TikTok買収はマイクロソフトを押しのけオラクル勝利との報道

エンタープライズサービスの大手であるOracle(オラクル)がTikTokの米国事業を買収する入札に勝ったという情報が入ってきた(Wall Street Journal記事)。いち早く入札に手を挙げていたMicrosoft(マイクロソフト)は負けたことになる。TechCrunchは、TikTok、オラクルの両社に取材しているが、まだコメントを得られていない。

Wall Street Journalの報道によれば、オラクルはまもなくと「TikTokの米国における信頼されるパートナー」となったことを発表するという。 またこの記事によれば、事情に通じた情報源が「おそらくストレートな買収にはならないだろうと述べた」という。

オラクルがTikTokの米国事業を買収したのが事実であれば、同社の将来が不確かだった期間も終わりを告げる。この契約は買収先が決まらない場合、トランプ政権が運営を禁止する期限とした9月20日よりもはるか以前に実現した。

9月13日、マイクロソフトは「TikTokの米国事業を買収する申し出は親会社のByteDanceによって拒絶された」と発表した。

マイクロソフトはこの声明で「我々の提案はTikTokのユーザーにとって最もメリットの大きいものだったはずだと確信している。米国の安全保障を守りつつ、セキュリティ、信頼性、フェイクニュース対策などについて抜本的な修正を行う予定だった」と述べている。

「このサービスが以上のような分野でどのように対処していくのか今後の成り行きに注目している」とマイクロソフトは述べている。

事実、セキュリティに関する懸念はTikTokをめぐる諸問題の中でも最も深刻なものだった。TikTokはインドで「国防と安全保障上の懸念」を理由として他の中国関係アプリ58種類とともに禁止されている。インドはTikTok最大の外国市場だった。マイクロソフトに加えて、Twittter、Google、Walmart(ウォルマート)など有力テクノロジー企業がTikTokの米国事業買収に手を挙げていた。しかしTechCrunchのRon Miller記者が指摘したとおり、 オラクルがTikTokの買収にこれほど熱心になるにはそれなりの理由があった。巨大な市場シェアだ。テクノロジービジネスの分析を手掛ける Constellation ResearchのHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏がTechCrunchに説明したところによれば、どんなかたちにせよTikTokを確実なユーザーとして確保できれば、オラクルはインフラサービスとして極めて大きな利益を得るのだと言う

「TikTokのシェアはインフラサービスにとって非常に魅力的なものだ。またバイラルの効果が大きいことも見逃せない 。 マイクロソフトがTikTokを買収した場合売上に与える影響は2%から5%だろうが、オラクルの場合は10%のアップになる可能性がある」という。

エンタープライズサービス大手のオラクルが若者に人気のショートビデオプラットフォーム、TikTokを買収するという一見突飛な動きも、実は合理的な理由があったわけだ。しかしドラマティックな展開という印象は変わらない。

画像:Lionel Bonaventure / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ハリウッド発のショートムービーアプリ「Triller」はTikTok騒ぎに後押しされるもリズムを崩さず

ハリウッドの大物や音楽界のセレブの支援を受けるショート動画アプリTriller(トリラー)は、ユーザー数も評価額も急上昇している。現在は2億5000万ドル(約260億円)の新規投資ラウンドを募っているが、これが成功すれば評価額は10億ドル(約1060億円)以上にまで押し上げられると、この件に詳しい情報筋は話していた。

昨年10月にウォールストリート・ジャーナルが報じた同社の評価額1億3000万ドル(約137億円)から、一足飛びの大幅増となる。Trillerの創設者でCEOのMike Lu(マイク・ルー)氏はコメントを控えたが、別の企業幹部は、dot.LAの記事でこの資金調達について認めている

このアプリはTikTok(ティックトック)に取って代わるものとして注目されるようになったが、じつはTikTokが登場する2年前の2015年から存在していた。しかもTrillerには「独自性とエコシステム」があると、創設者は主張している。

ルー氏によればTrillerは、トランプ政権がTikTokの禁止や強制処分を検討し始めるより前に、すでに「目覚ましい成長」を遂げていたという。ただ、TikTokへの反発が起きてからアプリの人気が跳ね上がったのも事実だと彼は認めている。このわずか2日間足らずで、3500万人のユーザーがTrillerに加わった。このアプリは現在までに、世界で2億5000万回ダウンロード(PR Newswire)されている。

ロサンゼルスを拠点とするこのスタートアップが、4月だけで20億回以上ダウンロード(Sensor Tower)されたTikTokに追いつくには、まだ長い道のりがある。両社とも、ユーザーが動画と音楽をマッチさせられる機能を売りにしており、それは双方の成功の決め手となった。しかしこれに関してTrillerは、最近になって、「オーディオトラックと同期する音楽動画の制作」に関する特許を侵害したとして、この中国のライバル企業を起訴(日本語版TechCrunch)している。

今のTrillerがあるのは、一部にはRyan Kavanaugh(ライアン・カバノー)氏(フォーブス)が創設したハリウッドのスタジオProxima Media(プロクシマ・メディア)がマジョリティ投資家に(PR Newswire)なったお陰だと言える。ルー氏によれば、Trillerはこの規模に到達するまでマーケティングには一銭も使っておらず、「テクノロジーの歴史上、例のないこと」だと話している。『ワイルド・スピード』や『ソーシャル・ネットワーク』などのヒット映画のプロデューサーであり投資家でもあるライアン氏が、メディアへの大々的な露出やセレブの人脈を活かし、自然の成り行きとしてファンたちをTrillerユーザーに転向させたことは間違いない。

ライアン・カバノー「Trillerで作った。みんなにはできるかな? 次なる世界的スーパースターを探すんだ。ミーゴス、スタラー、Boost Mobileで新しいアメリカンアイドルだ」

Trillerは、メジャーなレコードレーベルとの契約(PR Newswire)も固めている。それによりユーザーには、音楽を主体とした動画制作の道が開かれる。同社を支援しているエンジェル投資家のリストには、スヌープ・ドッグ、ザ・ウィークエンド、マシュメロ、リル・ウェインといったビッグネームが名を連ねている(PR Newswire)。

「ライアンは、ハリウッドでも、娯楽とメディアの業界でも右に出るものがない」とルーは言う。Proxima Mediaには「このステージに、この大躍進に導いてくれた大きな恩があります。彼らなくして、ここまで来ることはなかった」

有名タレント品質のコンテンツは、TrillerがTikTokに差を付けている要素のひとつだと、Trillerに戦略的ラウンドで投資しているPegasus Tech Ventures(ペガサス・テック・ベンチャーズ)のジェネラルパートナーAnis Uzzaman(アニース・ウザマン)氏は言う。

「TikTokは自前のセレブを育てようとしています。Trillerにはすでに、ビッグなセレブが揃っています」と同氏は、今や新曲発表の場としても人気を高めているTrillerで、アリシア・キーズ、カーティ・B、マシュメロ、エミネムなどがシェアした動画を引き合いに出して話している。TikTokもまた、アーティストが新曲を試す実験場(Rollingstone)になっている。

だが同時に、TikTokが得意としている一般ユーザーのエンゲージメント維持にも苦心している。たとえばTrillerは、プロの作品のように音楽動画を仕上げられるAIを使った編集機能を自慢している。また、Trillerで人気の歌をランク付けするビルボード・チャート(Billboard)も開始した。新進のクリエイターとセレブとが平等に活躍できる土俵だ。

「若い人たちに、セレブに近づけた感覚が与えられます」とウザマン氏は言う。

またウザマン氏は、このショート動画の分野には、複数のプレイヤーが活躍できる余裕があると信じている。Uber(ウーバー)とLyft(リフト)が共存している状態と近い。事実、近年の中国では、中国版TikTokである抖音(ドウイン)は、快手(クアイショウ)と肩を並べている。

ルー氏は、当初のTrillerの独自性は音楽、とくにヒップポップに根ざしており、対象年齢層は18歳から15歳と考えている。

App StoreでのTrillerのスクリーンショット

それに対してTikTokは、軽いノリのダンスからお馬鹿なネタまで、なんでもありだ。その違いは、App Storeのそれぞれのスクリーンショットを見比べるとわかる。

App StoreでのTikTokのスクリーンショット

TikTokに代わるもの

TikTokの運命は、今のところMicrosoft(マイクロソフト)がこの中国所有のアプリを買い上げる(日本語版TechCrunch)可能性が高まっているものの、これからの数週間で激変する可能性がまだ残されている。アメリカ生まれという身元でTikTokのユーザーを奪い取れると見込むスタートアップも数社あるが、カリフォルニアの広告代理店Creative Digital Agency(クリエイティブ・デジタル・エージェンシー)の調査は、そうはならないと示唆している。

調査に応じた数百人のTikTokユーザーのうちの65パーセントが、TikTokがアメリカの会社になったとしても、そのデータの取り扱い方針に安心感が高まるとは思えないと回答している。さらに84.6パーセントが、禁止法案は政治的思惑によって持ち出されたものだと信じている。

「アメリカのどのソーシャルメディア・プラットフォームも、重大なプライバシー問題である個人情報のデータマイニングにおいては、まったく同じことを行っていると、大多数の人が信じています」と、同広告代理店の業務執行取締役Kevin Almeida(ケビン・アルメイダ)氏は指摘する。

とは言うものの、一部のクリエイターが、TikTokが禁止された場合にフォロワーを失うリスクに備えて対策していることもあり、このところTikTokの伸びは鈍化している。調査会社Sensor Tower(センサー・タワー)が分析したデータによれば、先週、アメリカでのTikTokのダウンロード回数は、4週間の平均に比べて7パーセント減少した。アメリカでの総ダウンロード回数は1億9000万回弱だ。

TikTokの将来不安に乗じて業績を伸ばしているアメリカのスタートアップは、Trillerだけではない。Sensor Towerによれば、これらの他に少なくとも3つのショート動画アプリが、先週、数十万の新規ダウンロード回数を記録している。そのうち2つは中国発祥だ。

この3つとは、Dom Hofmann(ドム・ホフマン)氏がTwitter(ツイッター)によって閉鎖(日本語版TechCrunch)されたVine(バイン)の後に新たに立ち上げた(日本語版TechCrunch)アプリByte(バイト)、中国で育ったTikTokのライバル快手が運営するZynn(ジン)、そして中国のYY(歓聚時代)に買収された(英語版TechCrunch)シンガポールの会社Bigo(ビゴ)が運営するLikee(ライキー)だ。総ダウンロード回数はそれぞれ、290万回、640万回、1630万回となっている。

TikTokのかつてのライバルDubsmash(ダブスマッシュ)(日本語版TechCrunch)の成長はそれほどでもないが、これらの競合アプリの中では、アメリカでインストールされた回数がもっとも多く、最近では416万回に達している。

これに対して、Trillerは、アメリカでのダウンロード回数が2380万回に達した。このアプリは、TikTokが禁止されたインドでダウンロード回数が急増(PR Newswire)しているが、TikTokがまだ利用できるヨーロッパやアフリカの国々でも、人気上位の写真および動画アプリの仲間に入っている。

Trillerは、世界に350名の従業員を擁しているが、そのほとんどはアメリカで、コンテンツの運用とエンジニアリングに携わっている。

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(翻訳:金井哲夫)

リップシンクのDubsmashが驚異のカムバック、月10億ビューでショートビデオの2位に

リップシンクアプリのDubsmashは瀕死の状態だった。2015年に今は亡きVineと同様、クチコミでいっとき盛り上がったものの、ユーザー数の減少が続いた。

リップシンクはカラオケの逆で、楽曲や映画の1シーンなどを素材として、その音声に合わせて自分の口パクのショートビデオを撮るというものだ。問題は当時Dubsmashには作成したリップシンクビデオを投稿する場所がないという点だった。単にリップシンクのビデオを作るだけのツールでありInstagramのようなソーシャルプラットフォームではなかった。

そこで2017年にDubsmashの3人の経営陣は会社を根本的にリストラすることを決めた。Lowercase Capital、Index Ventures、Raineから得た1540万ドル(約16億7150万円)の資金で再出発し、本拠もドイツのベルリンからニューヨークのブルックリンに移した。これは主たるユーザーの環境に少しでも近づこうとしたためだという。実はDubsmashを愛用していたのはアメリカのアフリカ系ティーンエージャーだった。当時人気が急上昇し始めたインディーのヒップホップの音声にセルフィービデオをダビングしてあたかも自分が歌っているような雰囲気を楽しんでいた。

Dubsmashはベンチャー資金によって新たに15人のチームを組織し、プログラミングに1年かけてDubsmashの新バージョンを開発した。こちらはTwitterのようにユーザーのフォローが可能で、現在人気になっているコンテンツを知るためのトレンドや発見といったタブも用意されていた。これは最大のライバルであったMusicallyの人気が上昇し、中国のByteDanceが買収に踏み切った時期だった。Dubsmashにはチャット機能はあったが、ARフィルターやトランジションの編集機能がなかった。しかしDubsmashは複数のトラックをリミックスするという他のサービスにない重要な機能があった。

Dubsmashの共同創業者でCEOのJonas Druppel(ジョナス・ドルペル)氏は私の取材に対して「ベルリンにいては十分なユーザーアクセスが得られなかった。(リストラとブルックリンへの移転は)リスクが大きい決断だったが、ライバルの動向、マーケットの規模を考えると他に方法がなかった」と述べた。

一度不振に陥ったソーシャルアプリが復活する例はほとんどない。復活を遂げたと賞賛されるSnapchatの場合も、1億9100万人のユーザーのうちわずか500万人を失っただけだった。

Dubsmash(未公開テスト版)

ところがDubsmashの場合は最大のライバルが救世主になるという巡り合わせとなった。2018年8月にByteDanceがMusicallyを買収してTikTokに統合、ショートビデオのプラットフォームを目指した。こうしたショートビデオには、それまでSnapchatやInstagramにアップされていた身の回りの日常を撮って友達と共有するようなビデオに比べて、ずっと凝っており、あらかじめ脚本を用意し、練習を重ねたダンスや演技を見せる作品が多くなった。このショートビデオ・ブームによって新しいDubsmashにもガリバー旅行記の小人国の軍隊のように巨人を打ち負かすチャンスが生まれた。もちろんこれには密かに実施されたベンチャー資金ラウンドの成功も追い風となった。

その結果、Dubsmashは月間ビュー10億回という人気サービスにカムバックした。

Dubsmashはリストラで新しい会社、新しいアプリを作ってカムバックに成功した

Dubsmashの共同創業者でプレジデントの Suchit Dash(スチット・ダシュ)氏は私のインタビューに答えて。「コンシューマー向けアプリの競争はきわめて激しいので我々が成し遂げたようなカムバックはまず起きない。一度不振に陥ればそのまま忘れられてしまうのが普通だ。我々は会社をドイツから米国に移し、まったく新しいメンバーによる開発チームを組織し、ゼロから新しいプロダクトを作って公開した。いわば第2の人生だ」と述べた。

App Annieのデータによれば、Dubsmashは今や米国のショートビデオ市場におけるインストール数の27%を占め、TikTokの59%に次ぐ2位だ。米市場におけるアクティブユーザー数で言えば、TikTok以外のユーザーの73%がDubsmashだという。Trillerが23%、Fireworkが3.6%でFacebookのLassoは恥ずかしいことに0%だ。月間ダウンロード数ではTrillerは昨年10月にDubsmashを抜いたが、アクティブユーザー数ではDubsmashが3倍ある。しかもDubsmashは1日当たりのアクティブユーザー数の30%が自らコンテンツを製作している。


Dubsmashの驚くべきカムバックを支えたのはこの高率のコンテンツ製作率だった。もちろん2019年の春に行われた(発表されなかった)ラウンドで既存投資家から675万ドル(約7億3251万円)を集めるのに成功したことも役立っている。TikTokではトップユーザーがスーパースター化し、その他大勢のロングテールユーザーはおそれをなして投稿を止めヒットしているビデオを受動的に眺める傾向が強まったのに対して、Dubsmashは多くのユーザーが気軽にカメラの前に立ってショートビデオを撮って投稿を続けた。

今のところDubsmashはまだマネタイズを開始していないが、将来はサービス自身だけでなくトップの投稿ユーザーも十分な収入を得られるようにしたいと考えている。おそらく広告売上のシェア、サブスクリプションや投げ銭、グッズの販売、オフラインでのフェスティバルの組織などといった手法が用いられるだろう。カメラの進歩、ネットワークの高速化などによりモバイルビデオの視聴は巨大化しているため、視聴回数で2位というのは決して悪くない地位だ。

やや皮肉な点だが、TikTokではないことにも重要なメリットがある。セミプロのクリエーター、セレブのインフルエンサーを大量にかかえるTiktokの環境を嫌うユーザーも多いからだ。そういうユーザーはDubsmashのトレンドや発見のページを好む。トレンドではTiktokに比べてクオリティは低くてもホットな新曲やダンスのクリップを使ったコンテンツが多数投稿されており、初心者ユーザーものびのびと投稿ができる雰囲気だ。

【略】

TikTokのガイドラインによれば、Dubsmashのようなライバルのウォーターマークが入ったクリップを使った投稿はランクを下げると書かれている。

TikTokは親会社のByteDance(バイトダンス)の潤沢な資金を使ってFacebookのようなライバルからユーザーを奪うために猛烈に広告を打っている。ダッシュ氏によれば、「Dubsmashはインフルエンサー・マーケティングだろうとストレートな広告だろうと、ユーザー獲得のために1ドルたりと使ったことがない」という。それでいてアメリカでTikTokの半分から3分の1に上るインストール数を達成しているのは印象的だ。

ティーンエージャーにとってショートビデオの魅力が圧倒的に高いうえに好みも多様であるため、このマーケットには複数のアプリが存在できることをDubsmashは実証したといえるだろう。現にInstagramはTikTokクローンのReelsをリリースし、Vineの共同創業者のDom Hofman(ドム・ホフマン)氏がVineの後継となるByteをスタートさせたところだ。ショートビデオ市場の現状を要約すると次のようになる。

  • TikTok:やや長めで品質の高いダンス、歌、コメディ、またそれらの組み合わせ
  • Dubsmash:長さは中程度、素材はダンスなどミュージックビデオ中心でアフリカ系など多様なユーザー
  • Byte:非常に短いジョーク、コメディー中心でVineのスターユーザーが多数
  • Triller:中程度の長さで、ライフブログ的、ハリウッドセレブが目立つ
  • Instagram Reels:国際的インフルエンサー多数でメインストリームのオーディエンスが対象

時間がたてばこうしたサービスはさらに少数に集約される可能性はある。TikTokやInstagramといった巨大プレイヤーが有望なサービスを買収するというのは多いにあり得る。しかし多数のプレイヤーは多様性と創造性を確保するためには有利だ。異なるツール、異なるオーディエンスは異なるタイプのビデオを生むことができる。いずれにせよこうしたショートビデオサービスは今後のポップカルチャーを代表し人々の耳目を集める大砲のような存在になるだろう。

ショートビデオの重要性に関しては、InstagramとTiktokを比較してショートビデオを軽視するのは大きな間違いであることを指摘した私の記事もお読みいただきたい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

一世を風靡したVineの生まれ変わりByteが正式にローンチ

Vine(かつてTwitterが提供していたショートビデオ)の共同創業者であるDom Hofmann(ドン・ホフマン)氏は、その後継サービスをByteという名前で開発していることを公言していたが、米国時間1月24日それがiOSAndroid上でデビューを果たした。Byteを使えば、6秒のビデオを撮影またはアップロードして共有できる。わずかな時間しか許されていないことによって、最大1分間可能なTikTokのクリップよりもさらに密度の高い、余計なカットなしのコンテンツを、Byte上では生み出さなければならない。

Byteにはフィード(feed)、探索ページ(Explore)、通知(notification)、そしてプロフィール(profile)などの標準的なソーシャル機能が用意されている。だが現時点では、Byteにはリミックス機能、拡張現実フィルター、トランジション効果、そしてTikTokといった他アプリにはあるボーナス機能が搭載されていない。

ホフマン氏はByteを差別化するために、コンテンツクリエーターの収益化の支援に初期の焦点を置いている。Byte上で人気が出た人びとに、収益化オプションを提供するパートナープログラムのパイロット版が間もなく開始される予定だ。Byteは広告収益の分配、チップ、その他のオプションをパートナーに提供するのかと質問すると、ホフマン氏は「どのオプションも考慮していますが、当初は広告収益の分配と資本金からの補助を行います。パイロットプログラムの仕組みについては、まもなく詳細にお話しする予定です」と語った。

TikTokやSnapchatのような、直接的収益手段に欠けるアプリ上で人気を博した多くのクリエイターたちは、安定した広告収益を獲得できるYouTubeに視聴者たちを引き付けようとしてきた。早期の支払いを始めることで、Byteはそうしたダンサー、コメディアン、およびおふざけコンテンツをアプリに誘導して、より長い間、引き留めておくことが可能になるだろう。Chris Melberger(クリス・メルバーガー)のような元VineスターたちがTikTokスターになっている。Joshdarnit(ジョシュダーニット)やLance Stewart(ランス・スチュワート)はすでにByteに参加している。

また、Byteの最も熱心な利用者とのコネクションも、ホフマン氏がアプリをより魅力的にするために重視していることだ。彼は、2018年初頭に行ったByte初の発表以来、ベータテスターフォーラムを積極的に運営していて、そこを次に実装すべき機能を見つける場所とみなしている。「オンラインサービスの背後にいる人たちと、そのサービスを実際に使う人たちが、お互いに離されているのはとても残念なことです。そこで私たちはこのフォーラムを運営することで、お互いの関わりを良くできないかと思っているのです」とホフマン氏は書いている

Byte創業者のドン・ホフマン氏

Byteへの道のりは長かった。振り返れば、ホフマン氏は2012年6月に、Colin Kroll(コリン・クロール)氏、Rus Yusupov(ラス・ユスポフ)氏らと共同でVineを創業した。同社は実際にローンチを行う前の2013年1月にTwitterに買収された。その秋までに、ホフマン氏は退職した。しかし、2014年と2015年には、連射砲のようなコミカルな寸劇と、ループ効果によって解き放たれた創造性のおかげで、Vineの人気が高まった。Vineのアクティブユーザーは、2億人以上になった。その後、考えられないことが起こった。なりふり構わないコスト削減によって、Twitterはそれ以上のビデオコンテンツをホストしなくても良いように、Vineの共有フィードをシャットダウンしたのだ。創造的なウェブの住人たちは悲しみに沈んだ。

そのころまでには、ホフマン氏はすでに、より自由度の高いクリエイティブが可能なByteの最初のバージョンを実装していた。写真、GIF、描いた絵などを、共有可能な小さな作品としてまとめることができたのだ。しかし、このプロトタイプが多くの人に受け入れられることはなかった。ホフマン氏は、2018年初頭にV2と呼ばれる後継アプリを実装する計画を発表して、Vineファンに希望を与えたが、数カ月後にはそれをキャンセルした。その後ホフマン氏は、2018年の終わりまでにはプロジェクトについてより真剣に取り組むようになり、Byteという名前を発表し、2019年4月には ベータテストを開始した

関連記事:Twitterが放棄したVineがByteとして復活、TikTokから市場を奪回できるか?

現時点での大きな疑問は、遅れてやってきたByteが果たして無事、テイクオフできるかどうかだ。TikTok、Snapchat、Instagram、その他のサービスがある中で、人はさらに別のショートビデオアプリを必要とするだろうか? ここで勝つためには、他の場所でより多くの視聴回数を得ることができる、高い質を誇るクリエイターたちを誘う必要がある。Dubsmash、Triller、Firework、そしてFacebookのLassoといったTikTokのライバルが現在、米国でも使われていると考えると、競争の少ないネットワークにおけるスターの座を探すクリエイターたちには、挑戦できるアプリがすでにたくさん存在している。ホフマン氏が、Byte上でVineの魔法を十分に再現するためには、人びとの記憶の中にあるVineのブランド力に頼る必要があるだろう。

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(翻訳:sako)

モバイル・ショートビデオのTikTokは2019年に急成長するも収益化に苦闘中

Sensor Towerのレポートによれば、ダウンロード数でも収入でもTikTokは2019年のモバイルアプリの星だった。中国のByteDanceのアプリであるため最近米政府の規制が厳しさを増し、米海軍では使用が禁止されるなどしているが、 現在までのダウンロード数は16.5億回、しかもその44%が2019年に集中している。 つまり昨年1年だけで、7億3800万以上のアプリがインストールされている。

問題は収益性で、TikTokでは各種の実験を繰り返しているがまだ十分な利益を上げていない。もちろん2019年には収入の伸びも著しく1億7690万ドルを得ている。これはそれまでの全収入、2億4760万ドルの71%にあたる額だ。ApptopiaのレポートはTikTokの四半期収入は5000万ドルに上ると報じていた

2019年のTikTokのダウンロード数は2018年から13%アップして6億5500万回となった。2019年の第4四半期はクリスマス休暇を含んだ期間だったこともあり、TikTokとして過去最高の時期となり、2億1900万回のダウンロードがあった。これはそれまでの最高記録だった2018年の第4四半期に比べて6%のアップだった。Sensor Towerのデータによれば、昨年TikTokはゲーム以外のアプリの世界ランキングで、App StoreとGoogle Playの双方でWhatsAppに次ぐ2位となった。

しかしTechCrunchでも紹介したHowever, App Anniieの「モバイルの現状」レポートによれば、Facebook Messenger、 Facebook本体、WhatsAppに次ぐ4位となっており、Sensor Towerの順位とは一致しない。

順位はともあれ、TikTokのダウンロード数が2019年に大きく伸びたことは間違いない。これは主としてインドで人気を得たことが大きい。Tiktokは今年には入ってインドで短期間だが禁止されたが、同市場はTiktokの総ダウンロード、3億2300万回の44%を占める大市場となっている。同時いこれは2018年の27%増だ。.

TikTokの母国、中国では収入の大半はiOSユーザーからのもので、2019年には1億2290万ドルだった。これは収入の69%を占めており、米国のユーザーからの収入である3600万ドルの3倍以上だった。3位の英国の支出は420万ドルにとどまった。

ただしこうした数字も Facebookの660億ドル以上という年間収入に比べるとごく小さい。またTwitterのように小型のネットワークと見られるサービスでも数十億ドルの収入がある。ただし公平にいえば、TikTokはまだビジネスモデルの実験段階にあるスタートアップだ。2019年にTikTokyは, フィード中にネイティブビデオ広告を表示したり、 ハッシュタグ・キャンペーンを行ったりしている。またソーシャルな投げ銭システムにも手を染めている。.

しかし今のところこのチップシステムで、意味のある収入を得ているのはごく少数のクリエーターに過ぎない。 TikTokがYouTubeに追いつくためには優秀なクリエーターにとって魅力のあるサービスになる必要があるのでクリエーターの収入を確保するのは重要な課題だ。

収益化ではTikTokが問題を抱えている理由は、Facebookなどの先行ソーシャル・ネットワークと比べてTikTokにはユーザーの個人データの蓄積が乏しい点が大きい。広告主は、趣味、過去の行動、デモグラフィーなどのデータから適切なターゲティングができず、Tiktokの広告メディアとしての価値をアップすることを妨げている。そこでブランドはTikTokの保持するデータに頼らず、TikTokで人気のあるインフルエンサーと直接提携して広告を配信するなどの手段を取っている。

TikTokは黒字化の達成に至っていないが、ユーザーエンゲージメントでは優秀な成績を挙げている。App Annieのデータによれば、利用時間は2019年に対前年比210%の伸びを示し、トータルで680億時間となっている。TikTokがモバイルユーザーの注目を集めていることは間違いないが、問題はこの注目をいかに収益に結びつけるかだ。

TechCrunchはこの点についてTikTokにコメントを求めたが、回答は「我々は統計を外部に発表していない」と確認するものだった。というわけでTikTokの現状についてはサードパーティーの推定に頼るしかないようだ。

画像:Anatoliy Sizov / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

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(翻訳:金井哲夫)