HRテックのROXXがサイバーエージェントなどから総額5億円を資金調達

写真左から、サイバーエージェント社長室 投資戦略本部 本部長 近藤裕文氏、同社経営本部 M&A・投資育成部 関口秀明氏、ROXX代表取締役 中嶋汰朗氏、サイバーエージェント社長室 投資戦略本部 藤田ファンド担当 坡山里帆氏

人材採用関連サービスを提供するROXXは2月19日、サイバーエージェント、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先として、総額5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の資金調達は、2019年7月発表のパーソルキャリアと既存株主からの約3.7億円の調達に続く、シリーズBラウンドに当たり、同社の累積調達額は約12億円となった。

ROXXは現在、月額制のリファレンスチェックサービス「back check」と、求人流通プラットフォーム「agent bank」を提供している。

2018年5月に正式リリースされたagent bank(旧SARDINE)は、人材紹介会社のための求人データベースと業務管理ツールのクラウドサービスだ。月額利用料のみ、成功報酬に対する手数料が不要で、2000件以上の求人に対して転職者を紹介することができる。利用ハードルの低さから、累計400社以上のエージェントがagent bankを利用しているという。

また求人企業の側も、完全成功報酬型で募集求人を何件でも無料で掲載可能。成功報酬は求人ごとに自由に設定でき、従来の人材紹介より低コストで採用が可能になっている。このため、大手企業からスタートアップまで、幅広い規模と業種の求人を集めるようになっている。

リファレンスチェックのback checkは、面接や書類からだけでは見えにくい採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得できるサービスだ。採用予定の職種・ポジションに合わせて数十問の質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施できる。

back checkには、候補者の前職における勤怠・対人関係といった基本的信頼性を可視化するスコアリングや、性格診断による職務適性チェックといった機能が備わっており、独自のデータ分析により、入社後のパフォーマンスを総合的、客観的に分析・予測することが可能となっている。レポートに表示される適正を踏まえて、面接での確認事項や、配属先検討の際の組織やメンバーとの相性を考えるための参考とすることができる。

back checkの利用料は月額定額制で、従来のリファレンスチェックサービスに比べて10分の1程度の費用でチェック実施が可能。2019年10月の正式リリースから、2020年2月現在、累計導入企業数が300社を超えた。今回、藤田ファンドからROXXに出資を行うサイバーエージェントも、サービス利用企業の一社だ。

今回の資金調達により、ROXXではagent bank、back checkの各プロダクトの強化と、これにともなう採用強化を図るとしている。ROXX代表取締役の中嶋汰朗氏は「昨年比でagent bank事業は主要KPIがすべて300%超の成長を実現していることに加えて、新規事業のback check事業においては導入企業様の採用フローにリファレンスチェックが確実に浸透している」として、「今回の資金調達は両事業のさらなる成長を加速させることを目的としたラウンドと位置づけている」と述べている。

今後、agent bank事業については、前回のリード投資家で資本提携先でもあるパーソルキャリアのアセットと自社の事業開発力を掛け合わせ、人材紹介の領域拡大を牽引するサービスとなるよう、投資を行うと中嶋氏。「2030年には640万人もの人手が不足すると予測されている中で、中長期で成長し続けるROXXの主力事業とする」(中嶋氏)

またback check事業については、「タクシーCMの公開や導入実績の増加により、リファレンスチェックそのものの認知が拡大されているのを感じているだけでなく、実際に採用のミスマッチを防ぐことができたという事例が日々増えている」と中嶋氏はいう。「日本全体で転職へのネガティブなイメージが払拭され、キャリアの多様化が進むに伴って、採用企業において必要とされるツールになると確信し、事業部全体に対して投資を強化する判断をした」(中嶋氏)

中嶋氏は「前回の調達をきっかけに大手人材会社の経営や事業構造に数多く触れる機会を得て、業界構造の負をインターネットサービスで解決できる領域がまだまだ残されていることに気づいた」と述べ、「決して既存の文化を壊すのではなく、踏襲した上でより良い形を実現することが私たちROXXの役割だと認識した。20年、30年とサービスの価値が上がり続ける事業になるよう、引き続き尽力する」とコメントしている。

クラウドファンディングサイトのMakuakeが東証マザーズ上場、公開価格1550円で初値2710円

クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営するマクアケは12月11日、東証マザーズ市場に上場した。同社は、2013年5月にサイバーエージェント内の新規事業を担う子会社としてサイバーエージェント・クラウドファンディングという社名で設立され、2017年10月に社名を現在のマクアケに変更して現在に至る。

マザーズ上場時には98万株を公募し、156万5000株を売り出す。主幹事証券会社は大和証券。公募・売り出し価格は1550円で12月11日の初値は2710円、最高値は2750円で、11日11時15分現在2710円前後で推移している。ちなみに上場前の同社の株式は、親会社のサイバーエージェントが71.36%、プロサッカー選手である本田圭佑氏が設立したKSK ANGEL FUNDが13.71%、同社社長の中山 亮太郎氏5.05%を保有している。いずれの株主も90日間のロックアップ、つまり株式を売買できない期間が設けられている。

Makuakeは、国内有数のクラウドファンディングプラットフォームであり、現在では海外製品やハードウェアスタートアップ企業のテストマーケティングの場としても活用されること多い。最近では、海外企業の進出を支援するMakuake Global Planや、大企業のオープンイノベーション戦略に参画したりと活躍の場を広げてきた。

直近の業績としては、2018年9月を決算月とする2018年度(2017年10月〜2018年9月)は、売上高が9億5800万円、経常利益が1億5600万円。当期純利益は1億1300万円だった。2019年度(2018年10月〜2019年9月)は売上高が13億4400万円、経常利益が1億2700万円。当期純利益は8900万円。2017年9月期の決算以降は黒字経営を続けている。

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たこ焼きロボからマイクロモビリティまで竹芝埠頭にロボ集結

東急不動産と鹿島建設は、両社が共同開発する「(仮称)竹芝地区開発計画」のエリアマネジメントの一環として、両社が共同設立した事業会社であるアルベログランデ、一般社団法人の竹芝エリアマネジメントと共同で「竹芝ふぇす TAKESHIBA Seaside Music & Dining」を8月23日まで開催中だ。開催時間は17時30分~21時。

期間中は、東京都野外広告条例の規制緩和に向けた実証実験として、開場に隣接する建物を利用したプロジェクションマッピングイベント「TAKESHIBA TOWN OF LIGHT FESTIVAL」も同時開催される。また「街全体のロボット実装化に向けた実証実験」の場として、公募によって選ばれたさまざまなロボットが展示されていた。

THOUZER

一般社団法人CiP協議会が開発したリンゴをモチーフにしたコンパクトな店舗「apfel.min」と追従運搬型ロボット「THOUZER」を組み合わせたソリューション。ステンレスで作り上げられたTHOUZERは、一定間隔を保って人のあとを追従して注文した商品を運んでくれる。

OctoChef

コネクテッドロボティクスは、大手チェーンへの導入実績もある、汎用アームロボットをチューニングしたたこ焼きロボを展示。従来は、デンマーク・ユニバーサルロボットのアームロボットを使っていたが、今回は台湾テックマン製のアームロボット(国内代理店はオムロン)に変更されていた。このたこ焼きロボットは4代目で、さまざまな汎用アームロボット向けにチューニングすることで、同様の動きを再現できることがわかる。関係者によると、同じ会社が製造する同じシリーズのアームロボットでも型式によって関節の仕組みが異なるため、個体ごとに微調整は必要とのこと。

出展されていたたこ焼きロボは簡易仕様で、画像解析によるたこ焼きの焼き具合を判断する機能を備わっていないが、たこ焼きの生地やトッピングは事前に用意しておけば、油引き、生地の流し込み、たこ焼きの回転、鉄板からのたこ焼きのピックアップまでを全自動でこなす。あとは、人の手でたこ焼きを取り分けてソースやマヨネーズ、青のりなどを振りかければ完成だ。

さらに今回は、たこ焼きロボットの開発を生かしたビールサーバーロボットも展示されていた。チェーン居酒屋などで見かける自動ビールサーバーと前述のアームロボットを組み合わせ、ビールのコップをセットするところから、ビールが満たされたコップを提供するまでを全自動でこなす。連続で2杯のビールを注いで提供することができる。

今回はたこ焼きロボとビールサーバーロボで別々のアームロボットを利用していたが、1台のアームロボットで一方でたこ焼きを作り、空き時間にビールを注ぐという1台二役の動作も可能とのこと。

Hot Snack Robot

コネクテッドロボティクスは、コンビニなどへの導入を計画している揚げ物担当ロボットも展示していた。揚げ物を作るためのフライヤー、食材を保存しておくための冷凍庫、出来上がった揚げ物をディスプレイする陳列棚の中心にユニバーサルロボットのアームロボットが鎮座。冷凍庫の扉を開けて食材を取り出し、食材をフライヤーで揚げる、揚げ上がった食材の油切り、揚げ物を陳列棚に移動、客のオーダーにより陳列棚から取り出すという一連の作業を全自動でこなす。

ロボットが認識できるように、食材をトレイに均一に並べたり、二次元バーコードでマークをつけるといった下準備は必要だが、猛暑の中でただでさえ高温のフライヤーの前に人間が立つ必要がなく、隣でほかの作業をこなしながらサポートするだけだいいのはありがたい。

自律声がけロボット

サーバーエージェントのAI Labは大阪大学と共同で、周辺の環境を認識して、通行人の行動の認識・予測、通行人の注意を惹きつけるロボットの動作生成などの要素技術を研究。今回展示されていたコミュニケーションロボットはバックにLEDパネルが設置されており、遠隔地にいるスタッフが接客する仕様だった。

REBORG-Z

綜合警備保障(ALSOK)は、ビルなどへの導入実績がある警備ロボットを展示。警備と案内、巡回に特化したロボットで、内蔵の液晶パネルでイベントの概要を参照できるほか、域内をパトロールするといった動作が可能だ。多言語対応の音声対話のほか、受付、火災検知、消火活動、異常音検知、警戒監視、顔認識、危険性ガス検知などの機能を搭載する。

poimo

メルカリの研究開発組織であるmercari R4Dは、東京大学川原研究所と共同開発した「poimo」を展示。poimoは、空気を注入したボディを利用する電動モビリティーで、耐荷重100kg程度、時速10km程度で走行できる。電動キックボードなどと同様に公道を走るには車両登録や原付免許が必要となるが、今後はpoimoでの走行が許可されている竹芝国家戦略特区での実証実験を進めていくという。

また電動キックボードなどを充電するための無線充電マットも展示されていた。マット上に停車させておけば自動的に充電される。スマートフォンの無線充電規格であるQiよりも長距離となる数cm離れた状態での充電が可能。パネルを連結させることで充電範囲を広げられるのが特徴だ。

給与即日払いのペイミーが7億円調達、今冬に決済プラットフォームを実装へ

ペイミーは7月8日、7億円の第三者割当増資を発表した。引き受け先は、ミクシィ、サイバーエージェント、インキュベイトファンド。

同社は、給与即日払いサービス「Payme」を運営している2017年7月設立のスタートアップ。勤怠データとPaymeを連携させることで、実労働時間から給与計算を即時に実行して即日払いを実現するのが特徴だ。導入企業は、飲食チェーン、人材派遣、小売、コールセンター、 アミューズメント、物流など250社を超え、累計流通金額は15億円を突破、導入先従業員数は12万人に達しているとのこと。利用できる金額の上限は、その日までに稼いだ額の70%まで。この範囲内であれば1000円単位でいつでも即日払いを申請できる。

今回の資金調達で同社は、Payme上に決済プラットフォームとしての新機能を今冬をメドに実装する予定だ。従来の「口座受け取り」以外の受け取り手段を追加することで、キャッシュレス化を推進し、資金の偏りによる機会損失をなくすことを目指す。

なお現在同社は、エンジニア、セールス、PR、マーケティング、コーポレートの5つの職種で人材を募集している

サイバーエージェントが競輪のネット投票サービスを開始、「AbemaTV」で競輪チャンネル開設も

サイバーエージェントは4月2日、子会社であるWinTicketを通じて競輪のインターネット投票サービスを開始したことを明らかにした。

WinTicket」は競輪のネット投票やライブ映像の視聴・精算ができるサービスだ。オッズや選手データ、レースの開催日情報、過去のレース結果など関連するデータをオンライン上で提供。モーニングやミッドナイト、ガールズケイリンなど全国の競輪場のライブ中継を無料で配信する。

AIや有名タレントによる予想を参考にしながら、初心者でも気軽に参加できるのが特徴。レースを見ながらの投票も可能だ。

サイバーエージェントでは同サービスの提供に合わせて、インターネットテレビ局の「AbemaTV」にて競輪チャンネルを新たに開設することも発表。WinTicket上で番組と連動した企画も実施する予定だという。

同社によると2017年時点で競輪の売上高は約6400億円、オートレースの売上高は660億円と算出されていて、近年インターネット投票の伸びが顕著な領域。そのような背景もあり、これまで競輪にあまり触れることの無かった若い世代にもその面白さを伝えることを目指して今回のサービス提供に至った。

今後WinTicketではオートレースなど他の公営競技にも対応する予定。サイバーエージェントは「『WinTicket』のサービス展開および『AbemaTV』での放送を通じて、公営競技のインターネット投票の促進と新たなファン層の獲得を図ってまいります」とコメントしている。

面接不要で空いた時間にすぐ働ける「タイミー」が3億円調達、2019年中には新サービスの公開も

空いた時間にすぐ働けるワークシェアサービス「タイミー」を運営するタイミーは1月10日、サイバーエージェント、エン・ジャパン、オリエントコーポレーション、セブン銀行、西武しんきんキャピタル、名称非公開の上場会社ならびに個人投資家2名から3億円を調達したと発表した。

タイミーは、人手が足りない飲食店などと、空いた時間を有効活用したい人たちをマッチングするサービスだ。お店ごとの求人に応募したり、採用面接を受けたりする必要はない。アプリに空いた時間を入力するだけで、数多くの候補から「今ヒマな時間」に働けるお店を探すことができる。2018年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルにも登場したサービスだ。

同サービスは現在約400店舗に導入済みで、その約8割が飲食店だという。タイミー代表取締役の小川嶺氏は、「求人広告の数自体は増えている一方で、アルバイト人口は減っている。求人広告を出しても人が集まらないという共通課題を抱えるお店がタイミーを導入してくれている」と語る。

一方で、タイミーを利用して働く側のユーザーの大半は学生だ。タイミーのダウンロード数は現在約3万5000件。そのうち3万人が学生ユーザーだという。「ユーザーの中には10回以上タイミーを使って働く人もいる。どこかの店舗にアルバイトとして常勤するのに比べ、毎回新鮮な経験や出会いがあることもタイミーの魅力の1つ」(小川氏)。小川氏によれば、今回の資金調達に向けて動き出したのは約3ヶ月前。当時は月間の売上が15万円ほどしかなかったというが、現在ではその約10倍の150万円まで売上が伸びているという。

ところで先日、藤田ファンドの第一号案件がタイミーであることがサイバーエージェントから発表されていたが、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏との出会いはサイバーエージェント側が開催したスタートアップ起業家向けの食事会だったという。

100人以上の若手起業家が集まったその食事会で、藤田氏は藤田ファンドの復活を告知。起業家はその食事会で各テーブルを周る藤田氏に向けてピッチを行ったという。小川氏もその1人だったが、後日「1億円を出資してください」という旨のメールを藤田氏に直接したところ、そのまま出資を受けることが決まったようだ。

サイバーエージェントの他にも、今回のラウンドには事業会社の名前がずらりと並んでいる。タイミーはそれらの企業との協業も準備しているようだ。例えば、セブン銀行とはタイミーがこれまで提供してきた即金機能をセブン銀行ATMを使って提供する協業を予定している。また、具体的な内容はまだ非公開だが、オリエントコーポレーションとはペイメント分野での協業を進めるようだ。

そのほか、タイミーは独自で新サービスの開発も進める。2019年中には「旅行」とタイミーをかけ合わせたサービスを公開予定だという。小川氏によれば、これは「0円で旅行が行けるサービス」で、ユーザーはタイミーを使って旅行先で働くことで、旅行代金タダで旅に行けてしまうという内容のサービスだという。そのために、今後タイミーは地方向けの営業を強化。2019年8月頃をめどに新サービスをリリースする構えだ。

サイバーエージェントの「藤田ファンド」が復活、投資1号案件はタイミー

サイバーエージェントは、2014年秋に凍結していた「藤田ファンド」を再開し、再開後の投資1号案件としてタイミーへの出資を発表した。具体的には、2018年12月28日にタイミーの第三者割当増資の引受を行った。出資額は非公開。今回は純投資を目的にしており、両社の連携については現時点では未定とのこと。

「藤田ファンド」とは、2013年10月にサイバーエージェント本体内に設置した投資事業本部で、同社代表取締役社長である藤田晋氏が自ら手がける投資。これまで、ウォンテッドリーやクラウドワークス、BASEなどへ投資していた。「藤田ファンド」の方針は経営者の魅力を重視した投資。今後はインターネット業界を中心にアーリーからミドルステージの企業へ投資し、若手経営者の応援とインターネット業界の発展を目指していくとのこと。

タイミーは、日本初のワークシェアサービスを展開するスタートアップ。同サービスを利用することで、ユーザーは面接などの事前交渉が不要でスキマ時間にすぐに働けるのが特徴だ。店舗側では、繁忙期にフレキシブルに人員を増やせるというメリットがある。タイミーは、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルのファイナリストでもある。

2024年、動画広告の国内市場規模は約2.6倍の4957億円にーーサイバーエージェント発表

サイバーエージェントは11月30日、インターネット広告業界に特化した研究機関のオンラインビデオ総研とデジタルインファクトと共同で、国内動画広告市場の動向をまとめた調査結果を発表した。

同レポートによれば、2018年の動画広告市場は昨年対比134%の1843億円に達する見込みだ。デバイス別でみると、その成長を牽引しているのはスマートフォン上の動画広告。スマートフォン向け単体の市場規模は1563億円と昨年対比143%の成長を遂げ、市場全体の85%を担う。一方のPC向けは280億円と推計されている。

動画興国市場の市場規模は今後も順調に成長すると見られており、2020年には2900億円、2022年には4187億円、2024年には4957億円に達する見込みだ。サイバーエージェントは同レポートにおいて「大手広告主を中心に自社製品・サービスのブランディングを目的にした動画広告の出稿が定着、その需要は引き続き増加傾向が見られる」とコメントしている。

次に広告フォーマット別の市場規模を見てみよう。同レポートによれば、2018年の市場規模全体に占める割合が一番大きいのは756億円の市場規模をもつインストリーム広告(動画プレイヤー内で配信されるタイプ)だった。次に大きいのはインフィード広告(コンテンツ間に表示される動画広告)で703億円だ。今後も市場規模全体は成長していくものの、この傾向は変わらず、2024年におけるインストリーム広告とインフィード広告の市場規模は、それぞれ2083億円、1784億円になる見通しだ。

同レポートでは、インストリーム動画広告の動向について「縦型フォーマットの提供が本格的に検討されるなど、ユーザーの動画視聴行動に最適なフォーマット提供に向けた研究や商品の開発が進んだ。また、ゲームやコミックなどのアプリケーション内で提供される動画リワードなどの広告フォーマットの需要も拡大した」とコメントしている。

サイバーの小学生プログラミングコンテスト、初代優勝者は“全てがオリジナルのスマホゲーム”を開発した5年生

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される。しかし、サイバーエージェントグループでプログラミング教育事業を行うCA Tech Kidsは「算数・理科などの既存の科目内での限定的な実施となり、経済産業省の試算では2020年に37万人のIT人材が不足する見込みとなるなど、世界的にも日本のプログラミング教育が遅れていることから、民間団体による強化が重要な課題となっている」との懸念を抱いている。

そのような課題の解決に向け、同社は国内最大級の“小学生のためのプログラミングコンテスト”「Tech Kids Grand Prix(テックキッズグランプリ)」を本年、初めて開催した。イベントの司会を務めた代表取締役社長の上野朝大氏によると「子供達がプログラミングを学ぶことに世間の関心が非常に高まっている一方、多くの人がまだその重要さを十分に理解していない」という。

「我々はプログラミングは優れた技術であって、何かを実現するための優れた手段だと考えている。小学生のような子供達であっても、プログラミングを使いこなせば作りたいものを作れたり、困っていることを解決できたりする。それを多くの人に知ってほしいと思い、今回のコンテストを開催する運びとなった」(上野氏)

9月24日、渋谷ヒカリエで行われた決勝プレゼンテーションでは「ゲーム部門」と「自由制作部門」でそれぞれ6名ずつ計12名の小学生が登壇し、自身の開発した自慢の作品を発表した。ファイナリストは国内外より集まった1019件のエントリーの中から選出された強者たちだ。

総合優勝を果たした宮城采生さん

見事に総合優勝を果たしたのは小学校5年生で10歳の宮城采生(みやぎ・さい)さん。デザイン・プログラミング・BGMなど“全てがオリジナルのスマホゲーム”を発表し、ゲーム部門で1位に選出された後、初代グランプリに輝いた。

「オシマル」と題されたゲームを開発した宮城さんは去年の夏から真剣にプログラムに取り組むようになったという。開発にはMac版Unity、素材にはMac付属のソフトとiPadアプリを使ったそう。スタッフとして「ゲーム制作は自分、テストプレイは家族や友人」と説明するなど、“チームでの開発体制”を意識していたのが印象的だった。

ゲームはCPUを相手にした対戦型のもの。自分が左右に操作する“アニマル”を3体ゴールさせることでクリアとなる。キャラクターは数種類あり、「種類によってコストや性能が違う」ので状況に応じて使い分ける。

タイトルは「アニマルブロックが押し合っている印象から」オシマルと名付けたそうだ。タイトル画面も「ゲームの方向性に合うよう密度感を表現した」と説明するなど、かなりロジカルに世界観の表現を追求していた。審査員からの質問に対し「iPad一つで向かい合って勝負ができる」機能を実装したいと今後の展望を話していた。

Tech Kids Grand Prixの審査項目は「掲げる夢や実現したい世界観」「夢を実現するクリエイティブなアイデアとそれを体現した作品」「自身のビジョンやプロダクトを社会に発信していく姿勢」の3つ。若い感性から生まれたユニークな作品はどれも自由で興味深かった。「大好きな“数学”を友達にも楽しんでもらいたい」「僕のソフトで世界を変える」など名言が盛りだくさんのコンテストだったが、その熱い気持ちを忘れず、テクノロジーでより楽しく美しい世界の実現を目指してほしい。近い将来、TechCrunch Japanで取材できる日を楽しみにしている。

元サイバー西條晋一氏が代表を務めるXTech、エキサイトにTOBを実施

元サイバーエージェント役員の西條晋一氏が代表を務めるXTechは9月7日、子会社のXTech HPを通じてエキサイトの普通株式を公開買付け(TOB)により取得すると発表した。取得価格は1株あたり875円。最終的には、エキサイトの全株式を取得し完全子会社化することが目的のようだ。期間は2018年9月10日から10月24日まで。決済の開始日は10月31日。

XTechは既存産業×テクノロジーで新規事業を創出するコンセプトの会社で、今年の1月に設立されたばかり。XTechの子会社でベンチャーキャピタル事業を手掛けるXTech Venturesは9月3日、元ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏を共同創業者兼ジェネラルパートナーとして迎えたことを発表していた。

リファラル採用のMyRefer、パーソル独立後3.6億円の調達ーー「つながりで日本のはたらくをアップデートする」

左から、MyRefer代表取締役社長CEOの鈴木貴史氏、USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEOの宇野康秀氏

リファラル採用に特化したHRテックサービス「MyRefer」を提供するMyReferは8月6日、グリーベンチャーズ、パーソルホールディングス、宇野康秀氏などを引受先とする総額3億6000万円の第三者割当増資を実施したと発表した。

同社はパーソルグループの新規事業創出プログラム「0to1」発の事業。成長をより一層加速化させること、そしてパーソル全体のオープンイノベーションを更に強化していく試みとして8月1日に法人化した。同プログラム初の独立法人化案件だというだけでなく、1998年設立のサイバージェント以来のインテリジェンス(現パーソル)発のスピンアウトベンチャーとなった。インテリジェンス創業者で現在はUSEN-NEXT HOLDINGSの代表取締役社長CEOを務める宇野氏はこの動きを「非常に嬉しく感じている」とコメントしている。

「創業の頃から人と組織を元気にするインフラサービスとしてやっていた。個人的にやりたいことは、ベンチャーがチャンスを得て巣立っていくこと。大企業を脅かすような存在に進化していくことを支援したい」(宇野氏)

また、同氏は「(独立元企業にとっては)自社で抱えきれない事業もある」「独立したからと言って1が0になるわけではない」とも話している。

「自社で育てたサービスが独立してしまうと損失が多く見えるが、自社内で成長した上で独立を目指す優秀な人が増えることはメリットだと思う。逆に、サイバーはインテの中にいたら今のようにはなっていない可能性もある。独立したことでブランディング形成できるという面もある」(宇野氏)

一方、パーソルホールディングス取締役副社長COO高橋広敏氏は「パーソルグループにおいてもオープンイノベーションやインキュベーションを積極推進しており、MyReferのさらなる事業成長を支援していく」とコメントしている。

MyReferはリファラル採用を中途採用のみならず新卒、アルバイト採用でも利用が可能にするクラウドサービスだ。リファラル採用とは社員に人材を紹介・推薦してもらう採用手法のこと。社員の個人的な繋がりを活用し、より企業にマッチした人材を獲得することが可能となる。

人事担当者はMyReferを導入後、社員にマイページを配布。社員はマイページで求人情報を確認し、SNS上の友人にシェア。推薦コメントを人事担当者に送信。お誘いが届いた友人は興味があればMyReferに登録して応募する。社員の活動状況を全て可視化するアナリティクス機能により、人事担当者は社員の紹介活動や候補者応募状況、求人別の紹介状況を確認することができる。

iPhoneとAndroidに対応したアプリを使うことで社員はワンクリックで求人を紹介することが可能。同アプリでは「社内の活動状況がランキングで可視化されるのでログインしたくなる」との声もあり、社員が楽しく自発的に自社の紹介活動を行える。また、社員は活動状況によってはギフトを受け取ることも可能だ。

「エージェントとか求人広告のような職務経歴書などを用いたハード面でのマッチングではなく、人と人との繋がりによるレファランスを活用する。新卒、中途とアルバイト領域の全ての採用を人と人との繋がりによる就職・転職でディスラプトしていきたい」とMyRefer代表取締役社長CEOの鈴木貴史氏は語った。従来の履歴書や経歴書をベースとしたマッチング手法では、個人のポテンシャルを最大限活かせず、企業も外部エージェントに依存した採用に終始しがちだという。一方、MyReferは企業に対して社員の繋がりを活用したインフラを提供するので、持続可能な採用力強化を可能としている。

MyReferは日本で最も利用されているリファラル採用サービスで、2015年9月のサービス正式リリースから30カ月で370社が利用、利用社員数は10万にもおよぶ。利用企業には2018年1月の段階でUSEN-NEXT HOLDINGSやファーストリテイリング、日産自動車などが挙げられていた。

鈴木氏は調達した資金で新機能の開発や採用、マーケティングを強化していくという。退職した社員の再雇用やアルバイトからの正社員登用も含めた社内移動を可能にし、採用側が自社のニュースなどを求職者に発信できるような仕組みを構築したいと意気込んでいた。

サイバーエージェントがC2Cのスキルシェアサービス開始、まずは約100人の著名人がスキル販売へ

近年続々と生まれているシェアリングエコノミーサービスの中でも、個人が持つ知識や特技をシェアする「スキルシェア」はホットな分野のひとつだろう。先日メルカリが「teacha」というサービスをローンチして話題を呼んだばかりだけど、今度はサイバーエージェントがこの領域に参入することを決めたようだ。

サイバーエージェントは6月14日、同社の運営する「Ameba」にてスキルシェアリングサービス「REQU(リキュー)」を開始した。まずは認定する約100名の芸能人や有名人、著名インフルエンサーらがセラー(スキル販売者)として参加。保有する知識や特技をサービス上で販売する。

Amebaは2004年にブログサービスを開始して以降、14年間にわたって著名人から一般ユーザーまで多くの利用者を獲得してきた。「個人の発信力」に対する注目度が年々高まる中で、ブログやSNSで影響力を持つ個人を対象にAmebaのノウハウを活用した、スキル売買プラットフォームを提供するに至ったようだ。

REQUでは販売者が購入者とやり取りをしながら、要望に応じて商品を作成し提供する「オーダーメイド」と、記事やマンガといった作品をコンテンツ単位で販売する「有料コンテンツ」の2種類の形式を備える。

たとえばファッションに詳しいインフルエンサーがメイクや着回しのアドバイスをしたり、著名編集者が手紙の添削をしたり、イラストレーターがオリジナルの似顔絵を作成したりといったものがオーダーメイドに該当するもの。

一方の有料コンテンツはグラビアアイドルがダイエット方法を紹介する記事などがその典型例で、コンテンツプラットフォーム「note」などで有料ノートを売買する仕組みに近いかもしれない。なおREQUで販売する商品の情報はアメブロに埋め込むことができ、ユーザーはブログ記事面から商品を購入できるという。

REQUでは今後オーダーメイドや有料コンテンツ以外にも機能拡充を行うほか、ユーザーからの参加リクエストも受け付け、2019年度中に1万人のセラー獲得を目指していく方針だ。

個人間のスキルシェアプラットフォームに関しては、冒頭でも紹介したようにメルカリがteachaを提供しているほか、「サイタ」や「ストアカ」、「タイムチケット」、「ココナラ」といったサービスがある。

「競合はいないし、出てくる気配もない」――1周年を迎えたAbemaTVの今

インターネット広告事業や、ブログ「Ameba」を中心とするメディア事業などを展開するサイバーエージェントは4月27日、2017年9月期(2Q)決算を発表した。

今期のサイバーエージェント全体の売上高は前年同期比25.1%増の933億円、営業利益は79億円となった。これにより、同社は最高益を更新したことになる。同社のの事業は、メディア、広告、ゲームの3つのセグメントに分けられているが、増収を牽引したのはその内広告事業とゲーム事業の2つだ。

広告事業の売上高は前年同期比20.3%増の525億円、営業利益は同じく21.4%増の53億円となった。一方のゲーム事業の売上高は前年同期比29.6%増の358億円、そして営業利益は14.1%増の79億円だ。3月11日にリリースしたゲームタイトル「バンドリ!ガールズバンドパーティ!..」のヒットが成長の牽引役となったようだ。

AbemaTVの今

今回の決算発表で注目されたのが、4月11日に1周年を迎えた「AbemaTV」の動向だ。AbemaTVは、サイバーエージェントが手がけるライブストリーミング形式のインターネットテレビ。ニュースやスポーツ、バラエティまで幅広い種類の番組を放送している。基本視聴は無料だが、月額960円のプレミアム会員に加入することで会員限定のコンテンツの視聴などができる。

リリース当時から注目を浴び続けるAbemaTVだが、現状は赤字の投資フェーズ。Abema TVが属するメディア事業の営業利益は51億円の損失となっている。Abema TV単体では58億円の損失を計上した。

ただ、これは予想通りの結果とも言える。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏は2016年11月に開催されたTechCrunch Tokyo 2016に登壇し、AbemaTVは「そもそもスマートフォンでテレビ番組を観る視聴習慣が整っていない中、フライング気味にスタートしたサービス。なので長期戦になると思っています」と語り、2017年には同サービスに約200億円を先行投資すると話していたのだ。

また、藤田氏は「無理に黒字化させようとすると事業がおかしくなる」とも語っており、サーバーエージェントがゆっくりと腰を据えてAbemaTV事業に取り組んでいることは明らかだ。

黒字化はまだ達成できていないものの、AbemaTVは順調に成長している。同サービスは開局1年で1600万ダウンロードを記録。MAUも2016年4月の248万から約3倍の753万に拡大している。

「競合はいない」

藤田氏はAbemaTVについて、「私たちは今までなかった市場をフロンティアのように開拓している。ここを着実に開拓していきたい」と藤田氏は語っている。AbemaTVはまったく新しいサービスであり、200億円という先行投資をかけてでも市場を切り開いていくという意気込みの現れだろう。

とは言うものの、AbemaTVの急激な成長やNetflixなどの動画ストリーミングサービスの好調さを見て、他社から競合サービスが生まれる可能性も否定できない。藤田氏はこれについて、「今のところは競合は出てきてないし、出てくる気配もない。この事業の厳しいところは、コンテンツの獲得争いになるという点で、コストが非常にかかるという点。これをできる企業がいない」と語る。

つまり、テレビ局と同等のコンテンツを集める力、そしてハイクオリティなUIを開発できるネット企業ならではのノウハウの両方を兼ね備えているのはサイバーエージェントしかいないというのが藤田氏の見方である。

AbemaTVへ先行投資をする時期のあと、藤田氏が以前から語りつづけている目標は「AbemaTVをマスメディアにする」ことだ。今回の決算発表では具体的な時期は示されなかったが、指標としては1000万WAU、プレミアム会員数100万人を達成するとしている。

サイバー藤田氏「無理な黒字化は事業がおかしくなる」ーー大型投資での成長を狙うAbemaTVのこれから

サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

11月17日、18日に東京・渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2016。17日の最終セッションには、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏が登壇した。藤田氏は4月11日の本開局(サービス正式ローンチ)からわずか半年で1000万ダウンロードを突破するなど、快進撃を続けるインターネットテレビ局「AbemaTV」について、サービス開始から今後の展開までを語った。聞き手はTechCrunch Japan副編集長・岩本有平が務めた。

若年層の取り込みに成功。わずか半年で1000万ダウンロードを突破

サイバーエージェントとテレビ朝日がタッグを組んで展開しているインターネットテレビ局AbemaTV。オリジナルの生放送コンテンツや、ニュース、音楽、スポーツ、アニメなど約30チャンネル(2016年12月現在)が全て無料で楽しめる。

4月11日の本開局から、約半年で1000万ダウンロードを突破。順調に成長を続けている。その状況について、藤田氏はこう口にする。

「予想を上回るスピードで1000万ダウンロードを突破することができましたが、そもそもスマートフォンでテレビ番組を観る視聴習慣が整っていない中、フライング気味にスタートしたサービス。なので長期戦になると思っています。そういう意味では何とかなるだろうと楽観的な一方で、予断を許さないとも思っています」(藤田氏)

「長期戦になる」という言葉どおり、藤田氏は2017年、AbemaTVに年間200億円を先行投資すると発表。予算のほとんどをコンテンツ制作と広告に充てるという。

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驚異的なスピードでユーザー数を増やしているAbemaTV。その内訳を見てみると、10代〜20代の若年層がほとんど。“若者のテレビ離れ”が叫ばれて久しいが、スマートフォンに最適化された動画コンテンツを配信することで若年層の取り込みに成功しているのだ。

「もともと狙っていたのが、テレビを見なくなった若年層だったので、この結果は狙い通りです。テレビを見なくなった層が何をしているかというと、スマートフォンを覗き込んでいるので、スマートフォン上にコンテンツを送り込めばいい、と思いました」(藤田氏)

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なぜテレビで勝負することにしたのか?

2016年を「動画元年」と位置づけ、AbemaTVの本開局に踏み切った藤田氏。だが「Hulu」や「Netflix」といった定額制動画配信サービスや、「YouTube」のような動画配信プラットフォームではなく、なぜテレビで勝負しようと思ったのだろうか?

「最初はテレビ型にするかどうかを決めず、動画事業に参入することだけを決めていたのですが、自分の中でAppleのiTunesが伸び悩んでいたことが決定打となりました。好きな音楽を好きなときに聴けるiTunesの仕組みは個人的にすごく良かったのですが、好きなもの以外を見つけるのが面倒くさいんですよね。受け身で音楽が聴けるストリーミングサービス『AWA』を始めたとき、やっぱり人は受け身で探す方が楽なんだと痛感しました。数ある映像が並んでいても、自分で選んで再生するというのは結構億劫なもの。受け身のサービスの方が人は楽なんじゃないかという前提に立って、テレビ型にすることを決めました」(藤田氏)

“受け身”というように、AbemaTVは暇があったら開く状態を目指している。例えば、1チャンネル目にニュースを持ってきて新鮮な情報を提供していることを打ち出したり、会員登録をなくしたり、とにかくユーザビリティの向上に注力しているそうだ。

「簡単で使いやすくすることで手が癖になり、アプリを立ち上げてくれるかもしれない。FacebookやTwitterといったコミュニティサービスに勝てるとは思っていませんが、SNSを見尽くして、やることがなくなったときに見てもらえるメディアであればいいと思っています」(藤田氏)

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Netflixの日本上陸がAbemaTVの立ち上げの契機に

もちろん、テレビである以上、使いやすいだけでなくコンテンツも面白くなければユーザーに観てもらえない。その点、AbemaTVはテレビ朝日と提携することでクオリティの高い番組が作れているといってもいい。

堀江貴文氏がフジテレビを買収する、三木谷浩史氏がTBSを買収する騒動があった10年前には想像できなかったかもしれないが、テレビとネットの関係性は劇的に変化している“今”だからこそ、サイバーエージェントとテレビ朝日の提携が実現したという。

「昔から通信と放送は融合すると言われ続けていましたが、まだスマホも登場していなかったので実感値が全くなかった。だからこそ、コンテンツは独占してこそ価値があるものだと思われていましたし、テレビ以外のデバイスに映すのはもってのほかだった。そんな状況を大きく変えたのがNetflixの日本上陸。ワールドワイドで収益を上げ、膨大な制作資金をかけてドラマを作っている会社が日本に来るということで、各テレビ局が対応を迫られることになった。この出来事がAbemaTVが生まれるきっかけにもなりました」(藤田氏)

 

Netflixの上陸だけでなく、Apple TVやChromecastといった端末も登場してきた。テレビは今後どうしていくのかを、たまたまテレビ朝日の審議委員会で話していた(藤田氏はテレビ朝日の番組審議委員を務めていた)こともあり、テレビ朝日側に立って出した答えがサイバーエージェントとテレビ朝日の提携だったそうだ。

まさにNetflixの日本上陸がAbemaTVを立ち上げる契機になったと言えるが、運営していく中で自社でコンテンツを作っていく考えはなかったのだろうか?

「自社でコンテンツを作れるのではないか、という考えも頭をよぎりました。例えば映画の買い付けや放映権の取得などお金を出せば何とかなりそうかなと思ったのですが、それは大きな間違いでした。テレビ局と組むことが必須だったんです。主要な映像コンテンツは基本的に全てテレビ局に集まっていますし、映像制作のクオリティがすごく高い。よく視聴率がとれる番組は制作会社が作っていると思われがちなんですけど、それは全然違う。クリエイティブディレクションをやっているのはテレビ局の人たちなので、彼らと組む以外、道はなかったと思います」(藤田氏)

無理に黒字化しようとすると事業がおかしくなる

様々な動画サービスが立ち上がっていることもあり、今後、テレビ局がネット企業と手を組むなど、AbemaTVの競合が出てくる可能性は十分に考えられる。その点、藤田氏はどう考えているのだろうか?

「AbemaTVは世界的にも見たことがないサービス形態になったのですが、有り無しがまだ分からない。もちろん、有りだと思い込んでやっているんですけど、マスメディアに出来るかは全くの未知数。こんな状態で競合は出てきてほしくないのが本音ですが、テレビ朝日が社を挙げて全面的に協力してくれている。こんな奇跡的な状況の会社はそうそう無いと思っているので、競合は来ないんじゃないかなと思っています」(藤田氏)

先ほど、「テレビ局の協力が必須だった」と述べていたように、テレビに進出する時にテレビ局の協力、ネットに進出するときはネット企業の協力が必須だという。だからこそ、同じような形でサービスを立ち上げてくる可能性は少ないと考えているようだ。

約半年で1000万ダウンロードを突破したAbemaTVの今後の展開について、「いつまでに黒字化する、いつまでに◯◯ユーザーを獲得するといったことは絶対に言いません。無理に黒字化させようとすると事業がおかしくなるので」と前置きをした上で次のように語った。

「これからAndroid TV、Apple TVにも対応していきますが、Amazon Fire TVなどを使った視聴体験が思った以上に素晴らしいので、そこのマーケティングは強化していく予定です。あと、年明けにはバックグラウンド再生と縦画面でも開けるようにして、より気軽に使えるようにしていきます。コンテンツ面ではニュースに力を入れていき、大事なニュースがあったらAbemaTVをつける習慣を作っていくことを考えています」(藤田氏)

サイバーエージェント藤田社長がTechCrunch Tokyoに登壇、ネットテレビ局「AbemaTV」のこれからを聞く

開催まで1カ月を切った日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでまた新たな登壇者をご紹介したい。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏だ。

藤田氏はインテリジェンスで活躍した後、1998年にサイバーエージェントを設立。2000年には当時最年少となる26歳で東証マザーズ市場に上場した。2014年には東京証券取引所市場第一部に市場変更を実施している。

広告営業の代理店業からスタートしたサイバーエージェントだが、当時堀江貴文氏が率いていたオン・ザ・エッヂとの協業でネット広告事業に進出。広告事業を走らせつつ、ブログサービスの「Ameba」、FX(2012年にヤフーに譲渡)、アドネットワーク、アバターサービス「アメーバピグ」、モバイルゲームやアプリ、定額制音楽配信サービス「AWA」など、グループ会社を含めてさまざまな事業を展開してきた。

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サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

ブログやアプリなど、これまでも注力する領域を見つけては一気に踏み込み、事業を成長させてきた印象もあるサイバーエージェント。そんなサイバーエージェントが今最も注力しているのが、テレビ朝日と組んで展開するインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。AbemaTVでは現在27のチャンネルで情報番組からニュース、アニメまでさまざま番組を配信している。4月の開局(サービスローンチ)から6カ月で、スマートフォン向けアプリのダウンロード数は900万件を突破している。

2016年は動画サービスが躍進した1年でもあった。エブリーの「DELISH KITCHEN」、delyの「Kurashiru」、スタートアウツの「もぐー」といった国産の分散型料理動画メディアが勢いを増し、その一方では、海外で潜行する料理動画メディア・Buzzfeedの「Tasty」が日本版をローンチした。また女性に強いC Channelの「C Channel」、HowTwoの「HowTwo!」、10代の支持を集めるDonutsの「MixChannel」、さらに動画広告プラットフォームのOPEN8やFIVE、YouTuberを束ねるUUUMやスリーミニッツなど、動画に関わるスタートアップの活躍がいろいろと聞こえてきた。AbemaTVはそんな各社の動きとは異なり、テレビ局と組み、リアルタイムでオリジナルコンテンツなどを配信する「インターネットテレビ局」というアプローチを行っている。

このセッションでは、AbemaTVの話を中心に、動画ビジネスを取り巻く環境、そしてサイバーエージェントの今後の展開について聞いていきたい。藤田氏はTechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日午後に登壇予定だ。