の向上:待ち時間の削減、運営の簡素化、意思決定の高度化
  • 経費削減:無駄の最小化、効率性の向上、重要なサービスの提供方法の柔軟性
  • 信頼性の向上:重要なサービス提供時の中断・予期せぬ出来事が発生する可能性の低下
  • 安全性の向上:脅威や妨害に対する弾力性の向上

Atkinson氏はレポートの最後に、「情報テクノロジーが、スマート企業やスマートスクール、スマートシティを例として、世界をスマート化しようとしている今、私たちが住む社会も、スマートインフラの構築を加速させるべきタイミングにあります」と語り、さらには「しかしながら、昔からあるインフラをデジタルインフラへと移行する過程で、はっきりとわかりやすいゴールや関連政策のサポートがないと、移行に時間がかかってしまうことでしょう」と述べている。私はこの意見に大賛成で、エストニアで起きたことが彼の主張の正しさを証明している。

私たちは今、ほぼ間違いなくToffler氏のいう「第三の波」の中にいる。将来的には個人の住んでいる場所が問題となることがほぼなくなり、デジタル世界の中でビジネスを行えるようになるだろう。今こそ、世界中の政府が社会の進歩に対抗しようとするのを辞めて、その思い腰を上げるタイミングなのだ。そして、起業家や有能な開発者が一丸となって、政府のデジタルプログラムがその力を最大限発揮できるよう手を差し伸べるタイミングでもある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

BBCが日本語ニュースサイトを東京で立ち上げ、同社広告ビジネスのグローバル展開へ

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日本に進出するヘビー級のニュースサイトは、BuzzFeedだけではなかった。イギリスの国営放送企業BBCが今週、日本語のニュースサイトを開いた。同社にとって英語以外のニュースサイトはこれが初めてであり、広告という大きな収益源をグローバルに拡大することがねらいだ。

そのサイトBBC.jpには、BBC.comのグローバルなニュースサービスから選ばれたコンテンツが日本語に翻訳されて載る。

BBC本体の経営は主に、イギリス国民がテレビを所有すると義務的に払う視聴料で成り立っている。しかし日本での新しいプレゼンスは、それとは無関係だ。同社によると、日本語Webサイトは東京のエディタチームが運営し、同社の初めて“完全に商業的な”非英語ニュースサイトになる。完全に商業的とは、これから日本でビジターを増やし、広告スペースを積極的に売り込む、という意味だ。

このWebサイトの開設と並行してBBCは、YouTubeTwitterに日本専用のアカウントを設けた。また、HuluやYahoo Japanなどとビデオの配信契約を結んでいる。

BBCは日本のサイトを発表するニュース記事で、“日本にはインターネットニュースやソーシャルメディアにとってきわめて重要かつ高度なオーディエンスがおり、またわれわれの調査によると、BBCの英語サイトの各月のユーザ中、およそ100万が日本からであり、その90%は母国語が日本語である”、と書いている。

BBCは視聴料で成り立っているが、そのほかのメディア企業と同様、海外では独自の広告ビジネスを築きつつある(イギリス本国では広告は不可)。今28の言語で提供されているBBC World ServiceのWebサイトも商業化を進めており、実現するとアドバタイザーズは全世界1億3200万の視聴者を各月のビジターとして期待できる。特定市場への特化は、今回の日本語サイトが初めてだが、今後このタイプの展開も増えると思われる。

ややこしいことにBBCには、グローバルWebサイトBBC World Serviceのほかに、BBC.comのグローバル版BBC World Newsがあり、こちらは完全に商業化されたニュースサイトだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。